JP7304730B2 - 多層シート及びそれを用いた容器 - Google Patents
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Description
おいて、生鮮食料品や加工食品等を販売する際の包装に使用される容器として、合成樹脂製のシートを成形して得た容器が多く用いられている。
(1)多層シート両面の最表面部に、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含み、前記ポリ乳酸と前記スチレン系樹脂の合計100質量部に対するポリ乳酸の質量部数X1が、それぞれ5質量部以上30質量部以下である樹脂組成物からなる最表面層と、多層シートの中間部に、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含み、前記ポリ乳酸と前記スチレン系樹脂の合計100質量部に対するポリ乳酸の質量部数X2が、25質量部以上50質量部以下である樹脂組成物からなる中芯層とを含み、X2はX1より高い値である層構造を有する多層シート。
(2)中芯層の樹脂組成物において、ポリ乳酸とスチレン系樹脂の合計質量の割合が、前記中芯層の樹脂組成物全体の質量の80質量%以上99質量%以下である、(1)記載の多層シート。
(3)中芯層が、発泡倍率1.1倍以上2.0倍以下の発泡層である、(1)または(2)記載の多層シート。
(4)中芯層の厚さの割合が、多層シート全体の厚さに対して50%以上90%以下である、(1)~(3)いずれか一項記載の多層シート。
(5)ダイス中で、多層シートの全ての層を一体化させて共押出し成形する、(1)~(4)いずれか一項記載の多層シートの製造方法。
(6)(1)~(4)いずれか一項記載の多層シートを成形した容器。
(7)食品用の容器である、(6)記載の容器。
本発明の多層シートは、多層シート両面の最表面部に、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含み、前記ポリ乳酸と前記スチレン系樹脂の合計100質量部に対するポリ乳酸の質量部数X1が、それぞれ5質量部以上30質量部以下である樹脂組成物からなる最表面層と、多層シートの中間部に、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含み、前記ポリ乳酸と前記スチレン系樹脂の合計100質量部に対するポリ乳酸の質量部数X2が、25質量部以上45質量部以下である樹脂組成物からなる中芯層とを含み、X2はX1より高い値である層構造を有する多層シートである。
本発明の多層シートの両最表面層及び中芯層の樹脂組成物は、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含む樹脂脂組成物である。前記ポリ乳酸は、乳酸が多数エステル結合してできた高分子である。乳酸には1つの不斉炭素に結合する官能基の立体配置の相違により、L体及びD体の2種の乳酸が存在し、従って、ポリ乳酸にもD体またはL体の単量体単位がほぼ単独で結合しているもの、D体単量体単位及びL体単量体単位が混合して結合しているもの、さらにD体単量体単位とL体単量体単位の結合についても、それらがランダムに結合しているもの、交互に結合しているもの、ブロック状に結合しているもの、いずれも用いることが可能である。但し、耐熱性の観点からは、L体単量体単位を95質量%以上含むポリ乳酸であることが好ましい。なおポリ乳酸は、植物由来の原料から合成することができるカーボンニューラルな化合物として、環境保護の観点から近年注目を集めており、従って本発明で用いるポリ乳酸も、植物由来のポリ乳酸であることが好ましい。また、は特に限定は無く、スチレン系樹脂と溶融混合できればよいが、一般にはMwが5万以上のポリ乳酸が用いられる。なお、最表面層と中芯層とに用いるポリ乳酸は、必ずしも同一である必要はないが、特に必要がなければ、同一であることが好ましい。
本発明の多層シートの両最表面層及び中芯層の樹脂組成物は、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含む樹脂脂組成物である。前記スチレン系樹脂は、スチレン、メチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレンの群から選ばれる1種または2種以上のスチレン系単量体を重合または共重合した樹脂や、HIPSやスチレンとブタジエンの共重合体(以降SBCと記す)として知られているゴム変性したスチレン系樹脂や、前記スチレン系単量体と、前記スチレン系単量体に共重合が可能な単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルの群から選ばれる1種または2種以上の単量体を共重合させた樹脂が挙げられる。これらの中で、好ましいスチレン系樹脂としては、GPPS、HIPS、SBC、MS樹脂、MBS樹脂等が挙げられ、さらにこれら樹脂を混合した樹脂組成物が挙げられる。特に好ましいスチレン系樹脂は、GPPS及びHIPSである。なお最表面層を形成するスチレン系樹脂には、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲の量で、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑材、可塑剤など各種添加剤を含むことが可能である。これら各種添加剤は、予めスチレン系樹脂中に含まれていても良いし、多層シートを成膜する時点で新たに添加しても良い。
