JP7302744B2 - 液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子 Download PDF

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Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子に関する。
従来から液晶表示装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、テレビジョン受像機等の表示部として幅広く用いられている。液晶表示装置は、例えば、素子基板とカラーフィルタ基板との間に挟持された液晶層、液晶層に電界を印加する画素電極及び共通電極、液晶層の液晶分子の配向性を制御する配向膜、画素電極に供給される電気信号をスイッチングする薄膜トランジスタ(TFT)等を備えている。液晶分子の駆動方式としては、TN方式、VA方式等の縦電界方式や、IPS方式、FFS(フリンジフィールドスイッチング)方式等の横電界方式が知られている。
現在、工業的に最も普及している液晶配向膜は、電極基板上に形成された、ポリアミック酸及び/又はこれをイミド化したポリイミドからなる膜の表面を、綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一方向に擦る、いわゆるラビング処理を行うことで作製されている。ラビング処理は、簡便で生産性に優れた工業的に有用な方法である。しかし、液晶表示素子の高性能化、高精細化、大型化に伴い、ラビング処理で発生する配向膜の表面の傷、発塵、機械的な力や静電気による影響、更には、配向処理面内の不均一性等の種々の問題が明らかとなっている。ラビング処理に代わる配向処理方法としては、偏光された放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。光配向法は、光異性化反応を利用したもの、光架橋反応を利用したもの、光分解反応を利用したもの等が提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。
特開平9-297313号公報 WO2016/152928号パンフレット
「液晶光配向膜」木戸脇、市村 機能材料 1997年11月号 Vol.17、 No.11 13~22ページ
光配向法により配向処理を行う場合、光の照射量はエネルギーコストや生産スピードに影響を与える因子となるので、少ない照射量で配向処理できることが好ましい。しかし、本発明者らの検討によると、照射量が多い条件において良好な液晶配向性が得られる液晶配向剤であっても、光照射量を低減させた場合には、液晶配向膜面内での液晶配向性にバラツキ(不均一性)が生じやすくなり、液晶表示素子面内における液晶のツイスト角度のバラツキも大きくなっていた。すると、液晶表示素子で黒表示を行った際、面内の明るさにバラツキが生じ、表示品位を低下させることが懸念される。
また、IPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子に用いられる液晶配向膜には、長期交流駆動によって発生する残像(以下、AC残像ともいう)を抑制するための配向規制力も必要とされる。
そこで、本発明の目的は、光配向法による配向処理における光照射量を低減させても、液晶配向膜面内での液晶配向性のバラツキ(不均一性)が抑制された液晶配向膜、並びに該液晶配向膜を得るための液晶配向剤、及び該液晶配向膜を用いた液晶表示素子を提供することを目的とする。更には、AC残像を抑制できる優れた液晶配向規制力を有する液晶配向膜、並びに該液晶配向膜を得るための液晶配向剤、及び該液晶配向膜を用いた液晶表示素子を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、特定量の特定のジアミンと特定の脂環式テトラカルボン酸二無水物を必須成分として用いて得られる重合体を含む液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜が上記の目的を達成するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の態様を包含するものである。
下記式(1)で表されるジアミンを使用されるジアミン成分1モルに対して5モル%以上含むジアミン成分と、下記式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸誘導体成分と、を用いて得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(A)を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
Figure 0007302744000001
(ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。)
Figure 0007302744000002
(Xは、下記式(x-1)~(x-7)からなる群から選ばれる構造を表す。)
Figure 0007302744000003
(R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
本発明によれば、光配向法による配向処理における光照射量を低減させても、液晶配向膜面内での液晶配向性のバラツキ(不均一性)が抑制された液晶配向膜、並びに該液晶配向膜を得るための液晶配向剤、及び該液晶配向膜を用いた液晶表示素子を提供することができる。更には、AC残像を抑制できる優れた液晶配向規制力を有する液晶配向膜、並びに該液晶配向膜を得るための液晶配向剤、及び該液晶配向膜を用いた液晶表示素子を提供することができる。
本発明の上記効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、以下に述べることが一因と考えられる。すなわち、本発明の重合体は、ウレア結合とベンゼン環とが直結した構造を有し、得られる重合体が比較的剛直な構造となるため、液晶配向膜面内での液晶配向性にバラツキが少なくなると共に、AC残像の抑制にも効果があったと考えられる。
