JP7306087B2 - フィルム及び積層体の製造方法 - Google Patents

フィルム及び積層体の製造方法 Download PDF

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本発明は、防汚性を有するフィルム及び積層体の製造方法に関する。
車両内外装部品、家電機器、ノートPC、携帯電話、家具などの部材の表面に装飾を施す方法の一つとして、加飾用フィルムを基材に貼り合わせる方法がある。この加飾用フィルムを使用した方法は、塗装などの従来の方法と比較して、意匠性や耐久性などに優れ、多く用いられるようになってきている。
加飾用フィルムには、装飾を施すだけではなく、様々な機能を付与することが検討されている。例えば、防汚性、保温性、耐擦傷性、指紋付着性、抗菌性、電気や赤外線の透過性等の機能付与が検討されている。
防汚性に優れたハードコート層を有するフィルムとして、フッ素原子やケイ素原子を含有した化合物を含む防汚層を有したフィルムが開示されている(特許文献1)。
特開2010-243700号公報
しかし、特許文献1に記載された発明では、十分な防汚性を発揮させるために高価なフッ素原子やケイ素原子を含有した化合物を多量に必要とし、経済的に適切なものとは言えなかった。
そこで、本発明の目的は、安価で優れた防汚性を備えたハードコート層を有するフィルム及び積層体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を鑑みて検討した結果、フッ素原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するハードコート層と、前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層とを有するフィルム、及び、前記ハードコート層と、前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層とを有する積層体の製造方法において、プライマー層組成物に特定の溶媒を用いることにより、防汚性に優れ、成形品への転写後もその機能が維持されたフィルム及び積層体が得られることを見出した。
即ち、本発明の要旨は、以下に存する。
[1]フッ素原子及び/又はケイ素原子を有する防汚化合物とハードコート材料とを含有するハードコート層と、
前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層と、
を有するフィルムの製造方法であって、
前記ハードコート層の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層を形成する工程を含み、
前記溶媒が、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含む、フィルムの製造方法。
[2]フッ素原子及び/又はケイ素原子を有する防汚化合物とハードコート材料とを含有するハードコート層と、
前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層と、
前記プライマー層の前記ハードコート層が設けられた表面とは反対側の表面に設けられた樹脂基材層と、
を有する積層体の製造方法であって、
(a)離型材層の表面に、防汚化合物とハードコート材料とを含むハードコート層組成物を塗布してハードコート層を形成する工程、
(b)(a)工程で得られたハードコート層の前記離型材層が設けられた表面とは反対側の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層を形成する工程、
(c)(b)工程で得られたプライマー層の前記ハードコート層が設けられた表面とは反対側の表面に、樹脂基材層を積層する工程、
(d)前記離型材層を剥離する工程、を含み
前記溶媒が、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含む、積層体の製造方法。
[3](e)前記ハードコート層の表面にエネルギー線を照射する工程をさらに含む、[2]に記載の積層体の製造方法。
[4]前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種とメチルエチルケトンとの混合溶媒である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、防汚性に優れ、成形品への転写後もその機能が維持されるフィルム及び積層体が提供される。
本発明の積層体の製造過程を示す概略図である。
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[フィルム及び積層体]
本発明によって製造されるフィルムは、ハードコート層とプライマー層とを少なくとも有する。本発明で製造されるフィルムの厚さは特に限定されず、用途に応じて適宜調整することができる。好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。これらの範囲であることで、十分な表面硬度を有し、フィルム上に更に塗布層を設ける場合にもフィルムの反りを抑制でき、さらに外観も良好となる傾向にある。なお、本発明において、プライマー層とは、多層構造化のために層間を粘着・接着する層であって、ハードコート層と転写基材とを密着させる中間層をいう。
フィルムの透過率やYI値に関して、活性エネルギー線硬化性組成物を材料として使用する場合は、そのエネルギー線が有する特定の波長に対する透過性を妨げない透明性が必要である。エネルギー線に対する透過率は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。かかる範囲において、硬化時間を短縮し効率的な製造性を維持することができる傾向にある。
