JP7306087B2 - フィルム及び積層体の製造方法 - Google Patents
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防汚性に優れたハードコート層を有するフィルムとして、フッ素原子やケイ素原子を含有した化合物を含む防汚層を有したフィルムが開示されている(特許文献1)。
そこで、本発明の目的は、安価で優れた防汚性を備えたハードコート層を有するフィルム及び積層体の製造方法を提供することにある。
[1]フッ素原子及び/又はケイ素原子を有する防汚化合物とハードコート材料とを含有するハードコート層と、
前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層と、
を有するフィルムの製造方法であって、
前記ハードコート層の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層を形成する工程を含み、
前記溶媒が、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含む、フィルムの製造方法。
[2]フッ素原子及び/又はケイ素原子を有する防汚化合物とハードコート材料とを含有するハードコート層と、
前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層と、
前記プライマー層の前記ハードコート層が設けられた表面とは反対側の表面に設けられた樹脂基材層と、
を有する積層体の製造方法であって、
(a)離型材層の表面に、防汚化合物とハードコート材料とを含むハードコート層組成物を塗布してハードコート層を形成する工程、
(b)(a)工程で得られたハードコート層の前記離型材層が設けられた表面とは反対側の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層を形成する工程、
(c)(b)工程で得られたプライマー層の前記ハードコート層が設けられた表面とは反対側の表面に、樹脂基材層を積層する工程、
(d)前記離型材層を剥離する工程、を含み
前記溶媒が、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含む、積層体の製造方法。
[3](e)前記ハードコート層の表面にエネルギー線を照射する工程をさらに含む、[2]に記載の積層体の製造方法。
[4]前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選択される少なくとも1種とメチルエチルケトンとの混合溶媒である、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によって製造されるフィルムは、ハードコート層とプライマー層とを少なくとも有する。本発明で製造されるフィルムの厚さは特に限定されず、用途に応じて適宜調整することができる。好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。これらの範囲であることで、十分な表面硬度を有し、フィルム上に更に塗布層を設ける場合にもフィルムの反りを抑制でき、さらに外観も良好となる傾向にある。なお、本発明において、プライマー層とは、多層構造化のために層間を粘着・接着する層であって、ハードコート層と転写基材とを密着させる中間層をいう。
本発明に用いるハードコート層は、ハードコート材料と、防汚成分としての防汚化合物を少なくとも含有する。また、本発明に用いるハードコート層組成物には、ハードコート材料と、防汚化合物、重合開始剤、その他の添加剤並びに希釈溶剤などが含有される。
本発明に用いるハードコート材料は特に限定されず、一般的にハードコート層に用いられるモノマーポリマー等の材料を用いることができる。例えば、分子中に複数個の硬化性の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であることが、重合・架橋形成によるフィルム構造安定化、耐久性向上の理由で好ましい。例えば、1モルの多価アルコールと2モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物及び多価カルボン酸又はその無水物と多価アルコールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは、「メタクリ」又は「アクリ」を意味する。
防汚機能等を発現する化合物(以下、「防汚化合物」という。)を含有することで、ハードコート層へ防汚性(撥水性、撥油性等)を付与することができる。防汚化合物としては、フッ素原子やケイ素原子を分子内に含む硬化性の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が、共有結合形成による固定化、耐久性向上の傾向があるため好ましい。
本発明に用いるハードコート材料は、重合反応させることにより硬化させることができる。重合は特に限定されず、活性エネルギー線重合でも、熱重合でもよい。
活性エネルギー線分解重合開始剤としては、紫外線硬化性混合物で使用するものと同様のものとすることができる。活性エネルギー線分解重合開始剤の添加量としては、ハードコート材料100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。
また、ハードコート層内に機能を発現する化合物等を含んでいてもよい。例えば表面にすべり性を付与する材料、屈折率を変更する材料、光や熱などの電磁波の透過・反射を制御する材料、帯電性を制御する材料等が挙げられる。これらの材料は、ハードコート層内で分散していてもよく、表面等に偏在していてもよい。また、ハードコート層に耐擦傷性向上のために、一般的に用いられる方法であるシリカやチタニアなどの硬い微細粒子をハードコート層中に混合させていても良い。さらに、必要に応じて、スリップ性向上剤、レベリング剤、無機微粒子、光安定剤(紫外線吸収剤、HALS等)等の各種成分を添加できる。その他の添加剤の配合量としては、被膜の透明性の点で、本発明に用いるハードコート層組成物の固形分100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
