JP7306274B2 - ジシアノシクロヘキサン、及びビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法 - Google Patents
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Description
(1)シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩と、アンモニア源とのシアノ化反応により、ジシアノシクロヘキサンを得るシアノ化工程を有する、ジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(2)前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸が、2-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸、3-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸、又は4-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸を含む、上記(1)に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(3)シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はその塩とジシアノシクロヘキサンを加熱することにより、前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩、シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はその塩、および、ジシアノシクロヘキサンの混合物を得る原料製造工程をさらに有する、上記(1)又は(2)に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(4)前記原料製造工程において、前記シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はその塩に対する前記ジシアノシクロヘキサンの重量比が0.3~7.8である混合物を加熱する、上記(3)に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(5)前記原料製造工程において、加熱により生じる前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の生成量が、加熱前の前記シクロヘキサンジカルボン酸に対して20~100モル%となる、上記(3)~(4)に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(6)前記シアノ化工程において、少なくとも、酸化亜鉛、酸化スズ、又は酸化鉄を含む触媒を使用する、上記(3)~(5)に記載のジシアノシクロヘキサン製造方法。
(7)前記アンモニア源が、アンモニア、尿素、炭酸水素アンモニウム、又は炭酸アンモニウムを含む、上記(1)~(6)のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(8)前記シアノ化工程に用いる前記アンモニア源と前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩とのモル比が0.1~5である、上記(1)~(7)のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(9)前記シアノ化工程において、使用する溶媒のうち少なくとも1種の沸点が600℃以下である、上記(1)~(8)のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(10)前記シアノ化工程に用いる、前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩に対する前記溶媒の重量比が10以下である、上記(1)~(9)のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(11)前記シアノ化工程における反応温度が150℃~350℃である、上記(1)~(10)のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(12)前記シアノ化工程における反応圧力が0.001MPa~10MPaである、上記(1)~(11)のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(13)前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の塩が、アンモニウム塩を含む、上記(1)~(12)のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(14)前記シクロヘキサンジカルボン酸の塩が、アンモニウム塩を含む、上記(3)~(13)のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(15)上記(1)~(14)のいずれか1項に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法により得られた前記ジシアノシクロヘキサンに対する水素添加反応により、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得るアミノ化工程を有する、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
本実施形態のジシアノシクロヘキサンの製造方法は、シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸とアンモニア源とのシアノ化反応により、ジシアノシクロヘキサンを得るシアノ化工程を含む。シアノ化工程の概略は、以下の式(I)によって表される。
シアノ化工程においては、2-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸、3-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸、及び、4-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸のいずれの塩を用いても良く、これらの塩の混合物を用いても良い。また、2-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸、3-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸、及び、4-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の少なくともいずれかと、シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の上述の塩の少なくともいずれかを含む混合物をシアノ化工程において用いても良い。
なおこのように、本実施形態におけるシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸には塩の形態も包含され得るため、以下、「シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩」を単に「シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸」とも記載する。
