JP2023023664A - フィルム、離型フィルム付きフィルム、振動板、積層体、成形品及び音響変換器 - Google Patents

フィルム、離型フィルム付きフィルム、振動板、積層体、成形品及び音響変換器 Download PDF

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Abstract

【課題】成形前の形状保持性、及び成形時の賦形性を高くしつつ、成形時にフィルムが型に貼り付くことを防止できるフィルムを提供する。【解決手段】本発明のフィルムは、静摩擦係数が3以下である最表裏層と、前記最表裏層の間に配置される、少なくとも1層の硬化性の中間層とを備える。【選択図】なし

Description

本発明は、音響部材などの成形品を得るために使用されるフィルム、及び離型フィルム付きフィルム、並びに、これらから得られる振動板、積層体、成形品及び音響変換器に関する。
例えば、スマートフォン、PDA、ノートブックコンピューター、DVD、液晶テレビ、デジタルカメラ、携帯音楽機器等の小型電子機器の普及により、これら電子機器に使用される小型のスピーカー(通常、マイクロスピーカーと呼ばれる)や小型のレシーバ、さらにはマイクロホン、イヤホン等の小型の電気音響変換器の需要が高まっている。これら電気音響変換器に使用される振動板には、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等が広く使用されている。
また、近年、シリコーン樹脂が上記した振動板に使用されることも検討されている。例えば、特許文献1には、離型シートと、未硬化液状シリコーン組成物から成る第1層と、主として熱可塑性ポリウレタンを含む第2層とを順に積層して成る振動板用シート、及びこの振動板用シートを用いた振動板の製造方法が開示されている。特許文献1においては、振動板用シートが金型内にセットされて賦形成形された後、成形物から離型シートを剥離することで振動板が製造されている。特許文献1に記載の振動板用シートは、未硬化液状シリコーン組成物を使用するため、成形時の賦形性を高くすることができ、また、金型への追従性も高くすることができる。
特開2018-152817号公報
上記の通り、特許文献1において、振動板用シートは、未硬化液状シリコーン組成物から成る第1層に離型フィルムを積層したまま金型にセットして賦形成形される。そのため、成形後に離型フィルムを剥がす必要があるが、成形時の加熱及び加圧により、離型フィルムが第1層から剥がれにくくなることが多く、作業性効率が悪くなり、量産化の際に問題となる。
したがって、振動板用シートは、離型フィルムを剥がしたうえで、金型などの型にセットすることが望ましい。しかし、離型フィルムがないと、未硬化液状シリコーン組成物から成る第1層が、金型に貼り付いて、金型から容易に成形品を取り出せないなどの不具合が生じる。さらに、特許文献1の振動板用シートは、離型フィルムがないと、賦形前の形状保持性も低くなる。
そこで、本発明は、成形前の形状保持性、及び成形時の賦形性及び型への追従性を高くしつつ、成形時にフィルムが、金型などの型に貼り付くことを防止できるフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、フィルムを多層構造としたうえで、最表裏層の静摩擦係数を3以下とし、かつ硬化性を有する中間層とすることで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下の[1]~[16]を提供する。
[1]静摩擦係数が3以下である最表裏層と、前記最表裏層の間に配置される、少なくとも1層の硬化性の中間層とを備える、フィルム。
[2]ゲル分率が0%以上90%以下である、上記[1]に記載のフィルム。
[3]前記最表裏層のゲル分率がいずれも80%以上である、上記[1]または[2]に記載のフィルム。
[4]下記(a)の粘弾性特性を有する、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のフィルム。
(a)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’が0.1MPa以上500MPa以下。
[5]熱硬化性を有する、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のフィルム。
[6]架橋構造を有する、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のフィルム。
[7]シリコーンフィルムである、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のフィルム。
[8]硬化後の状態で、下記(b)の粘弾性特性を有する上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のフィルム。
(b)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上。
[9]硬化後の状態で、下記(c)~(e)の粘弾性特性を有する上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のフィルム。
(c)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上500MPa以下。
(d)測定温度100℃での貯蔵弾性率E’100が0.1MPa以上500MPa以下。
(e)前記貯蔵弾性率E’20に対する、前記貯蔵弾性率E’100の比(E’100/E’20)が0.4以上1.0以下。
[10]振動板用フィルムである、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載のフィルム。
[11]上記[1]~[10]のいずれか1項に記載のフィルムと、前記フィルムの少なくとも片面に設けられた離型フィルムとを備える、離型フィルム付きフィルム。
[12]上記[1]~[10]のいずれかに1項に記載のフィルムを硬化してなる振動板。
[13]上記[1]~[10]のいずれか1項に記載のフィルムを型に配置させて、熱成形させてなる積層体。
[14]上記[13]に記載の積層体において、型から剥がされてなる、成形品。
[15]振動板である、上記[14]に記載の成形品。
[16]上記[12]又は[15]に記載の振動板を備えた音響変換器。
本発明によれば、成形前の形状保持性、及び成形時の賦形性を高くしつつ、成形時にフィルムが型に貼り付くことを防止できるフィルムを提供できる。
本発明の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板1の構造を示す断面図である。 本発明の他の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板11の構造を示す断面図である。 本発明の他の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板21の構造を示す平面図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、フィルムとシートとの境界は定かではないため、本発明において、フィルムはシートを包含するものとする。
[フィルム]
本発明のフィルム(以下、本フィルムともいう)は、静摩擦係数が3以下である最表裏層(最表層及び最裏層)と、最表裏層の間に配置される、少なくとも1層の硬化性の中間層とを備える。
本フィルムは、最表裏層を比較的硬い層にして、最表裏層の静摩擦係数を低くすることで、成形時の型への貼り付きを防止できる。また、硬化性を有する中間層とすることで、フィルムは成形前においては一定の柔軟性が確保されるとともに、賦形成形時に十分に硬化されるので、賦形性が良好となり、かつ型への追従性も良好となる。
