以下、本発明を実施するための好ましい形態について図面を参照して説明する。本発明に係る油圧制御弁は広範な適用形態を有するものでがあるのが、ここでは一つの適用事例として車両の動力伝達装置に適用した場合について、まず動力伝達装置1を模式的に示す図7を参照して概要構成から説明する。動力伝達装置1は、エンジンENGと、このエンジンの出力軸ESにトルクコンバータTCを介して連結された自動変速機(以下トランスミッションという)2と、トランスミッション2の車軸側に配設された第1駆動モータM1と、トランスミッション2とエンジンENGとの間に配設された第2駆動モータM2とから構成され、エンジンENGの回転駆動力を左右の駆動輪WL,WRに伝達して車両を走行させる。
第1駆動モータM1及び第2駆動モータM2は、電気モータ・ジェネレータであり、車載の図示省略するバッテリにより駆動されてエンジンENGの駆動力をアシストし、あるいはエンジンの停止時(休筒時)にモータの駆動力で走行することが可能であるとともに、エンジン走行時や減速走行時等に発電を行ってバッテリの充電を行うことができるようになっている。すなわち、動力伝達装置の駆動源は、エンジンENGとこれらの駆動モータM1,M2とからなり、ハイブリッド型になっている。
トランスミッション2は、多板クラッチ等の油圧アクチュエータに供給する油圧を制御することで変速制御がなされる前進5速及び後進1速の平行軸式の変速機構であり、エンジンENGのクランクシャフトESにロックアップ機構LCを有するトルクコンバータTCを介して接続されたメインシャフト10と、このメインシャフト10と平行に延びて配設されるとともに、複数のギヤ列を介してメインシャフト10に接続されたセカンダリシャフト20、サードシャフト30、カウンタシャフト40を備え、図示省略するトランスミッションケースの内部に配設される。
メインシャフト10には、メイン3速ギヤ13が結合配設されるとともに、メイン4速ギヤ14、メイン5速ギヤ15、及びメイン5速ギヤ15と一体に連結されたメインリバースギヤ16が相対回転自在に配設されている。またメインシャフト10には、それぞれ相対回転自在に配設されたメイン4速ギヤ14をメインシャフト10に結合させる4速クラッチC4、メイン5速ギヤ15及びこれと一体のメインリバースギヤ16をメインシャフト10に結合させる5速クラッチC5が設けられている。
セカンダリシャフト20には、セカンダリ1速ギヤ21及びセカンダリ2速ギヤ22が相対回転自在に配設され、セカンダリアイドルギヤ23が結合配設されている。またセカンダリシャフト20には、相対回転自在に配設されたセカンダリ1速ギヤ21をワンウェイクラッチ27を介してセカンダリシャフト20に結合させる1速クラッチC1、セカンダリ1速ギヤ21をワンウェイクラッチ27を介することなく直接セカンダリシャフト20に結合させる1速ホールドクラッチCL、及び相対回転自在に配設されたセカンダリ2速ギヤ22をセカンダリシャフト20に結合させる2速クラッチC2が設けられている。
サードシャフト30には、メイン3速ギヤ13と噛合するサード3速ギヤ33が相対回転自在に配設され、メイン4速ギヤと噛合するサード4速ギヤ34が結合配設されるとともに、相対回転自在に配設されたサード3速ギヤ33をサードシャフトに結合させる3速クラッチC3が設けられている。
カウンターシャフト40には、セカンダリ1速ギヤ21と噛合するカウンタ1速ギヤ41、セカンダリ2速ギヤ22と噛合するカウンタ2速ギヤ42、及びメイン4速ギヤ14と噛合するカウンタ4速ギヤ44が結合配設される。またカウンターシャフト40には、メイン3速ギヤ13及びセカンダリアイドルギヤ23と噛合するカウンタアイドルギヤ43、メイン5速ギヤ15と噛合するカウンタ5速ギヤ45、及びリバースアイドルギヤ36を介してメインリバースギヤ16と噛合するカウンタリバースギヤ46がそれぞれ相対回転自在に配設されている。
カウンターシャフト40上におけるカウンター5速ギヤ45とカウンターリバースギヤ46との間にドグ歯機構を利用したリバースセレクタ47が設けられており、そのセレクタスリーブ47sを図示省略する油圧サーボ機構で軸方向に移動させて、カウンタ5速ギヤ45をカウンタシャフト40に結合させ、あるいはカウンタリバースギヤ46をカウンタシャフト40に結合させることができるようになっている。
このように構成されたトランスミッション2において、1速クラッチC1を係合させてセカンダリ1速ギヤ21をセカンダリシャフト20に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、カウンタアイドルギヤ43、セカンダリアイドルギヤ23、セカンダリ1速ギヤ21、カウンタ1速ギヤ41からなる1速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される1速段が設定される。1速クラッチC1を係合させた1速段では、セカンダリ1速ギヤ21がワンウェイクラッチ27を介してセカンダリシャフト20に結合されるため、アクセルをオフにしたときにワンウェイクラッチ27が滑り急減速しないようになっている。一方、1速ホールドクラッチCLを係合させた1速ホールド段ではギヤ列は同一であるが、セカンダリ1速ギヤ21がワンウェイクラッチ27を介することなく直接セカンダリシャフト20に結合されるため、強力なエンジンブレーキを作動させることができる。