また、本発明によって製造される積層体としては、(1)ハードコート層とプライマー層と樹脂基材層とを有する積層体、(2)離形基材層とハードコート層とプライマー層を有する積層体、(3)離形基材層とハードコート層とプライマー層と樹脂基材層とを有する積層体などを挙げることができるが、これらに限定されない。
<ハードコート層及びハードコート層組成物>
本発明に用いるハードコート層は、ハードコート材料と、防汚成分としての防汚化合物を少なくとも含有する。また、本発明に用いるハードコート層組成物には、ハードコート材料と、防汚化合物、重合開始剤、その他の添加剤並びに希釈溶剤などが含有される。
(ハードコート材料)
本発明に用いるハードコート材料は特に限定されず、一般的にハードコート層に用いられるモノマーポリマー等の材料を用いることができる。例えば、分子中に複数個の硬化性の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であることが、重合・架橋形成によるフィルム構造安定化、耐久性向上の理由で好ましい。例えば、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物及び多価カルボン酸又はその無水物と多価アルコールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは、「メタクリ」又は「アクリ」を意味する。
1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物の具体例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジオールジ(メタ)アクリレート;及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の3官能以上のポリオールポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
多価カルボン酸又はその無水物と多価アルコールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物において、多価カルボン酸又はその無水物と多価アルコールと(メタ)アクリル酸の組合せ(多価カルボン酸又はその無水物/多価アルコール/(メタ)アクリル酸)としては、例えば、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸が挙げられる。
分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物のその他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量化により得られるポリイソシアネート1モルに対して2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、15,3-プロパントリオール-1,3-ジ(メタ)アクリレート、3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の活性水素を有するアクリル系単量体3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート又はトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;エポキシポリ(メタ)アクリレート;及びウレタンポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。イソシアネート化合物以外の例として、グリシジル(メタ)アクリレートを共重合したエポキシ基を有する化合物に対して、上記活性水素を有するアクリル系単量体を反応させて得られる(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、これらの成分は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ハードコート材料の含有量としては、ハードコート層組成物の全固形成分中の5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
(防汚化合物)
防汚機能等を発現する化合物(以下、「防汚化合物」という。)を含有することで、ハードコート層へ防汚性(撥水性、撥油性等)を付与することができる。防汚化合物としては、フッ素原子やケイ素原子を分子内に含む硬化性の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が、共有結合形成による固定化、耐久性向上の傾向があるため好ましい。
フッ素原子を有する化合物としては、パーフルオロアルキレンエーテル基、テトラフルオロエチレン基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキレンエーテル基を有する化合物が低自由エネルギーでかつ非極性溶媒への親和性が高い傾向にあるため好ましい。
フッ素原子を有する化合物の市販品としては、例えば、ダイキン工業社製「オプツールDAC-HP」(商品名)、信越化学工業社製「KY1271」(商品名)、SOLVAY社製「Fluorolink MD700」、「Fluorolink AD1700」、「Fumblin D2」、「Fumblin D4000」(商品名)、DIC社製「RS-72」、「RS-75」、「RS-76」、「RS-78」(商品名)などが挙げられる。
