JP7259295B2 - 積層フィルム - Google Patents
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また、特許文献2に記載のブレンド物は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂の相溶系であるために、それぞれの単独特性を損なう方向に物性が変化してしまうことが予想される。
以下、詳細に説明する。
本フィルムは、相対結晶化度が90%以上であるポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層と、ポリエーテルイミドを主成分とするB層を含み、該A層を両最外層に備えた積層フィルムである。このような構成にする事で、本フィルムは溶剤に対する耐クラック性、耐熱性、摺動性、及び、耐衝撃性のバランスに優れたものにできる。
ここで、層(C)の例としては、接着層が挙げられ、一般的に使用されるホットメルト系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤等が使用できる。
厚み下限としては、70μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることが更に好ましく、200μm以上であることが特に好ましい。一方、上限としては、470μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましく、350μm以下であることが特に好ましい。厚みが50μm以上であれば、本フィルムは十分な絶縁性と剛性を有しており、使用時の電流漏れと挿入時の座屈を防止することができる。また、厚みが500μm以下であれば、モーターコアに挿入するコイル密度を上げることができ、ひいてはモーター効率を高く維持することができる。
本発明において、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層は、ポリエーテルエーテルケトンが50質量%以上を占める層である。ポリエーテルエーテルケトンが60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。100質量%がポリエーテルエーテルケトンであることがとりわけ好ましい。A層について、ポリエーテルエーテルケトンがかかる割合で占めることにより、本フィルムは溶剤に対する耐クラック性、摺動性、耐衝撃性に優れたものとなる。
核剤を添加することで結晶核の生成を促進し、結晶密度が向上するため、相対結晶化度を上げることが出来る。
核剤の添加量は、下限については、ポリエーテルエーテルケトン100質量%に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましい。一方、上限については、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。核剤の添加量を上記範囲とすることにより、フィルムの機械特性を維持したままポリエーテルエーテルケトンの相対結晶化度を十分に向上する事ができる。
なお、核剤としては、熱可塑性樹脂の核剤として一般的に使用されているものであれば特に制限はない
なお、延伸する方向としては、縦と横いずれかの一軸延伸でも良いし、縦と横の二軸延伸でも良い。また、二軸延伸の場合、延伸の手法としては、逐次二軸延伸と同時二軸延伸のどちらでも良い。
そこで本発明においては、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とする層を両最外層に配し、そのポリエーテルエーテルケトンの結晶化度を上記範囲とすることにより、溶剤や低分子量成分によってB層中のポリエーテルイミドが劣化し、クラックが発生するのを抑制することができる。
そこで本発明においては、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とする層を両最外層に配し、そのポリエーテルエーテルケトンの結晶化度を上記範囲とすることにより、その中間にあるポリエーテルイミド樹脂を主成分とする層が有する優れた耐熱性を維持することができたものである。
そこで本発明においては、ポリエーテルエーテルケトンを主成分とする層を両最外層に配し、そのポリエーテルエーテルケトンの結晶化度を上記範囲とすることにより、優れた摺動性を付与することができたものである。
相対結晶化度(%)={(|ΔHm|-|ΔHc|)/ΔHm}×100
本発明において、ポリエーテルイミドを主成分とするB層は、ポリエーテルイミドが50質量%以上を占める層である。ポリエーテルイミドが60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。ポリエーテルイミド層について、ポリエーテルイミドをかかる割合で含む事により、本発明の積層フィルムは耐熱性に優れる。
本フィルムは、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等によって製造することができる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されないが、生産性や厚み制御の観点から、押出成形、特に、Tダイ法が好ましい。
