JP2024003792A - 音響部材用樹脂組成物、音響部材用フィルム、音響部材、音響変換器、振動板及び音響部材用硬化体 - Google Patents

音響部材用樹脂組成物、音響部材用フィルム、音響部材、音響変換器、振動板及び音響部材用硬化体 Download PDF

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桂史 大崎
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【課題】フィルム又は硬化体としたときに、減衰性が大きい音響部材用樹脂組成物を提供すること。【解決手段】芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含む音響部材用樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、音響部材用樹脂組成物、音響部材用フィルム、音響部材、音響変換器、振動板及び音響部材用硬化体に関する。
スマートフォン、PDA、ノートブックコンピューター、DVD、液晶テレビ、デジタルカメラ、携帯音楽機器等の小型電子機器の普及により、これら電子機器に使用される小型のスピーカー(通常、マイクロスピーカーと呼ばれる)や小型のレシーバ、さらにはマイクロホン、イヤホン等の小型の電気音響変換器の需要が高まっている。これら電気音響変換器に使用される振動板には、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等が広く使用されている。
また、近年、シリコーン樹脂が上記した振動板に使用されることも検討されている。例えば、特許文献1には、離型シートと、未硬化液状シリコーン組成物から成る第1層と、主として熱可塑性ポリウレタンを含む第2層とを順に積層して成る振動板用シート、及びこの振動板用シートを用いた振動板の製造方法が開示されている。特許文献1においては、振動板用シートが金型内にセットされて賦形成形された後、成形物から離型シートを剥離することで振動板が製造されている。特許文献1に記載の振動板用シートは、未硬化液状シリコーン組成物を使用するため、成形時の賦形性を高くすることができ、また、金型への追従性も高くすることができる。
特開2018-152817号公報
特許文献1で提案される振動板用シートは、未硬化液状シリコーン組成物から成り、金型にセットして賦形成形される。
しかしながら、これらの従来のシリコーン振動板では、減衰性が小さいという問題があった。
そこで、本発明は、フィルム又は硬化体としたときに、減衰性が大きい音響部材用樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含有する樹脂組成物を用いることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下の[1]~[16]を提供する。
[1]芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含む音響部材用樹脂組成物。
[2]前記芳香環構造がベンゼン環構造である請求項1に記載の音響部材用樹脂組成物。
[3]上記[1]又は[2]に記載の音響部材用樹脂組成物からなる音響部材用フィルム。
[4]上記[1]又は[2]に記載の音響部材用樹脂組成物からなる音響部材。
[5]上記[3]に記載の音響部材用フィルムを賦形してなる音響部材。
[6]上記[4]に記載の音響部材を備えた音響変換器。
[7]上記[3]に記載の音響部材用フィルムを賦形してなる振動板。
[8]芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含む音響部材用硬化体。
[9]前記芳香環構造がベンゼン環構造である上記[8]に記載の音響部材用硬化体。
[10]下記(b)~(d)の粘弾性特性を有する上記[8]又は[9]に記載の音響部材用硬化体。
(b)測定温度20℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上500MPa以下。
(c)測定温度100℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’100が0.1MPa以上500MPa以下。
(d)上記のE’100/E’20が0.2以上1.0以下。
[11]下記(e)の粘弾性特性を有する上記[10]に記載の音響部材用硬化体。
(e)測定温度24℃における損失係数(tanδ)が0.14以上。
[12]ゲル分率が80%以上である上記[10]に記載の音響部材用硬化体。
[13]上記[8]又は[9]に記載の音響部材用硬化体を備えた音響部材。
[14]上記[8]又は[9]に記載の音響部材用硬化体を備えた振動板。
[15]上記[13]に記載の音響部材を備えた音響変換器。
[16]上記[14]に記載の振動板を備えた音響変換器。
本発明によれば、フィルム又は硬化体としたときに、減衰性が大きい音響部材用樹脂組成物を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板1の構造を示す断面図である。 本発明の他の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板11の構造を示す断面図である。 本発明の他の一実施形態に係るマイクロスピーカー振動板21の構造を示す平面図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、フィルムとシートとの境界は定かではないため、本発明において、フィルムはシートを包含するものとする。
[音響部材用樹脂組成物]
本発明の音響部材用樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」と記載することがある。)は、芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含有することを特徴とする。芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含有することで、フィルム又は硬化体としたときに、減衰性を向上させることができる。
<芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサン>
本樹脂組成物に使用されるポリオルガノシロキサンは、例えば、以下の式(i)で表される構造を有する。
SiO(4-n)/2 ・・・(i)
ここで、Rは同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1~12、より好ましくは炭素原子数1~8の一価炭化水素基、nは1.95~2.05の正の数である。
Rは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、及びドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等の脂環式構造を有する基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、β-フェニルプロピル基、ベンジル基、ナフチル基等の芳香環構造を有する基、並びにこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、及びシアノエチル基等が挙げられる。
本発明におけるポリオルガノシロキサンは、芳香環構造または脂環式構造を有し、上記Rとして、芳香環構造または脂環式構造を有する基を含むことが好ましい。芳香環構造または脂環式構造を有する基としては、本発明の効果を奏する範囲であれば、特に限定はなく、例えば、上述の基が例示される。中でも芳香環構造としてはベンゼン環構造が好ましく、例えば、下記式(ii)で示されるような側鎖としてフェニル基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。
