JP2020114029A - 振動板用フィルム及びスピーカの振動板 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動板の音質の均一性を向上させることのできる振動板用フィルム及びスピーカの振動板を提供する。【解決手段】ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料からなるスピーカの振動板2用フィルムであり、フィルム5の引張弾性率を2300〜4000N/mm2とするとともに、フィルム5の押出方向の引張弾性率/フィルム5の押出方向と直交する幅方向の引張弾性率を0.80〜1.50の範囲とし、フィルム5の20℃における損失正接を0.005以上、フィルム5の20℃における押出方向の損失正接/フィルム5の20℃における押出方向と直交する幅方向の損失正接を0.50〜1.50の範囲とする。振動板のフィルム5の押出方向と幅方向の引張弾性率の比、押出方向と幅方向の損失正接の比を調整するので、音質特性にバラツキの小さい振動板2を得ることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、音質特性に優れる振動板用フィルム及びスピーカの振動板に関するものである。
携帯電話、携帯ゲーム機器、スマートフォン等からなる携帯機器には、マイクロスピーカと呼ばれる小型のスピーカが内蔵されている。このマイクロスピーカと呼ばれるスピーカの音波を発生させる振動板は、一般的には、(1)金属箔、(2)天然樹脂製の紙、織布、不織布、(3)合成樹脂製のフィルムにより形成されており、音質を左右する重要な部品である。
振動板が(3)合成樹脂製のフィルムの場合、これまでにポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等からなるフィルムが用いられている(特許文献1、2参照)。
ところで、近年のスピーカは、益々の高機能化や高性能化が図られている。したがって、スピーカの振動板に対する要求特性も益々厳しくなって来ている。この振動板に求められる要求特性としては、軽量(密度あるいは比重が小さい)であること、適度な剛性(ヤング率、弾性率)を有すること、厚さ精度に優れること、損失正接(内部損失とも、tanδともいう)が大きく、耐久性に優れること等があげられる。また、剛性の押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)の比が小さいこと、損失正接の押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)の比が小さいこと、耐熱性、耐湿性、耐水性、成形性(プレス成形、真空成形、圧空成形等)に優れることもあげられる。
特開昭60‐139098号公報 特開昭64‐067099号公報 特開昭58‐222699号公報 国際公開WO2012/13769号公報
しかしながら、スピーカの振動板が(1)の金属箔の場合、耐熱性や耐水性等に優れるものの、密度や剛性が大きいので、最低共振周波数(f0)が高く、低音の再生特性が不十分となる。加えて、振動板にとって、重要な損失正接(内部損失とも、tanδともいう)が小さいので、振動板が共振して音響特性が乱れ、高性能が期待できず、音質に問題が発生する。
また、スピーカの振動板が(2)の天然樹脂製の紙、織布、不織布の場合、密度が小さく、軽量ではあるものの、剛性が小さいので、高周波領域の再生に問題が生じ、しかも、重要な損失正接も小さいので、やはり音質に問題が生じる。さらに、十分な耐湿性、耐水性、耐熱性を得ることが困難となり、スピーカの製造工程も煩雑化する。
これに対し、スピーカの振動板が(3)の合成樹脂製のフィルムの場合、合成樹脂の材質の変更により、損失正接の選択等が可能になるので、問題が少なく、しかも、振動板の薄型化、軽量化、量産化に適するので、小型軽量の携帯機器の内蔵には最適である。これらの点に鑑み、近年の携帯機器に内蔵されるスピーカには、合成樹脂製のフィルムの振動板が利用されている。
ところで、最近は、携帯機器の高機能化に伴うライフスタイルの変化により、時間や場所を問わず、携帯機器でテレビ番組や音楽、ゲーム等を楽しみたいという利用者が少なくない。具体的には、通勤時の公共交通車内、温度変化の激しい旅行先の海水浴場やスキー場、騒がしい休暇中の娯楽施設、上下前後左右に揺れるランニング時等にも、携帯機器一台で良質のテレビ番組や音楽、ゲーム等を楽しみ、時間を有効利用して生活を豊かにしたいと願う利用者が少なくない。
係る利用者の要望を満たすためには、スピーカが安定した環境で使用される据え置きの音響機器に内蔵されるのではなく、携帯機器に内蔵されるという特別な事情を考慮し、スピーカの性能を向上させたり、ハイパワー化させる必要がある。具体的には、好ましくない使用環境で携帯機器が長時間利用されたり、外部出力を大きくし、大音量で超時間利用されるのを前提に、スピーカの振動板の耐熱性、耐久性や音響特性をさらに向上させる必要がある。
上記合成樹脂製のフィルムは、耐熱性や耐久性が不十分なため、スピーカ用の振動板として使用した場合、外部出力を大きくすると、ボイスコイルから発生する高温や高振動により、振動板の変形又は破損を招く等の問題が生じる。そこで近年、スピーカの振動板用フィルムとして、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製のフィルムが提案され、実施されている(特許文献3参照)。このポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムは、連続使用温度が−50〜250℃±(特許文献4参照)で耐熱性に優れ、しかも、耐折強さが高いので、耐久性にも優れている。
しかしながら、ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、結晶性樹脂であるため、フィルムの成形中、押出方向あるいは幅方向のどちらか一方方向に配向させると、(押出方向の引張弾性率)と(幅方向の引張弾性率)、及び(押出方向の損失正接)と(幅方向の損失正接)の比が大きくなり、音質特性の低下を招くという問題が生じる。
本発明は上記に鑑みなされたもので、振動板の音質の均一性を向上させることのできる振動板用フィルム及びスピーカの振動板を提供することを目的としている。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムの引張弾性率、〔押出方向の引張弾性率〕と〔幅方向(押出方向の直角方向)の引張弾性率〕の比、損失正接、及び〔押出方向の損失正接〕と〔幅方向(押出方向の直角方向)の損失正接〕の比に着目し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明においては上記課題を解決するため、ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料からなるものであって、
フィルムの引張弾性率を2300〜4000N/mmとするとともに、フィルムの押出方向の引張弾性率/フィルムの押出方向と直交する幅方向の引張弾性率を0.80〜1.50の範囲とし、フィルムの20℃における損失正接を0.005以上、フィルムの20℃における押出方向の損失正接/フィルムの20℃における押出方向と直交する幅方向の損失正接を0.50〜1.50の範囲とすることを特徴としている。
なお、表面にエラストマーを塗布することができる。
また、本発明においては上記課題を解決するため、シリコーンゴム層の両面に請求項1又は2記載の振動板用フィルムをそれぞれ設けたスピーカの振動板であることを特徴としている。
なお、シリコーンゴム層の両面と振動板用フィルムとの間にプライマー層をそれぞれ介在させることができる。
また、シリコーンゴム層のデュロモータ硬さがA10〜A90であることが好ましい。
