JP2018191069A - スピーカの振動板用フィルムの製造方法 - Google Patents

スピーカの振動板用フィルムの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018191069A
JP2018191069A JP2017090092A JP2017090092A JP2018191069A JP 2018191069 A JP2018191069 A JP 2018191069A JP 2017090092 A JP2017090092 A JP 2017090092A JP 2017090092 A JP2017090092 A JP 2017090092A JP 2018191069 A JP2018191069 A JP 2018191069A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
resin
diaphragm
less
roll
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017090092A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6637919B2 (ja
Inventor
貴司 権田
Takashi Gonda
貴司 権田
幹夫 岸
Mikio Kishi
幹夫 岸
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shin Etsu Polymer Co Ltd
Shin Etsu Chemical Co Ltd
Original Assignee
Shin Etsu Polymer Co Ltd
Shin Etsu Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shin Etsu Polymer Co Ltd, Shin Etsu Chemical Co Ltd filed Critical Shin Etsu Polymer Co Ltd
Priority to JP2017090092A priority Critical patent/JP6637919B2/ja
Publication of JP2018191069A publication Critical patent/JP2018191069A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6637919B2 publication Critical patent/JP6637919B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Extrusion Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Diaphragms For Electromechanical Transducers (AREA)

Abstract

【課題】 150℃以上の耐熱性を確保することができ、振動板の耐久性を向上させることのできるスピーカの振動板用フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】 ガラス転移点の高いポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1を溶融混練し、この成形材料1を用いてTダイス13から薄膜のフィルム2を連続的に帯形に押出成形し、この押出成形したフィルム2を圧着ロール17と冷却ロール18との間に挟持させて冷却することにより、冷却したフィルム2の厚さを2μm以上110μm以下とし、冷却後のフィルム2の23℃における引張弾性率を2000N/mm2以上4000N/mm2以下とするとともに、冷却後のフィルム2の150℃における引張弾性率を2000N/mm2以上4000N/mm2以下とし、冷却後のフィルム2の比重を1.2以上1.4以下とし、冷却後のフィルム2の20℃における損失正接を0.010以上とする。【選択図】 図1

