以下、本発明の実施形態に係る油圧作動式変速機10の詳細を説明する。
図1は、本実施形態に係る油圧作動式変速機10の構成を示す骨子図であって、この油圧作動式変速機10は、変速機ケース11内の駆動源側(図の左側)に配設された入力軸12と、反駆動源側(図の右側)に配設された出力軸13とを有する縦置き式の自動変速機である。なお、入力軸12と出力軸13とは同一軸心上に配置されている。該入力軸12および出力軸13の軸心上には、駆動源側から、第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセット(以下、単に「第1、第2、第3、第4ギヤセット」という)PG1、PG2、PG3、PG4が配設されている。
また、この油圧作動式変速機10は、図1に示すように、変速機ケース11内における第1ギヤセットPG1の駆動源側には、第1クラッチCL1が配設され、第1クラッチCL1の駆動源側には、第2クラッチCL2が配設され、第2クラッチCL2の駆動源側には、第3クラッチCL3が配設されている。また、第3クラッチCL3の駆動源側には、第1ブレーキBR1が配設され、第3ギヤセットPG3の駆動源側には第2ブレーキBR2が配設されている。すなわち、油圧作動式変速機10の構成要素(第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4、第1〜第3クラッチCL1〜CL3および第1、第2ブレーキBR1、BR2)は、駆動源側から、第1ブレーキBR1、第3クラッチCL3、第2クラッチCL2、第1クラッチCL1、第2ブレーキBR2の順で軸方向に配置されている。
第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4は、いずれも、キャリヤに支持されたピニオンがサンギヤとリングギヤに直接噛合するシングルピニオン型であって、回転要素として、第1ギヤセットPG1は、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、第1キャリヤC1を有し、第2ギヤセットPG2は、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、第2キャリヤC2を有し、第3ギヤセットPG3は、第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、第3キャリヤC3を有し、第4ギヤセットPG4は、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、第4キャリヤC4を有している。
第1ギヤセットPG1は、第1サンギヤS1が軸方向に2分割されたダブルサンギヤ型である。すなわち、第1サンギヤS1は、軸方向の駆動源側に配置されたフロント側第1サンギヤS1aと、反駆動源側に配置されたリヤ側第1サンギヤS1bとに分割されて構成されている。これら一対の第1サンギヤS1a、S1bは、同じ歯数を有し、第1キャリヤC1に支持された同じピニオンに噛合している。これにより、これらの第1サンギヤS1a、S1bの回転数は常に等しい。すなわち、一対の第1サンギヤS1a、S1bは、常に同じ速度で回転し、一方の回転が停止しているときは他方の回転も停止する。
この油圧作動式変速機10においては、第1サンギヤS1(具体的にはリヤ側第1サンギヤS1b)と第4サンギヤS4、第1リングギヤR1と第2サンギヤS2、第2キャリヤC2と第4キャリヤC4、第3キャリヤC3と第4リングギヤR4が、それぞれ常時連結されている。そして、入力軸12は第1キャリヤC1に、出力軸13は第4キャリヤC4に、それぞれ常時連結されている。具体的には、入力軸12は一対の第1サンギヤS1a、S1b間を通る動力伝達部材14を介して第1キャリヤC1に結合され、第4キャリヤC4と第2キャリヤC2は動力伝達部材15を介して結合されている。
また、第1クラッチCL1は、入力軸12および第1キャリヤC1と、第3サンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2クラッチCL2は、第1リングギヤR1および第2サンギヤS2と、第3サンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第3クラッチCL3は、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
第1ブレーキBR1は、変速機ケース11と第1サンギヤS1(より詳しくは前側第1サンギヤS1a)との間に配設されて、これらを断接するようになっている。第2ブレーキBR2は、変速機ケース11と第3リングギヤR3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
