以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるスピーカの振動板用フィルム1の製造方法は、図1に示すように、所定のポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とからなる成形材料2を溶融混練により調製し、この成形材料2を用いて溶融押出成形機10のTダイス13から振動板用フィルム1を連続的に押出成形し、この押出成形した振動板用フィルム1を圧着ロール16、冷却ロール17、及び巻取管19に順次巻架するとともに、振動板用フィルム1を圧着ロール16と冷却ロール17とに挟持させて冷却することにより、振動板用フィルム1を製造するようにしている。
振動板用フィルム1の成形材料2は、化学式〔化1〕で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化2〕で表される繰り返し単位を有し、ガラス転移点が200℃以上のポリエーテルイミド樹脂とが組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂5〜60質量%とポリエーテルイミド樹脂95〜40質量%とからなる混合物の溶融混練により、調製される。
係る成形材料2には、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂等のポリイミド樹脂、ポリアミド6T(PA6T)樹脂、変性ポリアミド6T(変性PA6T)樹脂、ポリアミド9T(PA9T)樹脂、ポリアミド10T(PA10T)樹脂、ポリアミド11T(PA11T)樹脂、ポリアミド6(PA6)樹脂、ポリアミド66(PA66)樹脂、ポリアミド46(PA46)樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールケトン樹脂、ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルホン(PPSU)樹脂等のポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン樹脂等のポリアリーレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー(LCP)等を添加することができる。
化学式〔化1〕で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化2〕で表される繰り返し単位を有し、ガラス転移点が200℃以上のポリエーテルイミド樹脂の溶融混練物からなる成形材料2には、本発明の特性を損なわない範囲で上記樹脂の他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機化合物、有機化合物等が選択的に添加される。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、特に限定されるものではないが、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有する樹脂である。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点は、通常320〜360℃であり、好ましくは335〜345℃である。このポリエーテルエーテルケトン樹脂における化学式〔化1〕のnは、機械的特性の観点から10以上が好ましく、20以上がより好ましい。ポリエーテルエーテルケトン樹脂は、化学式〔化1〕の繰り返し単位のみからなるホモポリマーであっても良いし、化学式〔化1〕以外の繰り返し単位を有していても良い。但し、ポリエーテルエーテルケトン樹脂中、化学式〔化1〕の化学構造の割合は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂100モル%に対し、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%が最適である。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、ビクトレック社製の製品名:ビクトレックス ピークシリーズ、ダイセル・エボニック社製の製品名:ベスタキープシリーズ、ソルベイスペシャルティポリマーズ社製の品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトンシリーズがあげられる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂の製造方法としては、例えば特開昭50−27897公報、特開昭5l−119797号公報、特開昭52−38000号公報、特開昭54−90296号公報、特公昭55−23574号公報、特公昭56−2091号公報等に記載された方法が用いられる。このポリエーテルエーテルケトン樹脂が、本発明の効果を損なわない範囲で他の共重合可能な単量体とのブロック共重合体、ランダム共重合体、あるいは変性体も使用可能である。
ガラス転移点が200℃以上のポリエーテルイミド樹脂については、化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂が好適に使用される。
化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂とは、相溶性が非常に良好であることが知られている(特許第4201965号公報参照)。これに対し、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化3〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂とは、相溶性に劣ることが知られている(特許第4201965号公報参照)。
化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂との相溶性が良好なことは、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂との溶融混練物の動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)のピーク温度が140〜250℃の間にただ1つのみ観察されることで知られている(特許第4201965号公報参照)。損失正接のピーク温度が1つになることは、すなわち化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂の溶融混練物のガラス転移点も単一となり、その溶融混練物のガラス転移点は、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂のガラス転移点以上、化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点以下の範囲内に表れる(特表昭61−50023号参照)。したがって、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂に、化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を添加すれば、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂より耐熱性に優れる成形材料2を得ることができる。
化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化3〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂との溶融混練物は相溶性に劣るため、その溶融混練物の動的粘弾性測定より得られる損失正接のピーク温度が、140〜250℃の間に混合したポリエーテルエーテルケトン樹脂成分とポリエーテルイミド樹脂成分に由来する、少なくとも2つ観察されることが知られている(特許第4201965号公報参照)。