フッ素原子を有する化合物の添加量は、ハードコート材料100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上である。また、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下である。フッ素原子を有する化合物の添加量が上記下限以上であることで、本発明のフィルムの防汚性能を十分とできる傾向にある。また、フッ素原子を有する化合物の添加量が上記上限値以下であることで、本発明のフィルムの硬化性及び透明性を良好とすることができる傾向にある。
ケイ素原子を有する化合物としては、ジメチルシロキサン基、シクロシロキサン基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でもジメチルシロキサン基を有する化合物が、低自由エネルギーでかつ非極性溶媒への親和性が高い傾向となるため好ましい。
ケイ素原子を有する化合物の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KP414」、「KP418」、「KP420」、「KP423」、「X-12-1048」、「X-12-1050」、「X-12-2475」、「X-22-2445」、「X-22-174ASX」、「X-22-174BX」、「KF2012」(商品名)、EVONIK社製「TEGO RAD2250」、「TEGO RAD2300」、「TEGO RAD2500」(商品名)、BYK社製「BYK-333」(商品名)、BYK社製「BYK-UV3570」(商品名)などが挙げられる。
ケイ素原子を有する化合物の添加量は、ハードコート材料100質量部に対して好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上である。また、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下である。ケイ素原子を有する化合物の添加量が上記下限値以上で、本発明のフィルムの防汚性能を十分とできる傾向にある。また、ケイ素原子を有する化合物の添加量が上記上限値以下で、撥水層の硬化性及び透明性を良好とすることができる傾向にある。
フッ素原子及びケイ素原子を有する化合物としては、パーフルオロアルキレンエーテル基、テトラフルオロエチレン基、ジメチルシロキサン基、シクロシロキサン基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキレンエーテル基、ジメチルシロキサン基を有する化合物が、低自由エネルギーであり、且つ非極性溶媒への親和性が高い傾向であるため好ましい。
フッ素原子及びケイ素原子を有する化合物の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KY1203」、「X-12-2430C」(商品名)、SOLVAY社製「S10」(商品名)、DIC社製「RS-55」、「RS-56」、「RS-57」、「RS-58」(商品名)などが挙げられる。
フッ素原子及びケイ素原子を有する化合物の添加量は、ハードコート材料100質量部に対して、0.01質量部であり、より好ましくは0.1質量部以上である。また、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下である。フッ素原子及びケイ素原子を有する化合物の添加量が上記下限値以上で、本発明のフィルムの防汚性能を十分とできる傾向にある。また、添加量が上記上限値以下で、撥水層の硬化性及び透明性を良好とすることができる傾向にある。
(重合開始剤)
本発明に用いるハードコート材料は、重合反応させることにより硬化させることができる。重合は特に限定されず、活性エネルギー線重合でも、熱重合でもよい。
活性エネルギー線分解重合開始剤としては、紫外線硬化性混合物で使用するものと同様のものとすることができる。活性エネルギー線分解重合開始剤の添加量としては、ハードコート材料100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。
本発明に用いるハードコート層組成物が活性エネルギー線(以下、便宜的に「光」ともいう。)硬化性の場合、前記組成物へ添加する光開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等のリン化合物が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のフィルム形成用組成物が熱硬化性組成物である場合、本組成物中には熱硬化剤を配合することができる。熱硬化剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;及びラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート等の有機過酸化物系重合開始剤が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(その他の添加剤)
また、ハードコート層内に機能を発現する化合物等を含んでいてもよい。例えば表面にすべり性を付与する材料、屈折率を変更する材料、光や熱などの電磁波の透過・反射を制御する材料、帯電性を制御する材料等が挙げられる。これらの材料は、ハードコート層内で分散していてもよく、表面等に偏在していてもよい。また、ハードコート層に耐擦傷性向上のために、一般的に用いられる方法であるシリカやチタニアなどの硬い微細粒子をハードコート層中に混合させていても良い。さらに、必要に応じて、スリップ性向上剤、レベリング剤、無機微粒子、光安定剤(紫外線吸収剤、HALS等)等の各種成分を添加できる。その他の添加剤の配合量としては、被膜の透明性の点で、本発明に用いるハードコート層組成物の固形分100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