なお、第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3は、交互に隣接して配置された第1回転摩擦板と第2回転摩擦板とを有し、これらの第1および第2回転摩擦板は、それぞれ外側回転部材と内側回転部材とに係合され、第1および第2回転摩擦板を締結するピストンと、該ピストンを作動させるための油圧室とが設けられている。そして、第1ブレーキBR1は、外側回転部材が変速機ケース11に一体化されており、内側回転部材が第1サンギヤS1に結合されている。第1ブレーキBR1の内側回転部材は、動力伝達部材16を介して、一対の第1サンギヤS1a、S1bのうち、直接的にはリヤ側第1サンギヤS1aに結合されている。
また、第1、第2ブレーキBR1、BR2は、交互に隣接して配置された固定側摩擦板と回転側摩擦板とを有し、固定側摩擦板が係合された固定部材が回転側摩擦板が係合された回転部材の内側に配置され、固定側摩擦板および回転側摩擦板を締結するピストンと、該ピストンを作動させるための油圧室とが設けられている。そして、第2ブレーキBR2は、摩擦板の内周側に配置される固定部材が変速機ケース11に一体化されており、摩擦板の外周側に配置される回転部材が第3リングギヤR3に結合されている。
以上の構成により、この油圧作動式変速機10によれば、図2の締結表に示すように、5つの摩擦締結要素から3つの摩擦締結要素を選択的に締結することにより、前進の1〜8速および後退速が形成される。
具体的には、第1クラッチCL1、第1ブレーキBR1、および第2ブレーキBR2が締結されたときに1速が形成され、第2クラッチCL2、第1ブレーキBR1、および第2ブレーキBR2が締結されたときに2速が形成され、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、および第2ブレーキBR2が締結されたときに3速が形成され、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第2ブレーキBR2が締結されたときに4速が形成され、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3、および第2ブレーキBR2が締結されたときに5速が形成され、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、および第3クラッチCL3が締結されたときに6速が形成され、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3、および第1ブレーキBR1が締結されたときに7速が形成され、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、および第1ブレーキBR1が締結されたときに8速が形成され、第3クラッチCL3、第1ブレーキBR1、および第2ブレーキBR2が締結されたときに後退速が形成される。
ここで、この実施形態における第3ギヤセットPG3に接続された第2ブレーキBR2が本発明に係るブレーキに相当するので、以下、図3を用いて、第2ブレーキBR2についてその構造を説明する。
第2ブレーキBR2には、交互に隣接して配置された回転側摩擦板101a…101aと固定側摩擦板101b…101bとが備えられている。回転側摩擦板101a…101aは、その外周側が回転部材110にスプライン係合されており、固定側摩擦板101b…101bは、その内周側において、固定部材としての固定部材121にスプライン係合されている。また、固定部材121は、回転部材110の内側に配置されているとともに、これらの摩擦板を潤滑するための潤滑油は、固定部材121側から回転部材110側に向けて供給される。
固定部材121には、該固定部材121の内周側に嵌合される環状部材122と、該環状部材の内周側に嵌合されるシール部材123とが設けられており、これらによって、固定側ユニット120が構成されている。
回転部材110と、固定側ユニット120との間には、摩擦板101a、101bを締結するためのピストン102が保持されている。該ピストン102の外周側は、摩擦板101a、101bに近接して配置されるとともに、内周側は前記環状部材122とシール部材123との間に配置されている。
ピストン102の内周側とシール部材123との間には、摩擦板101a、101b締結用の締結油圧室xが形成され、ピストン102の内周側と環状部材122との間には、摩擦板101a、101b解放用の解放油圧室yが形成されている。