シアノ化工程において用いられる溶媒として、ヘプタデカン、ノナデカン、ドコサン等の脂肪族アルカン;ヘプタデセン、ノナデセン、ドコセン等の脂肪族アルケン;ヘプタデシン、ノナデシン、ドコシン等の脂肪族アルキン;ウンデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等のアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン及びアルキルナフタレン等のアルキル置換芳香族;2,5-ジクロロ安息香酸、テトラクロロフタル酸無水物等の酸または酸無水物;ウンデカンアミド、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド化合物;テトラデカンニトリル、ヘキサデカンニトリル、2-ナフチルアセトニトリル、ステアロニトリル、1,4-ジシアノシクロヘキサン等のニトリル化合物;p-クロロジフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等のリン化合物;1,2-ジフェニルエチルアミン、トリオクチルアミン等のアミン;2,2’-ビフェノール、トリフェニルメタノール等の水酸化物;安息香酸ベンジル、フタル酸ジオクチル等のエステル;4-ジブロモフェニルエーテル等のエーテル;1,2,4,5-テトラクロロ-3-ニトロベンゼン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン等のハロゲン化ベンゼン;2-フェニルアセトフェノン、アントラキノン等のケトン並びにトリフェニルメタン;等が挙げられる。
これらのうち、アルキルナフタレン、トリフェニルメタン、ジシアノシクロヘキサン等がシアノ化反応の進行を妨げない点で好ましい。
シアノ化工程における溶媒量は、シアノ化反応が十分に進行する量であれば良いが、無溶媒、もしくは溶媒と原料であるシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩との重量比(溶媒(ただし後述するジシアノシクロヘキサンを除く)の重量(g)/シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の重量(g))が、10以下であることが好ましく、0.01~10であることがより好ましく、さらに好ましくは0.05~5であり、特に好ましくは0.1~3の範囲内である。
なお、シアノ化工程における原料であるシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸やその塩を溶解させるために、目的物でもあるジシアノシクロヘキサンを溶媒として用いても良い。また、溶媒として使用するジシアノシクロヘキサンの重量比(溶媒の重量(g)/シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の重量(g))算出には、原料製造工程に使用されるジシアノシクロヘキサンを含めず、これを溶媒量として扱わない。
また、シアノ化工程における反応圧力は、陰圧であっても常圧であっても陽圧であってもよいが、0.001MPa~10MPaであることが好ましく、より好ましくは0.05MPa~5MPaであり、さらに好ましくは0.08MPa~0.12MPaの範囲内、例えば常圧(0.1MPa)である。
触媒としては、通常のシアノ化反応に用いられる触媒を採用することもでき、具体的には、シリカゲル、アルミナ、シリカアルミナ、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化マンガン、酸化タングステン、五酸化バナジウム、五酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化スカンジウム等の金属酸化物であり、これらは単体でも複合酸化物でも担持したものでも良い。担持成分としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、スズ、レニウム、マンガン、モリブデン、タングステン、バナジウム、鉄、ニッケル、亜鉛、クロム、ホウ酸、塩酸、リン酸等が挙げられる。
上記の活性成分としての金属触媒を、カーボン、ハイドロタルサイト、MgO、Al2O3、SiO2、SiO2-Al2O3、TiO2、及びZrO2のような通常用いられる1種又は2種以上の担体上に担持した触媒を用いても良い。担体を用いた場合の活性成分である金属触媒の担持量は、担体100質量%に対して、0.1~10質量%であると好ましい。
また、触媒としては、過レニウム酸や酸化レニウム等のレニウム化合物、酸化ジブチルスズ等の有機スズ化合物、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)等のルテニウム化合物、及び酸化コバルト等も挙げられる。
これらの中では、シアノ化反応をより有効かつ確実に進行させる観点から、酸化亜鉛、酸化スズ、又は、酸化鉄を含む触媒が好ましい。触媒は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。さらに、触媒の使用量は、シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸もしくはシクロヘキサンジカルボン酸もしくはそれらの塩100質量%に対して、好ましくは0.05~20質量%である。触媒を上記の範囲内の量とすることにより、得られるジシアノシクロヘキサンの収率を高めることができる。なお、上記触媒はシアノ化工程に限らず、原料製造工程において存在していても良い。
本実施形態のジシアノシクロヘキサンの製造方法においては、原料として単離されているシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸を用いても良い一方、単離されていないシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸やその前駆体を用いても良い。すなわち、シクロヘキサンジカルボン酸と、そのシアノ化によりシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸を生成するためのニトリル化合物等、または、ジシアノシクロヘキサンとそのカルボキシル化によりシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸を生成するためのカルボキシ基を有する化合物等を用いても良い。また、好ましくは、シクロヘキサンジカルボン酸とジシアノシクロヘキサンを加熱させつつ、シクロヘキサンジカルボン酸をシアノ化する下記式(II)に示す反応により、シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸を得る原料製造工程を設けても良い。
原料製造工程に用いるシクロヘキサンジカルボン酸としては、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、及び、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のいずれかが好ましい。原料製造工程においては、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸又はこれらの塩のうち1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いても良い。さらにまた、本実施形態におけるシクロヘキサンジカルボン酸として、シス体、トランス体、シス体とトランス体との混合物のいずれを用いてもよい。
原料製造工程においては、シクロヘキサンジカルボン酸の上述のいずれの塩を用いても良く、また、これらの塩の混合物を用いても良い。また、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、及び、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の少なくともいずれかと、シクロヘキサンジカルボン酸の上述の塩の少なくともいずれかを含む混合物を原料製造工程において用いても良い。
原料製造工程において、シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はその塩と、ジシアノシクロヘキサンとを加熱することにより、シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸および/またはその塩、シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はその塩、及び、ジシアノシクロヘキサンの混合物を得ることができる。