本発明においては、本発明のハードコート組成物の固形分濃度を調整するために、ハードコート層組成物に希釈溶剤を含有させることができる。
本発明におけるプライマー層はプライマー層成分を少なくとも含み、また、プライマー層組成物は、プライマー層成分及び溶媒を少なくとも含有する。
プライマー層に配合されるプライマー層成分としては、ハードコート材料と粘着性あるいは接着性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、アクリル系接着剤、紫外線硬化型接着剤、アクリル共重合系接着剤等を挙げることができる。
本発明においてプライマー層組成物に用いられる溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられ、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、を含むものが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートとメチルエチルケトンの混合溶媒が特に好ましい。プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートとメチルエチルケトンの混合溶媒の混合比は、特に制限はないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート/メチルエチルケトンが質量比で10/90~90/10、好ましくは20/80~80/20、より好ましくは30/70~70/30、特に好ましくは40/60~60/40のものが挙げられる。
本発明に用いられる離形基材層の樹脂基材としては、特に制限はないが、活性エネルギー線透過性を持つことが好ましい。活性エネルギー線透過性フィルムとしては、公知のフィルムを利用することができる。
本発明で用いられる樹脂基材層の樹脂原料としては、特に限定されず各種の原料を使用できる。例えば、アクリル系樹脂を注型重合で製造する場合は、その樹脂原料として、(メタ)アクリル酸のエステル類単独の単量体、又はこれを主成分とする単量体、あるいは、この単量体とこの単量体の重合物との混合物を含有するシロップ等を挙げることができる。
本発明のフィルムの製造方法としては、例えば、防汚化合物とハードコート材料とを含有するハードコート層の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布したのちに乾燥させてプライマー層を形成する方法等が挙げられる。
本発明の積層体の製造方法としては、図1を参照して説明すると、(a)離型材層2の表面に、防汚化合物とハードコート材料とを含むハードコート層組成物を塗布してハードコート層1を形成する工程、(b)(a)工程で得られたハードコート層1の前記離型材層2が設けられた表面とは反対側の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層3を形成する工程、(c)(b)工程で得られたプライマー層3の前記ハードコート層1が設けられた表面とは反対側の表面に、樹脂基材層4を積層する工程、(d)前記離型材層2を剥離する工程、(e)前記ハードコート層の表面にエネルギー線を照射する工程を含む方法などが挙げられる。
離型材層2の表面に、防汚化合物とハードコート材料とを含むハードコート層組成物を塗布してハードコート層1を形成して積層体Iを得る。
ハードコート層1の前記離型材層2が設けられた表面とは反対側の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層IIを形成する。
離型材層2及びフィルム(ハードコート層1及びプライマー層3)を含む積層体IIを型へ貼り合わせる。具体的には、直接貼り合わせる方法、熱可塑性樹脂を介して貼り合わせる方法、熱硬化性樹脂を介して貼り合わせる方法、紫外線硬化性混合物を介して張り合わせる方法などが挙げられる。生産性が良好である観点から、熱可塑性樹脂を介して貼り合わせる方法が好ましい。なお、中間層を形成する場合は、中間層に接するフィルム表面に易接着処理がされていることが、型からの剥離の際、型表面に中間層が残存しないことから好ましい。ここで易接着処理とは、型からの剥離を容易にするための層を設けることである。
積層体IIIから、離型材層2を剥離して、樹脂積層体表面を露出させて積層体IVを得る。
エネルギー硬化性樹脂の硬化を行い積層体Vを得る。この時に紫外線照射を行う場合、紫外線照射には紫外線ランプを使用すればよい。紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、蛍光紫外線ランプ等が挙げられる。紫外線照射による硬化は、転写フィルムを介して1段階で行っても良いし、あるいは2段階に分けて硬化を実施しても良い。紫外線硬化性混合物以外の硬化性混合物を用いる場合は、例えば、電子線、放射線などの活性エネルギー線を転写フィルムを介して照射することにより硬化するか、あるいは加熱により硬化する硬化性混合物を選択することができる。
本発明で製造されるフィルム及び積層体は、防汚機能を有することから、自動車内外装の加飾用フィルムや、ディスプレイ等表示装置の面板、すなわち携帯電話、携帯型ゲーム機、カーナビゲーションシステム、ボータブルAV機器等に代表される製品の表面を保護する透明樹脂フィルムとして好適である。
23℃、相対湿度50%の環境下において、対象サンプルに純水0.2μLを1滴で滴
下し、接触角計(First Ten Angstroms社製、商品名:「FTA125」)を用いて水と撥水層の接触角を測定し、水に対する接触角を求めた。