ピストン102の内周側とシール部材123との間には、摩擦板101a、101b間の間隔を一定に保つためのクリアランス調整用のスプリング103が保持されている。
固定側ユニット120には、締結油圧室xに連通するピストン102の作動油路としての締結油路X(図示せず)と、解放油圧室yに連通するピストン102の作動油路としての解放油路Y(図示せず)と、摩擦板を潤滑するための潤滑油を流入させる流入路Zとが、周方向に異なる位置に設けられている。
第2ブレーキBR2の潤滑時には、摩擦板の潤滑油は、矢印Aで示すように、流入油路Zを介して、固定部材121の内側円筒部121aと、環状部材122の周溝122aとの間に形成された環状空間Sに導入される。そして、この潤滑油は、周溝122aに沿って全周にわたってめぐらされるとともに、固定部材121の内側円筒部121aのスプライン部121bに設けられた吐出油孔121c…121cから、該スプライン部121bの外側に位置する摩擦板101a…101a、101b…101bに供給される。
また、油圧作動式変速機10は、上述の摩擦締結要素を締結および解放させることで、変速段を実現するための油圧制御装置2を有しており、この油圧制御装置2について詳しく説明する。
油圧制御装置2は、図4および図5に示すように、油圧源として、エンジン(図示せず)によって駆動される機械式ポンプ21(以下「メカポンプ」という)と、主としてエンジンの停止中に電気により駆動される電気式ポンプ22(以下「電動ポンプ」という)と、これらのポンプ21、22から吐出される作動油を調整し、変速制御のために各摩擦締結要素BR1、BR2、CL1、CL2、CL3に供給される締結圧や解放圧等の変速段形成用の作動圧を生成するとともに、前記摩擦締結要素BR1、BR2、CL1、CL2、CL3を含む変速機内の各潤滑部位への潤滑油の供給を制御する油圧制御回路20とを備えている。
油圧制御回路20は、油圧とスプリング力とによって作動して油路の切り換えや油圧の調整等を行う複数のスプールバルブ31〜37、51、52、71、92と、電気信号によって作動して油路を連通、遮断する複数のオンオフソレノイドバルブ61〜64(以下「オンオフバルブ」という)と、同じく電気信号によって作動して作動圧の給排や調等を行う複数のリニアソレノイドバルブ41〜46(以下「リニアバルブ」という)とを有し、前記油圧源21、22と、これらのバルブと、前記摩擦締結要素BR1、BR2、CL1、CL2、CL3とが油路を介して連結され、前記変速制御や潤滑油の供給制御等を行なうように回路が構成されている。
この油圧制御回路20を構成するバルブとして、まず、メカポンプ21の吐出圧を所定のライン圧に調整するレギュレータバルブ31と、このライン圧と電動ポンプ22の吐出圧とを切り換え、変速制御用作動圧の元圧として摩擦締結要素側に選択的に供給するポンプシフトバルブ32とが備えられ、前記ライン圧を供給するライン圧油路aと電動ポンプ22の吐出油路bとがポンプシフトバルブ32の両端の制御ポート321、322にそれぞれ接続されている。
そして、ライン圧とスプリング(図示せず)による力が電動ポンプ22の吐出圧による力より大きいときは、スプール323が図面上(以下、同様)右側に位置し、前記ライン圧油路aを変速用元圧油路cに連通させ、逆の場合は、スプール323が左側に位置して電動ポンプ22の吐出油路bを前記変速用元圧油路cに連通させるようになっている。
前記変速用元圧油路cからは、第1〜第5元圧分岐油路c1、c2、c3、c4、c5が分岐され、それぞれ第1〜第5リニアバルブ41、42、43、44、45に変速用制御元圧を供給する。そして、各リニアバルブ41、42、43、44、45により、第1、第2ブレーキBR1、BR2、および第1〜第3クラッチCL1、CL2、CL3用の締結圧がそれぞれ生成され、第1〜第5締結圧油路d、e、f、g、hにより、変速段に応じて、第2ブレーキBR2締結室BR21、および第1ブレーキBR1および第1〜第3クラッチCL1、CL2、CL3の油圧室BR11、CL11、CL21、CL31に供給され、対応する摩擦締結要素が締結されるようになっている。
前記変速用元圧油路cからは、さらに第6元圧分岐油路c6が分岐されて切換弁としての第2ブレーキBR2解放圧供給バルブ33に導かれ、該バルブのスプール331が右側に位置するときに、第6元圧分岐油路c6が第2ブレーキ解放圧油路iに連通し、第2ブレーキBR2の解放室BR22に解放圧が供給されて第2ブレーキBR2が解放される。
