JP7093098B2 - Ledの製造方法 - Google Patents
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本発明のLEDは、基板上に成膜した電極と、一つまたは複数のハロゲンアニオン塩によりハロゲンアニオン交換したペロブスカイト量子ドットからなる発光層とを有し、前記ペロブスカイト量子ドットが、アリールアンモニウムハロゲン塩でハロゲンアニオン交換したものを含むことを特徴とする。
前記アリールアンモニウムハロゲン塩は、Clアニオン、Brアニオン、またはIアニオンの塩であることが好ましい。
前記電極のうち少なくとも一つは、透明であることが好ましい。
前記低誘電率溶媒はトルエン、オクタンまたはヘキサンであることが好ましい。
基板は、透明材料、具体的にはガラスで形成されることが好ましい。
陽極や陰極を形成する材料は、効率良く発光させるために十分な電子やホールを注入できるものでなければならない。そのため、キャリアを受ける有機分子や高分子などの他の材料の最高被占軌道(HOMO)および最高空軌道(LUMO)との障壁ができるだけ小さくなるように、電子注入側の陰極には仕事関数の小さいもの、陽極には仕事関数の大きいものを使用する。また、光を取り出すため、少なくとも一方の電極は透明である必要がある。よって、陽極の材料には、一般に酸化インジウムスズ(ITO)が用いられる。一方、陰極の材料には、アルミニウムや、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの仕事関数の小さな金属、例えば、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、リチウム-アルミニウム(Li-Al)などの合金が用いられる。
《ホットインジェクション法によるペロブスカイト量子ドットCsPbBr3の合成》
50mL三口フラスコを3回脱気した後、オレイン酸0.833mLおよびオクタデセン20mLを秤取り、120℃で1時間脱気をした。炭酸セシウム271mgを加え、再度120℃で1時間脱気した後、160℃に昇温させながらN2フローを行い、セシウムオレイトを合成した。また、200mLの四口フラスコを3回脱気した後、オレイン酸10 ml、オレイルアミン10ml、およびオクタデセン100ml加え、120℃で1時間脱気した。その後、臭化鉛21.38g加え、再度120℃で1時間脱気し、170℃に昇温させながらN2フローをし、セシウムオレイト8mlをインジェクションし、5秒後に氷水に入れ急冷し反応を終えた。
An-HIを240mgにトルエン10mLを加えた後、合成したペロブスカイト量子ドットCsPbBr3を10mL添加し、室温下で30分間撹拌することでアニオン交換を行った。
反応物に対して体積比1.5倍の酢酸エチルを加えて、10000rpmで30分間、遠心分離を行い、上澄みを除去し沈殿物を回収した。再度、酢酸エチルを加えて遠心分離により回収したペロブスカイト量子ドットをオクタンに分散させ、PLスペクトルを測定することで物性評価を行った。
図1に示すように、基板上に、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/ペロブスカイト量子ドット発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなるボトムエミッション型のペロブスカイト量子ドット発光デバイスを形成した。130nmのITO(インジウム・ズズ酸化物)が形成されたガラス基板上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、エッチングを行い、ストライプ状のパターンを形成した。このパターン形成したITOガラス基板を中性洗剤で洗浄後、超純水でスピンリンス洗浄した、UVオゾン処理を20分間行った。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)(ヘレウス(株)製Clevious AI4083)を2500rpmで30秒の条件でスピンコートした後、150℃で10分間乾燥し、40nmのホール注入層を形成した。グローブボックスへと搬送し、ホール輸送層とペロブスカイト量子ドットをスピンコート法により成膜した。ホール輸送層は、N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(poly-TPD)をクロロベンゼンに濃度4mg/mLで溶解し、PEDOT:PSS上に1000rpmで30秒の条件でスピンコートした後、100℃で10分間乾燥し、20nmの膜層を形成した。発光層として、濃度10mg/mLに調整したペロブスカイト量子ドットのオクタン分散液を、poly-TPD上に2000rpmで30秒の条件でスピンコートした。