JP2020145607A - 電気音響変換器用振動板フィルム - Google Patents

電気音響変換器用振動板フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】優れた音響特性と耐熱性を有する電気音響変換器用振動板フィルムを提供することである。【達成手段】ポリエーテルイミドサルホンを含む樹脂組成物からなる電気音響変換器用振動板フィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリエーテルイミドスルホンを用いたフィルムに関し、特に電気音響変換器用振動板として好適に使用することができるフィルムに関する。
近年の電気音響変換器用振動板は薄いフィルムを接着剤や粘着剤を介して何層にも重ねて使用することが多く、用いられるフィルムには一層の薄膜化が求められている。その中で、薄くても扱いやすい高い剛性(弾性率)が必要となる。更に、高音の再生性に優れるという点からも、高い比弾性率(弾性率と比重の比)が求められる。一方、マイクロスピーカーにおいては低音の再生性を高めるために比弾性率が低い方が好ましいことから、幅広い音響特性を実現するためには、比弾性率が適度な範囲にあることが好ましいと言える。
また、スピーカーの駆動源であるボイスコイル近傍や車載用スピーカーなどに使用する場合には、振動板が高温に長時間さらされるため、このような使用条件下で十分に耐えうる耐熱性が必要となる。更に、近年、接着剤の乾燥工程等のプロセスにおいて、場合によっては220℃以上の高温に晒されることから、より高い耐熱性が求められる。
ポリエーテルイミドやポリフェニルサルホン等に代表されるスーパーエンジニアリングプラスチックは、剛性や耐熱性に優れるため、電気音響変換器用振動板として好適に使用することができる。しかしながら、これらの樹脂を単独で用いた場合では、上記の全ての要求特性を満たすことは困難であった。
特許文献1には、ポリエーテルイミドからなるスピーカー振動板が開示されており、耐熱性に優れる旨の記載がある。
特許文献2には、ポリフェニルサルホンからなるスピーカー振動板が開示されており、耐久性や成形性に優れる旨の記載がある。
特開昭60−139098号公報 特開2007−221754号公報
しかしながら、特許文献1または2に記載のフィルムは、ポリエーテルイミドまたはポリフェニルサルホンを単独で使用しているため、音響特性と耐熱性の両方を十分に満たすことは困難であった。
本発明は、このような状況下でなされたものであり、優れた音響特性と耐熱性を有する電気音響変換器用振動板フィルムを提供することを目的とするものである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記従来技術の課題を解決し得るフィルムを得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の課題は、ポリエーテルイミドサルホンを含む樹脂組成物からなる電気音響変換器用振動板フィルムによって解決される。
本発明によれば優れた比弾性率と耐熱性を有するフィルムを提供することが可能となる。
本発明の電気音響変換器用振動板フィルム(以下、「該フィルム」と称することがある。)は、ポリエーテルイミドサルホンを含む電気音響変換器用振動板フィルムである。以下、詳細に説明する。
[ポリエーテルイミドサルホン]
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムは、比弾性率と耐熱性の観点から、ポリエーテルイミドサルホンを下限については1質量%以上含むことが重要であり、10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましく、30質量%以上含むことが更に好ましく、40質量%以上含むことが特に好ましい。一方、上限については特に制限はなく、100質量%含んでもよいが、溶融成形性の観点から90質量%以下含むことが好ましく、80質量%以下含むことがより好ましく、70質量%以下含むことが更に好ましく、60質量%以下含むことが特に好ましい。
本発明で用いられるポリエーテルイミドサルホンは、2,2’−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルサルホンからなる下記構造式(1)、または、2,2’−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルサルホンからなる下記構造式(2)で表される繰り返し単位を有する。一般的に、ポリエーテルイミドサルホンは、結合様式の違いによって構造が分類され、それぞれ耐熱性が異なる。
Figure 2020145607
Figure 2020145607
ポリエーテルイミドサルホンの繰り返し単位の合計数(重合度)は、下限については10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、上限については1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。ポリエーテルイミドサルホンの繰り返し単位の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、本発明のフィルムは比弾性率が最適な範囲にあり、耐熱性にも優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルイミドサルホンのガラス転移温度は、下限については220℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることが更に好ましい。一方、上限については、300℃以下であることが好ましく、290℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが更に好ましい。ポリエーテルイミドサルホンのガラス転移温度がかかる範囲であれば、本発明のフィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルイミドサルホンは、公知の製法により製造することができる。また、市販品を用いることも出来る。市販品の例としては、サビック社製「EXTEM」シリーズが挙げられる。