2速クラッチC2を係合させてセカンダリ2速ギヤ22をセカンダリシャフト20に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、カウンタアイドルギヤ43、セカンダリアイドルギヤ23、セカンダリ2速ギヤ22、及びカウンタ2速ギヤ42からなる2速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される2速段が設定される。同様に、3速クラッチC3を係合させてサード3速ギヤ33をサードシャフト30に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、サード3速ギヤ33、サード4速ギヤ34、メイン4速ギヤ14、及びカウンタ4速ギヤ44からなる3速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される3速段が設定される。また4速クラッチC4を係合させると、メインシャフト10の回転が、メイン4速ギヤ14とカウンタ4速ギヤ44とからなる4速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される4速段が設定される。
一方、5速クラッチC5を係合させて一体に形成されたメイン5速ギヤ15及びメインリバースギヤ16をメインシャフト10に結合させると、メインシャフト10の回転がこれらのギヤと噛合するカウンタ5速ギヤ45及びカウンタリバースギヤ46に伝達される。但し、カウンタ5速ギヤ45及びカウンタリバースギヤ46はそれぞれカウンタシャフト40に相対回転自在に配設されており、リバースセレクタ47の作動に応じてカウンタシャフト40と選択的に係脱される。
すなわち、図示省略する油圧サーボ機構によりセレクタスリーブ47sを図7における右方に移動させてカウンタ5速ギヤ45をカウンタシャフト40に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン5速ギヤ15及びカウンタ5速ギヤ45からなる5速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される5速段が設定される。一方、セレクタスリーブ47sを図7における左方に移動させてカウンタリバースギヤ46をカウンタシャフト40に結合させると、メインシャフト10の回転がメインリバースギヤ16、リバースアイドルギヤ36、及びカウンタリバースギヤ46からなるリバースギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達されるリバース段が設定される。
以上のように、1速、2速、3速、4速、5速クラッチC1〜C5及び1速ホールドクラッチCLの係合制御と、油圧サーボ機構によるリバースセレクタ47のセレクタスリーブ47sの移動制御とにより1速〜5速、1速ホールド、及びリバース段の設定がなされる。これら1速〜5速クラッチC1〜C5及び1速ホールドクラッチCLの係合制御と、油圧サーボ機構の作動制御、及びトランスミッション各部の潤滑が油圧制御装置7から供給される作動油により行われる。油圧制御装置7の作動制御はコントロールユニットECUからの制御信号に基づいて行われる。
そして、1速段〜5速段、1速ホールド段、及びリバース段が設定され、各ギヤ列を介してメインシャフト10の回転がカウンタシャフト40に伝達される。カウンタシャフト40の回転は、このカウンタシャフト40に結合配設されたファイナルドライブギヤ48、及びファイナルドライブギヤ48と噛合するファイナルドリブンギヤ58を介してディファレンシャル機構DFに伝達され、左右のアクスルシャフト59,59を介して左右の駆動輪WL,WRに伝達される。
一方、トランスミッション2の車軸側には、第1駆動モータM1の回転駆動力を駆動輪に伝達するモータ動力伝達機構5が配設されている。モータ動力伝達機構5は、第1駆動モータM1のスピンドルに結合配設されたモータ駆動ギヤ51、モータ駆動ギヤ51と噛合するモータアイドラギヤ52、モータカウンタシャフト50に回転自在に配設されたモータ従動ギヤ53、モータカウンタシャフト50に結合配設されたモータファイナルドライブギヤ54、及びシンクロクラッチ57から構成される。
シンクロクラッチ57は、後に詳述する油圧サーボ機構によりシンクロスリーブ57sを軸方向に移動させてモータ従動ギヤ53をモータカウンタシャフト50に結合させ、あるいはモータ従動ギヤ53とモータカウンタシャフト50との結合を切り離す。このため、シンクロクラッチ57が係合されると、第1駆動モータM1の回転がモータ駆動ギヤ51、モータアイドラギヤ52、モータ従動ギヤ53、モータファイナルドライブギヤ54からなるモータギヤ列を介して、モータファイナルドライブギヤ54と噛合するファイナルドリブンギヤ58を介してディファレンシャル機構DFに伝達され、左右のアクスルシャフト59,59を介して左右の駆動輪WL,WRに伝達される。
従って、このハイブリッド車両では、第2駆動モータM2をエンジンENGのスタータとして使用しアイドル停止状態(休筒状態)のエンジンを始動させることができ、エンジンENGの駆動時にはエンジン駆動力をアシストさせてトランスミッション2において設定された速度段で車両を走行させることができる。またエンジンENGを停止させ、1速〜5速クラッチC1〜C5及び1速ホールドクラッチCLの係合を解除した状態で、モータ動力伝達装置5のシンクロクラッチ57を係合させ、第1駆動モータM1により走行が可能になっている。シンクロクラッチ57の油圧サーボ機構の作動制御、およびモータ動力伝達装置5の各部の潤滑も、トランスミッション2と同様に油圧制御装置7から供給される作動油により行われる。
油圧制御装置7は、トルクコンバータTCの入力軸側に設けられエンジンENGにより回転駆動されるオイルポンプP1、エンジン停止時にバッテリの電力により回転駆動される電動オイルポンプ、これらのオイルポンプから吐出された作動油を各油圧アクチュエータ(C1〜C5、CL、リバースセレクタ47及びシンクロクラッチ57の油圧サーボ機構等)やベアリング等の潤滑部位に導くための複数の油圧制御バルブ、及びこれらの間を繋ぐ油路などからなり、各油圧制御バルブの作動が、運転席のシフトレバー装置において選択された走行レンジに応じて油路を切り換えるマニュアルバルブ、コントロールユニットECUからの制御信号により油路を切り換えるソレノイドバルブ等により制御される。