さらに、中間層は硬化性を有しフィルム全体では比較的柔軟でありながらも、両表面には比較的硬い最表裏層が設けられることで、最表裏層により柔軟なフィルムが適切に保持され、本フィルムに離型フィルムなどを積層しなくても、成形前の形状保持性が良好となり、ハンドリング性が良好となる。そのため、本フィルムは、離型フィルムを積層しなくても容易に型にセットして賦形成形することができ、賦形成形後に離型フィルムを剥がす工程を省略することができる。
(静摩擦係数)
上記の通り、本フィルムの最表裏層は、いずれも静摩擦係数が3以下となるものである。静摩擦係数が3より高くなると、本フィルムが型に貼り付きやすくなり、成形性を良好にすることが難しくなる。最表裏層はいずれも、静摩擦係数が2.5以下であることが好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。最表裏層の静摩擦係数を以上の通り低くすると、型への貼り付きをより一層抑制できる。
本フィルムの最表裏層の静摩擦係数は、下限値に関しては特に限定されないが、例えば0.3以上でもよいし、0.5以上であってもよいし、0.7以上であってもよい。なお、最表裏層(すなわち、最表層及び最裏層)の静摩擦係数は、互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
静摩擦係数は、最表裏層の成形方法、最表裏層の材質、及び最表裏層のゲル分率などにより適宜調整可能である。例えば、最表裏層のゲル分率を高くすると、最表裏層が硬くなり、静摩擦係数が低くなる傾向がある。より具体的には、最表裏層のゲル分率を80%以上にすることで、静摩擦係数を3以下にしやすくなる。また、最表裏層を構成する樹脂にシリコーン樹脂などの特定の樹脂や無機粒子を使用することでも、静摩擦係数を低くできる。さらに、最表裏層は、表面形状を適宜調整することで静摩擦係数を調整でき、例えば、最表裏層に粗さを付与することによっても静摩擦係数を低くできる。
なお、静摩擦係数は、ステンレス板に対する静摩擦係数であり、JIS K7125(1999)に基づくすべり試験によって測定することができる。
(ゲル分率)
本フィルムは、ゲル分率が0%以上90%以下であることが好ましい。ゲル分率が90%以下であると、成形前のフィルムを柔軟にしやすくなり、また、成形時に十分に硬化できるので、賦形性や型への追従性が十分となり、成形性が向上する。
賦形性及び成形性の観点から、本フィルムのゲル分率は、80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。本フィルムのゲル分率は、特に限定されず、0%以上であればよいが、例えば10%以上であってもよいし、20%以上であってもよい。なお、本フィルムのゲル分率は、フィルム全体のゲル分率を測定して得られた値である。
上記の通り最表裏層の間には、少なくとも1層の硬化性の中間層が設けられる。硬化性の中間層は、ゲル分率が0%以上80%未満であるのが好ましい。ゲル分率が80%未満である中間層であると、成形前のフィルムを柔軟にしやすくなり、また、成形時に十分に硬化できるので、賦形性や型への追従性が十分となり、成形性が向上する。
賦形性及び成形性の観点から、中間層のゲル分率は、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。中間層のゲル分率は、特に限定されず、0%以上であればよいが、例えば10%以上であってもよいし、20%以上であってもよい。
上記した硬化性の中間層は、1層からなってもよいし、2層以上からなってもよいが、1層からなることが好ましい。したがって、本フィルムは、好ましくは最表層/中間層/最裏層の3層構造を有するが、最表層/中間層/中間層/最裏層などの最表裏層の間に2層以上の中間層を有する4層以上の構造を有してもよい。
また、本フィルムは、最表層と最裏層の間に、上記した硬化性の中間層以外の層が設けられてよく、例えば、中間層と最表層の間、中間層と最裏層の間に、これら層間の接着性を向上させるための接着層などの他の層が設けられてもよい。また、中間層と中間層の間にも接着層などの他の層が設けられてもよい。
本フィルムにおいて、最表裏層(すなわち、最表層及び最裏層)のゲル分率は、いずれも80%以上であることが好ましい。最表裏層のゲル分率が80%以上であると、上記した静摩擦係数を低くしやすくなり、成形時の型への貼り付きが発生しにくくなる。また、本フィルムは、ゲル分率を上記のとおり高くすることで、フィルム硬化前においても最表裏層を比較的硬くでき、成形前の形状保持性をより向上させることができる。
以上の観点から、最表裏層のゲル分率は、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。最表裏層のゲル分率は、上限に関して特に限定されず、100%以下であればよいが、一般的には100%より低く、例えば、99%以下であってもよい。
なお、最表裏層(すなわち、最表層及び最裏層)のゲル分率は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
なお、ゲル分率は、以下の要領で測定できる。
1)フィルム全体、又は、フィルムの最表層、若しくは最裏層からサンプルを約100mg採取して、そのサンプル質量(a)を測定する。
2)採取したサンプルをクロロホルムに23℃の条件で24時間浸漬する。
3)クロロホルム中の固形分を取り出し、50℃で7時間真空乾燥する。
4)乾燥後の固形分の質量(b)を測定する。
5)質量(a)、(b)を用いて、以下の式(i)に基づいてゲル分率を算出する。
Figure 2023023664000001

上記測定方法から明らかなように、ゲル分率は、フィルムに含まれる架橋成分のみならず、充填材などの架橋成分以外の不溶解分もゲル分として含めて算出される。
ただし、硬化前の本フィルムの中間層については、硬化前の本フィルム全体及び最表裏層のゲル分率と、層厚みの比から計算することで求めるものとする。
(粘弾性特性)
本フィルムは、下記(a)の粘弾性特性を有することが好ましい。
(a)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’が0.1MPa以上500MPa以下。
貯蔵弾性率E’が0.1MPa以上であると、本フィルムは、その全体で一定の硬さを有することで離形フィルムからの剥離が容易になり、剥離時の破れ発生の懸念が小さくなる。また、離型フィルムがなくても形状保持性を高くしやすくなる。一方、本フィルムは、上記貯蔵弾性率E’を500MPa以下とすることで、一定の柔軟性を確保でき、成形時の型への追従性や賦形性を良好にできる。これら観点から、本フィルムの貯蔵弾性率E’は、0.5MPa以上であることがより好ましく、0.8MPa以上であることがさらに好ましく、1.0MPa以上であることがよりさらに好ましい。また、300MPa以下であることがより好ましく、200MPa以下であることがさらに好ましく、100MPa以下であることがよりさらに好ましく、50MPa以下であるのが特に好ましい。
本フィルムは、硬化後の状態で、下記(b)の粘弾性特性を有することが好ましく、また、下記(c)の粘弾性特性を有することも好ましい。
(b)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上。
(c)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上500MPa以下。
本フィルムは、貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上であることで、硬化後に一定の硬さを有するので、硬化後のハンドリング性などが良好となる。