第2ブレーキ解放圧油路iには、オリフィス332を介して解放室BR22に制御圧が供給される時のショックを吸収するための油圧供給手段を構成するアキュムレータ333が設けられるとともに、オリフィス332に並列に逆止弁334が設けられている。逆止弁334は、解放室BR22からに第2ブレーキ解放圧油路iに向かう方向に開弁されるように構成されている。
また、前記ライン圧油路aはリデューシングバルブ51に導かれ、該バルブ51によりライン圧が所定圧に減圧されて制御圧が生成される。この制御圧は、制御圧油路jから分岐した第1〜第4分岐制御圧油路j1、j2、j3、j4により、それぞれ第1〜第4オンオフバルブ61、62、63、64に供給される。そして、第1オンオフバルブ61がオン(上、下流側の油路を連通させる状態)のときに、制御圧が第1分岐制御圧油路j1により第2ブレーキBR2の締結圧ドレンバルブ71に供給されて、該バルブ71のスプール711が右側に位置し、これにより、前記第2ブレーキBR2締結室内BR21が第1締結圧油路dおよびドレン回路712を介してオイルパンOIL内に連通しドレン状態となる。
また、第2オンオフバルブ62がオンのとは、第2分岐制御圧油路j2により第2ブレーキBR2解放圧供給バルブ33に制御圧が供給されて該バルブ33のスプール331が右側に位置し、これにより、前述のように、第2ブレーキBR2の解放室BR22に解放圧が供給され、第2ブレーキBR2が解放される。
また、第3オンオフバルブ63がオンのときは、第3分岐制御圧油路j3により、第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3および主軸D用の潤滑油増量バルブ34に制御圧が供給され、さらに、第4オンオフソレノイドバルブ64がオンのときは、第4分岐制御圧油路j4により、第2ブレーキBR2用の潤滑油増量バルブ35に制御圧が供給されるようになっているが、これらのバルブ34、35の潤滑油増量作用については後述する。
なお、前記リデューシングバルブ51で生成される制御圧は、ライン圧制御用リニアバルブ46にも導かれ、前記レギュレータバルブ31に供給されてライン圧の設定圧を調整するライン圧調整圧が生成されるようになっている。
一方、前記ライン圧油路aはオリフィス80を介して主潤滑油路kとされ、該油路k内の潤滑油圧を調整する潤滑用リデューシングバルブ52が備えられている。ここで、潤滑用リデューシングバルブ52には、潤滑油圧が所定値まで調整できないときには、油路lにより、前記レギュレータバルブ31で発生した余剰の作動油が供給されるようになっている。
そして、この主潤滑油路kは、オイルクーラ91を経由した後、第1〜第3潤滑分岐油路k1、k2、k3に分岐され、それぞれ固定オリフィス81、82、83を介して、第1および第2ブレーキBR1、BR2、第1〜第3クラッチCL1、CL2、CL3および変速機内の主軸Dに潤滑油を供給するようなっている。ここで、主潤滑油路kにはオイルクーラ91をバイパスするバイパス油路k’が設けられ、該バイパス油路k’にクーラ91保護のための潤滑油リリーフバルブ92が設けられている。
また、前記主潤滑油路kは、オイルクーラ91の上流側から分岐され、第4潤滑分岐油路k4が前述の第2ブレーキBR2用の潤滑油増量バルブ35に接続されているとともに、オイルクーラ91の下流側からも第5、第6潤滑分岐油路k5、k6が分岐され、第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3および主軸D用の潤滑油増量バルブ34と、第2ブレーキBR2用の潤滑油追加バルブ36にそれぞれ接続されている。
そして、前記第3オンオフバルブ63がオンのときに、第3分岐制御圧油路j3から供給される制御圧により第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3および主軸D用の潤滑油増量バルブ34のスプール341が右側に位置し、第5潤滑分岐油路k5が第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3および主軸D用の潤滑油増量油路mに連通され、この油路がさらに分岐されて第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3および主軸D用の潤滑油増量油路m1、m2および増量オリフィス84、85を介して第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3および主軸Dに潤滑油が供給されるようになっている。