(希釈溶剤)
本発明においては、本発明のハードコート組成物の固形分濃度を調整するために、ハードコート層組成物に希釈溶剤を含有させることができる。
希釈溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール及び2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノールなどが挙げられる。
本発明のハードコート層組成物の固形分濃度としては0.1~50質量%が好ましい。本組成物の固形分濃度を前記範囲とすることにより、本発明のハードコート層組成物の貯蔵安定性を良好とすることができ、所望の膜厚にコントロールし易くなる傾向にある。
<プライマー層及びプライマー層組成物>
本発明におけるプライマー層はプライマー層成分を少なくとも含み、また、プライマー層組成物は、プライマー層成分及び溶媒を少なくとも含有する。
(プライマー層成分)
プライマー層に配合されるプライマー層成分としては、ハードコート材料と粘着性あるいは接着性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、アクリル系接着剤、紫外線硬化型接着剤、アクリル共重合系接着剤等を挙げることができる。
紫外線硬化型接着剤の成分としては、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、シリコーンなどの分子端に(メタ)アクリルロイル基、ビニル基などを有する光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、および光開始剤などからなる。
アクリル共重合系接着剤は、任意の単官能の(メタ)アクリル酸エステルを共重合して得られる。単官能の(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシポリプロピレングリコールなどの(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングルコール、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどが挙げられる。
(溶媒)
本発明においてプライマー層組成物に用いられる溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられ、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、を含むものが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートとメチルエチルケトンの混合溶媒が特に好ましい。プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートとメチルエチルケトンの混合溶媒の混合比は、特に制限はないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトンが質量比で10/90~90/10、好ましくは20/80~80/20、より好ましくは30/70~70/30、特に好ましくは40/60~60/40のものが挙げられる。
本発明に用いられる溶媒としては、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含むものを挙げることができる。ここで、沸点は、1.013×10Paにおいて測定される値を指す。
プライマー層組成物において、プライマー層成分と溶媒との配合割合は、特に制限はないが、例えば、プライマー層成分の固形分が1~50質量%、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~30質量%となるような配合割合が挙げられる。
<離形基材層>
本発明に用いられる離形基材層の樹脂基材としては、特に制限はないが、活性エネルギー線透過性を持つことが好ましい。活性エネルギー線透過性フィルムとしては、公知のフィルムを利用することができる。
活性エネルギー線透過性フィルムとしては、例えばポリエチレンテレタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等の合成樹脂フィルム、セルロースアセテートフィルム等のセルロース系フィルム、セロハン紙、グラシン紙、等の洋紙、和紙などのフィルム状の物、あるいはこれらの複合フィルム状物、複合シート状物等や、それらに剥離層等の表面処理を設けてなるもの等が挙げられる。これらのなかでもポリエチレンテレフタレートフィルムが硬度と光学特性、表面自由エネルギーの理由で好ましい。
離形基材層の厚さは特に限定されず、用途に応じて適宜調整することができる。好ましくは4μm以上であり、より好ましくは12μm以上であり、30μm以上がさらに好ましく、また、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは150μm以下であり、120μm以下がさらに好ましい。これらの範囲であることで、しわや亀裂などのないフィルム又は積層体の製造が容易となる傾向にある。
活性エネルギー線透過性フィルムの剥離性が不充分で、剥離層を設ける場合、該剥離層の形成材は、公知のポリマーやワックスなどを適宜選択使用できる。またこれらに界面活性剤を添加してもよい。
