以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるスピーカの振動板は、図1に示すように、シリコーンゴム層2に一対のフィルム層3を積層した携帯機器内蔵用の小型スピーカの振動板1である。この振動板1は、シリコーンゴム組成物を調製して混練し、このシリコーンゴム組成物を分出し、このシリコーンゴム組成物の表裏両面にポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマー4を介しラミネートすることで振動板1用の積層中間体を形成し、その後、積層中間体を熱成形してシリコーンゴム組成物を硬化させることにより製造される。
シリコーンゴム層2に使用されるシリコーンゴム組成物は、積層中間体の製造適性、及び製造後の保管適性の観点から、加熱硬化型シリコーンゴムが好ましい。この加熱硬化型シリコーンゴムとしては、例えば付加硬化型ミラブルシリコーンゴム、及び付加硬化型液状シリコーンゴムがあげられる。付加硬化型ミラブルシリコーンゴムは、通常、下記平均組成式(1)で示される(A)のオルガノポリシロキサンに、(B)の充填材、及び各種の添加剤を添加した組成物の状態で使用される。
RnSiO(4−n)/2 …式(1)
ここで、Rは同一又は異なっていても良い、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基、nは1.95〜2.05の正数である。
Rは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、及びシアノエチル基等があげられる。
(A)のオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。このオルガノポリシロキサンは、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが好ましい。具体的には、Rのうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%のアルケニル基を有することが好ましく、特にビニル基を有することが最適である。特に、後述する硬化剤として、白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせて使用する場合には、このようなアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが通常使用される。
オルガノポリシロキサンは、通常選択されたオルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することにより、又はシロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することにより、得ることができる。
オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していても良い。また、分子構造の異なる2種、又はそれ以上の混合物でも良い。このオルガノポリシロキサンは、通常、25℃におけるその粘度が100cSt以上であり、好ましくは100,000〜10,000,000cStである。このオルガノポリシロキサンは、通常、その重合度が100以上、好ましくは3,000以上であり、その上限が好ましくは100,000であり、さらには10,000が最適である。
(B)の充填材は、特に限定されるものではないが、シリカ系充填材を用いることができる。このシリカ系充填材としては、例えば煙霧質シリカ、又は沈降性シリカ等があげられ、一般式がRSi(OR’)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。
ここで、一般式におけるRはグリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基、又はメルカプト基等であり、一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」、及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従い、シリカ系充填材の表面を処理することで得られる。
なお、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、市販品を用いても良く、例えばJ.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が入手可能である。
シリカ系充填材の配合量は、(A)のオルガノポリシロキサン100質量部に対し、11〜39質量部、好ましくは15〜35質量部が良い。また、シリカ系充填材の平均粒子径としては、1〜80μm、好ましくは2〜40μmが良い。このシリカ系充填材の平均粒子径は、例えばレーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用い、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することができる。
付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物の具体例としては、信越化学工業社製の製品名:KE−931−U、KE−941−U、KE−951−U、KE−961−U、KE−971−U、及びKE−981−U等があげられる。
付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。例えば、各種の添加剤として、硬化剤、及びシリカ微粉末等があげられる。硬化剤としては、公知の白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせた硬化剤、及び有機過酸化物があげられる。
白金系触媒としては、公知の触媒を使用することができ、具体的には、白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックス等があげられる。白金系触媒の含有量は、有効量、いわゆる触媒量であれば良く、例えば(A)のオルガノポリシロキサンに対し、白金族金属換算で1〜2,000ppmとするのが好ましい。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであっても良く、その重合度は300以下が好ましく、ジメチルハイドロジエンシリル基で末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサン、末端がトリメチルシロキシ基でジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジエンシロキサン単位からなる共重合体、ジメチルハイドロジエンシロキサン単位H(CH3)2SiO1/2とSiO2単位とからなる低粘度流体、1,3,5,7−テトラハイドロジエン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジエン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジエン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。オルガノハイドロジエンポリシロキサンの含有量は、(A)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対し、ケイ素原子に直結した水素原子が50〜500モル%となる割合で用いられるのが好ましい。
