以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における高耐熱・高摺動性フィルム2は、図1に示すように、高温域の耐熱性に優れる結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂にフッ素樹脂が添加された成形材料1により押出成形され、冷却されたフィルムであり、耐熱性[貯蔵弾性率(E´)の第一変曲点温度]が160℃以上とされるとともに、この160℃における引張弾性率が700N/mm2以上とされ、摺動性を示す静的摩擦係数と動的摩擦係数とがそれぞれ1.0以下とされる。
本実施形態における高耐熱・高摺動性フィルム2は、図1に示すように、高温域の耐熱性に優れる結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂含有の成形材料1が溶融押出成形機10により溶融混合され、この成形材料1を用いてTダイス13から押出成形され、その後、一対の圧着ロール17と冷却ロール18との間に挟持して冷却されることにより、2μm以上1000μm以下の厚さに製造される。
成形材料1は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部にフッ素樹脂1質量部以上30質量部以下が添加されることにより、調製される。この成形材料1には、本発明の特性を損なわない範囲で上記樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物等が選択的に添加される。
成形材料1には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂の他、本発明の記載以外のポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、ポリアミド11T(PA11T)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等のポリアリーレンエーテルケトン樹脂、ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニルサルホン(PPSU)樹脂等のポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂等を必要に応じ、添加することができる。
成形材料1の結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂は、熱可塑性を有する結晶性のポリイミド樹脂であれば特に限定されるものではないが、好ましくは特許第5365672号公報、特許第6024859号公報、あるいは特許第6037088号公報記載の熱可塑性を有するポリイミド樹脂、さらに好ましくは特許第6024859号公報、あるいは特許第6037088号公報記載の熱可塑性を有するポリイミド樹脂が良い。結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の具体例としては、強度や結晶性に優れ、160℃以上の耐熱性を有し、成形温度が低い三菱瓦斯化学社製のサープリムシリーズ〔製品名〕があげられる。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点は、280℃以上370℃以下であり、好ましくは290℃以上350℃以下、より好ましくは300℃以上330℃以下が良い。結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が280℃以上370℃以下の範囲なのは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が280℃未満の場合には、160℃以上の耐熱性を有する高耐熱・高摺動性フィルム2を得ることができないからである。これに対し、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が370℃を越える場合には、高耐熱・高摺動性フィルム2の製造温度が400℃以上となってしまうため、製造に用いる溶融押出成形機10が制限され、高耐熱・高摺動性フィルム2の製造が困難となるからである。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点は、160℃以上240℃以下、好ましくは170℃以上210℃以下、より好ましくは170℃以上190℃以下が良い。結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点が160℃以上240℃以下の範囲なのは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点が160℃未満の場合には、160℃以上の耐熱性を有する高耐熱・高摺動性フィルム2を得ることができないからである。これに対し、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移点が240℃を越える場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点が370℃を越えてしまうため、高耐熱・高摺動性フィルム2の製造温度が400℃以上となって高耐熱・高摺動性フィルム2の製造に支障を来したり、使用可能な溶融押出成形機10が制限されてしまうからである。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の見かけの剪断粘度は、温度350℃における見かけの剪断速度1×102sec-1の場合に、1×102Pa・s以上1×105Pa・s以下の範囲内、好ましくは5×102Pa・s以上1×104Pa・s以下の範囲内、より好ましくは7×102Pa・s以上5×103Pa・s以下の範囲内が良い。これは、温度350℃、見かけの剪断速度1×102sec-1における結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の見かけの剪断粘度が1×102Pa・s以上1×105Pa・s以下の範囲内であれば、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂中にフッ素樹脂を均一に分散させることができ、外観の優れた高耐熱・高摺動性フィルム2を得ることができるからである。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の製造方法は、特許第5365762号公報、特許第6024859号公報、特許第6037088号公報等に記載の製法が用いられる。また、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合可能な単量体とのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、あるいは変性体も使用することが可能である。結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の形状は、粉状、フレーク状、ペレット状、塊状等、いかなる形状でも良い。
フッ素樹脂は、分子構造の主鎖にフッ素原子を有する化合物であり、融点未満の温度の場合に固体形状であるのが好ましい。これは、フッ素樹脂が液状の場合には、押出成形後の高耐熱・高摺動性フィルム2から染み出し、高耐熱・高摺動性フィルム2と接触する被接触品が汚染するという理由に基づく。フッ素樹脂は、粉状、フレーク状、ペレット状、塊状、いかなる形状でも良い。
具体的なフッ素樹脂としては、融点が320℃以上327℃以下のポリテトラフルオロエチレン樹脂(四フッ化エチレン樹脂、以下、PTFE樹脂という。連続最高使用温度260℃)、融点が302℃以上310℃以下のポリテトラフルオロエチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(四フッ化エチレン‐パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、以下、PFA樹脂という。連続最高使用温度260℃)、融点が250℃以上275℃以下のポリテトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(四フッ化エチレン‐六フッ化プロピレン共重合体樹脂、以下、FEP樹脂という。連続最高使用温度205℃)、融点が218℃以上270℃以下のポリテトラフルオロエチレン‐エチレン共重合体樹脂(四フッ化エチレン‐エチレン共重合体樹脂、以下、ETFE樹脂という。連続最高使用温度150℃)、融点が210℃以上216℃以下のポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(三フッ化塩化エチレン樹脂、以下、PCTFE樹脂という。連続最高使用温度120℃)、融点が160℃以上180℃以下のポリビニデンフルオライド樹脂(フッ化ビニリデン樹脂、以下、PVdF樹脂という。連続最高使用温度120℃)、融点が210℃以上250℃以下のフッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロピレン共重合体樹脂(連続最高使用温度80℃以下120℃以上)があげられる。
