JP7307454B2 - ペロブスカイト量子ドット発光デバイスおよびその製造方法 - Google Patents
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そこで、本発明では、長鎖アルキル配位子の少なくとも一部を、該長鎖アルキル配位子よりも炭素数の少ない短鎖架橋性配位子で置換したペロブスカイト量子ドットであって、凝集を抑え、分散安定性を向上させ、薄膜形成と同時に架橋して不溶化するペロブスカイト量子ドットを含む発光デバイスを提供することを目的とする。
本発明のペロブスカイト量子ドット発光デバイスは、両末端に反応基を有する短鎖架橋性配位子で少なくとも一部が被覆されたペロブスカイト量子ドットからなる層を含むことを特徴とする。
前記ペロブスカイト量子ドットは、具体的には、長鎖アルキル配位子を有するハロゲン化鉛系ペロブスカイト前駆体の少なくとも一部が、両末端に反応基を有する短鎖架橋性配位子で置換されたものである。
前記長鎖アルキル配位子の炭素数は2~18であることが好ましい。
前記両末端に反応基を有する短鎖架橋性配位子の炭素数は2~16であることが好ましい。
前記両末端に反応基を有する短鎖架橋性配位子は、アルキルジアミン、アルキルジチオール、またはアルキルジカルボン酸であることが好ましい。
陽極と、陰極と、該陽極および陰極の間に、前記両末端に反応基を有する短鎖架橋性配位子で少なくとも一部が被覆されたペロブスカイト量子ドットからなる層とを有し、陽極および陰極のうち少なくとも一方が透明電極であることが好ましい。
前記工程3の後、さらに、工程2および3を繰り返し行って、ペロブスカイト量子ドット多層膜を形成することが好ましい。
前記工程3の後、不溶化したペロブスカイト量子ドット膜上に、さらに、異種材料を塗布成膜することが好ましい。
また、アルキルジアミンを添加することで、ペロブスカイト量子ドット膜のエネルギー準位を調節することができる。
以下、前記ペロブスカイト量子ドットLEDの各構成について詳細に説明する。
前記ペロブスカイト量子ドットは、ペロブスカイト構造CsPbX3(X=Cl,Br,I)を有するハロゲン化鉛系ペロブスカイト量子ドットに、ホットインジェクション法を用いて長鎖アルキル配位子を配位子交換により導入した後、該長鎖アルキル配位子の少なくとも一部を短鎖架橋性配位子で置換した構造を有する。
前記長鎖アルキル配位子形成能を有する化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような配位子を形成する短鎖架橋性配位子形成化合物は、アルキルジアミン、アルキルジチオール、またはアルキルジカルボン酸が好ましい。
アルキルジアミンには、例えば、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンおよび1,4-ジアミノシクロヘキサンなどが挙げられる。
前記ペロブスカイト量子ドットにおいて、アルキルジアミンは、ペロブスカイト量子ドットと静電相互的な結合を形成する。
前記ペロブスカイト量子ドットにおいて、アルキルジチオールは、チオール基同士が結合してジスルフィド結合を形成してもよいし、ペロブスカイト量子ドットと静電相互作用を利用した結合を形成してもよい。
前記ペロブスカイト量子ドットにおいて、アルキルジカルボン酸は、ペロブスカイト量子ドットと静電相互作用的な結合を形成する。
前記ペロブスカイト量子ドットにおいて、短鎖架橋性配位子形成化合物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
なお、後述するように、長鎖アルキル配位子は、低誘電率溶媒によるリンス処理または浸漬処理により、脱離する。
ペロブスカイト量子ドットCsPbX3のハロゲン元素XはCl、BrおよびIのいずれでもよいが、Brが好ましい。
長鎖アルキル配位子を有するハロゲン化鉛系ペロブスカイト前駆体は、長鎖アルキル配位子形成能を有する化合物をトルエンおよびオクタンなどの有機溶媒に溶解させた溶液をペロブスカイト材料CsPbX3(X=Cl,Br,I)に添加して、配位子交換という方法で、結晶構造が安定なCsPbX3の一部を液中で置換することにより形成される。
ハロゲン化鉛系ペロブスカイト前駆体に、長鎖アルキル配位子が導入されると、CsPbX3(X=Cl,Br,I)を構成するXの1つまたは2つ以上が脱離して、脱離した空孔に長鎖アルキル配位子形成能を有する化合物の反応基が入り、配位子交換が起こる。
前記溶液調製のための有機溶媒には、トルエン、オクタン、ヘキサンおよびシクロヘキサノンなどが用いられる。長鎖アルキル配位子の炭素数が8以上の場合、前記有機溶媒に良好に分散する。炭素数が8未満では、量子ドットの凝集や析出が起こり、分散が困難となる。
湿式法には、スピンコート法、ブレードコート法およびインクジェット法などが用いられる。湿式法で液膜を形成した後、室温下または60℃程度の加温下に乾燥させる。