有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のアルキル過酸化物、2,4−ジクミルパーオキサイド等のアラルキル過酸化物等の有機過酸化物があげられる。この有機過酸化物の含有量は、有効量であれば良く、例えば(A)のオルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.1〜10質量部が好ましい。
シリカ微粉末は、機械的強度に優れたシリコーンゴム層2を得るために好適であり、この目的のためには、BET比表面積が10m2/g以上、好ましくは50〜400m2/gの微粉末を用いると良い。このようなシリカ微粉末としては、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈降性シリカ(湿式シリカ)等があげられ、煙霧質シリカが好適である。
付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物にシリカ微粉末を添加する場合、シリカ微粉末の含有量は、(A)のオルガノポリシロキサン100質量部に対し、5〜100質量部、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは10〜50質量部が良い。これは、含有量が5質量部未満の場合には、所望の補強効果が得られないことがあり、逆に100質量部を越える場合には、加工性が悪くなることがあるからである。
シリカ微粉末の平均粒子径としては、1〜80nmであるのが好ましく、5〜50nmであるのが特に好ましい。このシリカ微粉末の平均粒子径は、例えばレーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用い、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することが可能である。
付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物は、他の添加剤を含有しても良い。他の添加剤として、例えば着色剤、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の導電材料、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、アルコキシシラン、重合度が(A)のオルガノポリシロキサンよりも低いジメチルシロキサンオイル、シラノール、例えばジフェニルシランジオール、α,ω−ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封鎖低分子シロキサンやシラン等の分散剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、架橋反応等を阻害しない硬化又は未硬化の各種オレフィン系エラストマー等があげられる。
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、(C)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(D)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(E)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3である無機質充填材と、(F)付加反応触媒とを添加したゴム組成物の状態で使用される。
(C)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示される化合物が好適である。
R1 aSiO(4−a)/2 …式(2)
ここで、平均組成式(2)におけるR1は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
R1としては、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物に含有されるオルガノポリシロキサン(A)のRで例示した、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、及びこれらの水素原子の一部、又は全部をハロゲン原子、又はシアノ基等で置換した炭化水素基等があげられる。このR1の少なくとも2個は、アルケニル基、特にビニル基であり、90%以上がメチル基であるのが好ましい。具体的には、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中、1.0×10−6〜5.0×10−3mol/g、特に5.0×10−6〜1.0×10−3mol/gであることが好ましい。
オルガノポリシロキサンの重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であれば良く、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600が特に好ましい。
(D)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均組成式(3)で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。
R2 bHcSiO(4−b−c)/2 …式(3)
ここで、平均組成式(3)におけるR2は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基、bは0.7〜2.1を満足する正数、cは0.001〜1.0を満足する正数、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。
ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中、0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(D)としては、両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とから成る共重合体等があげられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(D)の配合量は、オルガノポリシロキサン(C)100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.3〜20質量部が良い。また、オルガノポリシロキサン(C)のアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0、好ましくは0.5〜2.5が良い。
(E)の無機充填材は、圧縮永久歪みが経時で安定し、かつ十分な振動板1としての耐久性を得るのに重要な成分である。この無機充填材(E)は、平均粒子径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3、好ましくは0.15〜0.45g/cm3である。
これは、無機充填材(E)の平均粒子径が1μm未満の場合には、無機充填材(E)が凝集し、シリコーンゴム中で均一分散性が低下して凝集体(ダマ)となり、その結果、振動板1の損失正接が不均一となり、一部が勝手に振動して音色に悪影響が生じるからである。逆に、平均粒子径が30μmよりも大きい場合には、シリコーンゴム層2の耐久性が低下することがあるからである。また、嵩密度が0.1g/cm3未満の場合、圧縮永久歪みが悪化することがあり、逆に0.5g/cm3よりも大きい場合、シリコーンゴム層2の強度が不十分で耐久性の低下を招くからである。
なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用い、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができる。また、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
このような無機充填材(E)としては、珪藻土、パーライト、発泡パーライトの粉砕物、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び中空フィラー等があげられるが、これらの中では、珪藻土、パーライト、及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。この無機充填材(E)の配合量は、オルガノポリシロキサン(D)100質量部に対して5〜100質量部、好ましくは10〜80質量部が最適である。
付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等があげられる。
なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば白金族金属量として、オルガノポリシロキサン(D)、及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、0.5〜2000ppmであることが好ましく、1〜1000ppm程度であることが特に好ましく、1〜500ppm程度であることがさらに好ましい。
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、前記成分に加え、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えばジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を本発明の目的を損なわない範囲で含有しても良い。
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有するのが好ましく、特に10〜200Pa・sの粘度を有するのが好ましい。この付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の具体例としては、信越化学工業社製の製品名:KE−2090−40A/KE−2090−40B、KE−1063−A/KE−1063−B、KE−1051J−A/KE−1051B、及びX−34−1625A/X−34−1625B等があげられる。
シリコーンゴム層2となるシリコーンゴム組成物は、二本ローラや三本ローラ等のカレンダーロール、ロールミル、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)等のゴム混練機等を用い、シリコーンゴム組成物、及び所望により各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練して得られる。
シリコーンゴム層2のデュロメータ硬さは、JIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合、A10〜A90、好ましくはA20〜A70、より好ましくはA20〜A50の範囲が最適である。これは、デュロメータ硬さがA10未満の場合には、シリコーンゴム層2の圧縮永久歪み特性が悪化したり、振動板1の振動伝搬速度が低下して音質に問題が生じるという理由に基づく。逆に、デュロメータ硬さがA90を越える場合には、損失正接が小さくなり、振動板1としての性能が悪化するという理由に基づく。
各フィルム層3は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムにより形成される。このフィルムのポリエーテルエーテルケトン樹脂は、特に限定されるものではないが、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有する樹脂である。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点は、通常、320〜360℃であり、好ましくは335〜345℃である。このポリエーテルエーテルケトン樹脂における化学式〔化1〕のnは、耐折強さの観点から、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、化学式〔化1〕の繰り返し単位のみからなるホモポリマーであっても良いし、化学式〔化1〕以外の繰り返し単位を有していても良い。
但し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂中、化学式〔化1〕の化学構造の割合は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100モル%に対し、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%が最適である。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、ビクトレック社製の製品名:ビクトレックス ピークシリーズ、ダイセル・エボニック社製の製品名:ベスタキープシリーズ、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製の製品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトンシリーズがあげられる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の製造方法としては、例えば特開昭50−27897公報、特開昭5l−119797号公報、特開昭52−38000号公報、特開昭54−90296号公報、特公昭55−23574号公報、特公昭56−2091号公報等に記載された方法が用いられる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合可能な単量体とのブロック共重合体、ランダム共重合体、あるいは変性体も使用可能である。また、本発明の特性を損なわない範囲で上記樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物等が選択的に添加される。
各フィルム層3の厚さは、軽量化により、振動板1の振動伝搬速度を向上させたり、高音域の上限が低下するのを防止したり、小型の薄いスピーカに確実に取り付ける観点から、1.5〜10μm、好ましくは2〜9.5μm、より好ましくは3〜8μmである。
一対のフィルム層3の厚さは、シリコーンゴム層2の両面で異なっていても、同等でも良いが、好ましくは同等が良い。これは、フィルム層3の厚さが異なっていると、フィルム層3の加熱収縮率が異なるため、振動板1が成形後にカールしてしまうおそれがあるからである。
プライマー4は、シリコーンゴム組成物と一対のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムとの間に介在され、これらを強固に接着するよう機能する。プライマー4は、シリコーンゴム組成物とフィルムとを接着することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、アルキド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、及びこれら混合物等があげられる。また、これらの樹脂を硬化、及び/又は架橋する架橋剤として、例えばイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物、シラン化合物等があげられる。
