JP7334418B2 - 電気音響変換器用振動板フィルムおよび電気音響変換器用振動板 - Google Patents

電気音響変換器用振動板フィルムおよび電気音響変換器用振動板 Download PDF

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Description

本発明は、ポリフェニルサルホンおよびポリエーテルエーテルケトンを含むフィルムで、特に電気音響変換器用振動板などとして好適に使用することができるフィルムに関する。
マイクロスピーカーに用いられる電気音響変換器用振動板は、高音域と低音域の再現性(音の再現性)を確保するため、引張弾性率が特定の範囲内であることが好ましい。また、近年の電気音響変換器用振動板は薄いフィルムを接着剤や粘着剤を介して何層にも重ねて使用することが多く、用いられるフィルムには薄膜化が求められている。その中で、フィルムが薄くても扱いやすくするため、高い引張弾性率(剛性)が必要となる。更に、電気音響変換器の高出力化に伴い、より破れにくく、耐久性の高い材料が必要となる。
ポリフェニルサルホンやポリエーテルエーテルケトン等に代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックは、耐熱性や気化特性に優れるため、電気音響変換器用振動板として好適に使用することができる。しかしながら、ポリフェニルサルホン単独では耐久性や耐衝撃性が低いため、高出力での使用に耐えられない。また、ポリエーテルエーテルケトン単独では引張弾性率が高すぎるため、幅広い音域の確保が難しい。すなわち、単独の樹脂を用いた振動板では、全ての要求特性(耐久性、音の再現性)を満たすことは困難であった。
特許文献1には、ポリフェニルサルホンとポリエーテルエーテルケトンとを主成分として含有するフィルムからなるスピーカー振動板が開示されており、成形性と高出力時の耐久性に優れる旨の記載がある。
特開2008-131239号公報
しかしながら、特許文献1に記載の振動板はポリエーテルエーテルケトンの結晶性が高いため、耐久性が不十分であった。
本発明は、このような状況下でなされたものであり、優れた耐久性、耐衝撃性、および、音の再現性を有する電気音響変換器用振動板フィルムを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得るフィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の課題は、ポリフェニルサルホンおよびポリエーテルエーテルケトンを含む樹脂組成物からなり、当該ポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度が288℃以下である電気音響変換器用振動板フィルムによって解決される。
本発明によれば優れた耐久性、耐衝撃性、および、音の再現性を有するフィルムを提供することが可能となる。
本発明のフィルム(以下、「該フィルム」と称することがある。)は、ポリフェニルサルホンおよびポリエーテルエーテルケトンを含む樹脂組成物からなる電気音響変換器用振動板フィルムである。以下、詳細に説明する。
[ポリフェニルサルホン]
本発明のフィルムはポリフェニルサルホンを含むことが重要である。ポリフェニルサルホンが含まれることによって、該フィルムを電気音響変換器用振動板として使用した場合に、高音と低音の再現性に優れる。
該フィルムに含まれるポリフェニルサルホンの割合としては、下限については50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。該フィルムに含まれるポリフェニルサルホンの割合の下限がかかる範囲であれば、該フィルムは音の再現性に優れる。一方、上限については90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。該フィルムに含まれるポリフェニルサルホンの割合の上限がかかる範囲であれば、該フィルムは耐久性に優れる。
本発明のフィルムに含まれるポリフェニルサルホンは、下記構造式(1)で表される繰り返し単位を有する。
Figure 0007334418000001
ポリフェニルサルホンの繰り返し単位の合計数(重合度)は、下限については10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、上限については1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。ポリフェニルサルホンの繰り返し単位の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、該フィルムは剛性と耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリフェニルサルホンのガラス転移温度は、下限については140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。一方、上限については、280℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、240℃以下であることが更に好ましい。ポリフェニルサルホンのガラス転移温度がかかる範囲であれば、本発明のフィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリフェニルサルホンは、公知の製法により製造することができるだけでなく、市販品を用いることもできる。市販品の例としては、ソルベイ社製「Radel」シリーズ、BASF社製「Ultrason P」シリーズ、UJU社製「Paryls F1000」シリーズ、HORAN社製「P200」「P300」等が挙げられる。
[ポリエーテルエーテルケトン]
本発明のフィルムは、ポリエーテルエーテルケトンを含むことが重要である。ポリエーテルエーテルケトンを含むことにより、該フィルムを電気音響変換器用振動板として使用した場合に、高出力時にも耐え得る耐久性を有する。