剥離層の形成方法としては、例えばアクリル系、ウレタン系、シリコン系、メラミン系、尿素系、尿素-メラミン系、セルロ-ス系、ベンゾグアナミン系などの樹脂やパラフィンワックス等を単独又はこれらの混合物を主成分とした有機溶剤もしくは水に溶解させた塗料をグラビア印刷法、スクリ-ン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法で前記基材上に塗布、乾燥(熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂など硬化性塗膜には硬化)させて形成したものが挙げられる。剥離層の厚さとしては、0.1~3μm程度が好ましい。剥離層の厚さを上記のものとすることにより、良好な剥離性を確保できる。
(樹脂基材層)
本発明で用いられる樹脂基材層の樹脂原料としては、特に限定されず各種の原料を使用できる。例えば、アクリル系樹脂を注型重合で製造する場合は、その樹脂原料として、(メタ)アクリル酸のエステル類単独の単量体、又はこれを主成分とする単量体、あるいは、この単量体とこの単量体の重合物との混合物を含有するシロップ等を挙げることができる。
また、このようなアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸のエステル類の単独重合物、あるいはこれを主な単量体成分とする、共重合物を例示することができる。(メタ)アクリル酸のエステル類としては、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と称す。)を例示することができる。例えば、MMAを主な単量体成分として共重合する場合、その他の単量体成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のMMA以外のメタクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;等が挙げられる。
MMA単量体あるいはMMAを主成分とする単量体混合物中に、MMA単量体あるいはMMAを主成分とする単量体混合物の一部重合物を含む場合は、MMA単量体あるいはMMAを主成分とする単量体混合物に予め重合して得た前記重合物を溶解させてもよいし、あるいはMMA単量体あるいはMMAを主成分とする単量体混合物を一部重合させてもよい。アクリル系樹脂原料を重合するための開始剤としては公知のアゾ系の開始剤、あるいはパーオキサイド系開始剤等が挙げられ、これらの開始剤を用いて公知の方法により注型重合を行う。アクリル系樹脂原料には、その他目的に応じ、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料等を添加することができる。
[フィルム及び積層体の製造方法]
本発明のフィルムの製造方法としては、例えば、防汚化合物とハードコート材料とを含有するハードコート層の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布したのちに乾燥させてプライマー層を形成する方法等が挙げられる。
本発明の積層体の製造方法としては、図1を参照して説明すると、(a)離型材層2の表面に、防汚化合物とハードコート材料とを含むハードコート層組成物を塗布してハードコート層1を形成する工程、(b)(a)工程で得られたハードコート層1の前記離型材層2が設けられた表面とは反対側の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層3を形成する工程、(c)(b)工程で得られたプライマー層3の前記ハードコート層1が設けられた表面とは反対側の表面に、樹脂基材層4を積層する工程、(d)前記離型材層2を剥離する工程、(e)前記ハードコート層の表面にエネルギー線を照射する工程を含む方法などが挙げられる。
(a)工程
離型材層2の表面に、防汚化合物とハードコート材料とを含むハードコート層組成物を塗布してハードコート層1を形成して積層体Iを得る。
(b)工程
ハードコート層1の前記離型材層2が設けられた表面とは反対側の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層IIを形成する。
(c)工程
離型材層2及びフィルム(ハードコート層1及びプライマー層3)を含む積層体IIを型へ貼り合わせる。具体的には、直接貼り合わせる方法、熱可塑性樹脂を介して貼り合わせる方法、熱硬化性樹脂を介して貼り合わせる方法、紫外線硬化性混合物を介して張り合わせる方法などが挙げられる。生産性が良好である観点から、熱可塑性樹脂を介して貼り合わせる方法が好ましい。なお、中間層を形成する場合は、中間層に接するフィルム表面に易接着処理がされていることが、型からの剥離の際、型表面に中間層が残存しないことから好ましい。ここで易接着処理とは、型からの剥離を容易にするための層を設けることである。
熱可塑性樹脂を介して貼り合わせる方法としては、例えば、型もしくはフィルムに熱可塑性樹脂を塗布し、ゴムロールで圧着する方法が挙げられる。特に、貼り合わせる際のエアーの巻き込みを防ぐためには、型上に過剰量の熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し、フィルムを介してゴムロールで過剰な塗料をしごき出しながら貼り付ける方法が好ましい。
次に、前記離型材層2及びフィルムを含む積層体2が貼り合わされた型と他の型を、前記フィルム側が鋳型の内側に位置するように向かい合わせて鋳型を作製する。
型を構成する部材としては、例えば、鏡面を有するステンレス板、ガラス板もしくは表面に凹凸を有するステンレス板、ガラス板等を使用することができる。鋳型の作製は、例えば、2枚の型の間の端部に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合物、ポリエチレン、エチレン-メタクリル酸メチル共重合物等からなる中空形状物をガスケットとしてはさみ込み、端部をクランプで固定した構成の鋳型を組立てる等の工程により行うことができる。