プライマー4は、上記化合物と有機溶剤とからなる混合物の状態で使用される。有機溶剤としては、揮発し易い溶剤が良く、例えばメタノール、エタノール、あるいはイソプロパノール等のアルコール系溶剤、キシレン、あるいはトルエン等の芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、あるいはジメチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、あるいはメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、あるいは酢酸ブチル等のエステル系溶剤等があげられる。これらの有機溶剤は、単独で用いても、2種類以上を併用しても良い。有機溶剤の添加量に関しては、プライマー4の塗工方法に応じ、適切な濃度になるよう適宜調整される。
プライマー4は、シリコーンゴム組成物とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムとの対向面のいずれかに、例えばスプレー法、ハケ塗り法、グラビアコート法、ダイコート法、バーコーター(メイヤーバー)法、含浸コート法等の公知の方法で薄く塗布され、有機溶剤の揮発後、薄膜の層を形成する。
プライマー4は、0.1〜5μm、好ましくは1〜2μmの厚さで形成される。これは、プライマー4の厚さが0.1μm未満の場合には、シリコーンゴム組成物とフィルムとの接着が不十分で、振動板1への成形中、あるいは使用中に剥離してしまうおそれがあるからである。これに対し、プライマー4の厚さが5μmを越える場合には、振動板1への二次成形性、あるいは音響特性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
シリコーンゴム組成物、及びフィルムへのプライマー4の濡れ性を改良するため、本発明の特性を損なわない範囲で、シリコーンゴム層2、及びフィルムの表面を各種表面処理方法により処理することができる。各種表面処理方法としては、例えばコロナ照射処理、紫外線照射処理、プラズマ照射処理、フレーム処理、火炎処理、あるいはイトロ処理等の公知の方法があげられる。
上記において、振動板1を製造する場合には、先ず、振動板1用の積層中間体を作製するが、この振動板1用の積層中間体の作製方法としては、以下に示す(1)、(2)の方法があげられる。(1)の方法の場合には、先ず、シリコーンゴム組成物を調製して2〜3本のカレンダーロールにより混練し、この混練したシリコーンゴム組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シート等の非伸縮性の基材シート上にカレンダーロールにより、所定の厚さのシート形に分出しし、シリコーンゴム組成物の露出面に、予めフィルム成形したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマー4を介してラミネートする。
次いで、基材シートをポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム側に設置し、基材シートを剥離してシリコーンゴム組成物の粘着面を露出させ、このシリコーンゴム組成物の露出面にポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマー4を介しラミネートすることにより、積層中間体を作製する。
次に、(2)の方法の場合には、先ず、シリコーンゴム組成物を調製して2〜3本のカレンダーロールにより混練し、この混練したシリコーンゴム組成物を分出ししてシート形とし、この分出ししたシリコーンゴム組成物に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマー4を介しラミネートすることで積層中間体を作製する。この際、シリコーンゴム組成物の両面を同時にあるいは片面ずつラミネートしても良い。
積層中間体の作製に関しては、(1)、(2)のどちらの方法も採用することが可能であるが、(2)の方法の場合、積層中間体に皺の発生するおそれがあるので、(1)の方法が好ましい。
振動板1用の積層中間体を形成したら、この積層中間体を、金型を使用したプレス成形、真空成形、あるいは圧空成形等の熱成形により、振動板1に成形するとともに、この成形と同時にシリコーンゴム層2を硬化させ、所定の大きさ・形に整えれば、皺のない小型のスピーカの振動板1を製造することができる。
積層中間体の熱成形温度は、振動板1への成形性、及びシリコーンゴムの硬化の点より、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのガラス転移点以上融点未満である。具体的には、150℃以上300℃以下、好ましくは180℃以上250℃以下である。これは、熱成形温度がフィルムのガラス転移点温度未満の場合には、積層中間体から振動板1への成形が困難であり、逆に熱成形温度がフィルムの融点以上の場合には、フィルムが溶融して形状性の低下を招くからである。
製造された振動板1は、図1に示すように、弾性に優れるシリコーンゴム層2と、このシリコーンゴム層2の表裏両面にプライマー4を介してそれぞれ積層接着される一対のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム層3とを厚さ方向に備えた三層の積層構造に形成され、全体の厚さが13〜100μm程度とされており、携帯機器に内蔵される小型のスピーカ用とされる。
振動板1の硬化したシリコーンゴム層2の厚さは、軽量化により、優れた音質を得る観点から、10〜97μm、好ましくは20〜80μm、より好ましくは25〜70μmが最適である。また、各フィルム層3の厚さは、上記同様、1.5〜10μm、好ましくは2〜9.5μm、より好ましくは3〜8μmが良い。振動板1全体の厚さは、軽量薄膜化の観点から、13〜100μm、好ましくは25〜80μm、より好ましくは30〜70μmが良い。
振動板1の耐折強さは、優れた耐久性を得る観点から耐折強さで15万回以上が最適である。振動板1の耐熱性は、優れた耐熱性を得る観点から、300℃における貯蔵弾性率が107Pa以上であることが好ましい。また、振動板1の音響特性は、優れた音響特性を得る観点から、20℃における損失正接が0.015〜0.040の範囲であることが好ましい。
上記によれば、耐熱性、耐候性、難燃性、音質特性、圧縮特性等に優れるシリコーンゴム層2に一対のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム層3を積層してこれらの特性を併せ持つ振動板1を製造するので、例え携帯機器が好ましくない使用環境で長時間利用され、しかも、スピーカのハイパワー化に伴い、外部出力が増大し、ボイスコイルに発熱及び振動が生じても、振動板1の耐久性や音響特性を向上させることができる。
また、損失正接に優れるシリコーンゴム層2とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム層3との複合化により、振動板1の耐折強さと損失正接が向上するので、耐久性と音響特性の向上が大いに期待できる。また、振動板1がフィルムのみの単層構造ではなく、多層の接着構造なので、応力の集中回避が期待でき、スピーカを長期に亘って安全に安定させて使用することができる。さらに、振動板1を、Tダイを用いた押出キャスト法により製造するのではなく、ラミネート加工により製造するので、シリコーンゴム層2に含まれる低分子化合物の発生を防止することが可能になる。
なお、上記実施形態ではシリコーンゴム組成物にポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマー4を介してラミネートし、このフィルムをフィルム層3としたが、本発明の効果を失わない範囲で、フィルムの表面にアルミニウム、スズ、ニッケル、銅等の各種金属を蒸着しても良い。