該フィルムに含まれるポリエーテルエーテルケトンの割合としては、下限については10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。該フィルムに含まれるポリエーテルエーテルケトンの割合の下限がかかる範囲であれば、該フィルムは耐久性に優れる。一方、上限については50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。該フィルムに含まれるポリエーテルエーテルケトンの割合の上限がかかる範囲であれば、該フィルムは音の再現性に優れる。
ポリエーテルエーテルケトンは、下記構造式(2)で表される繰り返し単位を有する。
Figure 0007334418000002
ポリエーテルエーテルケトンの繰り返し単位の合計数(重合度)は下限については、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、上限については500以下であることが好ましく100以下であることがより好ましい。前記ポリエーテルエーテルケトンの繰り返し単位の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、該フィルムは耐熱性や耐衝撃性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度は、288℃以下であることが重要であり、287℃以下であることが好ましく、286℃以下であることがより好ましい。ポリエーテルエーテルケトンのような結晶性材料は、溶融状態から冷却固化してフィルムに成形する際、急冷した場合でも、僅かながら結晶化が進行する。結晶化すると、結晶が起点となってフィルムが破れやすくなるため、耐久性、耐衝撃性が低下する。降温過程における結晶化温度がかかる範囲であれば、結晶化が十分に遅いため、フィルムの製造工程におけるポリエーテルエーテルケトンの結晶化が抑制され、ひいては耐久性、耐衝撃性に優れたフィルムが得られる。
なお、降温過程における結晶化温度は、JIS K7121:2012に準拠して、400℃から室温までの降温過程における結晶化ピーク温度を算出することによって求めることができる。
ポリエーテルエーテルケトンの380℃、せん断速度1216sec-1における溶融粘度は、下限については500Pa・s以上であることが好ましく、550Pa・s以上であることがより好ましく、600Pa・s以上であることが更に好ましい。樹脂材料においては、一般に溶融粘度の高さは分子量の高さとみることができる。分子量が高くなると、分子鎖の絡み合いが増すため、衝撃に強くなり、耐久性、耐衝撃性を向上することができる。一方、溶融粘度の上限としては800Pa・s以下であることが好ましく、750Pa・s以下であることがより好ましく、700Pa・s以下であることが更に好ましい。溶融粘度がかかる範囲であれば、十分な流動性を有し、溶融成形が可能となる。
なお、380℃、せん断速度1216sec-1における溶融粘度は、JIS K7199:1999に準拠して、キャピラリーレオメータを用いて測定することができる。
ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度は、下限については300℃以上であることが好ましく、315℃以上であることがより好ましく、330℃以上であることが更に好ましい。一方、上限については、400℃以下であることが好ましく、380℃以下であることがより好ましく、360℃以下であることが更に好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度がかかる範囲であれば、該フィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量は、下限については20J/g以上であることが好ましく、25J/g以上であることがより好ましく、30J/g以上であることが更に好ましい。結晶融解熱量の下限がかかる範囲であれば、該フィルムは耐熱性に優れる。一方、上限については45J/g以下であることが好ましく、40J/g以下であることがより好ましく、35J/g以下であることが更に好ましい。結晶融解熱量の大きさは結晶性の高さを表しており、結晶性が高いほどフィルムの耐久性や耐衝撃性は低下する傾向にある。結晶融解熱量の上限がかかる範囲であれば、該フィルムは耐久性や耐衝撃性に優れる。また、結晶融解熱量の上限がかかる範囲であれば、ポリエーテルエーテルケトンを溶融させるのに必要なエネルギーが少なくて済むため、該フィルムは溶融成形性に優れる。
ポリエーテルエーテルケトンのガラス転移温度は、下限については、120℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましい。一方、上限については、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。ポリエーテルエーテルケトンのガラス転移温度がかかる範囲であれば、該フィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルエーテルケトンは、公知の製法により製造することができるだけでなく、市販品を用いることもできる。市販品の例としては、例えば、ビクトレックス社製「VICTREX PEEK」シリーズ、ソルベイ社製「KetaSpire」シリーズ、ダイセル・エボニック社製「VESTAKEEP」シリーズ等が挙げられる。
[電気音響変換器用振動板フィルム]
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムは、ポリフェニルサルホンおよびポリエーテルエーテルケトンを含む樹脂組成物からなる。ポリフェニルサルホンは引張弾性率が特定の範囲内にあるため、電気音響変換器用振動板として使用した場合に幅広い音域に対応することができる。一方、ポリエーテルエーテルケトンは耐久性に優れるため、電気音響変換器用振動板として使用した場合に高出力時にも耐え得る。該フィルムは、これらの樹脂成分が含まれることにより、耐久性、耐衝撃性、および、音の再現性に優れる。