さらに、前記鋳型に樹脂基材層4の樹脂原料を注入し注型重合を行う。
重合終了後、樹脂基材層4に前記フィルムが積層された積層体と、離型材層2と、中間層とが順次積層された積層体IIIを鋳型から剥離する。
(d)工程
積層体IIIから、離型材層2を剥離して、樹脂積層体表面を露出させて積層体IVを得る。
(e)工程
エネルギー硬化性樹脂の硬化を行い積層体Vを得る。この時に紫外線照射を行う場合、紫外線照射には紫外線ランプを使用すればよい。紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、蛍光紫外線ランプ等が挙げられる。紫外線照射による硬化は、転写フィルムを介して1段階で行っても良いし、あるいは2段階に分けて硬化を実施しても良い。紫外線硬化性混合物以外の硬化性混合物を用いる場合は、例えば、電子線、放射線などの活性エネルギー線を転写フィルムを介して照射することにより硬化するか、あるいは加熱により硬化する硬化性混合物を選択することができる。
[用途]
本発明で製造されるフィルム及び積層体は、防汚機能を有することから、自動車内外装の加飾用フィルムや、ディスプレイ等表示装置の面板、すなわち携帯電話、携帯型ゲーム機、カーナビゲーションシステム、ボータブルAV機器等に代表される製品の表面を保護する透明樹脂フィルムとして好適である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
(1)接触角測定
23℃、相対湿度50%の環境下において、対象サンプルに純水0.2μLを1滴で滴
下し、接触角計(First Ten Angstroms社製、商品名:「FTA125」)を用いて水と撥水層の接触角を測定し、水に対する接触角を求めた。
(2)防汚性(油性インク拭き取り性)
油性インク(黒字)として「マイネーム」(登録商標)((株)サクラクレパス社製)で硬化被膜の表面上に線を書き、3分後に「キムタオル」(登録商標)(日本製紙クレシア社製)で拭き取り、その際の油性インクの拭き取れ具合を目視により以下の基準で評価した。
「○」:5回の拭取りで完全に拭き取れる
「×」:5回の拭取りで一部、又は全部のインクが付着したままである
なお、実施例、比較例で用いた各試薬の物性ついては、表1に示す。
Figure 0007306087000001
<実施例1>
四つ口のフラスコに、ハードコート材料として、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリル系樹脂(製品名:ユピマーUV HH2150、三菱ケミカル社製)を100重量部、多官能イソシアネート(製品名:CORONATE HL、東ソー社製)を5質量部、防汚化合物として、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーで、構造中にフッ化炭素鎖を含む防汚剤樹脂(製品名:KY-1203、信越化学工業社製)を0.5質量部、重合開始剤として、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(製品名:オムニラッド184、IGMレジン社製)を5重量部、反応触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズを0.05質量部、を配合した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)とメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒(質量比1:1)を希釈溶剤として、全固形分が20質量%になるように加え、ハードコート層組成物(A)を得た。
離型材層として厚さ50μmのPETフィルムの表面に、ハードコート層組成物(A)を14号バーコーターを用いて塗布し、90℃で1分間乾燥させてハードコート層1と離型材層2の積層体Iを得た。
プライマー層成分としての(メタ)アクリル系樹脂接着剤(重量平均分子量約8,000)に、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)とメチルエチルケトン(MEK)を質量比1:1で混合したものを加えて、固形分濃度を20%とした粘着層組成物(B)を調製した。10号バーコーターを用いて積層体Iのハードコート層1の表面(離型材層2に接触している面と反対側の面)に、プライマー層組成物(B)を塗布した。その後、60℃で2分間乾燥させてプライマー層3を形成し、1日以上冷暗所で養生し、積層体II(転写フィルム)を得た。
樹脂基材層として板厚が1.5mmのアクリライトEX001(メタクリル樹脂板)を使用し、表面に上記積層体II(転写フィルム)を、プライマー層3を介して重ね合わせた。その後、160℃で1分加熱した。JIS硬度40°のゴムロールを用いてプライマー層3をしごきながら気泡を含まないように圧着させ、積層体IIIを得た。
次いで、上記の積層体IIIが十分に冷却された後に、離型材層2を剥離し、積層体IVを得た。離型材層2を剥離したハードコート層1の表面を、6.0m/分の速度で、出力2.8kWのメタルハライドランプ下(ランプとの距離5.3cm)を通過させ、積層体Vを得た。積算光量は1000mJ/cm2であった。
前記積層体Vのハードコート層1の表面の水との接触角を測定し、かつ防汚性を評価した。評価結果を表2に示す。
<実施例2>