以下、本発明に係るスピーカの振動板の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、製品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトン グレード:KT−851NL SP(以下、「KT-851NL SP」と略す)〕を使用し、このポリエーテルエーテルケトン樹脂を150℃に加熱した除湿乾燥機により、12時間乾燥させ、この乾燥させたポリエーテルエーテル樹脂をTダイスを備えた単軸押出成形機に供給して溶融混練し、この溶融混練したポリエーテルエーテルケトン樹脂を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出してポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを帯形に押出成形した。
この際、単軸溶融押出成形機の温度は380〜420℃、Tダイスの温度は400℃、これら単軸溶融押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は400℃に調整した。フィルムを成形したら、フィルムの厚さを接触式の厚さ測定器〔Marh社製 製品名:ミリマール 1240 コンパクトアンプにミリマール インダクティブ プローブ 1301 Marh-LVDTを取り付けた装置〕を使用して測定した。フィルムの厚さは、幅方向(長手方向の直角方向)について10箇所測定し、測定した平均値とした。その結果、フィルム厚は9.5μmであった。
また、押出成形したフィルムのガラス転移点は、測定したところ、145℃であった。このフィルムのガラス転移点は、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジー社製:製品名 高感度型示差走査熱量計 X−DSC7000〕を用い、JIS K7121に準じ、昇温速度10℃/分の条件で測定した。このガラス転移点の測定は、以下の実施例や比較例についても同様とした。
こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを押出成形したら、このフィルムの上にプライマー〔信越化学工業社製、製品名:プライマーNo.4〕を乾燥後の塗工厚みが1μmとなるよう、バーコーター方式により塗工し、熱風乾燥させた。
次いで、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物〔信越化学工業社製、製品名:KE−981−U〕100質量部に対し、加硫剤〔信越化学工業社製、製品名:C−8〕2質量部を配合して2本ロールで十分混練した後、厚さ50μmの二軸延伸ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)フィルム〔東レ社製、製品名:ルミラー 50S10〕上にカレンダーロールにて幅300mm、厚さ25μmに分出しした。こうして付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物と加硫剤からなる配合物を分出ししたら、この配合物を硬化させてシリコーンゴム組成物のデュロメータ硬さを求めた。
次いで、分出しした付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物のシリコーンゴム面とプライマーを塗工したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのプライマー面とが貼着するよう、ロール式のラミネート機にセットし、このラミネート機を作動させて付加硬化型ミラブルシリコーンゴムとポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマーを介して貼り合わせた。
次いで、付加硬化型ミラブルシリコーンゴムの二軸延伸ポリエステルフィルムを貼り合わせた面と、プライマーを塗工したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのプライマー面とが貼り合わされるよう、ロール式のラミネート機にセットし、二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離しながら、付加硬化型ミラブルシリコーンゴムとポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマーを介し貼り合わせることで、振動板用の積層中間体を形成した。
振動板用の積層中間体が得られたら、この積層中間体を長手方向30cm、幅方向20cmの大きさに切り出し、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製、品名:カプトン、品番:100H〕、ステンレス板の順で挟み、180℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力0.4MPa、時間3分間の条件でプレス成形して振動板用の積層中間体を硬化させた。
振動板用の積層中間体を硬化させ、振動板を成形したら、シリコーンゴム組成物の厚さ、耐折強さ、ポリエーテルエーテル樹脂製のフィルムとシリコーンゴム組成物との接着性、耐熱性、及び音響特性を求め、評価してその結果を表1にまとめた。この際、耐熱性は300℃における貯蔵弾性率、音響特性は20℃における損失正接により評価した。
・シリコーンゴム組成物のデュロメータ硬さ
シリコーンゴム組成物のデュロメータ硬さはJIS K 6253 タイプAに準拠して測定した。具体的には、2本ロールで混練したシリコーンゴム組成物を、縦15cm×横15cm×厚さ6.5mmの予めフッ素系離型剤〔ダイキン工業社製、製品名:ダイフリー GA−7500〕を塗布した金型内に投入し、金型をフッ素系離型剤〔同上〕を塗布したステンレス板、紙、アルミ板の順で挟み、180℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力20.5MPa、時間20分間の条件でプレス成形してシリコーンゴム組成物を硬化させた。
シリコーンゴム組成物が硬化したら、シリコーンゴム組成物を金型より取り出し、23℃の恒温室で24時間静置した後、デュロメータ硬さを測定した。
・振動板のシリコーンゴム組成物の厚さ
振動板のシリコーンゴム組成物の厚さは、振動板を作製後、顕微鏡観察により求めた。具体的には、振動板の適当な箇所を長手方向に1cm、幅方向に5cmのサイズに切り出し、振動板のフィルムの幅方向を顕微鏡〔キーエンス社製のデジタルマイクロスコープ VHX−500〕で観察し、シリコーンゴム組成物の厚さを5箇所測定し、測定した平均値をもってシリコーンゴム組成物の厚さとした。
・振動板の耐折強さ
振動板の耐折強さは、振動板の長手方向と幅方向(長手方向の直角方向)について、測定した。耐折強さは、JIS P8115(MIT試験機法)に準拠し、温度23℃の環境下で測定した。この耐折強さの測定に関しては、MIT耐折疲労試験機〔東洋精機製作所社製 製品名 型式:MIT−S〕を使用した。なお、クランプはR0.38を使用した。測定した結果、15万回以上行って破断しなかった場合をO、15万回未満で破断した場合を×とした。
・振動板の接着性
振動板の接着性、換言すれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムとシリコーンゴム組成物との接着性は、振動板用の積層中間体を硬化させて評価した。具体的には、耐折強さを評価した後の振動板のクランプ付近を目視で観察し、振動板の長手方向と幅方向(長手方向の直角方向)について評価した。評価は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムとシリコーンゴム組成物に剥離が認められなかった場合を○、剥離が認められた場合を×とした。