ここで、特許請求の範囲におけるスピーカは、音の波長と同程度の寸法の振動板から、大気中に音を直接放射する直接放射型が主ではあるが、ホーン型でも良い。このスピーカは、主に携帯機器に内蔵されるが、この携帯機器には、少なくとも携帯電話、携帯用音楽機器、携帯ゲーム機器、スマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン等が含まれる。
本発明によれば、フィルムの引張弾性率を2300〜4000N/mmとするとともに、フィルムの押出方向の引張弾性率/フィルムの押出方向と直交する幅方向の引張弾性率を0.80〜1.50の範囲とし、フィルムの20℃における損失正接を0.005以上、フィルムの20℃における押出方向の損失正接/フィルムの20℃における押出方向と直交する幅方向の損失正接を0.50〜1.50の範囲とするので、音質特性に優れたスピーカを得ることができる。
本発明によれば、フィルムの引張弾性率を2300〜4000N/mmとするとともに、フィルムの押出方向の引張弾性率/フィルムの押出方向と直交する幅方向の引張弾性率を0.80〜1.50の範囲とし、フィルムの20℃における損失正接を0.005以上、フィルムの20℃における押出方向の損失正接/フィルムの20℃における押出方向と直交する幅方向の損失正接を0.50〜1.50の範囲とするので、振動板の音質の均一性を向上させることができるという効果がある。
請求項3記載の発明によれば、耐熱性、耐候性、難燃性、音質特性、圧縮特性等に優れるシリコーンゴム層に振動板用フィルムを積層してこれらの特性を併せ持つスピーカの振動板を製造するので、例え携帯機器が好ましくない使用環境で長時間利用され、しかも、スピーカのハイパワー化に伴い、外部出力が増大し、ボイスコイルに発熱及び振動が生じても、振動板の耐久性や音響特性を向上させることができる。
請求項4記載の発明によれば、プライマー層により、シリコーンゴム層とフィルムとを強固に接着することができる。
請求項5記載の発明によれば、シリコーンゴム層のデュロメータ硬さがA10〜A90の範囲内なので、シリコーンゴム層の圧縮永久歪み特性が悪化したり、振動板の振動伝搬速度が低下して音質に問題が生じるのを防ぐことができ、しかも、損失正接が低下して振動板の性能が悪化するのを防止することが可能となる。
本発明に係る振動板用フィルム及びスピーカの振動板の実施形態における振動板を模式的に示す断面説明図である。 本発明に係る振動板用フィルムの実施形態における製造装置を模式的に示す全体説明図である。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における振動板用フィルムは、図1や図2に示すように、ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料1により、スピーカの振動板2用に溶融押出成形されるフィルム5であり、溶融押出成形して冷却されたフィルム5の引張弾性率を2300〜4000N/mmとするとともに、フィルム5の押出方向の引張弾性率/フィルム5の押出方向と直交する幅方向の引張弾性率を0.80〜1.50の範囲とし、フィルム5の20℃における損失正接を0.005以上、フィルム5の20℃における押出方向の損失正接/フィルム5の20℃における押出方向と直交する幅方向の損失正接を0.50〜1.50の範囲とするようにしている。
フィルム成形用のポリエーテルエーテルケトン樹脂は、特に限定されるものではないが、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有する樹脂である。
Figure 2020114029
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点は、通常、320〜360℃であり、好ましくは335〜345℃である。このポリエーテルエーテルケトン樹脂における化学式〔化1〕のnは、耐折強さの観点から、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、化学式〔化1〕の繰り返し単位のみからなるホモポリマーであっても良いし、化学式〔化1〕以外の繰り返し単位を有していても良い。
但し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂中、化学式〔化1〕の化学構造の割合は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100モル%に対し、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%が最適である。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、ビクトレック社製の製品名:ビクトレックス ピークシリーズ、ダイセル・エボニック社製の製品名:ベスタキープシリーズ、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製の製品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトンシリーズがあげられる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の製造方法としては、例えば特開昭50−27897公報、特開昭5l−119797号公報、特開昭52−38000号公報、特開昭54−90296号公報、特公昭55−23574号公報、特公昭56−2091号公報等に記載された製法が用いられる。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合可能な単量体とのブロック共重合体、ランダム共重合体、あるいは変性体も使用可能である。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料1には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の他、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(変性PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、ポリアミド11T(PA11T)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルホン(PPSU)樹脂等のポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー(LCP)等を必要に応じ、添加することができる。
成形材料1には、本発明の特性を損なわない範囲で上記樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物等が選択的に添加される。
スピーカの振動板2は、図1に示すように、厚さ10〜100μmのシリコーンゴム層3と、このシリコーンゴム層3の表裏両面にプライマー4を介してそれぞれ積層貼着されるポリエーテルエーテルケトン樹脂製の一対のフィルム5とを多層構造に備えた主に携帯機器内蔵用であり、一対のフィルム5に挟持されるシリコーンゴム層3のデュロメータ硬さがA10〜A90の範囲とされる。
振動板2のシリコーンゴム層3はシリコーンゴム組成物からなり、このシリコーンゴム組成物は、中間体の製造適性、及び製造後の保管適性の観点から、加熱硬化型シリコーンゴムが好ましい。この加熱硬化型シリコーンゴムとしては、例えば付加硬化型ミラブルシリコーンゴム、及び付加硬化型液状シリコーンゴムがあげられる。付加硬化型ミラブルシリコーンゴムは、通常、オルガノポリシロキサンに、シリカ系等の充填材、及び硬化剤やシリカ微粉末等からなる各種の添加剤を添加した組成物の状態で使用される。