コントロールユニットECUには、運転者がシフトレバーにおいて選択した走行レンジ(D,N,R,Pレンジ)の選択信号やスロットル開度の信号、車両の走行速度や傾斜角度等の走行状態を検出する検出信号が入力されており、コントロールユニットECUは、これらの信号に基づいた制御信号を油圧制御装置7に出力して1速〜5速クラッチC1〜C5、シンクロクラッチ57等の作動を制御し、第1駆動モータM1、第2駆動モータM2に制御信号を出力して各駆動モータの作動を制御する。これによりトランスミッション2がシフトレバーにおいて選択された走行レンジに応じた動力伝達経路に設定されるとともに、第1,第2駆動モータM1,M2を利用した駆動力アシストやモータ走行、バッテリの充電が行われる。なお本実施形態においては前進方向の走行レンジに複数の前進レンジがある場合を含めてDレンジと記載する
以上のように概要構成される動力伝達装置1において、モータ動力伝達機構5に設けられたシンクロクラッチ57を断接させる油圧サーボ機構の油圧回路に、本発明に係る油圧制御弁であるレデューシングカットバルブが適用されている。第1実施形態のレデューシングカットバルブ100を図1に、このレデューシングカットバルブ100を用いた油圧サーボ機構に関する油圧回路の要部構成を図2に示しており、以下これらの図面を参照して油圧サーボ機構に関する油圧回路の回路構成及びレデューシングカットバルブ100について説明する。なお以降説明する各図において、端部が開放された油路はドレンに繋がっている。また特記無き限り図1及び図2に示す左右方向をもって左方または右方と称して説明する。
この油圧回路は、オイルポンプP1から吐出された作動油の接続油路を切り換えるマニュアルバルブ70、油圧サーボ機構90への供給油路を切り換えてるシフトバルブ80、シフトバルブ80を切換作動させる信号圧をオンオフ制御するソレノイドバルブ75、及びマニュアルバルブ70を介してオイルポンプP1から供給される作動油の油圧(前進レンジ選択圧)に応じてシフトバルブ80への作動油供給を制御するレデューシングカットバルブ100などから構成される。
オイルポンプP1には、ストレーナが設けられたオイルパンTから吸入した作動油を吐出する吐出油路61が接続され、この吐出油路61に設けられたレギュレータバルブ62によりライン圧(PL)に調圧される。吐出油路61はマニュアルバルブ70の入力ポート71に接続される。
マニュアルバルブ70は、運転席のシフトレバーと連結されて当該シフトレバーにおいて選択された走行レンジ(D,N,R,Pレンジ)に基づいて、入力ポート71に導入された作動油の供給油路を切り替えるバルブであり、選択された走行レンジがDレンジ(前進レンジ)のときに入力ポート71と前進レンジ出力ポート72が連通される。前進レンジ出力ポート72には油路63が接続され、その一方がレデューシングカットバルブ100の導入通路111に繋がり、他方が油路64を介してソレノイドバルブ75の入力ポートに繋がっている。
ソレノイドバルブ75は、ノーマルクローズタイプの電磁開閉弁であり、このソレノイドバルブの入出力ポートに接続された油路64,65の接続・遮断がコントロールユニットECUにより制御される。出力ポートに接続された油路65はシフトバルブ80の信号圧油室81に繋がっている。
レデューシングカットバルブ100は、このバルブに作動油が供給されていない状態における拡大断面図を図1に示すように、バルブボディ110と、このバルブボディの内部に軸方向に摺動可能に内挿されたスプール120と、スプール120を軸方向(図1及び図2における左方)に付勢するスプリング130とを有し、このバルブに供給される入力油圧に応じてスプール120を摺動させて導入通路111と排出通路114との連絡状態を制御する油圧制御弁である。
スプール120は、図1における左端に設けられた第1ランド部121、スプール中間部に設けられた第2ランド部122、右端側に設けられた第3ランド部123、第1ランド部121と第2ランド部122との間を繋ぐロッド部に形成された第1スプール溝125、第2ランド部122と第3ランド部123との間を繋ぐロッド部に形成された第2スプール溝126、及びスプール120の右端側に穿設されたスプリング穴127などからなり、第1,第2,第3ランド部の外径が同一径のバルブスプールである。
バルブボディ110には、スプール120の第1〜第3ランド部121〜123の外周面と摺接してスプール120を軸方向に摺動可能に嵌挿支持するスプール穴が形成され、このスプール穴の内周に、作動油の通路となる断面視U字形で円環状の油溝が複数(図1に示すレデューシングカットバルブ100では7箇所)形成され、各油溝に繋がる油路が形成されている。
各油溝は、左端側から順に、スプール120をスプリング130の付勢方向と逆方向(図における右方)に付勢する制御力を作用させる反力油室113、バルブ内に入力油圧を導入する導入通路111、反力油室113に入力油圧を導入する反力通路112、バルブから出力油圧を排出する排出通路114、排出通路114の油圧を開放する開放通路115、サージ圧力の発生等によりスプール120がオーバーストロークしたときに開放通路115と連通する第2排出通路116、右端部に形成された開放油室117からなり、それぞれスプール120の各ランド部及びスプール溝等と図1に示す相対位置関係をもって形成されている。