・振動板の耐熱性
振動板の耐熱性については、300℃における振動板の貯蔵弾性率(E’)により評価した。フィルムの貯蔵弾性率は、振動板の長手方向と幅方向(長手方向の直角方向)について測定した。
具体的には、硬化させ得られた振動板を23℃、53%RH環境下で24時間放置し、放置後、振動板の貯蔵弾性率を測定した。振動板の長手方向の貯蔵弾性率を測定する場合には長手方向60mm×幅方向6mm、幅方向の貯蔵弾性率を測定する場合には押出方向6mm×幅60mmの大きさに切り出して測定した。貯蔵弾性率の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ〔ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2〕を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲−60〜360℃、チェック間21mmの条件で測定し、300℃の貯蔵弾性率を求めた。
・振動板の音響特性
振動板の耐熱性については、20℃のおける損失正接(tanδ)を測定し、損失正接により評価した。この振動板の損失正接は、振動板の長手方向と幅方向(長手方向の直角方向)について測定した。具体的には、振動板の長手方向の損失正接を測定する場合には、長手方向60mm×幅方向6mm、幅方向の損失正接を測定する場合には、押出方向6mm×幅60mmの大きさに切り出して測定した。
損失正接の測定に際しては、粘弾性スペクトメータ〔ティー・エス・インスルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2〕を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲-60〜360℃、チャック間21mmの条件で測定し、20℃の損失正接を求めた。
〔実施例2〕
実施例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂を使用し、実施例1と同様の方法によりポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを帯形に押出成形した。フィルムを成形したら、フィルムの厚さを実施例1と同様の接触式の厚さ測定器を使用して測定した。測定の結果、フィルム厚は3.2μmであり、フィルムのガラス転移点は144℃であった。こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを押出成形したら、このフィルム上に、プライマー〔信越化学工業社製、製品名:プライマーNo.4〕を乾燥後の厚みが1μmとなるよう、バーコーター方式で塗工し、熱風乾燥させた。
次いで、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物〔信越化学工業社製、製品名:KE−971−U〕100質量部に対して加硫剤〔信越化学工業社製、製品名:C−8〕2質量部を配合して2本ロールで十分混練した後、この配合物を実施例1で使用した二軸延伸ポリエステルフィルム上にカレンダーロールを使用し、幅300mm、厚さ50μmのシート状に分出しした後、この配合物を硬化させてシリコーンゴム組成物のデュロメータ硬さを求めた。以下、実施例1と同様の方法により、振動版用の積層中間体を形成した。
振動板用の積層中間体が得られたら、この積層中間体を長手方向30cm、幅方向20cmの大きさに切り出し、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製、品名:カプトン、品番:100H〕、ステンレス板の順で挟み、190℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力0.4MPa、時間2分間の条件でプレス成形し、振動板用の積層中間体を硬化させた。
振動板用の積層中間体を硬化させ、振動板を成形したら、シリコーンゴム組成物の厚さ、ポリエーテルエーテル樹脂製のフィルムとシリコーンゴム組成物との接着性、耐折強さ、耐熱性、及び音響特性を求め、評価してその結果を表1にまとめた。なお、耐熱性は300℃における貯蔵弾性率、音響特性は20℃における損失正接により評価した。
〔実施例3〕
実施例1で作製したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム上に、プライマー〔信越化学工業社製、製品名:プライマーNo.4〕を乾燥後の厚みが1μmとなるよう、バーコーター方式で塗工して熱風乾燥させた。
次いで、付加効果型ミラブルシリコーンゴム組成物〔信越化学工業社製、製品名:KE−931−U〕100質量部に対して、加硫剤〔信越化学工業社製、製品名:C−8〕2質量部を配合して2本ロールで十分混練した後、この配合物を実施例1で使用した厚さ50μmの二軸延伸ポリエステル上にカレンダーロールにて幅300mm、厚さ50μmに分出しした後、この配合物を硬化させてデュロメータ硬さを求めた。以下、実施例1と同様の方法により、振動板用の積層中間体を形成した。
振動板用の積層中間体が得られたら、この振動板用の積層中間体を長手方向30cm、幅方向20cmの大きさに切り出し、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製、品名:カプトン、品番:100H〕、ステンレス板の順で挟み、180℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力0.4MPa、時間3分間、プレス成形を行い振動板用の積層中間体を硬化させた。
振動板用の積層中間体を硬化させ、振動板を成形したら、シリコーンゴム組成物の厚さ、ポリエーテルエーテル樹脂製のフィルムとシリコーンゴム組成物との接着性、耐折強さ、耐熱性、及び音響特性を求め、評価してその結果を表1にまとめた。なお、耐熱性は300℃における貯蔵弾性率、音響特性は20℃における損失正接により評価した。
〔実施例4〕
先ず、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレックス社製、製品名:ビクトレックスピーク381G(以下、「381G」と略す)〕を使用し、実施例1と同様の方法により、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを帯形に押出成形し、この押出成形したフィルムの厚さを実施例1と同様の接触式の厚さ測定器を使用して測定した。測定の結果、フィルム厚は5.2μmであった。また、このフィルムのガラス転移点は142℃であった。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを押出成形したら、このフィルム上に、プライマー〔信越化学工業社製、製品名:プライマーNo.4〕を乾燥後の厚みが2μmとなるよう、バーコーター方式で塗工して熱風乾燥させた。
次いで、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物〔信越化学工業社製、製品名:KE−951−U〕100質量部に対し、加硫剤〔信越化学工業社製、製品名:C−8〕2質量部を配合して2本ロールで十分混練し、厚さ50μmの二軸延伸ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)フィルム〔東レ社製、製品名:ルミラー 50S10〕上にカレンダーロールにて幅300mm、厚さ85μmに分出しした後、この配合物を硬化させてデュロメータ硬さを求めた。以下、実施例1と同様の方法により、振動板用の積層中間体を形成した。