Description

本発明は、音質特性と耐熱性に優れるスピーカの振動板用フィルムの製造方法に関するものである。
携帯電話、携帯ゲーム機器、スマートフォン等からなる携帯機器には、マイクロスピーカと呼ばれる小型のスピーカが内蔵されている。このマイクロスピーカと呼ばれるスピーカの音波を発生させる振動板は、一般的には、(1)金属箔、(2)天然樹脂製の紙、織布、不織布、(3)合成樹脂製のフィルムにより形成されており、音質を左右する重要な部品である。
振動板が(3)合成樹脂製のフィルムの場合、これまでにポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等からなるフィルムが用いられている(特許文献1、2参照)。
ところで、近年のスピーカは、益々の高機能化や高性能化が図られている。したがって、スピーカの振動板に対する要求特性も益々厳しくなって来ている。この振動板に求められる要求特性としては、軽量(密度あるいは比重が小さい)であること、適度な剛性(ヤング率、弾性率)を有すること、厚さ精度に優れること、損失正接(内部損失とも、tanδともいう)が大きく、耐熱性に優れること等があげられる。加えて、耐湿性、耐水性、成形性(プレス成形、真空成形、圧空成形等)に優れることもあげられる。
しかしながら、スピーカの振動板が(1)の金属箔の場合、耐熱性や耐水性等に優れるものの、剛性が大きいので、最低共振周波数(f)が高く、低音の再生特性が不十分となる。また、振動板にとって、重要な損失正接(内部損失とも、tanδともいう)が小さいので、振動板が共振して音響特性が乱れ、高性能が期待できず、音質に問題が発生することとなる。さらに、密度が大きいため、振動伝播速度が遅くなったり、再生周波数帯域が狭まり、音響特性に問題が生じる。
また、スピーカの振動板が(2)の天然樹脂製の紙、織布、不織布の場合、密度が小さく、軽量ではあるものの、剛性が小さいので、高周波領域の再生に問題が生じ、しかも、重要な損失正接も小さいので、やはり音質に問題が生じる。また、十分な耐湿性、耐水性、耐熱性を得ることが困難となり、スピーカの製造工程も煩雑となる。
これに対し、スピーカの振動板が(3)の合成樹脂製のフィルムの場合、合成樹脂の材質の変化により、損失正接の選択等が可能になるので、問題が少なく、しかも、振動板の薄型化、軽量化、量産化に適するので、小型軽量の携帯機器の内蔵には最適である。これらの点に鑑み、近年の携帯機器に内蔵されるスピーカには、合成樹脂製のフィルムの振動板が利用されている。
さて、最近は、携帯機器の高機能化に伴うライフスタイルの変化により、時間や場所を問わず、携帯機器でテレビ番組や音楽、ゲーム等を楽しみたいという利用者が少なくない。具体的には、通勤時の公共交通車内、温度変化の激しい旅行先の海水浴場やスキー場、騒がしい休暇中の娯楽施設、上下前後左右に揺れるランニング時等にも、携帯機器一台で良質のテレビ番組や音楽、ゲーム等を楽しみ、時間を有効利用して生活を豊かにしたいと願う利用者が少なくない。
係る利用者の要望を満たすためには、スピーカが安定した環境で使用される据え置きの音響機器に内蔵されるのではなく、携帯機器に内蔵されるという特別な事情を考慮し、スピーカの性能を向上させたり、高出力化させる必要がある。具体的には、好ましくない使用環境で携帯機器が長時間利用されたり、外部出力を大きくし、大音量で長時間利用されるのを前提に、スピーカの振動板の耐熱性をさらに向上させ、スピーカの耐久性を改良する必要がある。
上記合成樹脂製のフィルムは、耐熱性が不十分なため、スピーカ用の振動板として使用する場合、外部出力を大きくすると、ボイスコイルの高振動により発生する高熱で、振動板の変形、又は破損を招く等、耐久性に問題が生じる。そこで近年、スピーカの振動板用フィルムとして、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製のフィルムが提案され、実施されている(特許文献3参照)。
特開昭60−139098号公報 特開昭64−067099号公報 特開昭58‐222699号公報
ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムは、ガラス転移点が140℃以上150℃以下(測定方法:示差走査熱量測定法)であり、融点が330℃以上350℃以下(測定方法:示差走査熱量測定法)と耐熱性に優れるという特徴を有している。
しかしながら、高機能・高出力化されたスピーカは、出力時のボイスコイルの高振動で発熱し、振動板の温度が150℃付近まで達してしまうと言われている。ポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムは、ガラス転移点が150℃以下であるので、振動板に使用すると、ボイスコイルの高振動に伴う高熱により、振動板が変形したり、又は破損するおそれがある。
本発明は上記に鑑みなされたもので、150℃以上の耐熱性を確保することができ、振動板の耐久性を向上させることのできるスピーカの振動板用フィルムの製造方法を提供することを目的としている。
本発明者等は上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、ガラス転移点が非常に高いポリエーテルケトンケトン樹脂に着目し、このポリエーテルケトンケトン樹脂を含有する成形材料により、耐熱性に優れるフィルムを製造することで本発明を完成させた。
すなわち、本発明においては上記課題を解決するため、樹脂含有の成形材料を用いてフィルムを成形するスピーカの振動板用フィルムの製造方法であって、
ポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料を溶融混練し、この成形材料を用いてダイスからフィルムを連続的に帯形に押出成形し、この押出成形したフィルムを圧着ロールと冷却ロールとの間に挟んで冷却することにより、冷却したフィルムの厚さを2μm以上110μm以下とし、
冷却後のフィルムの23℃における引張弾性率を2000N/mm以上4000N/mm以下とするとともに、冷却後のフィルムの150℃における引張弾性率を2000N/mm以上4000N/mm以下とし、冷却後のフィルムの比重を1.2以上1.4以下とし、冷却後のフィルムの20℃における損失正接を0.010以上とすることを特徴としている。
なお、押出成形機に不活性ガスを供給しながら成形材料を投入し、圧着ロールと冷却ロールのうち、少なくとも冷却ロールの温度を50℃以上260℃以下に調整することが好ましい。
また、冷却ロールの周面に微細な凹凸を形成し、フィルムを圧着ロールと冷却ロールの間に挟んで冷却する際、冷却ロールの微細な凹凸をフィルムに転写して摩擦係数を低下させることができる。
また、冷却後のフィルムを厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層に積層接着し、これらを熱成形することができる。
また、冷却後のフィルムをエラストマー層の両面のうち、少なくとも片面にプライマーを介して積層接着し、これらを熱成形することもできる。
また、エラストマー層をシリコーン樹脂製としてそのJIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合のデュロメータ硬さを、A10以上A90以下とすることが可能である。
ここで、特許請求の範囲における冷却したフィルムの厚さ公差は、平均値±10%の範囲内が好ましい。圧着ロールと冷却ロールの数は、必要に応じて増減することができる。圧着ロールの下流には、フィルム用の巻取機を設置し、これら圧着ロールと巻取機との間には、フィルムを容易に加工する観点から、フィルムの側部にスリットを形成するスリット刃を配置し、このスリット刃と巻取機との間には、フィルムにテンションを作用させるテンションロールを回転可能に軸支させることができる。
振動板用フィルムは専らスピーカ用であるが、このスピーカは、音の波長と同程度の寸法の振動板から、大気中に音を直接放射する直接放射型が主である。但し、直接放射型の他、ホーン型でも良い。このスピーカは、主に携帯機器に内蔵されるが、この携帯機器には、少なくとも携帯電話、携帯用音楽機器、携帯ゲーム機器、スマートフォン、タブレットPC、ノートパソコン等が含まれる。
本発明によれば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂ではなく、この樹脂よりもガラス転移点温度が高いポリエーテルケトンケトン樹脂によりフィルムを押出成形し、冷却したフィルムの23℃における引張弾性率を2000N/mm以上4000N/mm以下とするとともに、冷却後のフィルムの150℃における引張弾性率を2000N/mm以上4000N/mm以下とし、冷却後のフィルムの比重を1.2以上1.4以下とし、冷却後のフィルムの20℃における損失正接を0.010以上とするので、フィルムに150℃以上の耐熱性を付与することができる。したがって、例えフィルムをスピーカの振動板に使用しても、振動板が変形したり、破損するおそれを低減することができる。
本発明によれば、150℃以上の耐熱性を確保することができ、スピーカの振動板の耐久性を向上させることができるという効果がある。
請求項2記載の発明によれば、フィルムの製造時に不活性ガスを供給するので、成形材料の酸化劣化や酸素架橋を防止することができる。また、少なくとも冷却ロールの温度を50℃以上260℃以下の範囲とするので、製造中のフィルムが冷却ロールに貼り付き、破断するおそれを排除することができる。加えて、冷却ロールの結露防止が期待できる。
請求項3記載の発明によれば、音質特性や圧縮特性等に優れるエラストマー層にポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料から得られるフィルムを積層してこれらの特性を併有する振動板を製造するので、例え携帯機器等が好ましくない使用環境で長時間利用され、しかも、スピーカ等のハイパワー化に伴い、ボイスコイル等に発熱や振動が生じても、振動板の耐久性や音質特性を向上させることが可能になる。また、エラストマー層の厚さが10μm以上100μm以下の範囲なので、軽量化と音響特性の向上を図ることが可能になる。
請求項4記載の発明によれば、エラストマー層にシリコーン樹脂を使用するので、耐熱性、耐候性、難燃性、音質特性、圧縮特性に優れる振動板を得ることが可能になる。また、シリコーン樹脂のデュロメータ硬さがA10以上A90以下の範囲内なので、シリコーン樹脂の圧縮永久歪み特性が悪化したり、振動板の振動伝搬速度が低下して音質に悪影響が生じるのを防ぐことができる。さらに、損失正接が低下したり、f値の増大に伴い、振動板の性能が悪化するのを防止することができる。
本発明に係るスピーカの振動板用フィルムの製造方法の実施形態を模式的に示す全体説明図である。 本発明に係るスピーカの振動板用フィルムの製造方法の実施形態における振動板を模式的に示す断面説明図である。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるスピーカの振動板用フィルムの製造方法は、図1に示すように、樹脂含有の成形材料1により、振動板用のフィルム2を成形する製法であり、高温域の耐熱性に優れるポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形機10により溶融混練し、この成形材料1を用いてTダイス13から薄膜のフィルム2を連続的に押出成形し、この押出成形したフィルム2を一対の圧着ロール17と冷却ロール18との間に挟持させて冷却することにより、冷却したフィルム2の厚さを2μm以上110μm以下とするようにしている。
成形材料1のポリエーテルケトンケトン樹脂は、特に限定されるものではないが、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有する樹脂である。
Figure 2018191069
さらに、詳しくは、化学式〔化2〕、化学式〔化3〕の繰り返し単位を有する樹脂である。
Figure 2018191069
Figure 2018191069
化学式〔化2〕と化学式〔化3〕の繰り返し単位は、ランダムな繰り返し、交互な繰り返し、ブロックな繰り返しの何れの繰り返しでも良い。
ここで、化学式〔化2〕及び化学式〔化3〕の単位比は、(化学式〔化2〕/化学式〔化3〕)=(50/50)〜(90/10)の範囲が良い。好ましくは(化学式〔化2〕/化学式〔化3〕)=(70/30)〜(90/10)の範囲、さらに好ましくは(化学式〔化2〕/化学式〔化3〕)=(75/25)〜(85/15)の範囲が良い。これは、(化学式〔化2〕/化学式〔化3〕)=(75/25)〜(85/15)の範囲とすれば、結晶化速度が速く、機械的特性、耐溶剤性、耐熱性に優れるポリエーテルケトンケトン樹脂含有のフィルム2を得ることができるからである。
