JP7245122B2 - 携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、携帯電話、携帯ゲーム機器、スマートフォン等に使用される携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法に関するものである。
携帯電話やスマートフォン等からなる携帯機器には、マイクロスピーカと呼ばれる小型のスピーカが内蔵されているが、このスピーカの音波を発生させる振動板は、音質を左右する重要な部品である。この振動板は、金属箔や紙、織布等、様々な材料を使用して製造されるが、音質特性、剛性、耐湿性、耐水性、耐熱性を確保する観点から、樹脂フィルムの使用されることが少なくない。
従来における携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムは、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等により、成形されている(特許文献1、2、3、4参照)。
また、近年、高い強度や耐熱性等を確保するため、結晶性の熱可塑性ポリイミド(PI)樹脂の採用が提案されている。この場合、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂により、帯形の薄膜に成形され、冷却して巻取機に巻き取られた後、繰り出して携帯機器のスピーカ用に二次加工される(特許文献5参照)。
特開昭60‐139098号公報 特開2019‐054534号公報 特開2018‐191069号公報 特開2018‐064150号公報 特開2018‐042043号公報
従来における携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムは、以上のように形成され、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂により成形される場合、高強度、高耐熱性、高耐溶剤性等に優れるものの、十分な滑り性を得ることができないので、製造時に巻取機に巻き取られる際、シワが生じることがある。その結果、振動板用樹脂フィルムが製造時や二次加工時に折れたり、損傷等するという問題が生じる。
この問題を解消する手法として、熱可塑性ポリイミド樹脂に四フッ化エチレン(PTFE)樹脂を添加して滑り性を改良するという方法が提案されている。しかしながら、この方法の場合、熱可塑性ポリイミド樹脂中に四フッ化エチレン樹脂が適切に分散しないので、滑り性が当初の予定通り十分に向上せず、高品質の振動板用樹脂フィルムを得ることができない。
また、振動板用樹脂フィルムは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂により成形される場合、高音特性には優れるが、低音共振周波数(F)が高いので、例えば響き渡る大迫力の重低音を容易に聴取することができず、十分な低音特性を得ることのできないことがある。これでは、携帯機器のソフトウェアに依存したり、携帯機器に専用の外部スピーカを接続しなければ、低音を携帯機器で強調したり、再生することができず、実に不便である。この点に関し、スピーカを大きく重くすれば、低音特性の向上が期待できるが、それでは、携帯機器の薄型化、小型化、軽量化の要請に反することとなる。
本発明は上記に鑑みなされたもので、例え結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂により成形しても滑り性の向上が期待でき、しかも、スピーカの大型化を招くことなく、優れた低音特性を得ることのできる携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意研究した結果、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂との組み合わせに着目し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明においては上記課題を解決するため、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部と、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂1質量部以上30質量部以下とを含有した成形材料により成形され、この成形材料の熱可塑性ポリイミド樹脂が、少なくともテトラカルボン酸成分と、脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とにより調製されており、
静摩擦係数がJIS K 7125に準拠した測定法で測定した場合に0.04以上0.50以下、動摩擦係数がJIS K 7125に準拠した測定法で測定した場合に0.04以上0.50以下、23℃における引張最大強度がJIS K 7127に準拠した測定法で測定した場合に40N/mm 以上1000N/mm 以下、23℃における引張破断伸びがJIS K 7127に準拠した測定法で測定した場合に10%以上500%以下、20℃における損失正接が動的粘弾性法に準拠した測定法で測定した場合に0.014以上0.45以下であることを特徴としている。
なお、熱可塑性ポリイミド樹脂のジアミン成分は、少なくとも炭素数4以上12以下の直鎖状脂肪族ジアミンを含むことが好ましい。
また、熱可塑性ポリイミド樹脂のジアミン成分は、少なくとも脂環族ジアミンを含むと良い。
また、脂環族ジアミンは、1,3‐ビス(アミノメチル)シクロヘキサンであると良い。
また、23℃における引張弾性率が1500N/mm以上3500N/mm以下であると良い。
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1、2、又は3に記載した携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの製造方法であって、
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部と、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂1質量部以上30質量部以下とにより成形材料を調製し、この成形材料の熱可塑性ポリイミド樹脂を、少なくともテトラカルボン酸成分と、脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とし、
成形材料を溶融混練し、この成形材料を押出成形機のダイスにより携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムに押出成形するとともに、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを冷却ロールに接触させて冷却し、その後、冷却した携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを巻取機に巻き取ることを特徴としている。
ここで、特許請求の範囲における携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムには、樹脂フィルムの他、樹脂シートが含まれる。この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムは、透明、不透明、半透明、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムを特に問うものではない。携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムは、一枚でも良いが、複数枚でも良い。この場合、例えば、一対の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの間に、エラストマー層を介在して接着することができる。
本発明によれば、成形材料に結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂を含有するので、高強度、高耐熱性、高耐溶剤性、低音特性等に優れる携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを得ることができる。また、成形材料に、分散性に優れる四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂を含有するので、優れた滑り性を得ることができ、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムが巻き取られる際、シワの生じることが少ない。また、成形材料を、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とで調製するので、高音特性の他、共振の発生を抑えた良好な音質特性を得ることができる。
本発明によれば、例え結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂により携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを成形しても、滑り性の向上が期待できるという効果がある。また、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂の採用により、共振の発生を抑えた良好な音質特性を得ることができるという効果がある。また、スピーカを大型化することなく、低音特性の向上を図ることができるので、携帯機器の薄型化、小型化、軽量化の要請に資することができる。
また、23℃における引張最大強度がJIS K 7127に準拠した測定法で測定した場合に40N/mm 以上1000N/mm 以下、23℃における引張破断伸びがJIS K 7127に準拠した測定法で測定した場合に10%以上500%以下なので、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムが十分な靭性を有し、携帯機器スピーカの加工中に破断や割れ等のトラブルが生じてしまうおそれを排除することができ、低音特性を向上させることも可能となる。
また、20℃における損失正接が動的粘弾性法に準拠した測定法で測定した場合に0.014以上0.45以下なので、共振の発生を抑えた良好な音質を得ることができる。
請求項2記載の発明によれば、熱可塑性ポリイミド樹脂のジアミン成分が少なくとも炭素数4以上12以下の直鎖状脂肪族ジアミンを含むので、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの成形性や二次加工性、低吸湿性を向上させることができる。