導入通路111はバルブボディに形成された入力ポートを介して油路63と接続され、反力通路112は油路118により反力油室113と接続され、排出通路114及び第2排出通路116は連結されて油路66を介してシフトバルブ80の入力ポート82に接続されている。開放通路115及び開放油室117は図示省略するドレン油路を介してドレンされている。
スプリング130は、圧縮型のコイルスプリングであり、スプール120のスプリング穴127とバルブボディ110との間に初期撓みを有して係止され、スプール120を常時左方に付勢する。このため、導入通路111に作動油が供給されていない状態では、スプール120に作用する力はスプリング130による左向きの付勢力のみであり、スプール120は図1に示す左端位置(セット位置)に配設される。
一方、導入通路111に作動油が供給されて入力油圧が立った状態では、スプール120に作用する力は、上記スプリング130による左向きの付勢力と、導入通路111から第1スプール溝125及び反力通路112を介して反力油室113に導かれた入力油圧によって発生される右向きの制御力の両方になり、スプール120は、スプリング130のバネ力と反力油室113から作用する制御力とがバランスする作動位置に配設される。そして、このスプール120の作動位置に応じて導入通路111と排出通路114との連絡状態が制御される。すなわちこのレデューシングカットバルブ100では、導入通路111に供給される入力油圧の大きさに応じて、導入通路111と排出通路114との連絡状態が制御される。なお、このレデューシングカットバルブ100の作用については、後に詳述する。排出通路114は油路66を介してシフトバルブ80の入力通路82に接続されている。
シフトバルブ80は、バルブボディと、このバルブボディのスプール穴に軸方向に摺動可能に嵌挿支持されたスプールと、スプールを軸方向(図2における左方)に付勢するスプリングとを備えて構成される。スプール穴の内周に形成された断面視U字形で円環状の油溝は、左右方向の中間部に位置して入力通路82、その左右に第1出力通路83及び第2出力通路84、さらにその左右に開放通路が形成され、左端部には信号圧油室81、右端部には開放油室が形成されている。そして信号圧油室81は油路65、入力通路82に油路66、第1出力通路83に油路67、第2出力通路84に油路68の各油路が接続され、開放通路及び開放油室がドレン油路を介してドレンされている。
スプールは前述したレデューシングカットバルブ100と同様に3箇所のランド部とこれらの間に形成されたスプール溝とを有し、右端側に配設されたスプリングにより左方に付勢された状態で配設される。このため、信号圧油室81に信号圧が作用していない状態ではスプールが左端のセット位置に配設され、入力通路82と第1出力通路83、第2出力通路84と開放通路がそれぞれ接続される。
一方、信号圧油室81に信号圧が作用した状態では、スプールに作用する力はスプリングによる左向きの付勢力と、信号圧油室81に導かれた信号圧による右向きの付勢力の両方になり、通常作動時の信号圧(後述する第1設定圧以上の信号圧)では、スプールが右端の作動位置まで移動されたシフト位置に配設され、入力通路82と第2出力通路84、第1出力通路83と開放通路とがそれぞれ接続される。
油圧サーボ機構90は、第1油室91または第2油室92に供給される油圧により作動するピストン93と、このピストン93と同軸上に連結されて伸縮駆動されるフォークシャフト94、フォークシャフト94に固定されたシフトフォーク95、フォークシャフト94の作動位置を検出する第1検出器96a及び第2検出器96bなどから構成される。
シフトフォーク95はシンクロクラッチ57のシンクロスリーブ57sに係合されており、第1油室91に作動油圧が作用してフォークシャフト94が伸長した状態(図2においてシフトフォーク95がON位置にある状態)の時にシンクロクラッチ57が接続状態になり、第2油室92に作動油圧が作用してフォークシャフト94が縮小した状態(同上シフトフォーク95がOFF位置にある状態)の時にシンクロクラッチ57が切断状態になるように構成されている。そして、シフトバルブ80の第1出力通路83が油路67により第2油室92に接続され、シフトバルブ80の第2出力通路84が油路68により第1油室91に接続されている。
次に、以上のように構成された油圧制御回路の作用について、レデューシングカットバルブ100のより詳細な構成を含めて説明する。まず、運転席のシフトレバーにおいて選択された走行レンジがNレンジ(ニュートラルレンジ)のときには、マニュアルバルブ70において入力ポート71と前進レンジ出力ポート72との連絡が遮断されるとともに油路63が開放されており、レデューシングカットバルブ100の導入通路111に作動油が供給されない。このため、レデューシングカットバルブ100のスプール120は、スプリング130の付勢力により左端のセット位置に配設され、導入通路111と排出通路114との連絡が遮断された状態になる。従って、シフトバルブ80の入力通路82に作動油が供給されず、サーボ機構90が切り換え作動することがない。
運転席のシフトレバーにおいてDレンジが選択されると、マニュアルバルブ70において入力ポート71と前進レンジ出力ポート72とが接続されて連通状態になり、オイルポンプP1から吐出された作動油が入力ポート71から前進レンジ出力ポート72を通って油路63に流れ、この油路63を通ってレデューシングカットバルブ100の導入通路111に供給されるとともに、油路63から分岐する油路64を通ってソレノイドバルブ75の入力ポートに供給される。
