JP2015199876A - 半芳香族ポリアミドフィルム - Google Patents

半芳香族ポリアミドフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】半芳香族ポリアミドと特定のエラストマーを混合し、半芳香族ポリアミド中にエラストマーを特定の分散状態で存在させた延伸フィルムを提供する。
【解決手段】半芳香族ポリアミドフィルムであって、半芳香族ポリアミド(A)98〜90質量%と、熱可塑性エラストマー(B)2〜10質量%とを含有する。半芳香族ポリアミド(A)は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と、炭素数が10である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミンとを含む。熱可塑性エラストマー(B)は、官能基を有する。このフィルムは、延伸されている。
【選択図】なし

Description

本発明は半芳香族ポリアミドフィルムに関する。
脂肪族ジアミンとフタル酸の重縮合体である半芳香族ポリアミドは、脂肪族ポリアミドと比較して、耐熱性をはじめとする種々の性能に優れている。そのため、近年、半芳香族ポリアミドをフィルムや成形体に用いるための開発が進められている。例えば、特許文献1には、半芳香族ポリアミドとして、炭素数が8、10、12である脂肪族ジアミンとテレフタル酸とからなるナイロン8T、10T、12Tが記載されている。それらはいずれも、融点と結晶化度とが高く、かつ、吸水性が比較的低い。その中でも、ナイロン10Tは300℃を超える高い融点を有し、結晶化度や吸水性の面でもバランスが良く、各種の産業用途において注目を浴びている。
ナイロン10Tが上記のような特性を有することから、そのフィルムは、従来の熱可塑性樹脂フィルムでは困難であった、耐熱性および寸法安定性を両立することが可能である。従って、フィルム素材としての、ナイロン10Tの開発が盛んに進められている。特に、ナイロン10Tから得られたフィルムを、電子・電気部品、光学用等のいわゆる工業用フィルム分野において適用することが期待されている。
その中には、フレキシブルプリント回路(FPC)用の基板フィルム、カバーレイフィルム、スイッチやタッチパネル用の絶縁フィルムの様に、フレキシブル性、耐屈曲性、打鍵耐久性等の変形耐性が必要な用途が多い。特に、FPC用途等のように加工時にリフロー処理といった高温での熱処理工程を必要とする場合には、熱処理を施した後の変形耐性が求められている。
しかしながら、ナイロン10Tからなるフィルムは、室温での弾性率が高く、上記変形に対する耐性が不十分な場合がある。さらに、高温での熱処理により変形耐性が低下する問題がある。
特許文献2には、ポリアミドにエラストマーと架橋剤を添加した樹脂組成物が開示されており、ポリアミドにエラストマーを分散させることによる耐油性、耐熱性、ガスバリア性、柔軟性が付与されることが記載されている。前記樹脂組成物は、ポリアミド中にエラストマーを直径0.1〜30μm程度の球状に微細に分散させることにより熱可塑性を付与することで、押出成形、射出成型、プレス成形等の汎用の加熱溶融成形を可能にしている。そもそも、ポリアミドにエラストマーを微細に分散させて耐衝撃性を向上させることは、非相溶系のポリマーアロイ技術として従来から公知である。しかし一方で、エラストマーの分散状態等のモルフォロジーが異なると、成形品の特性が大きく異なることも公知である。従って、加熱溶融成形とは加工方法が全く異なり、加工時に変形を伴い、かつ、変形方向に異方性が高くなる、薄膜の延伸フィルムの製造方法に特許文献2に記載の技術を当てはめることは困難である。ましてや、延伸フィルムに求められる変形耐性が十分ではないという問題を、特許文献2に記載の技術では解決することができない。
WO2011/118441号公報 特開2004−217698号公報
上記のような問題を解決するため、本発明は、半芳香族ポリアミドと特定のエラストマーを混合し、半芳香族ポリアミド中にエラストマーを特定の分散状態で存在させた延伸フィルムを提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸を含むとともに、炭素数が10である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミンを含む半芳香族ポリアミド(A)98〜90質量%と、
官能基を有する熱可塑性エラストマー(B)2〜10質量%とを含有し、
延伸されていることを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルム。
(2)官能基を有する熱可塑性エラストマー(B)が、ジカルボン酸および/またはその誘導体で変性されたオレフィン系の熱可塑性エラストマーであることを特徴とする(1)の半芳香族ポリアミドフィルム。
(3)熱可塑性エラストマー(B)のドメインの平均短径が0.01〜5.0μmであり、かつフィルムの長手方向の断面における熱可塑性エラストマー(B)の平均ドメイン間隔が0.1〜1.5μmである状態で、熱可塑性エラストマー(B)がフィルム中に分散していることを特徴とする(1)または(2)の半芳香族ポリアミドフィルム。
本発明によれば、耐熱性が高く、延伸性、変形耐性に優れ、厚みムラが小さい半芳香族ポリアミドフィルムを提供することができる。そのため、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、電子・電気部品、光学用等のいわゆる工業用フィルムとして、特に、FPC用の基板フィルムやカバーレイフィルム、スイッチやタッチパネル用の絶縁フィルム等として好適に使用することができる。
フィルムの長手方向の断面におけるドメインの分布状態を示す模式図である。 フィルム中のドメインにおける長径と短径を示す模式図である。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸を含むとともに、炭素数が10である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミンを含む半芳香族ポリアミド(A)98〜90質量%と、官能基を有する熱可塑性エラストマー(B)2〜10質量%とを含有し、延伸されているフィルムである。
まず、本発明に用いられる半芳香族ポリアミド(A)について説明する。
半芳香族ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とすることが必要である。ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の割合は、60〜100モル%であることが好ましく、70〜100モル%であることがより好ましく、80〜95モル%であることがさらに好ましい。ジカルボン酸成分におけるテレフタル酸の割合が60〜100モル%であることにより、耐熱性が高く、吸水性の低いポリアミドとすることができる。
半芳香族ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸成分に含まれる、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