また、本発明に係るポリオルガノシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。さらに、ポリオルガノシロキサンは、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが好ましい。具体的には、Rのうち0.001モル%以上、5モル%以下、好ましくは0.005モル%以上、3モル%以下、より好ましくは0.01モル%以上、1モル%以下、特に0.02モル%以上、0.5モル%以下のアルケニル基を有することが好ましく、特にビニル基を有することが最適である。ポリオルガノシロキサンは、基本的には直鎖状であるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種、又はそれ以上の混合物でもよい。
<他のポリオルガノシロキサン>
本樹脂組成物は、芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンンを含有するが、芳香環構造または脂環式構造(以下「芳香環構造等」と記載することがある。)を有さない他のポリオルガノシロキサンを含有していてもよい。このような他のポリオルガノシロキサンとしては、例えば、以下の式(iii)、(iv)、(v)で示される、ジメチル系ポリオルガノシロキサン、メチルビニル系ポリオルガノシロキサン、メチルフロロアルキル系ポリオルガノシロキサンなどが好適に挙げられる。これらの他のポリオルガノシロキサンを含有することで、成形加工性の向上、架橋速度の向上等の効果がある。
上記芳香環構造等を有しない他のポリオルガノシロキサンのうち、汎用性、高速架橋性、成形加工性等を考慮すると(iv)メチルビニル系ポリオルガノシロキサンが特に好ましい。
本樹脂組成物における、芳香環構造等を有するポリオルガノシロキサンと芳香環構造等を有しない他のポリオルガノシロキサンの含有割合(芳香環構造等を有するポリオルガノシロキサン/芳香環構造等を有さない他のポリオルガノシロキサン)は、本発明の効果を奏する範囲で特に制限はなく、例えば、100:0~5:95の範囲であればよい。減衰性と高速架橋性等のバランスの点からは、90:10~10:90の範囲であることが好ましく、80:20~15:85の範囲であることがより好ましく、70:30~20:80の範囲であることがさらに好ましい。
また、本樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリコーン樹脂(ポリオルガノシロキサン)以外の樹脂を混合してもよい。
本樹脂組成物は芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含んでいるため、架橋の程度が抑制され、フィルム又は硬化体としたときに、減衰性を大きくすることができると考えられる。
ポリオルガノシロキサンの側鎖基全体に対する、前記芳香環構造または脂環式構造を有する側鎖基のモル分率の含有量は、赤外分光法、Raman分光法、溶液及び/又は固体核磁気共鳴(NMR)分光法などの分光測定、又は、テトラエトキシシラン法、アルカリ融解法、フロロシラン化法、オルトギ酸メチル法などの化学分解法により、測定することができる。化学分解法では、前記の化学処理によりポリオルガノシロキサンを分解し、その分解物の溶液NMR測定やGC/MS測定から、分解生成物の化学構造及び組成比が得られる。前記化学分解法でも、分解時の副反応抑制の観点から、特許第3529854号公報、特許第3529858号公報に記載のオルトギ酸メチル分解法が好ましい。
なお、フィルム中に含まれるポリオルガノシロキサンの側鎖基がフェニル基とメチル基を含む場合、フェニル基とメチル基の赤外吸収スペクトルの強度比(Sp/Sm)は0.1以上0.8以下が好ましい。Sp/Smが0.1以上であることで、十分な減衰性を得ることができる。以上の観点から、Sp/Smは0.13以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。一方、0.8以下であると適度に架橋が進み、フィルムの取り扱い性が向上する。以上の観点から、0.7以下であることがさらに好ましく、0.65以下であることがさらに好ましい。また、フィルム中に含まれるポリオルガノシロキサンの側鎖基がフェニル基とメチル基を含む場合、ポリオルガノシロキサンの主鎖のSiに対する、フェニル基と結合したSiのモル分率は固体29Si-NMR法で算出することができる。フィルム中に含まれるポリオルガノシロキサンの主鎖のSiに対する、フェニル基と結合したSiのモル分率は1.0以上12.0以下が好ましい。フェニル基と結合するSiのモル分率が1.0以上であることで、十分な減衰性を得ることができる。以上の観点から、フェニル基と結合するSiのモル分率は1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。一方、12.0以下であると適度に架橋が進み、フィルムの取り扱い性が向上する。以上の観点から、11.0以下であることがより好ましく、10.0以下であることがさらに好ましい。
なお、この赤外吸収スペクトルの強度比(Sp/Sm)は実施例に記載の方法により得られる。また、固体29Si-NMR法を用いたフェニル基と結合したSiのモル分率の測定方法についても実施例に記載の方法により得られる。
<ゲル分率>
本樹脂組成物は、フィルム又は硬化体としたときのゲル分率が80%以上であることが好ましい。フィルム又は硬化体のゲル分率が80%以上であると、取り扱い性が良好となり、金型からの剥離が容易になる。以上の観点から、フィルム又は硬化体のゲル分率は83%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
一方、フィルム又は硬化体のゲル分率の上限に関しては、特に限定されず、通常は100%以下である。なお、ゲル分率の測定は、実施例に記載の方法により行った。
上記ゲル分率は架橋密度を表す指標であり、本発明では、芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを用いることで、フィルム又は硬化体としたときの架橋密度を減少させることができ、損失係数(tanδ)を上げることができる。損失係数と共振時の伝達率(τ)は下記式の関係を有し、tanδを上げることで内部減衰は大きくなり、伝達率は小さくなる。
本樹脂組成物は、上記ゲル分率を得るために、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては特に限定されるものではなく、例えば、有機過酸化物が好適に用いられる。
有機過酸化物としては、例えばジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のアルキル過酸化物、2,4-ジクミルパーオキサイド等のアラルキル過酸化物等の有機過酸化物が挙げられるが、架橋速度や安全性の観点から、アルキル過酸化物、特に、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
本樹脂組成物中の有機過酸化物の配合量は、樹脂組成物全量基準で、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.03質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上4質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上3質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以上2質量%以下がとりわけ好ましい。有機過酸化物の配合量がかかる範囲であれば、十分な硬化速度を有する組成物が安全に得られる傾向となる。なお、樹脂組成物に配合される有機過酸化物は、後述する高硬化層においては、分解されており殆ど含有されないが、未硬化層においては上記した配合量の範囲で有機過酸化物が含有されるとよい。
本樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサンを含むミラブル型であることが好ましい。ミラブル型の樹脂組成物は、未硬化状態において、室温(25℃)で自己流動性がない非液状(例えば、固体状又はペースト状)ではあるが、後述する混練機によって均一に混合できる。本フィルムにおいて、ミラブル型の樹脂組成物を使用することで、後述する多層フィルムの場合に、樹脂組成物を中間層、又は最表裏層に加工する際の生産性が良好となる。
本樹脂組成物は充填材を含有していてもよい。充填材としては、セリア(酸化セリウム)、煙霧質シリカ、又は沈降性シリカ等のシリカが好適に挙げられる。本樹脂組成物は、充填材を含有させることで、本樹脂組成物から得られるフィルム及び硬化体の貯蔵弾性率や、引張破断伸度等の機械物性を適切な範囲としやすくなる。また、充填材を使用することで、樹脂組成物の粘度や硬度を調整しやすくなり、樹脂組成物の流動性や二次加工性のバランスも最適化しやすくなる。さらに、音響部材の設計や音響特性に合わせて硬度を適宜調整しやすくなるといった利点がある。
本樹脂組成物における充填材の含有量は、樹脂組成物全量基準で、例えば10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上35質量%以下である。また、充填材の平均粒子径は、例えば0.01μm以上、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上、10μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上、5μm以下である。充填材の平均粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用い、メジアン径(D50)として測定することができる。
本樹脂組成物において、ポリオルガノシロキサンは市販品も使用可能である。また、ポリオルガノシロキサンに加え、セリア系充填材、シリカ系充填材などの添加剤を含有する混合物の市販品を使用してもよい。具体的には、信越化学工業株式会社製の商品名「KE-5550-U」、「KE-597-U」、「KE-594-U」なども使用できる。
なお、充填材は、ゲル分率の測定においてはゲル分の一部を構成し、各層のゲル分率は、充填材を含有することで高くなる。充填材を含有することで、ゲル分率が高くなっても、架橋することでゲル分率が高くなる場合と同様に、各層の硬度を高めることができる。
また、本樹脂組成物は、効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料、難燃剤、耐衝撃性改良剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
<樹脂組成物の製造方法>
本樹脂組成物は、例えば樹脂組成物を構成する材料を混練することで得ることができる。混練に使用する混練機としては、単軸又は二軸押出機などの押出機、2本ローラーや3本ローラー等のカレンダーロール、ロールミル、プラストミル、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー等の公知の混練機を用いることができる。
混練温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、架橋(硬化)を抑制しつつ樹脂の粘度を適度に下げて混練しやすくするため、20℃以上150℃以下であることが好ましく、30℃以上140℃以下であることがより好ましく、40℃以上130℃以下であることが更に好ましく、50℃以上120℃以下であることが特に好ましく、60℃以上110℃以下であることがとりわけ好ましい。
混練時間は、樹脂組成物を構成する材料が均一に混合される程度であればよく、例えば、数分~数時間、好ましくは5分~1時間である。
[音響部材用フィルム]
本発明の音響部材用フィルム(以下、「本フィルム」と記載することがある。)は、前記本樹脂組成物からなる。すなわち、本フィルムは、芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含有する樹脂組成物からなる。芳香環構造等を有するポリオルガノシロキサンを含有することで、本フィルムの減衰性を向上させることができる。
また、本フィルムは、少なくとも一方の面の静摩擦係数が3以下であることが好ましい。少なくとも一方の面の静摩擦係数が3以下であることで、金型から容易にフィルムを取り出すことができ、取り扱い性に優れたフィルムとすることができる。
本フィルムとしては、未硬化又は半硬化の硬化性フィルム及び硬化後のフィルムのいずれも含むものであるが、硬化性フィルムであることが好ましい。
なお、後述する多層フィルムにおいては、各層が上記した樹脂組成物から形成される層であればよい。多層フィルムにおいて、各層の組成は、互いに同一であってよいし、異なってもよい
<静摩擦係数>
本フィルムは、少なくとも一方の面の静摩擦係数が3以下であることが特徴である。静摩擦係数が3以下であることによって、フィルムの取り扱い性が良好となり、例えば、離型フィルム付きの場合は、離型フィルムからの剥離が容易になり、また、剥離時に破れが発生する懸念がなくなる。以上の観点から、静摩擦係数は2.5以下であることが好ましく、2.2以下であることがより好ましく、2以下であることがより好ましく、1.8以下であることがさらに好ましい。静摩擦係数の下限値については、特に制限はないが、例えば0.3以上でもよいし、0.5以上であってもよいし、0.7以上であってもよい。 上記静摩擦係数は、本フィルムの少なくとも一方の面において3以下であることを要するが、他の面の静摩擦係数は3を超えるものであってもよいし、3以下であってもよい。
なお、静摩擦係数はステンレス板(SUS430)に対して測定される値であり、実施例に記載の方法により得られる値である。
静摩擦係数は、フィルムの成形方法、フィルムの材質、表面部分のゲル分率などにより適宜調整可能である。
具体的には、表面形状を適宜調整することで静摩擦係数を調整でき、例えば、表面部分に粗さを付与することによって静摩擦係数を小さくできる。静摩擦係数を調整する方法としては、例えば、サンドブラスト処理、ショットブラスト処理、エッチング処理、彫刻処理、エンボスロール転写、エンボスベルト転写、エンボスフィルム転写、表面結晶化等種々の方法により凹凸を付与する方法が挙げられる。フィルムに対して粒子を添加することでも表面形状を変化させて、静摩擦係数を調整できる。
静摩擦係数は通常、本フィルムを接触させる保護フィルムの粗さによって種々調整することができる。
<粘弾性特性>
本フィルムは、下記(a)の粘弾性特性を有することが好ましい。
(a)測定温度20℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’が0.1MPa以上500MPa以下。
貯蔵弾性率E’が0.1MPa以上であると、本フィルムが離型フィルムにラミネートされるタイプの場合に、本フィルムが適度な硬さを有することで、離型フィルムからの剥離が容易になり、また、剥離時に破れが発生する懸念がなくなる。また離型フィルムを剥がした後であっても形状を保持することができる。一方、貯蔵弾性率E’が500MPa以下であると、フィルムは適度な柔軟性を有し、成形時の型への追従性や賦形性が可能となる。
以上の観点から、E’は、0.5MPa以上300MPa以下が好ましく、0.8MPa以上200MPa以下がより好ましく、1.0MPa以上100MPa以下がさらに好ましく、1.2MPa以上10MPa以下が特に好ましい。
