JP7310261B2 - 音響部材用フィルムおよび音響部材用振動板 - Google Patents

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Description

本発明は、ジカルボン酸成分とジアミン成分とから構成されるポリアミド樹脂を含むフィルムで、特に音響部材用振動板などとして好適に使用することができるフィルムに関する。
マイクロスピーカーに用いられる音響部材用振動板は、高音域と低音域の再現性(音の再現性)を確保するため、引張弾性率が特定の範囲内であることが好ましい。また、近年の音響部材用振動板は薄いフィルムを接着剤や粘着剤を介して何層にも重ねて使用することが多く、用いられるフィルムには薄膜化および二次加工性が求められている。その中で、フィルムが薄くても扱いやすくするため、高い引張弾性率(剛性)が必要となる。更に、スピーカーの高出力化に伴い、より破れにくく、耐久性の高い材料が必要となる。
ポリアミド樹脂は、耐熱性や機械特性に優れるため、音響部材用振動板として好適に使用することができる。特許文献1には、半芳香族ポリアミドを含む音響部材用フィルムについて開示されており、耐久性や音の再現性に優れる旨の記載がある。
特開2016-167757号公報
しかしながら、特許文献1に記載の振動板では、特に低音の再現性が求められるマイクロスピーカー等の用途には向かず、全ての要求特性を満たすことは困難であった。
本発明は、このような状況下でなされたものであり、優れた耐久性や音の再現性、耐熱性、二次加工性を有する音響部材用フィルムを提供することを目的とするものである。
本発明者は、鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得る音響部材用フィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成され、前記ジカルボン酸成分又は前記ジアミン成分のうち少なくとも何れかの主成分が脂環族化合物であるポリアミド樹脂(A)を含む音響部材用フィルムである。
本発明によれば、優れた耐久性と音の再現性、耐熱性、低吸水性を有する音響部材用フィルムを提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明の音響部材フィルムについて説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の音響部材用フィルム(以下、「本フィルム」と称することがある。)は、ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成され、前記ジカルボン酸成分又は前記ジアミン成分のうち少なくとも何れかの主成分が脂環族化合物であるポリアミド樹脂(A)を含む。また、目的により、適宜、芳香族ジカルボン酸(b-1)を主成分とするジカルボン酸成分と、脂環族ジアミン(b-2)を主成分とするジアミン成分と、アミノカルボン酸(b-3)を主成分とする第三成分とから構成されるポリアミド樹脂(B)を更に含んでいてもよい。以下、詳細に説明する。
[ポリアミド樹脂(A)]
本発明の音響部材用フィルムは、ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成され、前記ジカルボン酸成分又は前記ジアミン成分のうち少なくとも何れかの主成分が脂環族化合物であるポリアミド樹脂(A)を含む。ここで「主成分」とは、モル%単位で最も多い成分を意味し、特に明示の無い場合は、以下の他の場合についても同様である。
ポリアミド樹脂(A)が含まれることによって、本フィルムを音響部材用振動板として使用した場合に、耐久性や、高音と低音の再現性、耐熱性、低吸水性に優れる。
本フィルムに含まれるポリアミド樹脂(A)の含有割合の下限は20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。本フィルムに含まれるポリアミド樹脂(A)の含有割合が25質量%以上であれば、本フィルムは耐久性や音の再現性、耐熱性、低吸水性に優れる。一方、含有割合の上限については特に制限は無く、100質量%であってもよい。なお、耐熱性や高音の再現性を更に付与する目的で後述するポリアミド樹脂(B)を更に含む場合は、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
本フィルムに後述するポリアミド樹脂(B)を含まない場合のポリアミド樹脂(A)含有量は、50質量%以上であることが特に好ましく、70質量%以上であることが最も好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成され、前記ジカルボン酸成分又は前記ジアミン成分のうち少なくとも何れかの主成分が脂環族化合物である。
本発明者の検討によれば、ジカルボン酸成分又はジアミン成分のうち少なくとも何れかの主成分が芳香族化合物であるポリアミド樹脂(全芳香族ポリアミドや半芳香族ポリアミド)を用いた振動板では、弾性率が過度に高くなるため、特に低音の再現性が求められるマイクロスピーカー等の用途には向かず、更には二次加工性も低下するため、全ての要求特性を満たすことは困難であることが判明した。
これに対し本発明では、ジカルボン酸成分とジアミン成分の少なくとも何れかに脂環族化合物を導入することにより、音の再現性が良好であるとともに、耐熱性と二次加工性の両立を図ることができることを見出したものである。特に、脂環族化合物は脂環式構造を少なくとも2つ含むことが好ましい。脂環式構造を二つ含むことにより、脂環族化合物の骨格に自由度が増し、弾性率を下げることができるため、より最適な範囲に弾性率を調節することが可能となる。
ポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸成分が脂環族ジカルボン酸を主成分とする場合、ジアミン成分は任意に選択することが出来るが、中でも脂肪族ジアミンを主成分とすることが好ましい。脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの組み合わせにより、耐熱性と二次加工性との両立を図ることができ、かつ弾性率を最適な範囲に調整することができる。
ジカルボン酸成分中における脂環族ジカルボン酸の割合の下限は50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることがとりわけ好ましい。脂環族ジカルボン酸の割合が50モル%以上であることで、ポリアミド樹脂(A)は耐久性や音の再現性、耐熱性、低吸水性に優れる。ジカルボン酸成分中における脂環族ジカルボン酸の割合の上限は限定されず、100モル%であってもよい。
ポリアミド樹脂(A)を構成する脂環族ジカルボン酸は限定されず、具体的には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3-シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、異なる2種以上を併用してもよい。
ポリアミド樹脂(A)を構成する脂肪族ジアミンは限定されず、具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、異なる2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数が2~20である脂肪族ジアミンが好ましく、炭素数が4~16である脂肪族ジアミンがより好ましい。
ジアミン成分中における脂肪族ジアミンの割合の下限は50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。ジアミン成分中における脂肪族ジアミンの割合の上限は限定されず、100モル%であってもよい。
なお、ポリアミド樹脂(A)のジカルボン酸成分が脂環族ジカルボン酸を主成分とする場合において、脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分は任意に選択して用いることができる。また、脂肪族ジアミン以外のジアミン成分も任意に選択して用いることができる。
ポリアミド樹脂(A)のジアミン成分が脂環族ジアミンを主成分とする場合、ジカルボン酸成分は任意に選択することが出来るが、中でも脂肪族ジカルボン酸を主成分とすることが好ましい。脂環族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組み合わせにより、耐熱性と二次加工性との両立を図ることができ、かる弾性率を最適な範囲に調整することができる。
ジアミン成分中における脂環族ジアミンの割合の下限は50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることがとりわけ好ましい。脂環族ジアミンの割合が50モル%以上であることで、ポリアミド樹脂(A)は耐久性や音の再現性、耐熱性、低吸水性に優れる。ジアミン成分中における脂環族ジアミンの割合の上限は限定されず、100モル%であってもよい。
ポリアミド樹脂(A)を構成する脂環族ジアミンは限定されず、具体的には、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-m-ジイソプロピルベンゼン、α,α′-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,4-シクロヘキサン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,3-シクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、異なる2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数が6~20である脂環族ジアミンが好ましい。
これらの中でも、ポリアミド樹脂(A)に耐久性や音の再現性、耐熱性、低吸水性を付与できることから、脂環式構造を少なくとも2つ有する化合物が好ましく、中でも、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)または4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)が好適に使用できる。
ポリアミド樹脂(A)を構成する脂肪族ジカルボン酸は限定されず、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、異なる2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、炭素数が2~20である脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数が4~16である脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。特に、ポリアミド樹脂(A)に耐久性や音の再現性を付与できることから、デカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が好適に使用できる。炭素数が多いこれらの脂肪族ジカルボン酸を含むことによって、ポリアミド樹脂(A)に柔軟性を付与できるだけでなく、ポリアミド樹脂(A)中のアミド基濃度が低くなるため、結果として吸水性が小さくなる。