また、本フィルムは、上記(c)の粘弾性特性を有することで、振動フィルムなどの音響部材に使用するときに、音質及び再生性などの音響特性が優れる傾向となる。音響特性及び硬化後のハンドリング性の観点から、硬化後の20℃での貯蔵弾性率E’20は、1MPa以上がより好ましく、2MPa以上がさらに好ましく、4MPa以上がよりさらに好ましく、また、400MPa以下がより好ましく、300MPa以下がさらに好ましく、200MPa以下がよりさらに好ましく、100MPa以下が特に好ましく、50MPa以下が最も好ましい。
本フィルムは、硬化後の状態で、下記(d)の粘弾性特性を有することが好ましい。
(d)測定温度100℃での貯蔵弾性率E’100が0.1MPa以上500MPa以下。
本フィルムは、硬化後の貯蔵弾性率E’100が上記範囲内であることで、耐熱性が良好となり、高温環境下でも、優れた音響特性が得られることが期待される。
貯蔵弾性率E’100は、1MPa以上がより好ましく、1.5MPa以上がさらに好ましく、2.5MPa以上がよりさらに好ましく、また、400MPa以下がより好ましく、300MPa以下がさらに好ましく、200MPa以下がよりさらに好ましく、100MPa以下が特に好ましく、50MPa以下が最も好ましい。
また、本フィルムは、硬化後の状態で、下記(e)の粘弾性特性を有することが好ましい。
(e)前記貯蔵弾性率E’20に対する、前記貯蔵弾性率E’100の比(E’100/E’20)が0.4以上1.0以下。
貯蔵弾性率の比(E’100/E’20)を上記範囲内とすることで、温度変化に伴う弾性率変化が小さくなり、耐熱性が良好となる傾向にある。また、加熱した際の弾性率変化が小さいため、高温環境下における音質が低下しにくくなり、低温域から高温域まで音の再生性を優れたものにしやすくなる。
上記比(E’100/E’20)は、0.5以上であることがより好ましく、0.6以上であることがさらに好ましく、0.65以上であることがよりさらに好ましい。また、0.99以下であることがより好ましく、0.97以下がさらに好ましく、0.95以下であることがよりさらに好ましく、0.93以下であることが特に好ましい。
(引張破断伸度)
本フィルムは、硬化後の状態で、引張破断伸度が100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。引張破断伸度がかかる範囲にあれば、フィルムの靭性が高くなることで、長時間の振動による破断が起こりにくく、振動板などの音響部材に使用した際の耐久性が優れる傾向となる。なお、引張破断伸度は大きければ大きいほどよく、特に上限は無いが、通常は1500%以下である。
なお、貯蔵弾性率及び引張破断伸度は、実施例記載の方法で測定すればよいが、硬化後の状態での貯蔵弾性率及び引張破断伸度とは、本フィルム全体のゲル分率が80%以上になるように硬化させたフィルムに対して測定すればよい。本フィルムをゲル分率80%以上に硬化させる具体的な方法として例えば、加熱による硬化、放射線による硬化が挙げられる。
加熱による硬化の場合、硬化時の加熱温度は180℃以上260℃以下であることが好ましく、190℃以上250℃以下であることがより好ましく、200℃以上240℃以下であることが更に好ましい。
また加熱時間は、1秒以上5分以下であることが好ましく、5秒以上4分以下であることがより好ましく、10秒以上3分以下であることが更に好ましく、20秒以上2分以下であることが特に好ましい。
また加熱時の圧力は0.01MPa以上100MPaであることが好ましく、0.1MPa以上50MPa以下であることがより好ましい。
一方、放射線による硬化の場合、放射線架橋に用いる放射線としては、電子線、X線、γ線などを利用することができ、用いる放射線の種類と積算照射線量を調整することによって、本フィルムをゲル分率80%以上に硬化することができる。
また、貯蔵弾性率及び引張破断伸度の測定方法の詳細は、実施例に記載のとおりであり、フィルムに方向性がある場合にはTD(樹脂の流れ方向(MD)に直交する方向)について測定するとよい。
本フィルムは、上記の通り少なくとも中間層に硬化性を有することにより硬化性を有する。本フィルムは、光硬化性、湿気硬化性、熱硬化性のいずれでもよいが、熱硬化性を有することが好ましい。本フィルムは、熱硬化性を有することで、加熱しながら賦形成形する際に硬化させることができるので、賦形性がより一層良好となる。なお、本フィルムは、熱硬化性を有すると、加熱されることでそのゲル分率が上昇するものである。また、本フィルムは、少なくとも中間層が熱硬化性を有すればよいが、最表裏層も適宜熱硬化性を有してもよい。
本フィルムは、架橋構造を有することが好ましい。本フィルムは、架橋構造を有することで、硬化前(すなわち、成形前)における形状保持性が向上しやすくなる。また、本フィルムは、少なくとも最表裏層が架橋構造を有することが好ましい。最表裏層が架橋構造を有することで、硬化前において、フィルムの柔軟性を大きく損なうことなく形状保持性を向上させやすくなる。また、最表裏層が架橋構造を有することで、最表裏層のゲル分率を上記した所望の範囲内に調整しやすくなる。
本フィルムの厚みは、特に限定されないが、5μm以上500μm以下が好ましく、15μm以上400μm以下がより好ましく、30μm以上300μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚みがかかる範囲であれば、音響部材、特に振動板に適した厚みの成形品を製造できる。
中間層の厚みは、特に限定されないが、3μm以上300μm以下であることが好ましく、5μm以上200μm以下であることがより好ましく、20μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。中間層の厚みを上記下限値以上とすることで、本フィルム中に一定の厚み以上で柔軟性が高い未硬化の部分が設けられることになるので、賦形性が高くなり、成形時の型への追従性も向上しやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、柔軟性が高い部分が必要以上に厚くなることを防止して、成形前の形状保持性を向上させやすくなる。なお、中間層の厚みとは、中間層が2層以上あるときはその合計厚みである。
また、中間層の厚みのフィルム全体の厚みに対する比(中間層/フィルム全体)は、4/10以上であることが好ましく、5/10以上がより好ましく、6/10以上がさらに好ましい。厚みの比(中間層/フィルム全体)を上記下限値以上とすることで、フィルム中に一定以上の割合で柔軟性が高い部分が設けられることになるので、賦形性及び成形時の型への追従性を向上させやすくなる。また、上記厚みの比(中間層/フィルム全体)は、9.9/10以下が好ましく、9.8/10以下がより好ましく、9.7/10以下がさらに好ましい。厚みの比(中間層/フィルム全体)を上記上限値以下とすることで、最表裏層を一定以上の厚みとしやすくなる。
最表裏層それぞれの厚みは、特に限定されないが、1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上60μm以下であることがより好ましく、1μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。最表裏層それぞれの厚みを上記下限値以上とすることで、成形前の形状保持性を良好にでき、かつ型への貼り付きも防止しやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、一定の硬さ以上の部分が必要以上に厚くなることを防止して、賦形性及び成形時の型への追従性を向上させやすくなる。