これらのフッ素樹脂の中では融点が250℃以上、連続最高使用温度が200℃以上と耐熱性に優れ、入手のし易さ、取扱性、コストの観点から、PFA樹脂、FEP樹脂が好ましい。これらPFA樹脂とFEP樹脂は、単独で使用されたり、ブレンドして使用される。PFA樹脂とFEP樹脂の優れた点についてさらに説明すると、熱可塑性樹脂成形物あるいは熱硬化性樹脂成形物に摺動性を付与する場合には、一般的に固体材料中で最小の摩擦係数を有するPTFE樹脂を添加する方法が効果的である。
しかしながら、PTFE樹脂は、連続使用温度が260℃で耐熱性に優れるものの、溶融粘度が非常に高いため、溶融流動性がほとんど認められない。このPTFE樹脂を熱可塑性樹脂に添加した場合、PTFE樹脂は一般的に粉状の形状で使用される。PTFE樹脂を熱可塑性樹脂に添加し、熱可塑性樹脂との成形材料を作製し、この成形材料を用いた溶融押出成形によりフィルムを製造した場合、PTFE樹脂は均一分散性が悪いため、摺動性を付与するためには多量に添加しなければならない。
PTFE樹脂を熱可塑性樹脂に多量に添加した成形材料は、溶融時の伸びが大きく低下するため、フィルムの製造が著しく困難となる。さらに、分散不良に伴い、フィルムの機械的性質が低下し、フィルムの製造時に破断しやすくなるため、フィルムの製造化が困難となったり、外観不良となる。したがって、フッ素樹脂としては、PFA樹脂やFEP樹脂の選択が最適である。
PFA樹脂の具体例としては、ネオフロンPFAシリーズ〔ダイキン工業株式会社製:製品名〕、フルオンPFAシリーズ〔旭硝子社製:製品名〕、テフロン(登録商標)PFAシリーズ〔三井・デュポンフロロケミカル社製:製品名〕、3Mダイニオン熱可塑性フッ素樹脂PFAシリーズ〔スリーエム社製:製品名〕、アルゴフロンPFAシリーズ〔ソルベイススペシャルティポリマーズ社製:製品名〕等があげられる。また、FEP樹脂の具体例としては、ネオフロンFEPシリーズ〔ダイキン工業社製:製品名〕やテフロンFEPシリーズ〔三井・デュポンフロロケミカル社製:製品名〕等があげられる。
フッ素樹脂は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に1質量部以上30質量部以下が添加されるが、好ましくは5質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上15質量部以下が添加されると良い。これは、フッ素樹脂の添加量が1質量部未満の場合には、高耐熱・高摺動性フィルム2に摺動性を充分に付与することができないという理由に基づく。逆に、フッ素樹脂の添加量が30質量部を越える場合には、溶融混練物の溶融押出が不安定化し、ストランド状やシート状等の形状に押し出しすることができず、適切な成形材料1を得ることができないという理由に基づく。
フッ素樹脂は、温度350℃、荷重50kgfの条件下で直径1.0mm×長さ10mmのダイスを用い、フローテスターで測定した温度350℃における見かけの剪断粘度が1×102Pa・s以上1×105Pa・s以下、好ましくは7×102Pa・s以上5×104Pa・s以下、より好ましくは9×102Pa・s以上2×104Pa・s以下の範囲内とされる。これは、係る範囲の剪断粘度であれば、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂中にフッ素樹脂を均一に分散させることができ、外観の優れた高耐熱・高摺動性フィルム2の製造が期待できるからである。
上記において、高耐熱・高摺動性フィルム2を製造する場合、先ず、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とから成形材料1を調製するが、この成形材料1の調製方法としては、(1)結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを常温(0℃以上50℃以下程度の温度範囲)下で攪拌混合し、成形材料1を調製する方法、(2)結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを攪拌混合することなく、溶融した結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂にフッ素樹脂を添加し、これらを溶融混練して成形材料1を調製する方法があげられる。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂は、フッ素樹脂との溶融混練前に含水率を低下させるため、加熱乾燥されることが好ましい。この結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の加熱乾燥温度は、130℃以上180℃以下、好ましくは140℃以上170℃以下が良い。また、加熱乾燥時間は、4時間以上、好ましくは8時間以上が良い。加熱乾燥時間の上限は、特に限定されるものではないが、24時間以下が妥当である。これら(1)、(2)の調製方法は、いずれもが採用可能であり、必要に応じ、選択的に採用される。
(1)の調製方法について説明すると、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂との攪拌混合には、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、V型混合機、ナウタリーミキサー、リボンブレンダー、万能攪拌ミキサー等の公知の攪拌混合機が使用される。また、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とからなる成形材料1は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とからなる攪拌混合物をミキシングロール、加圧ニーダー、単軸押出成形機、多軸押出成形機(二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等)等からなる溶融混練機で溶融混練することにより調製することができる。
溶融混練機で成形材料1を溶融混練する場合、溶融混練機のベント孔に真空ポンプを接続し、この真空ポンプを駆動して成形材料1を減圧下で溶融混練することができる。減圧下で溶融混練すれば、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂やフッ素樹脂中に含まれている分解ガスや水分等の揮発ガスを除去することができるので、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の含水率を低下させることができ、フッ素樹脂との混練前における結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の加熱乾燥が不要となる。
また、溶融混練機で成形材料1を調製する場合、溶融混練機の原料投入口に、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス等の不活性ガスを必要に応じて流入させることができる。こうすれば、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂やフッ素樹脂の酸化劣化や酸素架橋を有効に防止することができる。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを溶融混練する場合の温度は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点以上、あるいはフッ素樹脂の融点以上結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度未満、フッ素樹脂の熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には、280℃以上400℃未満、好ましくは300℃以上370℃以下、より好ましくは330℃以上360℃以下が良い。これは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点未満、あるいはフッ素樹脂の融点未満の場合には、成形材料1による成形が困難となり、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度以上の場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂あるいはフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを攪拌混合する場合、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂にフッ素樹脂を所定量以上分散させ、マスターバッチ化することができる。また、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とからなる成形材料1は、ストランド状やシート状等に押し出された後、粉砕機や裁断機で粉状、顆粒状、ペレット状等の高耐熱・高摺動性フィルム成形加工に適した形態に加工して使用される。
次に、(2)の調製方法について説明すると、この調製方法の場合には、先ず、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂をミキシングロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出成形機、多軸押出成形機(二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等)等からなる溶融混練機で溶融混練し、その後、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂にフッ素樹脂を添加して溶融混練させることにより、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂含有の成形材料1を調製する。