半芳香族ポリアミド(A)のジアミン成分は、炭素数が10である脂肪族ジアミンを主成分として含むことが必要である。ジアミン成分中における炭素数が10である脂肪族ジアミンの割合は、60〜100モル%であることが好ましく、75〜100モル%であることがより好ましく、80〜95モル%であることがさらに好ましい。炭素数が10である脂肪族ジアミンの割合が60〜100モル%であることにより、得られるフィルムの耐熱性、耐薬品性が向上し、また、吸水性が低下する。
炭素数が10である脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,10−デカジアミンを挙げることができる。
半芳香族ポリアミド(A)を構成するジアミン成分に含まれる、上記の炭素数が10である脂肪族ジアミン以外のジアミン成分としては、例えば、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族ジアミンや、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンや、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミンや、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
半芳香族ポリアミド(A)には、本発明の目的を損なわない範囲で、ε−カプロラクタム、ζ−エナントラクタム、η−カプリルラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム類が共重合されていてもよい。
前記モノマーの組み合わせで得られる半芳香族ポリアミド(A)の中でも、耐熱性とフィルムの成形性との観点から、テレフタル酸をジカルボン酸成分中に80〜100モル%含有するジカルボン酸成分と、1,10-ドデカンジアミンをジアミン成分中に80〜100モル%含有するジアミン成分とから構成される半芳香族ポリアミドが好ましい。特に、成型性の観点から、ジカルボン酸成分および/もしくはジアミン成分の内5〜20モル%が、テレフタル酸以外の成分または1,10−デカジアミン以外の成分であることが好ましい。
テレフタル酸以外の成分または1,10−デカジアミン以外の成分は、半芳香族ポリアミド中にランダムもしくはブロック共重合化されていても良いし、また、2種以上の組成の異なるポリアミドの混合であっても良い。ただし、混合である場合には相溶していることが好ましい。
半芳香族ポリアミド(A)は、融点(以下、「Tm」と略称することがある。)が280〜350℃の範囲になるように選択されることが好ましい。半芳香族ポリアミド(A)のTmを前記範囲とすることにより、フィルムに加工する際の半芳香族ポリアミド(A)の熱分解を効率よく抑制することができる。Tmが280℃未満であると、得られるフィルムの耐熱性が不十分となる場合がある。一方、Tmが350℃を超えると、フィルム製造時に熱分解が起こる場合がある。
半芳香族ポリアミド(A)の極限粘度は、0.8〜2.0dL/gであることが好ましく、0.9〜1.8dL/gであることがより好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の極限粘度が0.8〜2.0dL/gであることにより、力学的特性が優れたフィルムを得ることができる。半芳香族ポリアミド(A)の極限粘度が0.8dL/g未満であると、製膜してフィルム形状を保つのが困難となる場合がある。一方、2.0dL/gを超えると、フィルム製造時に、冷却ロールへの密着が困難となって、フィルムの外観が悪化する場合がある。
半芳香族ポリアミド(A)は、ポリアミドを製造する方法として従来から知られている加熱重合法や溶液重合法などの方法を用いて製造することができる。中でも、工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、溶融重合法、溶融押出法、固相重合法などが挙げられる。半芳香族ポリアミド(A)は融点が280℃〜340℃と高く、その分解温度に近い。よって、生成ポリマーの融点以上の温度で反応させる溶融重合法や溶融押出法は、製品の品質が低下する場合があるため、不適当な場合がある。そのため、生成ポリマーの融点未満の温度での固相重合法が好ましい。
上記固相重合は、好ましくは、減圧下または不活性ガス流通下でおこなわれる。固相重合の温度は、200〜280℃であることが好ましい。固相重合の温度を前記範囲とすることにより、得られる半芳香族ポリアミド(A)の着色やゲル化を抑制することができる。固相重合の温度が200℃未満であると、重合時間が長くなるため生産性に劣る場合がある。一方、280℃を超えると、得られる半芳香族ポリアミド(A)において、着色やゲル化が発現する場合がある。
上記溶融重合は、好ましくは、350℃以下の温度でおこなわれる。重合温度を350℃以下の温度でおこなうことにより、分解や熱劣化を抑制しつつ、効率よく成形することができる。なお、上記の溶融重合には、溶融押出機を用いた溶融重合も含まれる。
上記した半芳香族ポリアミド(A)の重合に際して、重合触媒が用いられる。重合触媒としては、反応速度や経済性の観点から、リン系触媒が好ましい。リン系触媒としては、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、それらの塩[例えば、次亜リン酸ナトリウム]、またはそれらのエステル[例えば、2,2−メチレンビス(ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等]が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
得られた半芳香族ポリアミド(A)における重合触媒の含有量は、ジカルボン酸成分とジアミン成分の合計量に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましく、0.07〜1質量%であることがさらに好ましい。重合触媒の含有量が0.01〜5質量%であることにより、半芳香族ポリアミド(A)の劣化を抑制しつつ、該半芳香族ポリアミド(A)を効率よく重合することができる。重合触媒の含有量が0.01質量%未満であると触媒作用が発現しない場合がある。一方、5質量%を超えると、経済性の観点で不利となる場合がある。
さらに、必要に応じて、ジアミン成分、ジカルボン酸成分および重合触媒と共に、末端封止剤が用いられてもよい。このような末端封止剤としては、半芳香族ポリアミド(A)の末端におけるアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば、特に限定されない。末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類が挙げられる。
中でも、反応性、および封止された末端基の安定性等の観点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さ等の観点から、モノカルボン酸がより好ましい。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が挙げられる。
末端封止剤の使用量は、用いられる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、反応条件等によって適宜に選択することができる。末端封止剤の詳細な使用量は、分子量の調整や樹脂の分解抑制の観点から、ジカルボン酸成分とジアミン成分の総モル数に対して、0.1〜15モル%であることが好ましい。