損失正接が2つ観察されることは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂成分とポリエーテルイミド樹脂成分に由来するガラス転移点も2つ観察されるため、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とからなる溶融混練物は、化学式〔化1〕の繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂より耐熱性を高めることができない。また、相溶性に劣るため、フィルムの機械的特性が低下し、フィルムの薄肉成形性に劣ることとなる。
化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、ULTEM 1010−1000−NB〔SABICイノベーティブプラスチック社製 品名〕、ULTEM 9011−1000−NB〔同〕等があげられる。化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、通常、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物〕とm−フェニレンジアミンとの重縮合物としての公知の製造方法があげられる。
化学式〔化3〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、ULTEM CRS5001−1000−NB〔SABICイノベーティブプラスチックス社 品名〕があげられる。化学式〔化3〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂の製造方法としては、4,4’−[イソプロピリデンビス(p−フェニレンオキシ)ジフタル酸二無水物〕とp−フェニレンジアミンとの重縮合物としての公知の製造方法があげられる。
化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で化学式〔化3〕の繰り返し単位を有するポリエーテルイミド樹脂を添加することができる。さらに、アミド基、エステル基、スルホニル基、シロキサン基等の他の共重合可能な他の単量体とのブロック共重合体、ランダム共重合体、変性体を添加することができる。これには、例えばポリエーテルイミドサルホン共重合体であるガラス転移点が238℃のULTEM XH6050−1000〔SABICイノベーティブプラスチックス社 品名〕、ポリエーテルイミド/シロキサンコポリマーであるULTEM STM1700−1000〔SABICイノベーティブプラスチックス社 品名〕等が該当する。
化学式〔化1〕で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化2〕で表される繰り返し単位を有し、ガラス転移点が200℃以上のポリエーテルイミド樹脂とは、組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂5〜60質量%とポリエーテルイミド樹脂95〜40質量%となる。これは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が60質量%を越えたり、ポリエーテルイミド樹脂が40質量%未満の場合は、スピーカの振動板用フィルム1の20℃における損失正接が0.0150未満となり、音質に問題を生じ、しかも、耐熱性が低下してしまうからである。一方、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が5質量%未満で、ポリエーテルイミド樹脂が95質量%を越える場合には、機械的特性(引張強度)が低下し、外部出力を大きくすると破れてしまう等、振動板としての耐久性に問題を生じるからである。
スピーカの振動板用フィルム1を製造する場合、化学式〔化1〕で表される繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂と、化学式〔化2〕の繰り返し単位を有するガラス転移点が200℃以上のポリエーテルイミド樹脂とを押出成形機等により、所定の時間溶融混練して成形材料2を調製し、この成形材料2によりスピーカの振動板用の帯形のフィルムを連続的に溶融押出成形する。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との調製方法は、(1)ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを室温下で攪拌混合して溶融混練し、成形材料2を調製する方法、(2)ポリエーテルエーテルケトン樹脂にポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合することなく、溶融したポリエーテルエーテルケトン樹脂中にポリエーテルイミド樹脂を添加し、これらを溶融混練して成形材料2を調製する、あるいは溶融したポリエーテルイミド樹脂中にポリエーテルエーテルケトン樹脂を添加し、これらを溶融混練して成形材料2を調製する方法があげられる。これらの方法は、いずれをも採用することができるが、分散性や作業性の観点から(1)の方法が好ましい。なお、本明細書において、「常温」とは、0〜50℃程度の温度範囲を指す。
ここで、(1)の調製方法について説明すると、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との攪拌混合には、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、V型混合機、ナウターミキサー、リボンブレンダー、万能攪拌ミキサー等が使用される。また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とは、上記攪拌混合物をミキシングロール、加圧ニーダー、単軸押出成形機、二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等の多軸押出成形機等からなる溶融混練機で溶融混練分散させることにより調製することができる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを調製する場合の温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点、あるいはポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点〜450℃、好ましくは350〜430℃が良い。これは、溶融混練機の温度が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点未満あるいはポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点未満の場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂を溶融混練により均一分散することができないからである。また、450℃を越える場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂あるいはポリエーテルイミド樹脂が分解するため、好ましくないという理由に基づく。
なお、ポリエーテルエーテルケトン樹脂あるいはポリエーテルイミド樹脂のどちらか一方の樹脂を所定量以上に分散させ、マスターバッチ化することもできる。