なお、ポリアミド樹脂(A)のジアミン酸成分が脂環族ジアミンを主成分とする場合において、脂環族ジアミン以外のジアミン成分は任意に選択して用いることができる。また、脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分も任意に選択して用いることができる。
ポリアミド樹脂(A)は、ジカルボン酸成分とジアミン成分の何れの主成分も脂環族化合物であるポリアミド樹脂を用いてもよい。その場合に用いる脂環族ジカルボン酸及び脂環族ジアミンは、前記した例示化合物から選択することができ、好ましい化合物も同様である。なお、ジカルボン酸成分とジアミン成分の何れの主成分も脂環族化合物であるポリアミド樹脂は、弾性率が高過ぎる場合があるため、前記した通り、ジカルボン酸成分又はジアミン成分のうち何れか一方の主成分のみが脂環族化合物であるポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ジカルボン酸成分として上記以外にテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヒドロキシカルボン酸成分;o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン成分;後述する(b-3)として例示するアミノカルボン酸成分;3官能以上の多官能基化合物等を含むことができる。これらを含む場合、下限は0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることが更に好ましい。一方、上限は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。これらの割合がかかる範囲であれば、ポリアミド樹脂(A)の有する耐久性や音の再現性、耐熱性、低吸水性を損なうことなく、目的に合わせて種々の機能を付与することができる。
ポリアミド樹脂(A)は、結晶性であっても非晶性であってもよい。
ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度の下限は130℃以上であることが好ましく、135℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることが更に好ましい。ガラス転移温度の下限が130℃以上であれば、ポリアミド樹脂(A)は耐熱性に優れる。一方、ポリアミド樹脂(A)のガラス転移温度の上限は250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。ガラス転移温度の上限が250℃以下であれば、ポリアミド樹脂(A)は溶融成形性に優れる。
ここでガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用い、10℃/分で昇温した際のガラス転移点における変曲点の温度を意味する。
[ポリアミド樹脂(B)]
本フィルムはポリアミド樹脂(A)の他に、芳香族ジカルボン酸(b-1)を主成分とするジカルボン酸成分と、脂環族ジアミン(b-2)を主成分とするジアミン成分と、アミノカルボン酸(b-3)を主成分とする第三成分とから構成されるポリアミド樹脂(B)を更に含んでいてもよい。ポリアミド樹脂(B)が含まれることによって、本フィルムを音響部材用振動板として使用した場合に、ポリアミド樹脂(A)の耐久性や音の再現性を維持したまま耐熱性や高音の再現性を更に向上することができる。
本フィルムにポリアミド樹脂(B)が含まれる場合、ポリアミド樹脂(B)の含有割合の下限は20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましい。本フィルムに含まれるポリアミド樹脂(B)の含有割合が20質量%以上であれば、本フィルムは耐熱性や高音の再現性に優れる。一方、含有割合の上限は80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。本フィルムに含まれるポリアミド樹脂(B)の含有割合が80質量%以下であれば、ポリアミド樹脂(A)の耐久性や音の再現性を維持することができる。
ポリアミド樹脂(B)は、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸(b-1)を主成分とすることが好ましい。ジカルボン酸成分中における芳香族ジカルボン酸(b-1)の割合の下限は10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましい。芳香族ジカルボン酸(b-1)の下限が10モル%以上であれば、ポリアミド樹脂(B)の耐熱性や弾性率が高くなり、ポリアミド樹脂(A)とブレンドした場合に耐熱性や高音の再現性を更に向上することができる。一方、ジカルボン酸成分中における芳香族ジカルボン酸(b-1)の割合の上限は70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることが更に好ましい。芳香族ジカルボン酸(b-1)の上限が70モル%以下であれば、ポリアミド樹脂(B)の耐久性を維持することができ、また、弾性率が高すぎることも無いため、ポリアミド樹脂(A)とブレンドした場合にも、ポリアミド樹脂(A)の耐久性や音の再現性を維持することができる。
ポリアミド樹脂(B)を構成するジカルボン酸成分である芳香族ジカルボン酸(b-1)は限定されず、具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂(B)に耐熱性や弾性率を高めることができるため、テレフタル酸、イソフタル酸が好適に使用できる。これらは単独で使用してもよいし、異なる2種以上を併用してもよい。