本発明に用いる半芳香族ポリアミド(A)は、上記のような末端封止剤により分子鎖の末端基が封止されていることが好ましい。末端基の全量に対する末端封止されている末端基量の割合は、10モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。封止されている末端基量の割合が10モル%以上であることにより、溶融成形時における樹脂の分解や、縮合が進行することによる分子量の増加を抑制することができる。また、樹脂の分解による気泡の発生が抑制されるため、該半芳香族ポリアミドから得られるフィルムの外観を優れたものとすることができる。
次に、本発明に用いられる、官能基を有する熱可塑性エラストマー(B)について説明する。
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(B)は、ハードセグメントとソフトセグメントとを含んだ構成である。
ハードセグメントは、結晶性樹脂でも非晶性樹脂でもよい。ハードセグメントが結晶性樹脂である場合には、その融点は150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。一方、ハードセグメントが非晶性樹脂である場合には、ガラス転移温度は120℃以下であることが好ましい。ハードセグメントに用いられる樹脂の融点が150℃以下、もしくは、そのガラス転移温度が120℃以下であることにより、半芳香族ポリアミド(A)と熱可塑性エラストマー(B)とを含むポリマーを二軸延伸する際の延伸追随性を向上させて、効率よく延伸をおこなうことができる。なお、ハードセグメントに用いる樹脂の融点が150℃を超えるとき、もしくは、そのガラス転移温度が120℃を超えるときは、均一な延伸ができずに、熱可塑性エラストマー(B)の所定の分散状態が得られない場合や、延伸フィルムの平面性が悪化する場合がある。また、延伸フィルム中にボイドが発生したり、さらには延伸破断したりする場合がある。
ソフトセグメントは、ゴム系樹脂である。その樹脂のガラス転移温度は、−30℃以下であることが好ましく、−40℃以下であることがさらに好ましい。ソフトセグメントに用いられる樹脂のガラス転移温度が−30℃以下であることにより、得られる延伸フィルムの耐屈曲性や打鍵耐久性が向上する。
熱可塑性エラストマー(B)としては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマー(B)は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントが熱可塑性高結晶性ポリオレフィンであるとともに、ソフトセグメントがエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムであるものが挙げられる。ハードセグメントとしては、例えば、1〜4個の炭素原子を有するα−オレフィンのホモポリマーまたはこれらの二種以上の共重合体が挙げられる。中でも、ポリエチレンまたはポリプロピレンが好ましい。ソフトセグメントとしては、例えば、プチルゴム、ハロブチルゴム、EPDM、EPRゴム、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、NBR、天然ゴムが挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントにポリブチレンテレフタレート(PBT)等の高融点で高結晶性の芳香族ポリエステルが使用され、ソフトセグメントにポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)等のガラス転移温度が−70℃以下の非晶性ポリエーテルが使用されたマルチブロックポリマーが挙げられる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントがナイロン等のポリアミドであり、ソフトセグメントがポリエステルまたはポリオールであるブロックポリマーが挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントがポリスチレンであり、ソフトセグメントが共役ジエン化合物の共重合体およびその水素添加物であるポリマーが挙げられる。ソフトセグメントとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ヘキサジエンゴム、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(B)は、半芳香族ポリアミド(A)の末端基であるアミノ基やカルボキシル基、および主鎖のアミド基と反応しうる官能基を有する必要がある。官能基としては、カルボキシル基またはその無水物、アミノ基、水酸基、エポキシ基、アミド基、イソシアネート基から選ばれる少なくとも一種の官能基であることが好ましく、ジカルボン酸および/またはその誘導体がより好ましい。半芳香族ポリアミド(A)の末端基と反応しうる官能基を有しない熱可塑性エラストマーを用いた場合は、二軸延伸時の延伸性が低下し均一な延伸フィルムが得られない場合がある。また、得られた延伸フィルムの変形耐性が不十分になる場合がある。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、半芳香族ポリアミド(A)と熱可塑性エラストマー(B)の配合比率(A)/(B)が98/2〜90/10(質量比)であることが必要であり、96/4〜92/8(質量比)であることが好ましい。熱可塑性エラストマー(B)の配合比率が2質量%未満では、添加効果が小さく、延伸フィルムの変形耐性が不十分になる場合がある。一方、熱可塑性エラストマー(B)の配合比率が10質量%を超えると、過剰品位となるばかりか、押出製膜時の溶融粘度が高すぎて製膜性に劣り、二軸延伸時の延伸性が低下して均一な延伸フィルムが得られない場合がある。
半芳香族ポリアミド(A)と熱可塑性エラストマー(B)との混練に用いられる混練機は、特に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等、通常公知の溶融混練機が挙げられる。中でも、熱可塑性エラストマー(B)の分散性向上の観点から、二軸押出機が好ましい。溶融混練温度は、通常、半芳香族ポリアミド(A)の融点以上である。熱可塑性エラストマー(B)は、フィルム作製時に半芳香族ポリアミド(A)と混練してもよいし、熱可塑性エラストマー(B)が高濃度に配合されたマスターペレットを作製してから、そのマスターペレットを半芳香族ポリアミド(A)と混練してもよい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、製膜時の熱安定性を高め、フィルムの強度や伸度の劣化を防ぎ、使用時の酸化や分解等に起因するフィルムの劣化を防止するために、熱安定剤を含有させることが好ましい。熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤、ヒンダードアミン系熱安定剤、リン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤、二官能型熱安定剤が挙げられる。