また、化学式〔化2〕の単位比が50未満の場合には、ポリエーテルケトンケトン樹脂の結晶化度や結晶化速度が低下するため、このポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1より得られるフィルム2の機械的特性、耐溶剤性、耐熱性が低下してしまうからである。逆に、単位比が90を越えたポリエーテルケトンケトン樹脂の場合には、ポリエーテルケトンケトン樹脂の融点とポリエーテルケトンケトン樹脂の分解温度が接近しているため、ポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形によりフィルム2を成形するとき、成形中にポリエーテルケトンケトン樹脂が熱分解してしまうおそれがあるからである。
ポリエーテルケトンケトン樹脂の融点は、通常、300℃以上370℃以下であり、好ましくは330℃以上365℃以下、さらに好ましくは350℃以上360℃以下である。また、ポリエーテルケトンケトン樹脂のガラス転移点は、150℃以上180℃以下、好ましくは155℃以上175℃以下、さらに好ましくは160℃以上170℃以下である。このポリエーテルケトンケトン樹脂の具体例としては、アルケマ社製の製品名:KEPSTANシリーズがあげられる。
ポリエーテルケトンケトン樹脂の製造方法としては、例えば米国特許第3,516,966号、米国特許第3,637,592号、米国特許第3,441,538号、特公平4−63900号公報、特公平6−10258号公報等に記載の製法が用いられる。また、ポリエーテルケトンケトン樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合可能な単量体とのランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、あるいは変性体も使用することが可能である。
ポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1には、ポリエーテルケトンケトン樹脂の他、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド4T(PA4T)樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(変性PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、ポリアミド11T(PA11T)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)樹脂等のポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニルサルホン(PPSU)樹脂等のポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂等を必要に応じ、添加することができる。
成形材料1には、本発明の特性を損なわない範囲で上記樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物等を選択的に添加することができる。
このようなポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1を用い、振動板用のフィルム2を製造する場合には、溶融押出成形法、カレンダー成形法、又はキャスティング成形法等の公知の製造法を採用することができる。しかしながら、フィルム2の厚さ精度、生産性、ハンドリング性の向上、設備の簡略化の観点から、溶融押出成形法により連続的に薄く押出成形することが好ましい。ここで、溶融押出成形法とは図1に示すように、溶融押出成形機10を使用して成形材料1を溶融混練し、溶融押出成形機10の先端部のTダイス13から振動板用のフィルム2を連続的に押し出す成形方法である。
溶融押出成形機10は、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料1を溶融混練するよう機能する。この溶融押出成形機10の上部後方には、成形材料1用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガス(図1の矢印参照)を必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料1の酸化劣化や酸素架橋が有効に防止される。
溶融押出成形機10の溶融混練時のポリエーテルケトンケトン樹脂の温度は、溶融混練が可能な温度であり、ポリエーテルケトンケトン樹脂が熱分解しない温度であれば、特に制限されるものではないが、ポリエーテルケトンケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、320℃以上450℃以下、好ましくは360℃以上420℃以下、さらに好ましくは380℃以上400℃以下に調整される。これは、ポリエーテルケトンケトン樹脂の融点未満の場合には、ポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形することができず、逆に熱分解温度を越える場合には、ポリエーテルケトンケトン樹脂が激しく分解するおそれがあるからである。
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、帯形のフィルム2を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の押出時の温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点以上熱分解温度未満の範囲である。具体的には、320℃以上450℃以下、好ましくは360℃以上420℃以下、より好ましくは380℃以上400℃以下に調整される。これは、ポリエーテルケトンケトン樹脂の融点未満の場合には、成形材料1の溶融押出成形が困難となり、逆に熱分解温度を越える場合には、ポリエーテルケトンケトン樹脂が分解するおそれがあるという理由に基づく。
Tダイス13の上流の連結管14には、ギアポンプ15とフィルタ16とがそれぞれ装着されることが好ましい。ギアポンプ15は、溶融押出押出機10により溶融混練された成形材料1を一定の流量で、かつ高精度にTダイス13にフィルタ16を介して移送するよう機能する。また、フィルタ16は、溶融状態の成形材料1のゲル等を分離し、溶融状態の成形材料1をTダイス13に移送する。
一対の圧着ロール17は、Tダイス13の下方に回転可能に軸支され、冷却ロール18を摺接可能に挟持する。この一対の圧着ロール17のうち、下流の圧着ロール17の下流には、フィルム2を巻き取る巻取機19の巻取管20が回転可能に設置され、圧着ロール17と巻取機19の巻取管20との間には、フィルム2の側部にスリットを形成するスリット刃21が昇降可能に配置されており、このスリット刃21と巻取機19の巻取管20との間には、フィルム2にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール22が必要数軸支される。
各圧着ロール17の周面には、フィルム2と冷却ロール18との密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被覆形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
圧着ロール17としては、表面が金属の金属弾性ロールが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れるフィルム2の成形が可能となる。この金属弾性ロールの具体例としては、例えば金属スリーブロール、エアーロール(ディムコ社製 製品名)、UFロール(日立造船社製 製品名)が該当する。
このような圧着ロール17は、260℃以下、好ましくは50℃以上260℃以下、より好ましくは130℃以上240℃以下の温度に調整され、フィルム2に摺接してこれを冷却ロール18に圧接する。圧着ロール17の温度が係る範囲なのは、圧着ロール17の温度が260℃を越える場合には、製造中のフィルム2が圧着ロール17に貼り付き、フィルム2が破断するおそれがあるという理由に基づく。逆に、50℃未満の場合には、圧着ロール17が結露するため、好ましくないからである。圧着ロール17の温度調整や冷却方法としては、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーター、誘電加熱ロール等があげられる。
冷却ロール18は、例えば圧着ロール17よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイス13の下方に回転可能に軸支されて押し出されたフィルム2を圧着ロール17との間に挟持し、圧着ロール17と共にフィルム2を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御するよう機能する。この冷却ロール18は、圧着ロール17と同様、260℃以下、好ましくは50℃以上260℃以下、より好ましくは130℃以上240℃以下の温度に調整され、フィルム2に摺接する。
冷却ロール18が50℃以上260℃以下の温度に調整されるのは、冷却ロール18の温度が260℃を越える場合には、製造中のフィルム2が冷却ロール18に貼り付き、破断するおそれがあるという理由に基づく。これに対し、50℃未満の場合は、冷却ロール18が結露し、好ましくないという理由に基づく。冷却ロール18の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーター、誘電加熱等があげられる。
上記において、振動板用のフィルム2を製造する場合には図1に示すように、溶融押出成形機10の原料投入口11に、ポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1を同図に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料1を加熱・加圧状態で溶融混練し、Tダイス13から薄膜のフィルム2を連続的に帯形に押し出す。
この際、ポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1の溶融混練前における含水率は、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以上1000ppm以下に調整される。これは、ポリエーテルケトンケトン樹脂の溶融混練前における含水率が2000ppmを越える場合には、ポリエーテルケトンケトン樹脂が発泡するおそれがあるからである。
帯形のフィルム2を押し出したら、一対の圧着ロール17、冷却ロール18、テンションロール22、巻取機19の巻取管20に順次巻架し、フィルム2を冷却ロール18により冷却した後、フィルム2の両側部をスリット刃21でそれぞれカットするとともに、巻取管20に順次巻き取れば、ポリエーテルケトンケトン樹脂製の振動板用のフィルム2を製造することができる。このフィルム製造の際、フィルム2の表面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、フィルム2表面の摩擦係数を低下させることができる。
微細な凹凸の形成方法としては、例えば(1)ポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料1を溶融押出成形機10により溶融混練し、この溶融混練した成形材料1をTダイス13から微細な凹凸を周面に有する冷却ロール18上に吐き出して密着させ、フィルム2の成形時に微細な凹凸を同時に転写形成する方法、(2)フィルム2を製造した後、微細な凹凸を周面に有する冷却ロール18上に密着させ、微細な凹凸を形成する方法がある。いずれの方法をも採用することが可能であるが、設備の簡略化、フィルム2の厚さ精度の管理、フィルム2の外観維持の観点からすると、(1)の方法が最適である。
冷却後のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2の厚さは、2μm以上110μm以下、好ましくは3μm以上105μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下の範囲が好適である。これは、フィルム2の厚さが2μm未満の場合には、フィルム2の機械的強度が著しく低下するので、フィルム2の成形が困難になるからである。逆に、フィルム2の厚さが110μmを越える場合には、振動板が厚く大きくなり、スピーカのサイズも大きくなり、携帯機器用のスピーカに適さなくなるからである。このフィルム2の厚さは、各種の接触式厚さ計により、測定することができる。