レデューシングカットバルブ100の導入通路111に供給された作動油は、セット位置にあるスプール120の第1スプール溝125に供給される。セット位置では、導入通路111と反力通路112とがスプール溝125により連通状態であるとともに、油路118を介して反力油室113と繋がっており、導入通路111に供給された作動油が、第1スプール溝125から反力通路112及び油路118を介して反力油室113に供給される。すると、この反力油室113に供給された作動油の油圧、すなわち導入通路111に供給された入力油圧PINが、スプール120における第1ランド部121左端の受圧面に作用し、この受圧面の面積と入力油圧PINとを掛け合わせた大きさの推力(制御力)がスプール120に右向きに作用する。
一方、スプール120には、前述したように、スプリング130により左向きの付勢力が作用している。このため、スプール120は、スプリング130による左向きの付勢力と、反力油室113に作用する入力油圧による右向きの制御力の両方を受け、これらの力がバランスする作動位置に配設される。
そこで、入力油圧PINを変化させたときのスプール120の作動位置及び各作動位置における導入通路111と排出通路114との連絡状態を図3に示し、入力油圧PINを変化させたときの入力油圧PINと排出通路114から排出される作動油圧(出力油圧)POUTとの関係を図4に示しており、これらの図面を参照しながらレデューシングカットバルブ100の作用について説明する。なお、図3では、入力油圧PINを徐々に増加させていった場合のスプール位置、及び導入・排出通路の連絡状態を(a)から(e)の順に示し、これと同様の図面(a)〜(e)を図4に併記するとともに、特性図の該当位置に符号を付記している。
まず、導入通路111に作動油が供給された入力油圧PINがPIN≒0のときには、図3(a)に示すように、第1スプール溝125に流入した作動油が油路118を通って反力油室113にも供給されるが、PIN≒0のため右向きの制御力が発生せず、スプール120はセット位置に配設されたままである。セット位置では第1スプール溝125と排出通路114との間に第2ランド部122が位置しており、導入通路111と排出通路114との連絡が遮断されている。また、排出通路114は、第2スプール溝126により開放通路115と接続されている。このため、油路66に作動油が供給されず油圧も立たない。
入力油圧PINが上昇し、反力油室113からスプール120に作用する制御力がスプリング130のセット長における付勢力を超えると、図3(b)に示すように、スプール120が右動し、第2ランド部122が排出通路114を遮蔽して開放通路115との連絡を遮断する。この段階では、導入通路111と排出通路114との連絡は未だ接続されておらず、油路66に作動油は供給されない(図4における領域I)。なお、開放通路115は、スプール120がセット状態のときに、排出通路114よりも下流側の圧力、すなわちシフトバルブの入力通路82の圧力を確実にゼロにするために設けたものであり、このような設定が必要でない場合、例えば下流側の油圧回路の消費流量が比較的大きいような場合には、開放通路115を形成せずに構成しても良い。
入力油圧PINがさらに上昇し、スプール120が右動すると、図3(c)に示すように、排出通路114を遮蔽していた第2ランド部122が右道して第1スプール溝125の右端部と排出通路114の左端部とが繋がり、導入通路111と排出通路114との第1スプール溝125を介した接続が開始される。これにより、導入通路111に供給された作動油が排出通路114から油路66を介してシフトバルブ80の入力通路82に供給されるようになるが、この段階における導入通路111は、第1ランド部121によりほとんど塞がれておらず、入力油圧PINが微量のバルブ損失を除いてそのまま出力油圧POUTとなって排出通路114に出力される(図4における領域II)。
このため、導入通路111と排出通路114との接続が開始される圧力未満の入力油圧では、排出通路114から下流側の油圧回路(シフトバルブ80の入力通路82)に作動油供給が行われず、接続が開始される圧力を超えると、油路63から導入通路111に供給された作動油が排出通路114から下流側の油圧回路に供給されるようになる。すなわちこの接続開始時の油圧がカット弁におけるカット作動圧PCに相当し、特許請求の範囲における第1設定圧に該当する。
本実施形態では、カット作動圧PCを、シフトバルブ80が接続油路を確実に切り換えて油圧サーボ機構90を作動可能な圧力、より具体的には、シフトバルブ80の信号圧油室81に作動油を供給したときに、シフトバルブ80のスプールがスプリングの付勢力に抗して右方の作動位置に移動し、入力通路82と第2出力通路84との連絡が連通される圧力に設定している。
入力油圧PINがさらに上昇してスプール120が右動すると、図3(d)に示すように、第1スプール溝125と排出通路114との連絡が完全に連通状態になる一方で、第1ランド部121の右端部(右端スイッチングコーナ)により導入通路111と第1スプール溝125との連絡が制限され(両者間の流路断面積が縮小され)、排出通路114の出力油圧POUTがわずかに低下する状況が発生する(A状態という)。
ところが、第1スプール溝125と反力油室113とが油路118で接続されているため、排出通路114の出力油圧POUTが低下すると反力油室113の圧力も低下し、これに伴ってスプール120を右方に付勢する制御力が低下してスプール120が左動する。このため第1ランド部121の右端スイッチングコーナにより絞られた流路断面積がスプール120の左動により拡大され、今度は排出通路114の出力油圧POUTがわずかに上昇する状態が生じる(B状態という)。この結果、以降上記A状態とB状態とが繰り返され排出通路114の出力油圧POUTが一定圧に調圧される(図4における領域III)。