請求項3記載の発明によれば、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの23℃における引張弾性率が1500N/mm以上3500N/mm以下なので、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムが剛性に優れ、携帯機器スピーカの加工中のハンドリング性が低下したり、低音特性が悪化するのを防止することが可能となる。また、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの成形が遅延するのを防ぐことができるので、コスト削減が期待できる。
請求項4記載の発明によれば、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを溶融押出成形法により成形するので、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの厚さ精度、生産性、ハンドリング性を向上させたり、製造設備を簡略化することができる。
本発明に係る携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法の実施形態を模式的に示す全体説明図である。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1は、図1に示すように、熱可塑性ポリイミド樹脂と、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とを含有した成形材料2により押出成形され、この成形材料2の熱可塑性ポリイミド樹脂が、少なくともテトラカルボン酸成分と、脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とにより調製されており、23℃における静摩擦係数が0.050以下であるとともに、23℃における動摩擦係数が0.050以下である。
成形材料2は、結晶性の熱可塑性ポリイミド(PI)樹脂100質量部と、熱可塑性のフッ素樹脂である四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合(テトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、PFA)樹脂1質量部以上30質量部以下とが含有して調製される。この成形材料2には、本発明の特性を損なわない範囲で熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物、樹脂改質剤等が選択的に添加される。
成形材料2の結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分との重合により得られる。熱可塑性ポリイミド樹脂のテトラカルボン酸成分としては、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ピロメリット酸等があげられる。また、これらのアルキルエステル体も使用することが可能である。
これらの中でも、テトラカルボン酸成分のうち、50モル%を越える成分がピロメリット酸であることが好ましい。これは、テトラカルボン酸成分がピロメリット酸を主成分とすれば、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の耐熱性、二次加工性、及び低吸水性が向上するからである。係る観点から、テトラカルボン酸成分のうち、ピロメリット酸は、60モル%以上が好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上が良い。とりわけ、テトラカルボン酸成分の全て(100モル%)がピロメリット酸であるのが最適である。
携帯機器スピーカの熱可塑性ポリイミド樹脂を構成するジアミン成分は、脂肪族ジアミン(脂環族ジアミンをも含む)を主成分とすることが重要である。すなわち、ジアミン成分のうち50モル%を越える成分が脂肪族ジアミンであることが重要であり、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。とりわけ、ジアミン成分の全て(100モル%)が脂肪族ジアミンであるのが最適である。この主成分が脂肪族ジアミンであることにより、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1に、優れた耐熱性、低吸水性、成形性、及び二次加工性を付与することができる。
ジアミン成分に含まれる脂肪族ジアミンとしては、炭化水素基の両末端にアミン基を有するジアミン成分であれば、特に限定されるものではないが、耐熱性を重視する場合には、環状炭化水素の両末端にアミン基を有する脂環族ジアミンを含むことが好ましい。脂環族ジアミンの具体例としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等があげられる。これらの中では、耐熱性と成形性、二次加工性を両立できるという観点から、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが最適である。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の成形性や二次加工性を重視する場合には、ジアミン成分に含まれる脂肪族ジアミンとして、直鎖状炭化水素の両末端にアミン基を有する直鎖状脂肪族ジアミンを含むことが好ましい。直鎖状脂肪族ジアミンとしては、アルキル基の両末端にアミン基を有するジアミン成分であれば特に制限はないが、具体例としては、エチレンジアミン(炭素数2)、プロピレンジアミン(炭素数3)、ブタンジアミン(炭素数4)、ペンタンジアミン(炭素数5)、ヘキサンジアミン(炭素数6)、ヘプタンジアミン(炭素数7)、オクタンジアミン(炭素数8)、ノナンジアミン(炭素数9)、デカンジアミン(炭素数10)、ウンデカンジアミン(炭素数11)、ドデカンジアミン(炭素数12)、トリデカンジアミン(炭素数13)、テトラデカンジアミン(炭素数14)、ペンタデカンジアミン(炭素数15)、ヘキサデカンジアミン(炭素数16)、ヘプタデカンジアミン(炭素数17)、オクタデカンジアミン(炭素数18)、ノナデカンジアミン(炭素数19)、エイコサン(炭素数20)、トリアコンタン(炭素数30)、テトラコンタン(炭素数40)、ペンタコンタン(炭素数50)等があげられる。
これらの中では、成形性や二次加工性、低吸湿性に優れるという観点から、炭素数4~12の直鎖状脂肪族ジアミンが最適である。これら直鎖状脂肪族ジアミンは、炭素数1~10の枝分かれ構造を有するものでも良い。
ジアミン成分に含まれる脂肪族ジアミン以外の成分としては、他のジアミン成分を含んでいても良い。具体的には、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)1,4’-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(3-アミノフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,6-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン成分、ポリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル等のエーテルジアミン成分、シロキサンジアミン類等があげられる。
ジアミン成分は、脂環族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンのいずれか、又は両方を含んでも良いが、耐熱性と成形性のバランスに優れることから、脂環族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンの両方を含むことが好ましい。脂環族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンを両方含む場合、それぞれの含有量は、脂環族ジアミン:直鎖状脂肪族ジアミン=99:1~1:99モル%の範囲であることが好ましく、90:10~10:90モル%であることがより好ましく、80:20~20:80モル%であることがさらに好ましく、70:30~30:70モル%であることが特に好ましく、60:40~40:60モル%が最適である。ジアミン成分に含まれる脂環族ジアミンと直鎖状脂肪族ジアミンの割合が係る範囲であれば、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の耐熱性と成形性は、バランスに優れる。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点(融解温度ともいう)は、280℃以上370℃以下であり、好ましくは300℃以上350℃以下、より好ましくは310℃以上330℃以下が良い。これは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が280℃未満の場合には、耐熱性を有する携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を得ることができないからである。これに対し、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が370℃を越える場合には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の製造温度が400℃を越えてしまうため、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の製造が困難となり、しかも、使用可能な溶融押出成形機10が制限されてしまう等の問題が生じるからである。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点は、160℃以上240℃以下、好ましくは170℃以上210℃以下、より好ましくは170℃以上190℃以下が良い。これは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点が160℃未満の場合には、耐熱性を有する携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を得ることができないからである。