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、イルガノックス1010(登録商標)(BASFジャパン社製、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、イルガノックス1076(登録商標)(BASFジャパン社製、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、サイアノックス1790(登録商標)(サイアナミド社製、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸)、イルガノックス1098(登録商標)(BASFジャパン社製、N,N′−(ヘキサン−1,6‐ジイル)ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド])、スミライザーGA−80(登録商標)(住友化学社製、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン)が挙げられる。
ヒンダードアミン系熱安定剤としては、例えば、ナイロスタブ S−EED(登録商標)(クラリアントジャパン社製、2−エチル−2′−エトキシ−オキザルアニリド)が挙げられる。
リン系熱安定剤としては、例えば、イルガフォス168(登録商標)(BASFジャパン社製、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト)、イルガフォス12(登録商標)(BASFジャパン社製、6,6′,6″−[ニトリロトリス(エチレンオキシ)]トリス(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン))、イルガフォス38(登録商標)(BASFジャパン社製、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸)、アデカスタブ329K(登録商標)(旭電化社製、トリス(モノ−ジノニルフェニル)ホスファイト)、アデカスタブPEP36(登録商標)(旭電化社製、ビス(2,6−ジ―tert―ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)、Hostanox P−EPQ(登録商標)(クラリアント社製、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト)、GSY−P101(登録商標)(堺化学工業社製、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンジホスホナイト)、スミライザーGP(登録商標)(住友化学社製、6−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン)が挙げられる。
イオウ系熱安定剤としては、例えば、DSTP(登録商標)(吉富社製、化学式名:ジステアリルチオジプロピオネート)、Seenox 412S(登録商標)(シプロ化成社製、ペンタエリスリトール テトラキス−(3−ドデシルチオプロピオネート))、Cyanox 1212(登録商標)(サイアナミド社製、ラウリルステアリルチオジプロピオネート)が挙げられる。
二官能型熱安定剤としては、例えば、スミライザーGM(登録商標)(住友化学社製、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート)、スミライザーGS(登録商標)(住友化学社製、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート)が挙げられる。
フィルム強度の劣化を防止する観点からは、ヒンダードフェノール系熱安定剤が好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤の熱分解温度は、320℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。熱分解温度が320℃以上のヒンダードフェノール系熱安定剤としては、スミライザーGA−80が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤は、アミド結合を有していれば、フィルム強度の劣化を防止することができる。アミド結合を有しているヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、イルガノックス1098が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤に二官能型熱安定剤を併用すれば、フィルム強度の劣化をさらに低減することができる。
これらの熱安定剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤を併用すれば、フィルムの製膜時におけるフィルターの昇圧を防止することができるとともに、フィルム強度の劣化を防止することができる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤と二官能型熱安定剤を併用すれば、フィルムの製膜時におけるフィルターの昇圧を防止することができ、フィルム強度の劣化をさらに低減することができる。
ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤の組み合わせとしては、スミライザーGA−80またはイルガノックス1098と、Hostanox P−EPQまたはGSY−P101との組み合わせが好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤と二官能型熱安定剤の組み合わせとしては、スミライザーGA−80またはイルガノックス1098と、HostanoxP−EPQまたはGSY−P101と、スミライザーGSとの組み合わせが好ましく、GSY−P101と、スミライザーGA−80と、スミライザーGSとの組み合わせがより好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムにおける上記熱安定剤の含有量としては、半芳香族ポリアミド(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましい。上記熱安定剤の含有量が0.01〜2質量部であることにより、熱分解をより効率的に抑制することができる。なお、熱安定剤を2種以上併用する場合は、各々の熱安定剤の個別の含有量、および熱安定剤の合計の含有量のいずれもが、上記の範囲に入っていることが好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、滑り性を良好にするため、滑剤粒子が含有されていてもよい。滑剤粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等の無機粒子や、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等の有機系微粒子が挙げられる。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、顔料・染料等の着色剤、着色防止剤、上記熱安定剤とは異なる酸化防止剤、耐候性改良剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、強化剤、改質剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、各種ポリマーが挙げられる。
顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。耐候性改良剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。難燃剤としては、臭素系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。強化剤としては、タルク等が挙げられる。
