JP2020089995A - 積層フィルム - Google Patents

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真保 蓮池
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Abstract

【課題】 剛性と耐熱性、耐衝撃性に優れた積層フィルムを提供すること。【解決手段】 相対結晶化度が50%以下であるポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層と、ポリエーテルイミドを主成分とするB層を含み、該A層を両最外層に備えた積層フィルムであって、積層フィルムに占める前記A層の厚みの割合が、10%以上50%未満である積層フィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、スーパーエンジニアリングプラスチックを用いた積層フィルムに関し、特にスピーカー振動板などとして好適に使用する事ができるフィルムに関する。
近年、スピーカー振動板の更なる高出力化に対応するために、高音(高周波)で使用した際に破れにくい耐衝撃性や、変形しにくい耐熱性が求められている。また、近年のスピーカー振動板は薄いフィルムを接着剤や粘着剤を介して何層にも重ねて使用する事が多く、用いられるフィルムには一層の薄膜化が求められている。その中で、薄くても扱いやすい剛性が必要となる。さらに、高音の再生性に優れるという点からも、高い弾性率(剛性)が求められる。
ポリエーテルイミドやポリエーテルエーテルケトン等に代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックは、剛性や耐熱性、耐衝撃性に優れるため、スピーカー振動板として好適に使用する事ができる。しかしながら、単独の樹脂では、上記の全ての要求特性を満たす事は困難であった。
特許文献1には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂の積層フィルムが開示されており、当該フィルムは、耐薬品性と耐衝撃性に優れることが開示されている。
特許文献2には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂、無機充填剤のブレンド物が開示されており、このブレンド物により耐熱性と屈曲性を両立できることが開示されている。
特開昭62−148260号公報 特開昭62−149436号公報
しかしながら、特許文献1に記載の積層フィルムの詳細条件については明らかにされていない。
また、特許文献2に記載のブレンド物は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂の相溶系であるために、それぞれの単独特性を損なう方向に物性が変化してしまうことが予想される。
本発明は、このような状況下でなされたものであり、剛性と耐熱性、耐衝撃性に優れた積層フィルムを提供する事を目的とするものである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得る積層フィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の課題は、相対結晶化度が50%以下であるポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層と、ポリエーテルイミドを主成分とするB層を含み、該A層を両最外層に備えた積層フィルムであって、積層フィルムに占める前記A層の厚みの割合が、10%以上50%未満である積層フィルムによって解決される。
本発明によれば剛性と耐熱性、耐衝撃性に優れた積層フィルムを提供することが可能となる。
本発明の積層フィルム(以下、「本フィルム」と称することがある。)は、相対結晶化度が50%以下であるポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層と、ポリエーテルイミドを主成分とするB層を含み、該A層を両最外層に備えた積層フィルムであって、積層フィルムに占める前記A層の厚みの割合が、10%以上50%未満である積層フィルムである。
以下、詳細を説明する。
[積層フィルム]
本フィルムは、相対結晶化度が50%以下であるポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層と、ポリエーテルイミドを主成分とするB層を含み、該A層を両最外層に備えた積層フィルムである。このような構成にする事で、本フィルムは剛性と耐熱性、耐衝撃性のバランスに優れたものにできる。
本フィルムの層構成は、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層を(A)、ポリエーテルイミドを主成分とするB層を(B)、その他の層を(C)とした場合、(A)/(B)/(A)のような2種3層構成、(A)/(B)/(C)/(A)のような3種4層構成、(A)/(B)/(A)/(B)/(A)のような2種5層構成、(A)/(B)/(C)/(B)/(A)、(A)/(C)/(B)/(C)/(A)のような3種5層構成等のいずれであってもよい。
ここで、層(C)の例としては、接着層が挙げられ、一般的に使用されるホットメルト系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤等が使用できる。