スクラップは前記のようにA層とB層のどちらに加えても良いが、本フィルムにおいてA層が占める厚みの割合が、フィルム全体の10%以上60%以下である場合、B層に加える事が好ましい。本発明においては本フィルム製造時から得られるスクラップは、ポリエーテルエーテルケトンよりもポリエーテルイミドを多く含む。従って、スクラップをポリエーテルイミドを主成分とするB層に加えても、本フィルムの物性に対する悪影響は少ないので、加えるスクラップをより多く、効率的に再利用する事ができるからである。
上記スクラップは、粉砕機、造粒機等により、フィルム粉砕物、圧ペレットまたはペレ ット状にしたものを用いることができる。
ポリエーテルエーテルケトンとポリエーテルイミドは互いに相溶系であるので、混合した場合に相分離しない。従って、ポリエーテルエーテルケトンとポリエーテルイミドを混合することによって、相界面に起因する機械特性の低下を引き起こす事が無い。
B層がスクラップを10質量%以上の割合で含む事により、廃棄物をより効率的に再利用する事ができる。また、B層がスクラップを90質量%以下の割合で含む事により、B層の有する剛性や耐熱性を維持する事ができる。
B層がポリエーテルエーテルケトンを1質量%以上の割合で含むことにより、ポリエーテルイミド層の耐衝撃性や耐引裂性を向上することができる。また、B層がポリエーテルエーテルケトンを30質量%未満の割合で含むことにより、B層の剛性を高いレベルで維持することができる。
本発明の積層フィルムは、溶剤に対する耐クラック性、耐熱性、耐衝撃性、摺動性に優れるため、家電製品やオーディオ機器、IT機器、通信機器、OA機器、医療機器、ヘルスケア機器、業務用機器、産業機器、自動車・鉄道・船舶等の輸送機器等向けのモーター用絶縁フィルムとして好適に使用できる。
特に、本フィルムからなるスロット紙、ウェッジ紙は、フィルムからスロット紙またはウェッジ紙へ成型加工したり、挿入する際に、衝撃的な変形や割れが生じにくいため、絶縁不良の問題なく好適に使用することが出来る。
実施例及び比較例においては、以下の原料を用い、下記表1に示す配合組成のフィルムを製造した。
(A)-1:VESTAKEEP 3300G(ダイセル・エボニック社製、(a-1)の繰り返し単位、結晶融解熱量=41J/g、結晶融解温度=343℃、ガラス転移温度=143℃)
(B)-1:Ultem 1000-1000(サビック社製、(b-1)の繰り返し単位、ガラス転移温度=217℃)
(B)-2:Ultem CRS5001-1000(サビック社製、(b-2)の繰り返し単位、ガラス転移温度=227℃)
A層の原料として(A)-1を、B層の原料として(B)-1をそれぞれ使用した。これらを、Φ40mm押出機2台を使用して別々に溶融させ、A層についてはフィードブロックで半分ずつに分割し、A層/B層/A層の順番となるようにフィードブロック内で積層させて2種3層構成の積層フィルムとしてTダイから押出し、両最外層を結晶化させるために、210℃のキャストロールに密着させ、積層比が1/8/1(フィルム全体に占める、A層の厚み割合=20%)となるように、積層フィルムを得た。この時、A層の押出機温度、B層の押出機温度、フィードブロック、口金の温度はいずれも380℃とした。
厚み300μm、100μmの2種3層構成の積層フィルムをそれぞれ作成した。厚み300μmのフィルムについては、ソルベントクラック試験、200℃の引張弾性率、動摩擦係数の評価を行った。一方、厚み100μmのフィルムについて、パンクチャー衝撃強度と耐折強度の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
A層とB層の押出機回転数を調整し、積層比を1/4/1(フィルム全体に占める、A層の厚み割合=33%)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
A層とB層の押出機回転数を調整し、積層比を1/4/1(フィルム全体に占める、A層の厚み割合=50%)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
B層の原料として、(B)-1の代わりに(B)-2を使用した以外は実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
B層の原料として、(A)-1と(B)-1を混合質量比80:20質量%の混合物を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
キャストロール温度を130℃とし、B層の結晶化度が低い状態でフィルムを採取した以外は実施例1と同様の方法でサンプル作製した。評価結果を表1に示す。
押出機を1台のみ用い、原料として(A)-1を使用した以外は実施例1と同様の条件にて、ポリエーテルエーテルケトン単層フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
