以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は車両の概略構成図である。図2は変速機構3における各ギヤの噛合関係を示す図である。車両は、エンジン1とモータジェネレータ2と変速機構3と駆動輪4とを有して構成される。エンジン1は内燃機関であり、車両の駆動源を構成する。エンジン1の出力軸は変速機構3の入力軸3aに接続される。モータジェネレータ2は車両の駆動源を構成するとともに、発電機としても機能する。モータジェネレータ2は中空モータであり、後述する第2サンギヤS2に接続され、変速機構3の中心軸回りに回転する。エンジン1の動力とモータジェネレータ2の動力とは、変速機構3を介して駆動輪4に伝達される。
変速機構3は、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2及びキャリアCの5つの回転要素を有する遊星歯車機構により構成される。キャリアCは、第1ピニオンギヤPG1及び第2ピニオンギヤPG2を回転自在に支持する。第1ピニオンギヤPG1は、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1の双方と噛み合う。第2ピニオンギヤPG2は、第1サンギヤS1と軸方向に隣り合う第2サンギヤS2、及び第2リングギヤR2の双方と噛み合う。第1ピニオンギヤPG1はロングピニオンで構成され、第2ピニオンギヤPG2とも噛み合う。図2に示すように、互いに噛み合う第1ピニオンギヤPG1と第2ピニオンギヤPG2とは、周方向に隣接して配置される。
このように構成された変速機構3は、第1サンギヤS1と第1リングギヤR1との間、及び第2サンギヤS2と第2リングギヤR2との間では、シングルピニオン型の遊星歯車機構として機能する。変速機構3はさらに、第1サンギヤS1と第2リングギヤR2との間では、ダブルピニオン型の遊星歯車機構として機能する。変速機構3はキャリアCを出力要素としてエンジン1及びモータジェネレータ2のうち少なくともいずれかの動力を駆動輪4に伝達する。
変速機構3は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の4つの締結要素をさらに有する。第1クラッチCL1は、入力軸3a従ってエンジン1と第2リングギヤR2との間を選択的に断接する。第2クラッチCL2は、入力軸3aと第1リングギヤR1との間を選択的に断接する。第1ブレーキB1は、第2リングギヤR2を固定部材である変速機構3のケースに選択的に固定する。第2ブレーキB2は、第1サンギヤS1を変速機構3のケースに選択的に固定する。第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2は油圧式の締結要素であり、後述する油圧制御回路100から油の供給を受ける。
図3は、変速機構3の締結表を示す図である。車両は、エンジン1及びモータジェネレータ2のうちモータジェネレータ2の駆動力のみで走行するモータ走行モードであるEVモードと、エンジン1の駆動力で走行するエンジン走行モードであるICEモードとを有する。ICEモードはさらにモータジェネレータ2の駆動力で走行する場合を含んでもよい。EVモードでは、第1ブレーキB1の締結によりEV1速が達成され、第2ブレーキB2の締結によりEV2速が達成される。
ICEモードでは、第2クラッチCL2と第1ブレーキB1の締結により完全締結時(LU時)のICE1速が達成される。このため、第2クラッチCL2は、車両発進時に第1ブレーキB1と共に締結するクラッチを構成する。
ICEモードではさらに、第2クラッチCL2のスリップと第1ブレーキB1の締結によりWSC制御時つまりウェットスタートクラッチ制御時のICE1速が達成される。WSC制御はスリップ制御であり、車両発進時に行われる。WSC制御では、第2クラッチCL2の作動油圧である第2クラッチ圧PCL2を完全締結圧よりも低い締結圧に設定することにより、第2クラッチCL2をスリップさせながら徐々に締結する。締結圧は時間経過に応じて次第に増加するように設定される。完全締結圧、締結圧は予め設定することができる。
このほか、ICEモードでは第2クラッチCL2と第2ブレーキB2の締結によりICE2速が達成される。また、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2の締結によりICE3速が達成され、第1クラッチCL1と第2ブレーキB2の締結によりICE4速が達成される。後進は、第1ブレーキB1或いは第2ブレーキB2を締結し、モータジェネレータ2を逆回転駆動することにより行うことができる。