[ポリエーテルイミド]
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムは、ポリエーテルイミドサルホンの他にポリエーテルイミドを含んでも良い。ポリエーテルイミドを含む場合、下限については1質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上含むことがより好ましく、20質量%以上含むことが更に好ましく、30質量%以上含むことが特に好ましく、40質量%以上含むことがとりわけ好ましい。ポリエーテルイミドはポリエーテルイミドサルホンよりガラス転移温度が低く、溶融成形性に優れるため、これらを含むことで溶融成形性を向上することができる。
一方、上限については99質量%以下含むことが好ましく、90質量%以下含むことがより好ましく、80質量%以下含むことがさらに好ましく、70質量%以下であることが特に好ましく、60質量%以下であることがとりわけ好ましい。ポリエーテルイミドは、ポリエーテルイミドサルホンよりガラス転移温度が低く、比弾性率が高いため、ポリエーテルイミドの含有量をかかる範囲とすることにより、本発明のフィルムの耐熱性と比弾性率を最適な範囲に維持することができる。
本発明で用いられるポリエーテルイミドは、2,2’−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とメタフェニレンジアミンからなる下記構造式(3)、または、2,2’−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とパラフェニレンジアミンからなる下記構造式(4)で表される繰り返し単位を有する。一般的に、ポリエーテルイミドは、結合様式の違い、すなわち、メタ結合とパラ結合の違いによって構造が分類され、それぞれ機械特性や耐熱性が異なる。
Figure 2020145607
Figure 2020145607
ポリエーテルイミドの繰り返し単位の合計数(重合度)は、下限については10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、上限については1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。ポリエーテルイミドの繰り返し単位の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、本発明のフィルムは比弾性率が最適な範囲にあり、耐熱性にも優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルイミドのガラス転移温度は、下限については140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。一方、上限については、280℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、240℃以下であることが更に好ましい。ポリエーテルイミドのガラス転移温度がかかる範囲であれば、本発明のフィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリエーテルイミドサルホンとポリエーテルイミドは結合様式に関わらず互いに相溶系であるので、混合した場合も相分離せず、均一系となる。従って、ポリエーテルイミドサルホンとポリエーテルイミドを混合することによって、相界面に起因する機械特性の低下を引き起こしにくい。それどころか、ポリエーテルイミドサルホンがポリエーテルイミドを1質量%以上の割合で含むことにより、ポリエーテルイミドサルホンの溶融成形性を向上することができる。また、ポリエーテルイミドサルホンがポリエーテルイミドサルホンを99質量%以下の割合で含むことにより、ポリエーテルイミドサルホンの比弾性率や耐熱性を維持することができる。
ポリエーテルイミドは、公知の製法により製造することができる。また、市販品を用いることも出来る。市販品の例としては、サビック社製「Ultem」シリーズが挙げられる。
[ポリフェニルサルホン]
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムは、ポリエーテルイミドサルホンの他にポリフェニルサルホンを含んでも良い。ポリフェニルサルホンを含む場合、下限については1質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上含むことがより好ましく、20質量%以上含むことが更に好ましく、30質量%以上含むことが特に好ましく、40質量%以上含むことがとりわけ好ましい。ポリフェニルサルホンはポリエーテルイミドサルホンよりガラス転移温度が低く、溶融成形性に優れるため、これらを含むことで溶融成形性を向上することができる。