フィルム2の厚さ公差は、平均値±10%の範囲内、好ましくは平均値±5%の範囲内が良い。これは、フィルム2の厚さ公差が平均値±10%の範囲を外れると、音質にバラツキが生じるからである。このフィルム2の厚さ公差は、所定の式により求めることができる。
冷却後のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2の機械的特性に関しては、23℃における引張弾性率で評価することができる。冷却後のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2の23℃における引張弾性率は、2000N/mm以上4000N/mm以下の範囲、好ましくは2300N/mm以上3950N/mm以下、より好ましくは2400N/mm以上3900N/mm以下の範囲が最適である。これは、フィルム2の引張弾性率が2000N/mm未満の場合には、フィルム製の振動板の高域共振周波数(f)が低く、高音再生が不十分になるという理由に基づく。また、4000N/mmを越える場合には、フィルム2から得られる振動板の最低共振周波数(f)が高く、低音再生が不十分になるという理由に基づく。
冷却後のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム2の耐熱特性に関しては、ガラス転移点と150℃における引張弾性率で評価することができる。冷却後のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2のガラス転移点は、150℃以上、好ましくは155℃以上、さらに好ましくは161℃以上が良い。これは、フィルム2のガラス転移点が150℃未満の場合には、フィルム2の耐熱性が不十分なため、フィルム2から得られる振動板をスピーカ用として使用するとき、ボイスコイルの高振動により発生する高熱で、フィルム2から得られる振動板の変形、又は破損を招く等、耐久性に問題が生じるからである。
冷却後のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2の150℃における引張弾性率は、2000N/mm以上4000N/mm以下の範囲、好ましくは2100N/mm以上3700N/mm以下、さらに好ましくは2200N/mm以上3650N/mm以下の範囲が最適である。これは、フィルム2の150℃における引張弾性率が2000N/mm未満の場合には、フィルム2の耐熱性が不十分なため、フィルム2から得られる振動板をスピーカ用として使用するとき、ボイスコイルの高振動に伴う高熱により、フィルム2から得られる振動板の変形、又は破損を招く等、耐久性に問題が生じるからである。加えて、フィルム製の振動板の高域共振周波数(f)が低く、高音再生が不十分になるからである。これに対し、4000N/mmを越える場合には、フィルム2から得られる振動板の最低共振周波数(f)が高く、低音再生が不十分になるからである。
冷却後のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2の音響特性は、23℃におけるフィルム2の比重と、20℃におけるフィルム2の損失正接で評価することができる。冷却後のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルム2の比重は、1.2以上1.4以下、好ましくは1.22以上1.35以下、より好ましくは1.25以上1.31以下が好適である。これは、係る範囲であれば、密度が小さいので軽量化が期待でき、振動伝搬速度が速まったり、再生周波数帯域が広がるため、良好な音質音響特性を得ることができるからである。
冷却後のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2の20℃における損失正接は、0.010以上、好ましくは0.011以上、より好ましくは0.013以上が好適である。これは、損失正接が0.010未満の場合には、共振の発生により、音質特性にバラツキが生じるからである。損失正接の上限は、特に限定されるものではないが、0.4以下が好ましい。
製造したフィルム2は、そのまま振動板として使用することもできるが、優れた音質特性、圧縮特性、損失正接を得る観点から、図2に示す積層中間体3の一部とし、この積層中間体3を成形して振動板とすることが好ましい。積層中間体3は、図2に示すように、厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層4と、このエラストマー層4の表裏両面にプライマー5を介してそれぞれ積層接着される上下一対のフィルム2とを多層構造に備え、主に携帯機器内蔵用に使用される。
エラストマー層4に用いられるエラストマーとしては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、炭化水素樹脂等があげられる。これらのエラストマーの中ではシリコーン樹脂が耐熱性、耐候性、難燃性、音質特性、圧縮特性等に優れる点で好ましい。
エラストマー層4に使用されるシリコーン樹脂はシリコーン樹脂組成物からなり、このシリコーン樹脂組成物は、中間体の製造適正、及び製造後の保管適性の観点から、加熱硬化型シリコーン樹脂が好ましい。この加熱硬化型シリコーン樹脂としては、例えば付加硬化型ミラブルシリコーン樹脂、及び付加硬化型液状シリコーン樹脂があげられる。付加硬化型ミラブルシリコーン樹脂は、通常、オルガノポリシロキサンに、シリカ系等の充填材、及び硬化剤(公知の白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせた硬化剤、及び有機化酸化物等)やシリカ微粉末等からなる各種の添加剤を添加した組成物の状態で使用される。
これに対し、付加硬化型液状シリコーン樹脂は、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、平均粒径が1μm以上30μm以下で、嵩密度が0.1g/cm以上0.5g/cm以下である無機質充填材(珪藻土、パーライト、発泡パーライトの粉砕物、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び中空フィラー等)と、付加反応触媒(白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等)とが添加された樹脂組成物の状態で使用される。
シリコーン樹脂となるシリコーン樹脂組成物は、二本ローラや三本ローラ等のカレンダーロール、ロールミル、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)等の混練機等を用い、樹脂組成物、及び所望により各種添加剤が均一に混合されるまで、例えば数分から数時間、好ましくは5分〜1時間、常温又は加熱下で混練されることにより得られる。ここでいう常温とは、0〜50℃程度の温度範囲を指す。
エラストマー層4の厚さは、軽量化により、優れた音響特性を得る観点から、10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上80μm以下、より好ましくは50μm以上75μm以下が最適である。ここでいう厚さは、エラストマー層4にシリコーン樹脂を使用した場合、硬化後の厚さを指す。
エラストマー層4にシリコーン樹脂を使用した場合のシリコーン樹脂のデュロメータ硬さは、JIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合、A10以上A90以下、好ましくはA20以上A70以下、より好ましくはA20以上A50以下の範囲が最適である。これは、デュロメータ硬さがA10未満の場合には、シリコーン樹脂層の圧縮永久歪み特性が悪化したり、振動板の振動伝搬速度が低下して音質に問題が生じるからである。逆に、デュロメータ硬さがA90を越える場合には、損失正接が小さくなり、振動板としての性能悪化を招くからである。
プライマー5は、エラストマー層4とポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2との間に介在され、これらを強固に接着するよう機能する。このプライマー5は、シリコーン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2とを接着することができるものであれば、特に限定されるものではないが、例えばアルキド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、及びこれら混合物等があげられる。また、これらの樹脂を硬化、及び/又は架橋する架橋剤として、例えばイソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物、シラン化合物等があげられる。
プライマー5は、上記化合物と有機溶剤とからなる混合物の状態で使用される。有機溶剤としては、揮発し易い溶剤が良く、例えばメタノール、エタノール、あるいはイソプロパノール等のアルコール系溶剤、キシレン、あるいはトルエン等の芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、あるいはジメチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、あるいはメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、あるいは酢酸ブチル等のエステル系溶剤等があげられる。これらの有機溶剤は、単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。有機溶剤の添加量に関しては、プライマー5の塗工方法に応じ、適切な濃度になるよう適宜調整される。
プライマー5は、シリコーン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2との対向面のいずれかに、例えばスプレー法、ハケ塗り法、グラビアコート法、ダイコート法、バーコーター(メイヤーバー)法、含浸コート法等の公知の方法で薄く塗布され、有機溶剤の揮発後、薄膜の層を形成する。
薄膜層のプライマー5は、0.1μm以上5μm以下、好ましくは1μm以上2μm以下の厚さとされる。これは、プライマー5の厚さが0.1μm未満の場合には、エラストマー層4とフィルム2との接着が不十分で、振動板への成形中、あるいは使用中に剥離してしまうおそれがあるからである。これに対し、プライマー5の厚さが5μmを越える場合には、振動板への二次成形性、あるいは音響特性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
エラストマー層4とフィルム2へのプライマー5の濡れ性を改良し、向上させたい場合には、本発明の特性を損なわない範囲で、エラストマー層4、及びフィルム2の表面を各種表面処理方法により処理すれば良い。各種表面処理方法としては、例えばコロナ照射処理、紫外線照射処理、プラズマ照射処理、フレーム処理、火炎処理、あるいはイトロ処理等の公知の方法があげられる。
一対のフィルム2の厚さは、エラストマー層4の両面で異なっていても良いし、同等でも良いが、好ましくは同等が良い。これは、一対のフィルム2の厚さが異なる場合には、フィルム2の加熱収縮率が異なるため、振動板が成形後にカールしてしまうおそれがあるからである。
このような積層中間体3の作製方法としては、先ず、エラストマー層4に使用されるエラストマーをシート形に成形し、このエラストマーと既に成形しておいた一対のフィルム2とをプライマー5を介してラミネートする。エラストマーをシート形に成形する方法としては、常温押出成形法、溶融押出成形法、カレンダー成形法、又はキャスティング成形法等の公知の製造法を採用することができる。エラストマー層4に使用されるエラストマーの機械的特性が低い、あるいはベトツキが激しい等、取り扱い性に問題のある場合には、エラストマーをポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シート等の非伸縮性の基材シート上に所定の厚さに分出ししても良い。ここでいう常温とは、0〜50℃度の温度範囲を指す。
