JP2018183914A - 振動板用フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、高機能・高出力化されたスピーカは、出力時、ボイスコイルの高振動により発熱し、振動板の温度が150℃付近まで達してしまうと言われている。この点、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのガラス転移点は150℃以下なので、このフィルムを振動板に使用すると、ボイスコイルの高振動で発生する高熱により、振動板が変形したり、破損するおそれがある。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとを溶融混練して成形材料を調製し、この成形材料を用いてダイスからフィルムを連続的に帯形に押出成形し、この押出成形したフィルムを圧着ロールと冷却ロールとの間に挟んで冷却することにより、冷却したフィルムの厚さを2μm以上110μm以下とし、
冷却後のフィルムの機械的特性を23℃における引張最大強度で90N/mm2以上とするとともに、引張破断時伸びで100%以上とし、冷却後のフィルムの耐熱性を150℃における引張最大強度で80N/mm2以上とし、かつ引張破断時伸びで400%以上とし、フィルムの音響特性を23℃における比重で1.2以上1.4以下とし、20℃における損失正接で0.010以上とすることを特徴としている。
また、圧着ロールと冷却ロールのうち、少なくとも冷却ロールの温度を50℃以上260℃以下の範囲に調整することが好ましい。
また、冷却後のフィルムを厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層に積層接着し、これらを熱成形することもできる。
さらに、エラストマー層をシリコーン樹脂製としてそのJIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合のデュロメータ硬さを、A10以上A90以下とすることが可能である。
〔実施例1〕
先ず、成形材料を調製するため、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、製品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトン グレード:KT−851NL SP(以下、「KT-851NL SP」と略す)〕を選択し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を冷凍粉砕法により粉砕した。粉砕したポリエーテルエーテルケトン樹脂の粒度をエアージェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、6メッシュパスであった。
フィルム厚が1.5〜10μm以下のフィルムの厚さについては、接触式の厚さ計〔Marh社製 製品名:ミリマール 1240 コンパクトアンプにミリマール インダクティブ プローブ 1301を取り付けた装置〕を使用して測定した。これに対し、フィルム厚が10μmを越え〜110μmの厚さのフィルムについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC−25PJ〕を使用して測定した。
フィルム厚公差については、以下の式から求めた。
フィルム厚公差[%]={(MAX又はMIN)−(AVE)}/(AVE)×100
ここで、MAX:フィルム厚の最大値
MIN:フィルム厚の最小値
AVE:フィルム厚の平均値
求めたフィルム厚公差が±5%以内の場合をA、±5〜10%以内の場合をB、±10%を越える場合をNGとした。
フィルムの23℃における引張最大強度と引張破断時伸びは、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。測定用の試験片は、JIS K7160 3形を使用した。引張最大強度と引張破断時伸びは、JIS K7127に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃の条件で測定した。
フィルムの150℃における引張最大強度と引張破断時伸びは、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。測定用の試験片は、JIS K7160 3形を使用した。具体的には、フィルムからJIS K7160 3形に試験片を切り出し、この試験片を予め150℃の加熱した恒温槽付き引張試験機に取り付け、JIS K7127に準拠し、引張速度50mm/分で測定した。測定は、試験片を恒温槽内の引張試験機のつまみ具に取り付け、恒温槽の扉を閉じ、恒温槽の温度が150±2℃に達した後、3分間放置後に実施した。
フィルムの23℃における比重に関しては、JIS K7112(A法)の測定方法に準拠し、温度23℃の条件で測定した。
フィルムの損失正接は、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、フィルムの押出方向の損失正接を測定する場合には、押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の損失正接を測定する場合には、押出方向6mm×幅60mmの大きさに切り出して測定した。損失正接の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ(ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2)を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲−60〜380℃、チェック間21mmの条件で測定し、20℃の損失正接を求めた。
実施例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとを表1に掲げる成形材料の配合質量部となるよう、実施例1と同様にして攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様の方法により成形材料を調製して乾燥させ、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンからなるフィルムを帯形に押出成形した。