これに対し、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点が240℃を越える場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が370℃を越えるので、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の製造温度が400℃を越えて携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の製造に支障を来したり、使用可能な溶融押出成形機10の制限を招くからである。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の見掛けの剪断粘度は、温度350℃における見掛けの剪断速度1×10sec-1の場合に、1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下の範囲内、好ましくは5×10Pa・s以上5×10Pa・s以下の範囲内、より好ましくは7×10Pa・s以上1×10Pa・s以下の範囲内が良い。これは、温度350℃、見掛けの剪断速度1×10sec-1における結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の見掛けの剪断粘度が1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下の範囲内であれば、良好な溶融押出成形が可能になるという理由に基づく。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合可能な単量体とのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、あるいは変性体も使用することができる。また、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の形状は、粉状、フレーク状、ペレット状、塊状等、いかなる形状でも良い。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂は特に限定されるものではないが、好ましくは特許第5365762号公報、特許第6024859号公報、特許第6037088号公報記載、あるいは特許第6394662号公報記載の熱可塑性を有するポリイミド樹脂、より好ましくは特許第6024859号公報、特許第6037088号公報記載、あるいは特許第6394662号公報に記載された熱可塑性のポリイミド樹脂が好適である。この熱可塑性ポリイミド樹脂の具体例としては、高強度、高耐熱性、高耐溶剤性、結晶性、フィルム成形性に優れるサープリムシリーズ〔三菱瓦斯化学社製:製品名〕があげられる。
成形材料2の四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂は、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体であり、結晶性の熱可塑性ポリイミドに添加され、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の滑り性を向上させたり、携帯機器スピーカの共振の発生を抑えて良好な音質が得られるよう機能する。この四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂は、溶融流動性タイプの樹脂であり、フッ素樹脂である四フッ化エチレン(PTFE)樹脂とは異なり、溶融流動性を有し、加工性や分散性に優れ、溶融押出成形法に好適であり、ピンホールのない薄膜の樹脂フィルムを得ることが可能となる。
四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂の添加量は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対し、1質量部以上30質量部以下、好ましくは2質量部以上25質量部以下、より好ましくは3質量部以上10質量部以下が添加される。これは、添加量が1質量部未満の場合には、振動板用樹脂フィルム1の滑り性向上が期待できず、逆に添加量が30質量部を越える場合には、溶融混練物の溶融押出が不安定化し、ストランド状やシート状等の形状に押し出しすることができず、適切な成形材料1を得ることができないという理由に基づく。
四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂の具体例としては、耐熱性や耐薬品性に優れるネオフロンPFAシリーズ〔ダイキン工業社製:製品名〕、機械的強度、電気特性、難燃性等に優れるフレオンPFAシリーズ〔AGC社製:製品名〕、テフロン(登録商標)PFAシリーズ〔三井・デュポンフロロケミカル社製:製品名〕、3Mダイニオン熱可塑性フッ素樹脂PFAシリーズ〔スリーエム社製:製品名〕、アルゴフロンPFAシリーズ〔ソルベイ社製:製品名〕等があげられる。
四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂の温度350℃における見掛けの剪断粘度は、荷重50kgfの場合に1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下、好ましくは7×10Pa・s以上5×10Pa・s以下、より好ましくは9×10Pa・s以上2×10Pa・s以下の範囲内とされる。これは、係る範囲の見掛けの剪断粘度であれば、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂中に四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂を均一に分散させることができ、強度、滑り性、低音特性に優れた携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム2の製造が期待できるからである。
四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂は、特許第5286669号公報記載の酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有するモノマーが加水分解して得られるジカルボン酸に基づく繰り返し単位が含まれても良い。酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有するモノマーとしては、例えば、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水マレイン酸等が挙げられる。酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有するモノマーが加水分解して得られるジカルボン酸としては、イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等のジカルボン酸があげられる。
成形材料2には、上記樹脂の他、上記以外のポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、ポリアミド11T(PA11T)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等のポリアリーレンエーテルケトン樹脂、ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニルサルホン(PPSU)樹脂等のポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂等が必要に応じ、添加される。
上記において、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を製造する場合には図1に示すように、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とを室温下で撹拌混合し、所定時間溶融混練して成形材料2を調製し、この成形材料2により帯形の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を連続的に押出成形する。
成形材料2の調製方法は、(1)結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とを室温(0℃以上50℃以下、以下同じ)下で撹拌混合させた後に溶融混練し、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の成形材料2を調節する方法、(2)結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とを撹拌混合することなく、溶融した結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂中に四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂を添加し、これらを溶融混練して成形材料2を調製する方法があげられる。
これらの方怯は、いずれも採用することができるが、分散性や作業性の観点からすると、(1)の方法が好ましい。先ず、(1)の方法について説明すると、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とを撹拌混合する場合には、タンブラーミキサー、へンシルミキサー、V型混合機、ナウターミキサー、リボンブレンダー、あるいは万能撹拌ミキサー等が使用される。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とは、上記方法による撹拌混合物をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機等の多軸押出成形機等で溶融混練分散させることにより、調製することができる。成形材料2を調製する場合、溶融混練機の温度は、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上370℃以下が良い。これは、溶融押出成形機10の温度が400℃を越える場合には、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂が激しく分解して好ましくないという理由に基づく。
次に、(2)の方法について説明すると、この方法の場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機等の多軸押出成形機等で溶融し、熱可塑性ポリイミド樹脂に四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂を添加して溶融混練分散させることにより、熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂との成形材料2を調製する。
熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とからなる組成物を調製する場合の溶融混練機の温度は、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上370℃以下が良い。これは、溶融混練機の温度が400℃を越えると、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂が上記同様、激しく分解するからである。
成形材料2は、通常、塊状、ストランド状、シート状、棒状に押出された後、粉砕機あるいは裁断機で粉状、顆粒状、ペレット状等の成形加工に適した形態にして使用される。