最表裏層それぞれの厚みは、上記中間層の厚みより小さいとよく、最表裏層それぞれの厚みの中間層の厚みに対する比(各最表裏層/中間層)は、好ましくは1/50以上1未満である。最表裏層それぞれの厚みを中間層の厚みより小さくすると、フィルム中の柔軟性の高い部分が一定の厚み割合で含まれることになるので、賦形性及び成形時の型への追従性を向上させやすくなる。また、比(各最表裏層/中間層)を上記下限値以上とすると、成形前の形状保持性を向上させ、かつ型への貼り付けも防止しやすくなる。
これら観点から、比(各最表裏層/中間層)は、より好ましくは1/50以上3/5以下、さらに好ましくは1/50以上2/5以下である。
本フィルムの中間層及び最表裏層は、それぞれ樹脂層であり、各樹脂層を構成する樹脂は、好ましくは硬化性樹脂であり、より好ましくは熱硬化性樹脂である。中でも、好ましい具体例としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。本フィルムの各層において、これら樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することが好ましい。
また、本フィルムにおいて、各層(中間層、最表層、最裏層)は同一の種類の樹脂を使用してもよいし、異なる種類の樹脂を使用してもよいが、中間層と最表裏層は、同じ種類の樹脂を使用することが好ましい。すなわち、例えば、中間層にシリコーン樹脂を使用する場合には、最表裏層もシリコーン樹脂を使用するとよい。同じ種類の樹脂を使用することで、接着層などを使用しなくても、各層間(例えば、中間層と最表層、中間層と最裏層)を容易に接着しやすくなる。
また、本フィルムは、シリコーンフィルムであることが好ましい。なお、シリコーンフィルムであるとは、中間層、最表層、及び最裏層のうちいずれかが樹脂としてシリコーン樹脂を使用したフィルムであって、中でも、中間層、最表層、及び最裏層の全てにおいてシリコーン樹脂を使用することが特に好ましい。本フィルムがシリコーンフィルムであると、耐熱性、機械強度などが良好となり、上記した粘弾性特性(a)~(e)も充足しやすくなる。また、引張破断伸度や静摩擦係数も上記した所望の範囲内に調整しやすくなる。
(オルガノポリシロキサン)
中間層、及び最表裏層に使用されるシリコーン樹脂としては、オルガノポリシロキサンが挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、例えば、以下の式(ii)で表される構造を有する。
SiO(4-n)/2 ・・・(ii)
ここで、Rは同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1~12、より好ましくは炭素原子数1~8の一価炭化水素基、nは1.95~2.05の正の数である。
Rは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、及びトリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、及びシアノエチル基等が挙げられる。
オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることも好ましい。また、オルガノポリシロキサンは、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが好ましい。具体的には、Rのうち0.001モル%以上、5モル%以下、好ましくは0.005モル%以上、3モル%以下、より好ましくは0.01モル%以上、1モル%以下、特に0.02モル%以上、0.5モル%以下のアルケニル基を有することが好ましく、特にビニル基を有することが最適である。オルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種、又はそれ以上の混合物でもよい。
最表裏層においてオルガノポリシロキサンは、架橋剤などによって架橋されているとよく、好ましくは有機過酸化物によって架橋される。したがって、最表裏層それぞれは、オルガノポリシロキサンと有機過酸化物などの架橋剤とを備える樹脂組成物を硬化した硬化物であることが好ましい。この際、最表裏層は、ゲル分率が上記した所望の範囲内となるように硬化させるとよい。したがって、最表裏層に配合される有機過酸化物は、殆ど分解されており、有機過酸化物は、最表裏層それぞれに含有されないか、もしくは含有されていても少量である。
一方で、中間層において、オルガノポリシロキサンは、未架橋状態であるか、架橋されても部分的に架橋された状態であるとよい。したがって、中間層は、オルガノポリシロキサンと有機過酸化物などの架橋剤とを備える樹脂組成物からなることが好ましいが、この際、中間層は、ゲル分率が上記した所望の範囲内となるように、未硬化であるか硬化していても半硬化の状態であるとよい。したがって、中間層に配合される有機過酸化物は、殆ど分解せずに有機過酸化物の状態のまま中間層に含有されているとよい。
有機過酸化物としては、例えばジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のアルキル過酸化物、2,4-ジクミルパーオキサイド等のアラルキル過酸化物等の有機過酸化物が挙げられるが、架橋速度や安全性の観点から、アルキル過酸化物、特に、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
中間層、最表裏層それぞれを形成する樹脂組成物における有機過酸化物の配合量は、樹脂組成物全量基準で、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.03質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上4質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上3質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以上2質量%以下がとりわけ好ましい。有機過酸化物の配合量がかかる範囲であれば、十分な硬化速度を有する組成物が安全に得られる傾向となる。なお、樹脂組成物に配合される有機過酸化物は、上記の通り、最表裏層においては、殆ど分解しており殆ど含有されないが、中間層においては上記した配合量の範囲で有機過酸化物が含有されるとよい。
樹脂組成物は、オルガノポリシロキサンを含むミラブル型であることが好ましい。ミラブル型の樹脂組成物は、未硬化状態において、室温(25℃)で自己流動性がない非液状(例えば、固体状又はペースト状)ではあるが、後述する混練機によって均一に混合できる。本フィルムにおいて、ミラブル型の樹脂組成物を使用することで、後述するように、樹脂組成物を中間層、又は最表裏層に加工する際の生産性が良好となる。
また、上記では、中間層、最表裏層それぞれにおいて使用する樹脂組成物は、上記の通り、樹脂としてシリコーン樹脂(オルガノポリシロキサン)以外の樹脂を使用してもよく、その場合にも、最表裏層は、例えば、樹脂と架橋剤を含有する樹脂組成物を、ゲル分率が所望の範囲内となるように硬化してなる層であるとよい。また、中間層は、同様に樹脂と架橋剤を含有する樹脂組成物から形成されるとよいが、この際、樹脂組成物は、ゲル分率が上記した所定の範囲内となるように、未硬化、又は硬化していても半硬化の状態とするとよい。
本発明の中間層、最表層、及び最裏層は、それぞれシリカ系充填材などの充填材を含有してもよい。本フィルムは、各層に充填材を含有させることで、フィルムの貯蔵弾性率や、引張破断伸度等の機械物性を適切な範囲としやすくなる。また、充填材を使用することで、樹脂組成物の粘度や硬度を調整しやすく、樹脂組成物の流動性や二次加工性のバランスも最適化しやすくなる。さらに、音響部材の設計や音響特性に合わせて硬度を適宜調整しやすくなるといった利点がある。