薄膜形成と同時に、ペロブスカイト量子ドット間を短鎖架橋性配位子が架橋し、さらに、長鎖アルキル配位子が脱離することで架橋が進行する。つまり、両末端反応基を配位子とすることで、ペロブスカイト量子ドット膜の不溶化を実現することができる。
また、ペロブスカイト量子ドット膜を不溶化することで、さらに上層をペロブスカイト量子ドット膜上に形成するときに、塗布法による形成が可能となる。
基板は、透明材料、具体的にはガラスで形成されることが好ましい。
陽極や陰極を形成する材料は、効率良く発光させるために十分な電子やホールを注入できるものでなければならない。そのため、キャリアを受ける有機分子や高分子などの他の材料の最高被占軌道(HOMO)および最高空軌道(LUMO)との障壁ができるだけ小さくなるように、電子注入側の陰極には仕事関数の小さいもの、陽極には仕事関数の大きいものを使用する。また、光を取り出すため、少なくとも一方の電極は透明である必要がある。よって、陽極の材料には、一般に酸化インジウムスズ(ITO)が用いられる。一方、陰極の材料には、アルミニウムや、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの仕事関数の小さな金属、例えば、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、リチウム-アルミニウム(Li-Al)などの合金が用いられる。
[実施例1]
[合成例1]ペロブスカイト量子ドットCsPbBr3の合成
ホットインジェクション法を用いた公知の方法でペロブスカイト量子ドットCsPbBr3を合成した。すなわち、脱気した50mLの四口フラスコにオレイン酸0.833mLおよびオクタデセン10mLを秤取り、120℃で1時間脱気をした後、炭酸セシウム271mgを加え、再度120℃で1時間脱気し、セシウムオレイトを合成した。
一方、200mLの四口フラスコを脱気した後、オレイン酸10ml、オレイルアミン10ml及びオクタデセン100ml加え、120℃で1時間脱気した。その後、臭化鉛21.38g加え、再度120℃で1時間脱気し、170℃に昇温させながらN2フローをし、160℃に加熱したセシウムオレイト8mlをインジェクションし、5秒後に氷水に入れ急冷し反応を終えた。
合成例1で合成したペロブスカイト量子ドットCsPbBr3をトルエンに分散した後、トルエンの2倍量の酢酸エチルを加え12000rpmで5分間遠心分離を行い、上澄みを除去し沈殿物を回収し、トルエンに再分散させて15mg/mLに濃度調整した。
濃度調整した15mg/mLのトルエン溶液1.0mLを攪拌中に、オレイン酸(OA)を50μL添加し、すぐに、0.05Mのジデシルジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)トルエン溶液を2.0mL加え、DDABに配位子交換した。
得られた反応生成物に対して、体積比2倍の酢酸エチルを加えて、12000rpmで5分間遠心分離を行い、上澄みを除去し沈殿物を回収した。再度、トルエン溶媒および酢酸エチルを加えて遠心分離により回収したペロブスカイト量子ドットをオクタンに分散させた。
合成例2の分散液に対し、5vol%の量でアルキルジアミントルエン分散溶液(0.05M)を添加し、スピンコート法により成膜した。薄膜形成過程において、アルキルジアミンを介してペロブスカイト量子ドット間で配位することで架橋を目指した。さらに、溶液状態においてペロブスカイト量子ドット間の凝集を抑制するため、DDAB(炭素数12)より炭素鎖の短いアルキルジアミン(炭素数6)を用いた。
図2に示すように、基板上に、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/ペロブスカイト量子ドット発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなるボトムエミッション型のペロブスカイト量子ドット発光デバイスを形成した。以下に発光デバイスの作製方法を示す。
130nmのITO(インジウム・ズズ酸化物)が形成されたガラス基板上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、エッチングを行い、ストライプ状のパターンを形成した。このパターン形成したITOガラス基板を中性洗剤で洗浄後、超純水でスピンリンス洗浄し、UVオゾン処理を20分間行った。
ITOガラス基板上に、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)(ヘレウス社製Clevious AI4083)を2500rpmで30秒の条件でスピンコートした後、150℃で10分間乾燥し、40nmのホール注入層を形成した。