エラストマー層4のエラストマーが例えばシリコーン樹脂の場合、先ず、シリコーン樹脂組成物を調製して2〜3本のカレンダーロールにより混練し、この混練したシリコーン樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シート等の非伸縮性の基材シート上にカレンダーロールで所定の厚さのシート形に分出しし、シリコーン樹脂組成物の露出面に、既に成形しておいたポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2をプライマー5を介してラミネートする。
次いで、基材シートをフィルム2側に設置し、基材シートを剥離してシリコーン樹脂組成物の粘着面を露出させ、このシリコーン樹脂組成物の露出面にポリエーテルケトンケトン樹脂製の別のフィルム2をプライマー5を介しラミネートすれば、積層中間体3を作製することができる。
積層中間体3を作製したら、この積層中間体3を、金型を使用したプレス成形、真空成形、あるいは圧空成形等の熱成形により、振動板に成形すれば、皺のない小型のスピーカの振動板を製造することができる。この際、エラストマー層4にシリコーン樹脂を使用した場合には、振動板の成形と同時にシリコーン樹脂を硬化させ、所定の大きさ・形に整えれば、皺のない小型のスピーカの振動板を製造することができる。
積層中間体3の熱成形温度は、振動板への成形性の観点より、ポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2のガラス転移点以上融点未満である。具体的には、160℃以上300℃以下、好ましくは180℃以上250℃以下である。これは、熱成形温度がフィルム2のガラス転移点温度未満の場合には、積層中間体3から振動板への成形が困難となり、逆に熱成形温度がフィルム2の融点以上の場合には、フィルム2が溶融して形状性の低下を招いたり、あるいはエラストマー層4に使用されているエラストマーが熱分解したり、変成してしまうからである。
上記によれば、高温域の耐熱性に優れるポリエーテルケトンケトン樹脂によりフィルム2を溶融押出成形し、冷却後のフィルム2の23℃における引張弾性率を2000N/mm以上4000N/mm以下とするとともに、冷却後のフィルム2の150℃における引張弾性率を2000N/mm以上4000N/mm以下とし、冷却後のフィルム2の比重を1.2以上1.4以下とし、冷却後のフィルム2の20℃における損失正接を0.010以上とするので、150℃以上の耐熱性を得ることができる。したがって、例えスピーカの振動板に使用しても、ボイスコイルの高振動に伴う高熱により、振動板が変形したり、破損するおそれを有効に排除することができる。
また、音質特性、圧縮特性等に優れるエラストマー層4に一対のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2を積層してこれらの特性を併せ持つ振動板を製造するので、例え携帯機器が好ましくない使用環境で長時間利用され、しかも、スピーカの高機能・高出力化に伴い、外部出力が増大し、ボイスコイルに発熱や振動が生じても、振動板の耐久性や音響特性を向上させることができる。
特に、エラストマー層4に耐熱性、耐候性、難燃性、音質特性、圧縮特性等に優れるシリコーン樹脂を用い、このシリコーン樹脂に一対のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2を積層してこれらの特性を併せ持つ振動板を製造すれば、例え携帯機器が好ましくない使用環境で長時間利用され、しかも、スピーカの高性能・高出力化に伴い、外部出力が増大し、ボイスコイルに発熱及び振動が生じても、振動板の耐熱性や音響特性を著しく向上させることができる。
また、損失正接に優れるエラストマー層4とポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2との複合化により、振動板の損失正接が向上するので、音響特性を向上させることができる。特に、損失正接が大きく、f値の増大化を防止効果に優れるシリコーン樹脂とポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルム2とを複合化すれば、振動板の耐熱性と損失正接、低音域の再生特性が大幅に向上するので、きわめて優れた耐久性と音響特性を得ることができる。
なお、上記実施形態では振動板を、エラストマー層4と、このエラストマー層4の両面にプライマー5を介してそれぞれ積層接着されるフィルム2とを備えた多層構造としたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、フィルム2のみとし、エラストマー層4を省略しても良い。また、フィルム2の表面には、本発明の効果を失わない範囲で各種の帯電防止剤、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の各種エラストマーを塗布したり、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅等の各種金属を蒸着しても良い。
以下、本発明に係るスピーカの振動板用フィルムの製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、成形材料として市販のポリエーテルケトンケトン樹脂〔アルケマ社製 製品名:KEPSTAN 8002〕を用意し、このポリエーテルケトンケトン樹脂を160℃に加熱した熱風乾燥機で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、乾燥したポリエーテルエーテルケトン樹脂を、幅400mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練したポリエーテルケトンケトン樹脂を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムであるポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムを帯形に押出成形した。
この際、ポリエーテルケトンケトン樹脂の含水率は、微量水分測定装置(三菱化学社製 製品名CA−100型)を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。また、単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。この単軸押出成形機の温度は380〜400℃、Tダイスの温度は400℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は400℃にそれぞれ調整した。
単軸押出成形機にポリエーテルケトンケトン樹脂を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。また、溶融したポリエーテルケトンケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ396℃であった。
ポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムを押出成形したら、この連続したポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ50m、幅300mmのポリエーテルケトンケトン樹脂製の振動板用フィルムを製造した。この際、フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた210℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
振動板用フィルムであるポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムが得られたら、このフィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、機械的特性、耐熱特性、及び音響特性を評価してその結果を表1に記載した。機械的特性は23℃におけるフィルムの引張弾性率、耐熱特性はフィルムのガラス転移点とフィルム150℃における引張弾性率、音響特性はフィルムの23℃における比重とフィルムの20℃における損失正接とにより評価した。
・フィルムのフィルム厚
フィルム厚が2μm以上10μm以下のフィルムの厚さについては、接触式の厚さ計〔Marh社製 製品名:ミリマール 1240 コンパクトアンプにミリマール インダクティブ プローブ 1301を取り付けた装置〕を使用して測定した。これに対し、フィルム厚が10μmを越え〜110μm以下のフィルムの厚さについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC−25PJ〕を使用して測定した。
測定に際しては、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)が交わる所定位置の厚みを20箇所測定し、その平均値をフィルム厚とした。押出方向の測定箇所は、フィルムの先端部から100mm、200mm、300mm、400mmの位置とした。これに対し、幅方向の測定箇所は、フィルムの左端部から50mm、次いで50mm間隔で100mm、150mm、200mm、250mmの箇所とした。
・フィルムのフィルム厚公差
フィルム厚公差については、以下の式から求めた。
フィルム厚公差[%]={(MAX又はMIN)−(AVE)}/(AVE)×100
ここで、MAX:フィルム厚の最大値
MIN:フィルム厚の最小値
AVE:フィルム厚の平均値
求めたフィルム厚公差が±5%以内の場合をA、±5〜10%以内の場合をB、±10%を越える場合をNGとした。
・フィルムの23℃における引張弾性率
フィルムの23℃における引張弾性率は、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。測定用の試験片は、JIS K7160 3形を使用した。引張弾性率は、JIS K7127に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃の条件で測定した。
・フィルムのガラス転移点
フィルムのガラス転移点は、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジー社製:製品名 高感度型示差走査熱量計 X−DSC7000〕を用い、JIS K7121に準じ、昇温速度10℃/分で昇温したときの示差走査熱量測定曲線から求めた。
・フィルムの150℃における引張弾性率
フィルムの150℃における引張弾性率は、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。測定用の試験片は、JIS K7160 3形を使用した。具体的には、フィルムからJIS K7160 3形に試験片を切り出し、この試験片を予め150℃の加熱した恒温槽付き引張試験機に取り付け、JIS K7127に準拠し、引張速度50mm/分で測定した。測定は、試験片を恒温槽内の引張試験機のつまみ具に取り付け、恒温槽の扉を閉じ、恒温槽の温度が150±2℃に達した後、3分間放置した後に実施した。
・フィルムの比重
フィルムの23℃における比重に関しては、JIS K7112(A法)の測定方法に準拠し、温度23℃の条件で測定した。
・フィルムの損失正接
フィルムの損失正接は、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、フィルムの押出方向の損失正接を測定する場合には、押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の損失正接を測定する場合には、押出方向6mm×幅60mmの大きさに切り出して測定した。
損失正接の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ(ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2)を用いた引張モードにより、周波数1Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲−60〜380℃、チェック間21mmの条件で測定し、20℃の損失正接を求めた。
〔実施例2〕
実施例1の場合には、成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して厚さ100μmのポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムを押出成形したが、実施例2の場合には、厚さ25.3μmのフィルムを押出成形した。その他の部分については、実施例1と同様とした。