溶融混練機で成形材料1を溶融混練する場合、上記同様、溶融混練機のベント孔に真空ポンプを接続し、この真空ポンプを駆動して減圧下で成形材料1を溶融混練しても良い。減圧下で溶融混練すれば、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂やフッ素樹脂中に含まれている分解ガスや水分等の揮発ガスを除去することができるので、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の含水率低下が期待でき、フッ素樹脂との混練前における結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の加熱乾燥が不要となる。
溶融混練機で成形材料1を調製する場合、上記同様、溶融混練機の原料投入口に、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス等の不活性ガスを必要に応じて流入させることができる。こうすれば、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂やフッ素樹脂の酸化劣化や酸素架橋を有効に防止することができる。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを溶融混練する場合の温度は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点以上、あるいはフッ素樹脂の融点以上結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度未満、フッ素樹脂の熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には、280℃以上400℃未満、好ましくは300℃以上370℃以下、より好ましくは330℃以上360℃以下が良い。これは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点未満、あるいはフッ素樹脂の融点未満の場合には、成形材料1による成形が困難となり、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度以上の場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂あるいはフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とを攪拌混合する場合、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂にフッ素樹脂を所定量以上分散させ、マスターバッチ化することができる。また、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とからなる成形材料1は、ストランド状やシート状等に押し出された後、粉砕機や裁断機で粉状、顆粒状、ペレット状等の高耐熱・高摺動性フィルム成形加工に適した形態に加工して使用される。
このような結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂含有の成形材料1を用い、高耐熱・高摺動性フィルム2を製造する場合には、溶融押出成形法、カレンダー成形法、又はキャスティング成形法等の公知の製造方法を採用することができる。しかしながら、高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さ精度、生産性、ハンドリング性の向上、設備の簡略化の観点から、溶融押出成形法により連続的に薄く押出成形することが好ましい。ここで、溶融押出成形法とは図1に示すように、溶融押出成形機10を使用して成形材料1を溶融混練し、溶融押出成形機10のTダイス13から高耐熱・高摺動性フィルム2を連続的に押し出す成形方法である。
溶融押出成形機10は、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料1を溶融混練するように機能する。この溶融押出成形機10の上部後方には、成形材料1用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、へリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガス(図1の矢印参照)を必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料1の酸化劣化や酸素架橋の有効防止が期待できる。
単軸押出成形機や二軸押出成形機等の溶融押出成形機10としては、ベント孔を有している溶融押出成形機10の使用が好ましい。このベント孔を使用して減圧下で溶融混練することにより、成形材料1中に含まれている分解ガスや水分等の揮発ガスを除去することができるので、成形材料1の溶融混練前の加熱乾燥が不要となる。
溶融押出成形機10の溶融混練時の温度は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点以上、あるいはフッ素樹脂の融点以上結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度未満、フッ素樹脂の熱分解温度未満の範囲が良い。具体的には、280℃以上400℃未満、好ましくは300℃以上370℃以下、より好ましくは330℃以上360℃以下が良い。これは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点未満、あるいはフッ素樹脂の融点未満の場合には、成形材料1の溶融押出成形が困難となり、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂やフッ素樹脂の熱分解温度以上の場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂あるいはフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるという理由に基づく。
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、帯形の高耐熱・高摺動性フィルム2を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の押出時の温度は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の融点、フッ素樹脂の融点以上結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度、あるいはフッ素樹脂の熱分解温度未満の範囲である。具体的には、280℃以上400℃以下、好ましくは300℃以上370℃以下、さらに好ましくは330℃以上360℃以下に調整される。
これは、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂やフッ素樹脂の融点未満の場合には、成形材料1の溶融押出成形に支障を来し、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の熱分解温度以上、あるいはフッ素樹脂の熱分解温度以上の場合には、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂やフッ素樹脂が激しく分解するおそれがあるからである。
Tダイス13の上流の連結管14には、ギアポンプ15とフィルタ16とがそれぞれ装着されることが好ましい。ギアポンプ15は、溶融押出成形機10により溶融混練された成形材料1を一定の流量で、かつ高精度にTダイス13にフィルタ16を介して移送する。また、フィルタ16は、溶融状態の成形材料1のゲルや異物等を分離し、溶融状態の成形材料1をTダイス13に移送する。
フィルタ16は、例えば多数の孔を同心円に備えた円形、多数の孔を有する焼結金属、あるいは金属性のメッシュからなり、高耐熱・高摺動性フィルム2の平均厚さの0.5倍以上6倍以下、好ましくは0.5倍以上4倍以下、より好ましくは0.5倍以上3.8倍以下の小さな開口を複数有する。フィルタ16の開口が0.5倍以上なのは、0.5倍未満の場合には、成形材料1の押出圧量が高くなるので、フィルタ16が破損するおそれがあり、しかも、生産性が著しく低下するからである。
一対の圧着ロール17は、Tダイス13の下方に回転可能に軸支され、冷却ロール18を摺接可能に狭持する。この一対の圧着ロール17のうち、下流の圧着ロール17のさらに下流には、高耐熱・高摺動性フィルム2を巻き取る巻取機19の巻取管20が回転可能に設置され、圧着ロール17と巻取機19の巻取管20との間には、高耐熱・高摺動性フィルム2の側部にスリットを形成するスリット刃21が昇降可能に配置されており、このスリット刃21と巻取機19の巻取管20との間には、高耐熱・高摺動性フィルム2にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール22が必要数軸支される。