本フィルムは、硬化性を有するフィルムであることが好ましく、硬化のタイプとしては、光硬化性、湿気硬化性、熱硬化性のいずれでもよいが、熱硬化性を有することが好ましい。本フィルムは、熱硬化性を有することで、加熱しながら賦形成形する際に硬化させることができるので、賦形性がより一層良好となる。なお、本フィルムは、熱硬化性を有すると、加熱されることでそのゲル分率が上昇するものである。
本フィルムは、架橋構造を有することが好ましい。適度な架橋構造を有することで、上記粘弾性特性(a)の要件を満足するフィルムが得やすくなる。また、硬化前(すなわち、成形前)における形状保持性が向上しやすくなる。架橋点になりやすいのは、Siに結合するメチル基及びビニル基であり、芳香環構造等を有する基は架橋点とはならない。したがって、芳香環構造等を有する基の含有量を制御することで、架橋度をコントロールすることが可能となる。
本フィルムは、フィルムの柔軟性、成形時の型への追従性や賦形性を考慮すると、適度な架橋度を有するフィルムであることが好ましい。すなわち、硬度としては、未架橋フィルムよりも硬く、完全硬化されたフィルムよりも柔らかいフィルム(低硬度フィルム)であることが好ましい。
本発明において架橋構造の有無は、縮合型の場合はフィルム中に微量に含まれる未反応の架橋剤と反応後(分解された)架橋剤の存在、付加型の場合は架橋反応に関与したビニル基の存在によって、同定することができる。
本フィルムの厚みは、特に限定されないが、5μm以上500μm以下が好ましく、15μm以上400μm以下がより好ましく、30μm以上300μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚みがかかる範囲であれば、振動板に適した厚みの成形品を製造できる。
<引張破断伸度>
本フィルムは、硬化後の状態で、引張破断伸度が100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。引張破断伸度がかかる範囲にあれば、フィルムの靭性が高くなることで、長時間の振動による破断が起こりにくく、振動板などの音響部材に使用した際の耐久性が優れる傾向となる。なお、引張破断伸度は大きければ大きいほどよく、特に上限は無いが、通常は1500%以下である。
また、引張破断伸度は、JIS K7161:2014に準じた方法により、引張速度200mm/分、23℃の環境下で、TD(樹脂の流れ方向に直交する方向)について、硬化後の本フィルムが破断したときの伸度を測定することで得られる。
上記引張破断伸度は、本フィルム全体のゲル分率が80%以上になるように硬化させたフィルムに対して測定すればよい。本フィルムをゲル分率80%以上に硬化させる具体的な方法として例えば、加熱による硬化、放射線による硬化が挙げられる。
加熱による硬化の場合、硬化時の加熱温度は180℃以上260℃以下であることが好ましく、190℃以上250℃以下であることがより好ましく、200℃以上240℃以下であることが更に好ましい。
また加熱時間は、1秒以上5分以下であることが好ましく、5秒以上4分以下であることがより好ましく、10秒以上3分以下であることが更に好ましく、20秒以上2分以下であることが特に好ましい。
また加熱時の圧力は0.01MPa以上100MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上50MPa以下であることがより好ましい。
一方、放射線による硬化の場合、放射線架橋に用いる放射線としては、電子線、X線、γ線などを利用することができ、用いる放射線の種類と積算照射線量を調整することによって、本フィルムをゲル分率80%以上に硬化することができる。
本フィルムは、単層フィルムであっても、多層フィルムであってもよい。
単層フィルムは、少なくとも芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含有する樹脂組成物から形成される層からなり、樹脂組成物には、上記の通り、必要に応じて芳香環構造等を有しないポリオルガノシロキサンを含有してもよい。樹脂組成物は、上記含有割合で芳香環構造等を有するポリオルガノシロキサンと、芳香環構造等を有しないポリオルガノシロキサンを含有するとよい。
本フィルムを構成するポリオルガノシロキサンは、架橋剤などによって架橋されているとよく、有機過酸化物によって架橋されていることが好ましい。
単層フィルムの場合には、フィルムの柔軟性、成形時の型への追従性や賦形性を考慮すると、適度な架橋度を有するフィルムであることが好ましい。すなわち、架橋密度としては、未架橋フィルムよりも大きく、完全硬化されたフィルムよりも小さいフィルム(低硬度フィルム)であることが好ましい。例えば、ゲル分率が所望の範囲内となるように、半硬化の状態であるとよい。したがって、単層フィルムに配合される有機過酸化物は、一部分解され、一部は分解されずに有機過酸化物の状態のまま含有されているとよい。
本フィルムが多層フィルムの場合、多層のうちの少なくとも1層が架橋構造を有することで、硬化前において、フィルムの柔軟性を大きく損なうことなく形状保持性を向上させやすくなる。
また多層フィルムであれば、その一部の層が架橋構造を有しており、完全硬化された層(以下「高硬化層」ということがある。)を含むことが好ましい。すなわち、本フィルムは、少なくとも1層の高硬化層と、少なくとも1層の未硬化層を有する積層フィルムであってもよい。具体的には、高硬化層/未硬化層の2層構成、高硬化層/未硬化層/高硬化層、未硬化層/高硬化層/未硬化層の2種3層構成が挙げられる。また、例えば中間層が2層ある4層構成であってもよく、各層の層間に接着層があってもよい。
なお、ここで未硬化層とは、全く架橋されていない場合だけではなく、一部架橋された部分的に架橋されている態様も含み、例えば上記低硬度フィルムを未硬化層として用いることもできる。そして、未硬化層のゲル分率は、高硬化層のゲル分率より低くするとよい。
一方、高硬化層は、そのゲル分率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
更なる硬化反応によって、ゲル分率の増加が得られない層である。
未硬化層は、ポリオルガノシロキサンと有機過酸化物などの架橋剤とを備える樹脂組成物からなることが好ましく、ゲル分率が上記した所望の範囲内となるように、未硬化であるか硬化していても半硬化の状態であり、未硬化層に配合される有機過酸化物は、殆ど分解せずに有機過酸化物の状態のまま未硬化層に含有されていることが好ましい。
また、本フィルムが、例えば、2種3層の多層フィルムである場合には、表裏層が高硬化層であり、中間層が未硬化層の態様があり、また、表裏層が未硬化層であり、中間層が高硬化層の態様がある。いずれの層構成であっても、未硬化層のポリオルガノシロキサンは、未架橋状態であるか、架橋されても部分的に架橋された状態(半硬化状態)であり、有機過酸化物は、殆ど分解されずに有機過酸化物の状態のまま未硬化層に含有されることが好ましい。一方、高硬化層はポリオルガノシロキサンが好ましくは有機過酸化物によって架橋され、有機過酸化物は分解しており、殆ど含有されないことが好ましい。
本フィルムが多層フィルムの場合に、各層を形成するための樹脂組成物は、互いに同じ組成を有していてもよいが、異なる組成を有してもよい。なお、ここでいう樹脂組成物の組成とは、樹脂組成物が硬化される前の組成を意味する。
<離型フィルム付きフィルム>
本フィルムは、離型フィルムが付され、離型フィルム付きフィルムとして使用されてもよい。離型フィルム付きフィルムは、上記した本フィルムと、本フィルムの少なくとも片面に設けられた離型フィルムとを備える。
また、離型フィルム付きフィルムにおいては、本フィルムの両面に離型フィルムが設けられることが好ましい。