なお、充填材は、ゲル分率の測定においてはゲル分の一部を構成し、各層のゲル分率は、充填材を含有することで高くなる。充填材を含有することで、ゲル分率が高くなっても、架橋することでゲル分率が高くなる場合と同様に、各層の硬度を高めることができる。
シリカ系充填材としては、例えば煙霧質シリカ、又は沈降性シリカ等が挙げられ、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材でもよい。
各層における充填材の含有量は、各層を構成する樹脂組成物全量基準で、例えば10質量%以上50質量%以下、好ましくは15質量%以上40質量%以下、より好ましくは20質量%以上35質量%以下である。また、充填材の平均粒子径は、例えば0.01μm以上、20μm以下、好ましくは0.1μm以上、10μm以下、より好ましくは0.5μm以上、5μm以下である。充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用い、メジアン径(D50)として測定することができる。
本発明では、各層を形成するための樹脂組成物は、効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料、難燃剤、耐衝撃性改良剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
本フィルムにおいて、最表層及び最裏層を形成するための樹脂組成物は、互いに同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有してもよい。同様に、中間層を形成するための樹脂組成物は、最表層や最裏層を形成するための樹脂組成物と同じ組成を有してもよいが、異なる組成を有してもよい。なお、ここでいう樹脂組成物の組成とは、樹脂組成物が硬化される前の組成を意味する。
本発明において、オルガノポリシロキサンは市販品も使用可能である。また、オルガノポリシロキサンに加え、シリカ系充填材などの添加剤を含有する混合物の市販品を使用してもよい。具体的には、信越化学工業株式会社製の商品名「KE-597-U」、「KE-594-U」なども使用できる。
[離型フィルム付きフィルム]
上記した本フィルムは、離型フィルムが付けられて、離型フィルム付きフィルムとして使用されてもよい。離型フィルム付きフィルムは、上記した本フィルムと、本フィルムの少なくとも片面に設けられた離型フィルムとを備える。
また、離型フィルム付きフィルムにおいては、本フィルムの両面に離型フィルムが設けられることが好ましい。なお、離型フィルムは、本フィルムの最表層、最裏層、又はこれら両方の上に積層されることになる。
離型フィルムとしては、樹脂フィルムであってもよいし、樹脂フィルムの少なくとも片面が離型処理された離型層を有するフィルムであってもよい。離型フィルムは、離型層を有する場合には、離型層が本フィルムの最表裏層に接触するように本フィルムに積層されるとよい。
樹脂フィルムに使用される樹脂としては、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂などが例示できる。これらの中では、ポリエステル系樹脂が好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。
離型フィルムの厚さは、特に制限はないが、好ましく5μm以上100μm以下、より好ましくは7μm以上80μm以下、さらに好ましくは10μm以上50μm以下である。
本フィルムは、離型フィルムが付けられることで、離型フィルムによって保護される。したがって、輸送するときなどに本フィルムに傷が付いたりすることを防止する。なお、離型フィルムは、後述する通り、本フィルムを製造する際に最表裏層に積層される離型フィルムをそのまま使用してもよいし、製造された本フィルムに対して別途積層してもよい。
また本フィルムは、後述する通りに例えば賦形成形などにより成形されるが、離型フィルムは成形時には本フィルムから剥がされたうえで、金型などの型にセットされるとよい。本フィルムは、離型フィルムが無くても、上記のとおり所定の最表裏層を有することで、硬化前においても形状保持性が良好で、かつ成形時に金型に貼り付くことも防止できる。
[本フィルムの製造方法]
本フィルムは、一般的な成形法により成形することができ、例えば、ラミネート成形、共押し等の押出成形、コーティング、又はこれらを組み合わせて成形することができる。これらの中では、最表裏層と、中間層との多層化の容易性も考慮し、ラミネート成形を利用することが好ましい。
ラミネート成形を利用する場合には、まず、最表層、最裏層を用意し、これら最表層、最裏層の間に中間層をラミネートすることで得るとよい。
より具体的に説明すると、まず、最表層及び最裏層を得るための樹脂組成物(最表層又は最裏層用樹脂組成物)、及び中間層を得るための樹脂組成物(中間層用樹脂組成物)を用意するとよい。
各樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば樹脂組成物を構成する材料を混練することで得ることができる。混練に使用する混練機としては、単軸又は二軸押出機などの押出機、2本ローラーや3本ローラー等のカレンダーロール、ロールミル、プラストミル、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー等の公知の混練機を用いることができる。
混練温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、架橋(硬化)を抑制しつつ樹脂の粘度を適度に下げて混練しやすくするため、20℃以上150℃以下であることが好ましく、30℃以上140℃以下であることがより好ましく、40℃以上130℃以下であることが更に好ましく、50℃以上120℃以下であることが特に好ましく、60℃以上110℃以下であることがとりわけ好ましい。
混練時間は、樹脂組成物を構成する材料が均一に混合される程度であればよく、例えば、数分~数時間、好ましくは5分~1時間である。
以上の通りに用意した最表層又は最裏層用の樹脂組成物は、一般的な方法で離型フィルムの上に積層して積層体を得て、その後、積層体を加熱などして、樹脂組成物を硬化させるとよい。これにより、離型フィルムの上に最表層又は最裏層が積層されてなる積層体(以下、「積層フィルム」ともいう)が得られる。積層フィルムにおいて、最表層又は最裏層は、硬化されることで架橋構造が形成され、ゲル分率が上記の通り80%以上となることが好ましい。
なお、離型フィルムが離型処理面を有する場合、最表裏層用の樹脂組成物は、離型フィルムの離型処理面に積層されるとよい。
また、最表層又は最裏層用の樹脂組成物を、2枚の離型フィルムの間にラミネートし、次いで、適宜樹脂組成物を加熱などにより硬化させ、その後、一方の離型フィルムを剥がして上記した積層フィルムを得てもよい。
また、本製造方法では、上記の通り、離型フィルムに最表裏層用の樹脂組成物を積層して硬化させることで、得られる最表裏層の表面は、離型フィルムの表面形状に応じた形状となる。そのため、離型フィルムの表面形状を調整することで、最表裏層の表面形状も調整できる。
次に、ラミネート成形により、上記積層フィルムの間に、中間層用樹脂組成物から形成される中間層を積層して本フィルムを得るとよい。具体的には、中間層用樹脂組成物を未硬化又は半硬化の状態で、例えば一対のロール間において、二方向から繰り出された積層フィルムの間に投入する。ここで、中間層用樹脂組成物は、例えば、押出機などを使用してTダイなどから押し出すことで、積層フィルム間に投入するとよい。また、各積層フィルムは、最表層及び最裏層が内側となり、これらが互いに対向するように繰り出されるとよい。