プライマー層組成物の溶媒として、PGMとMEKの混合溶媒に代えてブチルアセテート(BAc)とMEKの混合溶媒(質量比1:1)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示す。
<実施例3>
プライマー層組成物の溶媒として、PGMとMEKの混合溶媒に代えてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)とMEKの混合溶媒(質量比1:1)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示す。
<比較例1>
プライマー層組成物の溶媒として、PGMとMEKの混合溶媒に代えてイソプロパノール(IPA)とMEKの混合溶媒(質量比1:1)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示す。
<比較例2>
プライマー層組成物の溶媒として、PGMとMEKの混合溶媒に代えてノルマルブタノール(nBA)とMEKの混合溶媒(質量比1:1)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示す。
Figure 0007306087000002
上記結果より、プライマー層組成物の溶媒としてPGM/MEK、BAc/MEK、PGMAc/MEKを用いた場合には、接触角も大きく、良好な防汚性が得られることがわかった。一方、溶媒としてIPA/MEKやBA/MEKを用いた場合は、接触角が小さくなり、且つ防汚性に劣ることが明らかとなった。
したがって、プライマー層組成物の溶媒として適切なものを選択ことにより、防汚性に優れたハードコート層を有するフィルム及び積層体が得られることがわかる。
ここで、プライマー層組成部の溶媒として適切なものを選択した場合に、防汚性等に優れたハードコート層が得られる理由については、以下の理論に拘束されるものではないが、次のように考えることができる。すなわち、プライマー層組成物をハードコート層に塗布する際に、特定の溶剤(例えばPGMや、PGMとMEKの混合溶媒)のみがハードコート層に浸透し(IPA等では浸透せず)、溶剤の浸透方向にハードコート層内の防汚化合物が移動して、離型材層との境界付近でこの防汚化合物が偏析することが考えられる。分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下の溶剤を加えることで、浸透しやすく、かつ揮発が抑えられるため偏析の効果を促進することが考えられる。及び/又は、特定の溶媒を使用することによって、ハードコート層と離型材層との境界付近で防汚化合物の再配列が生じて、防汚化合物の官能基のハードコート表面での配置が変化することが考えられる。この際の官能基の配置の様式が、防汚化合物/溶媒/離型材層間の相溶性の相関に依存するとも考えられる。
1 ハードコート層
2 離型材層
3 プライマー層
4 樹脂基材層

Claims (5)

  1. フッ素原子及び/又はケイ素原子を有する防汚化合物と分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含むハードコート材料とを含有するハードコート層と、
    前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層と、
    を有するフィルムの製造方法であって、
    前記ハードコート層は硬化する前の状態であり、前記ハードコート層の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層を形成する工程を含み、前記溶媒が、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含む、
    フィルムの製造方法。
  2. フッ素原子及び/又はケイ素原子を有する防汚化合物と分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含むハードコート材料とを含有するハードコート層と、
    前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層と、
    前記プライマー層の前記ハードコート層が設けられた表面とは反対側の表面に設けられた樹脂基材層と、
    を有する積層体の製造方法であって、
    (a)離型材層の表面に、防汚化合物と分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含むハードコート材料とを含むハードコート層組成物を塗布してハードコート層を形成する工程、
    (b)(a)工程で得られた硬化する前の状態のハードコート層の前記離型材層が設けられた表面とは反対側の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層を形成する工程、
    (c)(b)工程で得られたプライマー層の前記ハードコート層が設けられた表面とは反対側の表面に、樹脂基材層を積層する工程、
    (d)前記離型材層を剥離する工程、を含み前記溶媒が、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含む、積層体の製造方法。
  3. (e)前記ハードコート層の表面にエネルギー線を照射する工程をさらに含む、請求項2に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種とメチルエチルケトンとの混合溶媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
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