離型フィルムとしては、樹脂フィルムであってもよいし、樹脂フィルムの少なくとも片面が離型処理された離型層を有するフィルムであってもよい。離型フィルムは、離型層を有する場合には、離型層が本フィルムに接触するように本フィルムに積層されるとよい。
離型フィルムに使用される樹脂としては、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂などが例示できる。これらの中では、ポリエステル系樹脂が好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。
離型フィルムの厚さは、特に制限はないが、好ましく5μm以上150μm以下、より好ましくは7μm以上120μm以下、さらに好ましくは10μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上80μm以下である。
本フィルムは、離型フィルムが付されることで、離型フィルムによって保護される。したがって、輸送するときなどに本フィルムに傷が付いたりすることを防止する。なお、離型フィルムは、本フィルムを製造する際に積層される離型フィルムをそのまま使用してもよいし、製造された本フィルムに対して別途積層してもよい。
また本フィルムは、後述する通りに例えば賦形成形などにより成形されるが、離型フィルムは成形時には本フィルムから剥がされたうえで、金型などの型にセットされるとよい。その際に、本フィルムは離型フィルムから破れることなく剥離することができる。
<本フィルムの製造方法>
本フィルムは、一般的な成形法により成形することができ、例えば、押出成形等により成形することができる。単層フィルムの場合、前述のようにして混練して得た本樹脂組成物を用いて、押出成形等により成形すればよい。なお、静摩擦係数を3以下に調整するために、フィルムに対してエンボス加工等の後加工を施してもよい。
また、離型フィルムを用いて、ラミネート成形により、離型フィルムの間又は離型フィルムの上に、樹脂組成物を積層して、離型フィルム付きの本フィルムを得てもよい。
単層フィルムの場合には、粘弾性特性の条件(a)を満足するように、半硬化することが好ましい。半硬化の条件としては、上記条件(a)を満足するものであれば、特に限定されない。
また、本フィルムが多層フィルムである場合、例えば、ラミネート成形、共押し等の押出成形、コーティング、又はこれらを組み合わせて成形することができる。これらの中では、最表裏層と、中間層との多層化の容易性も考慮し、ラミネート成形を利用することが好ましい。
ラミネート成形を利用する場合には、まず、最表層、最裏層を用意し、これら最表層、最裏層の間に中間層をラミネートすることで得るとよい。
より具体的に説明すると、まず、最表層及び最裏層を得るための樹脂組成物(最表層又は最裏層用樹脂組成物)、及び中間層を得るための樹脂組成物(中間層用樹脂組成物)を用意するとよい。
以下、高硬化層/未硬化層/高硬化層の2種3層のフィルムの製造方法について説明する。
上記のようにして用意した最表層又は最裏層用の樹脂組成物は、一般的な方法で離型フィルムの上に積層して積層体を得て、その後、積層体を加熱などして、樹脂組成物を硬化させるとよい。これにより、離型フィルムの上に最表層又は最裏層が積層されてなる積層体が得られる。
なお、該積層体が離型処理面を有する場合、最表裏層用の樹脂組成物は、離型フィルムの離型処理面に積層されるとよい。
次に、ラミネート成形により、上記積層フィルムの間に、中間層用樹脂組成物から形成される中間層を積層して本フィルムを得るとよい。具体的には、中間層用樹脂組成物を未硬化又は半硬化の状態で、例えば一対のロール間において、二方向から繰り出された積層フィルムの間に投入する。ここで、中間層用樹脂組成物は、例えば、押出機などを使用してTダイなどから押し出すことで、積層フィルム間に投入するとよい。また、各積層フィルムは、最表層及び最裏層が内側となり、これらが互いに対向するように繰り出されるとよい。
そして、必要に応じてロールの間隙にて厚みを調整し、積層フィルムの間に、未硬化又は半硬化状態の中間層が形成された積層体が得られる。該積層体は、離型フィルム/最表層/中間層/最裏層/積層フィルムの積層構造を有するとよく、上記した離型フィルム付きフィルムとなる。
一方、未硬化層/高硬化層/未硬化層の態様の場合には、最初に押出成形等で単層フィルムを得ておき、これを架橋硬化して、高硬化層用の単層フィルムを用意する。次いで、該高硬化層の両面に、未硬化層用の樹脂組成物を塗工することで、本態様のフィルムを製造することができる。
なお、静摩擦係数を3以下とするためには、上記した通り、フィルムの成形方法、フィルムの材質、表面部分のゲル分率などが重要であり、これらを適宜調整することにより達成が可能である。また、所定の表面粗さを有する離型フィルムのマット面上に樹脂組成物をラミネートしたり、エンボス加工等の後加工により、本フィルムの表面をマット面にしたりして静摩擦係数を所定値以下とすることができる。
[音響部材用硬化体]
本発明における音響部材用硬化体(以下、「本硬化体」と記載することがある。)は、芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含む。芳香環構造等を有するポリオルガノシロキサンについては、上述した通りであり、芳香環構造としては、ベンゼン環構造が好ましい。
ポリオルガノシロキサンの側鎖基全体に対する、前記芳香環構造または脂環式構造を有する側鎖基のモル分率は、赤外分光法、Raman分光法、溶液及び/又は固体核磁気共鳴(NMR)分光法などの分光測定、又は、テトラエトキシシラン法、アルカリ融解法、フロロシラン化法、オルトギ酸メチル法などの化学分解法により、測定することができる。化学分解法では、前記の化学処理によりポリオルガノシロキサンを分解し、その分解物の溶液NMR測定やGC/MS測定から、分解生成物の化学構造及び組成比が得られる。前記化学分解法でも、分解時の副反応抑制の観点から、特許第3529854号公報、特許第3529858号公報に記載のオルトギ酸メチル分解法が好ましい。
なお、フィルム中に含まれるポリオルガノシロキサンの側鎖基がフェニル基とメチル基を含む場合、フェニル基とメチル基の赤外吸収スペクトルの強度比(Sp/Sm)は0.1以上0.8以下が好ましい。Sp/Smが0.1以上であることで、十分な減衰性を得ることができる。以上の観点から、Sp/Smは0.13以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。一方、0.8以下であると適度に架橋が進み、フィルムの取り扱い性が向上する。以上の観点から、0.7以下であることがさらに好ましく、0.65以下であることがさらに好ましい。
また、フィルム中に含まれるポリオルガノシロキサンの側鎖基がフェニル基とメチル基を含む場合、フィルム中に含まれるポリオルガノシロキサンの主鎖のSiに対する、フェニル基と結合したSiのモル分率は1.0以上12.0以下が好ましい。フェニル基と結合するSiのモル分率が1.0以上であることで、十分な減衰性を得ることができる。以上の観点から、フェニル基と結合するSiのモル分率は1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。一方、12.0以下であると適度に架橋が進み、フィルムの取り扱い性が向上する。以上の観点から、11.0以下であることがより好ましく、10.0以下であることがさらに好ましい。
なお、この赤外吸収スペクトルの強度比(Sp/Sm)及び固体29Si-NMR法を用いたフェニル基と結合したSiのモル分率は、前述の通り、実施例に記載の方法により得られる。
本硬化体は、前述の本樹脂組成物又は本フィルムを用いて、金型などの型により成形し、かつ硬化されることで得ることができ、典型的には型により賦形成形して各種の成形品である硬化体にするとよい。硬化は、本樹脂組成物又は本フィルムの特性に応じて行うとよく、加熱、光照射、湿気付与又はこれらの組み合わせで行うとよいが、加熱により行うことが好ましい。