そして、必要に応じてロールの間隙にて厚みを調整し、積層フィルムの間に、未硬化又は半硬化状態の中間層が形成された積層体が得られる。該積層体は、離型フィルム/最表層/中間層/最裏層/離型フィルムの積層構造を有するとよく、上記した離型フィルム付きフィルムとなる。
[成形品]
本フィルムは、金型などの型により成形し、かつ硬化されることで成形品に成形することができ、典型的には型により賦形成形して各種の成形品に成形するとよい。硬化は、本フィルムの特性に応じて行うとよく、加熱、光照射、湿気付与又はこれらの組み合わせで行うとよいが、加熱により行うことが好ましい。成形品は、音響部材であることが好ましく、中でも振動板を構成することがより好ましい。
本フィルムから成形品を得る場合には、少なくとも以下の工程1及び工程2を行うことが好ましい。
工程1:本フィルムを加熱して型により成形し、かつ本フィルムを硬化させる工程
工程2:成形かつ硬化された本フィルム(すなわち、成形品)を型から剥がす工程
以下、各工程についてより詳細に説明する。
(工程1)
工程1では、本フィルムを加熱して型により成形し、かつ本フィルムを硬化して成形品を成形する。成形品は、型により賦形成形されるとよく、それにより、所望の形状に成形される。工程1における成形は、特に限定されず、真空成形、圧空成形、プレス成形等のいずれかの成形方法により行うとよいが、これらの中では、成形がより簡便な点からプレス成形が好ましい。
すなわち、工程1では、フィルムを型に配置させ、フィルムが熱成形されてなる、型とフィルムからなる積層体が得られるが、該フィルムは熱プレスされたものであることが好ましい。
型としては、成形方法に応じた型を用意すればよいが、型には、製造される成形品の形状に応じた凹凸等を設けるとよい。型としては、典型的には金属製の型(金型)を使用するが、樹脂製の型でもよい。例えば後述のとおり成形品(音響部材)がドーム形状又はコーン形状の少なくともいずれかを有するならば、型にはドーム形状又はコーン形状に対応した凹凸を設けるとよい。また、成形品(音響部材)が表面にタンジェンシャルエッジを有する場合には、型にはタンジェンシャルエッジに応じた凹凸を設けるとよい。
本フィルムは、上記の通り、離型フィルムが付けられることがあるが、本フィルムは、上記の通り離型フィルムが剥がされたうえで、型にセットされるとよい。
工程1では、加熱した本フィルムを型によって賦形すればよく、例えば、型上に配置した本フィルムを加熱しつつ型により賦形してもよいし、予め加熱した本フィルムを型上に配置し、その後型により賦形してもよいし、これらを組み合わせてもよい。また、本フィルムは、いかなる方法で加熱してもよく、例えば、型上に配置したフィルムを加熱する場合には、型を加熱しその伝熱で加熱してもよいし、他の方法で加熱してもよい。
賦形又は硬化時の加熱温度は180℃以上260℃以下であることが好ましく、190℃以上250℃以下であることがより好ましく、200℃以上240℃以下であることが更に好ましい。賦形又は硬化時の温度がかかる範囲であれば、本フィルムが熱で溶融変形しない範囲で十分な速度で硬化が可能となる傾向がある。
賦形時間は、1秒以上5分以下であることが好ましく、5秒以上4分以下であることがより好ましく、10秒以上3分以下であることが更に好ましく、20秒以上2分以下であることが特に好ましい。賦形時の熱処理時間がかかる範囲であれば、生産性を維持したまま十分に硬化させやすい傾向となる。
なお、本フィルムは、好ましくは賦形しながら硬化されるが、特に限定されず賦形後に硬化されてもよい。なお、賦形時間とは、本フィルムが型内で賦形ないし硬化されている時間をいい、賦形開始前および賦形終了後の型移動時間や、積層体を離型する際の時間は含まないものとする。
(工程2)
工程2では、工程1で成形かつ硬化された本フィルムを型から剥がし、成形品を得る。本発明では、フィルムの最表裏層の静摩擦係数が低いので、離型フィルムなどを積層しなくても、フィルムの型への貼り付きが防止され、フィルムから得られた成形品は型から容易に剥がすることができる。また、フィルムの中間層は、ゲル分率が一定値未満であるため、賦形性が高く、かつ型へのフィルムの追従性が高い。そのため、成形品は、高い成形精度で製造することができる。
さらに、本フィルムは、最表裏層が設けられることで、形状保持性が高く、離型フィルムがなくてもハンドリング性が良好であり、離型フィルムがない状態でも、フィルムの形状を維持したまま金型に容易にセットすることができる。そして、離型フィルムが積層されないことで、成形品から離型フィルムを剥がす工程が省略できるので、量産化もしやすくなる。
本発明において、上記フィルムから得られる成形品のゲル分率は、80%以上であればよい。ゲル分率が80%以上であると、音響部材に適した貯蔵弾性率と、機械強度とを有する成形品を得やすくなる。成形品のゲル分率は、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。また、成形品のゲル分率は、上限に関して特に限定されず、100%以下であればよいが、一般的には100%より低く、例えば、99%以下であってもよい。なお、成形品のゲル分率とは、成形品全体のゲル分率であり、成形品の厚み方向と平行してサンプリングして測定するとよい。ゲル分率の測定方法の詳細は上記の通りである。
[フィルムの用途]
本発明のフィルムは、上記の通り音響部材に使用されることが好ましく、中でも、振動板に好適に使用することができる。本発明の音響部材は、本フィルムを硬化してなるものであり、具体的には上記した成形品よりなるとよい。振動板は、スピーカー振動板であることがより好ましく、特に携帯電話等のマイクロスピーカー振動板として好適に使用できる。
本フィルムは、適宜成形されることで振動板などの各種の音響部材となるものである。
音響部材は、例えば、少なくとも一部がドーム形状やコーン形状などを有するとよい。また、音響部材は、表面にタンジェンシャルエッジを有してもよい。ドーム形状またはコーン形状を有し、あるいは、タンジェンシャルエッジを有する場合には、音響部材は、好ましくは振動板、より好ましくはスピーカー振動板に使用される。
(振動板)
振動板についてより詳細に説明すると、振動板の形状は特に制限されず、任意であり、円形状、楕円形状、オーバル形状等が選択できる。また、振動板は、一般的に、電気信号などに応じて振動するボディと、ボディの周囲を囲むエッジとを有する。振動板のボディは、通常、エッジにより支持される。振動板の形状は、上記のとおりドーム状、コーン状でもよいし、これらを組み合わせた形状でもよいし、振動板に使用されるその他の形状でもよい。
本フィルムは、振動板の少なくとも一部を形成すればよく、例えば、振動板のボディ又はエッジが本フィルムにより形成され、振動板のエッジ又はボディが別の部材により形成してもよい。もちろん、ボディ及びエッジの両方が、本フィルムにより一体的に形成されてもよく、振動板全体が、本フィルムにより形成されてもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係る振動板1の構造を示す図であり、平面視で円形の振動板1を、円の中心線を通る面で切断した断面図である。振動板1はマイクロスピーカー用振動板である。図1に示すように、振動板1は、ドーム部(ボディ)1aを中心に、ボイスコイル2に取り付ける凹嵌部1b、周縁部(エッジ)1c、および、その外周にフレーム等に貼り付ける外部貼付け部1dを有する。
図2は、本発明の他の実施形態に振動板11の構造を示す図であり、平面視で円形の振動板11を、円の中心線を通る面で切断した断面図である。振動板11はマイクロスピーカー用振動板である。図2に示すように、振動板11は、ドーム形状に加工されたドーム部(ボディ)11aを中心に、ボイスコイル2に取り付ける凹嵌部11b、コーン形状に加工されたコーン部11j、および、周縁部(エッジ)11cを有する。振動板11に例示するように、振動板は、一部がドーム形状に加工され、且つ、該一部を除く他の一部がコーン形状に加工されていてもよい。なお、振動板11は、それぞれ周縁部11cを直接フレーム等に取り付けてもよく、他の部材を介してフレーム等に取り付けてもよい。