フィルムが得られたら、このフィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、機械的特性、耐熱特性、及び音響特性を実施例1と同様の方法により評価し、その結果を表1に記載した。
〔実施例3〕
実施例1の場合には、成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して厚さ100μmのフィルムを押出成形したが、実施例3の場合には、厚さ12.5μmのフィルムを押出成形した。その他の部分については、実施例1と同様とした。
フィルムが得られたら、このフィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、機械的特性、耐熱特性、及び音響特性を実施例1と同様の方法により評価し、その結果を表1に記載した。
〔実施例4〕
実施例1の場合には、成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して厚さ100μmのポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムを押出成形したが、実施例4の場合には、厚さ5.8μmのフィルムを押出成形した。その他の部分については、実施例1と同様とした。
フィルムが得られたら、このフィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、機械的特性、耐熱特性、及び音響特性を実施例1と同様にして評価し、その結果を表1に記載した。
Figure 2018191069
〔実施例5〕
先ず、市販のポリエーテルケトンケトン樹脂〔アルケマ社製 製品名:KEPSTAN 7002〕を実施例1と同様の加熱乾燥機により、150℃で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、この乾燥したポリエーテルケトンケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出成形機とTダイスを使用することにより、帯形のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムを押出成形した。
この際、ポリエーテルケトンケトン樹脂の含水率は、実施例1と同様の方法により測定した。また、単軸押出成形機にポリエーテルケトンケトン樹脂を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。単軸押出成形機の温度は360〜380℃、Tダイスの温度は380℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は380℃にそれぞれ調整した。また、溶融したポリエーテルケトンケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ377℃であった。
ポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムを押出成形したら、このポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ50m、幅300mmのポリエーテルケトンケトン樹脂製の振動板用フィルムを製造した。この際、ポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた160℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
フィルムが得られたら、このフィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、機械的特性、耐熱特性、及び音響特性を実施例1と同様の方法により評価し、その結果を表2に記載した。
〔実施例6〕
先ず、市販のポリエーテルケトンケトン樹脂〔アルケマ社製 製品名:KEPSTAN 6002〕を実施例1と同様の加熱乾燥機により、130℃で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認した後、この乾燥したポリエーテルケトンケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出成形機とTダイスを使用することにより、帯形のポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムを押出成形した。
この際、ポリエーテルケトンケトン樹脂の含水率は、実施例1と同様の方法で測定した。また、単軸押出成形機にポリエーテルケトンケトン樹脂を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。単軸押出成形機の温度は330〜370℃、Tダイスの温度は370℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は370℃にそれぞれ調整した。また、溶融したポリエーテルケトンケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ367℃であった。
ポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムを押出成形したら、このポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ50m、幅300mmのポリエーテルケトンケトン樹脂製の振動板用フィルムを製造した。この際、ポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた130℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
フィルムが得られたら、このフィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、機械的特性、耐熱特性、及び音響特性を実施例1と同様の方法で評価し、その結果を表2に記載した。
Figure 2018191069
〔比較例1〕
先ず、市販のポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 製品名:キータスパイアPEEK KT−851NL SP(以下、「KT−851NL SP」と略す)〕を実施例1と同様の加熱乾燥機により、160℃で12時間乾燥させ、乾燥した成形材料の水分率が300ppm以下であるのを確認後、この乾燥させたポリエーテルエーテルケトン樹脂を実施例1と同様の単軸押出成形機とTダイスを使用することにより、帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを押出成形した。
単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。この単軸押出成形機の温度は380〜400℃、Tダイスの温度は400℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は400℃にそれぞれ調整した。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の含水率は、実施例1と同様の方法により測定した。溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ395℃であった。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂のフィルムを押出成形したら、連続したフィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ50m、幅300mmのポリエーテルエーテルケトン樹脂製の振動板用フィルムを製造した。この際、フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた200℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する3インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
振動板用フィルムであるポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、耐熱特性、及び音響特性を実施例1と同様の方法により評価し、その結果を表3に記載した。
〔比較例2〕
比較例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂をベスタキープ 3300G〔ダイセル・エボニック社製 製品名〕に変更して実施例1と同様の単軸押出成形機とTダイスを使用することにより、帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを押出成形した。
単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、比較例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ397℃であった。冷却ロールである金属ロールの温度は、比較例1と同じ200℃とした。
振動板用フィルムであるポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムが得られたら、このポリエーテルエーテルケトン樹脂製フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、耐熱特性、及び音響特性を実施例1と同様の方法により評価し、その結果を表3に記載した。
〔比較例3〕
比較例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂をビクトレックスピーク381G〔ビクトレックス社製、製品名〕に変更して実施例1と同様の単軸押出成形機とTダイスを使用することにより、帯形のポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムを押出成形した。
単軸押出成形機、Tダイス、及び単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は、比較例1と同様とした。また、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ396℃であった。冷却ロールである金属ロールの温度は、130℃に変更した。
振動板用フィルムであるポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムが得られたら、このフィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、耐熱特性、及び音響特性を実施例1と同様にして評価し、その結果を表3に記載した。
Figure 2018191069
〔評 価〕
各実施例におけるポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムは、ガラス転移点が160℃以上、150℃における引張弾性率が2000N/mm以上4000N/mm以下であり、比重が1.2以上1.3以下、23℃における引張弾性率が2000N/mm以上4000N/mm以下、20℃における損失正接が0.010以上であった。したがって、各実施例におけるポリエーテルケトンケトン樹脂製のフィルムは、耐熱特性が高いので、耐久性に優れ、しかも、音響特性に関しても、優れた特性を有していた。さらに、フィルム厚さ公差は、±10%以内であり、フィルム成形適性についても何ら問題が認められなかった。
これに対し、比較例におけるポリエーテルエーテルケトン樹脂製のフィルムは、比重が1.2以上1.3以下、23℃における引張弾性率が2000N/mm以上4000N/mm以下、20℃における損失正接が0.010以上、フィルム厚さ公差が±10%以内であり、音響特性やフィルム成形適性には問題が認められなかった。
しかしながら、ガラス転移点が150℃未満であり、150℃における引張弾性率も2000N/mm未満であったので、耐熱性が低く、振動板に使用する場合の耐久性に問題が生じた。
本発明に係るスピーカの振動板用フィルムの製造方法は、携帯機器等に内蔵されるスピーカの製造分野で用いられる。
1 成形材料
2 フィルム
3 積層中間体
4 エラストマー層
5 プライマー
10 溶融押出成形機(押出成形機)
12 不活性ガス供給管
13 Tダイス
17 圧着ロール
18 冷却ロール
19 巻取機
20 巻取管