本硬化体であるフィルムは、振動板用フィルムとして有用であり、本フィルムからなる硬化体は振動板等の音響部材として特に有用である。
本硬化体は、下記(b)~(d)の粘弾性特性を有することが好ましい。
(b)測定温度20℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上500MPa以下。
(c)測定温度100℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’100が0.1MPa以上500MPa以下。
(d)上記のE’100/E’20が0.2以上1.0以下。
(b)測定温度20℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上であると、硬化後に一定の硬さを有するので、硬化後のハンドリング性などが良好となる。一方、E’20が500MPa以下であると、本フィルムを振動板として用いた際に、振動板の音質及び再生性などの音響特性が優れる傾向となる。音響特性及び硬化後のハンドリング性の観点から、硬化後の20℃での貯蔵弾性率E’20は、1MPa以上400MPa以下がより好ましく、2MPa以上200MPa以下がさらに好ましく、4MPa以上50MPa以下が特に好ましい。
また、(c)測定温度100℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’100が、0.1MPa以上500MPa以下であると、耐熱性が良好となり、高温環境下でも、優れた音響特性が得られることが期待される。音響特性及び硬化後のハンドリング性の観点から、貯蔵弾性率E’100は、1MPa以上400MPa以下であることがより好ましく、2MPa以上200MPa以下であることがさらに好ましく、4MPa以上50MPa以下が特に好ましい。
また、(d)貯蔵弾性率の比(E’100/E’20)を0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、温度変化に伴う弾性率変化が小さくなり、耐熱性が良好となる傾向にある。また、加熱した際の弾性率変化が小さいため、高温環境下における音質が低下しにくくなり、低温域から高温域まで音の再生性を優れたものに維持しやすくなる。
以上の観点から、上記比(E’100/E’20)は、0.25以上0.99以下であることがより好ましく、0.3以上0.97以下であることがさらに好ましく、0.35以上0.95以下であることがよりさらに好ましい。
なお、貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
本硬化体は、さらに下記(e)の粘弾性特性を有することが好ましい。
(e)測定温度24℃における損失係数(tanδ)が0.14以上。
24℃における損失係数(tanδ)が0.14以上であると、硬化体の内部減衰が大きくなり、例えば振動板として好適に使用し得る。以上の観点から、本硬化体の損失係数は0.15以上であることがより好ましく、0.16以上であることがさらに好ましい。
<ゲル分率>
本硬化体のゲル分率は80%以上であることが好ましい。硬化体のゲル分率が80%以上であると、金型からの剥離が容易になる等の取り扱い性が良好となる。以上の観点から、硬化後のゲル分率は83%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
一方、ゲル分率の上限に関しては、特に限定されず、100%以下であればよいが、一般的には100%より低く、例えば、99%以下であってもよい。なお、ゲル分率の測定は、実施例に記載の方法により行った。
なお、ゲル分率は前述の通り、架橋密度を表す指標であり、本発明では、音響部材用樹脂組成物として、芳香環を有するポリオルガノシロキサンを用いることで、硬化体の架橋密度を減少させることができ、損失係数(tanδ)を上げることができる。
<本硬化体の製造方法>
本硬化体は、本樹脂組成物又は本フィルムを用いて得ることができる。以下、本フィルムを用いた本硬化体の製造方法について説明する。
本フィルムから成形品等の硬化体を得る場合には、少なくとも以下の工程1及び工程2を行うことが好ましい。
工程1:本フィルムを加熱して型により成形し、かつ本フィルムを硬化させる工程
工程2:成形かつ硬化された本フィルム(すなわち、硬化体)を型から剥がす工程
以下、各工程についてより詳細に説明する。
(工程1)
工程1では、本フィルムを加熱して型により成形し、かつ本フィルムを硬化して成形品を成形する。成形品は、型により賦形成形されるとよく、それにより、所望の形状に成形される。工程1における成形は、特に限定されず、真空成形、圧空成形、プレス成形等のいずれかの成形方法により行うとよいが、これらの中では、成形がより簡便な点からプレス成形が好ましい。
型としては、成形方法に応じた型を用意すればよいが、型には、製造される成形品の形状に応じた凹凸等を設けるとよい。型としては、典型的には金属製の型(金型)を使用するが、樹脂製の型でもよい。例えば後述のとおり成形品(振動板)がドーム形状又はコーン形状の少なくともいずれかを有するならば、型にはドーム形状又はコーン形状に対応した凹凸を設けるとよい。また、成形品(振動板)が表面にタンジェンシャルエッジを有する場合には、型にはタンジェンシャルエッジに応じた凹凸を設けるとよい。
本フィルムは、上記の通り、離型フィルムが付けられることがあるが、本フィルムは、上記の通り離型フィルムが剥がされたうえで、型にセットされるとよい。
工程1では、加熱した本フィルムを型によって賦形すればよく、例えば、型上に配置した本フィルムを加熱しつつ型により賦形してもよいし、予め加熱した本フィルムを型上に配置し、その後型により賦形してもよいし、これらを組み合わせてもよい。また、本フィルムは、いかなる方法で加熱してもよく、例えば、型上に配置したフィルムを加熱する場合には、型を加熱しその伝熱で加熱してもよいし、他の方法で加熱してもよい。
賦形又は硬化時の加熱温度は180℃以上260℃以下であることが好ましく、190℃以上250℃以下であることがより好ましく、200℃以上240℃以下であることが更に好ましい。賦形又は硬化時の温度がかかる範囲であれば、本フィルムが熱で溶融変形しない範囲で十分な速度で硬化が可能となる傾向がある。
賦形時間は、1秒以上5分以下であることが好ましく、5秒以上4分以下であることがより好ましく、10秒以上3分以下であることが更に好ましく、20秒以上2分以下であることが特に好ましい。賦形時の熱処理時間がかかる範囲であれば、生産性を維持したまま十分に硬化させやすい傾向となる。
なお、本フィルムは、好ましくは賦形しながら硬化されるが、特に限定されず賦形後に硬化されてもよい。なお、賦形時間とは、本フィルムが型内で賦形ないし硬化されている時間をいい、賦形開始前および賦形終了後の型移動時間や、積層体を離型する際の時間は含まないものとする。
(工程2)
工程2では、工程1で成形かつ硬化された本フィルムを型から剥がし、成形品を得る。本発明では、本フィルムのゲル分率が一定値未満であるため、賦形性が高く、かつ型へのフィルムの追従性が高い。そのため、成形品は、高い成形精度で製造することができる。
また、本フィルムは、特定の粘弾性特性を有することから、形状保持性が高く、ハンドリング性が良好である。さらに、離型フィルムから剥離する際に破れることがなく、剥離することができ、フィルムの形状を維持したまま金型に容易にセットすることができる。そして、離型フィルムが積層されないことで、成形品から離型フィルムを剥がす工程が省略できるので、量産化もしやすくなる。
[用途]
本発明の音響部材用樹脂組成物からなる音響部材、本発明の音響部材用フィルムからなる音響部材としては、振動板、具体的にはスピーカー振動板であることがより好ましく、特に携帯電話等のマイクロスピーカー振動板として好適に使用できる。