振動板の表面には、上記のとおり、タンジェンシャルエッジを付与してもよい。タンジェンシャルエッジは、例えば、横断面形状がV字状の溝などにより構成されるとよい。図3には、本発明の他の実施形態に係る振動板21の平面図を示す。振動板21は、円形のドーム部(ボディ)21aの外周縁部に、複数のタンジェンシャルエッジ21eが付与されたタンジェンシャルエッジ部21gと、タンジェンシャルエッジ部21gの外周に配置された複数のタンジェンシャルエッジ21fが付与されたタンジェンシャルエッジ部21hを有する。なお、図3では、径方向に沿って2つのタンジェンシャルエッジ部が設けられる例を示すが、タンジェンシャルエッジ部は径方向に沿って1つのみであってもよいし、3つ以上設けられてもよい。
なお、振動板は、上記の通りスピーカー振動板、中でもマイクロスピーカー振動板であることが好ましい。マイクロスピーカー振動板として好適に使用する観点から、振動板の大きさは、最大径が25mm以下、好ましくは20mm以下であり、また最大径が5mm以上のものが好適に用いられる。なお、最大径とは振動板の形状が円形状の場合には直径、楕円形状やオーバル形状の場合には長径を採用するものとする。
振動板は、本フィルム単体により成形されてもよいし、本フィルムと他の部材との複合材により成形されてもよい。例えば、上記のとおりエッジまたはボディのいずれかを他の部材により形成してもよい。
さらに、振動板の二次加工適性や防塵性あるいは、音響特性の調整や意匠性向上等のために、振動板の表面にさらに帯電防止剤をコーティングしたり、金属を蒸着したり、スパッタリングしたり、着色(黒色や白色など)したりするなどの処理を適宜行ってもよい。さらに、アルミニウムなどの金属との積層、あるいは、不織布との複合化などを適宜行ってもよい。
(音響変換器)
本発明の音響変換器は、上記した音響部材、好ましくは振動板を備える音響変換器である。音響変換器としては、典型的には電気音響変換器であり、スピーカー、レシーバ、マイクロホン、イヤホン等が挙げられる。音響変換器は、これらの中では、スピーカーであることが好ましく、携帯電話等のマイクロスピーカーが好適である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[評価及び測定方法]
本実施例では、以下のとおりに各種物性の測定及びフィルムの評価を行った。
(1)ゲル分率の測定
明細書記載の方法に従って、硬化前の本フィルム全体のゲル分率、硬化前の本フィルムの最表裏層のゲル分率、及び硬化後の本フィルム全体のゲル分率を測定した。本フィルム全体のゲル分率を測定する際には、サンプリングをフィルムの厚み方向と平行して均等に行った。また、硬化前の本フィルムの中間層については、硬化前の本フィルム全体及び最表裏層のゲル分率と、層厚みの比から計算することで求めた。
(2)貯蔵弾性率E’
各実施例、比較例で得られた硬化前及び硬化後の本フィルムから4mm×8cmの試験片を切り出し、測定試料として得た。その測定試料を用いて、JIS K7244-4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用い、測定モードを引張で、周波数10Hz、歪み0.1%、温度範囲0~300℃、加熱速度3℃/minで昇温させ、硬化前のフィルムについては20℃の貯蔵弾性率を測定した。また、硬化後のフィルムについては20℃及び100℃における貯蔵弾性率を測定した。測定はTDについて行った。
(3)静摩擦係数
各実施例及び比較例で得られた本フィルムの最表裏面それぞれとステンレス板(SUS430)との静摩擦係数を測定した。静摩擦係数は、各実施例及び比較例で得られた熱成形前の本フィルム最表裏面それぞれに対して3回ずつ測定し、これらの平均値より求めた。静摩擦係数の具体的な測定方法は、以下のとおりである。
JIS K7125(1999)を参照して、本フィルムの最裏面又は最表面とステンレス板とを試験開始前に15秒間接触保持させたのち、以下の条件で縦方向(MD)に測定を実施し、ステンレス板との静止摩擦係数を評価した。
・装置:プラスチックフィルムすべり試験機(インテスコ社製)
・滑り片:全質量200g(接触面積が一辺63mmの正方形)
・接触面積:40cm
・試験速度:100mm/min
・温度:23℃±2℃
・相対湿度:50%±10%
(4)ハンドリング性
(4-1)破れの有無
離型フィルム付きフィルムから離型フィルムを手で剥がす工程において、破れの有無を評価した。フィルムが破れることなく離型フィルムを剥がせたものを評価「〇」、離型フィルムにとられてフィルムの一部に破れがあったものを評価「×」とした。
なお、破れの有無以外の各種評価及び測定の際には離型フィルムを剥がした状態の本フィルムを用いた。
(4-2)形状保持性
各実施例、比較例で得られた硬化前の本フィルムについて形状保持性を評価した。離型フィルムから本フィルムを剥がして各種評価や測定に用いる際に、形状が保持されているため容易に操作できたものを評価「〇」、形状が保持できず操作の過程で撓んでフィルム自身が絡まったり切れたりしたものを評価「×」とした。
(5)成形性・賦形性
各実施例及び比較例で得られた本フィルムから7cm×10cmほどの試験片を切り出し、評価試料とした。予め240℃に加熱した、タンジェンシャルエッジがついたドーム形状の振動板用の金型に評価試料を挟み込んで0.6MPaの圧力でプレスし、加圧した状態で30秒保持してから試料を金型から取り出した。
取り出した後の試料を目視で確認し、金型通りの凹凸が賦形されているものを評価「〇」、金型よりも小さい凹凸しか賦形されていないものや凹凸が賦形されていないものを評価「×」とした。
(6)金型への貼り付き性
上記の成形性・賦形性の評価と同様に各実施例及び比較例で得られた本フィルムから7cm×10cmほどの試験片を切り出し、評価試料とした。予め240℃に加熱した振動板用の金型に評価試料を挟み込んで0.6MPaの圧力でプレスし、加圧した状態で30秒保持してから試料を金型から取り出した。
金型から評価試料を取り出す際に、評価試料が金型に貼りつかず容易に取り出せたものを評価「〇」、評価試料が金型に貼りつき引っ掛かりがあったものを評価「×」とした。
(7)引張破断伸度
JIS K7161:2014に準じた方法により、引張速度200mm/分、23℃の環境下で、TDについて硬化後の本フィルムが破断したときの伸度を測定した。
実施例1
最表裏層用に、離型フィルムとして表面粗さ(Ra)が0.88μmのPETフィルム(1)と表面粗さ(Ra)が1.9μmのPETフィルム(2)を用意した。PETフィルム(1)とPETフィルム(2)の間に厚さ20μmのシリコーンゴム(商品名「TSE2571-5U」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)をラミネートし、硬化させた積層フィルムを準備し、PETフィルム(1)を剥離し硬化済みシリコーンを露出させた。
オルガノポリシロキサンとシリカを含む混合物(商品名「KE-597-U」、信越化学工業株式会社製)100質量部と、有機過酸化物(商品名「C-8B」、信越化学工業株式会社製、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、有機過酸化物を約40質量%含有)1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて、温度90℃で10分間混練して、ミラブル型の樹脂組成物(1)を得た。