図4は変速機構3の共線図である。共線図では、各回転要素がギヤ比に応じた軸間距離で横軸に配置され、各回転要素の回転速度が縦軸に示される。変速機構3は、共線図の横軸にギヤ比に応じた間隔で5つの回転要素が第1回転要素から順に第2回転要素、第3回転要素、第4回転要素、第5回転要素と並ぶ構成とされる。変速機構3では、5つの回転要素が第1サンギヤS1から順に第2リングギヤR2、キャリアC、第1リングギヤR1、第2サンギヤS2と並ぶ。
共線図では、ギヤの噛み合いによる各回転要素の関係が各回転要素を直線で結んだ剛体レバーで示され、変速機構3の変速が剛体レバーの回転動作により表現される。例えば、ICE1速時の各回転要素の関係は、ICE1速で締結される第1リングギヤR1上の第2クラッチCL2と第2リングギヤR2上の第1ブレーキB1とを直線で結んだ剛体レバーにより示される。同様に、ICE2速時の各回転要素の関係は、ICE2速で締結される第2クラッチCL2と第1サンギヤS1上の第2ブレーキB2とを直線で結んだ剛体レバーにより示される。ICE3速時の各回転要素の関係は、ICE3速で締結される第2リングギヤR2上の第1クラッチCL1と第2ブレーキB2とを直線で結んだ剛体レバーにより示され、ICE4速時の各回転要素の関係は、ICE4速で締結される第1クラッチCL1と第2ブレーキB2とを直線で結んだ剛体レバーにより示される。
ICE1速からICE2速への変速時には、剛体レバーは第1リングギヤR1上の第2クラッチCL2を中心にして回転する。ICE2速からICE3速への変速時も同様である。ICE3速からICE4速への変速時には、剛体レバーは第1サンギヤS1上の第2ブレーキB2を中心にして回転する。
ところで、前述したようにWSC制御では第2クラッチCL2をスリップさせることから、第2クラッチCL2の潤滑・冷却が必要とされる。第2クラッチCL2の潤滑・冷却のためには、第2クラッチ圧PCL2が高くなると開く流量制御弁により第2クラッチCL2に潤滑油を供給することが考えられる。
しかしながらこの場合、WSC制御時だけでなく、潤滑が不要な第2クラッチCL2締結時にも第2クラッチCL2に潤滑油が供給される。結果、後述するオイルポンプ101の負荷が大きくなり、燃費や電費といったエネルギ消費の悪化を招くことが懸念される。また、潤滑の実行、停止を切り替える切替弁と、切替弁の状態を切り替えるソレノイドとを用いてWSC制御時の第2クラッチCL2の潤滑・冷却に対応することも考えられるが、この場合はコスト面で不利になることが懸念される。
このような事情に鑑み、本実施形態では第2クラッチCL2を含む変速機構3の締結要素に油を供給する油圧制御回路100が次に説明するように構成される。
図5は油圧制御回路100の要部を示す図である。油圧制御回路100は、オイルポンプ101、ライン圧制御弁102、リリーフ弁103、第1から第4油圧制御弁104から107、第1から第4フィルタ108から111、第1から第4アキュムレータ112から115、減圧弁116、ライン制御圧ソレノイドバルブ117、開閉弁118、オリフィス119、パーク装置120、第1切替弁121、第2切替弁122、クラッチ潤滑系123、冷却系124、潤滑系125を有して構成される。
オイルポンプ101は、ライン圧油路131に油を圧送する。オイルポンプ101はモータを動力源とする電動オイルポンプとされる。ライン圧制御弁102はライン圧油路131に設けられ、オイルポンプ101から供給される油を調圧してライン圧を生成する。リリーフ弁103はライン圧がリリーフ弁103の設定圧より高くなった場合に開弁し、ライン圧を設定圧以下に維持する。
ライン圧油路131には、第1油圧制御弁104及び第1フィルタ108を介して第1クラッチCL1が接続される。同様にライン圧油路131には、第2油圧制御弁105及び第2フィルタ109を介して第2クラッチCL2が、第3油圧制御弁106及び第3フィルタ110を介して第1ブレーキB1が、第4油圧制御弁107及び第4フィルタ111を介して第2ブレーキB2がそれぞれ接続される。
第1油圧制御弁104と第1クラッチCL1とは接続油路132により接続され、第1フィルタ108は接続油路132に設けられる。同様に、第2油圧制御弁105と第2クラッチCL2とは接続油路133により接続され、第2フィルタ109は接続油路133に設けられる。第3油圧制御弁106と第1ブレーキB1とは接続油路134により接続され、第3フィルタ110は接続油路134に設けられる。第4油圧制御弁107と第2ブレーキB2とは接続油路135により接続され、第4フィルタ111は接続油路135に設けられる。第1から第4フィルタ108から111それぞれは、変速機構3の締結要素のうち対応する締結要素に供給される油から異物を除去する。