なおこのように、本実施形態におけるシクロヘキサンジカルボン酸には塩の形態も包含され得るため、以下、「シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はその塩」を単に「シクロヘキサンジカルボン酸」とも記載する。
原料製造工程におけるこのような混合物において、ジシアノシクロヘキサンとシクロヘキサンジカルボン酸との重量比(ジシアノシクロヘキサンの重量(g)/シクロヘキサンジカルボン酸及び/又はその塩の重量(g))は、0.3~7.8であることが好ましく、0.5~3.9であることがより好ましく、0.7~2.4であることが特に好ましい。
ただし、原料製造工程において、ジシアノシクロヘキサンとは別途に他の溶媒を用いても良い。
また、原料製造工程における反応圧力は、陰圧であっても常圧であっても陽圧であってもよいが、0.001MPa~10MPaであることが好ましく、より好ましくは0.05MPa~5MPaであり、さらに好ましくは0.08MPa~0.12MPaの範囲内、例えば常圧(0.1MPa)である。
本実施形態のビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法は、上記製法により得られたジシアノシクロヘキサンに対する水素添加反応(以下、「ニトリル水添反応」ともいう)により、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得る下記式(IV)のアミノ化工程を有する。1,2-ジシアノシクロヘキサンからは1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが得られ、1,3-ジシアノシクロヘキサンからは1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが得られ、1,4-ジシアノシクロヘキサンからは1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが得られる。
また、アミノ化工程における反応圧力は、水素分圧で0.5MPa~15MPaであることが好ましく、より好ましくは0.7MPa~10MPaであり、さらに好ましくは1MPa~8MPaの範囲内である
なお、アミノ化工程におけるニトリル水添反応の反応時間は、水素添加が十分に進行する時間であれば良い。
反応条件を上述の範囲内に調整することで、得られるビス(アミノメチル)シクロヘキサンの収率、及び、選択率を高めることができる。
実施例1では、シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸をシアノ化してジシアノシクロヘキサンを得た。
撹拌羽根、供給高さが可変であるガス供給管、熱電対及び脱水装置を付帯した300mL五ツ口セパラブルフラスコに、4-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸88.9g(ごくわずかな不純物として以外、塩を含まない)、酸化亜鉛(関東化学株式会社製)0.2g、及び1,4-ジシアノシクロヘキサン50.0gを仕込んだ。昇温を開始し、300rpm攪拌下に170℃で窒素ガス(供給速度34ml/min)、およびアンモニアガス(供給速度174ml/min)を液面より上に設置したガス供給管からフラスコに導入した。反応系の温度が270℃まで昇温したところでガス供給口を反応液内へ下降させてバブリングを開始し、このときをシアノ化反応の開始時とした。反応系をさらに昇温し、反応温度300℃で7時間攪拌した。
反応終了後、反応系を室温まで放冷し、メタノールを用いて反応生成物を溶解させ、ガスクロマトグラフィー(以下、GCとも記載する)により分析した。その結果、4-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の転化率は99.9%、1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率は91.0%であった。
分析装置:島津製作所社製型式名「GC2010 PLUS」
カラム:製品名「HP-5ms」(アジレント・テクノロジー株式会社製、長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)
キャリアーガス:He(constant pressure:73.9kPa)
注入口温度:300℃
検出器:FID
検出器温度:300℃
カラムオーブン温度:100℃で開始し、10℃/minで300℃まで昇温し300℃で30分間保持
実施例2では、シクロヘキサンジカルボン酸を反応系内でシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸に変換した後に、単離することなく、シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸をさらにシアノ化してジシアノシクロヘキサンを得た。
撹拌羽根、供給高さが可変であるガス供給管、熱電対及び脱水装置を付帯した500mL五ツ口フラスコに、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(ごくわずかな不純物として以外、塩を含まない:東京化成工業株式会社)100g、酸化亜鉛1.6g、及び1,4-ジシアノシクロヘキサン100gを仕込んだ。300rpm攪拌下に170℃で窒素ガス(供給速度68ml/min)、およびアンモニアガス(供給速度348ml/min)を液面より上に設置したガス供給管からフラスコに導入した。反応系の温度が270℃まで昇温したところでガス供給口を反応液内へ下降させてバブリングを開始し、このときをシアノ化反応の開始時とした。反応系をさらに昇温し、反応温度300℃で7時間攪拌した。
反応終了後、反応系を室温まで放冷し、メタノールを用いて反応生成物を溶解させ、GCにより分析した。その結果、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の転化率は99.9%、1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率は90.8%であった。
300mLのSUS316製耐圧容器内に、1,4-ジシアノシクロヘキサン24.4g、溶媒としてのメタノール37.3gと28%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製)28.4g、及び、触媒としてラネーコバルト触媒(和光純薬工業株式会社製)0.56gを仕込み、水素ガスを4.5MPaの反応圧力になるまで導入した。次いで、容器内を80℃の反応温度まで加熱し、温度を一定に保持し、容器内を電磁式攪拌羽根にて750rpmで撹拌しながら、水素添加によるアミノ化反応(ニトリル水添反応)を240分間、進行させた。その結果、1,4-ジシアノシクロヘキサンの転化率は100%、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの選択率は97.0%、収率は97.0%であった。
実施例3では原料に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニウム塩を用いた以外は実施例2と同様にシアノ化反応を行った。
撹拌羽根、供給高さが可変であるガス供給管、熱電対及び脱水装置を付帯した300mL五ツ口セパラブルフラスコに、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニウム塩51.6g(1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量が、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.34であるもの)、触媒としての酸化亜鉛0.20g、及び、1,4-ジシアノシクロヘキサン50gを仕込んだ。300rpm攪拌下に170℃で窒素ガス(供給速度34ml/min)、およびアンモニアガス(供給速度174ml/min)を液面より上に設置したガス供給管からフラスコに導入した。反応系の温度が270℃まで昇温したところでガス供給口を反応液内へ下降させてバブリングを開始し、このときをシアノ化反応の開始時とした。反応系をさらに昇温し、反応温度300℃で7時間攪拌した。