係る成形材料2からなる携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1は、溶融押出成形法、力レンダー成形法、あるいはキャスティング成形法等の公知の方法により製造することができる。ここで、溶融押出成形法とは、単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなる溶融押出成形機10を使用して結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂との成形材料2を溶融混練し、溶融押出成形機10の先端部のTダイス13より帯形の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を連続的に押し出して製造する方法である。携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の製造方法は、ハンドリング性や設備の簡略化の観点からすると、溶融押出成形法が最適である。
溶融押出成形機10は、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料2を溶融混練するように機能する。この溶融押出成形機10の上部後方には、成形材料2用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、へリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスを必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料2の酸化劣化や酸素架橋が有効に防止される。
単軸押出成形機や二軸押出成形機等の溶融押出成形機10としては、ベント口を有している溶融押出成形機10の使用が好ましい。これは、ベント口を使用して減圧下で溶融混練することにより、成形材料2に中に含まれている水分や昇華した有機物を十分に脱気しやすくなるからである。また、成形材料2の溶融混練前の含水率の調整が不要となるからである。
溶融押出成形機10の溶融混練時の温度は、成形材料2を溶融可能な温度であり、成形材料2が分解しない温度であれば、特に制限されるものでないが、成形材料2の融点以上熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上370℃以下に調整される。これは、300℃未満の場合には、熱可塑性ポリイミド樹脂含有の成形材料2を溶融押出成形することができず、逆に400℃を越える場合には、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂が激しく分解するおそれがあるからである。
溶融押出成形機10で溶融混練された成形材料2は、溶融押出成形機10の先端部のTダイス13により帯形の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1に連続して押出成形され、この連続した携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1が下方の一対の圧着ロール17と冷却ロール18との間に挟んで冷却された後、巻取機19に巻き取られることで製造される。
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、帯形の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の押出時の温度は、成形材料2の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、300℃以上400℃以下、好ましくは330℃以上370℃以下に調整される。これは、300℃未満の場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂含有の成形材料2を溶融押出成形することができず、逆に400℃を越える場合には、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂が激しく分解するおそれがあるからである。
Tダイス13の上流の連結管14には、ギアポンプ15とフィルター16とがそれぞれ装着されることが好ましい。ギアポンプ15は、溶融押出成形機10により溶融混練された成形材料2を一定の流量で、かつ高精度にTダイス13にフィルター16を介して移送する。また、フィルター16は、溶融状態の成形材料2のゲルや異物等を分離し、溶融状態の成形材料2をTダイス13に移送する。
一対の圧着ロール17は、Tダイス13の下方に回転可能に軸支され、冷却ロール18を摺接可能に狭持しており、この冷却ロール18との間に携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を挟持して冷却する。この一対の圧着ロール17のうち、下流の圧着ロール17のさらに下流には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を巻き取る巻取機19の巻取管20が回転可能に設置され、圧着ロール17と巻取機19の巻取管20との間には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の側部にスリットを形成するスリット刃21が昇降可能に配置されており、このスリット刃21と巻取機19の巻取管20との間には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール22が必要数軸支される。
各圧着ロール17の周面には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1と冷却ロール18との密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被膜形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
圧着ロール17としては、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れる携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の成形が可能となる。金属弾性ロールの具体例としては、例えば金属スリーブロール、エアーロール〔ディムコ社製:製品名〕、UFロール〔日立造船社製:製品名〕が該当する。
このような圧着ロール17は、50℃以上260℃以下、好ましくは100℃以上240℃以下、より好ましくは130℃以上220℃以上、さらに好ましくは150℃以上200℃以下の温度に調整され、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1に摺接してこれを冷却ロール18に圧接する。圧着ロール17の温度が係る範囲なのは、圧着ロール17の温度が260℃を越える場合には、製造中の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1が圧着ロール17に貼り付き、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1が破断するか、あるいは圧着ロール17に被覆形成されたゴム層が熱分解するおそれがあるからである。
逆に、圧着ロール17の温度が50℃未満の場合には、圧着ロール17が結露するため、好ましくないという理由に基づく。圧着ロール17の温度調整や冷却方法としては、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーターや誘電加熱ロール等があげられる。
冷却ロール18は、例えば圧着ロール17よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイス13の下方に回転可能に軸支されて押し出された携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を圧着ロール17との間に狭持し、圧着ロール17と共に携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御する。この冷却ロール18は、圧着ロール17と同様、50℃以上260℃以下、好ましくは100℃以上240℃以下、より好ましくは130℃以上220℃以上、さらに好ましくは150℃以上200℃以下の温度に調整され、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1に摺接する。
冷却ロール18が50℃以上260℃以下の温度に調整されるのは、冷却ロール18の温度が260℃を越える場合には、製造中の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1が冷却ロール18に密着して携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の破断を招いたり、あるいはゴム層が被覆形成された圧着ロール17の場合、圧着ロール17のゴム層が熱分解するおそれがあるからである。これに対し、冷却ロール18の温度が50℃未満の場合には、冷却ロール18の結露を招き、好ましくないからである。冷却ロール18の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーターや誘導加熱等があげられる。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を溶融押出成形法により製造する場合には図1に示すように、先ず、溶融押出成形機10の原料投入口11に、成形材料2を同図に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料2の結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とを溶融混練し、Tダイス13から携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を連続的に帯形に押し出す。