なお、上記のような添加剤を本発明の半芳香族ポリアミドフィルムに含有させるには、製造する際の任意の段階でこれを添加すればよい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、延伸すなわち一軸方向または二軸方向に延伸されている必要があり、二軸延伸されていることが好ましい。延伸によりポリアミド樹脂が配向結晶化していることが好ましい。延伸条件や倍率は特に限定されないが、二軸方向に延伸されている場合は、長手方向(以下、「MD」と略称することがある。)、幅方向(以下、「TD」と略称することがある。)ともに2倍以上延伸されていることが好ましく、2.5倍以上延伸されていることがより好ましい。延伸倍率を2倍以上とすることにより、後述する熱可塑性エラストマー(B)のドメインの状態を好ましい範囲とすることができ、それによってフィルムの変形耐性を向上させることができる。延伸倍率が2倍以下の場合は、延伸による配向結晶化の程度が低く、このためフィルムの強度や耐熱性が劣る場合がある。
延伸された本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの厚みムラは、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。厚みムラが10%以下であることにより、フィルムを加工する時のフィルムのたるみやシワを減らすことができる。厚みムラを10%以下とするためには、例えば、未延伸フィルムの形状を調節したり、延伸条件を調節したりする手法が挙げられる。なお、厚みムラの定義および測定方法は、以下の「実施例」の欄において詳述する。
本発明の延伸された半芳香族ポリアミドフィルムは、その熱収縮率が小さい方が好ましい。例えば、200℃、15分の熱風加熱による熱収縮率は、3.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。熱収縮率を3.0%以下とするためには、例えば、熱処理や、リラックス処理(フィルムの熱収縮特性を調整するためフィルムの幅を連続的に縮める処理)の条件を調節する手法が採用される。
本発明の延伸された半芳香族ポリアミドフィルムの引張強度は、MD、TDともに、130MPa以上であることが好ましく、引張伸度は、TD、MDともに、50%以上であることが好ましい。引張強度や引張伸度を前記範囲とするためには、例えば、延伸倍率を調節する手法が採用される。
本発明においては、延伸された半芳香族ポリアミドフィルム中の熱可塑性エラストマー(B)のドメインは、通常、板状であって、フィルム面に対して実質的に平行である。フィルム中におけるドメインの分散状態は、後述するTEM写真観察により評価することができる。具体的には、フィルムにおける熱可塑性エラストマー(B)のドメインの平均短径、ドメインの平均異方指数、平均ドメイン間隔等を評価することができる。熱可塑性エラストマー(B)のドメインの平均短径は、0.01〜5.0μmであることが好ましく、0.03〜3.0μmであることがより好ましい。また、熱可塑性エラストマー(B)のドメインの平均異方指数は、10〜50であることが好ましく、20〜50であることがより好ましい。そして、熱可塑性エラストマー(B)の平均ドメイン間隔は、0.1〜1.5μmであることが好ましく、0.1〜1.0μmであることがより好ましい。熱可塑性エラストマー(B)のドメインの平均短径を0.01〜5.0μmとしたり、その平均異方指数を10〜50としたり、その平均ドメイン間隔を0.1〜1.5μmとすることにより、フィルムの面方向から加わる力による変形耐性を向上させることができる。ドメインの平均短径、ドメインの平均異方指数、平均ドメイン間隔が上記の好ましい範囲から外れた場合、変形耐性の向上効果が不十分となったり、延伸フィルムの厚みムラ等のフィルム品位が低下したりする場合がある。
ドメインの分散状態を制御するためには、主に(1)半芳香族ポリアミド(A)の選定、(2)熱可塑性エラストマー(B)の選定、(3)混練条件の調整、(4)延伸条件の調整が必要である。(1)〜(3)により未延伸フィルムでの分散状態が決定され、さらに(4)で延伸後の分散状態が決定される。
未延伸フィルムでの分散状態は、未延伸フィルム中の熱可塑性エラストマー(B)の平均粒子径が0.01〜20μmであることが好ましく、0.05〜10μmであることがさらに好ましい。未延伸フィルムの平均粒子径を0.01〜20μmに制御するには、例えば、半芳香族ポリアミド(A)と熱可塑性エラストマー(B)との溶融粘度を近似させたり、半芳香族ポリアミド(A)と熱可塑性エラストマー(B)の混練時に熱可塑性エラストマー(B)の配合比を減らしたり、混練時のスクリューの構成や温度条件にもとづいて強混練をおこなったりすればよい。
延伸後のドメインの分散状態は、延伸条件、具体的には、延伸温度、延伸倍率、リラックス処理等の条件を制御することにより調整することができる。例えば、未延伸フィルムを延伸する際に、高配向、高倍率に延伸することにより、熱可塑性エラストマー(B)の異方性を高めてドメイン間隔を小さくすることができる。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムには、必要に応じて、その表面の接着性を向上させるための処理を施すことができる。接着性を向上させる方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、酸処理、火炎処理が挙げられる。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの表面には、易接着性、帯電防止性、離型性、ガスバリア性等の機能を付与するため、各種のコーティング剤が塗布されていてもよい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの表面には、金属またはその酸化物等の無機物、他種ポリマー、紙、織布、不織布、木材等が積層されていてもよい。
次に、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法について、二軸延伸を行う場合を例にとって説明する。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムの製造方法の一例としては、半芳香族ポリアミド(A)と熱可塑性エラストマー(B)とを適正な比率に配合し、配合物を押出機内にて280〜340℃の温度で3〜15分間溶融混合した後、Tダイを通じてシート状に押出し、30〜80℃に温度調節されたドラム上に密着させて冷却することで未延伸フィルムを製造し、そして、得られた未延伸フィルムをその後に同時二軸延伸機に導き、120〜150℃の温度で、TD、MDともに2〜4倍程度、好ましくは2.5〜4倍の延伸倍率となるよう同時二軸延伸し、さらにTDのリラックスを数%として、150〜300℃で数秒間熱処理を施す方法を挙げることができる。同時二軸延伸機に導く前に、フィルムに1〜1.2倍程度の予備縦延伸を施しておいてもよい。