各圧着ロール17の周面には、高耐熱・高摺動性フィルム2と冷却ロール18との密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被膜形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
圧着ロール17としては、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れる高耐熱・高摺動性フィルム2の成形が可能となる。この金属弾性ロールの具体例としては、例えば金属スリーブロール、エアーロール〔ディムコ社製 製品名〕、UFロール〔日立造船社製 製品名〕が該当する。
このような圧着ロール17は、240℃以下、好ましくは50℃以上220℃以下、より好ましくは130℃以上200℃以上、さらに好ましくは160℃以上200℃以下の温度に調整され、高耐熱・高摺動性フィルム2に摺接してこれを冷却ロール18に圧接する。圧着ロール17の温度が係る範囲なのは、圧着ロール17の温度が240℃を越える場合には、製造中の高耐熱・高摺動性フィルム2が圧着ロール17に貼り付き、高耐熱・高摺動性フィルム2が破断するか、あるいは圧着ロール17に被覆形成されたゴム層が熱分解するおそれがあるという理由に基づく。
逆に、圧着ロール17の温度が50℃未満の場合には、圧着ロール17が結露するため、好ましくないという理由に基づく。圧着ロール17の温度調整や冷却方法としては、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーターや誘電加熱ロール等があげられる。
冷却ロール18は、例えば圧着ロール17よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイス13の下方に回転可能に軸支されて押し出された高耐熱・高摺動性フィルム2を圧着ロール17との間に狭持し、圧着ロール17と共に高耐熱・高摺動性フィルム2を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御するように機能する。この冷却ロール18は、圧着ロール17と同様、240℃以下、好ましくは50℃以上220℃以下、より好ましくは130℃以上200℃以上、さらに好ましくは160℃以上200℃以下の温度に調整され、高耐熱・高摺動性フィルム2に摺接する。
冷却ロール18が50℃以上240℃以下の温度に調整されるのは、冷却ロール18の温度が240℃を越える場合には、製造中の高耐熱・高摺動性フィルム2が冷却ロール18に密着して高耐熱・高摺動性フィルム2の破断を招いたり、あるいはゴム層が被覆形成された圧着ロール17の場合、圧着ロール17のゴム層が熱分解するおそれがあるからである。これに対し、冷却ロール18の温度が50℃未満の場合には、冷却ロール18に結露が生じ、好ましくないからである。冷却ロール18の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーターや誘導加熱等があげられる。
上記において、高耐熱・高摺動性フィルム2を製造する場合には図1に示すように、先ず、溶融押出成形機10の原料投入口11に、成形材料1を同図に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料1を加熱・加圧状態で溶融混練し、Tダイス13から薄膜の高耐熱・高摺動性フィルム2を連続的に帯形に押し出す。
この際、成形材料1の溶融押出前における含水率は、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以上500ppm以下に調整される。これは、成形材料1の溶融押出前における含水率が2000ppmを越える場合には、高耐熱・高摺動性フィルム2が発泡するおそれがあるからである。成形材料1の溶融混練前の含水率の下限は、特に限定されるものでないが、100ppm以上が好ましい。
帯形の高耐熱・高摺動性フィルム2を押し出したら、一対の圧着ロール17、冷却ロール18、テンションロール22、巻取機19の巻取管20に順次巻架し、高耐熱・高摺動性フィルム2を冷却ロール18により冷却した後、高耐熱・高摺動性フィルム2の両側部をスリット刃21でそれぞれカットするとともに、巻取管20に順次巻き取れば、高耐熱・高摺動性フィルム2を製造することができる。この高耐熱・高摺動性フィルム製造の際、高耐熱・高摺動性フィルム2の表裏面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、高耐熱・高摺動性フィルム2両面の摩擦係数を低下させることができる。
微細な凹凸を形成する方法としては、(1)微細な凹凸を備えた冷却ロール18と微細な凹凸を備えた圧着ロール17とで高耐熱・高摺動性フィルム2を挟み、微細な凹凸を形成する方法、(2)高耐熱・高摺動性フィルム2に微小なジルコニア、ガラス、ステンレス等の無機化合物、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、あるいは植物の種等の有機化合物を吹き付けて微細な凹凸を形成する方法、(3)高耐熱・高摺動性フィルム2を微細な凹凸を備えた金型でプレス成形し、微細な凹凸を形成する方法があげられる。これらの方法の中では、設備の簡略化、凹凸サイズの精度、凹凸形成の均一化、あるいは凹凸形成の容易さ、連続的に凹凸の形成が可能な観点から(1)の方法が最適である。
(1)の方法をさらに詳細に説明すると、(1-1)結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とからなる攪拌混合物を溶融押出成形機10で溶融混練して成形材料1を調製し、この成形材料1を溶融押出成形機10のTダイス13から微細な凹凸を周面に備えた冷却ロール18上に吐き出すとともに、この吐出物を冷却ロール18と微細な凹凸を周面に備えた圧着ロール17とで挟み、高耐熱・高摺動性フィルム2の溶融押出成形と同時に成形する方法、(1-2)成形した高耐熱・高摺動性フィルム2を微細な凹凸を周面に備えた冷却ロール18と微細な凹凸を周面に備えた圧着ロール17とで挟み、凹凸を形成する方法があげられる。これらの中では、設備の簡略化の観点から、(1-1)の方法が好ましい。
冷却後の高耐熱・高摺動性フィルム2の耐熱性に関しては、貯蔵弾性率(E´)の第一変曲点温度と160℃における引張弾性率で評価することができる。貯蔵弾性率(E´)の第一変曲点温度は、160℃以上、好ましくは165℃以上、さらに好ましくは170℃以上が良い。これは、貯蔵弾性率の第一変曲点温度が160℃未満の場合には、高耐熱・高摺動性フィルム2の耐熱性が不十分となるからである。高耐熱・高摺動性フィルム2のガラス転移点の上限は、特に限定されるものではないが、240℃以下が好ましい。
冷却後の高耐熱・高摺動性フィルム2の160℃における引張弾性率は、700N/mm2以上5000N/mm2以下、好ましくは900N/mm2以上5000N/mm2以下、より好ましくは1000N/mm2以上5000N/mm2以下の範囲が最適である。これは、高耐熱・高摺動性フィルム2の160℃における引張弾性率が700N/mm2未満の場合には、高耐熱・高摺動性フィルム2の耐熱性が不十分となるからである。
冷却後の高耐熱・高摺動性フィルム2の摺動性は、静的摩擦係数と動的摩擦係数とで表すことができる。この摺動性の静的摩擦係数は1.0以下とされ、動的摩擦係数は1.0以下とされる。これは、静的摩擦係数と動的摩擦係数とが1.0を越える場合には、十分な滑り性を得ることができないからである。
冷却後の高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さは、2μm以上1000μm以下、好ましくは5μm以上750μm以下、より好ましくは10μm以上500μm以下の範囲とされる。これは、高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さが2μm未満の場合には、高耐熱・高摺動性フィルム2の機械的強度が著しく低下するので、高耐熱・高摺動性フィルム2の成形が困難になるという理由に基づく。逆に、高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さが1000μmを越える場合には、成形速度が著しく低下し、生産性に劣ることになるという理由に基づく。この高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さは、各種の接触式厚さ計により、測定することができる。
高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さ公差は、例えば高耐熱・高摺動性フィルム2がスピーカの振動板等に利用される場合には、平均値±10%の範囲内、好ましくは平均値±5%の範囲内が良い。これは、高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さ交差が平均値±10%の範囲を外れると、スピーカの音質にバラツキが生じるからである。この高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さ公差は、所定の式により求めることができる。