この際、成形材料2の溶融押出前における含水率は、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以上500ppm以下に調整される。これは、含水率が2000ppmを越える場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂がTダイス13から押し出された直後に発泡するおそれがあるからである。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を押し出したら、一対の圧着ロール17、冷却ロール18、テンションロール22、巻取機19の巻取管20に順次巻架し、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を冷却ロール18により冷却した後、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の両側部をスリット刃21でそれぞれカットするとともに、巻取機19の巻取管20に順次巻き取れば、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を製造することができる。この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1製造の際、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の表面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1表面の摩擦係数をさらに低下させることができる。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の厚さは、2μm以上1000μm以下であれば特に限定されるものではないが、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の厚さの充分な確保、ハンドリング性や薄型化の観点からすると、好ましくは3μm以上100μm以下、より好ましくは4μm以上80μm以下、さらに好ましくは5μm以上75μm以下が良い。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の相対結晶化度は、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは100%が良い。これは、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の相対結晶化度が80%未満の場合には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の耐熱性に問題が生じるからである。また、相対結晶化度が80%以上であれば、携帯機器スピーカ用として使用可能な機械的強度の確保が期待できるからである。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の結晶化度は、相対結晶化度により表すことができる。この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の相対結晶化度は、示差走査熱量計を用いて10℃/分の昇温速度で測定した熱分析結果に基づき、以下の式により算出される。
相対結晶化度(%)={1-(ΔHc/ΔHm)}×100
ΔHc:再結晶化ピークの熱量(J/g)
ΔHm:融解ピークの熱量(J/g)
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の機械的特性は、23℃における引張最大強度、引張破断時伸び、及び引張弾性率で評価することができる。引張最大強度は、JIS K 6781や7127に準拠した測定法で40N/mm以上、好ましくは48N/mm以上、より好ましくは49N/mm以上である。この引張最大強度の上限値は、特に限定されないが、1000N/mm以下である。
また、引張破断時伸びは、JIS K 6781や7127に準拠した測定法で10%以上、好ましくは26%以上、より好ましくは27%以上が良い。これは、引張最大強度が40N/mm未満で破断時伸びが10%未満の場合、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1が十分な靭性を有していないので、携帯機器スピーカの加工中に破断や割れ等のトラブルが生じてしまうおそれがあり、低音特性の向上も困難になるからである。引張破断時伸びの上限値は、特に限定されないが、500%以下である。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の23℃における引張弾性率は、JIS K 6781やJIS K 7127に準拠した測定法で1500N/mm以上3500N/mm以下、好ましくは1830N/mm以上3200N/mm以下、より好ましくは1835N/mm以上3170N/mm以下の範囲が最適である。これは、引張弾性率が1500N/mm未満の場合には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1が剛性に劣るため、携帯機器スピーカの加工中のハンドリング性が低下するという理由に基づく。逆に、3500N/mmを越える場合には、F値が増大し、低音特性の向上を図ることができないという理由に基づく。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の23℃における静摩擦係数は、滑り性向上の観点から、JIS K 7125に準拠した測定法で0.50以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下が良い。この静摩擦係数の下限値は特に限定されるものではないが、実用上は0.04以上である。また、振動板用樹脂フィルム1の23℃における動摩擦係数も、滑り性向上のため、JIS K 7125に準拠した測定法で0.50以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下が良い。この動摩擦係数の下限値も特に限定されるものではないが、実用上は0.04以上である。
振動板用樹脂フィルム1の20℃における損失正接は、動的粘弾性法に準拠した測定で0.014以上、好ましくは0.015以上、より好ましくは0.016以上が最適である。これは、損失正接が0.014未満の場合には、共振の発生により、良好な音質を得ることができないからである。この損失正接の上限値は、特に制約されるものではないが、0.45以下が良い。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の表裏面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1両面の摩擦係数を低下させることができるが、微細な凹凸を形成する方法としては、(1)微細な凹凸を備えた冷却ロール18と微細な凹凸を備えた圧着ロール17とで携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を挟み、微細な凹凸を形成する方法、(2)携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1に微小なジルコニア、ガラス、ステンレス等の無機化合物、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、あるいは植物の種等の有機化合物を吹き付けて微細な凹凸を形成する方法、(3)携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を微細な凹凸を備えた金型でプレス成形し、微細な凹凸を形成する方法があげられる。これらの方法の中では、設備の簡略化、凹凸サイズの精度、凹凸形成の均一化、あるいは凹凸形成の容易さ、連続的に凹凸の形成が可能な観点から(1)の方法が最適である。
(1)の方法をさらに詳細に説明すると、(1-1)結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とからなる攪拌混合物を溶融押出成形機10で溶融混練して成形材料2を調製し、この成形材料1を溶融押出成形機10のTダイス13から微細な凹凸を周面に備えた冷却ロール18上に吐き出すとともに、この吐出物を冷却ロール18と微細な凹凸を周面に備えた圧着ロール17とで挟み、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の溶融押出成形と同時に成形する方法、(1-2)成形した携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を微細な凹凸を周面に備えた冷却ロール18と微細な凹凸を周面に備えた圧着ロール17とで挟み、凹凸を形成する方法があげられる。これらの中では、設備の簡略化の観点から、(1-1)の方法が好ましい。
上記によれば、成形材料2に結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂を含有するので、高強度、高耐熱性、高耐溶剤性等に優れる携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を得ることができる。また、成形材料2に、分散性に優れる四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂を添加し、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の静摩擦係数を0.50以下と低く小さくし、動摩擦係数を0.50以下と低く小さくするので、十分な滑り性を得ることができ、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1が巻取機19に巻き取られる際、シワの生じることがない。したがって、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1が製造時や二次加工時に折れたり、損傷等する問題を有効に解消することができる。
また、四フッ化エチレン樹脂ではなく、溶融押出成形に適する四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂を採用するので、振動板用樹脂フィルム1を溶融押出成形法により円滑に製造することができる。また、成形材料2を、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とで調製するので、高音特性の他、優れた低音特性を得ることができる。さらに、共振の発生を抑えることができるので、良好な音質を得ることができる。したがって、携帯機器のソフトウェアに依存したり、携帯機器に専用の外部スピーカを接続しなくても、重要な低音を携帯機器で強調したり、再生することが可能となる。
また、スピーカを大きく重くしなくても、低音特性の向上を図ることができるので、携帯機器の薄型化、小型化、軽量化の要請に資することが可能となる。また、耐熱性に優れる相対結晶化度80%以上の振動板用樹脂フィルム1をスピーカ用に用いるので、優れた耐熱性が期待できる。さらに、放熱特性に優れる熱可塑性ポリイミド樹脂含有の振動板用樹脂フィルム1を用いるので、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の安定した長期使用が可能となる。
なお、上記実施形態では携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1を単に示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、一対の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の間に、厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層を挟持した多層構造としても良い。