その後、大気暴露することなく真空蒸着装置に搬送し、真空度5×10-5Paで電子輸送層、電子注入層、陰極を形成した。電子輸送層には、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンゾイミダゾール)(TPBi)、電子注入層には8-ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)、陰極にはアルミニウム(Al)を使用した。発光デバイスを作製した後、ガラス管とエポキシ樹脂を用いて封止を行い、ELスペクトルを測定することで発光デバイスの特性を評価した。
実施例1において、An-HIを用いたアニオン交換を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、精製、物性評価、ならびに発光デバイス作製および評価を行った。
実施例1において、An-HIの代わりに、長鎖アルキルアンモニウム塩であるオレイルアミンヨウ素(OAMI)を用いてアニオン交換を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、精製、物性評価、ならびに発光デバイス作製および評価を行った。
《アニオン交換前後での発光特性と化学組成》
PLスペクトル測定から、アニオン交換前の発光波長が509nm(比較例1)であるに対して、An-HIを用いてアニオン交換することで、図2に示すように発光波長が640nm(実施例1)へと長波長化した。長鎖アルキルアンモニウム塩OAMIを用いた場合でも同様に長波長化を示しており(比較例2)、アリールアンモニウム塩においてもペロブスカイト量子ドットのハロゲン交換が良好に行えることを示している。また、溶液状態の発光量子収量は、交換前が38%(比較例1)であるのに対して、An-HIを用いたハロゲン交換後では69%(実施例1)、OAMIでは80%にまで向上する。X線光電子分光測定からペロブスカイト量子ドットの化学組成比を求めたところ、交換前ではPb:Br=1:2.78(比較例1)であるのに対して、反応後ではPb:Br/I=1:2.94(実施例1)、Pb:Br/I=1:3.00(比較例1)となることから、アニオン欠陥の補填により発光量子収量が向上すると考えられる。
ハロゲンアニオン交換前後での物性評価結果を表1に示す。
上記各発光デバイスのデバイス特性を図3および表2に示した。アニオン交換前の比較例1のELスペクトルは発光波長511nmであるのに対し、An-HIによりアニオン交換した実施例1では645nm、OAMIでアニオン交換した比較例2では653nmの赤色発光を示した。また、アニオン交換前のペロブスカイト量子ドットを用いた発光デバイスの外部量子効率が0.56%(比較例1)に対して、An-HIによりアニオン交換をすることで、外部量子効率が10.7%(実施例1)へと向上する。同様にOAMIを用いた場合では、21.3%にまで高性能化することが認められた。しかしながら、発光デバイスの耐久寿命では、An-HIを用いることで、OAMI(比較例1)よりも長寿命化する傾向が得られた(図4)。以上のことから、アリールアンモニウム塩を用いてペロブスカイト量子ドットのアニオン交換をすることで、発光デバイスの発光波長の制御、高効率化、長寿命化を同時に達成する手段を与える。
ハロゲンアニオン交換前後での物性評価の結果を表2に示す。
実施例1において用いたアリールアンモニウム塩のハロゲンアニオンをIからClに変えたAn-HClを用いて、ペロブスカイト量子ドットのハロゲンアニオン交換を検証した。添加するアニオン源以外は、実施例1と同様に精製、物性評価およびデバイスの作製・評価を行った。
An-HClを51.4mgにトルエン10mLを加えた後、実施例1で合成したペロブスカイト量子ドットCsPbBr3を10mL添加し、室温下で30分間撹拌することでアニオン交換を行った。
PLスペクトル測定から、アニオン交換前の発光波長が509nm(比較例1)であるに対して、An-HClを用いてアニオン交換することで、図5に示すように発光波長が471nm(実施例2)と短波長化する効果を確認した。また、発光量子収量は、交換前が15%(比較例1)であるのに対して、An-HClを用いたハロゲン交換後では39%(実施例2)に向上する。Clアニオン含有のアリールアンモニウム塩を用いることで、アニオン欠陥を補充し発光量子収量の改善に寄与できる。
実施例1において用いたアリールアンモニウム塩のハロゲンアニオンをIからBrに変えたAn-HBrを用いて、ペロブスカイト量子ドットのハロゲンアニオン交換を検証した。添加するアニオン源以外は、実施例1と同様に精製、物性評価およびデバイスの作製・評価を行った。