このため、導入通路111に供給される入力油圧が一定圧力を超えると、この入力油圧に基づく制御力により右動されるスプール120が流路断面積を縮小させて導入通路111と排出通路114との連絡を制限し、これにより排出通路114から出力される作動油の出力油圧POUTが一定の調圧値PMになるように減圧制御される。この調圧値PMが減圧弁における設定値であり、特許請求の範囲における第2設定圧に該当する。
本実施形態では、油圧サーボ機構90の第1油室91または第2油室92に作動油を供給してシンクロクラッチ57を切り換え作動させる際に、油圧サーボ機構が発生するサーボ推力が所定値になるように、調圧値PMをサーボ供給圧に設定している。
なお、本実施形態のレデューシングカットバルブ100では、導入通路111に急峻なサージ圧力が発生し、スプール120が慣性力で右端位置までオーバーストロークしてスプールロックが生じたような場合に、図3(e)に示すように、第1ランド部121が導入通路111を遮蔽するとともに、第2排出通路116と開放通路115とが第2スプール溝126により連通されるように構成している。
このため、レデューシングカットバルブ100が制御不能の状態のままシフトバルブ80に作動油圧が供給される事態を防止するとともに、排出通路114の出力油圧をドレンすることで出力油圧POUTのとじ込めに起因する問題の発生を防止することができる。なお、このことから明らかなように、第2排出通路116はレデューシングカットバルブ100の機能を実現するために必ずしも必要な構成通路ではなく、例えばサージ圧が発生しない回路構成では第2排出油路を設けない構成とすることができる。
以上のようなレデューシングカットバルブ100を備えた油圧制御回路において、油路63に供給される作動油の油圧がカット作動圧PC未満のとき(図4における領域I)、例えばエンジン始動時においてオイルポンプP1からの供給油圧が立ち上がりきっておらず、カット作動圧PCに到達してないときには、排出油路114からシフトバルブ80の入力通路82に作動油供給を行わない。従って、ソレノイドバルブ75がオン作動されてカット作動圧PC未満の作動油が信号圧油室81に供給され、シフトバルブ80のスプールが不完全にシフトした作動位置に配置されたとしても、シフトバルブ80の入力通路82に作動油が供給されないため油圧サーボ機構90が作動せず、低圧時における誤作動や不完全作動が防止される。
油路63に供給される作動油の油圧が、カット作動圧PC以上で調圧値PM未満のときには、導入通路111と排出通路114とが接続され、入力油圧PINとほぼ同圧の出力油圧POUTの作動油が排出通路114からシフトバルブ80の入力通路82に出力される(図4における領域II)。ここで、カット作動圧PCは、シフトバルブ80が接続油路を確実に切り換えて油圧サーボ機構90を作動可能な圧力に設定されている。このため、シフトバルブ80は、コントロールユニットECUによるソレノイドバルブ75のオン・オフ制御に基づく信号圧油室81への作動油供給及び遮断に応じて確実に切り換え作動され、油圧サーボ機構90のオン・オフ作動が制御される。
油路63に供給される作動油の油圧が、調圧値PM以上のときには、導入通路111と排出通路114との連絡が制限され、調圧値まで減圧された作動油が排出通路114からシフトバルブ80の入力通路82に出力される(図4における領域III)。従ってシフトバルブ80は、上記同様にソレノイドバルブ75のオン・オフ制御に基づく信号圧油室81への作動油供給及び遮断に応じて確実に切り換え作動され、油圧サーボ機構90のオン・オフ作動が制御される。このとき、油圧サーボ機構90の第1油室91または第2油室92に供給される作動油の圧力が調圧値PMに調圧されるため、サーボ推力が過大になりシンクロクラッチ57に無理な負荷を生じさせるようなことがない。
このように、以上説明したレデューシングカットバルブ100では、上流側の油圧回路から導入通路111に供給される入力油圧PINがカット作動圧PCに到達するまでは排出通路114から下流側の油圧回路に作動油供給を行わず、かつ上流側の油圧回路から導入通路111に供給される入力油圧が調圧値PMよりも高圧になったときに排出通路114から下流側の油圧回路に供給する油圧を調圧値PMまで減圧して作動油供給を行うように作動する。これは、入力油圧が所定圧力(カット作動圧PC)になるまで導入通路111と排出通路114との連絡を遮断するカット弁の機能と、入力油圧が高圧のときに所定圧力(調圧値PM)まで減圧して下流側の油圧回路に供給する減圧弁の機能とを併せ持った作動形態である。
従って、レデューシングカットバルブ100によれば、バルブボディ110に一本のスプール120を内挿した単一のバルブ構造で、カット弁と減圧弁の二つの機能を併せ持った油圧制御弁を提供することができる。
次に、本発明に係る第2実施形態のレデューシングカットバルブ200について、このバルブに作動油が供給されていない状態における断面図を図5に示し、図3と同様に入力油圧PINを変化させたときのスプール220の作動位置及び各作動位置における導入通路211と排出通路214との連絡状態を(a)〜(e)として図6に示しており、以下これらの図面を参照して説明する。なお、レデューシングカットバルブ200の油圧回路における配置及び作用は、前述したレデューシングカットバルブ100と同様であり、既に説明した図2及び図4を適宜参照しながら説明する。
レデューシングカットバルブ200は、バルブボディ210と、このバルブボディの内部に軸方向に摺動可能に内挿されたスプール220と、スプール220を軸方向(図5及び図6における左方)に付勢するスプリング230とを有し、このバルブに供給される入力油圧に応じてスプール220を摺動させて導入通路211と排出通路214との連絡状態を制御する油圧制御弁である。