該フィルムに含まれるポリフェニルサルホンとポリエーテルエーテルケトンの混合質量比は、90/10~50/50であることが好ましく、85/15~55/45であることがより好ましく、80/20~60/40であることが更に好ましい。ポリフェニルサルホンとポリエーテルエーテルケトンの混合質量比がかかる範囲であれば、該フィルムは耐久性、耐衝撃性、および、音の再現性に優れる。
23℃における該フィルムの引張弾性率は2000MPa~2500MPaであることが好ましく、2100MPa~2400MPaであることがより好ましい。該フィルムの引張弾性率がかかる範囲であれば、幅広い音域の再現性に優れると共に、薄膜でも扱いやすい剛性を有する。なお、引張弾性率は、例えばJIS K7161-1:2014に準拠して測定することができる。
厚み100μm、23℃における該フィルムの耐折強度は2000回以上であることが好ましく、4000回以上であることがより好ましく、6000回以上であることが更に好ましい。該フィルムの耐折強度がかかる範囲であれば、高出力時にも耐え得る耐久性を有する。なお、耐折強度は、例えばJIS P8115に準拠して測定することができる。
厚み100μm、23℃における該フィルムのパンクチャー衝撃強度は3.0J以上であることが好ましく、3.1J以上であることがより好ましく、3.2J以上であることが更に好ましい。該フィルムのパンクチャー衝撃強度がかかる範囲であれば、高出力時にも耐え得る耐衝撃性を有する。なお、パンクチャー衝撃強度は、例えばJIS K7211-1:2006に準拠して測定することができる。
該フィルムは、ポリエーテルエーテルケトンが完全に結晶化していない状態でもよく、結晶化している状態でも良いが、耐久性、耐衝撃性をより向上させるため、完全に結晶化していない状態であることが好ましい。完全に結晶化していないとは、該フィルムの示差走査熱量測定(DSC)の昇温過程において発熱ピークが発現する状態を意味する。該フィルムにおけるDSC昇温過程の発熱ピーク面積から算出される結晶化熱量は、1J/g以上であることが好ましく、2J/g以上であることがより好ましく、3J/g以上であることが更に好ましく、4J/g以上であることが特に好ましく、5J/g以上であることがとりわけ好ましい。ポリフェニルサルホンは非晶性の樹脂であるため、該フィルムにおけるDSC昇温過程の発熱ピーク面積から算出される結晶化熱量は、実質的に該フィルムに含まれるポリエーテルエーテルケトンの結晶化熱量を表しており、これが上記範囲である場合、ポリエーテルエーテルケトンは完全に結晶化しておらず、結果として該フィルムは耐久性、耐衝撃性に優れる。
該フィルムの厚みは、下限としては、3μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、9μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが特に好ましく、50μm以上であることがとりわけ好ましい。厚みが3μm以上であれば、該フィルムは十分な剛性を有しており、電気音響変換器用振動板として二次加工する際にハンドリング性に優れる。
一方、上限としては、500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、350μm以下であることが特に好ましい。厚みが500μm以下であれば、省スペース化することができ、ひいては電気音響変換器を小型化することができる。
該フィルムは、ポリフェニルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、他の樹脂成分が含まれていてもよい。他の樹脂成分として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、脂肪族ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルイミドサルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマー、またはこれらの共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。他の樹脂成分を更に含む場合、下限としては0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、3質量%以上であることがとりわけ好ましい。上限としては10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることがとりわけ好ましい。他の樹脂成分を更に含む場合、その含有割合がかかる範囲であれば、本発明の効果を維持したまま適宜必要な効果を付与することができる。
なお、該フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の各種添加剤が含まれていてもよい。
[製造方法]
該フィルムは、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって製造することができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されないが、生産性や厚み制御の観点から、押出成形、特にTダイ法が好ましい。
本発明のフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、フィルムの構成材料を、無延伸又は延伸フィルムとして得ることができ、二次加工性の観点から、無延伸フィルムとして得ることが好ましい。なお、無延伸フィルムとは、シートの配向を制御する目的で、積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法でキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムも含まれる。