一方、上限については99質量%以下含むことが好ましく、90質量%以下含むことが好ましく、80質量%以下含むことがさらに好ましく、70質量%以下含むことが特に好ましく、60質量%以下含むことがとりわけ好ましい。ポリフェニルサルホンはポリエーテルイミドサルホンよりガラス転移温度が低く、比弾性率も低いため、ポリフェニルサルホンの含有量をかかる範囲とすることにより、本発明のフィルムの耐熱性と比弾性率を最適な範囲に維持することができる。
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムに含まれるポリフェニルサルホンは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルホンと4,4’−ビフェノールからなる下記構造式(5)で表される繰り返し単位を有する。
Figure 2020145607
ポリフェニルサルホンの繰り返し単位の合計数(重合度)は、下限については10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。一方、上限については1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましい。ポリフェニルサルホンの繰り返し単位の合計数(重合度)がかかる範囲であれば、本発明のフィルムは比弾性率が最適な範囲にあり、耐熱性にも優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
ポリフェニルサルホンのガラス転移温度は、下限については140℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。一方、上限については、280℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、240℃以下であることが更に好ましい。ポリフェニルサルホンのガラス転移温度がかかる範囲であれば、本発明のフィルムは耐熱性に優れる上、溶融時の粘度が高すぎないため溶融成形性に優れる。
構造式(1)で表されるポリエーテルイミドサルホンとポリフェニルサルホンは部分相溶系、構造式(2)で表されるポリエーテルイミドサルホンとポリフェニルサルホンは相溶系である。いずれも相溶性に優れるため、相分離しないかもしくは微分散系であり、相界面に起因する機械特性の低下を引き起こしにくい。それどころか、ポリエーテルイミドサルホンがポリフェニルサルホンを1質量%以上の割合で含むことにより、ポリエーテルイミドサルホンの溶融成形性を向上することができる。また、ポリエーテルイミドサルホンがポリフェニルサルホンを99質量%以下の割合で含むことにより、ポリエーテルイミドサルホンの比弾性率や耐熱性を維持することができる。
また、近年、電気音響変換器用振動板としては、低音の再生性を向上するために比弾性率がある程度低いことが求められる傾向にある。ポリエーテルイミドと比べて比弾性率の低いポリフェニルサルホンを含むことで、フィルム全体の比弾性率を調整することができる。
ポリフェニルサルホンは、公知の製法により製造することができる。また、市販品を用いることも出来る。市販品の例としては、ソルベイ社製「Radel」シリーズ、BASF社製「Ultrason P」シリーズ、UJU社製「Paryls F1000」シリーズ、HORAN社製「P200」「P300」等が挙げられる。
[電気音響変換器用振動板フィルム]
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムは、ポリエーテルイミドサルホンを含む。ポリエーテルイミドサルホンは極めて高い耐熱性を有するため、電気音響変換器用振動板として使用した際に、高温プロセスにも耐えうる耐熱性を付与することができる。また、ポリエーテルイミドサルホンは比弾性率が最適な範囲にあるため、音響特性にも優れる。
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムは、ポリエーテルイミドサルホン以外にポリエーテルイミド及び/またはポリフェニルサルホンを含むことができる。これらを1質量%以上含むことで、ポリエーテルイミドサルホンの溶融時の粘度を低減し、溶融成形性を向上することができる。一方、これらの含有量を99質量%以下とすることで、ポリエーテルイミドサルホンの有する耐熱性と比弾性率を最適な範囲に維持することができる。
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムは、20℃における比弾性率が下限としては1.40×10(m/s)以上であることが好ましく、1.45×10(m/s)以上であることがより好ましく、1.50×10(m/s)以上であることが更に好ましく、1.55×10(m/s)以上であることが特に好ましく、1.60×10(m/s)以上であることがとりわけ好ましい。比弾性率の下限がかかる範囲であれば、高音の音響特性に優れる。
一方、上限としては3.10×10(m/s)以下であることが好ましく、2.80×10(m/s)以下であることがより好ましく、2.50×10(m/s)以下であることが更に好ましく、2.20×10(m/s)以下であることが特に好ましい。比弾性率の上限がかかる範囲であれば、低音の音響特性に優れる。
一般に、電気音響変換器用振動板では、再生周波数帯を広げるために高い比弾性率が求められる。一方、近年、モバイルやユビキタス社会あるいは、音楽ソースのデジタル化などを背景に、各種小型電子機器(例えば、スマートフォン、携帯電話、PDA、ノートブックコンピューター、DVD、液晶TV、デジタルカメラ、携帯音楽機器等)の高機能化、高性能化が進んでいる。これらに用いられる小型スピーカー(通常、マイクロスピーカーと呼ばれる)においては、低音が出しにくいため、低音の再生性を担保するために、より低い比弾性率が求められる。すなわち、幅広い音響特性を発現するためには、比弾性率が最適な範囲にあることが求められる。本発明の電気音響変換器用振動板フィルムは、上記のように比弾性率が最適な範囲にあるため、音響特性に優れると期待される。