この場合、エラストマー層のエラストマーとしては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、炭化水素樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等があげられる。これらのエラストマーの中ではシリコーン樹脂、特に加熱硬化型シリコーン樹脂が耐熱性、耐候性、難燃性、音質特性、圧縮特性等に優れる点で好ましい。この加熱硬化型シリコーン樹脂としては、例えば付加硬化型ミラブルシリコーン樹脂、及び付加硬化型液状シリコーン樹脂があげられる。
付加硬化型ミラブルシリコーン樹脂は、通常、オルガノポリシロキサンに、シリカ系等の充填材、及び硬化剤(公知の白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせた硬化剤、及び有機化酸化物等)やシリカ微粉末等からなる各種の添加剤を添加した組成物の状態で使用される。
これに対し、付加硬化型液状シリコーン樹脂は、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、平均粒径が1μm以上30μm以下で、嵩密度が0.1g/cm以上0.5g/cm以下である無機質充填材(珪藻土、パーライト、発泡パーライトの粉砕物、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び中空フィラー等)と、付加反応触媒(白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等)とが添加された樹脂組成物の状態で使用される。
エラストマー層にシリコーン樹脂を使用した場合のシリコーン樹脂のデュロメータ硬さは、JIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合、A10以上A90以下、好ましくはA20以上A70以下、より好ましくはA20以上A50以下の範囲が最適である。これは、デュロメータ硬さがA10未満の場合には、シリコーン樹脂層の圧縮永久歪み特性が悪化したり、振動板の振動伝搬速度が低下して音質に問題が生じるからである。逆に、デュロメータ硬さがA90を越える場合には、損失正接が小さくなり、共振の発生を抑えて良好な音質を得ることができる。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1とエラストマーとの接着性を強固に接着させるため、一対の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1とエラストマー層間にプライマー層を介し狭持した多層構造としても良い。各プライマーは、エラストマー層と携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1との間に介在され、これらを強固に接着するよう機能する。
プライマーは、シリコーン樹脂と携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1とを接着することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えばアルキド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びこれら混合物等があげられる。また、これらの樹脂を硬化、及び/又は架橋する架橋剤として、例えばイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物、シラン化合物等があげられる。
薄い各プライマーは、0.1μm以上5μm以下、好ましくは1μm以上3μm以下の厚さとされる。これは、プライマーの厚さが0.1μm未満の場合には、エラストマー層と携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1との接着が不十分で、振動板への成形中、あるいは使用中に剥離してしまうおそれがあるからである。これに対し、プライマーの厚さが5μmを越える場合には、振動板への二次成形性、あるいは音響特性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
また、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム1の表面には、本発明の効果を失わない範囲で各種の帯電防止剤、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の各種エラストマーを塗布したり、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅等の各種金属を蒸着しても良い。さらに、フィルタ16の円板やメッシュ等は、必要に応じ、複数が選択的に積層使用される。フィルタ16の開口形状は、円形、楕円形、矩形、多角形等を特に問うものではない。
以下、本発明に係る携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(以下、「PFA樹脂」と略す)とにより成形材料を調製した。結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂(以下、「TPI樹脂」と略す)としては、市販されているサープリムTO-65〔三菱瓦斯化学社製:製品名、(以下、「TO‐65」と略す)〕を100質量部用意し、この熱可塑性ポリイミド樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間乾燥させた。また、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂としては、市販されているネオフロンPFA AP‐210〔ダイキン工業社製:製品名、(以下、「AP‐210」と略す)〕を5質量部用意した。このAP-210の温度350℃における見かけのせん断粘度は、フローテスタを使用して測定した。これらを用意したら、2種類の樹脂を混合機に投入して混合し、攪拌混合物を調製した。
攪拌混合物を調製したら、この撹拌混合物を同方向回転二軸押出機等で溶融混練してストランド状に押し出し、この押出成形物を水冷固化した後、ペレット状にカッティングして成形材料を調製した。同方向回転二軸押出機は、φ42mm、L/D=38タイプを用いた。また、撹拌混合物は、シリンダー温度76~340℃、ダイス温度350℃の条件下で溶融混練し、成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ345℃であった。
結晶性のTPI樹脂の見かけのせん断粘度は、結晶性のTPI樹脂を160℃で24時間乾燥させた後、ツインキャピラリーレオメーターR6000〔IMATEK社製 製品名〕を使用して測定した。具体的には、キャピラリーダイ:φ1.0mm×16mm(ロングダイ)、φ1.0mm×0.25mm(ショートダイ)、バレル径:15mm、温度:350℃の条件下において、TPI樹脂をバレル内に40g投入し、ロングダイ側:0.9MPa、ショートダイ側:0.3MPaになるまでピストンを50mm/minの速度で押し込み、圧力が所定の値となったら、そのままの状態で6分間保持した。
その後、再びロングダイ側:0.9MPa、ショートダイ側:0.3MPaになるまでピストンを50mm/minの速度で押し込み、圧力が所定の値となったら、所定の見かけの剪断速度(1×10、2×10、3×10、5×10、8×10、1×10、3×10、8×10sec-1)を与えて測定し、見かけのせん断粘度を求めた。この見かけのせん断速度が1×10sec-1のときのTPI樹脂の見かけのせん断粘度は、1.32×10Pa・sであった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して24時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイス付きの単軸押出機に投入して溶融混練し、この溶融混練した成形材料をTダイスから連続的に押し出して厚さ6μmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを帯形に押出成形した。
単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューのタイプとした。また、単軸押出成形機の温度は220~360℃、Tダイスの温度は360℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管とギアポンプの温度はそれぞれ360℃に調整した。この単軸押出成形機に成形材料を投入する際、不可性ガス供給管により窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
こうして厚さ6μmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを押出成形したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを、図1に示すようなシリコーンゴム製の一対の圧着ロール、180℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の6インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、連続した携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m、幅650mmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。
圧着ロールと巻取管との間には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの両側部を切断するスリット刃を昇降可能に配置し、巻取管とスリット刃との間には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムにテンションを作用させるテンションロールを回転可能に軸支させた。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を測定して表1にまとめ、評価することとした。
・PFA樹脂の見かけの剪断粘度
PFA樹脂の見かけの剪断粘度については、フローテスタ〔島津製作所製 製品名島津フローテスタCFT-500D〕により測定した。具体的には、樹脂1.5cmをダイ(直径:1mm、長さ10mm)に装着した350℃のシリンダー内に充填し、このシリンダーの上部に、面積が1.0cmのプランジャーを取り付け、シリンダーの温度が350℃に達したら、5分間予備加熱するとともに、この予備加熱後に直ちに50kgfの荷重を加え、PFA樹脂を溶融流出させてその見かけの剪断粘度を測定した。測定は、3回行い、その平均値を見掛けの剪断粘度とした。