第1から第4油圧制御弁104から107それぞれは、リニアソレノイドバルブにより構成され、制御電流に応じた油圧を生成する。第1から第4油圧制御弁104から107それぞれは、オイルポンプ101から供給される油を調圧することにより、変速機構3の締結要素のうち対応する締結要素の作動油圧を制御する。
例えば、第3油圧制御弁106はオイルポンプ101から供給される油を調圧することにより、第1ブレーキB1の作動油圧である第1ブレーキ圧PB1を制御する。また、第2油圧制御弁105はオイルポンプ101から供給される油を調圧することにより、第2クラッチ圧PCL2を制御する。第1ブレーキ圧PB1は第1油圧に対応し、第2クラッチ圧PCL2は第2油圧に対応する。第3油圧制御弁106は第1調圧弁に対応し、第2油圧制御弁105は第2調圧弁に対応する。
接続油路132には第1アキュムレータ112が設けられる。同様に、接続油路133には第2アキュムレータ113が、接続油路134には第3アキュムレータ114が、接続油路135には第4アキュムレータ115がそれぞれ設けられる。第1から第4アキュムレータ112から115それぞれは蓄圧装置であり、接続油路132から135のうち対応する接続油路から油圧を蓄え、また、蓄えた油圧を対応する接続油路へ放出する。第1から第4アキュムレータ112から115それぞれは、第1から第4フィルタ108から111のうち対応するフィルタよりも手前つまり上流側に設けられる。
ライン圧油路131には、減圧弁116がさらに接続される。減圧弁116は、供給される油を減圧する。減圧弁116は接続油路136を介してライン制御圧ソレノイドバルブ117と開閉弁118とに接続される。接続油路136はオリフィス119を介してドレン油路137と接続する。ドレン油路137は、ライン圧制御弁102からドレンされた油を流通させる。
ライン制御圧ソレノイドバルブ117はリニアソレノイドバルブであり、制御電流に応じた制御油圧を生成する。ライン制御圧ソレノイドバルブ117が生成した制御油圧はライン圧制御弁102に供給され、ライン圧制御弁102は当該制御油圧に応じて作動することで調圧を行う。開閉弁118はオンオフバルブであり、車両のパークロックを行う油圧式のパーク装置120への油の供給を実行、停止する。
ドレン油路137は、第1分岐油路138と第2分岐油路139とに分岐する。第1分岐油路138はクラッチ潤滑系123に接続し、第2分岐油路139は冷却系124さらには潤滑系125に接続する。クラッチ潤滑系123は変速機構3の締結要素の潤滑系であり、第2クラッチCL2を潤滑対象に含む。冷却系124と潤滑系125とは、変速機構3の締結要素以外に冷却・潤滑が必要な部位の冷却・潤滑を行う。ライン圧油路131とドレン油路137と第1分岐油路138とは、オイルポンプ101から第2クラッチCL2へ潤滑油を供給する潤滑油路140を構成する。
第1切替弁121は、潤滑油路140に設けられる。第1切替弁121は、第1分岐油路138及び第2分岐油路139へのドレン油路137の分岐地点に設けられる。第1切替弁121は、第1ブレーキ圧PB1と第2クラッチ圧PCL2とを信号圧として用いて第2クラッチCL2への潤滑油の供給量を制御する。第1切替弁121は、第2クラッチCL2への潤滑油の供給、停止を切り替えることにより、第2クラッチCL2への潤滑油の供給量を制御する。第1切替弁121の第1ブレーキ圧PB1の入力ポートは、接続油路141により接続油路134に接続される。第1切替弁121の第2クラッチ圧PCL2の入力ポートは、接続油路142により接続油路133に接続される。第1切替弁121の動作については後述する。
接続油路141には第2切替弁122が設けられる。第2切替弁122は第2クラッチ圧PCL2を信号圧として用いて第1切替弁121に供給される信号圧としての第1ブレーキ圧PB1を制御する。第2切替弁122は第1切替弁121への第1ブレーキ圧PB1の供給、停止を切り替えることにより、第1ブレーキ圧PB1を制御する。第2切替弁122の第2クラッチ圧PCL2の入力ポートは、接続油路143により接続油路142に接続され、これにより接続油路142、接続油路143を介して接続油路133に接続される。第2切替弁122の動作については後述する。
本実施形態では、WSC制御によりスリップされる第2クラッチCL2の潤滑を制御する潤滑制御装置が、オイルポンプ101、第3油圧制御弁106、第1ブレーキB1、第2油圧制御弁105、第2クラッチCL2、潤滑油路140、第1切替弁121及び第2切替弁122を有して構成される。潤滑制御装置は、油圧制御回路100のその他の構成をさらに有して構成されてもよい。本実施形態にかかる潤滑制御装置では、次に説明するように第1切替弁121が動作することにより第2クラッチCL2の潤滑が行われる。