グローブボックスへと搬送し、ホール輸送層とペロブスカイト量子ドット層とをスピンコート法により順次成膜した。ホール輸送層は、N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(poly-TPD)をクロロベンゼンに濃度4mg/mLで溶解し、PEDOT:PSS上に1000rpmで30秒の条件でスピンコートした後、100℃で10分間乾燥し、厚さ20nmの膜層を形成した。発光層として、濃度10mg/mLに調整したペロブスカイト量子ドットのオクタン分散液を、poly-TPD上に2000rpmで30秒の条件でスピンコートした。
その後、大気暴露することなく、真空蒸着装置に搬送し、真空度5×10-5Paで電子輸送層、電子注入層および陰極を形成した。電子輸送層には、2,2’,2”-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンゾイミダゾール)(TPBi)、電子注入層には8-ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)、陰極にはアルミニウム(Al)を使用した。
発光デバイス(LED)を作製した後、ガラス管とエポキシ樹脂を用いて封止を行い、特性を評価した。
実施例1において、アルキルジアミン添加前のペロブスカイト量子ドットCsPbBr3膜を用いて、実施例1と同様に、物性評価、発光デバイス作製および評価を行った。
アルキルジアミン添加によるペロブスカイト量子ドット膜の不溶化をオクタンリンス処理前後でのUV-vis吸収スペクトル(島津製作所社製UV-3150)により検討した。アルキルジアミンを添加した実施例1のペロブスカイト量子ドットでは、オクタンリンス処理による吸収強度の減少は確認されなかった(図3)。また、アルキルジアミン添加によりペロブスカイト量子ドット膜のPLQYは、31.8%から57.5%まで大幅に改善した(図4,表1)。さらに、アルキルジアミン添加前後およびオクタンリンス前後で発光波長および半値幅が変化しないことを確認した(図4)。これらの結果より、アルキルジアミン添加およびオクタンリンス処理は、発光波長および半値幅に影響することなく、膜の不溶化およびPLQYの向上を実現する優れた手法であることを示した。
アルキルジアミン処理前後におけるペロブスカイト量子ドットの光学特性の結果を表1に示す。
実施例1において、アルキルジアミン添加したペロブスカイト量子ドット膜CsPbBr3膜を二層積層した多積層膜を用いて、実施例1と同様に、物性評価、発光デバイス作製および評価を行った。
アルキルジアミン添加およびオクタンリンスによる配位子除去処理により得られたペロブスカイト量子ドット膜を二層に積層し、多積層膜を形成した。UV-vis吸収スペクトルの結果より、ペロブスカイト量子ドット層を積層することで、吸収強度が2倍程度向上した(図5a)。また、発光スペクトル(堀場製作所社製FluoroMAX-2)より積層後も発光波長および半値幅、発光量子収率にほとんど変化がないことから、アルキルジアミン添加したペロブスカイト量子ドット膜の積層はペロブスカイト量子ドット膜の厚膜化において極めて有用な手法であることを明らかにした(図5b,表2)。さらに、それらのペロブスカイト量子ドット膜を発光層としてデバイスを作製したところ、厚膜化(二層積層)により最大輝度が2681cd/m2から3246cd/m2まで大幅に向上するとともに、駆動電圧の高電圧化を抑制した。さらに、最大EQEは、5.56%から9.60%までの改善を達成した。
多積層化前後のペロブスカイト量子ドットの光学特性の結果を表2に示す。
Claims (3)
- 長鎖アルキル配位子を有するハロゲン化鉛系ペロブスカイト前駆体を含む溶液中に、両末端に反応基を有する短鎖架橋性配位子を含む溶液を添加して、前記長鎖アルキル配位子の少なくとも一部が前記短鎖架橋性配位子で置換されたペロブスカイト量子ドットを合成する工程1と、
前記ペロブスカイト量子ドットを基板上に湿式法で塗布して、ペロブスカイト量子ドット膜を形成する工程2と、
前記ペロブスカイト量子ドット膜に、トルエン、オクタンおよびヘキサンの中から選ばれる低誘電率溶媒によるリンス処理または浸漬処理を行い、長鎖アルキル配位子を脱離して、ペロブスカイト量子ドット膜を不溶化させる工程3とを有する、ペロブスカイト量子ドット発光デバイスの製造方法。 - 前記工程3の後、さらに、工程2および3を繰り返し行って、ペロブスカイト量子ドット多層膜を形成する、請求項1に記載のペロブスカイト量子ドット発光デバイスの製造方法。
- 前記工程3の後、不溶化したペロブスカイト量子ドット膜上に、さらに、異種材料を塗布成膜する、請求項1に記載のペロブスカイト量子ドット発光デバイスの製造方法。
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