本明細書において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、本明細書において、Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。
以下、特定量の特定のジアミンと特定の脂環式テトラカルボン酸二無水物を必須成分として用いて得られる重合体を含有する液晶配向剤、該液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
(液晶配向剤)
本発明の液晶配向剤は、重合体(A)を含有する。
本発明の液晶配向剤の好ましい実施態様としては、重合体(A)、及び有機溶媒を含有する液晶配向剤が挙げられる。
また、本発明の液晶配向剤は、重合体(A)以外の重合体(例えば、後述する重合体(B))も含有することができる。
<重合体(A)>
重合体(A)は、上記式(1)で表されるジアミン(以下、特定ジアミンともいう)を使用されるジアミン成分1モルに対して5モル%以上含むジアミン成分と、上記式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸誘導体成分とを用いて得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である。
このような重合体の具体例としては、例えば、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルなどのイミド前駆体構造を有するポリイミド前駆体、該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドが挙げられる。
<<特定ジアミン>>
本発明に使用される特定ジアミンは、下記式(1)で表されるジアミンである。
Figure 0007302744000004
(ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。)
上記ベンゼン環上の1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数2~10のフルオロアルケニル基、炭素数1~10のフルオロアルコキシ基、カルボキシ基、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
液晶配向性を高める観点から、特定ジアミンの好ましい具体例を挙げると、下記式(1-1)~(1-3)で表されるジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 0007302744000005
<<ジアミン成分>>
重合体(A)を得る為のジアミン成分は、上記式(1)で表されるジアミンの少なくとも1種を使用されるジアミン成分1モルに対して5モル%以上含む物であり、1種類のジアミンからなるものであってもよく、2種類以上のジアミンからなるものであってもよい。ジアミン成分が2種類以上のジアミンからなる場合には、式(1)で表されるジアミンと共に式(1)で表されるジアミン以外のジアミンを含んでいてもよい。下記式(1)で表される化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。重合体(A)を得る為のジアミン成分における式(1)で表されるジアミンの割合は、使用されるジアミン成分1モルに対して、5~100モル%であることが好ましく、5~99モル%がより好ましく、更に好ましくは5~70モル%である。液晶配向性を高める観点で、より一層好ましくは10~60モル%である。
重合体(A)を得る為のジアミン成分として、式(1)で表されるジアミンと共に用いるジアミンは特に限定されないが、例えば下記式(2)又は式(2i)で表される化合物を挙げることができる。下記式(2)及び式(2i)で表される化合物は、それぞれ一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0007302744000006
(Yは下記式(O)で表される2価の有機基を表す。2つのRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。2つのY2iは、それぞれ独立して下記式(O’)で表される2価の有機基を表す。)
Figure 0007302744000007
(Arは、2価のベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環を表す。2つのArは同一でも異なってもよく、該ベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。pは0又は1の整数である。Qは-(CH-(nは2~18の整数である。)、又は該-(CH-の-CH-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
Figure 0007302744000008
(Ar’は、2価のベンゼン環、又はビフェニル構造を表す。2つのAr’は同一でも異なってもよく、該ベンゼン環、又はビフェニル構造の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。p’は0又は1の整数である。Q2’は-(CH-(nは2~18の整数である。)、又は該-(CH-の-CH-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
上記ベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数2~10のフルオロアルケニル基、炭素数1~10のフルオロアルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
上記式(O)で表される2価の有機基は、液晶配向性を高める観点から、下記式(o-1)~(o-16)で表される2価の有機基が好ましい。式中、*は結合手を表す。
Figure 0007302744000009
Figure 0007302744000010
(式(o-14)において、2つのmは、それぞれ独立して、1~3の整数を表す。)
Figure 0007302744000011