無延伸フィルムの場合、例えば、各構成材料を溶融混練した後、押出成形し、冷却することにより製造することができる。溶融混練には、単軸又は二軸押出機等の公知の混練機を用いることができる。溶融温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、生産性等の観点から、下限については320℃以上であることが好ましく、より好ましくは340℃以上であり、350℃以上であることが更に好ましく、360℃以上であることが特に好ましい。
一方、上限については450℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましく、390℃以下であることが更に好ましい。溶融温度がかかる範囲であれば、樹脂の分解や架橋を抑制しつつ、十分に流動させることができる。成形は、例えば、Tダイ等の金型を用いた押出成形により行うことができる。
キャストロールの温度は、下限については50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましい。キャストロール温度の下限がかかる範囲であれば、フィルムとの密着性に優れ、急冷によるシワが入らない、外観良好なフィルムが得られる。
一方、上限については250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることが更に好ましい。キャストロールの温度の上限がかかる範囲であれば、フィルムがロールに貼り付き、その後離れる際に生じる貼り付き跡も生じない、外観良好なフィルムが得られる。また、ポリエーテルエーテルケトンの結晶化を抑制し、ひいては耐久性、耐衝撃性に優れたフィルムが得られる。なお、キャストロールとフィルムとの密着性を向上させるために、タッチロールを使用することが好ましい。
[用途・使用態様]
本発明のフィルムは、耐熱性に優れ、引張弾性率が特定の範囲にある。このため、該フィルムを成形して電気音響変換器用振動板として好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
1.フィルムの製造
実施例及び比較例においては、以下の原料を用い、下記表1に示す配合組成のフィルムを製造した。
<ポリフェニルサルホン>
・Ultrason P3010N(BASF社製、(1)の繰り返し単位、ガラス転移温度=217℃)
<ポリエーテルエーテルケトン>
・KetaSpire KT-810NT(Solvay社製、(2)の繰り返し単位、結晶融解温度=334℃、結晶融解熱量=34J/g、ガラス転移温度=150℃、降温過程における結晶化温度=285℃、380℃・せん断速度1216sec-1における溶融粘度=650Pa・s)
・VESTAKEEP 5000G(ダイセル・エボニック社製、(2)の繰り返し単位、結晶融解温度=337℃、結晶融解熱量=42J/g、ガラス転移温度=148℃、降温過程における結晶化温度=289℃、380℃・せん断速度1216sec-1における溶融粘度=590Pa・s)
・VICTREX PEEK 450G(ビクトレックス社製、(2)の繰り返し単位、結晶融解温度=339℃、結晶融解熱量=40J/g、ガラス転移温度=151℃、降温過程における結晶化温度=295℃、380℃・せん断速度1216sec-1における溶融粘度=420Pa・s)
(実施例1)
ポリフェニルサルホンとしてUltrason P3010Nを70質量%、ポリエーテルエーテルケトンとしてKetaSpire KT-810NTを30質量%となるように原料ペレットをドライブレンドした。ブレンド後の原料をΦ40mm単軸押出機に投入して混練しながら溶融させ、口金(Tダイ)から押出し、キャストロールに密着させ、単層フィルムを得た。この時、押出機、導管、口金(Tダイ)の温度は380℃とし、キャストロールの温度は120℃とした。得られた厚み100μmの単層フィルムについて、引張弾性率、耐折強度、パンクチャー衝撃強度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリエーテルエーテルケトンとして、KetaSpire KT-810NTの代わりにVESTAKEEP 5000Gを使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
ポリエーテルエーテルケトンとして、KetaSpire KT-810NTの代わりにVICTREX PEEK450Gを使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
原料として、ポリフェニルサルホンであるUltrason P3010Nを単独で使用し、キャストロールの温度を200℃とした以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例4)
原料として、ポリエーテルエーテルケトンであるKetaSpire KT-810NTを単独で使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
2.樹脂原料の評価
上記実施例、比較例及び参考例で使用した樹脂原料は、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。
(1)結晶化温度
樹脂ペレットについて、JIS K7121:2012に準拠して、示差走査熱量計(パーキンエルマージャパン社製「Diamond DSC」)を用いて、400℃から室温まで、冷却速度10℃/分で降温過程における樹脂ペレットの結晶化温度を測定した。
(2)溶融粘度
樹脂ペレットについて、JIS K7199:1999に準拠して、キャピラリーレオメータ(キャピログラフ1D型、東洋精機製作所社製)を用いて、380℃、せん断速度1216sec-1における溶融粘度を測定した。