実施例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとを表1に掲げる成形材料の配合質量部となるよう、実施例1と同様にして攪拌混合物を調製した。以下、実施例1と同様の方法により成形材料を調製して乾燥させ、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンからなるフィルムを帯形に押出成形した。
先ず、成形材料を調製するため、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ダイセル・エボニック社製 製品名:ベスタキープ−J ZV7403 natural(以下、「ZV7403」と略す)〕を選択し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の方法を用いて粉砕した。粉砕したポリエーテルエーテルケトン樹脂の粒度を実施例1と同じエアージェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、8メッシュパスであった。
先ず、成形材料を調製するため、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレックス社製、製品名:ビクトレックスピーク381G(以下、「381G」と略す)〕を選択し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様にして粉砕した。粉砕したポリエーテルエーテルケトン樹脂の粒度を実施例1と同じエアージェットシーブ標準ふるいにより測定したところ、8メッシュパスであった。
実施例1の粉砕したポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとを表3に示す配合質量部で実施例1と同様に方法により、攪拌混合して攪拌混合物を調製した。攪拌混合物が得られたら、実施例1と同様の方法により、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとからなる成形材料を調製し、実施例1と同様の方法により乾燥させ、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンからなるフィルムを帯形に押出成形した。
実施例1の粉砕したポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとを表3に示す配合質量部で実施例1と同様の方法により、攪拌混合して攪拌混合物を調製した。攪拌混合物が得られたら、実施例1と同様の方法により、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとからなる成形材料を調製し、実施例1と同様の方法により乾燥させ、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンからなるフィルムの押出成形を試みた。しかしながら、押出成形機が過負荷状態となり、Tダイスからフィルムを帯状に押出成形することができなかった。
各実施例のフィルムは、23℃における引張最大強度が100N/mm2以上、引張破断時伸びが100%以上であり、スピーカの振動板として使用しても、十分な機械的特性を有していた。また、150℃における引張最大強度は80N/mm2以上、破断時伸びは400%以上であった。加えて、フィルムの比重は1.26以上1.32以下であり、20℃における損失正接は0.010以上であった。
2 フィルム
3 積層中間体
4 エラストマー層
5 プライマー
10 溶融押出成形機(押出成形機)
12 不活性ガス供給管
13 Tダイス
17 圧着ロール
18 冷却ロール
19 巻取機
20 巻取管
Claims (5)
- 樹脂含有の成形材料を用いてフィルムを成形する振動板用フィルムの製造方法であって、
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとを溶融混練して成形材料を調製し、この成形材料を用いてダイスからフィルムを連続的に帯形に押出成形し、この押出成形したフィルムを圧着ロールと冷却ロールとの間に挟んで冷却することにより、冷却したフィルムの厚さを2μm以上110μm以下とし、
冷却後のフィルムの機械的特性を23℃における引張最大強度で90N/mm2以上とするとともに、引張破断時伸びで100%以上とし、冷却後のフィルムの耐熱性を150℃における引張最大強度で80N/mm2以上とし、かつ引張破断時伸びで400%以上とし、フィルムの音響特性を23℃における比重で1.2以上1.4以下とし、20℃における損失正接で0.010以上とすることを特徴とする振動板用フィルムの製造方法。 - 押出成形機にポリエーテルエーテルケトン樹脂とフラーレンとを不活性ガスを供給しながら投入し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100質量部に対してフラーレン0.05質量部以上5質量部以下添加して溶融混練する請求項1記載の振動板用フィルムの製造方法。
- 圧着ロールと冷却ロールのうち、少なくとも冷却ロールの温度を50℃以上260℃以下に調整する請求項1又は2記載の振動板用フィルムの製造方法。
- 冷却後のフィルムを厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層に積層接着し、これらを熱成形する請求項1、2、又は3記載の振動板用フィルムの製造方法。
- エラストマー層をシリコーン樹脂製としてそのJIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合のデュロメータ硬さを、A10以上A90以下とする請求項4記載の振動板用フィルムの製造方法。
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