ポリアミド樹脂(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ジカルボン酸成分として上記芳香族ジカルボン酸(b-1)以外にシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸成分;ヒドロキシカルボン酸成分;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸成分等を含むことができる。芳香族ジカルボン酸(b-1)以外のジカルボン酸成分を含む場合、下限は0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることが更に好ましい。一方、上限は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。芳香族ジカルボン酸(b-1)以外のジカルボン酸成分の割合がかかる範囲であれば、ポリアミド樹脂(B)の有する耐熱性や高音の再現性、低吸水性を損なうことなく、目的に合わせて種々の機能を付与することができる。
ポリアミド樹脂(B)は、ジアミン成分として脂環族ジアミン(b-2)を含むことが好ましい。ジアミン成分中における脂環族ジアミン(b-2)の割合の下限は、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることがとりわけ好ましい。脂環族ジアミン(b-2)の割合が50モル%以上であることで、ポリアミド樹脂(B)は耐久性や音の再現性、耐熱性、低吸水性に優れる。ジアミン成分中における脂環族ジアミン(b-2)の割合の上限は限定されず、100モル%であってもよい。
ポリアミド樹脂(B)を構成するジアミン成分である脂環族ジアミン(b-2)は限定されず、具体的には、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジメチルジシクロヘキシルプロパン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-m-ジイソプロピルベンゼン、α,α′-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,4-シクロヘキサン、α,α'-ビス(4-アミノシクロヘキシル)-1,3-シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂(A)に耐久性や音の再現性、耐熱性、低吸水性を付与できることから、脂環式構造を少なくとも2つ有する化合物が好ましく、中でも、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)が好適に使用できる。これらは単独で使用してもよいし、異なる2種以上を併用してもよい。
ポリアミド樹脂(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、ジアミン成分として上記脂環族ジアミン(b-2)以外にエチレンジアミン、プロピレンジアミン、プトレシン、カダベリン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン成分;o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミ等の芳香族ジアミン成分等を含むことができる。脂環族ジアミン(b-2)以外のジアミン成分を含む場合、ジアミン成分中における含有量の下限は0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることがより好ましく、1モル%以上であることが更に好ましい。一方、上限は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、3モル%以下であることが更に好ましい。脂環族ジアミン(b-2)以外のジアミン成分の割合がかかる範囲であれば、ポリアミド樹脂(B)の有する耐久性や音の再現性、耐熱性、低吸水性を損なうことなく、目的に合わせて種々の機能を付与することができる。
ポリアミド樹脂(B)を構成する第三成分として、アミノカルボン酸(b-3)を含むことが好ましい。アミノカルボン酸(b-3)の割合の下限は、ポリアミド樹脂(B)を構成する全モノマー単位を基準として10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましい。アミノカルボン酸(b-3)の割合の下限が20モル%以上であれば、ポリアミド樹脂(B)は耐久性や音の再現性に優れる。一方、上限は、ポリアミド樹脂(B)を構成する全モノマー単位を基準として70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、50モル%以下であることが更に好ましい。アミノカルボン酸(b-3)の割合の上限が70モル%以下であれば、ポリアミド樹脂(B)は耐熱性や低吸水性に優れる。
ポリアミド樹脂(B)を構成する第三成分であるアミノカルボン酸(b-3)は限定されず、具体的には、アミノプロピオン酸、アミノブチル酸、アミノバレリアン酸、アミノカプロン酸、アミノエナント酸、アミノカプリル酸、アミノペラルゴン酸、アミノカプリン酸、アミノラウリン酸等が挙げられる。また、アセトラクタム、プロピオラクタム、ブチロラクタム、バレロラクタム、カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、カプリノラクタム、ラウロラクタム等の環状ラクタムの開環重合物が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂(B)に耐久性や音の再現性、低吸水性を付与できることから、炭素数が2~10であるアミノカルボン酸が好ましく、中でも、アミノラウリン酸やラウロラクタムの開環重合物が好適に使用できる。