比弾性率は、フィルムの弾性率と比重の比で表される。すなわち、以下の式で計算することができる。
引張弾性率(MPa)/比重(g/cm)=比弾性率(m/s
該フィルムの引張弾性率には、JIS K7244−4:1999に準拠して測定した、20℃における値を用いることができる。引張弾性率の値には特に制限が無いが、下限については2000MPa以上であることが好ましく、2020MPa以上であることがより好ましく、2040MPa以上であることが更に好ましく、2060MPa以上であることが特に好ましく、2100MPa以上であることがとりわけ好ましい。近年の電気音響変換器用振動板は薄いフィルムを接着剤や粘着剤を介して何層にも重ねて使用することが多く、用いられるフィルムには一層の薄膜化が求められている。その中で、薄くても扱いやすい剛性を有するフィルムが求められている。引張弾性率の下限がかかる範囲であれば、フィルムが薄い場合でもハンドリング性に優れ、プロセス中のシワ等のトラブルが無い。
一方、上限については4000MPa以下であることが好ましく、3800MPa以下であることがより好ましく、3600MPa以下であることが更に好ましく、3400MPa以下であることが特に好ましく、3200MPa以下であることがとりわけ好ましい。引張弾性率の値が大きい場合、比弾性率を上記範囲にするためには比重も高くする必要があり、フィルムが重くなる懸念がある。引張弾性率の上限をかかる範囲とすることで、軽量かつ比弾性率が最適な範囲にあるフィルムを得ることができる。
該フィルムの比重には、JIS K7112:1999に準拠して測定した、20℃における値を用いることができる。比重の値には特に制限は無いが、下限については0.7(g/cm)以上であることが好ましく、0.8(g/cm)以上であることがより好ましく、0.9(g/cm)以上であることが更に好ましく、1.0(g/cm)以上であることが特に好ましく、1.1(g/cm)以上であることがとりわけ好ましい。該フィルムの比重の下限がかかる範囲であれば、比弾性率の値が低くなり、ひいては低音の音響特性に優れる。一方、上限については2.0以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましく、1.8以下であることが更に好ましく、1.7以下であることが特に好ましく、1.6以下であることがとりわけ好ましい。該フィルムの比重の上限がかかる範囲であれば、比弾性率の値が高くなり、ひいては高音の音響特性に優れる。また、該フィルムを軽量化することができる。
該フィルムの20℃における引張弾性率と220℃における引張弾性率の比E220/E20は、下限については0.60以上であることが好ましく、0.61以上であることがより好ましく、0.62以上であることが更に好ましく、0.63以上であることが特に好ましく、0.64以上であることがとりわけ好ましい。E220/E20の下限がかかる範囲であれば、該フィルムは十分な耐熱性を有しており、プロセスや使用時の高温にも耐えることができる。
一方、上限については特に制限は無く、二次加工性の観点から、1.10以下であることが好ましく、1.08以下であることがより好ましく、1.06以下であることが更に好ましく、1.04以下であることが特に好ましく、1.02以下であることがとりわけ好ましい。
該フィルムの220℃における引張弾性率は、20℃の場合と同様、JIS K7244−4:1999に準拠して測定することができる。220℃における引張弾性率の値には特に制限が無いが、下限については1500MPa以上であることが好ましく、1550MPa以上であることがより好ましく、1600MPa以上であることが更に好ましく、1650MPa以上であることが特に好ましく、1700MPa以上であることがとりわけ好ましい。220℃における引張弾性率の下限がかかる範囲であれば、高温プロセスにも耐える耐熱性を有するだけでなく、高温での使用時にも音響特性が変化すること無く、高音再生性に優れる。
一方、上限については4000MPa以下であることが好ましく、3800MPa以下であることがより好ましく、3600MPa以下であることが更に好ましく、3400MPa以下であることが特に好ましく、3200MPa以下であることがとりわけ好ましい。220℃における引張弾性率の上限がかかる範囲であれば、高温での使用時にも低音再生性に優れる。
該フィルムの厚みは下限としては、3μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましく、9μm以上であることが更に好ましく、20μm以上であることが特に好ましく、50μm以上であることがとりわけ好ましい。一方、上限としては、500μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、350μm以下であることが特に好ましい。厚みが3μm以上であれば、該フィルムは十分な剛性を有しており、電気音響変換器用振動板として二次加工する際にハンドリング性に優れる。また、厚みが500μm以下であれば、省スペース化することができ、ひいては電気音響変換器を小型化にすることができる。