また、本発明の音響部材用硬化体からなる音響部材も、同様にスピーカー振動板等の振動板として有用である。
音響部材は、例えば、少なくとも一部がドーム形状やコーン形状などを有するとよい。また、音響部材は、表面にタンジェンシャルエッジを有してもよい。ドーム形状またはコーン形状を有し、あるいは、タンジェンシャルエッジを有する場合には、音響部材は、好ましくは振動板、より好ましくはスピーカー振動板に使用される。
(振動板)
振動板についてより詳細に説明すると、振動板の形状は特に制限されず、任意であり、円形状、楕円形状、オーバル形状等が選択できる。また、振動板は、一般的に、電気信号などに応じて振動するボディと、ボディの周囲を囲むエッジとを有する。振動板のボディは、通常、エッジにより支持される。振動板の形状は、上記のとおりドーム状、コーン状でもよいし、これらを組み合わせた形状でもよいし、振動板に使用されるその他の形状でもよい。
本フィルム又は本硬化体は、音響部材の少なくとも一部を形成すればよく、例えば、振動板のボディ又はエッジが本フィルム又は本硬化体により形成され、振動板のエッジ又はボディが別の部材により形成されてもよい。もちろん、ボディ及びエッジの両方が、本フィルム又は本硬化体により一体的に形成されてもよく、振動板全体が、本フィルム又は本硬化体により形成されてもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係る振動板1の構造を示す図であり、平面視で円形の振動板1を、円の中心線を通る面で切断した断面図である。振動板1はマイクロスピーカー用振動板である。図1に示すように、振動板1は、ドーム部(ボディ)1aを中心に、ボイスコイル2に取り付ける凹嵌部1b、周縁部(エッジ)1c、および、その外周にフレーム等に貼り付ける外部貼付け部1dを有する。
図2は、本発明の他の実施形態に振動板11の構造を示す図であり、平面視で円形の振動板11を、円の中心線を通る面で切断した断面図である。振動板11はマイクロスピーカー用振動板である。図2に示すように、振動板11は、ドーム形状に加工されたドーム部(ボディ)11aを中心に、ボイスコイル2に取り付ける凹嵌部11b、コーン形状に加工されたコーン部11j、および、周縁部(エッジ)11cを有する。振動板11に例示するように、振動板は、一部がドーム形状に加工され、且つ、該一部を除く他の一部がコーン形状に加工されていてもよい。なお、振動板11は、それぞれ周縁部11cを直接フレーム等に取り付けてもよく、他の部材を介してフレーム等に取り付けてもよい。
振動板の表面には、上記のとおり、タンジェンシャルエッジを付与してもよい。タンジェンシャルエッジは、例えば、横断面形状がV字状の溝などにより構成されるとよい。図3には、本発明の他の実施形態に係る振動板21の平面図を示す。振動板21は、円形のドーム部(ボディ)21aの外周縁部に、複数のタンジェンシャルエッジ21eが付与されたタンジェンシャルエッジ部21gと、タンジェンシャルエッジ部21gの外周に配置された複数のタンジェンシャルエッジ21fが付与されたタンジェンシャルエッジ部21hを有する。なお、図3では、径方向に沿って2つのタンジェンシャルエッジ部が設けられる例を示すが、タンジェンシャルエッジ部は径方向に沿って1つのみであってもよいし、3つ以上設けられてもよい。
なお、振動板は、上記の通りスピーカー振動板、中でもマイクロスピーカー振動板であることが好ましい。マイクロスピーカー振動板として好適に使用する観点から、振動板の大きさは、最大径が25mm以下、好ましくは20mm以下であり、また最大径が5mm以上のものが好適に用いられる。なお、最大径とは振動板の形状が円形状の場合には直径、楕円形状やオーバル形状の場合には長径を採用するものとする。
振動板は、本フィルム単体により成形されてもよいし、本フィルムと他の部材との複合材により成形されてもよい。例えば、上記のとおりエッジまたはボディのいずれかを他の部材により形成してもよい。また、振動板は一体成型された本硬化体であってもよい。
さらに、振動板の二次加工適性や防塵性あるいは、音響特性の調整や意匠性向上等のために、振動板の表面にさらに帯電防止剤をコーティングしたり、金属を蒸着したり、スパッタリングしたり、着色(黒色や白色など)したりするなどの処理を適宜行ってもよい。さらに、アルミニウムなどの金属との積層、あるいは、不織布との複合化などを適宜行ってもよい。
(音響変換器)
本発明の音響変換器は、上記した音響部材、好ましくは振動板を備える音響変換器である。音響変換器としては、典型的には電気音響変換器であり、スピーカー、レシーバ、マイクロホン、イヤホン等が挙げられる。音響変換器は、これらの中では、スピーカーであることが好ましく、携帯電話等のマイクロスピーカーが好適である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[評価及び測定方法]
本実施例では、以下の通りに各種物性の測定及びフィルムの評価を行った。
(1)ゲル分率の測定
以下の方法でフィルムのゲル分率を測定した。なお、下記測定方法から明らかなように、ゲル分率は、フィルムに含まれる架橋成分のみならず、充填材などの架橋成分以外の不溶解分もゲル分として含めて算出される。
(1-1)フィルムの厚み方向と平行して均等に切り出してサンプルを約100mg採取して、そのサンプル質量(a)を測定した。
(1-2)採取したサンプルをクロロホルムに23℃の条件で24時間浸漬した。
(1-3)クロロホルム中の固形分を取り出し、50℃で7時間真空乾燥した。
(1-4)乾燥後の固形分の質量(b)を測定した。
(1-5)質量(a)、(b)を用いて、以下の式(vi)に基づいてゲル分率を算出した。
(2)損失係数tanδおよび貯蔵弾性率E’
各実施例、比較例で得られた本フィルムから4mm×8cmの試験片を切り出し、測定試料として得た。その測定試料を用いて、JIS K7244-4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用い、測定モードを引張で、周波数10Hz、歪み0.1%、温度範囲0~300℃、加熱速度3℃/minで昇温させ、24℃における損失係数と、20℃及び100℃における貯蔵弾性率を測定した。
(3)静摩擦係数
各実施例及び比較例で得られた本フィルムの最表面とステンレス板(SUS430)との静摩擦係数を測定した。静摩擦係数は、各実施例及び比較例で得られた本フィルム最表面に対して2回ずつ測定し、これらの平均値より求めた。静摩擦係数の具体的な測定方法は、以下のとおりである。
JIS K7125:1999を参照して、本フィルムの表面とステンレス板とを試験開始前に15秒間接触保持させたのち、以下の条件で縦方向(MD)に測定を実施し、ステンレス板との静摩擦係数を評価した。
・装置:プラスチックフィルムすべり試験機(インテスコ社製)
・滑り片:全質量200g(接触面積が一辺63mmの正方形)
・接触面積:400cm
・試験速度:100mm/min
・温度:23℃±2℃
・相対湿度:50%±10%
<原料>
・シリコーンゴム(A-1):フェニル基を含有するオルガノポリシロキサンと酸化セリウムの混合物。(商品名「KE-5550-U」、信越化学工業株式会社製)
・シリコーンゴム(A-2): フェニル基を含有しないオルガノポリシロキサンとシリカの混合物。(商品名「KE-597-U」、信越化学工業株式会社製)
・有機過酸化物コンパウンドシリコーンゴム(B-1):2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンを約49質量%含有するシリコーンゴム(商品名「C-8B」、信越化学工業株式会社製)
<フェニル基とメチル基の赤外吸収スペクトルの強度比>