これに対し、付加硬化型液状シリコーンゴムは、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cmである無機質充填材(珪藻土、パーライト、発泡パーライトの粉砕物、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び中空フィラー等)と、付加反応触媒(白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等)とを添加したゴム組成物の状態で使用される。
シリコーンゴム層3となるシリコーンゴム組成物は、二本ローラや三本ローラ等のカレンダーロール、ロールミル、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)等のゴム混練機等を用い、ゴム組成物、及び所望により各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して得られる。
シリコーンゴム層3の硬化後の厚さは、軽量化により、優れた音質を得る観点から、10〜100μm、好ましくは20〜80μm、より好ましくは75μmが最適である。また、シリコーンゴム層3のデュロメータ硬さは、JIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合、A10〜A90、好ましくはA20〜A70、より好ましくはA20〜A50の範囲が最適である。これは、デュロメータ硬さがA10未満の場合には、シリコーンゴム層3の圧縮永久歪み特性が悪化したり、振動板2の振動伝搬速度が低下して音質に問題が生じるからである。逆に、デュロメータ硬さがA90を越える場合には、損失正接が小さくなり、振動板2としての性能が悪化するからである。
プライマー4は、シリコーンゴム組成物とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5との間に介在され、これらを強固に接着するよう機能する。このプライマー4は、シリコーンゴム組成物とフィルム5とを接着することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アルキド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、及びこれら混合物等があげられる。また、これらの樹脂を硬化、及び/又は架橋する架橋剤として、例えばイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物、シラン化合物等があげられる。
プライマー4は、シリコーンゴム組成物とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5との対向面のいずれかに、例えばスプレー法、ハケ塗り法、グラビアコート法、ダイコート法、バーコーター(メイヤーバー)法、含浸コート法等の公知の方法で薄く塗布され、有機溶剤の揮発後、薄膜の層を形成する。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂製の一対のフィルム5の厚さは、シリコーンゴム層3の両面で異なっていても、同等でも良いが、好ましくは同等が良い。これは、一対のフィルム5の厚さが異なると、フィルム5の加熱収縮率が異なるため、振動板2が成形後にカールしてしまうおそれがあるからである。各フィルム5の厚さは、軽量化により、振動板2の振動伝搬速度を向上させたり、高音域の上限が低下するのを防止したり、小型の薄いスピーカに確実に取り付ける観点から、1.5〜110μmの範囲が最適である。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料1を用い、振動板2のフィルム5を製造する場合には、溶融押出成形法、カレンダー成形法、又はキャスティング成形法等の公知の製造法を採用することができる。しかしながら、フィルム5の厚さ精度、生産性、ハンドリング性の向上、設備の簡略化の観点から、溶融押出成形法により連続的に薄く押出成形することが好ましい。
ここで、溶融押出成形法とは図2に示すように、溶融押出成形機10を使用して成形材料1を溶融混練し、溶融押出成形機10の先端部のTダイス13から振動板2のフィルム5を連続的に押し出して製造する成形方法である。
溶融押出成形機10は、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料1を溶融混練するよう機能する。この溶融押出成形機10の上部後方には、成形材料1用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガス(図2の矢印参照)を必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料1の酸化劣化や酸素架橋が有効に防止される。
溶融押出成形機10の溶融混練時の温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点〜450℃、好ましくは360℃〜430℃に調整される。これは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点未満の場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形することができず、逆に450℃を越える場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が分解するおそれがあるからである。
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、薄い帯形のフィルム5を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の上流には、連結管14に装着されたギアポンプ15が位置し、このギアポンプ15が成形材料1を一定速度で、かつ高精度にTダイス13に移送する。Tダイス13の押出時の温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点〜450℃、好ましくは360℃〜430℃に調整される。これは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点未満の場合には、成形材料1の溶融押出成形が困難となり、逆に450℃を越える場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が分解するおそれがあるという理由に基づく。
圧着ロール16は、冷却ロール17を挟持するようTダイス13の下方に回転可能に一対が軸支される。この一対の圧着ロール16のうち、下流の圧着ロール16の下流には、フィルム5を巻き取る巻取機18の巻取管19が回転可能に設置され、圧着ロール16と巻取機18の巻取管19との間には、フィルム5の側部にスリットを形成するスリット刃20が昇降可能に配置されており、このスリット刃20と巻取機18の巻取管19との間には、フィルム5にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール21が必要数軸支される。
各圧着ロール16の周面には、フィルム5と冷却ロール17との密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被覆形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
圧着ロール16としては、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れるフィルム5の成形が可能となる。この金属弾性ロールの具体例としては、例えば金属スリーブロール、エアーロール(ディムコ社製 製品名)、UFロール(日立造船社製 製品名)が該当する。