次に、(2)の調製方法について説明すると、ポリエーテルエーテルケトン樹脂あるいはポリエーテルミド樹脂のどちらか一方の樹脂をミキシングロール、加圧ニーダー、単軸押出成形機、二軸押出成形機、三軸押出成形機、四軸押出成形機、八軸押出成形機等の多軸押出成形機等からなる溶融混練機で溶融した後、溶融させていない他方の樹脂を添加して溶融混練分散させることにより、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とからなる成形材料2を調製する。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを調製する場合の温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点あるいはポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点〜450℃、好ましくは350〜430℃が良い。これは、溶融混練機の温度が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点未満あるいはポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点未満の場合は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂を溶融混練により均一分散することができないからである。また、450℃を越える場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂あるいはポリエーテルイミド樹脂が分解するため、好ましくないという理由に基づく。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とからなる成形材料2は、ストランド状、シート状等の形状に押出された後、粉砕機あるいは裁断機で粉状、顆粒状、ペレット状等のフィルム成形加工に適した形態にされて使用される。
なお、ポリエーテルエーテルケトン樹脂あるいはポリエーテルイミド樹脂のどちらか一方の樹脂を所定量以上に分散させ、マスターバッチ化することもできる。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とからなる成形材料2を用い、スピーカの振動板用フィルム1を製造する場合、この成形材料2からなるスピーカの振動板用フィルム1は、溶融押出成形法、カレンダー成形法、又はキャスティング成形法等の公知の製造法を採用することができる。しかしながら、振動板用フィルム1の厚さ精度、生産性、ハンドリング性の向上、設備の簡略化の観点から、溶融押出成形法により連続的に押出成形することが好ましい。
ここで、溶融押出成形法とは図1に示すように、溶融押出成形機10を使用して成形材料2を溶融混練し、溶融押出成形機10の先端部のTダイス13からスピーカの振動板用フィルム1を連続的に押し出して製造する方法である。
溶融押出成形機10は、例えば単軸押出成形機や二軸押出成形機等からなり、投入された成形材料2を溶融混練するよう機能する。この溶融押出成形機10の上部後方には、成形材料2用の原料投入口11が設置され、この原料投入口11には、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、窒素ガス等の不活性ガス(図1の矢印参照)を必要に応じて供給する不活性ガス供給管12が接続されており、この不活性ガス供給管12による不活性ガスの流入により、成形材料2の酸化劣化や酸素架橋が有効に防止される。
溶融押出成形機10の溶融混練時の温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点あるいはポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点〜450℃、好ましくは360〜430℃に調整される。これは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点未満あるいはポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点未満の場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂を溶融混練により均一分散することができないからである。逆に、450℃を越える場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂あるいはポリエーテルイミド樹脂が分解するからである。
Tダイス13は、溶融押出成形機10の先端部に連結管14を介して装着され、帯形のスピーカの振動板用フィルム1を連続的に下方に押し出すよう機能する。このTダイス13の上流には、連結管14に装着されたギアポンプ15が位置し、このギアポンプ15が成形材料2を一定速度で、かつ高精度にTダイス13に移送する。
Tダイス13の押出時の温度は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点あるいはポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点〜450℃、好ましくは360℃〜430℃に調整される。これは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の融点未満あるいはポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点未満の場合は、帯形のスピーカの振動板用フィルム1を連続的に押出成形することができないからである。逆に、450℃を越える場合には、ポリエーテルエーテルケトン樹脂あるいはポリエーテルイミド樹脂が分解するからである。
圧着ロール16は、冷却ロール17を挟持するようTダイス13の下方に回転可能に一対が軸支される。この一対の圧着ロール16のうち、下流の圧着ロール16の下流には、振動板用フィルム1を巻き取る巻取機18の巻取管19が回転可能に設置され、圧着ロール16と巻取機18の巻取管19との間には、振動板用フィルム1の側部にスリットを形成するスリット刃20が昇降可能に配置されており、このスリット刃20と巻取機18の巻取管19との間には、振動板用フィルム1にテンションを作用させて円滑に巻き取るための回転可能なテンションロール21が必要数軸支される。
各圧着ロール16の周面には、振動板用フィルム1と冷却ロール17との密着性を向上させる観点から、少なくとも天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ノルボルネンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム層が必要に応じて被覆形成され、このゴム層には、シリカやアルミナ等の無機化合物が選択的に添加される。これらの中では、耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの採用が好ましい。
圧着ロール16としては、表面が金属の金属弾性ロール、金属ベルトが必要に応じて使用され、この金属弾性ロールが使用される場合には、表面が平滑性に優れる振動板用フィルム1の成形が可能となる。この金属弾性ロールの具体例としては、例えば金属スリーブロール、エアーロール〔ディムコ社製 製品名〕、UFロール〔日立造船社製 製品名〕が該当する。
このような圧着ロール16は、270℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは50℃〜230℃の温度に調整され、スピーカの振動板用フィルム1に摺接してこれを冷却ロール17に圧接する。圧着ロール16の温度が係る範囲なのは、圧着ロール16の温度が270℃を越える場合には、振動板用フィルム1の製造中に振動板用フィルム1が圧着ロール16に貼り付き、スピーカの振動板用フィルム1が破断するおそれがあるからである。逆に、50℃未満の場合には、圧着ロール16が結露するため好ましくないからである。圧着ロール16の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーター、誘電加熱ロール等があげられる。
冷却ロール17は、例えば、圧着ロール16よりも拡径の金属ロールからなり、Tダイス13の下方に回転可能に軸支されて押し出されたスピーカの振動板用フィルム1を圧着ロール16との間に挟持し、圧着ロール16と共に振動板用フィルム1を冷却しながらその厚さを所定の範囲内に制御するよう機能する。この冷却ロール17は、圧着ロール16と同様、270℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは50℃〜230℃の温度に調整され、振動板用フィルム1に摺接する。これは、冷却ロール17の温度が270℃を越える場合には、振動板用フィルム1の製造中に振動板用フィルム1が冷却ロール17に貼り付き、破断するおそれがあるからである。また、50℃未満の場合は、冷却ロール17が結露するため、好ましくないからである。冷却ロール17の温度調整や冷却方法は、空気、水、オイル等の熱媒体による方法、あるいは電気ヒーター、誘電加熱等があげられる。