振動板用の積層中間体が得られたら、この振動板用の積層中間体を長手方向30cm、幅方向20cmの大きさに切り出し、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製、品名:カプトン、品番:100H〕、ステンレス板の順で挟み、180℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力0.4MPa、時間3分間、プレス成形を行い振動板用の積層中間体を硬化させた。
振動板用の積層中間体を硬化させて振動板を成形したら、シリコーンゴム組成物の厚さ、ポリエーテルエーテル樹脂フィルムとシリコーンゴム組成物との接着性、耐折強さ、耐熱性及び音響特性を求め、評価してその結果を表2に示す。なお、耐熱性は300℃における貯蔵弾性率、音響特性は20℃における損失正接により評価した。
〔実施例5〕
先ず、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ダイセル・エボニック社製、製品名:ベスタキープ-J ZV7403 natural(以下、「ZV7403」と略す)〕を使用し、実施例1と同様の方法によりポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを帯形に押出成形し、このフィルムの厚さを実施例1と同様の接触式の厚さ測定器により測定したところ、フィルム厚は8.5μmであった。また、フィルムのガラス転移点は147℃であった。
こうしてポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを押出成形したら、このフィルム上に、プライマー〔信越化学工業社製、製品名:プライマーNo.4〕を乾燥後の厚みが0.5μmとなるよう、バーコーター方式で塗工して熱風乾燥させた。
次いで、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物〔信越化学工業社製、製品名:KE−2090−40A〕100質量部に対して付加硬化型液状シリコーンゴム組成物〔信越化学工業社製、製品名:KE−2090−40B〕100質量部とをプラネタリミキサーで攪拌混合し、この付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の濃度が50重量%となるようにトルエンを配合し、希釈し、脱泡させた。このトルエンで希釈したシリコーンゴム組成物を厚さ75μmのフッ素離型フィルム上にバーコーター方式で乾燥後の塗工厚が20μmとなるよう塗工し、塗工後130℃に加熱した熱風乾燥炉でトルエンを乾燥除去した。
トルエンを乾燥除去したら、塗工した付加硬化型液状シリコーンゴム組成物のシリコーンゴム組成物面とプライマーを塗工したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのプライマー面とが貼り合わさるよう、ロール式のラミネート機にセットし、このラミネート機を作動させて付加硬化型液状シリコーンゴム組成物とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマーを介して貼り合わせた。
次いで、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物とフッ素離型フィルムを貼り合わせた面とプライマーを塗工したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのプライマー面が貼り合わさるよう、ロール式のラミネート機にセットし、フッ素離型フィルムを剥離しながら付加硬化型液状シリコーンゴム組成物とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマーを介して貼り合わせることで、振動板用の積層中間体を形成した。
振動板用の積層中間体が得られたら、この中間体を長手方向30cm、幅方向20cmの大きさに切り出し、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製、品名:カプトン、品番:100H〕、ステンレス板の順で挟み、160℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力0.4MPa、時間5分間の条件でプレス成形し、振動板用の積層中間体を硬化させた。振動板用の積層中間体を硬化させて振動板を成形したら、シリコーンゴム組成物の厚さ、ポリエーテルエーテル樹脂フィルムとシリコーンゴム組成物との接着性、耐折強さ、耐熱性、及び音響特性を求め、評価してその結果を表2にまとめた。耐熱性は300℃における貯蔵弾性率、音響特性は20℃における損失正接により評価した。
シリコーンゴム組成物のデュロメータ硬さについては、JIS K 6253 タイプAに準拠して測定した。具体的には、先ず、KE−2090−40A〔製品名、信越化学工業社製〕100質量部に対してKE−2090−40B〔製品名、信越化学工業社製〕100質量部をプラネタリーミキサーで混合し、脱泡後、予め離型剤〔ダイキン工業社製、製品名:ダイフリー GA−7500〕を塗布した長手方向12cm×幅方向5cm×厚7mmの金型内に入れ、160℃に加熱した熱風オーブン中に60分間投入し、シリコーンゴム組成物を硬化させた。
こうしてシリコーンゴム組成物を硬化させたら、このシリコーンゴム組成物を金型から取り出し、23℃の環境下で24時間静止後、デュロメータ硬さを測定した。
〔比較例1〕
実施例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムの耐折強さ、耐熱性、及び音響特性を実施例1と同様の方法により求め、評価してその結果を表3に記載した。
〔比較例2〕
基本的には実施例1と同様であるが、ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムにプライマーを塗工せずに付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物シートを貼り合わせ、振動板用の積層中間体を形成した。
振動板用の積層中間体が得られたら、この積層中間体を長手方向30cm、幅方向20cmの大きさに切り出し、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製、品名:カプトン、品番:100H〕、ステンレス板の順で挟み、190℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力0.4MPa、時間2分間の条件でプレス成形し、振動板用の積層中間体を硬化させた。
振動板用の積層中間体を硬化させ、振動板を成形したら、シリコーンゴム組成物の厚さ、ポリエーテルエーテル樹脂フィルムとシリコーンゴム組成物との接着性、耐折強さ、耐熱性、及び音響特性を求め、評価結果を表3にまとめた。なお、耐熱性は300℃における貯蔵弾性率、音響特性は20℃における損失正接により評価した。
〔比較例3〕
実施例2のプライマーを塗工したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのプライマー塗工面に、付加硬化型シリコーンゴム組成物ではなく、アクリル系粘着剤〔総研化学社製 製品名:SKダイン 1520C〕を塗工した。すなわち、付加硬化型シリコーンゴム組成物をアクリル系粘着剤に変更し、このアクリル系粘着剤の濃度が25重量%となるよう、トルエンで希釈するとともに、このトルエンで希釈したアクリル系粘着剤を厚さ75μmのフッ素離型フィルム上にバーコーター方式により、乾燥後の塗工厚が25μmとなるよう塗工し、塗工後130℃に加熱した熱風乾燥炉でトルエンを乾燥除去した。