高耐熱・高摺動性フィルム2の表裏面に微細な凹凸が形成される場合、微細な凹凸は、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上5.0μm以下、好ましくは0.2μm以上4.5μm以下が最適である。これは、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm未満の場合には、目的とする摺動性を得ることができないからである。また、算術平均粗さ(Ra)が5.0μmを越える場合には、高耐熱・高摺動性フィルム2の強度が低下し、押出成形中の破断を招くからである。
高耐熱・高摺動性フィルム2の耐熱性を向上させたい場合には、結晶化度を調整すれば良い。この高耐熱・高摺動性フィルム2の結晶化度の調整方法としては、(1)結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂とからなる溶融混練物を溶融押出成形機10で溶融混練し、この溶融混練物を溶融押出成形機10のTダイス13から240℃以下、好ましくは50℃以上240℃以下、より好ましくは130℃以上220℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下の温度に調整された冷却ロール18上に吐き出して密着させ、高耐熱・高摺動性フィルム2の成形と同時に結晶化度を調整する方法、(2)高耐熱・高摺動性フィルム2を製造した後、240℃以下、好ましくは50℃以上240℃以下、より好ましくは130℃以上220℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下の温度に調整された冷却ロール18上に密着させ、結晶化度を調整する方法、(3)高耐熱・高摺動性フィルム2を製造した後、240℃以下、好ましくは50℃以上240℃以下、より好ましくは130℃以上220℃以下、さらに好ましくは150℃以上200℃以下の温度に調整された赤外線加熱炉内、あるいは熱風炉内を通すことにより、結晶化度を調整する方法があげられる。
結晶化度の調整の際、冷却ロール18の温度は50℃以上240℃以下の範囲とされるが、これは冷却ロール18の温度が240℃を越える場合には、高耐熱・高摺動性フィルム2が冷却ロール18に貼り付き、高耐熱・高摺動性フィルム2に破断が生じるおそれがあるからである。また、冷却ロール18の温度が50℃未満の場合には、冷却ロール18が結露し、不適切であるからである。
高耐熱・高摺動性フィルム2の結晶化度の調整は、(1)、(2)の方法のいずれをも採用することができるが、設備の簡略化、高耐熱・高摺動性フィルム2の結晶化時間の短縮、高耐熱・高摺動性フィルム2の厚さ精度の管理の容易化の観点からすると、(1)の方法が好適である。
上記によれば、ガラス転移点が非常に高い結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂とフッ素樹脂含有の成形材料1により、高耐熱・高摺動性フィルム2を製造するので、優れた耐熱性を安価に得ることができ、例え160℃以上の携帯機器等の用途に利用されても、高耐熱・高摺動性フィルム2が変形したり、破れることがない。また、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂を用いるので、耐熱性と摺動性とを両立させることができる他、優れた耐摩耗性と耐溶剤性とを得ることができる。
なお、製造した高耐熱・高摺動性フィルム2は、そのまま使用することもできるが、優れた圧縮特性や損失正接を得たい場合には、積層中間体の一部とし、この積層中間体を成形してスピーカの振動板等としても良い。この場合の積層中間体は、厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層と、このエラストマー層の表裏両面にプライマーを介しそれぞれ積層接着される複数枚の高耐熱・高摺動性フィルム2とを多層構造に備え、主に携帯機器内蔵用に使用することができる。また、上記実施形態のフィルタ16の円板やメッシュ等は、必要に応じ、複数を選択的に使用することができる。また、フィルタ16の開口形状は、円形、楕円形、矩形、多角形等を特に問うものではない。
以下、本発明に係る高耐熱・高摺動性フィルム及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、成形材料として結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂〔三菱瓦斯化学社製 製品名:サープリムTO-65(以下、TO-65と略す)〕を用意し、この熱可塑性ポリイミド樹脂を160℃に加熱した熱風乾燥機で24時間乾燥させ、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対してフッ素樹脂であるPFA樹脂〔ダイキン工業社製 製品名:ネオフロン PFA AP‐201(以下、AP‐201と略す)〕を10質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を同方向回転二軸押出成形機に投入して溶融混練し、この攪拌混合物を同方向回転二軸押出成形機の先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後にカットし、ペレット形の成形材料を調製した。同方向回転二軸押出成形機は、φ25mm、L/D=41のタイプを用いた。また、攪拌混合物は、シリンダー温度200~350℃、ダイス温度350℃の条件下で溶融混練し、成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ345℃であった。
結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の見かけの剪断粘度は、結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂を160℃で24時間乾燥させた後、ツインキャピラリーレオメーターR6000〔IMATEK社製 製品名〕を使用して測定した。具体的には、キャピラリーダイ:φ1.0mm×16mm(ロングダイ)、φ1.0mm×0.25mm(ショートダイ)、バレル径:15mm、温度:350℃の条件下において、熱可塑性ポリイミド樹脂をバレル内に40g投入し、ロングダイ側:0.9MPa、ショートダイ側:0.3MPaになるまでピストンを50mm/minの速度で押し込み、圧力が所定の値となったら、そのままの状態で6分間保持した。
その後、再びロングダイ側:0.9MPa、ショートダイ側:0.3MPaになるまでピストンを50mm/minの速度で押し込み、圧力が所定の値となったら、所定の見かけの剪断速度(1×101、2×101、3×101、5×101、8×101、1×102、3×102、8×102sec-1)を与えて測定し、見かけの剪断粘度を求めた。見かけの剪断速度が1×102sec-1のときの結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂の見かけの剪断粘度は、1.32×103Pa・sであった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して24時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ25μmの帯形に押出成形した。この際、成形材料の含水率は、微量水分測定装置〔三菱化学社製 製品名CA-100型〕を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。測定の結果、成形材料の含水率は300ppm以下であった。この成形材料の含水率の測定は、以下の実施例や比較例についても同様とした。
単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。この単軸押出成形機のシリンダー温度は350℃~360℃、Tダイスの温度は350℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は350℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、これらギアポンプとフィルタの温度は350℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ353℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、算術平均粗さ(Ra)が0.44~0.47μmのシリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に算術平均粗さ(Ra)が1.86μmの凸柄模様を備えた170℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、この高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価してその結果を表1に記載した。高耐熱・高摺動性フィルムの表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)により評価した。また、耐熱性は、貯蔵弾性率の第一変曲点温度と高耐熱・高摺動性フィルムの160℃における引張弾性率により評価した。また、摺動性は、静的摩擦係数(以下、μsという)、動的摩擦係数(以下、μkという)により評価した。
・フッ素樹脂の見かけの剪断粘度