上記において、スピーカの振動板用フィルム1を製造する場合には図1に示すように、溶融押出成形機10の原料投入口11に成形材料2を図1に矢印で示す不活性ガスを供給しながら投入し、溶融押出成形機10により成形材料2を加熱・加圧状態で溶融混練し、Tダイス13から帯形の振動板用フィルム1を連続的に押し出す。この際、成形材料2の溶融混練前における含水率は、2000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下に調整される。これは、成形材料2の溶融混練前における含水率が2000ppmを越える場合には、振動板用フィルム1が発泡するおそれという理由に基づく。
振動板用フィルム1を押し出したら、一対の圧着ロール16、冷却ロール17、テンションロール21、巻取機18の巻取管19に順次巻架するとともに、振動板用フィルム1を冷却ロール17により冷却し、振動板用フィルム1の両側部をスリット刃20でそれぞれカットし、巻取管19に順次巻き取れば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との溶融混練物からなる振動板用フィルム1を製造することができる。
振動板用フィルム1の表面には、本発明の効果を失わない範囲で微細な凹凸を形成し、振動板用フィルム1表面の摩擦係数を低下させることができる。このように振動板用フィルム1の表面の摩擦係数を低下させれば、振動板用フィルム1同士のブロッキングを防止し、振動板用フィルム1の損傷を防止することができる。
係る微細な凹凸の形成方法としては、例えば(1)ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂の溶融混練物を溶融押出成形機10により溶融混練し、この溶融混練したポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との成形材料2をTダイス13から微細な凹凸を周面に有する冷却ロール17上に吐き出して密着させ、振動板用フィルム1の成形時に微細な凹凸を同時に形成する方法、(2)振動板用フィルム1を製造した後、微細な凹凸を周面に有する冷却ロール17上に密着させ、微細な凹凸を形成する方法がある。いずれの方法をも採用することができるが、設備の簡略化の観点からすると、(1)の方法が好ましい。
冷却後の振動板用フィルム1の20℃における損失正接は、0.0150以上、好ましくは0.0160以上、より好ましくは0.0160〜0.0310が最適である。これは、損失正接が、0.0150以上であれば、良好な音質特性を得ることができるからである。
冷却後の振動板用フィルム1の耐熱性は、貯蔵弾性率の第一変曲点温度で表すことができる(この点については、図2参照)。貯蔵弾性率の第一変曲点温度は175℃以上、好ましくは175〜220℃、より好ましくは180〜220℃である。これは、貯蔵弾性率の第一変曲点温度が175℃未満の場合は、振動板用フィルム1が耐熱性に劣るため、振動板用フィルム1を成形して得られる振動板がボイスコイルで発生する熱により、変形又は破損するからである。
冷却後の振動板用フィルム1の機械的特性は、引張強度が100N/mm2以上、好ましくは110N/mm2以上、より好ましくは110〜131N/mm2が良い。これは、振動板用フィルム1の引張強度が100N/mm2未満の場合には、振動板用フィルム1の強度が小さいため、振動板用フィルム1を成形して得られる振動板が外部出力を大きくすると、破れてしまう等の耐久性に問題を生じるからである。
冷却後の振動板用フィルム1の厚さは、2〜150μm、好ましくは2〜125μm、より好ましくは3〜100μmが最適である。これは、振動板用フィルム1の厚さが2μm未満の場合には、フィルムの強度が著しく低下するので、振動板用フィルム1が成形中に破断してしまう等により、振動板用フィルム1の成形が困難になるからである。逆に、振動板用フィルム1の厚さが150μmを越える場合には、振動板への成形精度が低下するからである。この振動板用フィルム1の厚さは、各種のマイクロメータにより、測定することができる。
振動板用フィルム1の厚さ公差は、平均値±5%の範囲内、好ましくは平均値±3%の範囲内が良い。これは、振動板用フィルム1の厚さ公差が平均値±5%の範囲を外れると、音質にバラツキが生じるため好ましくないからである。振動板用フィルム1の厚さ公差は、所定の式により求めることができる。
振動板用フィルム1の結晶化度は相対結晶化度で表すことができ、この相対結晶化度は、〔式1〕から算出することができる。この振動板用フィルム1の相対結晶化度については、示差走査熱量計を使用して10℃/分の昇温速度で加熱し、このときに得られる結晶融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から以下の式で算出することができる。
〔式1〕
相対結晶化度(%)={1−(ΔHc/ΔHm)}×100
ここで、ΔHcは振動板用フィルム1の10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)を表し、ΔHmは振動板用フィルム1の10℃/分の昇温条件下での結晶融解ピークの熱量(J/g)を表す。
振動板用フィルム1の相対結晶化度は、振動板用フィルム1の使用方法により適宜選択することができる。例えば、振動板用フィルム1から振動板をプレス成形、真空成形、圧空成形等の二次加工を行う場合は、70%以下、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下が良い。これは、振動板用フィルム1の相対結晶化度が、70%を越える場合には、プレス成形、真空成形、圧空成形等の二次加工法で成形する際、二次加工性の低下を招くからである。
スピーカの振動板用フィルム1の結晶化度の調製方法としては、例えば(1)ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂の溶融混練物を溶融押出成形機10により溶融混練し、この溶融混練したポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂との溶融混練物をTダイス13から270℃以下、好ましくは230℃以下、より好ましくは50℃〜230℃の温度に調整された冷却ロール17上に吐き出して密着させ、振動板用フィルム1の成形と同時に結晶化度を調整する方法、(2)振動板用フィルム1を製造した後、270℃以下、好ましくは230℃以下、より好ましくは50℃〜230℃の温度に調整された冷却ロール17上に密着させ、結晶化度を調整する方法がある。いずれの方法をも採用することができるが、設備の簡略化の観点からすると、(1)の方法が良い。
なお、冷却ロール17の温度が270℃を越える場合には、振動板用フィルム1が冷却ロール17に貼り付き、スピーカの振動板用フィルム1が破断するおそれがあるので、留意すべきである。また、50℃未満の場合、冷却ロール17が結露して好ましくない事態が生じるので、留意すべきである。
上記によれば、スピーカの振動板用フィルム1がポリエーテルエーテルケトン樹脂と、ポリエーテルイミド樹脂との溶融混合物よりなるので、軽量で優れた機械的特性と適度な引張弾性率を有し、耐熱性、及び音質特性に優れる振動板を得ることが可能となる。
なお、上記実施形態における振動板用フィルム1の表面には、本発明の効果を失わない範囲で各種の帯電防止剤、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の各種エラストマーを塗布したり、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅等の各種金属を蒸着させても良い。
以下、本発明に係るスピーカの振動板用フィルムの製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