スプール220は、左端に設けられた第1ランド部221、スプール中間部に設けられた第2ランド部222、右端側に設けられた第3ランド部223、第1ランド部221と第2ランド部222との間を繋ぐロッド部に形成された第1スプール溝225、第2ランド部222と第3ランド部223との間を繋ぐロッド部に形成された第2スプール溝226、スプール220の右端側に穿設されたスプリング穴227、及び第1ランド部221を左右に貫通して形成された反力通路228などからなり、第1,第2,第3ランド部の外径が同一径のバルブスプールである。
バルブボディ210には、スプール220の第1〜第3ランド部221〜223の外周面と摺接してスプール220を軸方向に摺動可能に嵌挿支持するスプール穴が形成され、このスプール穴の内周に、作動油の通路となる断面視U字形で円環状の油溝が複数(図5に示すレデューシングカットバルブ200では5箇所)形成され、各油溝に繋がる油路が形成されている。
各油溝は、左端側から順に、スプール220をスプリング230の付勢方向と逆方向(図における右方)に付勢する制御力を作用させる反力油室213、バルブ内に入力油圧を導入する導入通路211、バルブから出力油圧を排出する排出通路214、排出通路214の油圧を開放する開放通路215、右端部に形成された開放油室217からなり、それぞれスプール220の各ランド部及びスプール溝等と図5に示す相対位置関係をもって形成されている。導入通路211はバルブボディに形成された入力ポートを介して油路63と接続され(図2を参照)、排出通路214はバルブボディに形成された出力ポートを介して油路66に接続されている。開放通路215及び開放油室217は図示省略するドレン油路を介してドレンされている。
スプリング230は、圧縮型のコイルスプリングであり、スプール220のスプリング穴227とバルブボディ210との間に初期撓みを有して係止され、スプール220を常時左方に付勢する。このため、導入通路211に作動油が供給されていない状態では、スプール220に作用する力はスプリング230による左向きの付勢力のみであり、スプール220は図5に示す左端位置(セット位置)に配設される。
一方、導入通路211に作動油が供給されて入力油圧が立った状態では、スプール220に作用する力は、スプリング230による左向きの付勢力と、導入通路211から第1スプール溝225及び反力通路228を介して反力油室213に導かれた入力油圧によって発生される右向きの制御力の両方になり、スプール220は、スプリング230のバネ力と反力油室213から作用する制御力とがバランスする作動位置に配設される。すなわちレデューシングカットバルブ200では、導入通路211に供給される入力油圧の大きさに応じて、以下に示すように導入通路211と排出通路214との連絡状態が制御される。
まず、導入通路211に作動油が供給された入力油圧PINがPIN≒0のときには、図6(a)に示すように、第1スプール溝225に流入した作動油が反力通路228を通って反力油室213にも供給されるが、PIN≒0のため右向きの制御力が発生せず、スプール220はセット位置に配設されたままである。セット位置では第1スプール溝225と排出通路214との間に第2ランド部222が位置し、導入通路211と排出通路214の連絡が遮断されている。また、排出通路214は、第2スプール溝226により開放通路215と接続されている。このため、油路66に作動油が供給されず油圧も立たない。
入力油圧PINが上昇し、反力油室213からスプール220に作用する制御力がスプリング230のセット長における付勢力を超えると、図6(b)に示すように、スプール220が右動し、第2ランド部222が排出通路214を遮蔽して開放通路215との連絡を遮断する。この段階では、導入通路211と排出通路214との連絡は未だ接続されておらず、油路66に作動油は供給されない(図4における領域I)。
入力油圧PINがさらに上昇し、スプール220が右動すると、図6(c)に示すように、排出通路214を遮蔽していた第2ランド部222が右道して第1スプール溝225の右端部と排出通路214の左端部とが繋がり、導入通路211と排出通路214との第1スプール溝225を介した接続が開始される。これにより、導入通路211に供給された作動油が排出通路214から油路66を介してシフトバルブ80の入力通路82に供給されるようになるが、この段階における導入通路211は、第1ランド部221によりほとんど塞がれておらず、入力油圧PINが微量のバルブ損失を除いてそのまま出力油圧POUTとなって排出通路214に出力される(図4における領域II)。
このため、導入通路211と排出通路214との接続が開始される圧力に到達するまでは、排出通路214から下流側の油圧回路(シフトバルブ80の入力通路82)に作動油供給が行われず、接続が開始される圧力を超えると、油路63から導入通路211に供給された作動油が排出通路214から下流側の油圧回路に供給されるようになる。この接続開始圧力が前述したカット作動圧PCであり、本実施形態では、シフトバルブ80が接続油路を確実に切り換えて油圧サーボ機構90を作動可能な圧力に設定している。
入力油圧PINがさらに上昇してスプール220が右動すると、図6(d)に示すように、第1スプール溝225と排出通路214との連絡が完全に連通状態になる一方で、第1ランド部221の右端スイッチングコーナにより導入通路211と第1スプール溝225との連絡が制限され(両者間の流路断面積が縮小され)、排出通路214の出力油圧POUTがわずかに低下する状況が発生する(A状態)。ところが、排出通路214の出力油圧POUTが低下すると、第1スプール溝225と反力通路228で接続された反力油室213の圧力も低下し、これに伴ってスプール220を右方に付勢する制御力が低下してスプール220が左動する。このため第1ランド部221の右端スイッチングコーナにより絞られた流路断面積がスプール220の左動により拡大され、今度は排出通路214の出力油圧POUTがわずかに上昇する状態が生じる(B状態)。そして、上記A状態とB状態とが繰り返され排出通路214の出力油圧POUTが一定圧に調圧される(図4における領域III)。