上記の層構成の中でも、A層を両最外層に備え、B層を中間層に備えた2種3層の積層構造であることが好ましい。ポリエーテルエーテルケトンとポリエーテルイミドは、上記のように互いに相溶系または部分相溶系であるため、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層とポリエーテルイミドを主成分とするB層との層間に、接着層を介さず、直接接着したとしても、強固な層間接着強度が得られるからである。
本フィルムに占めるA層の厚みの割合が、10%以上50%未満であることが重要である。下限については15%以上が好ましく、18%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。上限については45%未満が好ましく、40%未満がより好ましく、35%未満がさらに好ましい。本フィルムに占めるA層の厚みの割合がかかる範囲であれば、本フィルムは、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とする層の厚みが十分なため耐衝撃性に優れ、さらに、ポリエーテルイミドを主成分とする層の厚みが十分なため剛性と耐熱性に優れる。
本フィルムは、JIS K7244−4:1999に準拠して測定した、23℃における引張弾性率が2300MPa以上2900MPa未満である事が好ましく、2350MPa以上2850MPa未満である事がより好ましく、2400MPa以上2800MPa未満である事がさらに好ましく、2450MPa以上2750MPa未満である事が特に好ましく、2500MPa以上2700MPa未満である事がとりわけ好ましい。本フィルムの23℃における引張弾性率がかかる範囲であれば、スピーカー振動板として使用した際に高音と低音の再生性のバランスに優れる。また、近年のスピーカー振動板は薄いフィルムを接着剤や粘着剤を介して何層にも重ねて使用する事が多く、用いられるフィルムには一層の薄膜化が求められている。その中で、薄くても扱いやすい剛性を有するフィルムが得られる。A層とB層の割合を調整することにより、23℃における引張弾性率を最適な範囲に設定することができる。
本フィルムは、JIS K7244−4:1999に準拠して測定した、160℃における引張弾性率が500MPa以上であることが好ましく、600MPa以上であることがより好ましく、700MPa以上であることがさらに好ましく、800MPa以上であることが特に好ましく、1000MPa以上であることがとりわけ好ましい。本フィルムの160℃における引張弾性率がかかる範囲であれば、高温時の耐熱性に優れる。ガラス転移温度が高く、高温時の耐熱性に優れるポリエーテルイミドを中間層に備えることにより、160℃における引張弾性率を高く調整することができる。
本フィルムは、JIS K7124−2:1999に準拠して測定した、厚み100μmにおけるパンクチャー衝撃強度が1.5J以上であることが好ましく、1.6J以上であることがより好ましく、1.7J以上であることがさらに好ましく、1.8J以上である事が特に好ましく、2.0J以上であることがとりわけ好ましい。本フィルムの厚み100μmにおけるパンクチャー衝撃強度がかかる範囲であれば、例えばモーター絶縁紙として使用した際に、モーターコアへの挿入時や、折り曲げ二次加工時の破断を防止する事ができる。
また、スピーカー振動板として使用した際に、高出力時にも破れにくくすることができる。パンクチャー衝撃強度に優れるポリエーテルエーテルケトンを両最外層に備えることにより、積層フィルムのパンクチャー衝撃強度を高く調整することができる。
本フィルムの厚みは下限としては、3μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、9μm以上であることがさらに好ましく、20μm以上であることが特に好ましく、50μm以上である事がとりわけ好ましい。い。一方、上限としては、500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましく、350μm以下であることが特に好ましい。厚みが3μm以上であれば、本フィルムは十分な剛性を有しており、例えばモーター絶縁紙やスピーカー振動板として二次加工する際に扱いやすい。また、厚みが500μm以下であれば、例えばモーター絶縁紙として使用する際にはモーターコアに挿入するコイル密度を上げることができ、ひいてはモーター効率を高く維持することができる。また、スピーカー振動板として使用する際には省スペース化する事ができ、ひいてはスピーカー小型化することができる。
なお、本フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の各種添加剤が含まれていてもよい。
[A層]
本発明において、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層は、ポリエーテルエーテルケトンが50質量%以上を占める層である。ポリエーテルエーテルケトンが60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。100質量%がポリエーテルエーテルケトンであることがとりわけ好ましい。ポリエーテルエーテルケトン層について、ポリエーテルエーテルケトンがかかる割合で占めることにより、本フィルムは耐衝撃性に優れたものとなる。
A層中のポリエーテルエーテルケトンの相対結晶化度は50%以下である事が重要であり、48%以下であることが好ましく、46%以下であることがより好ましく、44%以下であることがさらに好ましく、42%以下であることが特に好ましく、40%以下である事がとりわけ好ましい。