また、前記第4オンオフバルブ64がオンのときは、第4分岐制御圧油路j4から供給される制御圧により第2ブレーキBR2用の潤滑油増量バルブ35のスプール351が右側に位置し、第4潤滑分岐油路k4が第2ブレーキBR2用の潤滑油増量油路nに連通され、第2ブレーキBR2用の潤滑油増量バルブ35および増量オリフィス86を介して第2ブレーキBR2に潤滑油を供給するようになっている。
また、第2ブレーキBR2用の潤滑油追加バルブ36には、第2ブレーキBR2の解放圧供給バルブ33から導かれた第2ブレーキBR2の潤滑油の制御圧油路pが接続されており、第2ブレーキBR2の解放圧供給バルブ33のスプール331の位置に応じて、変速用元圧油路cの第6元圧分岐通路c6と第2ブレーキBR2の潤滑油の制御圧油路pとの連通、遮断状態が切り換えられるようになっている。
具体的には、第2ブレーキBR2の解放圧供給バルブ33のスプール331が右側に位置するとき(第2オンオフバルブ62がオンのとき)は、前述のように、変速用元圧油路cの第6元圧分岐通路c6が第2ブレーキBR2の解放圧油路iに連通して第2ブレーキBR2に解放圧が供給されるが、このとき、第6元圧分岐油路c6と潤滑油の制御圧油路pとは遮断され、第2ブレーキBR2用の潤滑油追加バルブ36は、制御圧が供給されないことでスプール361が左側に位置し、該バルブ36に導かれている第6分岐制御圧油路k6が第2ブレーキBR2用の潤滑油追加回路としての潤滑油追加油路oに連通し、潤滑油が追加オリフィス87を介して第2ブレーキBR2に供給される。
さらに、第2ブレーキBR2に対しては、電動ポンプ22の吐出油を潤滑油として供給するための電動ポンプ22潤滑切換バルブ37が備えられている。この電動ポンプ潤滑切換バルブ37には、ライン圧油路aからライン圧が制御圧として供給され、この制御圧によりスプール371が左側に位置すると電動ポンプ22の吐出油路bが第2の増量油路qに連通し、この状態で電動ポンプ22が作動すると、その吐出油が第2の増量油路qを介して第2ブレーキBR2に潤滑油として供給されるようになっている。
なお、ドレン回路712は、作動油貯留部としてのオイルパンOILの油面下まで延びるように構成されている。
図6に示すように、上述の第1〜第5リニアバルブ41〜45およびライン圧制御用リニアバルブ46、第1〜第4オンオフバルブ61〜64、電動ポンプ22を制御するためのコントローラ200が備えられ、該コントローラ200に、運転者のアクセルペダル操作量を検出するアクセルセンサ201からの信号と、車両の車速を検出する車速センサ202からの信号と、エンジンの回転数を検出するためのエンジン回転センサ203からの信号と、運転者の操作により選択されたレンジを検出するレンジセンサ204からの信号と、変速機の油温を検出するための油温センサ205からの信号とが入力され、これらの信号に基づいてこれらのバルブに制御信号が出力される。
これにより、選択されたレンジや車両の運転状態に応じて各バルブの開閉ないし開度が制御され、前述の第1〜第3クラッチCL1、CL2、CL3、第1および第2ブレーキBR1、BR2に選択的にライン圧が供給され、変速制御や潤滑油の供給制御等を行うようになっている。
次に、油圧制御回路20の動作を中心として、本実施形態の作用を説明する。
まず、当該車両の走行時における変速段の切換動作を発進時から順次シフトアップする場合を例にとって説明すると、発進時には、第1リニアバルブ41、第2リニアバルブ42および第3リニアバルブ43が、変速用元圧油路cを第1ブレーキBR1、第2ブレーキBR2、第1クラッチCL1の締結室BR11、BR21、CL11に通じる第1、第2および第3締結用油路e、d、fにそれぞれ連通させ、メカポンプ21を油圧源として生成されたライン圧を元圧としてそれぞれの締結圧に調整して前記各締結室BR11、BR21、CL11に供給する。これにより、図2の締結表に示す通り、第1ブレーキBR1、第2ブレーキBR2、第1クラッチCL1が締結され、1速が形成される。
ここで、第2ブレーキBR2の締結時において、第2オンオフバルブ62は、制御圧を第2ブレーキBR2の解放圧供給バルブ33に供給していないので、スプール331が左側に位置されて、変速用元圧油路cの第6元圧分岐油路c6が第2ブレーキBR2の潤滑油の制御圧油路pに連通し、制御圧として第2ブレーキBR2の潤滑油追加バルブ36に供給されており、該バルブ36は、主潤滑油路kの第4潤滑分岐油路k4と第2ブレーキBR2用の潤滑油増量油路nとを遮断した状態にある。
1速から2速に移行するときは、第3リニアバルブ43が、第1クラッチCL1の締結室CL11に供給されていた油圧をドレンするとともに、第4リニアバルブ44が、変速用元圧油路cの第4元圧分岐油路c4を第2クラッチCL2の締結室CL21に通じる第4締結用油路gに連通させ、ライン圧を元圧とする締結圧を生成して第2クラッチCL2の締結室CL21に供給する。これにより、第1ブレーキBR1、第2ブレーキBR2および第2クラッチCL2が締結され、2速段が形成される。