図6から図9は、第1切替弁121の動作説明図である。図6は第1切替弁121の第1切替状態を示す。図7は第1切替状態における第1切替弁121の信号圧の関係を示す。図8は第1切替弁121の第2の切替状態を示す。図9は第2切替状態における第1切替弁121の信号圧の関係を示す。
図6に示す第1切替状態は、ICE1速時且つ第2クラッチCL2完全締結時の第1切替弁121の切替状態である。第1ブレーキ圧PB1は、第1切替弁121のスプリング121aの付勢力に抗してスプールに作用する。従って、第1切替弁121では、第1ブレーキ圧PB1が第1切替弁121を開とする方向の信号圧として第1切替弁121に供給される。第2クラッチ圧PCL2は、スプリング121aの付勢力の作用方向と同方向でスプールに作用する。従って、第1切替弁121では、第2クラッチ圧PCL2が第1切替弁121を閉とする方向の信号圧として第1切替弁121に供給される。
第1切替弁121では、第1ブレーキ圧PB1から第2クラッチ圧PCL2を減算して得られる差圧ΔPに応じたスプールへの作用力とスプリング121aの付勢力とに応じて切替状態が決定される。第1切替弁121では第1ブレーキ圧PB1が作用する側と第2クラッチ圧PCL2が作用する側とでスプールの受圧面積は同じとなっている。
図7に示すように、第1切替状態では完全締結圧に設定された第1ブレーキ圧PB1及び第2クラッチ圧PCL2それぞれが同じ傾きでモータトルクの増加に応じて増加する。モータトルクはオイルポンプ101の駆動トルクであり、同一モータトルクでは第1ブレーキ圧PB1は第2クラッチ圧PCL2よりも高い。また、同一モータトルクにおける第1ブレーキ圧PB1と第2クラッチ圧PCL2との差分の大きさ、つまり差圧ΔPは切替圧PSよりも小さい。切替圧PSは、スプリング121aの付勢力に応じたスプールへの作用圧であり、差圧ΔPが切替圧PS以上になると第1切替弁121は開とされる。
これらのことから、第1切替状態では差圧ΔPが一定となり且つ切替圧PSよりも低くなる。この場合、第1切替弁121のスプールは、スプリング121aの付勢力により第1切替弁121を閉とする方向に付勢される。
結果、図6に示すように、第1切替状態では第1分岐油路138の接続ポートがスプールにより遮断されるので、クラッチ潤滑系123への潤滑油の供給は行われない。この場合、第2分岐油路139の接続ポートがスプールにより開放され、冷却系124さらには潤滑系125への潤滑油の供給が行われる。
図8に示す第2切替状態は、ICE1速時且つWSC制御時の第1切替弁121の切替状態である。図9に示すように、第2切替状態では第1ブレーキ圧PB1が完全締結圧に設定される一方、第2クラッチ圧PCL2が締結圧に設定される。締結圧に設定された第2クラッチ圧PCL2は、破線で示す完全締結圧に設定された場合の第2クラッチ圧PCL2よりも小さい傾きを有し、且つ同一モータトルクで破線で示す第2クラッチ圧PCL2よりも低くなる。さらに、第2クラッチ圧PCL2は同一モータトルクで差圧ΔPが切替圧PSよりも高くなるように設定される。
このため、WSC制御時には第1切替弁121のスプールが差圧ΔPに応じた付勢力により第1切替弁121を開とする方向に付勢される。結果、図8に示すように、第1分岐油路138の接続ポートが開放されるので、クラッチ潤滑系123への潤滑油の供給が行われる。この場合、第2分岐油路139の接続ポートはスプールにより遮断され、冷却系124さらには潤滑系125への潤滑油の供給は行われない。
上述のような切替状態を有する第1切替弁121は、WSC制御が行われている間は第2クラッチCL2への潤滑油の供給を行い、WSC制御が終了し第2クラッチCL2が完全締結されると第2クラッチCL2への潤滑油の供給を停止する。
従って、本実施形態にかかる潤滑制御装置は、第2クラッチ圧PCL2が低く第2クラッチCL2がスリップ状態のときには第1切替弁121を開として第2クラッチCL2に潤滑油を供給し、第2クラッチ圧PCL2が高く第2クラッチCL2が完全締結状態のときには第1切替弁121を閉として第2クラッチCL2への潤滑油の供給を行わない。
これにより、完全締結された第2クラッチCL2への不要な潤滑油供給によるエネルギ消費の悪化が防止される。第2クラッチCL2がスリップ状態のとき、第2クラッチ圧PCL2は締結圧に設定され、第2クラッチCL2が完全締結状態のとき、第2クラッチ圧PCL2は完全締結圧に設定される。