一般に、結晶性高分子材料においては、結晶化度が高い場合、結晶化度が低い場合に比べて、耐衝撃性が低下する。具体的には、外部から衝撃を与えた際に、球晶が起点となってクレーズを生じ、その後クラックへと伸展し、最終的に破断に至りやすくなる。A層中のポリエーテルエーテルケトンの相対結晶化度がかかる範囲であれば、ポリエーテルエーテルケトンの耐衝撃性を高いレベルで維持する事ができる。
また、近年、スピーカー振動板としては、低音の再生性を向上するために剛性(弾性率)がある程度低い事が求められる傾向にある。剛性の低い、相対結晶化度50%以下のポリエーテルエーテルケトンを積層する事で、フィルム全体の剛性を調整する事ができる。
なお、本発明において、相対結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を用いてJIS K7121:2012に準拠して測定するものである。以下、ガラス転移温度や結晶融解温度、結晶融解熱量、結晶化温度、結晶化熱量等の熱的パラメーターは、全てこの規格に準拠して測定するものである。
相対結晶化度の測定方法は、上記規格に準拠していれば特に限定されないが、一例としては、本発明の積層フィルムについて室温から380℃まで、10℃/分の速度で昇温し、ポリエーテルエーテルケトンの結晶化時の発熱ピーク面積とポリエーテルエーテルケトンの結晶融解時の吸熱ピーク面積から、結晶化熱量ΔHcと結晶融解熱量ΔHmを算出する。これらを用いて、以下の式から相対結晶化度を算出する。
相対結晶化度(%)={(|ΔHm|−|ΔHc|)/ΔHm}×100
一方、B層にポリエーテルエーテルケトンをさらに含む場合、最外層のポリエーテルエーテルケトンのみの相対結晶化度を正確に測定する事が難しいため、積層フィルムにおけるポリエーテルイミド層のガラス転移温度の測定方法は、例えば、斜め切削装置SAICAS(ダイプラ・ウィンテス社製、DN−20S型)等を用いてA層を切削し、示差走査熱量測定(DSC)を用いる事で測定する事ができる。
A層に含まれるポリエーテルエーテルケトンは、下記構造式(1)で表される繰り返し単位(a−1)を有する。繰り返し単位(a−1)は、2つのエーテル基及び1つのケトン基を有している。
Figure 2020089995
A層に含まれるポリエーテルエーテルケトンの繰り返し単位(a−1)の合計数(重合度)は下限については、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、上限については500以下であることが好ましく100以下であることがより好ましい。前記ポリエーテルエーテルケトンの繰り返し単位(a−1)の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、本発明の積層フィルムは耐熱性や耐衝撃性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
A層に含まれるポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量は、下限については、20J/g以上であることが好ましく、25J/g以上であることがより好ましく、30J/g以上であることがさらに好ましい。一方、上限については、60J/g以下であることが好ましく、55J/g以下であることがより好ましく、50J/g以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解熱量がかかる範囲であれば、本発明の積層フィルムは耐熱性に優れる上、溶融成形時に与える熱エネルギーが小さくて済むので、溶融成形性に優れる。
A層に含まれるポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度は、下限については、300℃以上であることが好ましく、320℃以上であることがより好ましく、340℃以上であることがさらに好ましい。一方、上限については、400℃以下であることが好ましく、380℃以下であることがより好ましく、360℃以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルエーテルケトンの結晶融解温度がかかる範囲であれば、本発明の積層フィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
A層に含まれるポリエーテルエーテルケトンのガラス転移温度は、下限については、120℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましい。一方、上限については、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。ポリエーテルエーテルケトンのガラス転移温度がかかる範囲であれば、本発明の積層フィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルエーテルケトンは、公知の製法により製造することができ、さらに、市販品を用いることもできる。市販品の例としては、例えば、ビクトレックス社製「VICTREX PEEK」シリーズ、ソルベイ社製「KetaSpire」シリーズ、ダイセル・エボニック社製「VESTAKEEP」シリーズ等が挙げられる。
[B層]
本発明において、ポリエーテルイミドを主成分とするB層は、ポリエーテルイミドが50質量%以上を占める層である。ポリエーテルイミドが60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。ポリエーテルイミド層について、ポリエーテルイミドをかかる割合で含む事により、本発明の積層フィルムは剛性と耐熱性に優れる。