このような圧着ロール16は、260℃以下、好ましくは50℃〜260℃、より好ましくは50℃〜230℃の温度に調整され、フィルム5に摺接してこれを冷却ロール17に圧接する。圧着ロール16の温度が係る範囲なのは、圧着ロール16の温度が260℃を越える場合には、フィルム5の製造中にフィルム5が圧着ロール16に貼り付き、フィルム5が破断するおそれがあるからである。逆に、50℃未満の場合には、圧着ロール16が結露するため、好ましくないからである。圧着ロール16の温度調整や冷却方法としては、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーター、誘電加熱ロール等があげられる。
冷却ロール17は、例えば圧着ロール16よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイス13の下方に回転可能に軸支されて押し出されたフィルム5を圧着ロール16との間に挟持し、圧着ロール16と共にフィルム5を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御するよう機能する。この冷却ロール17は、圧着ロール16と同様、260℃以下、好ましくは50℃〜260℃、より好ましくは50℃〜230℃の温度に調整され、フィルム5に摺接する。
これは、冷却ロール17の温度が260℃を越える場合には、フィルム製造中にフィルム5が冷却ロール17に貼り付き、破断するおそれがあるからである。これに対し、50℃未満の場合は、冷却ロール17が結露するため、好ましくないからである。冷却ロール17の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーター、誘電加熱等があげられる。
上記において、振動板2用のフィルム5を製造する場合には図2に示すように、溶融押出成形機10の原料投入口11に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料1を図2に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料1を加熱・加圧状態で溶融混練し、Tダイス13から帯形のフィルム5を連続的に押し出す。
この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の溶融混練前における含水率は、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250〜1000ppm以下に調整される。これは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の溶融混練前における含水率が2000ppmを越える場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が発泡するおそれがあるからである。
フィルム5を押し出したら、一対の圧着ロール16、冷却ロール17、テンションロール21、巻取機18の巻取管19に順次巻架し、フィルム5を冷却ロール17により冷却し、フィルム5の両側部をスリット刃20でそれぞれカットするとともに、巻取管19に順次巻き取れば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5を製造することができる。
フィルム5の引張弾性率の調製方法としては、例えば、(1)ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形機10により溶融混練し、この溶融混練した成形材料1をTダイス13から冷却ロール17上に吐き出して密着させる際の冷却ロール17の速度と温度により、フィルム5の成形と同時に調製する方法、(2)フィルム5を製造した後、冷却ロール17上に密着させ、この冷却ロール17の速度と温度により、調製する方法とがある。いずれの方法をも採用することができるが、設備の簡略化、フィルム5の厚さ精度の管理、フィルム5の外観維持の観点から、(1)の方法が好ましい。
また、フィルム5製造の際、フィルム5の表面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、フィルム5表面の摩擦係数を低下させることができる。この微細な凹凸の形成方法としては、例えば(1)ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形機10により溶融混練し、この溶融混練した成形材料1をTダイス13から微細な凹凸を周面に有する冷却ロール17上に吐き出して密着させ、フィルム5の成形時に微細な凹凸を同時に転写形成する方法、(2)フィルム5を製造した後、微細な凹凸を周面に有する冷却ロール17上に密着させ、微細な凹凸を形成する方法がある。いずれの方法をも採用することが可能であるが、設備の簡略化、フィルム5の厚さ精度の管理、フィルム5の外観維持の観点からすると、(1)の方法が最適である。
冷却後のフィルム5の比重は、1.2〜1.4、好ましくは1.23〜1.35、より好ましくは1.26〜1.31が最適である。これは、係る範囲であれば、密度が小さいので軽量化が期待でき、しかも、良好な音質特性を得ることができるからである。
冷却後のフィルム5の引張弾性率は、2300〜4000N/mmの範囲、好ましくは2500〜3900N/mm、より好ましくは2700〜3890N/mmの範囲が最適である。これは、フィルム5の引張弾性率が2300N/mm未満の場合は、フィルム5製の振動板2の高域共振周波数(fH)が低く、高音再生が不十分になるからである。また、4000N/mmを越える場合には、フィルム5から得られる振動板2の最低共振周波数(f0)が高く、低音再生が不十分になるからである。
冷却後のフィルム5における押出方向の引張弾性率と幅方向の引張弾性率の比は、〔押出方向の引張弾性率〕/〔幅方向(押出方向の直角方向)の引張弾性率〕=0.8〜1.5、好ましくは0.9〜1.4、より好ましくは0.9〜1.3の範囲が最適である。これは、〔押出方向の引張弾性率〕/〔幅方向(押出方向の直角方向)の引張弾性率〕=0.8未満あるいは〔押出方向の引張弾性率〕/〔幅方向(押出方向の直角方向)の引張弾性率〕=1.5を越える場合は、フィルム5の押出方向と幅方向の引張弾性率の差が大きくなり、音質特性にバラツキが生じるからである。
フィルム5の20℃における損失正接は、0.005以上、好ましくは0.006以上、より好ましくは0.015〜0.017が最適である。これは、損失正接が0.005未満の場合には、共振の発生により、音質特性にバラツキが生じるという理由に基づく。また、フィルム5の20℃における押出方向の損失正接と20℃における幅方向(押出方向の直角方向)の損失正接の比は、〔20℃における押出方向の損失正接〕/〔20℃における幅方向(押出方向の直角方向)の損失正接〕=0.50〜1.50、好ましくは0.63〜1.40が良い。
冷却後のフィルム5の厚さは、1.5〜110μm、好ましくは3〜95μm、より好ましくは5〜75μmの範囲が好適である。これは、フィルム5の厚さが1.5μm未満の場合には、フィルム5の機械的強度が著しく低下するので、フィルム5の成形が困難になるからである。逆に、振動板用フィルム5の厚さが110μmを越える場合には、振動板2が厚く大きくなり、スピーカのサイズも大きくなり、携帯機器用のスピーカに適さなくなるからである。このフィルム5の厚さは、各種の接触式厚さ計により、測定することができる。
フィルム5の厚さ公差は、平均値±5%の範囲内、好ましくは平均値±3%の範囲内が良い。これは、フィルム5の厚さ公差が平均値±5%の範囲を外れると、音質にバラツキが生じるため、好ましくないからである。このフィルム5の厚さ公差は、所定の式により求めることができる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5を製造したら、振動板用の積層中間体を作製するが、この積層中間体の作製方法としては、先ず、シリコーンゴム組成物を調製して2〜3本のカレンダーロールにより混練し、この混練したシリコーンゴム組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シート等の非伸縮性の基材シート上にカレンダーロールにより、所定の厚さのシート形に分出しし、シリコーンゴム組成物の露出面に、既に成形しておいたポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5をプライマー4を介してラミネートする。