本発明の多層シートの両最表面層の樹脂組成物は、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含み、ポリ乳酸とスチレン系樹脂の合計100質量部に対するポリ乳酸の質量部数X1は、それぞれ5質量部以上30質量部以下である樹脂組成物である。またX1は、それぞれ5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。X1が5質量部未満であると、多層シートの端材を中芯層の原料に戻すような場合に、中芯材の樹脂組成物に含まれるポリ乳酸の割合が望まれる以上に低下する可能性がある。一方、X1が30質量部を超えると、本発明の効果である、多層シート成膜時における粘着性異物の発生が抑制できない。
本発明の多層シートの中芯層の樹脂組成物は、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含み、ポリ乳酸とスチレン系樹脂の合計100質量部に対するポリ乳酸の質量部数X2は、それぞれ25質量部以上50質量部以下である樹脂組成物である。X1は、それぞれ25質量部以上45質量部以下であることがより好ましい。X1が、25質量部未満であると、本発明の多層シートに占めるポリ乳酸の割合が少なくなるため、環境負荷を低減させたシートの提供ができなくなる。一方、X1が、50質量部を超えると、多層シートの成形加工性が低下し、食品容器の製造が困難になる傾向がある。
本発明の多層シートでは、さらに最表面層及び中芯層を構成する樹脂組成物においては、ポリ乳酸とスチレン系樹脂以外に、必要に応じて着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑材、可塑剤、相溶化材、流動化材、ブロッキング防止材、結晶核材を含む樹脂組成物であることが可能であり、中芯層を構成する樹脂組成物に含まれるポリ乳酸とスチレン系樹脂の合計質量の割合が、中芯層を構成する樹脂組成物全体の質量の80質量%以上99質量%以下、好ましくは85質量%以上95質量%以下である多層シートとすることができる。特に前記相溶化材として、具体的には、例えばスチレンとブタジエンのブロック共重合体、ポリブタジエンにメタクリル酸メチル及びスチレンをグラフト共重合させたグラフト共重合体、メタクリル酸メチルとn-アクリル酸ブチルのブロック共重合体、等を挙げることができる。
本発明の多層シートでは、各層における発泡状態には特に限定はなく、目的とする用途に応じて発泡させても良いし、発泡させなくても良い。また特定の層のみを発泡層とすることも可能である。発泡倍率は1.1倍以上10倍以下、好ましくは1.1倍以上5倍以下、より好ましくは1.1倍以上2倍以下が一般的である。発泡させる場合には 泡は連通している泡であってもよいし、独立泡であっても良く、また、両者が混在する発泡状態であっても良い。例えば中芯層を発泡させることにより、より軽量で、熱伝導率がより低い多層シートや容器を得ることができるようになる。また、例えば最表面層を発泡させない層とすれば、よりシート表面の平滑性が高く、印刷適正や光沢に優れた多層シートを得ることができる。
本発明の多層シートの製造方法は、一般的な共押出多層法であるフィードブロック方式やマルチマニホールド方式により、ダイス中で、多層シートの全ての層を一体化させて、吐出口のリップから一枚のシート状に押し出し、冷却ロールの間を通して固化させ、シートを巻き取る製造方法が好ましい。ダイスは、Tダイス(Tダイともいう)が好ましく用いられる。なお、一般的な共押出し方法で多層シートを製造する際は、各層の流動性を合わせた樹脂を使用することが好ましい。
本発明の多層シートを成形加工して得た容器もまた、本発明のひとつの実施形態である。多層シートの成形加工方法は特に限定はないが、例えば、真空成形や圧空成形等の公知の成形加工方法によって、得ることができる。本発明の容器は、特に食品用の容器であることが好ましい。
実施例1~13、及び比較例1~5の多層シートを、表1~3に記載した層構成で成膜した。このうち実施例13、比較例5の多層シートは、特に中芯層を発泡させた多層シートである。以下に成膜方法をさらに具体的に記載する。
実施例1の多層シートの最表面層として用いた樹脂組成物を、予め以下の方法で準備した。即ち、ポリ乳酸(REVODA110、海正生物材料社製)の5質量部と、HIPS(トーヨースチロールHI E640N、東洋スチレン社製)の95質量部と、相溶化材(メタブレンC-223A、三菱ケミカル社製)の10質量部、滑材と流動化材の合計3質量部を、ヘンシェルミキサーで予備混合し、次いで二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)を用いて溶融混練し、さらにストランドをペレタイザーに通して、実施例1の多層シートの中芯層用樹脂組成物のペレットを得た。なお、二軸押出機のシリンダー設定温度は200℃、樹脂組成物の突出量は、30kg/時間の条件で運転した。