B層に含まれるポリエーテルイミドは、下記構造式(2)で表される繰り返し単位(b−1)、または、下記構造式(3)で表される繰り返し単位(b−2)を有する。
Figure 2020089995
Figure 2020089995
一般的に、ポリエーテルイミドは、結合様式の違い、すなわち、メタ結合とパラ結合の違いによって構造が分類され、それぞれ機械特性や耐熱性が異なる。また、ポリエーテルエーテルケトンとブレンドした際に、構造式(2)で表されるポリエーテルイミドは相溶系である一方、構造式(3)で表されるポリエーテルイミドは部分相溶系である事が知られている。
ポリエーテルイミドの繰り返し単位(b−1)または(b−2)の合計数(重合度)は、下限については10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、上限については1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。ポリエーテルイミドの繰り返し単位(b−1)または(b−2)の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、本発明の積層フィルムは剛性と耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルイミドのガラス転移温度は、下限については140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。一方、上限については、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることがさらに好ましい。ポリエーテルイミドのガラス転移温度がかかる範囲であれば、本発明の積層フィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
B層は、ポリエーテルエーテルケトンを含んでもよい。ポリエーテルイミド層がポリエーテルエーテルケトンを1質量%以上、30質量%以下の割合で含むことが好ましい。下限については2質量%以上含まれることがより好ましく、5質量%以上含まれることがさらに好ましく、10質量%以上含まれることが特に好ましい。一方、上限については29質量%以下含まれることがより好ましく、28質量%以下含まれることがさらに好ましく、25%質量%以下含まれることが特に好ましい。
ポリエーテルエーテルケトンとポリエーテルイミドは互いに相溶系、または部分相溶系であるので、混合した場合は、相分離しない、または相分離しても微分散している状態にある。従って、ポリエーテルエーテルケトンとポリエーテルイミドを混合することによって、相界面に起因する機械特性の低下を引き起こす事が無い。それどころか、B層がポリエーテルエーテルケトンを1質量%以上の割合で含むことにより、B層の耐溶剤に対する耐クラック性や耐衝撃性を向上することができる。また、B層がポリエーテルエーテルケトンを30質量%以下の割合で含むことにより、ポリエーテルイミド層の引張弾性率やガラス転移温度を高いレベルで維持することができ、ひいては剛性や耐熱性を維持する事ができる。
また、近年、スピーカー振動板としては、低音の再生性を向上するために剛性(弾性率)がある程度低い事が求められる傾向にある。ポリエーテルイミドと比べて剛性の低いポリエーテルエーテルケトンを含む事で、フィルム全体の剛性を調整する事ができる。
ポリエーテルイミドは、公知の製法により製造する事ができる。また、市販品を用いる事も出来る。市販品の例としては、サビック社製「Ultem」シリーズが挙げられる。
[製造方法]
本フィルムは、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって製造することができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されないが、生産性や厚み制御の観点から、押出成形、特に、Tダイ法が好ましい。
本発明の積層フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、フィルムの構成材料を、無延伸又は延伸フィルムとして得る事ができ、二次加工性の観点から、無延伸フィルムとして得る事が好ましい。なお、無延伸フィルムとは、シートの配向を制御する目的で、積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法でキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムも含まれる。
無延伸フィルムの場合、例えば、各構成材料を溶融混練した後、押出成形し、冷却する事により製造する事ができる。溶融混練には、単軸又は二軸押出機等の公知の混練機を用いる事ができる。溶融温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、生産性等の観点から、320℃以上である事が好ましく、より好ましくは330℃以上である。また、400℃以下である事が好ましく、より好ましくは380℃以下である。成形は、例えば、Tダイ等の金型を用いた押出成形により行う事ができる。
積層フィルムを製造する場合は、各層の樹脂組成物を共押出して積層する共押出法、各層をフィルム状に形成し、これをラミネートする押出ラミネート法、各層をフィルム状に形成し、これらを熱圧着する熱圧着法のいずれを用いて成形しても良いが、生産性の観点から、共押出法で成形することが好ましい。共押出法には、口金で各層の樹脂組成物が合流するマルチマニホールド法、フィードブロックで合流するフィードブロック法等があるが、いずれを用いても良い。