An-HBrを278mgにトルエン10mLを加えた後、実施例1で合成したペロブスカイト量子ドットCsPbBr3を10mL添加し、室温下で30分間撹拌することでアニオン交換を行った。
PLスペクトル測定から、An-Brによりアニオン交換したペロブスカイト量子ドットの発光波長は512nm(実施例3)の緑色発光を示し(図6)、実施例1および実施例2とは異なり、アニオン交換前後で発光波長の変化は確認されなかった。しかしながら、X線光電子分光を測定することで、アニオン交換後の化学組成比はPb:Br=1:2.95となっており、アニオン欠陥が補充されていることを明らかにした。それに伴い、発光量子収量も49%に向上したことから、Brアニオン含有のアリールアンモニウム塩を用いることで、アニオン欠陥を補充し発光量子収量の改善に寄与できることがわかった。ELスペクトルについてもペロブスカイト量子ドット由来の発光を確認できた。
実施例3において用いたアリールアンモニウム塩のアリール基をアニリンからベンジルアミンに変えたBA-HBrを用いて、ペロブスカイト量子ドットのハロゲンアニオン交換を検証した。添加するアニオン源以外は、実施例1と同様に精製、物性評価およびデバイスの作製・評価を行った。
BA-HBrを150mgにトルエン10mLを加えた後、実施例1で合成したペロブスカイト量子ドットCsPbBr3を10mL添加し、室温下で30分間撹拌することでアニオン交換を行った。
PLスペクトル測定から、BA-Brによりアニオン交換したペロブスカイト量子ドットの発光波長は512nm(実施例4)の緑色発光を示し(図7)、実施例3と同様に発光波長の変化は確認されなかった。しかしながら、アニオン交換後の化学組成比はPb:Br=1:2.98となっており、アニオン欠陥が補充されていることを明らかにした。それに伴い、発光量子収量も67%に向上したことから、アリール基がベンジルアミンであってもカウンターイオンにBrアニオンを有することで、アニリン(実施例3)と同様にアニオン欠陥を補充し発光量子収量の改善に寄与できることがわかった。ELスペクトルについてもペロブスカイト量子ドット由来の発光を確認できた。
実施例3において用いたアリールアンモニウム塩のアリール基をアニリンからフェニルエチルアミンに変えたPEA-HBrを用いて、ペロブスカイト量子ドットのハロゲンアニオン交換を検証した。添加するアニオン源以外は、実施例1と同様に精製および物性評価、デバイスの作製・評価を行った。
PEA-HBrを161mgにトルエン10mLを加えた後、実施例1で合成したペロブスカイト量子ドットCsPbBr3を10mL添加し、室温下で30分間撹拌することでアニオン交換を行った。
PLスペクトル測定から、PEA-Brによりアニオン交換したペロブスカイト量子ドットの発光波長は512nm(実施例5)の緑色発光を示し(図7)、実施例3および実施例4と同様に発光波長の変化は確認されなかった。しかしながら、アニオン交換後の化学組成比はPb:Br=1:2.93となっており、アニオン欠陥が補充されていることを明らかにした。それに伴い、発光量子収量も67%に向上したことから、アリール基がフェニルエチルアミンであってもカウンターイオンにBrアニオンを有することで、アニリン(実施例3)およびベンジルアミン(実施例4)と同様にアニオン欠陥を補充し発光量子収量の改善に寄与できることがわかった。ELスペクトルについてもペロブスカイト量子ドット由来の発光を確認できた。
Claims (3)
- 塗布により発光層を形成する工程を含み、前記工程において、
ペロブスカイト量子ドットと低誘電率溶媒とを含むペロブスカイト量子ドット分散液を調製し、
アリールアンモニウムハロゲン塩を固体状態もしくは液体状態で、前記ペロブスカイト量子ドット分散液と接触させてハロゲンアニオン交換することにより発光層用塗布液を調製し、
前記発光層用塗布液を塗布して発光層を形成し、
前記アリールアンモニウムハロゲン塩が、アニリンハロゲン化水素酸塩、ベンジルアミンハロゲン化水素酸塩、またはフェニルエチルアミンハロゲン化水素酸塩であり、かつ、前記アリールアンモニウムハロゲン塩がClアニオン、Brアニオン、またはIアニオンの塩であることを特徴とするLEDの製造方法。 - 前記ペロブスカイト量子ドットにおいて、鉛を1とした場合のハロゲン比率が2.8~3.1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のLEDの製造方法。
- 前記低誘電率溶媒がトルエン、オクタンまたはヘキサンであることを特徴する請求項1または2に記載のLEDの製造方法。
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