Claims (4)

  1. 樹脂含有の成形材料を用いてフィルムを成形するスピーカの振動板用フィルムの製造方法であって、
    ポリエーテルケトンケトン樹脂含有の成形材料を溶融混練し、この成形材料を用いてダイスからフィルムを連続的に帯形に押出成形し、この押出成形したフィルムを圧着ロールと冷却ロールとの間に挟んで冷却することにより、冷却したフィルムの厚さを2μm以上110μm以下とし、
    冷却後のフィルムの23℃における引張弾性率を2000N/mm以上4000N/mm以下とするとともに、冷却後のフィルムの150℃における引張弾性率を2000N/mm以上4000N/mm以下とし、冷却後のフィルムの比重を1.2以上1.4以下とし、冷却後のフィルムの20℃における損失正接を0.010以上とすることを特徴とするスピーカの振動板用フィルムの製造方法。
  2. 押出成形機に不活性ガスを供給しながら成形材料を投入し、圧着ロールと冷却ロールのうち、少なくとも冷却ロールの温度を50℃以上260℃以下に調整する請求項1記載のスピーカの振動板用フィルムの製造方法。
  3. 冷却後のフィルムを厚さ10μm以上100μm以下のエラストマー層に積層接着し、これらを熱成形する請求項1又は2記載のスピーカの振動板用フィルムの製造方法。
  4. エラストマー層をシリコーン樹脂製としてそのJIS K 6253に準拠してデュロメータのタイプAで測定した場合のデュロメータ硬さを、A10以上A90以下とする請求項3記載のスピーカの振動板用フィルムの製造方法。
JP2017090092A 2017-04-28 2017-04-28 スピーカの振動板用フィルムの製造方法 Active JP6637919B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017090092A JP6637919B2 (ja) 2017-04-28 2017-04-28 スピーカの振動板用フィルムの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017090092A JP6637919B2 (ja) 2017-04-28 2017-04-28 スピーカの振動板用フィルムの製造方法

