JP2008260757A - 4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】トラネキサム酸の製造中間体として有用な4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸の安価で効率のよい製法を提供する。
【解決手段】1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−ジシアノシクロヘキサンの混合物にマイクロ波を照射することにより、安価に、かつ効率よく4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸を製造することができる。4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸を接触還元して、得られた化合物をアルカリ又はアンモニアで処理することにより、トランスの4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、すなわち抗プラスミン薬として知られるトラネキサム酸へ導くことができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、医薬品等の製造中間体として使用される4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸の製造法に関する。
トラネキサム酸は、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸の化学構造を有する抗プラスミン薬として知られ、出血の抑制、湿疹などにおける掻痒の抑制、或いは扁桃炎等における充血や腫脹などの抑制に用いられている有用な医薬品である。
トラネキサム酸については、多くの製造方法が知られているが、例えば、下記の方法を挙げることができる(特許文献1〜4)。
Figure 2008260757
上記の製造方法においては、シス及びトランス−4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸混合物を還元して、シス及びトランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸混合物を得た後、アルカリやアンモニアで処理して異性化することにより、選択的にトランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸を得ている。
上記の製造方法における出発原料であるシス及びトランス−4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸混合物の製造方法としては、下記の方法が知られている(特許文献5)。
Figure 2008260757
上記の製造方法においては、270〜340℃に加熱するという過酷な条件を用いていることから、この方法に代わる新たなシス及びトランス−4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸混合物の製造方法が求められてきた。
特公昭41−14830号公報 特公昭42−23018号公報 特公昭54−3867号公報 特公昭54−7784号公報 特公昭47−23535号公報
本発明は、トラネキサム酸の製造中間体として有用な4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸の安価で効率のよい製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸の製造方法について鋭意検討した結果、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−ジシアノシクロヘキサンの混合物から安価に、かつ効率よく4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸を製造する方法を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の式(1)
Figure 2008260757
で表される化合物を下記の式(2)
Figure 2008260757
で表される化合物との混合物にマイクロ波を照射することを特徴とする、下記の式(3)
Figure 2008260757
で表される化合物の製造方法を提供する。
また、本発明は、下記の式(1)
Figure 2008260757
で表される化合物と下記の式(2)
Figure 2008260757
で表される化合物との混合物にマイクロ波を照射して、下記の式(3)
Figure 2008260757
で表される化合物を製造し、得られた化合物(3)を接触還元して下記の式(4)
Figure 2008260757
で表される化合物を製造し、得られた化合物(4)をアルカリ又はアンモニアで処理することを特徴とする、下記の式(5)
Figure 2008260757
で表される化合物の製造方法を提供する。
本発明は、安価で効率よくシス及びトランス−4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸混合物を製造できる方法であることから、トラネキサム酸(5)等の医薬品を安価で効率よく製造することを可能とし、さらには医療にも貢献することができる。
以下に、化合物(1)と化合物(2)の混合物から化合物(3)を製造する条件について詳述する。
原料である化合物(1)及び化合物(2)は、市販の化合物である。
化合物(1)と化合物(2)は、いずれもシス異性体とトランス異性体の混合物でもよく、いずれか一方がシス異性体又はトランス異性体であってもよく、さらには化合物(1)と化合物(2)の両方がシス異性体又はトランス異性体であってもよい。また、化合物(1)及び/又は化合物(2)が、シス異性体及びトランス異性体の混合物である場合、シス異性体とトランス異性体の混合比についても限定されない。
本発明においては、安価に化合物(3)を製造することを目的とするものであることから、化合物(1)と化合物(2)は、いずれも安価なシス異性体及びトランス異性体の混合物であることが好ましい。