次いで、基材シートをポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5側に設置し、基材シートを剥離してシリコーンゴム組成物の粘着面を露出させ、このシリコーンゴム組成物の露出面に同様にポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5をプライマー4を介しラミネートすることにより、積層中間体を作製する。
振動板用の積層中間体を形成したら、この積層中間体を、金型を使用したプレス成形、真空成形、あるいは圧空成形等の熱成形により、振動板2に成形するとともに、この成形と同時にシリコーンゴム層3を硬化させ、所定の大きさ・形に整えれば、皺のない小型のスピーカの振動板2を製造することができる。
積層中間体の熱成形温度は、振動板2への成形性、及びシリコーンゴムの硬化の点より、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5のガラス転移点以上融点未満である。具体的には、150℃以上300℃以下、好ましくは180℃以上250℃以下である。これは、熱成形温度がフィルム5のガラス転移点温度未満の場合には、積層中間体から振動板2への成形が困難であり、逆に熱成形温度がフィルム5の融点以上の場合には、フィルム5が溶融して形状性の低下を招くからである。
上記によれば、振動板2のフィルム5の押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)の引張弾性率の比、押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)の損失正接の比を調整するので、音質特性にバラツキの小さい振動板2を得ることができる。また、適度な引張弾性率を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5は、低音再生、及び高音再生に優れるので、優れたスピーカ用の振動板2を得ることができる。さらに、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5は、比重か小さいため、軽量であり、しかも、耐熱性に優れるスピーカの振動板2を得ることも可能になる。
また、耐熱性、耐候性、難燃性、音質特性、圧縮特性等に優れるシリコーンゴム層3に一対のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5層を積層してこれらの特性を併せ持つ振動板2を製造するので、例え携帯機器が好ましくない使用環境で長時間利用され、しかも、スピーカのハイパワー化に伴い、外部出力が増大し、ボイスコイルに発熱及び振動が生じても、振動板2の耐久性や音響特性を向上させることができる。さらに、損失正接に優れるシリコーンゴム層3とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5層との複合化により、振動板2の耐折強さと損失正接が向上するので、耐久性と音響特性の向上が大いに期待できる。
なお、上記実施形態では振動板2を、シリコーンゴム層3と、このシリコーンゴム層3の両面にプライマー4を介してそれぞれ積層貼着されるポリエーテルエーテルケトン樹脂製の一対のフィルム5とを備えた多層構造としたが、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム5のみとしても良い。また、上記実施形態における振動板2のフィルム5の表面には、本発明の効果を失わない範囲で各種の帯電防止剤、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の各種エラストマーを塗布したり、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅等の各種金属を蒸着させても良い。
以下、本発明に係る振動板用フィルムの実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、成形材料として市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 製品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトン KT−851NL SP(以下、「KT−851NL SP」と略す)〕を用意し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を160℃に加熱した除湿熱風乾燥機〔松井製作所社製 製品名:マルチジェット MJ3〕で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、乾燥したポリエーテルエーテルケトン樹脂を、幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練したポリエーテルエーテルケトン樹脂を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板のフィルムであるポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを帯形に押出成形した。
この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の含水率は、微量水分測定装置(三菱化学社製 製品名CA−100型)を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。また、単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。この単軸押出成形機の温度は390〜420℃、Tダイスの温度は400℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は400℃に調整した。
溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ405℃であった。また、単軸押出成形機にポリエーテルエーテルケトン樹脂を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを押出成形したら、連続したポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ1000m、幅620mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを製造した。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた130℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
振動板のフィルムであるポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、引張弾性率、及び損失正接を評価し、その結果を表1に記載した。また、引張弾性率、及び損失正接の測定結果より、引張弾性率比と損失正接比を求めた。
・ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚
フィルム厚が1.5〜10μmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの厚さについては、接触式の厚さ計〔Marh社製 製品名:ミリマール 1240 コンパクトアンプにミリマール インダクティブ プローブ 1301 Marh−LVDTを取り付けた装置〕を使用して測定した。これに対し、フィルム厚が10μmを越え〜110μmの振動板用フィルムの厚さについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC−25PJ〕を使用して測定した。
測定に際しては、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)が交わる所定位置の厚みを100箇所測定し、その平均値をフィルム厚とした。押出方向の測定箇所は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの先端部から100mm間隔で100mm、200mm、300mm、400mm、500mmの位置とした。
これに対し、幅方向の測定箇所は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの左端部から25mm、次いで30mm間隔で55mm、85mm、115mm、145mm、175mm、205mm、235mm、265mm、295mm、325mm、355mm、385mm、415mm、445mm、475mm、505mm、535mm、565mm、595mmの箇所とした。
・ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚公差
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚公差については、以下の式から求めた。
フィルム厚公差[%]={(MAX又はMIN)−(AVE)}/(AVE)×100
ここで、MAX:フィルム厚の最大値
MIN:フィルム厚の最小値
AVE:フィルム厚の平均値
求めたフィルム厚公差が±3%以内の場合をA、±3〜5%以内の場合をB、±5%を越える場合をNGとした。
・ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの比重
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの比重に関しては、JIS K7112(A法)の測定方法に準拠し、温度23℃の条件により測定した。
・ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの引張弾性率
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの引張弾性率は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。フィルム厚が1.5〜10μmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの引張弾性率は、JIS K6781(試験片 引張切断荷重)に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃の条件で測定した。
これに対し、フィルム厚が10μmを越え〜110μmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの引張弾性率は、JIS K7127(試験片タイプ1B)に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃の条件で測定した。この引張弾性率は、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。
・ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの引張弾性率比
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの引張弾性率比は、引張弾性率測定結果より求めた。ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの引張弾性率比は下式より算出した。
引張弾性率比=〔押出方向の引張弾性率〕/〔幅方向(押出方向の直角方向)の引張弾性率〕
・ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの損失正接
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの損失正接は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの押出方向の損失正接を測定する場合には、押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の損失正接を測定する場合には、押出方向6mm×幅60mmの大きさに切り出して測定した。
損失正接の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ(ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2)を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲−60〜380℃、チェック間21mmの条件で測定し、20℃の損失正接を求めた。
・ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの損失正接比
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの損失正接比は、損失正接の測定結果と下式より算出した。
損失正接比=(押出方向の損失正接)/(幅方向の損失正接)
〔実施例2〕
実施例1で使用した乾燥後のポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出機とTダイスにより、振動板のフィルムである帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムに押出成形した。単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、実施例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ401℃であった。
こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを押出成形したら、連続したフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ1000m、幅620mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを製造した。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた130℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表1に記載した。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表1に記載した。
〔実施例3〕
実施例1で使用した乾燥後のポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出機とTダイスにより、振動板のフィルムである帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムに押出成形した。単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、実施例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ403℃であった。
こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを押出成形したら、連続したフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ1000m、幅620mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを製造した。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた130℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表1に記載した。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表1に記載した。
〔実施例4〕
先ず、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ダイセル・エボニック社製 製品名:ベスタキープZV7403 natural(以下、「ZV7403」と略す)〕を実施例1と同様の除湿加熱乾燥機により、160℃で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、この乾燥させたポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出機とTダイスを使用することにより、帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムに押出成形した。
単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、実施例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ398℃であった。
この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の含水率を、微量水分測定装置(三菱化学社製 製品名CA−100型)を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを押出成形したら、連続したフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ1000m、幅620mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを製造した。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた210℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表1にまとめた。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表1にまとめた。
〔実施例5〕
先ず、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレックス社製 製品名:ビクトレックスピーク381G(以下、「381G」と略す)〕を実施例1と同様の除湿加熱乾燥機により、160℃で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、この乾燥させたポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出機とTダイスを使用することにより、帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムに押出成形した。
単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、実施例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ397℃であった。
この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の含水率を、微量水分測定装置(三菱化学社製 製品名CA−100型)を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを押出成形したら、連続したフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ1000m、幅620mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを製造した。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた210℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表1にまとめた。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表1にまとめた
〔実施例6〕
先ず、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ダイセル・エボニック社製 製品名:ベスタキープ3300G(以下、「3300G」と略す)〕を実施例1と同様の除湿加熱乾燥機により、160℃で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、この乾燥させたポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出機とTダイスを使用することにより、帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムに押出成形した。
単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、実施例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ400℃であった。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の含水率を、微量水分測定装置(三菱化学社製 製品名CA−100型)を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを押出成形したら、連続したフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ1000m、幅620mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを製造した。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた130℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表2に記載した。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表2に記載した。
〔実施例7〕
実施例1で使用した乾燥後のポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出機とTダイスにより、振動板用フィルムである帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムに押出成形した。単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、実施例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ399℃であった。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを押出成形したら、連続したフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ500m、幅620mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを製造した。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた220℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表2に記載した。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表2に記載した。