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019231309A Division JP2020065274A (ja) 2019-12-23 2019-12-23 スピーカの振動板用フィルム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018191069A true JP2018191069A (ja) 2018-11-29
JP6637919B2 JP6637919B2 (ja) 2020-01-29

Family

ID=64480433

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017090092A Active JP6637919B2 (ja) 2017-04-28 2017-04-28 スピーカの振動板用フィルムの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6637919B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN109905835A (zh) * 2019-03-13 2019-06-18 东莞涌韵音膜有限公司 振膜成型工艺
JP2020145607A (ja) * 2019-03-07 2020-09-10 三菱ケミカル株式会社 電気音響変換器用振動板フィルム

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016010127A1 (ja) * 2014-07-18 2016-01-21 ダイキン工業株式会社 フィルム及びその製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2016010127A1 (ja) * 2014-07-18 2016-01-21 ダイキン工業株式会社 フィルム及びその製造方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020145607A (ja) * 2019-03-07 2020-09-10 三菱ケミカル株式会社 電気音響変換器用振動板フィルム
JP7415325B2 (ja) 2019-03-07 2024-01-17 三菱ケミカル株式会社 電気音響変換器用振動板フィルム
CN109905835A (zh) * 2019-03-13 2019-06-18 东莞涌韵音膜有限公司 振膜成型工艺
CN109905835B (zh) * 2019-03-13 2023-08-04 东莞涌韵音膜有限公司 振膜成型方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6637919B2 (ja) 2020-01-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6781662B2 (ja) 振動板用フィルムの製造方法
JP6570988B2 (ja) スピーカの振動板用フィルムの製造方法
JP5582877B2 (ja) フィルムキャパシタ用フィルムの製造方法及びフィルムキャパシタ用フィルム
JP6087257B2 (ja) ポリエーテルエーテルケトン樹脂フィルムの製造方法
JP2012125934A (ja) スピーカ振動板用フィルムの製造方法及びスピーカ振動板用フィルム
JP7079089B2 (ja) 高耐熱・高摺動性フィルム及びその製造方法
JP2020065274A (ja) スピーカの振動板用フィルム
JP6637919B2 (ja) スピーカの振動板用フィルムの製造方法
JP6628783B2 (ja) スピーカの振動板用フィルムの製造方法
JP6438444B2 (ja) スピーカの振動板の製造方法
JP2019001976A (ja) 発泡成形体の製造方法
JP6694364B2 (ja) 振動板用フィルムの製造方法
JP6396237B2 (ja) スピーカの振動板用フィルムの製造方法
JP6483596B2 (ja) 高耐熱・高摺動性フィルムの製造方法
JP7049971B2 (ja) ポリアリーレンエーテルケトン樹脂シート用成形方法
JP2020177987A (ja) 高周波回路基板及びその製造方法
JP7245122B2 (ja) 携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法
JP2020114029A (ja) 振動板用フィルム及びスピーカの振動板
JP7320429B2 (ja) 携帯機器スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法
JP2020031452A (ja) スピーカの振動板用フィルム
JP2021010189A (ja) 振動板用フィルム
JP6709302B2 (ja) 高耐熱・高摺動性フィルム
JP7336417B2 (ja) スピーカの振動板用樹脂フィルム及びその製造方法、並びにスピーカの振動板
WO2022181710A1 (ja) 接着剤層付きポリマーフィルム、積層体、及び、積層体の製造方法
JP6605688B2 (ja) スピーカの振動板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190109

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20191018

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191203

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191223

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6637919

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250