また、化合物(1)及び化合物(2)が純粋なトランス異性体ある場合、マイクロ波を照射して化合物(3)を生成させるために要する時間が長く、収率も低いことから、化合物(1)と化合物(2)の両方がトランス異性体であるよりも、少なくともいずれか一方がシス異性体であるか、又はシス異性体及びトランス異性体の混合物であることが好ましい。
化合物(1)は、トランス異性体の場合、融点は250℃以上(300℃で分解)であり、シス異性体の場合、融点は172℃であるが、化合物(2)は、トランス異性体の場合、融点は142℃であり、シス異性体の場合、融点は67℃であることから、化合物(1)と化合物(2)の混合物は、シス/トランスにかかわりなく、少なくとも142℃以上に加熱すれば、化合物(2)が融解し、化合物(1)を溶解した油状物となる。すなわち、化合物(2)は、シアノ基の供給源であるばかりではなく、化合物(1)を溶解するための溶媒の役割も担っている。その観点から、化合物(1)と化合物(2)のモル比は、1:0.5〜1:2の範囲が好ましく、1:0.75〜1:1.5の範囲がより好ましい。
化合物(1)と化合物(2)の混合物にマイクロ波を照射して化合物(3)を製造する場合、まず、化合物(1)と化合物(2)の混合物を蒸気、油浴、電熱器等で加熱した後、その温度を保ってマイクロ波を照射することが好ましい。より具体的には、化合物(1)と化合物(2)の混合物にマイクロ波を照射する場合、化合物(1)と化合物(2)の混合物の温度を142〜210℃に加熱して反応させればよい。しかしながら、必ずしも200度前後までの高温を使用する必要はなく、むしろ、実務的には反応温度が低い方が操作性やエネルギーの観点から好ましく、142〜160℃程度に保つことが好ましく、145〜155℃程度、特に約150℃に保つことが好ましい。
また、マイクロ波を照射することにより、化合物(1)と化合物(2)の混合物の温度が上昇する。反応混合物の温度は200℃前後までの高温に達してもよいが、むしろマイクロ波を断続的に照射して145〜155℃程度に保つ方がよい。
また、反応温度を145〜155℃程度に保つためには、マイクロ波を断続的に照射する代わりに、化合物(1)と化合物(2)の混合物が入っている容器を外部から冷却又は加熱して反応温度を145〜155℃程度に保ってもよい。
化合物(1)と化合物(2)から化合物(3)を製造するために照射するマイクロ波の波長は、特に限定されるものではないが、電波法により2.45GHzの利用に制限されているので、その波長を使用することが好ましい。
上記の化合物(3)の製造に関して具体例を示して説明するならば、例えば、化合物(1)1.0g(トランス:シス=76:24)と化合物(2)0.78g(トランス:シス=48:39)の混合物をガラス製試験管に入れて、マイクロ波発生装置[CEM社製、製品名:Discover(最大出力300w、シングルモード)]を用いて、常圧、約150℃で、マイクロ波を30秒間照射することで、80%以上の収率で化合物(3)を得ることができる。反応条件は、これに限られるわけではなく、化合物(1)と化合物(2)の量、反応温度、マイクロ波を発生・照射する装置の電力(W)などに応じて、最適な条件に変更するとよい。マイクロ波の照射時間についても、上記の30秒間に限定されるものではない。具体的には、10秒〜10分間のマイクロ波(MW)の照射時間が好ましく、20秒〜1分の照射時間がより好ましく、特に30秒程度が好ましい。
上記の様に、化合物(1)と化合物(2)の混合物にマイクロ波を照射して化合物(3)を製造する場合、バッチ式に、一定量の化合物(1)と化合物(2)の混合物を試験管等の反応容器に入れて反応させるということを繰り返して多量の化合物(3)を製造してもよいが、化合物(1)と化合物(2)の混合物を反応系外から反応容器に一定速度で流入させて、流入した混合物にマイクロ波を照射し、照射された混合物が反応系外へ流出するようにすることにより、化合物(3)を大量に連続的に生産することも可能である。
化合物(1)と化合物(2)を入れる反応容器についても特に制限はないが、少なくともマイクロ波を照射する部分についてはガラス容器が好ましく、マイクロ波が照射されない部分に関しては、金属、プラスチック、セラミックス等の材質であってもよい。
マイクロ波を照射した反応混合物中には、生成した化合物(3)の他に、化合物(1)と化合物(2)が少量残存する。化合物(3)を単離したい場合には、反応混合物をジクロロエタン等の有機溶剤に溶解し、炭酸ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液で化合物(3)と化合物(1)を抽出した後、その水溶液を酸性として酢酸エチルエステル等の有機溶媒で抽出し、濃縮乾固後に得られた残渣をシリカゲル・カラムクロマトグラフィ等の手段で精製すればよい。
しかしながら、トラネキサム酸を製造する場合には、上述の方法で化合物(2)を除去して化合物(3)と化合物(1)の混合物としたものを使用してもよいし、化合物(2)を除去することなく、化合物(1)と化合物(2)が混在する化合物(3)を使用してもよい。
上記の方法により製造した化合物(3)からトラネキサム酸を製造する工程について述べる。
上述の方法により得た化合物(3)と化合物(1)の混合物を、例えば、アンモニア水溶液としてラネー・ニッケル等の触媒を用いて接触還元し、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(4)を得る場合には、マイクロ波を照射した反応混合物を強酸性樹脂で処理して4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(4)を強酸性樹脂に吸着させて、非塩基性物質である化合物(1)を除去し、酸性水溶液で樹脂から溶出することにより4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(4)を得ることができる。得られた化合物(4)がトランス異性体およびシス異性体の混合物である場合、又はシス異性体である場合には、アルカリ又はアンモニアで処理することによりトランスの4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(5)、すなわちトラネキサム酸へ導くことができる。