〔実施例8〕
実施例1で使用した乾燥後のポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出機とTダイスにより、振動板用フィルムである帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムに押出成形した。単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、実施例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ405℃であった。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを押出成形したら、連続したフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ250m、幅620mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムを製造した。この際、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた210℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表2に記載した。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表2に記載した。
〔実施例9〕
実施例3で作製したポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムをフィルム繰り出し機にセットし、実施例1で使用したシリコーンゴム製の一対の圧着ロールと周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールに挟んで熱処理した。このときの冷却ロールの温度は、225℃に調整した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表2に記載した。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表2に記載した。
Figure 2020114029
Figure 2020114029
〔比較例1〕
実施例3で作製したポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムをフィルム繰り出し機にセットし、実施例1で使用したシリコーンゴム製の一対の圧着ロールと周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールに挟んで熱処理した。このときの冷却ロールの温度は、240℃に調整した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表3に記載した。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表3に記載した。
〔比較例2〕
実施例6で作製したポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムをテンター横延伸装置を使用し、幅方向に3倍延伸した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、引張弾性率、及び損失正接を測定し、その結果を表3に記載した。また、引張弾性率より求めた引張弾性率比と、損失正接より求めた損失正接比を表3に記載した。
Figure 2020114029
〔評 価〕
実施例のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの引張弾性率は、比較例のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムとは異なり、押出方向、幅方向(押出方向の直角方向)とも、2700〜4000N/mmで適度な弾性率であった。また、引張弾性率の〔押出方向の引張弾性率〕と〔幅方向(押出方向の直角方向)の引張弾性率〕との比も、0.91〜1.30であった。実施例のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの損失正接は、押出方向と幅方向とも0.007〜0.022で適度な数値を示しており、さらに損失正接の〔押出方向の損失正接〕と〔幅方向(押出方向の直角方向)の損失正接〕比も、0.63〜1.40であった。
これに対し、比較例のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、引張弾性率が4000N/mmを越えている場合がある。また、引張弾性率の〔押出方向の引張弾性率〕と〔幅方向(押出方向の直角方向)の引張弾性率〕の比が0.80未満、1.50を越えているのが判明した。したがって、実施例のポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムは、振動板用フィルムとして採用される場合、低音再生特性と高音再生特性、及び共振を防止する特性に優れることが判明した。さらに、実施例の場合、フィルム厚公差が0.5%以内、引張弾性率の押出方向と幅方向の比が0.80〜1.50、損失正接が0.50〜1.50であるため、音質の均一性に優れることも判明した。
これに対し、比較例1の場合には、フィルム厚公差が0.5%を越え、引張弾性率比の押出方向と幅方向の比が1.5を越えており、しかも、損失正接の押出方向と幅方向の比が1.5を越えているので、音質の均一性が不十分であった。また、比較例2の場合も、引張弾性率比が0.8未満、損失正接比が0.50未満なので、音質の均一性が不十分であった。
本発明に係る振動板用フィルム及びスピーカの振動板は、携帯機器等に内蔵されるスピーカの製造分野で用いられる。
1 成形材料
2 振動板
3 シリコーンゴム層
4 プライマー
5 フィルム
10 溶融押出成形機(押出成形機)
11 原料投入口
12 不活性ガス供給管
13 Tダイス(ダイス)
16 圧着ロール
17 冷却ロール
18 巻取機
19 巻取管
20 スリット刃

Claims (5)

  1. ポリエーテルエーテルケトン樹脂含有の成形材料からなる振動板用フィルムであって、フィルムの引張弾性率を2300〜4000N/mmとするとともに、フィルムの押出方向の引張弾性率/フィルムの押出方向と直交する幅方向の引張弾性率を0.80〜1.50の範囲とし、フィルムの20℃における損失正接を0.005以上、フィルムの20℃における押出方向の損失正接/フィルムの20℃における押出方向と直交する幅方向の損失正接を0.50〜1.50の範囲とすることを特徴とする振動板用フィルム。
  2. 表面にエラストマーを塗布した請求項1記載の振動板用フィルム。
  3. シリコーンゴム層の両面に請求項1又は2記載の振動板用フィルムをそれぞれ設けたことを特徴とするスピーカの振動板。
  4. シリコーンゴム層の両面と振動板用フィルムとの間にプライマー層をそれぞれ介在させた請求項3記載のスピーカの振動板。
  5. シリコーンゴム層のデュロモータ硬さがA10〜A90である請求項3又は4記載のスピーカの振動板。
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