実施例1
先ず、ポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 製品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトン グレード:KT−851NL SP(以下、「KT−851NL SP」と略す)〕と、ポリエーテルイミド樹脂〔SABIC社製 製品名:ULTEM、9011−1000−NB、ガラス転移点:210℃(以下、「9011−1000」と略す)〕とが組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂:55質量%、ポリエーテルイミド樹脂:45質量%となるようにタンブラーミキサーに投入し、このタンブラーミキサーを23℃、1時間攪拌混合させ、攪拌混合物を調製した。ポリエーテルイミド樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジー社製:製品名 高感度型示差走査熱量計 X−DSC7000〕を用い、JIS K7121に準じて、昇温速度10℃/分の条件で測定した。このガラス転移点の測定は、以下の実施例や比較例についても同様とした。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、この攪拌混合物を真空ポンプ付きの二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度360〜380℃、ダイス温度380℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温380℃の条件下で溶融混練した。
次いで、この成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。
この際、成形材料の含水率を、微量水分測定装置〔三菱化学社製 製品名CA−100型〕を用い、カールフィッシャー滴定法により測定した。測定の結果、成形材料の乾燥時の含水率は、249ppmであった。この成形材料の含水率の測定は、以下の実施例や比較例についても同様とした。また、単軸押出成形機は、L/D=32、圧縮比:2.5、スクリュー:フルフライトスクリュータイプとした。この単軸押出成形機のシリンダー温度は360〜380℃、Tダイスの温度は385℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は380℃に調整した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ375℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうして振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、連続したスピーカの振動板用フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmのスピーカの振動板用フィルムを製造した。この際、スピーカの振動板用フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた200℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。
ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは200℃に加熱し、この金属ロールに1.8秒間接触させた。この金属ロールへの接触時間は、以下の〔式2〕から算出することができる。
〔式2〕
接触時間(秒)=〔金属ロールとの接触距離(m)〕/〔金属ロールの回転速度(m/秒)〕
振動板用フィルムが得られたら、この振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表1に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
・振動板用フィルムのフィルム厚
フィルム厚が2〜10μmの振動板用フィルムの厚さについては、接触式の厚さ計〔Mahr社製:製品名 電子マイクロメータミロトン1240〕を使用して測定した。これに対し、フィルム厚が10μmを超え〜150μmの振動板用フィルムの厚さについては、マイクロメータ〔ミツトヨ社製 製品名:クーラントプルーフマイクロメータ 符号MDC−25PJ〕を使用して測定した。
測定に際しては、振動板用フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)が交わる所定位置の厚みを100箇所測定し、その平均値をフィルム厚とした。押出方向の測定箇所は、振動板用フィルムの先端部から100mm間隔で100mm、200mm、300mm、400mm、500mmの位置とした。
これに対し、幅方向の測定箇所は、振動板用フィルムの左端部から25mm、次いで30mm間隔で55mm、85mm、115mm、145mm、175mm、205mm、235mm、265mm、295mm、325mm、355mm、385mm、415mm、445mm、475mm、505mm、535mm、565mm、595mmの箇所とした。
・振動板用フィルムのフィルム厚公差
振動板用フィルムのフィルム厚公差については、以下の式から求めた。
フィルム厚公差[%]={(MAX又はMIN)−(AVE)}/(AVE)×100
ここで、MAX:フィルム厚の最大値
MIN:フィルム厚の最小値
AVE:フィルム厚の平均値
求めたフィルム厚公差が±3%以内の場合をA、±3〜5%以内の場合をB、±5%を超える場合をNGとした。
・振動板用フィルムの比重
振動板用フィルムの比重に関しては、JIS K7112(A法)の測定方法に準拠し、温度23℃の条件により測定した。
・振動板用フィルムの相対結晶化度
振動板用フィルムの相対結晶化度については、振動板用フィルムから測定試料10mgを秤量し、示差走査熱量計〔エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製 製品名:EXSTAR7000シリーズ X−DSC7000〕を使用して10℃/分の昇温速度で加熱し、このときに得られる結晶融解ピークの熱量(J/g)、再結晶化ピークの熱量(J/g)から以下の式を用いて算出した。
相対結晶化度(%)={1−(ΔHc/ΔHm)}×100
ここで、ΔHcは振動板用フィルムの10℃/分の昇温条件下での再結晶化ピークの熱量(J/g)を表し、ΔHmは振動板用フィルムの10℃/分の昇温条件下での結晶融解ピークの熱量(J/g)を表す。
・振動板用フィルムの機械的特性
振動板用フィルムの機械的特性は、引張強度により評価した。
引張強度は、JIS K7127(試験片:タイプ1B)に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃の条件で測定した。この引張強度はフィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定し、最大強度をもって引張強度した。
・振動板用フィルムの引張弾性率
振動板用フィルム引張弾性率は、JIS K7127(試験片:タイプ1B)に準拠し、引張速度50mm/分、温度23℃の条件で測定した。この引張弾性率は、フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。
・振動板用フィルムの耐熱性
振動板用フィルムの耐熱性については、貯蔵弾性率(E’)の第一変曲点温度により評価した。この振動板用フィルムの貯蔵弾性率は、振動板用フィルムの押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。