このため、導入通路211に供給される入力油圧が一定圧力を超えると、この入力油圧に基づく制御力により右動されるスプール220が流路断面積を縮小させて導入通路211と排出通路214との連絡を制限し、これにより排出通路214から出力される作動油の出力油圧POUTが一定の調圧値PMになるように減圧制御される。調圧値PMは、前述した実施形態と同様に、シンクロクラッチ57を切り換え作動させる際に油圧サーボ機構が発生するサーボ推力が所定値になるサーボ供給圧を設定している。
図6(e)は、導入通路211に急峻なサージ圧力が発生し、スプール220が慣性力で右端位置までオーバーストロークしてスプールロックが生じたような場合を示しており、第1ランド部221が導入通路211を遮蔽するとともに、排出通路214と開放通路215とが第1スプール溝225により連通されるように構成している。これによりレデューシングカットバルブ200が制御不能の状態のままシフトバルブ80に作動油圧が供給される事態を防止するとともに、排出通路214の出力油圧をドレンすることで出力油圧POUTのとじ込めに起因する問題の発生が防止される。
なお、これらの説明から明らかなように、開放通路215はスプール220がセット状態のとき、及びスプール220が右端位置までオーバーストロークしてスプールロックが生じた状態のときに、排出通路214よりも下流側の圧力を確実にゼロにするために設けたものであり、このような設定が必要でない場合には、開放通路215を形成せずに構成しても良い。
以上のようなレデューシングカットバルブ200を備えた油圧制御回路の作用は、前述したレデューシングカットバルブ100を備えた油圧制御回路の作用と同様である。すなわち、上流側の油路63から供給される作動油の油圧がカット作動圧PC未満のとき(図4における領域I)には、排出油路214からシフトバルブ80の入力通路82に作動油供給が行われない。従って、ソレノイドバルブ75がオン作動されてシフトバルブ80のスプールが不完全にシフトした作動位置に配置されたとしても、シフトバルブ80の入力通路82に作動油が供給されないため油圧サーボ機構90が作動せず、低圧時における誤作動や不完全作動が防止される。
油路63に供給される作動油の油圧が、カット作動圧PC以上で調圧値PM未満のときには、導入通路211と排出通路214とが接続され、入力油圧PINとほぼ同圧の出力油圧POUTの作動油が排出通路214からシフトバルブ80の入力通路82に出力され(図4における領域II)、シフトバルブ80は、コントロールユニットECUによるソレノイドバルブ75のオン・オフ制御に基づく信号圧油室81への作動油供給及び遮断に応じて確実に切り換え作動され、油圧サーボ機構90のオン・オフ作動が制御される。
油路63に供給される作動油の油圧が、調圧値PM以上のときには、導入通路211と排出通路214との連絡が制限され、調圧値まで減圧された作動油が排出通路214からシフトバルブ80の入力通路82に出力される(図4における領域III)。従ってシフトバルブ80は、上記同様にソレノイドバルブ75のオン・オフ制御に基づく信号圧油室81への作動油供給及び遮断に応じて確実に切り換え作動され、油圧サーボ機構90のオン・オフ作動が制御される。このとき、油圧サーボ機構90の第1油室91または第2油室92に供給される作動油の圧力が調圧値PMに調圧されるため、サーボ推力が過大になりシンクロクラッチ57に無理な負荷を生じさせるようなことがない。
このように、以上説明したレデューシングカットバルブ200では、上流側の油圧回路から導入通路211に供給される入力油圧PINがカット作動圧PCに到達するまでは排出通路214から下流側の油圧回路に作動油供給を行わず、かつ上流側の油圧回路から導入通路211に供給される入力油圧が調圧値PMよりも高圧になったときに排出通路214から下流側の油圧回路に供給する油圧を調圧値PMまで減圧して作動油供給を行うように作動する。これは、入力油圧が所定圧力(カット作動圧PC)になるまで導入通路211と排出通路214との連絡を遮断するカット弁の機能と、入力油圧が高圧のときに所定圧力(調圧値PM)まで減圧して下流側の油圧回路に供給する減圧弁の機能とを併せ持った作動形態である。
従って、レデューシングカットバルブ200においても、バルブボディ210に一本のスプール220を内挿した単一のバルブ構造で、カット弁と減圧弁の二つの機能を併せ持った油圧制御弁を提供することができる。また、このレデューシングカットバルブ200では、反力通路228をスプール220に形成したため、バルブボディ210に反力通路や油路を形成する必要が無く、第1実施形態のレデューシングカットバルブ100よりもさらに簡明な構成で複合機能を有した油圧制御弁を提供することができる。
なお、以上では、説明簡略化のため、油圧源としてエンジン駆動のオイルポンプP1を例示したが、吐出油路61に電動オイルポンプを連結させて、エンジン停止時に電動オイルポンプで作動するように構成しても良い。また、本発明に係る油圧制御弁100,200の適用例として、シンクロクラッチ57の切り換えを行う油圧サーボ機構90の作動制御に適用した場合を例示したが、以上の説明からも明らかなように適用可能な油圧アクチュエータは上記のようなサーボ機構に限定されるものではなく、リバースセレクタやロックアップ機構等であっても良い。