次いで、アクリル系粘着剤とプライマーを塗工したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのプライマー面とが貼り合わさるよう、ロール式のラミネート機にセットし、このラミネート機を作動させてアクリル系粘着剤とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマーを介して貼り合わせた。さらに、アクリル粘着剤とフッ素離型フィルムを貼り合わせた面とプライマーを塗工したポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのプライマー面が貼り合わさるよう、ロール式のラミネート機にセットし、フッ素離型フィルムを剥離しながらアクリル粘着剤とポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをプライマーを介して貼り合わせることで、振動板用の積層中間体を形成した。
振動板用の積層中間体が得られたら、この積層中間体を長手方向30cm、幅方向20cmの大きさに切り出し、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製、品名:カプトン、品番:100H〕、ステンレス板の順で挟み、160℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力0.4MPa、時間2分間の条件でプレス成形した。
振動板の積層中間体をプレス成形したら、この振動板の積層中間体を取り出し、アクリル粘着剤の厚さ、ポリエーテルエーテル樹脂製のフィルムとアクリル粘着剤との接着性、耐折強さ、耐熱性、及び音響特性を実施例1と同様の方法により求め、評価結果を表4にまとめた。
〔比較例4〕
先ず、市販のポリエーテルイミド樹脂〔SABICイノベーティブプラスチックス社製 品名:ULTEM 9011−1000−NB(以下、「9011」と略す)〕を使用し、このポリエーテルイミド樹脂を、150℃に加熱した除湿乾燥機により12時間乾燥させ、この乾燥したポリエーテルイミド樹脂を、Tダイスを備えた単軸押出成形機に供給して溶融混練し、この溶融混練したポリエーテルイミド樹脂を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出してポリエーテルイミド樹脂製のフィルムを帯形に押出成形した。
この際、単軸溶融押出成形機の温度を340〜360℃、Tダイスの温度を365℃、これら単軸溶融押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度を360℃に調整したTダイスを備えた単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練したポリエーテルイミド樹脂を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出してポリエーテルイミド樹脂製のフィルムを帯形に押出成形した。フィルムを押出成形したら、このフィルムの厚さを実施例1と同様の接触式の厚さ測定器を使用して測定した。その結果、フィルム厚は4.9μmであった。また、フィルムのガラス転移点は210℃であった。
こうしてポリエーテルイミド樹脂製のフィルムを押出成形したら、このフィルム上にプライマー〔信越化学工業社製、製品名:プライマーNo.4〕を乾燥後の塗工厚みが1μmとなるよう、バーコーター方式により塗工し、熱風乾燥させた。
次いで、実施例2で作製した付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物シートのシリコーンゴム組成物面とプライマーを塗工したポリエーテルイミド樹脂製のフィルムのプライマー面とが貼り合わさるよう、ロール式のラミネート機にセットし、このラミネート機を作動させて付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物シートとポリエーテルイミド樹脂フィルムとをプライマーを介して貼り合わせた。
次いで、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物シートの二軸延伸ポリエステルフィルムを貼り合わせた面とプライマーを塗工したポリエーテルイミド樹脂製のフィルムのプライマー面が貼り合わさるよう、ロール式のラミネート機にセットし、二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離しながら、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物シートとポリエーテルイミド樹脂フィルムをプライマーを介して貼り合わせることにより、振動板用の積層中間体を形成した。
こうして振動板用の積層中間体が得られたら、この積層中間体を長手方向30cm、幅方向20cmの大きさに切り出し、ポリイミド樹脂フィルム〔東レ・デュポン社製、品名:カプトン、品番:100H〕、ステンレス板の順で挟み、190℃に加熱したプレス成形機に投入し、圧力0.4MPa、時間3分間の条件でプレス成形し、振動板用の積層中単体を硬化させた。
振動板用の積層中間体を硬化させたら、この振動板を取り出し、シリコーンゴム組成物の厚さ、ポリエーテルエーテル樹脂製のフィルムとシリコーンゴム組成物との耐折強さ、接着性、耐熱性、及び音響特性を求め、評価結果を表5にまとめた。なお、耐熱性は300℃における貯蔵弾性率、音響特性は20℃における損失正接により評価した。
各実施例の製造方法により得られた振動板は、15万回以上の耐折強さ試験を実施した結果、破断が認められなかった。また、15万回以上の耐折強さ試験を実施した振動板のクランプ付近を目視で観察した結果、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムとシリコーンゴム組成物との剥離も認められなかった。また、300℃における貯蔵弾性率は1×107Pa以上、20℃における損失正接は0.015以上有していた。したがって、実施例の製造方法により得られた振動板は、優れた耐久性、耐熱性、及び音響特性を有していることが明白となった。
これに対し、比較例1の製造方法より得られた振動板の場合、耐折強さ試験を15万回以上実施したが、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムとシリコーンゴム組成物との剥離も認められず、さらに300℃における貯蔵弾性率も1×107Pa以上有しており、優れた耐久性及び耐熱性を有していたが、20℃における損失正接が0.015未満なので、音響特性に問題が発生した。
比較例2の振動板の場合、プライマーを使用せずにポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムとシリコーンゴムとを貼り合わせたが、15万回の耐折強さ試験の実施後、フィルムとシリコーンゴムとが剥離した。また、比較例3の振動板の場合、シリコーンゴムをアクリル粘着剤に変更しても、優れた耐久性と耐熱性を確認したが、損失正接が0.015未満なので、音響特性に問題が生じた。さらに、比較例4の振動板の場合、ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムをポリエーテルイミド樹脂製に変更しても、優れた耐熱性と音響特性を確認したが、耐折強さが15万回未満であったため、振動板の耐久性に問題が生じた。