該フィルムは、ポリエーテルイミドサルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルサルホン以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、脂肪族ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンサルファイド、芳香族ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリアミドイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマー、またはこれらの共重合体、またはこれらの混合物を含んでも良い。これらを更に含む場合、下限としては0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、3質量%以上であることがとりわけ好ましい。上限としては10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましく、7質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることがとりわけ好ましい。
なお、該フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の各種添加剤が含まれていてもよい。
[製造方法]
該フィルムは、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって製造することができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されないが、生産性や厚み制御の観点から、押出成形、特に、Tダイ法が好ましい。
本発明の電気音響変換器用振動板フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、フィルムの構成材料を、無延伸又は延伸フィルムとして得ることができ、二次加工性の観点から、無延伸フィルムとして得ることが好ましい。なお、無延伸フィルムとは、シートの配向を制御する目的で、積極的に延伸しないフィルムであり、Tダイ法でキャストロールにより引き取る際に配向したフィルムも含まれる。
無延伸フィルムの場合、例えば、各構成材料を溶融混練した後、押出成形し、冷却することにより製造することができる。溶融混練には、単軸又は二軸押出機等の公知の混練機を用いることができる。溶融温度は、樹脂の種類や混合比率、添加剤の有無や種類に応じて適宜調整されるが、生産性等の観点から、下限については320℃以上であることが好ましく、より好ましくは340℃以上であり、360℃以上であることが更に好ましく、380℃以上であることが特に好ましい。一方、上限については450℃以下であることが好ましく、440℃以下であることがより好ましく、430℃以下であることが更に好ましく、420℃以下であることが特に好ましい。成形は、例えば、Tダイ等の金型を用いた押出成形により行うことができる。
キャストロールの温度は、下限については50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。キャストロール温度の下限がかかる範囲であれば、フィルムとの密着性に優れ、急冷によるシワが入らない、外観良好なフィルムが得られる。一方、上限については300℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましく、250℃以下であることが更に好ましく、240℃以下であることが特に好ましい。キャストロールの温度がかかる範囲であれば、フィルムがロールに貼り付き、その後離れる際に生じる貼り付き跡も生じない、外観良好なフィルムが得られる。なお、キャストロールとフィルムとの密着性を向上させるために、タッチロールを使用することが好ましい。
[用途・使用態様]
本発明のフィルムは、耐熱性に優れ、また、比弾性率が最適な範囲にあるため、電気音響変換器用振動板として好適に使用することができ、スピーカーやレシーバ、マイクロホン、イヤホン等の電気音響変換器であれば全てに適用可能である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
1.フィルムの製造
実施例及び比較例においては、以下の原料を用い、下記表1に示す配合組成のフィルムを製造した。
<ポリエーテルイミドサルホン>
・EXTEM VH1003(サビック社製、(1)の繰り返し単位、ガラス転移温度=247℃)
・EXTEM XH1015(サビック社製、(2)の繰り返し単位、ガラス転移温度=267℃)
<ポリエーテルイミド>
・Ultem 1000−1000(サビック社製、(3)の繰り返し単位、ガラス転移温度=217℃)
・Ultem CRS5001−1000(サビック社製、(4)の繰り返し単位、ガラス転移温度=227℃)
<ポリフェニルサルホン>
・Ultrason P3010N(BASF社製、(5)の繰り返し単位、ガラス転移温度=220℃)
(実施例1)
ポリエーテルイミドサルホン(EXTEM VH1003)を使用し、Φ40mm単軸押出機を使用して溶融させ、Tダイから押出し、キャストロールに密着させ、単層フィルムを得た。この時、押出機、導管、口金(Tダイ)の温度は400℃とし、キャストロールの温度は200℃とした。得られた厚み50μmの単層フィルムについて、比重、20℃及び220℃の引張弾性率を測定し、比弾性率とE220/E20を算出した。評価結果を表1に示す。
(実施例2)
ポリエーテルイミドサルホン(EXTEM VH1003)を40質量%、ポリエーテルイミド(Ultem 1000−1000)を60質量%ブレンドして使用した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例3)