押出機を1台のみ用い、原料として(B)-1を使用した以外は実施例1と同様の条件にて、ポリエーテルイミド単層フィルムを得た。このフィルムについて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
上記実施例及び比較例で製造した各フィルムは、以下のようにして各種項目についての評価測定を行った。ここで、フィルムの「縦」とは、Tダイからフィルム状の成形品が押し出されてくる方向を指し、また、フィルム面内でこれに直交する方向を「横」とする。
各フィルムについて室温から380℃まで、10℃/分の速度で昇温し、ポリエーテルエーテルケトンの結晶化時の発熱ピーク面積とポリエーテルエーテルケトンの結晶融解時の吸熱ピーク面積から、結晶化熱量ΔHcと結晶融解熱量ΔHmを算出する。これらを用いて、以下の式から相対結晶化度を算出した。
相対結晶化度(%)={(|ΔHm|-|ΔHc|)/ΔHm}×100
なお、B層にポリエーテルエーテルケトンを更に含む実施例5~7、比較例2については、斜め切削装置SAICAS(ダイプラ・ウィンテス社製、DN-20S型)を用いて最外層のB層を切削し、示差走査熱量測定(DSC)を用いる事で測定した。
厚み300μmの各フィルムを縦60mm×横9mmに切断して、試験片を作製した。縦方向のフィルム端部からそれぞれ20mmの位置で合わせるように曲げ、ダブルクリップで固定した。この状態でスチレンモノマーに2分間浸漬し、取り出して乾燥した後のフィルムの外観を評価した。クラックが確認できないものを合格(○)、確認できるものを不合格(×)とした。
厚み300μmの各フィルムについて、JIS K7244-4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーターDVA-200(アイティー計測制御株式会社製)を用いて、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定を行い、200℃での引張弾性率を評価した。200℃での引張弾性率が500MPa以上であるものを合格(○)、500MPa未満のものを不合格(×)とした。
厚み300μmの各フィルムについて、JIS K7125:1999に準拠して、プラスチックフィルムすべり試験機(インテスコ)を用いて、動摩擦係数を評価した。動摩擦係数が0.20以下のものを合格(○)、0.20を超えるものを不合格(×)とした。
厚み100μmの各フィルムについて、JIS K7211-2:2006に準拠して、高速パンクチャー衝撃試験機ハイドロショット HITS-P10(島津製作所)を用いて、23℃、及び、-20℃の温度環境下で、打ち抜き径0.5インチ、試験速度3m/secの条件で測定した。パンクチャー衝撃強度が1.0以上のものを合格(○)、1.0未満のものを不合格(×)とした。
厚み100μmの各フィルムについて、JIS P8115に準拠して、MIT折曲疲労試験機(東洋精機)を用いて、耐折強度を測定した。耐折強度が100回以上のものを合格(○)、100回未満のものを不合格(×)とした。
また、実施例1~4で得られた積層フィルムはポリエーテルイミドを主成分とするB層が有する耐熱性の効果が十分に発揮されており、200℃という高温における弾性率が高く維持され、耐熱性に優れていた。
実施例5~7は、特にパンクチャー衝撃強度や耐折強度の値が高く、耐衝撃性にも優れることが分かる。B層にポリエーテルエーテルケトンが含まれているため、B層の耐衝撃性が向上し、結果として積層フィルム全体の耐衝撃性も向上したものと考えられる。
以上の結果より、本発明の積層フィルムは、溶剤に対する耐クラック性、耐熱性、摺動性、及び、耐衝撃性に優れていることがわかる。
比較例2及び比較例3では、当該サンプルは溶剤に対する耐クラック性、摺動性、耐衝撃性に優れるものの、200℃で弾性率が著しく低下している。従って、高温での連続使用に耐えられる耐熱性を有しているとは言えない。
比較例4では、耐熱性に優れるものの、溶剤に対する耐クラック性、摺動性、耐衝撃性が十分ではない。
Claims (7)
- 相対結晶化度が90%以上であるポリエーテルエーテルケトンを主成分とするA層と、ポリエーテルイミドを主成分とするB層を含み、該A層を両最外層に備えた積層フィルムであって、前記B層がポリエーテルエーテルケトンを1質量%以上、30質量%以下の割合で含む、積層フィルム。
- 前記A層を両最外層に備え、前記B層を中間層に備えた2種3層の積層構造である請求項1に記載の積層フィルム。
- 積層フィルムに占める前記A層の厚みの割合が、10%以上60%以下である請求項1または2に記載の積層フィルム。
- 厚み100μmにおけるパンクチャー衝撃強度が1.0J以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
- 厚みが50μm以上500μm以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の積層フィルムからなるスロット紙。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の積層フィルムからなるウェッジ紙。
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