本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、逐次延伸法によっても製造することができる。その一例としては、上記と同様の操作におこなって未延伸フィルムを得、それにロール加熱、赤外線等の加熱処理を施したうえで、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る方法が挙げられる。この縦延伸は、2個以上のロール周速差を利用し、半芳香族ポリアミドのガラス転移点をTgとして、Tg〜(Tg+40℃)の温度の範囲で、2.0〜3.6倍に延伸することが好ましい。縦延伸フィルムに対して続いて連続的に、横延伸、熱固定、リラックス処理を順次施して二軸配向フィルムとする。このとき横延伸は、縦延伸と同じTg〜(Tg+40℃)の温度範囲で開始し、最高温度は、半芳香族ポリアミドの融点(Tm)より120〜170℃低い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は、最終的なフィルムの要求物性により調整されるが、2.5倍以上であることが好ましく、3.0倍以上であることがより好ましい。横延伸に続く熱固定処理時に、フィルムの横方向すなわち幅方向に2〜20%の伸張を加えてもよい。ただし、その伸張率はトータルの延伸倍率の中に含まれる。熱固定処理後、リラックス処理を施し、その後フィルムをそのTg以下に冷却して二軸延伸フィルムを得る。
フィルムの製造装置においては、シリンダー、バレルの溶融部、計量部、単管、フィルター、Tダイ等の表面に対して、樹脂の滞留を防ぐため、その表面の粗さを小さくする処理が施されていることが好ましい。表面の粗さを小さくする方法としては、例えば、極性の低い物質で改質する方法が挙げられる。あるいは、その表面に窒化珪素やダイヤモンドライクカーボンを蒸着させる方法が挙げられる。
フィルムを延伸する方法としては、例えば、フラット式逐次二軸延伸法、フラット式同時二軸延伸法、チューブラ法を挙げることができる。中でも、フィルムの厚み精度を向上させ、フィルムのMDの物性を均一とすることができる観点から、フラット式同時二軸延伸法を採用することが好ましい。
フラット式同時二軸延伸法を採用するための延伸装置としては、例えば、スクリュー式テンター、パンタグラフ式テンター、リニアモーター駆動クリップ式テンターが挙げられる。
延伸後の熱処理は、フィルムの寸法安定性を付与するために必要な工程である。熱処理方法としては、例えば、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等の公知の方法が挙げられる。中でも、均一に精度良く加熱できることから、熱風を吹き付ける方法が好ましい。
得られた半芳香族ポリアミドフィルムは、枚葉とされてもよいし、巻き取りロールに巻き取られることによりフィルムロールの形態とされてもよい。各種用途への利用に際しての生産性の観点から、フィルムロールの形態とすることが好ましい。フィルムロールとされた場合は、所望の巾にスリットされてもよい。
上述のようにして得られた本発明の延伸された半芳香族ポリアミドフィルムは、ナイロン10Tが本来有する機械特性、耐熱性、耐湿熱性、耐薬品性、低吸水性に加えて、フレキシブル性や耐屈曲性や打鍵耐久性等の変形耐性に優れている。このため、本発明の半芳香族ポリアミドフィルムは、スープ、レトルトパウチ等の食品、医療品、薬品、日用品、トイレタリー等の包装材料;導体パッケージ等の電子部品包装材料;半有底パイプ状容器、有底積層パイプ状容器等の容器用材料;モーター、電動モーター、トランス、ケーブル、圧縮機モータコイル等のための電気絶縁材料;コンデンサ用途等の誘電体材料;カセットテープ、デジタルデータストレージ、HDTV向けのデータ保存用磁気テープ、ビデオテープ等の磁気テープ用材料;太陽電池基板、液晶板、導電性フィルム、表示機器等のための保護板;LED実装基板、フレキシブルプリント配線板、フレキシブルフラットケーブル等の電子基板材料;フレキシブルプリント配線用カバーレイフィルム、耐熱マスキング用テープ、工業用工程テープ等の耐熱粘着テープ;耐熱バーコードラベル;耐熱リフレクター;各種離型フィルム;耐熱粘着ベースフィルム;写真フィルム;薬液包装配管;成形用材料;農業用材料;医療用材料;土木、建築用材料;濾過膜等、家庭用、産業資材用のフィルムとして好適に使用することができる。
1.分析
半芳香族ポリアミド、熱可塑性エラストマーおよび半芳香族ポリアミドフィルムの物性測定は、以下の方法によりおこなった。なお、下記の項目(6)(7)(10)(11)の評価は、温度20℃、湿度65%の環境下でおこなった。
(1)半芳香族ポリアミドの極限粘度
濃度が96質量%である濃硫酸中に、30℃にて、半芳香族ポリアミドを、それぞれ、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dLの濃度となるように溶解させて、半芳香族ポリアミドの還元粘度を求めた。そして、各々の還元粘度の値を用い、濃度を0g/dLに外挿した値を極限粘度とした。
(2)半芳香族ポリアミドまたは熱可塑性エラストマーの融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)
半芳香族ポリアミドまたは熱可塑性エラストマー10mgを、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、「DSC−7」)を用い、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで10℃/分で昇温し(1st Scan)、350℃にて5分間保持した。その後、100℃/分で20℃まで降温し、20℃にて5分間保持後、350℃まで20℃/分でさらに昇温した(2nd Scan)。そして、2nd Scanで観測される結晶融解ピークのピークトップ温度を融点とし、ガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間点をガラス転移温度とした。
(3)熱安定剤の熱分解温度
示差熱熱重量同時測定装置(SIIナノテクノロジー社製、「TG/DTA 7000」)を用いて、200mL/分の窒素雰囲気下で、30℃から500℃まで20℃/分で昇温した。昇温前の質量に対して5質量%減少する温度を熱分解温度とした。
(4)延伸性
未延伸フィルムを各実施例ごとの所定の方法、倍率で延伸した際の状況を、以下の基準に従い評価した。
○:均一に延伸できる。
△:延伸時にフィルムがチャックから外れる等して、均一延伸できない部分が発生する。
×:切断により延伸フィルムが得られない。
(5)未延伸フィルム中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径
未延伸フィルムの幅方向の中心部からランダムに採取した部分における長手方向断面と幅方向断面の6箇所について(長手方向断面、幅方向断面についてそれぞれ3箇所)、日本電子社製JEM−1230透過電子顕微鏡を用いて、TEM観察をおこなった(加速電圧100kV、直接倍率20000倍)。試料としては凍結ウルトラミクロトームで切り出した厚さ100nmの切片を用いた。
得られたTEM写真を用いて、熱可塑性エラストマーの最大径を測定し、それを「粒子径」とした。またTEM写真1枚につきランダムに20個の粒子径を測定し、6枚のTEM写真を用いて合計120個の粒子径を測定し、それらの平均値を「平均粒子径」とした。
(6)延伸フィルムの平均厚み
厚み計(HEIDENHAIN社製、「MT12B」)を用い、フィルムの厚みを測定した。
(7)延伸フィルムの厚みムラ
延伸フィルムの幅方向の中心部における20cm×20cmの範囲について、ランダムに30点の厚みを測定した。計測値の最大値をLmax、最小値をLmin、平均値をLaとした。そして、以下の式で表される値を「厚みムラR」として、下記基準に従い評価した。