前述した図3に示すように、第1ブレーキB1はICE1速時のほかEV1速時にも締結される。このため、第1切替弁121のみで第2クラッチCL2への潤滑油の供給量を制御しようとすると、第2クラッチCL2のスリップが行われないEV1速時にも、第1ブレーキB1が締結されることにより差圧ΔPが切替圧PSよりも高くなる。結果、第1切替弁121が第2切替状態になり、第2クラッチCL2への不要な潤滑油供給が行われることになる。
本実施形態では、前述したように第2切替弁122が接続油路141に設けられる。結果、第1切替弁121は第2切替弁122の動作に応じて次のように動作する。
図10、図11は、第1切替弁121及び第2切替弁122の動作説明図である。図10は、WSC制御時の第1切替弁121及び第2切替弁122の切替状態を示す。図11は、EV1速時の第1切替弁121及び第2切替弁122の切替状態を示す。
図10に示すように、第2切替弁122では第2クラッチ圧PCL2が第2切替弁122のスプリング122aの付勢力に抗してスプールに作用する。従って、第2切替弁122では第2クラッチ圧PCL2が第2切替弁122を開とする方向の信号圧として第2切替弁122に供給される。
図10に示すWSC制御時には、締結圧に設定された第2クラッチ圧PCL2が第2切替弁122に供給される。スプリング122aに基づく第2切替弁122の設定圧、つまり第2切替弁122の切替圧は、発生しているモータトルクの大きさに関わらず締結圧に設定された第2クラッチ圧PCL2よりも小さくなるように設定される。
このためこの場合は、第2切替弁122のスプールが第2クラッチ圧PCL2に応じた作用力により第2切替弁122を開とする方向に付勢される。結果、接続油路141がスプールにより連通されるので、第1ブレーキ圧PB1が第1切替弁121に供給され、第1切替弁121が第2切替状態になる。従って、WSC制御時には第2クラッチCL2への潤滑油の供給が行われる。
図11に示すように、EV1速時には第2クラッチCL2が解放されることから、第2クラッチ圧PCL2は第2切替弁122に供給されない。このためこの場合は、第2切替弁122のスプールがスプリング122aの付勢力により第2切替弁122を閉とする方向に付勢される。結果、接続油路141がスプールにより遮断されるので、第1ブレーキ圧PB1は第1切替弁121に供給されず、第1切替弁121は第1切替状態になる。従って、EV1速時には第2クラッチCL2への不要な潤滑油供給は行われない。
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
本実施形態にかかる潤滑制御装置は、オイルポンプ101と、第3油圧制御弁106と、第1ブレーキB1と、第2油圧制御弁105と、第2クラッチCL2と、潤滑油路140と、第1切替弁121とを有する。当該潤滑制御装置は、第1切替弁121を開とする方向の信号圧として第1ブレーキ圧PB1を第1切替弁121に供給するとともに、第1切替弁121を閉とする方向の信号圧として第2クラッチ圧PCL2を第1切替弁121に供給する。当該潤滑制御装置は、第2クラッチCL2に供給される第2クラッチ圧PCL2が低く第2クラッチCL2がスリップ状態のときには第1切替弁121を開として第2クラッチCL2に潤滑油を供給し、第2クラッチCL2に供給される第2クラッチ圧PCL2が高く第2クラッチCL2が完全締結状態のときには第1切替弁121を閉として第2クラッチCL2への潤滑油の供給を行わない。
このような構成によれば、第1切替弁121の状態を切り替えるソレノイド及びドライバが不要な分、コスト面で有利な構成を得ることができる。また、第2クラッチCL2に供給される第2クラッチ圧PCL2が高く第2クラッチCL2が完全締結状態の時には第1切替弁121を閉として第2クラッチCL2への潤滑油の供給を行わないので、エネルギ消費面でも有利な構成とすることができる(請求項1に対応する効果)。
本実施形態にかかる潤滑制御装置は、第2切替弁122をさらに有する。当該潤滑制御装置では、第2クラッチ圧PCL2がスプリング122aに基づく設定圧よりも高い状態において第2切替弁122が開き、第1切替弁121に第1ブレーキ圧PB1を供給する。
このような構成によればさらに、第2クラッチ圧PCL2に基づき第2クラッチCL2の潤滑が不要な場合を除外することが可能になるので、第2クラッチCL2への不要な潤滑油供給を防止することが可能になる。このため、エネルギ消費面でさらに有利な構成とすることが可能になる(請求項2に対応する効果)。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。