具体的には、振動板用フィルムを押出方向の貯蔵弾性率を測定する場合は押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の貯蔵弾性率を測定する場合は押出方向6mm×幅60mmの大きさに切り出して測定した。貯蔵弾性率の測定に際しては、粘弾性スペクトロメータ〔ティー・エス・インスツルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2〕を用いた引張モードにより、周波数3Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲−60〜360℃、チェック間21mmの条件で測定した。
第一変曲点温度は、図2に示すように、貯蔵弾性率の変化曲線に対する2つの直線部を延長した交点の温度とする。貯蔵弾性率の最初に急激に低下する前の直線部を高温側に延長して、1本目の直線(a)を引く。貯蔵弾性率が最初に急激に低下した後の中間線の直線部を低温側に延長して2本目の直線(b)を引く。両線(a)、(b)の交点における垂直線を横軸の温度軸に引き、その温度を第一変曲点温度として求めた。
・振動板用フィルムの損失正接
振動板用フィルムの損失正接は、押出方向と幅方向(押出方向の直角方向)について測定した。具体的には、振動板用フィルムを押出方向の損失正接を測定する場合は押出方向60mm×幅方向6mm、幅方向の損失正接を測定する場合は押出方向6mm×幅方向60mmの大きさに切り出し測定した。損失正接の測定に際しては、粘弾性スペクトメータ〔ティー・エス・インスルメント・ジャパン社製 製品名:RSA−G2〕を用いた引張モードにより、周波数3Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/分、測定温度範囲-60〜360℃、チャック間21mmの条件で測定し、20℃の損失正接を求めた。
実施例2
先ず、実施例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とが組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂:50質量%、ポリエーテルイミド樹脂:50質量%となるようにタンブラーミキサーに投入し、以下、実施例1と同様の方法により、攪拌混合物を調製した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様の二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度360〜380℃、ダイス温度380℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温度380℃の条件下で溶融混練した。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の乾燥時の含水率は、255ppmであった。また、単軸押出成形機は、実施例1と同様の押出成形機を使用した。この単軸押出成形機のシリンダー温度は360〜380℃、Tダイスの温度は385℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は380℃に調整した。
溶融した成形材料の温度について、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したとこと374℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうして振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、実施例1と同様の方法により両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの帯形のフィルムを製造した。この際、帯形のフィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた130℃に加熱した冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは130℃に加熱し、この金属ロールに10.8秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表1に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
実施例3
実施例2で作製したポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂からなる成形材料を使用して実施例2と同様の装置を使用し、同様の条件で振動板用フィルムを帯状に押出成形した。
振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、実施例1と同様の方法により両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmの帯形のフィルムを製造した。この際、帯形のフィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた210℃に加熱した冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは210℃に加熱し、この金属ロールに14.2秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表1に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
実施例4
先ず、ポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ダイセル・エボニック社製、製品名:ベタキープ、グレード名:3300G(以下、「3300G」と略す)〕と、ポリエーテルイミド樹脂〔SABIC社製 製品名:ULTEM:1010−1000−NB、ガラス転移点:211℃(以下、「1010−1000」と略す)〕とが組成質量比率で:40質量%、ポリエーテルイミド樹脂が60質量%となるようにタンブラーミキーに投入し、以下、実施例1と同様の方法により、攪拌混合物を調製した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様の二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度360〜3800℃、ダイス温度380℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温度380℃の条件下で溶融混練した。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の乾燥時の含水率は、238ppmであった。また、単軸押出成形機は、実施例1と同様の押出成形機を使用した。この単軸押出成形機のシリンダー温度は360〜380℃、Tダイスの温度は380℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は380℃に調整した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ373℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうして振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、実施例1と同様の方法により両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmのスピーカの振動板用フィルムを製造した。この際、スピーカの振動板用フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた210℃に加熱した冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは210℃に加熱し、この金属ロールに14.3秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表1に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
実施例5