反応終了後、反応系を室温まで放冷し、メタノールを用いて反応生成物を溶解させ、GCにより分析した。その結果、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニウム塩の転化率は99.9%、1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率は90.8%であった。
なお、実施例2で用いられたシクロヘキサンジカルボン酸の代わりにそのアンモニウム塩を用いた実施例3でも良好な結果が得られたことから明らかであるように、実施例1で用いたシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の代わりに、シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の塩、例えば、アンモニウム塩を用いても、実施例1と同様に1,4-ジシアノシクロヘキサンを高い収率で得ることができる。
実施例4では、溶媒を用いない条件でシアノシクロヘキサン-1-カルボン酸をシアノ化してジシアノシクロヘキサンを得た。
撹拌羽根、供給高さが可変であるガス供給管、熱電対及び脱水装置を付帯した300mL五ツ口セパラブルフラスコに、4-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸88.8g、及び、酸化亜鉛0.2gを仕込んだ。その後、窒素ガス(供給速度34ml/min)を液面より上に設置したガス供給管からフラスコに導入しながら、昇温を開始した。300rpm攪拌下に反応系の温度が300℃まで昇温したところでガス供給口を反応液内へ下降させてアンモニアガス(供給速度174ml/min)バブリングを開始し、このときをシアノ化反応の開始時とした。反応温度300℃を維持しながら7時間攪拌した。
反応終了後、反応系を室温まで放冷し、メタノールを用いて反応生成物を溶解させ、GCにより分析した。その結果、4-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の転化率は99.9%、1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率は90.2%であった。
比較例1では、無溶媒下での1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のシアノ化を行った。
撹拌羽根、供給高さが可変であるガス供給管、熱電対及び脱水装置を付帯した300mL五ツ口セパラブルフラスコに、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸50.1g、及び、酸化亜鉛0.2gを仕込んだ。その後、窒素ガス(供給速度34ml/min)を液面より上に設置したガス供給管からフラスコに導入しながら、昇温を開始した。300rpm攪拌下に反応系の温度が300℃まで昇温したところでガス供給口を反応液内へ下降させてアンモニアガス(供給速度174ml/min)バブリングを開始し、このときをシアノ化反応の開始時とした。アンモニアガスの供給によって水が副生したことから、反応の進行が確認されたものの、300℃で2時間攪拌を行った時点で析出固体によって攪拌が困難となったため、反応を中止した。この攪拌不良は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が加熱によって融点300℃を超えるトランス体へと異性化したことが原因だと推察される。
Claims (11)
- シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩と、アンモニア源とのシアノ化反応により、ジシアノシクロヘキサンを得るシアノ化工程を有し、
前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩が単離されていて、
前記シアノ化工程において、少なくとも、酸化亜鉛、酸化スズ、または酸化鉄を含む触媒を使用する、ジシアノシクロヘキサンの製造方法。 - 前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸が、2-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸、3-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸、又は4-シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸を含む、請求項1に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 前記シアノ化工程において、前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩100質量%に対して、0.05~20質量%の前記触媒を使用する、請求項1又は2に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 前記アンモニア源が、アンモニア、尿素、炭酸水素アンモニウム、または炭酸アンモニウムを含む、請求項1~3のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 前記シアノ化工程に用いる前記アンモニア源と、前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩とのモル比であって、前記アンモニア源のモル数/前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び又はその塩のモル数の比が0.1~5である、請求項1~4のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 前記シアノ化工程において、使用する溶媒のうち少なくとも1種の沸点が600℃以下である、請求項1~5のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 前記シアノ化工程に用いる、前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸及び/又はその塩に対する前記溶媒の重量比が10以下である、請求項6に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 前記シアノ化工程における反応温度が150℃~350℃である、請求項1~7のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 前記シアノ化工程における反応圧力が0.001MPa~10MPaである、請求項1~8のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 前記シアノシクロヘキサン-1-カルボン酸の塩が、アンモニウム塩を含む、請求項1~9のいずれかに記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法。
- 請求項1~10のいずれか1項に記載のジシアノシクロヘキサンの製造方法により得られた前記ジシアノシクロヘキサンに対する水素添加反応により、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得るアミノ化工程を有する、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
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