・携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの厚さ
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムのフィルム厚は、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC-25PJ〕を使用して測定した。測定に際しては、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの幅方向(押出方向の直角方向)の任意の10箇所を測定し、その平均値をフィルム厚とした。
・携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの機械的特性
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの機械的特性は、引張最大強度、引張破断時伸びと引張弾性率を測定して評価することとした。JIS K 7127に準拠し、押出方向と幅方向について、引張速度50mm/分、温度23℃±2℃、相対湿度50%RH±5%RHの条件で測定した。測定は、5回測定してその平均値を引張最大強度、引張判断時伸び、引張弾性率とした。
・携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの耐熱性
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの耐熱性は、ガラス転移点で評価することとした。このガラス転移点(Tg)については、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの損失弾性率(E”)を測定し、その測定値が極大になった温度をガラス転移点とした。損失弾性率は、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの押出方向、幅方向で測定した。
具体的には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの押出方向を測定する場合には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の貯蔵弾性率を測定する場合には、押出方向6mm×幅方向60mmの大きさに切り出し、粘弾性スペクトロメータ〔ティー・エス・インスルメント・ジャパン社製 製品名:RSA-G2〕を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、チャック間21mmの条件で測定した。
・携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの滑り性
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの滑り性は、静摩擦係数と動摩擦係数とを測定して評価することとした。これら静的摩擦係数と動的摩擦係数とは、JIS K 7125に準拠して測定した。具体的には、表面性測定機〔新東科学社製 製品名:HEDON-14〕を使用し、23℃±2℃、50%RH±5%RHの環境下で、試験速度:100mm/min、荷重:200g、接触面積:63.5mm×63.5mmの条件下で測定した。そして、移動テーブル側に、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの巻外面を固定し、固定テーブル側に振動板用樹脂フィルムの巻内面を固定し、200gの荷重を作用させ、100mm/minの速度で静的摩擦係数と動的摩擦係数とをそれぞれ測定した。
・携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの音響特性
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの音響特性は、20℃における損失正接を測定して評価することとした。この損失正接は、押出方向と幅方向について測定した。具体的には、フィルムを押出方向の損失正接を測定する場合には、押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の損失正接を測定する場合には、押出方向6mm×幅方向60mmの大きさに切り出して測定した。損失正接の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ(ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA-G2)を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲-60℃~360℃、チェック間21mmの条件で測定し、20℃の損失正接を求めた。
・携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムにおける製造時の巻き取る際のシワの発生
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの製造時に、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを巻き取る際のシワの発生の有無については、巻取管に100m巻き取った後、目視により観察して○×表記した。○はシワの発生無し、×はシワの発生有りとして表記した。
〔実施例2〕
基本的には実施例1と同様だが、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの厚さを変更し、成形材料をTダイスから連続的に押し出して厚さ25μmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを帯形に押出成形した。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を実施例1と同様の方法により測定して表1にまとめ、評価することとした。
〔実施例3〕
基本的には実施例1と同様だが、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの厚さを変更し、成形材料をTダイスから連続的に押し出して厚さ50μmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを帯形に押出成形した。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を実施例1と同様の方法により測定して表1にまとめ、評価することとした。
〔実施例4〕
基本的には実施例1と同様だが、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの厚さを変更し、成形材料をTダイスから連続的に押し出して厚さ75μmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを帯形に押出成形した。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を実施例1と同様の方法により測定して表1に記載し、評価した。
Figure 0007245122000001
〔実施例5〕
先ず、実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性のTPI樹脂と、PFA樹脂をAP-210からネオフロンPFA AP-201〔ダイキン工業社製 製品名(以下、「AP-201」と略す〕に変更し、PFA樹脂を結晶性のTPI樹脂100質量部に対して2.5質量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間撹拌混合することにより、撹拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ346℃であった。また、AP-201の見かけの剪断粘度をフローテスタを使用し、実施例1と同様の方法により測定した。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1で使用した幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを厚さ25μmの帯状に押出成形した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
こうして厚さ25μmの携帯機器スピーカ用の振動板用樹脂フィルムを押出成形したら、実施例1と同様方法により6インチの巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m,幅650mmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。実施例1では、冷却ロールである金属ロールの温度を180℃としたが、実施例5では金属ロールの温度を160℃に変更した。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を実施例1と同様の方法により測定して表2に記載し、評価した。
〔実施例6〕
先ず、実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性のTPI樹脂と、PFA樹脂をAP-210からネオフロンPFA AP-230〔ダイキン工業社製 製品名(以下、「AP-230」と略す〕に変更し、PFA樹脂をTPI樹脂100質量部に対して10質量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間撹拌混合することにより、撹拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ346℃であった。また、AP-230の見かけの剪断粘度をフローテスタを使用し、実施例1と同様の方法により測定した。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1で使用した幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを厚さ25μmの帯状に押出成形した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
こうして厚さ25μmの携帯機器スピーカ用の振動板用樹脂フィルムを押出成形したら、実施例1と同様方法により6インチの巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m,幅650mmの振動板用樹脂フィルムを製造した。実施例1では、冷却ロールである金属ロールの温度を180℃としたが、実施例6では金属ロールの温度を190℃に変更した。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を実施例1と同様の方法により測定して表2に記載し、評価した。