フッ素樹脂の見かけの剪断粘度については、フローテスター〔島津製作所製 製品名島津フローテスタCFT-500D〕により測定した。具体的には、樹脂1.5cm3をダイ(直径:1mm、長さ10mm)に装着した350℃のシリンダー内に充填し、このシリンダーの上部に、面積が1.0cm2のプランジャーを取り付け、シリンダーの温度が350℃に達したら、5分間予備加熱するとともに、この予備加熱後に直ちに50kgfの荷重を加え、フッ素樹脂を溶融流出させてその剪断粘度を測定した。
・高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚
フィルム厚が2μm以上10μmの高耐熱・高摺動性フィルムの厚さについては、接触式の厚さ計〔Marh社製 製品名:電子マイクロメータミロトン1240〕を使用して測定した。これに対し、フィルム厚が10μmを越えた高耐熱・高摺動性フィルムの厚さについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC-25PJ〕を使用して測定した。
測定に際しては、高耐熱・高摺動性フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)が交わる所定位置の厚みを20箇所測定し、その平均値をフィルム厚とした。押出方向の測定箇所は、高耐熱・高摺動性フィルムの先端部から100mmの箇所とした。これに対し、幅方向の測定箇所は、高耐熱・高摺動性フィルムの左端部から25mm、次いで30mm間隔で55mm、85mm、115mm、145mm、175mm、205mm、235mm、265mm、295mm、325mm、355mm、385mm、415mm、445mm、475mm、505mm、535mm、565mm、595mmの箇所とした。
・高耐熱・高摺動性フィルムの表面粗さ
高耐熱・高摺動性フィルムの表面粗さについては、算術平均粗さ(Ra)により評価した。この算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601‐2001に準じ、高耐熱・高摺動性フィルムの押出方向について、金属ロール面側と圧着ロール面側とを測定した。
・高耐熱・高摺動性フィルムの耐熱性〔貯蔵弾性率(E’)の第一変曲点温度〕
高耐熱・高摺動性フィルムの耐熱性については、貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。この高耐熱・高摺動性フィルムの貯蔵弾性率は、高耐熱・高摺動性フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、高耐熱・高摺動性フィルムの押出方向の貯蔵弾性率を測定する場合には、押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の貯蔵弾性率を測定する場合には、押出方向6mm×幅方向60mmの大きさに切り出して測定した。
貯蔵弾性率の測定に際しては、粘弾性スペクトルメータ〔ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA-G2〕を用いて引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲-60~360℃、チャック間距離21mmの条件で測定した。
第一変曲点温度は、図2に示すように、貯蔵弾性率の変化曲線に対する2つの直線部を延長した交点の温度とした。具体的には、先ず、貯蔵弾性率の最初に急激に低下する前の直線部を高温側に延長し、1本目の直線(a)を引く。次いで、貯蔵弾性率が最初に急激に低下した後の直線部を低温側に延長して2本目の直線(b)を引く。そしてその後、両線(a)、(b)の交点における垂直線を横軸の温度軸に引き、その温度を第一変曲点温度として求めた。
・高耐熱・高摺動性フィルムの160℃における引張弾性率
高耐熱・高摺動性フィルムの160℃における引張弾性率は、高耐熱・高摺動性フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。測定用の試験片は、JIS K7160 3形を使用した。具体的には、高耐熱・高摺動性フィルムからJIS K7160 3形に試験片を切り出し、この試験片を予め160℃の加熱した恒温槽付き引張試験機に取り付け、JIS K7127に準拠し、引張速度50mm/分で測定した。測定は、試験片を恒温槽内の引張試験機のつまみ具に取り付け、恒温槽の扉を閉じ、恒温槽の温度が160±2℃に達した後、3分間放置した後に実施した。
・高耐熱・高摺動性フィルムの摺動性
高耐熱・高摺動性フィルムの摺動性は、静的摩擦係数(以下、μsという)と動的摩擦係数(以下、μkという)とにより評価した。これら静的摩擦係数と動的摩擦係数とは、JIS K7125‐1999に準拠して測定した。具体的には、表面性測定機〔新東科学社製 製品名:HEDON-14〕を使用し、23℃、50%RHの環境下で、試験速度:100mm/min、荷重:200g、接触面積:63.5mm×63.5mmの条件下で測定した。
そして、移動テーブル側に、市販のステンレス板、市販のガラス板、及び各種の樹脂フィルム・シートを固定し、200gの荷重を作用させ、100mm/minの速度で静的摩擦係数と動的摩擦係数とをそれぞれ測定した。各種の樹脂フィルム・シートとしては、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製 製品名:カプトン、品番:100H、以下、PI樹脂フィルムという〕、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム〔東レ社製 製品名:ルミラー100S10、以下、PET樹脂フィルムという〕、ポリカーボネート樹脂シート〔三菱エンジニアリングプラスチック社製 製品名:ユーピロン・シート、グレード:NF‐2000、以下、PC樹脂シートという〕、製造した高耐熱・高摺動性フィルムを用いた。
・高耐熱・高摺動性フィルムの耐溶剤性
高耐熱・高摺動性フィルムの耐溶剤性を評価する場合には、高耐熱・高摺動性フィルムを5cm×5cmのサイズに裁断し、この高耐熱・高摺動性フィルムとN‐メチル‐2‐ピロリドン5gとをPET/AL/PE構成平袋〔日本生産社製 製品名:ラミジップ〕に投入し、ヒートシールして封をした。
こうしてPET/AL/PE構成平袋をヒートシールして封止したら、このPET/AL/PE構成平袋を55℃に加熱した熱風乾燥機中に24時間静置し、静置後にPET/AL/PE構成平袋から高耐熱・高摺動性フィルムを取り出してその外観を目視により○×で評価した。
○:高耐熱・高摺動性フィルムの外観に変化なし
×:高耐熱・高摺動性フィルムが部分的に溶解し、高耐熱・高摺動性フィルムの形状が崩れていた
〔実施例2〕
先ず、実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と、フッ素樹脂であるPFA樹脂をAP‐201からネオフロン PFA AP‐210〔ダイキン工業社製 製品名(以下、AP‐210と略す)〕に変更し、PFA樹脂を結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して3質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ345℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ8.2μmの帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。
単軸押出成形機とスクリューとは、実施例1と同様とした。単軸押出成形機のシリンダー温度は350℃~360℃、Tダイスの温度は350℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は350℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、ギアポンプとフィルタの温度は350℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ355℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凸柄模様を備えた150℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。シリコーンゴム製の圧着ロールと金属ロールとは、実施例1と同様とした。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、実施例1と同様により、高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価してその結果を表1に記載した。
〔実施例3〕
先ず、実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と、実施例2のフッ素樹脂であるPFA樹脂を用意し、PFA樹脂を結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して15質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、Tダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ345℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ353μmの帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。