各実施例及び比較例で得られた本フィルムについて、ポリオルガノシロキサンの側鎖基は、主にフェニル基とメチル基で構成されていた。フェニル基とメチル基の赤外吸収スペクトルの強度比を下記の手順で算出した。
(1)各実施例及び比較例で得られた本フィルムについて、赤外全反射減衰法(ATR―IR法)を用いて赤外吸収スペクトル(吸光度)を測定した。
(2)上記(1)で得られた赤外吸収スペクトルには、700cm-1±10cm-1にジフェニルシロキサンに帰属されるピーク、1260cm-1±20cm-1にはジメチルシロキサンに帰属されるピークが観測された。ジフェニルシロキサンに帰属されるピーク面積(Sp)およびジメチルシロキサンに帰属されるピーク面積(Sm)からフェニル基とメチル基の強度比(Sp/Sm)を算出した。
なお、赤外吸収スペクトル、溶液H-NMRの測定条件は以下のとおりである。
(赤外吸収スペクトル)
・装置:Thermo Scientific Nicolet is5
・プリズム:ダイヤモンド(入射角45度)
・測定波長:400cm-1~4000cm-1
・積算回数:16回
<フェニル基と結合したSiの含有割合>
各実施例及び比較例で得られた本フィルムについて、フィルム中に含まれるポリオルガノシロキサンの主鎖のSiに対する、フェニル基と結合したSiのモル分率を下記の手順で算出した。
(1)各実施例及び比較例で得られた本フィルムについて、固体29Si-NMR法を用いてスペクトルを測定した。さらに、フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについて、ローレンツ波形とガウス波形の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメーターとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行ない、各ピークの面積値を算出した。なお、実施例はこの解析で実施したがNMR用解析ソフトを使用するなど他の方法で積分比を求めてもよい。
(2)上記(1)で得られた固体29Si-DD/MAS-NMRスペクトルでは、-22ppm付近にジメチルシロキサン構造(DMe)、-47ppm付近にジフェニルシロキサン構造(DPh)、-70ppm付近にメチルシロキサン構造(TMe)にそれぞれ帰属するピークが観測された。それらのピーク面積をS(DMe)、S(DPh)、S(TMe)としたとき、下記の式よりポリオルガノシロキサンの主鎖のSiに対する、フェニル基と結合したSiのモル分率(X)を下記の式(vii)を用いて算出した。
なお、-70ppm付近のメチルシロキサン構造に帰属するピークは、シリコーンに含有されるシリカの表面修飾由来である可能性もあるが、ピークがシャープであることからシリコーン原料由来と判断した。
[数3]
(X)=S(DPh)/(S(DMe)+S(DPh)+S(TMe)) ・・・(vii)
・装置:日本電子社製JNM-ECZ600R
・プローブ:8mm HX CP/MAS用プローブ
・観測核:29Si
・測定法:DD(Dipolar Decoupling)/MAS(Magic Angle Spinning)法
29Si共鳴周波数:119.24MHz
H共鳴周波数:600.17MHz
29Si 45°パルス幅:4.25μs
H デカップリング周波数:32.5kHz
・MAS回転数:5kHz
・待ち時間:600s
・スペクトル幅:45.0kHz
・測定温度:室温
・積算回数:128回
実施例1
原料としてシリコーンゴム(A-1)100質量部と、有機過酸化物(B-1)1質量部を、ミキサーを用いて、温度90℃で5分間混練して、ミラブル型の樹脂組成物(1)を得た。離型フィルムとしてマット面の表面粗さ(Ra)が0.98μmのPETフィルム(1)を用意して、マット面が内側になるように径100mmの2本のカレンダーロールに沿って供給した。離型フィルムの間に、樹脂組成物(1)を投入して、ロール温度90℃でロールにバンクを形成させ、樹脂組成物(1)の厚みが100μmになるように調整して離型フィルム付きのシリコーンフィルムを得た。得られたシリコーンフィルムを、賦形成形により成形品を製造することを想定して、200℃で2分間加熱しながら圧力0.2MPaで2枚の平板よりプレス成形する簡易的な方法で硬化させた。硬化後の本フィルムから離型フィルムを剥離してサンプルを得た。本サンプルについて、ゲル分率、損失係数及び貯蔵弾性率を測定した。
実施例2~6及び比較例1
原料としてシリコーンゴム(A-1)と(A-2)を、表1に記載の割合で混合して用いた以外は、実施例1と同様の方法でサンプルを得た。各サンプルについてゲル分率、損失係数及び貯蔵弾性率を測定した。
表1に示されるように、芳香環(フェニル基)を含有するオルガノポリシロキサンと酸化セリウムの混合物であるシリコーンゴムA-1を用いた実施例1~6では損失係数(tanδ)が大きく、減衰性が大きいことがわかる。したがって、振動板として特に有用であることは明らかである。また、表面摩擦係数(静摩擦係数)が小さいことから、硬化体を製造する際に金型からの脱離が容易であり、取り扱い性に優れることがわかる。
一方、比較例1のフィルムでは、損失係数(tanδ)が小さいことから、減衰性が小さく、振動板としての性能が劣ると思われる。
本発明の音響部材用樹脂組成物から得られる成形体は、減衰性が大きいことから、種々の成形体に応用が可能である。特に、減衰性が大きいことから、振動板として有用であり、産業上の意義は大きい。
1、11、21 振動板
1a、11a、21a ドーム部(ボディ)
1b、11b 凹嵌部
1c、11c 周縁部(エッジ)
1d 外部貼付け部
11j コーン部
21e、21f タンジェンシャルエッジ
21g、21h タンジェンシャルエッジ部
2 ボイスコイル

Claims (16)

  1. 芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含む音響部材用樹脂組成物。
  2. 前記芳香環構造がベンゼン環構造である請求項1に記載の音響部材用樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の音響部材用樹脂組成物からなる音響部材用フィルム。
  4. 請求項1又は2に記載の音響部材用樹脂組成物からなる音響部材。
  5. 請求項3に記載の音響部材用フィルムを賦形してなる音響部材。
  6. 請求項4に記載の音響部材を備えた音響変換器。
  7. 請求項3に記載の音響部材用フィルムを賦形してなる振動板。
  8. 芳香環構造または脂環式構造を有するポリオルガノシロキサンを含む音響部材用硬化体。
  9. 前記芳香環構造がベンゼン環構造である請求項8に記載の音響部材用硬化体。
  10. 下記(b)~(d)の粘弾性特性を有する請求項8又は9に記載の音響部材用硬化体。
    (b)測定温度20℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’20が0.1MPa以上500MPa以下。
    (c)測定温度100℃、周波数10Hzでの貯蔵弾性率E’100が0.1MPa以上500MPa以下。
    (d)上記のE’100/E’20が0.2以上1.0以下。
  11. 下記(e)の粘弾性特性を有する請求項10に記載の音響部材用硬化体。
    (e)測定温度24℃における損失係数(tanδ)が0.14以上。
  12. ゲル分率が80%以上である請求項10に記載の音響部材用硬化体。
  13. 請求項8又は9に記載の音響部材用硬化体を備えた音響部材。
  14. 請求項8又は9に記載の音響部材用硬化体を備えた振動板。
  15. 請求項13に記載の音響部材を備えた音響変換器。
  16. 請求項14に記載の振動板を備えた音響変換器。

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