先ず、ポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 品名:キータスパイアポリエーテルエーテルケトン グレード:KT−820NT(以下、「KT−820NT」と略す)〕と、実施例4で使用したポリエーテルイミド樹脂とが組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂:30質量%、ポリエーテルイミド樹脂:70質量%となるようにタンブラーミキサーに投入し、以下、実施例1と同様の方法により、攪拌混合物を調製した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様の二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度350〜370℃、ダイス温度370℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温度370℃の条件下で溶融混練した。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の乾燥時の含水率は、241ppmであった。また、単軸押出成形機は、実施例1と同様の押出成形機を使用した。この単軸押出成形機のシリンダー温度は350〜370℃、Tダイスの温度は370℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は375℃に調整した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ370℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうして振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、連続したスピーカの振動板用フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmのスピーカの振動板用フィルムを製造した。この際、スピーカの振動板用フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた140℃に加熱した冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは140℃に加熱し、この金属ロールに5.3秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表1に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
実施例6
先ず、ポリエーテルエーテルケトン樹脂〔ビクトレックス社製 製品名:VictrexPEEK381G(以下、「381G」と略す)〕と、実施例4と同様のポリエーテルイミド樹脂とが、組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂:20質量%、ポリエーテルイミド樹脂:80質量%となるようにタンブラーミキサーに投入し、以下、実施例1と同様の方法により攪拌混合物を調製した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様の二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度350〜370℃、ダイス温度370℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温度370℃の条件下で溶融混練した。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の乾燥時の含水率は、267ppmであった。また、単軸押出成形機は、実施例1と同様の押出成形機を使用した。この単軸押出成形機の温度は350〜370℃、Tダイスの温度は375℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は370℃に調整した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ367℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうして振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、連続したスピーカの振動板用フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmのスピーカの振動板用フィルムを製造した。この際、スピーカの振動板用フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた150℃に加熱した冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは150℃に加熱し、この金属ロールに10.4秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表1に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
実施例7
先ず、実施例1で使用したポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とが、組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂:10質量%、ポリエーテルイミド樹脂:90質量%となるようにタンブラーミキサーに投入し、以下、実施例1と同様の方法により攪拌混合物を調製した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様の二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度350〜370℃、ダイス温度370℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温度370℃の条件下で溶融混練した。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の乾燥時の含水率は、229ppmであった。また、単軸押出成形機は、実施例1と同様の押出成形機を使用した。この単軸押出成形機の温度は350〜370℃、Tダイスの温度は375℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は370℃に調整した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ365℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうして振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、連続したスピーカの振動板用フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmのスピーカの振動板用フィルムを製造した。この際、スピーカの振動板用フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた130℃に加熱した冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは130℃に加熱し、この金属ロールに0.6秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表1に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
比較例1