ポリエーテルイミドサルホン(EXTEM VH1003)を40質量%、ポリエーテルイミド(Ultem CRS5001)を60質量%ブレンドして使用した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
ポリエーテルイミドサルホン(EXTEM VH1003)を40質量%、ポリフェニルサルホン(Ultrason P3010N)を60質量%ブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
ポリエーテルイミドサルホンとしてEXTEM VH1003の代わりに、EXTEM XH1015を使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例6)
ポリエーテルイミドサルホン(EXTEM XH1015)を40質量%、ポリエーテルイミド(Ultem 1000−1000)を60質量%ブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例7)
ポリエーテルイミドサルホン(EXTEM XH1015)を40質量%、ポリエーテルイミド(Ultem CRS5001)を60質量%ブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(実施例8)
ポリエーテルイミドサルホン(EXTEM XH1015)を40質量%、ポリフェニルサルホン(Ultrason P3010N)を60質量%ブレンドして使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
ポリエーテルイミド(Ultem 1000−1000)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例2)
ポリエーテルイミド(Ultem CRS5001)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例3)
ポリフェニルサルホン(Ultrason P3010N)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でフィルムの作製及び評価を行った。評価結果を表2に示す。
2.フィルムの評価
上記実施例及び比較例で製造した各フィルムは、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。ここで、フィルムの「縦」とは、Tダイからフィルム状の成形品が押し出されてくる方向を指し、また、フィルム面内でこれに直交する方向を「横」とする。
(1)引張弾性率
厚み50μmの各フィルムについて、JIS K7244−4:1999に準拠して、「粘弾性スペクトロメーターDVA−200」(アイディー計測制御株式会社製)を用い、引張速度5mm/minの条件で測定した。横方向の20℃及び220℃における貯蔵弾性率の値を引張弾性率とした。
(2)比重
厚み50μmの各フィルムについて、JIS K7112:1999に準拠して、「AccuPyc II 1340」(micromeritics社製)を用い、20℃における比重を測定した。
(3)比弾性率
20℃における引張弾性率と比重を用い、下記計算式によって20℃における比弾性率を算出して、下記基準に基づいて評価した。
比弾性率(m/s)=引張弾性率(MPa)/比重(g/cm
(4)20℃及び220℃における引張弾性率の比E220/E20
20℃における引張弾性率(E20)と220℃における引張弾性率(E220)を用いてE220/E20を算出して、下記基準に基づいて評価した。
Figure 2020145607
Figure 2020145607
実施例1〜8で得られたフィルムはポリエーテルイミドサルホンを含んでいるため、いずれも比弾性率が1.40×10/s以上、3.10×10/s以下であり、音響特性に優れると推察される。また、E220/E20が0.60以上1.10以下であるため、耐熱性や二次加工性にも優れる。
一方、比較例1は(3)の構造を有するポリエーテルイミドを単独で、比較例2は(4)の構造を有するポリエーテルイミドを単独でそれぞれ使用しており、いずれもE220/E20が0.60を下回るため、220℃といった高温環境下に晒された際の耐熱性は十分とは言えない。
比較例3は(5)の構造を有するポリフェニルサルホンを単独で使用しており、耐熱性には優れるものの、比弾性率が低く、特に大型のスピーカーにおいては高音の音響特性を十分に確保しにくい可能性がある。

Claims (5)

  1. ポリエーテルイミドサルホンを含む樹脂組成物からなる電気音響変換器用振動板フィルム。
  2. 前記樹脂組成物にポリエーテルイミドまたはポリフェニルサルホンが含まれる請求項1に記載の電気音響変換器用振動板フィルム。
  3. 20℃における比弾性率が1.40×10/s以上、3.10×10/s以下である請求項1または2に記載の電気音響変換器用振動板フィルム。
  4. 20℃における引張弾性率(E20)と220℃における引張弾性率(E220)との比(E220/E20)が0.60以上、1.10以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気音響変換器用振動板フィルム。
  5. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気音響変換器用振動板フィルムを成形してなる電気音響変換器用振動板。
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