単軸押出成形機とスクリューとは、実施例1と同様とした。単軸押出成形機のシリンダー温度は350℃~360℃、Tダイスの温度は350℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は350℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、ギアポンプとフィルタの温度は350℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ352℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に算術平均粗さ(Ra)が2.90μmの凸模様を備えた200℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。シリコーンゴム製の圧着ロールは、実施例1と同様とした。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法により、高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価してその結果を表1に記載した。
〔実施例4〕
実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と、フッ素樹脂であるPFA樹脂をネオフロン PFA AP‐230〔ダイキン工業社製 製品名(以下、AP‐230と略す)〕とし、PFA樹脂を結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して10質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ346℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ50μmの帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であった。
単軸押出成形機とスクリューとは、実施例1と同様とした。単軸押出成形機のシリンダー温度は350℃~360℃、Tダイスの温度は350℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は350℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、ギアポンプとフィルタの温度は350℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ354℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凸模様を備えた180℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。シリコーンゴム製の圧着ロールは実施例1と同様とし、金属ロールは実施例3と同様とした。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法により、高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価してその結果を表2にまとめた。
〔実施例5〕
実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と、フッ素樹脂であるPFA樹脂をフルオンPFA P‐63P〔旭硝子社製 製品名(以下、P‐63Pと略する)〕とし、PFA樹脂を結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して25質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ345℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ249μmの帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であるのを確認した。
単軸押出成形機とスクリューとは、実施例1と同様である。単軸押出成形機のシリンダー温度は350℃~360℃、Tダイスの温度は350℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は350℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、ギアポンプとフィルタの温度は350℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガスを18L/分供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ354℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凸模様を備えた180℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。シリコーンゴム製の圧着ロールは実施例1と同様とし、金属ロールは実施例3と同様とした。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法により、高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価し、評価結果を表2にまとめた。
〔実施例6〕
実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と、フッ素樹脂であるFEP樹脂を〔ダイキン工業社製 製品名:ネオフロン FEP NP‐20(以下、NP‐20と略する)〕とを用意し、FEP樹脂を結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して5質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ343℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ101μmの帯形に押出成形した。成形材料の含水率は、300ppm以下であるのを確認した。
単軸押出成形機とスクリューとは、実施例1と同様である。単軸押出成形機のシリンダー温度は350℃~360℃、Tダイスの温度は350℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は350℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、ギアポンプとフィルタの温度は350℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ352℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凸模様を備えた160℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。シリコーンゴム製の圧着ロールは実施例1と同様とし、金属ロールは実施例3と同様とした。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、実施例1と同様とし、高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価し、評価結果を表2にまとめた。
〔比較例1〕
先ず、成形材料として実施例1の結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂を用意し、この熱可塑性ポリイミド樹脂を160℃に加熱した熱風乾燥機で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、乾燥した結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂を、幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ30μmの帯形に押出成形した。
単軸押出成形機とスクリューとは、実施例1と同様とした。単軸押出成形機のシリンダー温度は350℃~355℃、Tダイスの温度は350℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は350℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、ギアポンプとフィルタの温度は350℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガスを18L/分供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ351℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凸模様を備えた180℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。シリコーンゴム製の圧着ロールと金属ロールは、実施例1と同様とした。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、この高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価してその結果を表3にまとめた。