2速から3速に移行するときは、第2リニアバルブ42が、第1ブレーキBR1の締結室BR11に供給されていた油圧をドレンするとともに、第3リニアバルブ43が、変速用元圧油路cの第3元圧分岐油路c3を第1クラッチCL1の締結室CL11に通じる第3締結用油路fに連通させ、ライン圧を元圧とする締結圧を生成して第1クラッチCL1の締結室CL11に供給する。これにより、第2ブレーキBR2、第1および第2クラッチCL1、CL2が締結され、3速段が形成される。
3速から4速に移行するときは、第3リニアバルブ43が、第1クラッチCL1の締結室CL11に供給されていた油圧をドレンするとともに、第5リニアバルブ45が、変速用元圧油路cの第5元圧分岐油路c5を第3クラッチCL3の締結室CL31に通じる第5締結用油路hに連通させ、ライン圧を元圧とする締結圧を生成して第3クラッチCL3の締結室CL31に供給する。これにより、第2ブレーキBR2、第2および第3クラッチCL2、CL3が締結され、4速段が形成される。
4速から5速に移行するときは、第4リニアバルブ44が、第2クラッチCL2の締結室CL21に供給されていた油圧をドレンするとともに、第2リニアバルブ42が、変速用元圧油路cの第2元圧分岐油路c2を第1クラッチCL1の締結室CL11に通じる第2締結用油路fに連通させ、ライン圧を元圧とする締結圧を生成して第1クラッチCL1の締結室CL11に供給する。これにより、第2ブレーキBR2、第1および第3クラッチCL1、CL3が締結され、5速段が形成される。
5速から6速に移行するときは、第4リニアバルブ44が、変速用元圧油路A2の第4元圧分岐油路A24を第2クラッチCL2の締結室CL21に通じる第4締結用油路A34に連通させ、ライン圧を元圧とする締結圧を生成して締結室CL21に供給するとともに、第1リニアバルブ41が第2ブレーキBR2の締結室BR21に供給されていた油圧をドレンする。このとき、第1オンオフバルブ61は、ライン圧を元圧としてリデューシングバルブ51によって調整された制御圧を第2ブレーキBR2の締結圧ドレンバルブ71に供給することで、第2ブレーキBR2の締結室BR21のドレンが促進される。
また、第2オンオフバルブ62は、制御圧を第2ブレーキ解放圧供給バルブ33に供給する。第6元圧分岐油路c6が第2ブレーキ解放圧油路iに連通し、第2ブレーキBR2の解放室BR22に解放圧が供給される。これにより、第2ブレーキBR2が解放され、第1〜第3クラッチCL1〜CL3が締結され、6速が形成される。
このとき、解放圧はオリフィス332を通過するとともに、アキュムレータ333に導入される。アキュムレータ333に解放圧が導入されることで、第2ブレーキBR2の解放室BR22への解放圧の供給が緩やかに行われる。その結果、第2ブレーキBR2の解放動作が円滑に行われ第2ブレーキBR2の急激な解放により5速から6速への変速時において乗員に違和感を与えることが防止される。なお、6速から5速等の変速時において解放室BR22の油圧をドレンするときは、逆止弁334が開くことにより油圧は速やかにドレンされる。
6速から7速に移行するときは、第4リニアバルブ44が、第2クラッチCL2の締結室CL21に供給されていた油圧をドレンするとともに、第3リニアバルブ43が、変速用元圧油路cの第3元圧分岐油路c3を第1クラッチCL1の締結室CL11に通じる第3締結油路fに連通させ、ライン圧を元圧とする締結圧を生成して第1クラッチCL1の締結室CL11に供給する。これにより第1ブレーキBR1、第1および第3クラッチCL1、CL3が締結され、7速段が形成される。
7速から8速に移行するときは、第3リニアバルブ43が、第1クラッチCL1の締結室CL11に供給されていた油圧をドレンするとともに、第4リニアバルブ44が、変速用元圧油路cの第4元圧分岐油路c4を第2クラッチCL2の締結室CL21に通じる第3締結油路gに連通させ、ライン圧を元圧とする締結圧を生成して第2クラッチCL2の締結室CL21に供給する。これにより第1ブレーキBR1、第2および第3クラッチCL2、CL3が締結され、8速段が形成される。
さらに、後退速では、第1リニアバルブ41、第2リニアバルブ42および第5リニアバルブ45が、変速用元圧油路cの第1、第2、第5元圧分岐油路c1、c2、c5を第1ブレーキB1、第2ブレーキBR2、第3クラッチCL3の締結室BR11、BR21、CL31に通じる第1、第2および第5締結用油路d、e、hにそれぞれ連通させ、メカポンプ21を油圧源として生成されたライン圧を元圧としてそれぞれの締結圧に調整して前記各締結室BR11、BR21、CL31に供給する。これにより、図2の締結表に示す通り、第1ブレーキBR1、第2ブレーキBR2、第3クラッチCL3が締結され、後退速が形成される。