R=[(Lmax−Lmin)/La]×100 (%)
◎:R≦10
○:10<R≦15
△:15<R≦20
×:20<R
(8)延伸フィルム中の熱可塑性エラストマーの分散状態
延伸フィルムの幅方向の中心部からランダムに採取した部分における長手方向断面と幅方向断面の6箇所について(長手方向断面、幅方向断面についてそれぞれ3箇所)、日本電子社製JEM−1230透過電子顕微鏡を用いて、TEM観察をおこなった(加速電圧100kV、直接倍率20000倍)。試料としては凍結ウルトラミクロトームで切り出した厚さ100nmの切片を用いた。
(8−1)平均長径、平均短径
得られたTEM写真を用いて、ドメインの長手方向または幅方向の最大径と、厚み方向の最大径を測定し、それぞれを「長径」、「短径」とした。図2にその模式図を示す。TEM写真1枚につきランダムに20個のドメインDの長径と短径を測定し、6枚のTEM写真を用いて合計120個のドメインの長径と短径を測定し、それらの平均値を、それぞれ、「平均長径」、「平均短径」とした。
(8−2)平均異方指数
平均長径/平均短径の値を「平均異方指数」とした。
(9)延伸フィルム中の熱可塑性エラストマーの平均ドメイン間隔
延伸フィルムの幅方向の中心部からランダムに採取した部分における長手方向断面の5箇所について、日本電子社製JEM−1230透過電子顕微鏡を用いて、TEM観察をおこなった(加速電圧100kV、直接倍率20000倍)。観察試料としては凍結ウルトラミクロトームで切り出した厚さ100nmの切片を用いた。
得られたTEM写真を用いて、フィルムの長手方向に5μm以上離した任意の2箇所で、フィルムの厚み方向5μmに存在するドメインの数Nを計測して、以下の式によりドメイン間隔を求めた。
ドメイン間隔=5/N(μm)
図1を参照して説明する。例えば、図1の位置Aにおいては、ドメインDが13個あるため、ドメイン間隔は約0.38μmとなる。TEM写真1枚につき2箇所のドメイン間隔を測定し、5枚のTEM写真を用いて合計10箇所のドメイン間隔を測定し、それらの平均値を、「平均ドメイン間隔」とした。
(10)延伸フィルムの引張強度および引張伸度
JIS K7127に従って測定した。サンプルの大きさは10mm×150mm、チャック間の初期距離は100mm、引張速度は500mm/分とした。
(11)延伸フィルムの耐屈曲性
理学工業社製ゲルボテスターを用いて、熱処理前後の延伸フィルムについて、繰り返し屈曲後のピンホール数により耐屈曲性を評価した。試料としては、フィルムにおける幅方向の中心部からMD300mm×TD200mmに切り出した延伸フィルムを使用し、直径3.5インチ(89mm)の円筒状に把持し、円筒の長さ方向に沿った初期把持間隔を7インチ(178mm)とし、最大屈曲時の把持間隔を1インチ(25.4mm)として、20℃×65%RH環境下で100回、および500回屈曲を与えた後のピンホール数(n=3の平均値)を計測した。フィルムの熱処理は、250℃に調整した熱風乾燥機中にて、金枠に固定した状態で5分間加熱後、放冷した。そして、以下の基準に従い評価した。実用上、△以上であることが好ましい。
◎:100回屈曲後のピンホール数、500回屈曲後のピンホール数が共に1個未満
○:100回屈曲後のピンホール数が1個未満、かつ、500回屈曲後のピンホール数が1〜2個
△:100回屈曲後のピンホール数が1個未満、かつ、500回屈曲後のピンホール数が2〜5個
×:100回屈曲後のピンホール数が1個以上、または、500回屈曲後のピンホール数が5個以上もしくはフィルム破断
2.原料
用いた原料を以下に示す。
<原料モノマー>
(1)DDA:1,10−デカンジアミン
(2)NMDA:1,9−ノナンジアミン
(3)MODA:2−メチル−1,8−オクタンジアミン
(4)DDDA:1,12−ドデカンジアミン
(5)TPA:テレフタル酸
(6)IPA:イソフタル酸
(7)STA:ステアリン酸
(8)BA:安息香酸
<触媒>
(1)STA:次亜リン酸ナトリウム
(2)PA:亜リン酸
<熱安定剤>
(1)スミライザーGA−80:住友化学社製、熱分解温度:392℃
<半芳香族ポリアミド(A)>
(1)半芳香族ポリアミドA1
ジカルボン酸成分としての粉末状のテレフタル酸(TPA)470質量部と、モノカルボン酸としての分子量284のステアリン酸(STA)32質量部と、重合触媒としての次亜リン酸ナトリウム一水和物(SHP)0.093質量部とを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分としての100℃に加温した1,10−デカンジアミン(DDA)498質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し、反応物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=48.5:49.6:1.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.0:50.0:1.0)であった。その後、得られた反応物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間固相重合して、ポリマーを得た。
続いて、ポリマー100質量部と熱安定剤であるスミライザーGA−80 0.4質量部とをドライブレンドし、スクリュー径が26mmである二軸押出機を用いて溶融混練した。二軸押出機のシリンダー温度は325℃であった。その後、ストランド状に押出し、冷却、切断して、ペレット状の半芳香族ポリアミドA1を製造した。
(2)、(3)半芳香族ポリアミドA2、A3
半芳香族ポリアミドA1の場合と比べて、原料モノマーの組成と配合量を表1に示すように変更した。そして、それ以外は半芳香族ポリアミドA1の場合と同様の操作をおこなって、半芳香族ポリアミドA2、A3を製造した。
(4)半芳香族ポリアミドA4
表1に示すように、原料モノマーの組成と配合量を変更し、ペレット化のシリンダー温度を310℃にする以外は、半芳香族ポリアミドA1と同様の操作をおこなって、半芳香族ポリアミドA4を製造した。
表1に、半芳香族ポリアミドA1〜A4の共重合比率と特性値を示す。
<熱可塑性エラストマー(B)>
(1)タフマーMH7020:三井化学社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、溶融粘度1.5g/10分、Tg −65℃
(2)タフマーMA8510:三井化学社製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、溶融粘度5.0g/10分、Tg −55℃
(3)タフテックM1913:旭化成社製、無水マレイン酸変性ポリスチレン−水添ポリブタジエン共重合体、溶融粘度5g/10分、Tg −20℃および105℃
(4)タフマーA1050S:三井化学社製、未酸変性ポリオレフィン、溶融粘度2.2g/10分、Tg −65℃
<熱可塑性エラストマー含有マスター>
・ 熱可塑性エラストマー含有マスターM1
半芳香族ポリアミドA1を75質量%、熱可塑性エラストマーとしてのタフマーMH7020を25質量%、さらに半芳香族ポリアミドと熱可塑性エラストマーの合計100質量部に対してスミライザーGA−80 0.4質量部をドライブレンドし、シリンダー温度325℃に加熱した、スクリュー径が26mmである二軸押出機に投入、溶融混練してストランド状に押出した。その後、冷却、切断して、ペレット状の熱可塑性エラストマー含有マスターを製造した。