〔比較例2〕
先ず、実施例1の160℃で24時間乾燥させた結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂と、実施例2のフッ素樹脂であるPFA樹脂を用意し、PFA樹脂を結晶性の熱可塑性ポリイミド樹脂100質量部に対して35質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様にして成形材料を調製したが、溶融混練時の温度については、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ346℃であった。
次いで、成形材料を160℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形しようとしたが、成形材料を単軸押出成形機にセットすることができなかった。したがって、高耐熱・高摺動性フィルムを製造することができなかった。
高耐熱・高摺動性フィルムを製造することができなかったので、高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価しなかった。
〔比較例3〕
先ず、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂として、キータススパイアPEEK KT‐851NL SP〔ソルベイススペシャルティポリマーズ社製 製品名(以下、KT‐851NL SPと略する)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を150℃に加熱した熱風乾燥機に投入して12時間乾燥させた。こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂を乾燥させたら、実施例2のフッ素樹脂であるPFA樹脂をポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対して10質量部となるよう計量し、その後、2種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を同方向回転二軸押出成形機に投入して溶融混練し、この攪拌混合物を同方向回転二軸押出成形機の先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後にカットし、ペレット形の成形材料を調製した。同方向回転二軸押出成形機は、φ25mm、L/D=41のタイプを用いた。また、攪拌混合物は、シリンダー温度300~380℃、ダイス温度380℃の条件下で溶融混練し、成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ379℃であった。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に投入して24時間乾燥させ、成形材料の含水率が300ppm以下であるのを確認後、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ77μmの帯形に押出成形した。
単軸押出成形機とスクリューとは実施例1と同様とした。この単軸押出成形機のシリンダー温度は380℃~400℃、Tダイスの温度は400℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は400℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、これらギアポンプとフィルタの温度は400℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ395℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凸模様を備えた200℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。シリコーンゴム製の圧着ロールは実施例1と同様とし、金属圧着ロールは実施例3と同様とした。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、この高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価してその結果を表4にまとめた。
〔比較例4〕
先ず、比較例3で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂と、ポリエーテルイミド樹脂〔SABICイノベーティブプラスチック社製 製品名:ULTEM 9011‐1000‐NB〕とを用意し、これらが組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂20質量%、ポリエーテルイミド樹脂80質量%となるよう計量した。ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とは、150℃に加熱した除湿乾燥機で24時間乾燥させ、含水率が300ppm以下であるのを確認後、使用した。
計量が終了したら、フッ素樹脂として実施例1のPFA樹脂を、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂の合計量100質量部に対して10質量部となるよう計量し、その後、3種類の樹脂を混合機に投入して室温で1時間攪拌混合することにより、攪拌混合物を調製した。
攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を実施例1で使用した同方向回転二軸押出成形機に投入して溶融混練し、この攪拌混合物を同方向回転二軸押出成形機の先端部のダイスから棒形に押し出して水冷後にカットし、ペレット形の成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度150~370℃、ダイス温度370℃の条件下で溶融混練し、成形材料に調製した。溶融混練時の温度は、ダイスから押し出した直後の溶融状態の成形材料の温度を測定することとし、測定したところ365℃であった。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に投入して12時間乾燥させ、成形材料の含水率が300ppm以下であるのを確認後、乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して高耐熱・高摺動性フィルムを厚さ53μmの帯形に押出成形した。
単軸押出成形機とスクリューとは実施例1と同様である。この単軸押出成形機のシリンダー温度は350℃~370℃、Tダイスの温度は375℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は370℃にそれぞれ調整した。また、連結管には、ギアポンプとフィルタとをそれぞれ装着し、ギアポンプとフィルタの温度は370℃に調整した。単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガスを18L/分供給した。また、溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定値は362℃であった。
高耐熱・高摺動性フィルムを押出成形したら、この連続した高耐熱・高摺動性フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの高耐熱・高摺動性フィルムを製造した。この際、高耐熱・高摺動性フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凸模様を備えた230℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに狭持させた。シリコーンゴム製の圧着ロールは実施例1と同様とし、金属ロールは実施例3と同様とした。
高耐熱・高摺動性フィルムが得られたら、この高耐熱・高摺動性フィルムのフィルム厚、表面粗さ、耐熱性、摺動性、及び耐溶剤性を評価し、その評価結果を表4にまとめた。
〔評 価〕
各実施例の高耐熱・高摺動性フィルムは、貯蔵弾性率の第一変曲点温度が160℃以上なので、ポリエーテルエーテルケトン樹脂より高温で外力による変形を防止することができた。また、160℃における引張弾性率が700N/mm2Pa以上なので、優れた高耐熱性を得ることができた。さらに、静摩擦係数と動摩擦係数とが共に1.0以下なので、優れた摺動性を得ることが可能となった。
これに対し、比較例1の場合、耐熱性は十分であったが、PC樹脂シートとの静摩擦係数及び動摩擦係数が共に1.0以上なので、不十分な摺動性しか得ることができなかった。また、比較例2の場合、高耐熱・高摺動性フィルムを製造することができなかった。
比較例3の場合、貯蔵弾性率の第一変曲点温度が160℃未満であり、しかも、160℃における引張弾性率が700N/mm2Pa未満なので、耐熱性に問題が生じた。さらに、比較例4の場合、耐熱性は十分であったが、N‐メチル‐2‐プロリドンと比較例4の高耐熱・高摺動性フィルムをPET/AL/PE構成平袋に入れ、55℃に加熱した加熱乾燥機中で24時間静置すると、高耐熱・高摺動性フィルムが部分的に崩れ、耐溶剤性が不十分であるのが判明した。