先ず、実施例1で使用した同様のポリエーテルエーテルケトン樹脂と、実施例1で使用したのと同様のポリエーテルイミド樹脂とが、組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂:70質量%、ポリエーテルイミド樹脂:30質量%となるようにタンブラーミキサーに投入し、以下、実施例1と同様の方法により攪拌混合物を調製した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様の二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度370〜390℃、ダイス温度390℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温度390℃の条件下で溶融混練した。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の乾燥時の含水率は、261ppmであった。また、単軸押出成形機は、実施例1と同様の押出成形機を使用した。この単軸押出成形機の温度は380〜390℃、Tダイスの温度は390℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は395℃に調整した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ385℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうして振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、連続したスピーカの振動板用フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmのスピーカの振動板用フィルムを製造した。この際、スピーカの振動板用フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた210℃の冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは210℃に加熱し、この金属ロールに1.9秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表2に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
比較例2
先ず、実施例6で使用した同様のポリエーテルエーテルケトン樹脂と、実施例4で使用したのと同様のポリエーテルイミド樹脂とが、組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂:70質量%、ポリエーテルイミド樹脂:30質量%となるようにタンブラーミキサーに投入し、以下、実施例1と同様の方法により攪拌混合物を調製した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様の二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度370〜390℃、ダイス温度390℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温度390℃の条件下で溶融混練した。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の乾燥時の含水率は、233ppmであった。また、単軸押出成形機は、実施例1と同様の押出成形機を使用した。この単軸押出成形機の温度は370〜390℃、Tダイスの温度は395℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は390℃に調整した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ386℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
こうして振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、連続したスピーカの振動板用フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmのスピーカの振動板用フィルムを製造した。この際、スピーカの振動板用フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた140℃に加熱した冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは140℃に加熱し、この金属ロールに14.3秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表2に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
比較例3
先ず、実施例1で使用した同様のポリエーテルエーテルケトン樹脂と、ポリエーテルイミド樹脂とが、組成質量比率でポリエーテルエーテルケトン樹脂:1質量%、ポリエーテルイミド樹脂:99質量%となるようにタンブラーミキサーに投入し、以下、実施例1と同様の方法により攪拌混合物を調製した。
ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂とを攪拌混合し、攪拌混合物を調製したら、実施例1と同様の二軸押出成形機に供給し、減圧下で溶融混練し、二軸押出成形機の先端部のダイスから棒状に押し出して水冷後カットし、ペレット形の中間体である成形材料を調製した。攪拌混合物は、シリンダー温度340〜360℃、ダイス温度360℃、二軸押出成形機とダイスとを連結する連結管の温度360℃の条件下で溶融混練した。
次いで、成形材料を150℃に加熱した除湿乾燥機に12時間乾燥させ、この乾燥した成形材料を幅900mmのTダイスを備えたφ40mmの単軸押出成形機にセットして溶融混練し、この溶融混練した成形材料を単軸押出成形機のTダイスから連続的に押し出して振動板用フィルムを帯形に押出成形した。成形材料の乾燥時の含水率は、238ppmであった。また、単軸押出成形機は、実施例1と同様の押出成形機を使用した。この単軸押出成形機の温度は340〜360℃、Tダイスの温度は365℃、単軸押出成形機とTダイスとを連結する連結管の温度は360℃に調整した。
溶融した成形材料の温度については、Tダイス入口の樹脂温度を測定することとし、測定したところ355℃であった。また、単軸押出成形機に成形材料を投入する際には、窒素ガス18L/分を供給した。
振動板用フィルムを帯形に押出成形したら、連続したスピーカの振動板用フィルムの両側部をスリット刃で裁断して巻取機の巻取管に順次巻き取り、長さ100m、幅620mmのスピーカの振動板用フィルムを製造した。この際、スピーカの振動板用フィルムは、シリコーンゴム製の一対の圧着ロール、周面に凹凸を備えた210℃に加熱した冷却ロールである金属ロール、及びこれらの下流に位置する6インチの巻取管に順次巻架し、圧着ロールと金属ロールとに挟持させた。ここで、周面に凹凸を備えた冷却ロールである金属ロールは210℃に加熱し、この金属ロールに5.3秒間接触させた。
振動板用フィルムが得られたら、実施例1と同様の方法によりこの振動板用フィルムのフィルム厚、フィルム厚公差、比重、相対結晶化度、機械的特性、引張弾性率、耐熱性、及び損失正接を評価し、その結果を表2に記載した。機械的特性は引張強度、耐熱性は貯蔵弾性率の第一変曲点温度により評価した。
結 果
各実施例の方法により得られたスピーカの振動板用フィルムは、引張強度が100N/mm2以上、耐熱性が175℃以上であり、耐久性と耐熱性に優れる振動板を得ることができた。また、引張弾性率が2500〜3500N/mm2、損失正接が0.0150以上なので、再生周波数領域が広く、音質特性に優れる振動板を得ることができた。加えて、比重も1.20〜1.30の範囲なので、優れた軽量性を得ることができた。
これに対し、比較例1、2の方法により得られたスピーカの振動板用フィルムは、耐熱性が170℃以下であるため、耐熱性に問題が生じた。また、損失正接が0.0150未満であるため、音質特性にも問題を生じた。また、比較例3により得られたスピーカの振動板用フィルムは、引張強度が100N/mm2未満であるため、スピーカの振動板として使用したところ、耐久性に問題を生じた。