上記の積層フィルムを、硬化済みシリコーン露出面が内側になるように、径100mmの2本のカレンダーロールに沿って供給し、カレンダーロール間で積層フィルムの間に、樹脂組成物(1)を投入して、室温25℃、ロール温度90℃でロールにバンクを形成させ、中間層の厚みが100μmとなるように、離型フィルム/最表層/中間層/最裏層/離型フィルムからなる離型フィルム付きフィルムを得た。得られた離型フィルム付きフィルムから2枚の離型フィルムを手で剥がして、本フィルムを得た。本フィルムの最表裏層及び中間層のゲル分率、最表裏層の静摩擦係数、及び本フィルムの20℃での貯蔵弾性率を測定した。測定結果、ハンドリング性の評価結果を表1に示す。
賦形成形により成形品を製造することを想定して、上記で得られた本フィルムを220℃で2分間加熱しながら圧力0.2MPaで2枚の平板よりプレス成形する簡易的な方法で硬化させた。得られた硬化後の本フィルムについて、ゲル分率(フィルム全体)、貯蔵弾性率、及び引張破断伸度を測定した。
比較例1
積層フィルムの代わりに、離型フィルム(PETフィルム(2))単体を、径100mmの2本のカレンダーロールに沿って供給し、カレンダーロール間で離型フィルムの間に、樹脂組成物(1)を投入して、室温25℃、ロール温度90℃でロールにバンクを形成させ、中間層の厚みが100μmとなるように、離型フィルム/中間層/離型フィルムからなる離型フィルム付きフィルムを得た。
得られた離型フィルム付きフィルムから2枚の離型フィルムを剥がして、本フィルムを得た。本フィルムは中間層単層からなるものであった。本フィルム(中間層)のゲル分率、静摩擦係数を測定するとともに、20℃での貯蔵弾性率を測定した。測定結果、ハンドリング性の評価結果を表1に示す。
賦形成形を想定して上記で得られた本フィルムを、220℃で2分間加熱しながら圧力0.2MPaで2枚の平板よりプレス成形する簡易的な方法で、硬化させた。得られた硬化後の本フィルムについて、ゲル分率、貯蔵弾性率、及び引張破断伸度を測定した。
比較例2
積層フィルムの代わりに、離型フィルム(PETフィルム(2))単体を、径100mmの2本のカレンダーロールに沿って供給し、カレンダーロール間で離型フィルムの間に、樹脂組成物(1)を投入して、室温25℃、ロール温度90℃でロールにバンクを形成させ、中間層の厚みが100μmとなるように、離型フィルム/中間層/離型フィルムからなる離型フィルム付きフィルムを得た。離型フィルム付きフィルムは、220℃で2分間加熱しながら圧力0.2MPaで2枚の平板よりプレス成形する簡易的な方法で加熱することで、中間層を硬化させた。
中間層を硬化後、得られた離型フィルム付きフィルムから2枚の離型フィルムを剥がして、本フィルムを得た。本フィルムは中間層単層からなるものであった。本フィルム(中間層)の静摩擦係数、及び20℃での貯蔵弾性率を測定した。測定結果、ハンドリング性の評価結果を表1に示す。
また、本フィルムはすでに硬化が完了していることから、本フィルムについて、ゲル分率、貯蔵弾性率、及び引張破断伸度を測定した。
下記表1に、実施例1及び比較例1~2における評価測定結果まとめを示す。
Figure 2023023664000002
以上の実施例の本フィルムは、硬化性の中間層と、最表裏層を有し、かつ最表裏層の静摩擦係数が3以下であったため、成形により十分に賦形することができ、かつ金型への追従性も良好でありながらも、成形時にフィルムが金型に貼り付く不具合を防止することができた。また、最表裏層が比較的硬い層であったため、離型フィルムを剥がした後でもフィルムの形状が適切に保持されてハングリング性に優れており、容易に金型にセットできた。
さらに、硬化後の本フィルムが、上記した(c)~(e)の粘弾性特性を満たすため、実施例1のフィルムによって振動板などの音響部材を成形すると、音質及び再生性などの音響特性に優れることが期待できる。また、硬化後の本フィルムは、引張破断伸度が高く、長時間の振動による破断が起こりにくく、耐久性に優れた音響部材を提供できることも期待できる。
それに対して、比較例1のフィルムは、表面の静摩擦係数が高かったため、賦形性及び金型への追従性は良好であったが、成形時にフィルムが金型に貼り付く不具合が生じた。さらに、最表裏層と、硬化性の中間層とを有する多層構造になっておらず、フィルム全体が比較的柔軟であったため、離型フィルムを剥がした後、形状を適切に保持しにくく、ハングリング性に劣っていた。
また、比較例2では、表面の静摩擦係数が低いため、成形時にフィルムが金型に貼り付くことはなかったが、最表裏層と、硬化性の中間層とを有する多層構造になっておらず、フィルム全体が比較的硬いため、成形により十分に賦形ができず、かつ金型への追従性も不十分であった。

Claims (16)

  1. 静摩擦係数が3以下である最表裏層と、前記最表裏層の間に配置される、少なくとも1層の硬化性の中間層とを備える、フィルム。
  2. ゲル分率が0%以上90%以下である、請求項1に記載のフィルム。
  3. 前記最表裏層のゲル分率がいずれも80%以上である、請求項1または2に記載のフィルム。
  4. 下記(a)の粘弾性特性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルム。
    (a)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’が0.1MPa以上500MPa以下。
  5. 熱硬化性を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム。
  6. 架橋構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルム。
  7. シリコーンフィルムである、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルム。
  8. 硬化後の状態で、下記(b)の粘弾性特性を有する請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルム。
    (b)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上。
  9. 硬化後の状態で、下記(c)~(e)の粘弾性特性を有する請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルム。
    (c)測定温度20℃での貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上500MPa以下。
    (d)測定温度100℃での貯蔵弾性率E’100が0.1MPa以上500MPa以下。
    (e)前記貯蔵弾性率E’20に対する、前記貯蔵弾性率E’100の比(E’100/E’20)が0.4以上1.0以下。
  10. 振動板用フィルムである、請求項1~9のいずれか1項に記載のフィルム。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルムと、前記フィルムの少なくとも片面に設けられた離型フィルムとを備える、離型フィルム付きフィルム。
  12. 請求項1~10のいずれかに1項に記載のフィルムを硬化してなる振動板。
  13. 請求項1~10のいずれか1項に記載のフィルムを型に配置させて、熱成形させてなる積層体。
  14. 請求項13に記載の積層体において、型から剥がされてなる、成形品。
  15. 振動板である、請求項14に記載の成形品。
  16. 請求項12又は15に記載の振動板を備えた音響変換器。


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