3.フィルムの評価
上記実施例、比較例及び参考例で製造した各フィルムは、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。ここで、フィルムの「縦」とは、Tダイからフィルム状の成形品が押し出されてくる方向を指し、また、フィルム面内でこれに直交する方向を「横」とする。
(1)引張弾性率
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7161:2014-1に準拠して、「引張圧縮試験機205型」(インテスコ社製)を用い、引張速度5mm/minの条件で、23℃における引張弾性率を測定して、以下の基準で評価した。
○:引張弾性率が2000MPa~2500MPa
×:引張弾性率が2000MPa未満、または2500MPaを超える
(2)耐折強度
厚み100μmの各フィルムについて、JIS P8115に準拠して、MIT折曲疲労試験機(東洋精機)を用いて、耐折強度を測定して、以下の基準で評価した。
○:耐折強度が2000回以上
×:耐折強度が2000回未満
(3)パンクチャー衝撃強度
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7124-2:1999に準拠して、高速パンクチャー衝撃試験機ハイドロショット HITS-P10(島津製作所)を用いて、23℃の温度環境下で、打ち抜き径0.5インチ、試験速度3m/secの条件で測定して、以下の基準で評価した。
○:パンクチャー衝撃強度が3.0J以上
×:パンクチャー衝撃強度が3.0J未満
Figure 0007334418000003
実施例1で得られたフィルムは、ポリフェニルサルホンとポリエーテルエーテルケトンとが最適な配合質量比で含まれており、かつ、ポリエーテルエーテルケトンの結晶化温度及び溶融粘度が最適な範囲にあるため、引張弾性率が好ましい範囲にあるだけでなく、耐折強度で評価した耐久性、及びパンクチャー衝撃強度で評価した耐衝撃性も優れた値を示した。従って、実施例1のフィルムを用いてなる電気音響変換器用振動板は、幅広い音域の再現性と、高出力時の耐久性、耐衝撃性に優れるものとなる。
一方、比較例1で得られたフィルムは、ポリフェニルサルホンとポリエーテルエーテルケトンとが最適な配合質量比で含まれており、かつ、ポリエーテルエーテルケトンの溶融粘度も最適な範囲にあるものの、ポリエーテルエーテルケトンの結晶化温度が高い、すなわち結晶化が速いため、フィルムの製造工程で結晶化が進行したと考えられる。その結果として、耐折強度で評価したフィルムの耐久性が低くなった。従って、比較例1のフィルムを用いてなる電気音響変換器用振動板は、高出力時の振動によって破壊される恐れがある。
また、比較例2で得られたフィルムは、ポリフェニルサルホンとポリエーテルエーテルケトンとが最適な配合比で含まれているものの、ポリエーテルエーテルケトンの結晶化温度が高く、また、溶融粘度が低いため、耐折強度で評価した耐久性、及びパンクチャー衝撃強度で評価した耐衝撃性が低くなった。従って、比較例2のフィルムを用いてなる電気音響変換器用振動板は、高出力時の振動によって破壊される恐れがある。
比較例3で得られたフィルムは、ポリフェニルサルホンを単独で使用したため、耐折強度で評価した耐久性、及びパンクチャー衝撃強度で評価した耐衝撃性が低くなった。従って、比較例3のフィルムを用いてなる電気音響変換器用振動板は、高出力時の振動によって破壊される恐れがある。
比較例4で得られたフィルムは、ポリエーテルエーテルケトンを単独で使用したため、引張弾性率の値がかなり高くなった。従って、本参考例のフィルムを用いてなる電気音響変換器用振動板は、幅広い音域の確保が難しくなる恐れがある。また、比較例4はポリエーテルエーテルケトンを単独で使用したにも関わらず、実施例1よりもパンクチャー衝撃強度が低くなっている。このことから、ポリフェニルサルホンとポリエーテルエーテルケトンとをブレンドすることにより、パンクチャー衝撃強度で評価した耐衝撃性が向上できることが分かる。

Claims (7)

  1. ポリフェニルサルホンおよびポリエーテルエーテルケトンを含む樹脂組成物からなり、当該ポリエーテルエーテルケトンの降温過程における結晶化温度が286℃以下であり、
    前記ポリエーテルエーテルケトンの380℃、せん断速度1216sec -1 における溶融粘度が600Pa・s以上、700Pa・s以下であり、
    前記ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量が、30J/g以上、35J/g以下である電気音響変換器用振動板フィルム。
  2. 前記ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度が、300℃以上、400℃以下である、請求項1に記載の電気音響変換器用振動板フィルム。
  3. ポリフェニルサルホンとポリエーテルエーテルケトンとの混合質量比が、90/10~50/50である請求項1または2に記載の電気音響変換器用振動板フィルム。
  4. 23℃における引張弾性率が2000MPa~2500MPaである請求項1~3のいずれかに記載の電気音響変換器用振動板フィルム。
  5. 厚み100μm、23℃における耐折強度が2000回以上である請求項1~4のいずれかに記載の電気音響変換器用振動板フィルム。
  6. 厚み100μm、23℃におけるパンクチャー衝撃強度が3.0J以上である請求項1~5のいずれかに記載の電気音響変換器用振動板フィルム。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の振動板フィルムを成形してなる電気音響変換器用振動板。
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