〔実施例7〕
先ず、実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性のTPI樹脂と、PFA樹脂をAP-210からフルオンPFA P-63P〔AGC社製 製品名(以下、「P-63Pと略す〕に変更し、PFA樹脂を結晶性のTPI樹脂100質量部に対して25質量部となるように計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間撹拌混合することにより、撹拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ344℃であった。また、P-63Pの見かけの剪断粘度をフローテスタを使用し、実施例1と同様の方法により測定した。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を実施例1で使用した幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを厚さ25μmの帯状に押出成形した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
こうして厚さ90μmの携帯機器スピーカ用の振動板用樹脂フィルムを押出成形したら、実施例1と同様方法により6インチの巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m,幅650mmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を測定して表2に記載し、評価することとした。
Figure 0007245122000002
〔比較例1〕
成形材料を変更し、結晶性のTPI樹脂のみを成形材料とした。この結晶性のTPI樹脂としては、実施例1で使用したTO-65を100質量部用意し、このTPI樹脂を160℃に加熱した除湿乾燥機で12時間乾燥させた。
次いで、成形材料を実施例1で使用した幅900mmのTダイス付きのφ40mmの単軸押出成形機に投入して溶融混練し、この溶融混練した成形材料をTダイスから連続的に押し出して厚さ6μmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを帯形に押出成形した。単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリューのタイプとした。また、単軸押出成形機の温度は300~330℃、Tダイスの温度は330℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管とギアポンプの温度はそれぞれ330℃に調整した。この単軸押出成形機に成形材料を投入する際、不可性ガス供給管により窒素ガス18L/分を供給した。
こうして厚さ6μmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを押出成形したら、この振動板用樹脂フィルムを、図1に示すようなシリコーンゴム製の一対の圧着ロール、150℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する巻取機の6インチの巻取管に順次巻架するとともに、圧着ロールと金属ロールとに挟持させ、連続した携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取管に順次巻き取ることにより、長さ100m、幅650mmの携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造した。
圧着ロールと巻取管との間には、振動板用樹脂フィルムの両側部を切断するスリット刃を昇降可能に配置し、巻取管とスリット刃との間には、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムにテンションを作用させるテンションロールを回転可能に軸支させた。
比較用の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造したら、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を実施例1と同様の方法により測定して表3に記載し、評価した。
〔比較例2〕
先ず、実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性のTPI樹脂と、実施例1のPFA樹脂であるP-210を用意し、PFA樹脂を結晶性のTPI樹脂100質量部に対して35質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ346℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を実施例1で使用した単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを押出成形しようとしたが、成形材料を単軸押出成形機にセットすることができなかった。したがって、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造することができなかった。
携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを製造することができなかったので、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの相対結晶化度、機械的特性、耐熱性、滑り性、音響特性を評価しなかった。
Figure 0007245122000003
〔評 価〕
各実施例の場合、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂に四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂を添加したので、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの静摩擦係数が0.240以上0.400以下と低く小さくなり、動摩擦係数も0.17以上0.32以下と低く小さくなった。この摩擦係数の低下により、十分な滑り性を得ることができ、携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを巻取機に巻き取る際、シワの生じるのを防ぐことができた。また、成形材料を、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂とで調製したので、高音特性の他、優れた低音特性、共振の発生を抑えた良好な音質特性を得られるのを確認した。
これに対し、比較例の場合、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂を添加しなかったので、振動板用樹脂フィルムの静摩擦係数と動摩擦係数、引張弾性率が高く大きくなった。この結果、振動板用樹脂フィルムを巻取機に巻き取る際、シワが確認された。
本発明に係る携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法は、携帯電話、携帯ゲーム機器、及びスマートフォン等の製造分野で使用される。
1 振動板用樹脂フィルム
2 成形材料
10 溶融押出成形機(押出成形機)
13 Tダイス(ダイス)
17 圧着ロール
18 冷却ロール
19 巻取機
20 巻取管

Claims (4)

  1. 結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部と、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂1質量部以上30質量部以下とを含有した成形材料により成形され、この成形材料の熱可塑性ポリイミド樹脂が、少なくともテトラカルボン酸成分と、脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とにより調製されており、
    静摩擦係数がJIS K 7125に準拠した測定法で測定した場合に0.04以上0.50以下、動摩擦係数がJIS K 7125に準拠した測定法で測定した場合に0.04以上0.50以下、23℃における引張最大強度がJIS K 7127に準拠した測定法で測定した場合に40N/mm 以上1000N/mm 以下、23℃における引張破断伸びがJIS K 7127に準拠した測定法で測定した場合に10%以上500%以下、20℃における損失正接が動的粘弾性法に準拠した測定法で測定した場合に0.014以上0.45以下であることを特徴とする携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム。
  2. 熱可塑性ポリイミド樹脂のジアミン成分は、少なくとも炭素数4以上12以下の直鎖状脂肪族ジアミンを含む請求項1記載の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム。
  3. 23℃における引張弾性率が1500N/mm以上3500N/mm以下である請求項1又は2記載の携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム。
  4. 請求項1、2、又は3に記載した携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの製造方法であって、
    結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部と、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂1質量部以上30質量部以下とにより成形材料を調製し、この成形材料の熱可塑性ポリイミド樹脂を、少なくともテトラカルボン酸成分と、脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とし、
    成形材料を溶融混練し、この成形材料を押出成形機のダイスにより携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムに押出成形するとともに、この携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを冷却ロールに接触させて冷却し、その後、冷却した携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムを巻取機に巻き取ることを特徴とする携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルムの製造方法。
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