本フィルムは、最外層のA層中のポリエーテルエーテルケトンの相対結晶化度を50%以下にすることが重要である。すなわち、結晶化が進行しないよう、積極的に冷却処理を施す必要がある。溶融したポリエーテルエーテルケトンは、溶融状態から温度が低下し、結晶化温度に到達すると結晶化を開始する。Tダイ法の場合、溶融状態で口金から出てきたポリエーテルエーテルケトンが結晶化温度に到達する前にキャストロールに接触させて直ちに冷却し、固化させる。この際のキャストロールの温度は50℃以上、200℃以下である事が好ましく、100℃以上、150℃以上である事がより好ましく、120℃以上、140℃以下である事がさらに好ましい。冷却時の温度が50℃以上であれば、急冷に伴う収縮シワを生じる事が無く、外観に優れたフィルムが得られる。また、冷却時の温度が200℃以下であれば、キャストロールへの貼り付きが抑制され、ひいては厚み精度やフィルム外観が好ましいものとなる。
[用途・使用態様]
本発明の積層フィルムは、耐熱性と耐衝撃性に優れるため、家電製品やオーディオ機器、IT機器、通信機器、OA機器、医療機器、ヘルスケア機器、業務用機器、産業機器、自動車・鉄道・船舶等の輸送機器等向けのモーター用絶縁フィルム、または、携帯電話、PDA、ノートブックコンピューター、DVD、液晶TV、デジタルカメラ、携帯音楽機器向けのスピーカー振動板としてに好適に使用できる。具体的には、本フィルムを備えたスピーカー振動板とすることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
1.フィルムの製造
実施例及び比較例においては、以下の原料を用い、下記表1に示す配合組成のフィルムを製造した。
<ポリエーテルエーテルケトン>
(A)−1:VESTAKEEP 3300G(ダイセル・エボニック社製、(a−1)の繰り返し単位、結晶融解熱量=41J/g、結晶融解温度=343℃、ガラス転移温度=143℃)
<ポリエーテルイミド>
(B)−1:Ultem 1000−1000(サビック社製、(b−1)の繰り返し単位、ガラス転移温度=217℃)
(B)−2:Ultem CRS5001−1000(サビック社製、(b−2)の繰り返し単位、ガラス転移温度=227℃)
(実施例1)
A層の原料として(A)−1を、B層の原料として(B)−1をそれぞれ使用した。これらを、Φ40mm押出機2台を使用して別々に溶融させ、ポリエーテルエーテルケトン層についてはフィードブロックで半分ずつに分割し、A層/B層/A層の順番となるようにフィードブロック内で積層させて2種3層構成の積層フィルムとしてTダイから押出し、両最外層を結晶化させるために、140℃のキャストロールに密着させ、積層比が1/8/1(フィルム全体に占める、A層の厚み割合=20%)となるように、積層フィルムを得た。この時、A層の押出機温度、B層の押出機温度、フィードブロック、口金の温度はいずれも380℃とした。
厚み100μmの2種3層構成の積層フィルムを作製し、中間層のガラス転移温度、及び、パンクチャー衝撃強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
(実施例2)
A層とB層の押出機回転数を調整し、積層比を1/4/1(フィルム全体に占める、ポリエーテルエーテルケトン層の厚み割合=33%)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
B層の原料として、(B)−1の代わりに(B)−2を使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
B層の原料として、(B)−1の代わりに(A)−1/(B)−1=20/80質量%のブレンドを用いた以外は実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
B層の原料として、(B)−1の代わりに(A)−1/(B)−1=20/80質量%のブレンドを用い、さらに押出機回転数を調整し、積層比を1/4/1(フィルム全体に占める、A層の厚み割合=33%)に変更した以外は実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
(実施例6)
B層の原料として、(B)−1の代わりに(A)−1/(B)−2=20/80質量%のブレンドを用いた以外は実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
キャストロールの温度を210℃に変更した以外は実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
押出機を1台のみ用い、原料として(A)−1を使用した以外は実施例1と同様の条件にて、ポリエーテルエーテルケトン単層フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
押出機を1台のみ用い、原料として(B)−1を使用し、さらにキャストロールの温度を210℃に変更した以外は実施例1と同様の条件にて、ポリエーテルイミド単層フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
2.フィルムの評価
上記実施例及び比較例で製造した各フィルムは、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。ここで、フィルムの「縦」とは、Tダイからフィルム状の成形品が押し出されてくる方向を指し、また、フィルム面内でこれに直交する方向を「横」とする。