ポリアミド樹脂(B)のガラス転移温度の下限は140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましい。ガラス転移温度の下限が140℃以上であれば、ポリアミド樹脂(B)は耐熱性に優れる。一方、上限は250℃以下であることが好ましく、230℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。ガラス転移温度の上限が250℃以下であれば、ポリアミド樹脂(B)は溶融成形性に優れる。
ここでガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用い、10℃/分で昇温した際のガラス転移点における変曲点の温度を意味する。
ポリアミド樹脂(B)は結晶性と非晶性のどちらでもよいが、非晶性であることが好ましい。ポリアミド樹脂(B)が非晶性であれば、分子鎖が密に折りたたまれた結晶部の割合が低いため、靱性や柔軟性が向上し、ひいては耐久性や音の再現性に優れる。ポリアミド樹脂(B)は嵩高い構造である脂環族ジアミン(b-2)を含むため、分子鎖が密に折りたたまった結晶構造を取りにくく、非晶性になりやすい。なお、本発明において非晶性であるとは、JIS K7121:2012に準拠して示差走査熱量計(DSC:パーキンエルマージャパン社製「Diamond DSC」)を用いて、0℃から300℃まで、加熱速度10℃/分で昇温過程において算出される結晶融解熱量の値が5J/g以下であることを意味する。
本フィルムには、引張弾性率を低減し、靱性を向上する目的で、エラストマー成分を含んでいてもよい。エラストマー成分としては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、フッ素系エラストマー等が挙げられる。また、これらに無水マレイン酸や一酸化炭素をブロック共重合またはグラフト共重合した酸変性物等も挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂(A)への分散性や靱性向上の観点から、酸変性オレフィン系エラストマーがより好ましい。
本フィルムにエラストマー成分を含む場合、ポリアミド樹脂(A)の特性を損なわず、効果的に引張弾性率低減や靱性向上の効果が得られることから、エラストマー成分の割合は本フィルム中に1質量%以上、10質量%以下の割合であることが好ましい。
本フィルムは、ポリアミド樹脂(A)、ポリアミド樹脂(B)以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂成分が含まれていてもよい。他の樹脂成分として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、脂肪族ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリフェニルサルホン、ポリエーテルイミドサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマー、またはこれらの共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。他の樹脂成分を更に含む場合、下限は0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、3質量%以上であることがとりわけ好ましい。上限は10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることがとりわけ好ましい。他の樹脂成分を更に含む場合、その含有割合がかかる範囲であれば、本発明の効果を維持したまま適宜必要な効果を付与することができる。
なお、本フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の各種添加剤が含まれていてもよい。
[音響部材用フィルム]
本発明の音響部材用フィルムは、カルボン酸成分とジアミン成分から構成され、前記ジカルボン酸成分又は前記ジアミン成分のうち少なくとも何れかの主成分が脂環族化合物であるポリアミド樹脂(A)を含む。ポリアミド樹脂(A)は引張弾性率を特定の範囲内にすることが出来るため、音響部材用振動板として使用した場合に幅広い音域に対応することができる。また、耐久性に優れるため、音響部材用振動板として使用した場合に高出力時にも耐え得る。また、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れるため、使用時の環境温度や湿度が変化した場合でも弾性率の変化が少なく、音質に与える影響も少ない。更に、吸水性が低いため、経時の吸水が音質に与える影響も少ない。
本フィルムの23℃における引張弾性率(E23)は、1000MPa以上であることが好ましく、1050MPa以上であることがより好ましく、1100MPa以上であることが更に好ましい。引張弾性率(E23)の下限が1000MPa以上であれば、高音の再現性に優れるだけでなく、剛性にも優れるため、薄膜フィルムとして使用した場合にもハンドリング性に優れる。一方、引張弾性率(E23)の上限は1500MPa以下であることが好ましく、1450MPa以下であることがより好ましく、1400MPa以下であることが更に好ましい。引張弾性率(E23)の上限が1500MPa以下であれば、低音の再現性に優れる。
なお、引張弾性率は、例えばJIS K7244-4:1999に準拠して、動的粘弾性測定の貯蔵弾性率の値を用いて測定することができる。
本フィルムの140℃における引張弾性率(E140)は、500MPa以上であることが好ましく、550MPa以上であることがより好ましく、600MPa以上であることが更に好ましい。引張弾性率(E140)の下限が500MPa以上であれば、耐熱性に優れる。一方、引張弾性率(E140)の上限は1500MPa以下であることが好ましく、1450MPa以下であることがより好ましく、1400MPa以下であることが更に好ましい。引張弾性率(E140)の上限が1500MPa以下であれば、二次加工性に優れる。