(2)熱可塑性エラストマー含有マスターM2〜M5
熱可塑性エラストマー含有マスターM1を製造した際と比べて、半芳香族ポリアミドと熱可塑性エラストマーの種類と配合比率とを表2に示すように変更した。そして、それ以外は熱可塑性エラストマー含有マスターM1を製造したる際と同様の操作をおこなって、熱可塑性エラストマー含有マスターM2〜M5を製造した。
熱可塑性エラストマー含有マスターの配合比率を表2に示す。
[未延伸フィルム]
(1)未延伸フィルムN1
80質量部の半芳香族ポリアミドA1と、20質量部の熱可塑性エラストマー含有マスターM1とを、シリンダー温度を330℃に加熱した、スクリュー径が50mmである単軸押出機に投入して溶融することで、溶融ポリマーを得た。この溶融ポリマーを、金属繊維焼結フィルター(日本精線社製、「NF−13」、絶対粒径:60μm)を用いて濾過した。その後、330℃にしたTダイよりフィルム状に押出し、フィルム状の溶融物とした。さらに、この溶融物を50℃に設定した冷却ロール上に静電印加法により密着させて冷却し、実質的に無配向の未延伸フィルム(平均厚み:230μm)を得た。
未延伸フィルムに用いた半芳香族ポリアミドと熱可塑性エラストマー含有マスターの配合比率および未延伸フィルムの樹脂組成を表3に示す。
・ 未延伸フィルムN2〜N12
未延伸フィルムN1を製造した際と比べて、半芳香族ポリアミドと熱可塑性エラストマー含有マスターの種類と配合比率を表3に示すように変更した。そして、それ以外は未延伸フィルムN1を製造した際と同様の操作をおこなって、未延伸フィルムN2〜N12を製造した。なお、N3,4,12の未延伸フィルムについては、冷却ロールの速度を調整して、平均厚みが110μmと180μmのフィルムも同時に採取した。
実施例1
未延伸フィルムN1の両端をクリップで把持しながら、フラット式同時二軸延伸機にて、二軸延伸をおこなった。延伸条件は、予熱部の温度が120℃、延伸部の温度が125℃、MDの延伸歪み速度が2400%/分、TDの延伸歪み速度が2760%/分、MDの延伸倍率が3.0倍、TDの延伸倍率が3.3倍であった。延伸後連続して、同テンター内で275℃にて熱固定をおこない、フィルムの幅方向に5%のリラックス処理を施し、平均厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。その評価結果を表4に示す。
実施例2〜6、8〜13、比較例1〜3
表4に示すように、実施例1と比べて、延伸倍率や延伸温度、熱固定温度、リラックスの倍率を変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、半芳香族ポリアミドフィルムを製造した。その評価結果を表4に示す。
実施例7
未延伸フィルムN4に対し、フラット式逐次軸延伸機にて、二軸延伸をおこなった。まず、未延伸フィルムをロール加熱、赤外線等で120℃に加熱し、縦方向に延伸歪み速度が4000%/分で2.5倍延伸して縦延伸フィルムを得た。続いて連続的に、両端を横延伸機のクリップに把持させ、横延伸をおこなった。横延伸の予熱部の温度は125℃、延伸部の温度は145℃、延伸歪み速度が2000%/分、TDの延伸倍率が2.8倍であった。そして、同テンター内で、275℃で熱固定をおこない、フィルムの幅方向に3%のリラックス処理を施し、平均厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。その評価結果を表4に示す。
実施例14
表4に示すように、実施例6に比べて未延伸フィルムをN12に変更し、熱固定温度を変更した。そして、それ以外は実施例6と同様にして、半芳香族ポリアミドフィルムを製造した。その評価結果を表4に示す。
実施例1〜14の半芳香族ポリアミドフィルムは、耐熱性が高く、耐屈曲性等の変形耐性や延伸性に優れ、厚みムラが小さいものであった。
実施例2、実施例4および実施例5の半芳香族ポリアミドフィルムは、それぞれ、樹脂組成の等しい実施例3、および実施例6の半芳香族ポリアミドフィルムよりも、延伸倍率が低かった。そのため、熱可塑性エラストマーのドメインの平均異方指数が小さく、平均ドメイン間隔がやや大きく、耐屈曲性がやや劣っていた。
実施例3の半芳香族ポリアミドフィルムは、用いた熱可塑性エラストマーの含有量が本発明で規定する好ましい範囲よりも低かった。そのため、それぞれ用いた熱可塑性エラストマーの含有量のみが異なる実施例1、6よりも、平均ドメイン間隔が大きく、耐屈曲性、特に熱処理後の耐屈曲性の改良効果がやや小さかった。
実施例8の半芳香族ポリアミドフィルムは、用いた熱可塑性エラストマーの含有量が本発明で規定する好ましい範囲よりも高かった。そのため、用いた熱可塑性エラストマーの含有量のみが異なる実施例1、6よりも、延伸性が低く、フィルムの厚みムラがやや大きく、また、引張強度伸度もやや低かった。
実施例9、10の半芳香族ポリアミドフィルムは、半芳香族ポリアミド中のジカルボン酸成分および/もしくはジアミン成分の一部をテレフタル酸もしくは1,10−ドデカンジアミン以外の成分で共重合していた。そのため、加工性が良好で、フィルムの厚みムラが小さく、また、耐屈曲性も優れていた。
実施例12,13の半芳香族ポリアミドフィルムは、ナイロン10T中にナイロン9Tを混合していた。そのため、フィルムの厚みムラが小さく、また、耐屈曲性も優れていた。特に、ナイロン9Tの混合割合の高い実施例13は熱処理後の耐屈曲性にも優れていた。しかし、熱固定温度275℃ではやや平面性の悪化が認められたため、熱固定温度は270℃までしか上げられなかった。
比較例1の半芳香族ポリアミドフィルムは、用いた熱可塑性エラストマーの含有量が本発明で規定する範囲よりも低かった。そのため、耐屈曲性、特に熱処理後の耐屈曲性に劣っていた。
比較例2の半芳香族ポリアミドフィルムは、用いた熱可塑性エラストマーの含有量が本発明で規定する範囲よりも多かった。そのため、延伸性に劣り、面倍率10倍の延伸フィルムが得られなかった。
比較例3の半芳香族ポリアミドフィルムは、用いた熱可塑性エラストマーが官能基を有していなかった。そのため、延伸性が低く、フィルムの厚みムラが著しく大きかった。また、平均短径、平均ドメイン間隔も大きく、耐屈曲性に劣っていた。

Claims (3)

  1. テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸を含むとともに、炭素数が10である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミンを含む半芳香族ポリアミド(A)98〜90質量%と、
    官能基を有する熱可塑性エラストマー(B)2〜10質量%とを含有し、
    延伸されていることを特徴とする半芳香族ポリアミドフィルム。
  2. 官能基を有する熱可塑性エラストマー(B)が、ジカルボン酸および/またはその誘導体で変性されたオレフィン系の熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
  3. 熱可塑性エラストマー(B)のドメインの平均短径が0.01〜5.0μmであり、かつフィルムの長手方向の断面における熱可塑性エラストマー(B)の平均ドメイン間隔が0.1〜1.5μmである状態で、熱可塑性エラストマー(B)がフィルム中に分散していることを特徴とする請求項1または2記載の半芳香族ポリアミドフィルム。
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