上述の方法で化合物(2)を除去して化合物(3)と化合物(1)の混合物を精製することなくアンモニア水溶液として、ラネー・ニッケル等の触媒を用いて接触還元し、4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(4)を得る場合には、同様に強酸性樹脂で処理して4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(4)を含む塩基性物質を強酸性樹脂に吸着させて、非塩基性物質である化合物(1)を除去し、酸性水溶液で樹脂から溶出して塩基性物質を得た後、アルカリ水溶液で4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(4)を抽出すればよい。
シスの4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(4)をトランスの4−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(5)へ導く方法については、前出の特許文献1〜4(特公昭41−14830号公報、特公昭42−23018号公報、特公昭54−3867号、および特公昭54−7784号公報)に記載の方法を用いればよい。
以下に、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明について何らの制限を加えるものではない。
[実施例1]
反応容器に化合物(1)1.00g(トランス:シス=76:24)と化合物(2)0.78g(トランス:シス=48:39)(化合物(1)と化合物(2)のモル比=1:1)を入れ、一度通常加熱にて150℃まで加熱させ、均一溶液とする。この混合物をガスクロマトグラフィーで分析し、化合物(1)と化合物(2)のモル比が1:1であることを確認した。MW発生装置[CEM社製、製品名:Discover(最大出力300w、シングルモード)]にてマイクロ波を照射し、常圧、150℃にて30秒反応を行わせた。この反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、化合物(3)の収量は0.75g(トランス:シス=40:35、収率84.6%)であった。一方、反応が平衡反応であるため化合物(1)0.37gと化合物(2)0.31gが含まれていた。
化合物(3)の収率は原料の化合物(1)に対する化合物(3)のモル%として算出した。
[実施例2]
反応時間10分とした以外は実施例1と同様に反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、化合物(3)の収量は0.73g(トランス:シス=39:34、収率82.5%)であった。一方、反応が平衡反応であるため化合物(1)0.40gと化合物(2)0.34gが含まれていた。
[実施例3]
反応温度200℃、反応時間4分とした以外は実施例1と同様に反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、化合物(3)の収量は0.76g(トランス:シス=41:35、収率85.7%)であった。一方、反応が平衡反応であるため化合物(1)0.37gと化合物(2)0.33gが含まれていた。
[実施例4]
化合物(1)1.00g(トランス:シス=76:24)、化合物(2)1.17g(トランス:シス=48:39)(モル比1:1.5)、反応温度200℃、反応時間4分とした以外は実施例1と同様に反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、化合物(3)の収量は0.81g(トランス:シス=49:42、収率102.1%)であった。一方、反応が平衡反応であるため化合物(1)0.30gと化合物(2)0.64gが含まれていた。
[比較例1]
反応容器に化合物(1)5.00g(トランス:シス=76:24)と化合物(2)3.9g(トランス:シス=48:39)(モル比1:1)を入れ、反応温度310〜320度で反応を1時間行った。反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、化合物(3)の収量は3.08g(トランス:シス=54:46、収率69.4%)であった。一方、反応が平衡反応であるため化合物(1)8.57gと化合物(2)8.70gが含まれていた。

Claims (6)

  1. 下記の式(1)
    Figure 2008260757

    で表される化合物と下記の式(2)
    Figure 2008260757

    で表される化合物との混合物にマイクロ波を照射することを特徴とする、下記の式(3)
    Figure 2008260757

    で表される化合物の製造方法。
  2. 式(1)、(2)、及び(3)で表される化合物がいずれもシス異性体とトランス異性体の混合物である請求項1に記載の製造方法。
  3. マイクロ波の波長が2.45GHzである請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 式(1)及び(2)で表される化合物の混合物の温度を142〜210℃に保ってマイクロ波を照射する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 式(1)及び(2)で表される化合物の混合物の温度を142〜160℃に保ってマイクロ波を照射する請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 下記の式(1)
    Figure 2008260757

    で表される化合物と下記の式(2)
    Figure 2008260757

    で表される化合物との混合物にマイクロ波を照射して、下記の式(3)
    Figure 2008260757

    で表される化合物を得、得られた化合物(3)を接触還元して下記の式(4)
    Figure 2008260757

    で表される化合物を得、得られた化合物(4)をアルカリ又はアンモニアで処理することを特徴とする、下記の式(5)
    Figure 2008260757

    で表される化合物の製造方法。
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