なお、140℃の引張弾性率(E140)は、23℃と同様に例えばJIS K7244-4:1999に準拠して、動的粘弾性測定の貯蔵弾性率の値を用いて測定することができる。
本フィルムの23℃における引張弾性率(E23)と140℃における引張弾性率(E140)の比(E140/E23)の下限は特に制限は無く、1に近いほど耐熱性に優れるため好ましいが、二次加工性の観点から0.50以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましく、0.60以上であることが更に好ましい。E140/E23の下限が0.50以上であれば、高温での弾性率が高すぎないため、音響部材用振動板として使用した際に二次加工性に優れる。一方、上限は3.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.6以下であることが更に好ましい。E140/E23の上限が3.0以下であれば、耐熱性に優れる。
本フィルムの23℃における耐折強度は1000回以上であることが好ましく、2000回以上であることがより好ましく、3000回以上であることが更に好ましく、4000回以上であることが特に好ましく、5000回以上であることがとりわけ好ましい。耐折強度が1000回以上であれば、耐久性に優れる。なお、耐折強度は、例えばJIS P8115に準拠して測定することができる。
本フィルムの23℃、50%RHにおける吸水率は2質量%以下であることが好ましく、1.8質量%以下であることがより好ましく、1.6質量%以下であることが更に好ましく、1.4質量%以下であることが特に好ましく、1.2質量%以下であることがとりわけ好ましい。吸水率が2質量%以下であれば、ポリアミド樹脂(A)は吸水率が十分に低いため、音響部材用振動板として使用した際に吸水による音質の変化の影響が小さい。吸水率の下限値は限定されず、通常0.01質量%以上である。なお、吸水率は、例えばJIS K7209:2000に準拠して測定することができる。
本フィルムの厚みの下限は、3μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、9μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが特に好ましく、50μm以上であることがとりわけ好ましい。厚みが3μm以上であれば、本フィルムは十分な剛性を有しており、音響部材用振動板として二次加工する際にハンドリング性に優れる。
一方、上限は、500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、350μm以下であることが特に好ましい。厚みが500μm以下であれば、省スペース化することができ、ひいてはスピーカーをはじめとした電気音響変換器を小型化することができる。
[製造方法]
本フィルムは、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形等によって製造することができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されないが、生産性や厚み制御の観点から、押出成形、特にTダイ法が好ましい。更に、本フィルムを真空成形、圧空成形等によって二次加工してもよい。
本発明のフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、フィルムの構成材料を、無延伸又は延伸フィルムとして得ることができ、二次加工性の観点から、無延伸フィルムとして得ることが好ましい。なお、無延伸フィルムとは、シートの配向を制御する目的で、積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法でキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムも含まれる。
無延伸フィルムの場合、例えば、各構成材料を溶融混練した後、押出成形し、冷却することにより製造することができる。溶融混練には、単軸又は二軸押出機等の公知の混練機を用いることができる。溶融温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整される。生産性等の観点から、溶融温度の下限は250℃以上が好ましく、より好ましくは260℃以上であり、さらに好ましくは270℃以上である。
一方、溶融温度の上限は350℃以下が好ましく、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは330℃以下である。溶融温度がかかる範囲であれば、樹脂の分解や架橋を抑制しつつ、十分に流動させることができる。成形は、例えば、Tダイ等の金型を用いた押出成形により行うことができる。
キャストロールの温度は50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。キャストロール温度が50℃以上であれば、フィルムとの密着性に優れ、急冷によるシワが入らない、外観良好なフィルムが得られる。
一方、キャストロールの温度の上限は250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが更に好ましい。キャストロールの温度の上限が250℃以下であれば、フィルムがロールに貼り付き、その後離れる際に生じる貼り付き跡も生じない、外観良好なフィルムが得られる。なお、キャストロールとフィルムとの密着性を向上させるために、タッチロールや電気密着装置を使用することが好ましい。
[用途・使用態様]