実施例2~6、比較例1~4の多層シートは、両最表面層、及び中芯層の化学組成、シート全体の厚さに対する最表面層/中芯層/最表面層の厚さを表1に示したように設定し、成膜装置の各ヒーター温度、吐出量、リップ幅は適宜調整したが、基本的には実施例1と同じ手順で、同じ装置を用い、実施例2~6、比較例1~4の多層シートを成膜した。これら実施例、比較例の多層シートのTダイからの押し出しも、途中で中断することなく実施例1と同様に1時間連続的に実施した。また実施例2~6の層構成は表1に、比較例1~4の層構成は表2に示した。
実施例7~12の多層シートは、両最表面層、及び中芯層の化学組成、シート全体の厚さに対する最表面層/中芯層/最表面層の厚さを表2に示したように設定し、成膜装置の各ヒーター温度、吐出量、リップ幅は適宜調整したが、基本的には実施例1と同じ手順で、同じ装置を用い、実施例7~12の多層シートを成膜した。これら実施例の多層シートのTダイからの押し出しも、途中で中断することなく実施例1と同様に1時間連続的に実施した。また実施例7~12の層構成は表3にまとめて示した。
実施例13の多層シートは、実施例2と同じ原料、手順、装置を用いるが、中芯層の樹脂組成物として、さらに発泡剤マスターバッチ(ポリスレンES405、永和化成社製)を0.8質量部、タルク0.3質量部を添加し、成膜装置の各ヒーター温度、吐出量、リップ幅は適宜調整して、全体の厚さが0.6mmで、中芯層が1.3倍に発泡している多層シートを成膜した。実施例13の多層シートのTダイからの押し出しも、途中で中断することなく1時間連続的に実施した。実施例13の層構成は表4に示した。
比較例5の多層シートは、両最表面層及び中芯層は比較例2と同じ樹脂組成物を用い、成膜装置の各ヒーター温度、吐出量、リップ幅は適宜微調整したが、基本的には実施例13と同じ装置を用い、中芯層を発泡させた多層シートである。比較例5のTダイからのシート押し出しも、途中で中断することなく実施例13と同様に1時間連続的に実施した。比較例5の層構成も表4に示した。
実施例1~13、比較例1~5の各多層シートの成膜押し出しする間に、Tダイのリップ周縁部に滞留してくる粘着性異物の発生状態、さらにリップ周縁部に溜まった前記粘着性異物が、押出し中のシート表面へ付着したか否か、ビデオカメラによる撮影記録を補助的に利用して目視観察した。勿論、粘着性異物の発生が少なければ少ないほど、本発明の効果を反映している多層シートであることを示す。評価の段階としては、成膜開始直後から成膜終了まで、Tリップ周縁部に粘着性異物の付着が全く観られない場合を最良「A」とし、リップ周縁部への粘着性異物が顕著に観られ、さらに成膜中のシートに表面にも付着してしまう場合が1回でも起きれば「E」とした。その中間段階、即ち粘着性異物のリップ付着が僅かに観られる場合は「B」、リップ付着が「B」より多く観られる場合は「C」、シートへの粘着性異物の付着は起きないまでも、リップ周縁部への粘着性異物の滞留が顕著である場合は「D」とした。「A」~「C」の評価であれば、本発明の効果を発現しているとした。
実施例1~13、比較例1~5の多層シートについて、開口部の横幅が270mm、開口部の縦長さが200mm、深さが30mmであり、各コーナー部に丸みを設けた角形容器に成形加工する金型を用いて、真空成形によりヒーター温度(間接加熱)上/下500℃の条件のもと角形容器サンプルを作製した。作製した角形容器については、金型の設計通り成形されている場合は「A」、成形できているが角部の再現性等が「A」には及ばないような場合は「B」とした。さらに賦形性は「B」に達しないが、割れなく成形できた場合を「C」、容器の表面に割れや裂けが生じたりした場合は「D」と、賦形性を4段階で比較評価した。賦形性に関しては、容器の形状にも左右されるため、本試験では、「A」~「C」の評価であれば、本発明の効果を発現しているとした。
Claims (7)
- 多層シート両面の最表面部に、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含み、前記ポリ乳酸と前記スチレン系樹脂の合計100質量部に対するポリ乳酸の質量部数X1が、それぞれ5質量部以上30質量部以下である樹脂組成物からなる最表面層と、多層シートの中間部に、ポリ乳酸とスチレン系樹脂とを含み、前記ポリ乳酸と前記スチレン系樹脂の合計100質量部に対するポリ乳酸の質量部数X2が、25質量部以上50質量部以下である樹脂組成物からなる中芯層とを含み、X2はX1より高い値である層構造を有する多層シート。
- 中芯層の樹脂組成物において、ポリ乳酸とスチレン系樹脂の合計質量の割合が、前記中芯層の樹脂組成物全体の質量の80質量%以上99質量%以下である、請求項1記載の多層シート。
- 中芯層が、発泡倍率1.1倍以上2.0倍以下の発泡層である、請求項1または2記載の多層シート。
- 中芯層の厚さの割合が、多層シート全体の厚さに対して50%以上90%以下である、請求項1~3いずれか一項記載の多層シート。
- ダイス中で、多層シートの全ての層を一体化させて共押出し成形する、請求項1~4いずれか一項記載の多層シートの製造方法。
- 請求項1~4いずれか一項記載の多層シートを成形した容器。
- 食品用の容器である、請求項6記載の容器。
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