(1)A層中のポリエーテルエーテルケトンの相体結晶化度
各フィルムについて室温から380℃まで、10℃/分の速度で昇温し、ポリエーテルエーテルケトンの結晶化時の発熱ピーク面積とポリエーテルエーテルケトンの結晶融解時の吸熱ピーク面積から、結晶化熱量ΔHcと結晶融解熱量ΔHmを算出する。これらを用いて、以下の式から相対結晶化度を算出した。
相対結晶化度(%)={(|ΔHm|−|ΔHc|)/ΔHm}×100
なお、ポリエーテルイミド層にポリエーテルエーテルケトンをさらに含む実施例4〜6については、斜め切削装置SAICAS(ダイプラ・ウィンテス社製、DN−20S型)を用いて最外層のA層を切削し、示差走査熱量測定(DSC)を用いる事で測定した。
(2)引張弾性率(23℃)
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7244−4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用いて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定を行い、23℃での引張弾性率を評価した。23℃での引張弾性率が2500MPa以上であるものを合格(○)、2500MPa未満のものを不合格(×)とした。
(3)引張弾性率(160℃)
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7244−4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用いて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定を行い、160℃での引張弾性率を評価した。160℃での引張弾性率が500MPa以上であるものを合格(○)、500MPa未満のものを不合格(×)とした。
(4)パンクチャー衝撃強度
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7124−2:1999に準拠して、高速パンクチャー衝撃試験機ハイドロショット HITS−P10(島津製作所)を用いて、23℃の温度環境下で、打ち抜き径0.5インチ、試験速度3m/secの条件で測定した。パンクチャー衝撃強度が1.5以上のものを合格(○)、1.5未満のものを不合格(×)とした。
Figure 2020089995
実施例1〜6で得られた積層フィルムは、23℃における引張弾性率の値が2500MPaを超えており、剛性に優れている。これは、中間層のポリエーテルイミドを主成分とするB層が、ポリエーテルイミドの剛性を十分に維持している結果である。
また、160℃における引張弾性率の値が500MPaを超えており、耐熱性にも優れていた。これは、中間層のポリエーテルイミドを主成分とするB層が、ポリエーテルイミドの耐熱性を十分に維持している結果である。
さらに、パンクチャー衝撃強度の値が大きく、耐衝撃背にも優れていた。この効果は耐衝撃性に優れるポリエーテルエーテルケトン層を両最外層に配した効果によるものである。
実施例4〜6は、特にパンクチャー衝撃強度の値が大きく、耐衝撃性に優れている。この効果は、耐衝撃性に優れるポリエーテルエーテルケトン層を両最外層に配し、かつ、中間層のポリエーテルイミドに対してポリエーテルエーテルケトンをブレンドした効果によるものである。
以上の結果より、本発明の積層フィルムは、剛性と耐熱性、耐衝撃性に優れていることがわかる。
一方、比較例1は表層のポリエーテルエーテルケトンの結晶化度が高いため、耐衝撃性に劣っていた。
比較例2は、ポリエーテルエーテルケトンを単体で使用しているため、剛性と耐熱性に劣っていた。
比較例3は、ポリエーテルイミドを単体で使用しているため、耐衝撃性に劣っていた。また、ポリエーテルイミドは、実施例の積層フィルムと比較して23℃の引張弾性率が高く、スピーカー振動板として使用した際に低音の再生性に劣ると推察される。

Claims (7)

  1. 相対結晶化度が50%以下であるポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層と、ポリエーテルイミドを主成分とするB層を含み、該A層を両最外層に備えた積層フィルムであって、積層フィルムに占める前記A層の厚みの割合が、10%以上50%未満である積層フィルム。
  2. 23℃における引張弾性率が2300MPa以上2900MPa未満である請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記A層を両最外層に備え、前記B層を中間層に備えた2種3層の積層構造である請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記B層がポリエーテルエーテルケトンを1質量%以上、30質量%以下の割合で含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  5. 160℃における引張弾性率が500MPa以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  6. 厚み100μmにおけるパンクチャー衝撃強度が1.5J以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層フィルムを備えたスピーカー振動板。
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