本発明のフィルムは、耐熱性や低吸水性に優れ、また、引張弾性率を特定の範囲とすることが出来るため、音響部材用振動板として好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
1.フィルムの製造
実施例及び比較例においては、以下の原料を用い、下記表1に示す配合組成のフィルムを製造した。
<ポリアミド樹脂(A)>
[A-1]
Rilsan Clear G350(アルケマ社製、テトラデカン二酸/4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)=50/50モル%、ガラス転移温度=145℃)
[A-2]
Grilamid TR-90NZ(エムスケミー社製、ドデカン二酸/4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)=50/50モル%、ガラス転移温度=153℃)
<ポリアミド樹脂(B)>
[B-1]
Rilsan Clear G170(アルケマ社製、テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)/ω-ラウロラクタム開環重合体=22/12/32/34モル%、ガラス転移温度=168℃)
(実施例1)
A-1を単体で使用し、Φ40mm単軸押出機に投入して混練しながら溶融させ、口金(Tダイ)から押出し、キャストロールに密着させ、単層フィルムを得た。この時、押出機、導管、口金(Tダイ)の温度は280℃とし、キャストロールの温度は120℃とした。得られた厚み100μmの単層フィルムについて、引張弾性率、耐折強度、吸水率の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
A-1/B-1=70/30(質量比)となるようにドライブレンドして使用した以外は実施例1と同様にフィルムの作製および評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
A-1/B-1=30/70(質量比)となるようにドライブレンドして使用した以外は実施例2と同様にフィルムの作製および評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
A-2を単体で使用した以外は実施例1と同様にフィルムの作製および評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
A-2/B-1=70/30(質量比)となるようにドライブレンドして使用した以外は実施例1と同様にフィルムの作製および評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
B-1を単体で使用した以外は実施例1と同様にフィルムの作製および評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
原料として、ポリアミド9T(Genestar N1000A、クラレ製、テレフタル酸/1,9-ノナンジアミン/2-メチル-1,8-オクタンジアミン=50/40/10(モル%)、ガラス転移温度=125℃、結晶融解温度=300℃)を単独で使用し、押出機、導管、口金(Tダイ)の温度を320℃とした以外は実施例1と同様にフィルムの作製および評価を行った。評価結果を表1に示す。
3.フィルムの評価
上記実施例及び比較例で製造した各フィルムは、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。ここで、フィルムの「縦」とは、Tダイからフィルム状の成形品が押し出されてくる方向を指し、また、フィルム面内でこれに直交する方向を「横」とする。
(1)引張弾性率(23℃)
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7244-4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーターDVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、引張速度5mm/minの条件で、横方向の23℃における引張弾性率を測定して、以下の基準で評価した。
○:引張弾性率が1000MPa~1500MPa(フィルムの剛性に優れるとともに、スピーカー等の振動板とした場合に、高音、低音の再現性に優れることを意味する)
×:引張弾性率が1000MPa未満、または1500MPaを超える(フィルムの剛性、スピーカー等の振動板とした場合の高音又は低音の再現性のうち、少なくとも何れかの特性が劣ることを意味する)
(2)引張弾性率(140℃)
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7244-4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーターDVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、引張速度5mm/minの条件で、横方向の140℃における引張弾性率を測定して、以下の基準で評価した。
○:引張弾性率が500MPa~1500MPa(耐熱性に優れるとともに、二次加工性が良好であることを意味する)
×:引張弾性率が500MPa未満、または1500MPaを超える(耐熱性、二次加工性のうち、少なくとも何れかの特性が劣ることを意味する)
(3)耐折強度
厚み100μmの各フィルムについて、JIS P8115に準拠して、MIT折曲疲労試験機(東洋精機工業株式会社製)を用いて、耐折強度を測定して、以下の基準で評価した。
○:耐折強度が1000回以上
×:耐折強度が1000回未満
(4)23℃における引張弾性率(E23)と140℃における引張弾性率(E140)の比(E140/E23