なお、停車中または走行中のエンジンが停止するアイドルストップ時には、メカポンプ21を油圧源とするライン圧が低下する一方、電動ポンプ22が作動し、ポンプシフトバルブ32が電動ポンプ22の吐出圧を変速用油路cに導入するように切り換わる。そして、所定のリニアバルブが、電動ポンプ22を油圧源とする油圧を調整して対応する摩擦締結要素の締結室に供給する。これにより、必要に応じて、車両の運転状態に応じた変速段が形成される。
次に、油圧制御回路20の潤滑油供給動作について説明する。
通常の走行時(エンジン作動時)において、ライン圧がライン圧油路aからオリフィス80を介して主潤滑油路kに導入され、潤滑用リデューシングバルブ52で油圧が所定圧に調整され、作動油が潤滑油としクーラ91を経て各潤滑部位に供給される。具体的には、第1潤滑分岐油路k1により第2ブレーキBR2に、第2潤滑分岐油路k2により第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3に、第3潤滑分岐油路k3により軸受部Dに、それぞれ潤滑油が供給される。この第1〜第3潤滑分岐油路k1、k2、k3による潤滑油の供給は、エンジンが作動している間、常時行われる。
また、第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3と軸受部Dに対しては、例えば摩擦締結要素の解放時等の潤滑油量を比較的多量に必要とするときは、第3オンオフバルブ63が第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3および主軸D用の潤滑油増量バルブ34に制御圧を供給し、主潤滑油路kのクーラ91下流側の第5潤滑分岐油路k5を第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3および主軸D用の潤滑油増量油路mに連通させる。これにより、第2ブレーキBR2を除く摩擦締結要素BR1、CL1、CL2、CL3と主軸Dに、第2および第3潤滑分岐油路k2、k3によって供給される潤滑油に加えて、潤滑油増量油路m1、m2によって潤滑油が供給されることになる。
一方、第2ブレーキBR2に対しては、半クラッチ状態とされる1速での発進時に、第4オンオフバルブ64が制御圧を第2ブレーキBR2第1潤滑油増量バルブ35に供給する。主潤滑油路kの第4潤滑分岐油路k4が第2ブレーキBR2用の潤滑油増量油路nに連通し、第2ブレーキBR2に第1潤滑分岐油路k1によって供給される潤滑油に加えて、増量オリフィス86を介して増量潤滑油が供給される。これにより、発熱量の多い半クラッチ時における摩擦板の過度な温度上昇が抑制される。
また、登坂路での発進時や牽引中の発進時等の特に発熱量が多くなる特殊発進時には、電動ポンプ22が作動し、その吐出油が第2ブレーキBR2の電動ポンプ潤滑切換バルブ37に供給される。発進時にはすでにライン圧が生成されて該電動ポンプ潤滑切換バルブ37に供給されているので、電動ポンプ22から吐出された作動油は、該電動ポンプ潤滑切換バルブ37を介して潤滑油として第2の増量油路qに導入され、第2ブレーキBR2に対して、常時供給される第1潤滑分岐油路k1の固定オリフィス81によって供給される潤滑油および第2ブレーキBR2用の潤滑油増量油路nの増量オリフィス86によって供給される潤滑油に加えて、さらに、第2の増量油路qによっても潤滑油が供給される。その結果、特に発熱量が多くなる特殊発進時においても、摩擦板が確実に冷却され、過度な温度上昇が防止される。
さらに、固定部材121が内側に配置されているため、摩擦板101a、101bの引き摺りが発生しやすい第2ブレーキBR2の解放時には、第1オンオフバルブ61がON、第2ブレーキBR2の解放圧供給バルブ33に供給することで、第2ブレーキBR2の潤滑油の制御圧油路pが第2変速用分岐油路c6から遮断される。
したがって、第2ブレーキBR2用の潤滑油追加バルブ36に制御圧が供給されないので、該バルブ36は、第6潤滑分岐油路k6と第2ブレーキBR2用の潤滑油追加油路oとを連通させる。すなわち、解放時には、第2ブレーキBR2には第1潤滑分岐油路k1によって常時供給される潤滑油に加えて、主潤滑油路kの第6潤滑分岐油路k6と連通する第2ブレーキBR2用の潤滑油追加油路oからも潤滑油が供給されるので、摩擦板の引き摺りが抑制される。