油性インク(黒字)として「マイネーム」(登録商標)((株)サクラクレパス社製)で硬化被膜の表面上に線を書き、3分後に「キムタオル」(登録商標)(日本製紙クレシア社製)で拭き取り、その際の油性インクの拭き取れ具合を目視により以下の基準で評価した。
「○」:5回の拭取りで完全に拭き取れる
「×」:5回の拭取りで一部、又は全部のインクが付着したままである
四つ口のフラスコに、ハードコート材料として、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリル系樹脂(製品名:ユピマーUV HH2150、三菱ケミカル社製)を100重量部、多官能イソシアネート(製品名:CORONATE HL、東ソー社製)を5質量部、防汚化合物として、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーで、構造中にフッ化炭素鎖を含む防汚剤樹脂(製品名:KY-1203、信越化学工業社製)を0.5質量部、重合開始剤として、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(製品名:オムニラッド184、IGMレジン社製)を5重量部、反応触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズを0.05質量部、を配合した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)とメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒(質量比1:1)を希釈溶剤として、全固形分が20質量%になるように加え、ハードコート層組成物(A)を得た。
プライマー層組成物の溶媒として、PGMとMEKの混合溶媒に代えてブチルアセテート(BAc)とMEKの混合溶媒(質量比1:1)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示す。
プライマー層組成物の溶媒として、PGMとMEKの混合溶媒に代えてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)とMEKの混合溶媒(質量比1:1)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示す。
プライマー層組成物の溶媒として、PGMとMEKの混合溶媒に代えてイソプロパノール(IPA)とMEKの混合溶媒(質量比1:1)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示す。
プライマー層組成物の溶媒として、PGMとMEKの混合溶媒に代えてノルマルブタノール(nBA)とMEKの混合溶媒(質量比1:1)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示す。
したがって、プライマー層組成物の溶媒として適切なものを選択ことにより、防汚性に優れたハードコート層を有するフィルム及び積層体が得られることがわかる。
2 離型材層
3 プライマー層
4 樹脂基材層
Claims (5)
- フッ素原子及び/又はケイ素原子を有する防汚化合物と分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含むハードコート材料とを含有するハードコート層と、
前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層と、
を有するフィルムの製造方法であって、
前記ハードコート層は硬化する前の状態であり、前記ハードコート層の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層を形成する工程を含み、前記溶媒が、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含む、
フィルムの製造方法。 - フッ素原子及び/又はケイ素原子を有する防汚化合物と分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含むハードコート材料とを含有するハードコート層と、
前記ハードコート層の表面に設けられたプライマー層と、
前記プライマー層の前記ハードコート層が設けられた表面とは反対側の表面に設けられた樹脂基材層と、
を有する積層体の製造方法であって、
(a)離型材層の表面に、防汚化合物と分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含むハードコート材料とを含むハードコート層組成物を塗布してハードコート層を形成する工程、
(b)(a)工程で得られた硬化する前の状態のハードコート層の前記離型材層が設けられた表面とは反対側の表面に、プライマー層成分と溶媒とを含むプライマー層組成物を塗布してプライマー層を形成する工程、
(c)(b)工程で得られたプライマー層の前記ハードコート層が設けられた表面とは反対側の表面に、樹脂基材層を積層する工程、
(d)前記離型材層を剥離する工程、を含み前記溶媒が、分子量80g/mol以上、沸点120℃以上、かつ20℃における粘度が2mPa・s以下からなる溶媒から選択される少なくとも1種を含む、積層体の製造方法。 - (e)前記ハードコート層の表面にエネルギー線を照射する工程をさらに含む、請求項2に記載の積層体の製造方法。
- 前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種とメチルエチルケトンとの混合溶媒である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
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