(1)と(2)の測定によって得られたそれぞれの値からE140/E23を算出し、以下の基準で評価した。
○:E140/E23が0.50以上3.0以下(耐熱性に優れるとともに、二次加工性が良好であることを意味する)
×:E140/E23が0.50未満、または、3.0を超える(耐熱性、二次加工性のうち、少なくとも何れかの特性が劣ることを意味する)
(5)吸水率
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7029:2000に準拠して、23℃×50%RHの条件で24時間保持した前後の重量変化から吸水率を測定し、以下の基準で評価した。
○:吸水率が2.0%以下
×:吸水率が2.0%を超える
Figure 0007310261000001
実施例1および実施例4で得られたフィルムは、ポリアミド樹脂(A)を単独で使用しているため、引張弾性率が好ましい範囲にあるだけでなく、耐折強度で評価した耐久性は優れた値を示した。従って、実施例1のフィルムを用いてなる音響部材用振動板は、幅広い音域の再現性と、高出力時の耐久性に優れるものとなる。また、E140/E23が1に近いことから、23℃から140℃までの弾性率変化が小さく、耐熱性や二次加工性に優れる。さらに、吸水率も十分に低いため、温度や湿度が音質に与える影響も小さい。
実施例2、実施例3および実施例5で得られたフィルムは、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)をブレンドして使用しているため、ポリアミド樹脂(A)の有する耐久性や低吸水性に大きな影響を与えることなく、耐熱性や弾性率が向上している。すなわち、実施例2および実施例3のフィルムを用いてなる音響部材用振動板は、耐熱性や高音の再現性に優れるものとなる。
一方、比較例1で得られたフィルムは、ポリアミド樹脂(B)を単独で使用しているため、耐熱性には優れるものの、23℃における引張弾性率が高すぎる上、耐折強度が低い。したがって、比較例1のフィルムを用いてなる音響部材用振動板は幅広い音域の確保が難しくなる上、高出力時の振動によって破壊されるおそれがある。
また、比較例2で得られたフィルムは、ポリアミド9Tを使用しているため、引張弾性率が高すぎる。したがって、比較例2のフィルムを用いてなる音響部材用振動板は幅広い音域の確保が難しくなる恐れがある。また、耐熱性が低いため、高出力時の高温環境下や、加工時の高温プロセスにおいて変形し、音質が変化するおそれがある。

Claims (12)

  1. ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成され、前記ジカルボン酸成分又は前記ジアミン成分のうち少なくとも何れかの主成分が脂環族化合物であるポリアミド樹脂(A)を含み、
    芳香族ジカルボン酸(b-1)を主成分とするジカルボン酸成分と、脂環族ジアミン(b-2)を主成分とするジアミン成分と、アミノカルボン酸(b-3)を主成分とする第三成分とから構成されるポリアミド樹脂(B)を更に含む、音響部材用フィルム。
  2. 前記脂環族化合物が、脂環式構造を少なくとも2つ有する請求項1に記載の音響部材用フィルム。
  3. 前記ジアミン成分が、脂環族ジアミンを主成分とする請求項1又は2に記載の音響部材用フィルム。
  4. 前記脂環族ジアミンが、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)および/または4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)である請求項3に記載の音響部材用フィルム。
  5. 前記ジカルボン酸成分が、脂肪族ジカルボン酸を主成分とする請求項1~4のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
  6. 前記脂環族ジアミン(b-2)が、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)および/または4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)である請求項1~5のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
  7. ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂(B)との混合質量比が、80/20~20/80である請求項1~6のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
  8. 23℃における引張弾性率(E23)が1000MPa以上、1500MPa以下である請求項1~のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
  9. 23℃における耐折強度が1000回以上である請求項1~のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
  10. 23℃における引張弾性率(E23)と140℃における引張弾性率(E140)の比(E140/E23)が0.50以上3.0以下である請求項1~のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
  11. 23℃、50%RHにおける吸水率が2%以下である請求項1~10のいずれかに記載の音響部材用フィルム。
  12. 請求項1~11のいずれかに記載の音響部材用フィルムを成形してなる音響部材用振動板。
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