上記式(O’)で表される2価の有機基は、液晶配向性を高める観点から、上記式(o-7)~(o-16)で表される2価の有機基が好ましい。
上記式(2)で表されるジアミンを2種以上用いる場合は、Yが上記式(o-1)~(o-14)で表される2価の有機基である式(2)のジアミンと、Yが上記式(o-15)~(o-16)で表される2価の有機基である式(2)のジアミンとの組合せが好ましい。
上記式(2i)で表されるジアミンの好ましい具体例としては、下記式(2i-1)~(2i-5)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007302744000012
(式(2i-1)および式(2i-2)において、2つのnは、それぞれ独立して、1~6の整数を表す。式(2i-3)において、2つのnは、それぞれ独立して、2~6の整数を表す。)
本発明の効果を得る観点から、式(2)で表されるジアミン及び式(2i)で表されるジアミンの合計含有量は、重合体(A)の合成に使用されるジアミン成分1モルに対して1~95モル%であることが好ましく、30~95モル%であることがより好ましく、40~90モル%であることがさらに好ましい。
上記式(2)で表されるジアミンを2種以上用いる場合は、Yが上記式(o-1)~(o-14)で表される2価の有機基である式(2)のジアミンと、Yが上記式(o-15)~(o-16)で表される2価の有機基である式(2)のジアミンとの合計が、重合体(A)の合成に使用されるジアミン成分1モルに対して1~95モル%であることが好ましく、30~95モル%であることがより好ましく、40~90モル%であることがさらに好ましい。
また、液晶表示素子のコントラストを高める観点から、式(2)で表されるジアミン及び式(2i)で表される各ジアミンの上限量は、重合体(A)の合成に使用されるジアミン成分1モルに対して50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下であってもよい。
重合体(A)は、得られる液晶配向表示素子の電圧保持率を高める観点から、分子内に基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有しても良い。基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有する重合体(A)は、基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有する単量体、例えば、基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有するジアミンを原料の少なくとも一部に用いる方法、又は後述の末端封止剤を用いる方法により得ることができる。上記カルバメート系保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基が挙げられる。
基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有するジアミンとしては、ベンゼン環などの芳香族基を少なくとも一つ有するジアミンが好ましく、ベンゼン環などの芳香族基を少なくとも一つ有する、基「(D)」を除く残基が、炭素数6~30のジアミンが更に好ましい。
基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有するジアミンの具体例としては、例えば、下記式(5-1)~(5-10)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007302744000013
基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有するジアミンの使用割合は、液晶表示素子の電圧保持率を高める観点から、重合体(A)の合成に使用されるジアミン成分1モルに対して1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましい。また、該使用割合は、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、35モル%以下が更に好ましい。
重合体(A)を得る為のジアミン成分として、上記式(1)で表されるジアミン、上記式(2)若しくは式(2i)で表されるジアミン、又は基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有するジアミン以外の、その他のジアミンを用いてもよい。その他のジアミンとしては、以下のジアミンが挙げられる。
4,4’-ジアミノアゾベンゼン及び下記式(d-1)~(d-3)で表されるジアミンなどの光配向性基を有するジアミン;2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール;2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸及び下記式(3b-1)~式(3b-4)で示されるジアミン化合物などのカルボキシル基を有するジアミン;3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチル-1H-インダン-5-アミン、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-6-アミン;下記式(h-1)~(h-3)で表されるジアミン等のウレア結合を有するジアミン;下記式(h-4)~(h-6)で表されるアミド結合を有するジアミン;メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル及び2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン等の光重合性基を末端に有するジアミン;1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等のシロキサン結合を有するジアミン;下記式(Ox-1)~(Ox-2)等のオキサゾリン構造を有するジアミン等。
Figure 0007302744000014
Figure 0007302744000015
(式(3b-1)中、Aは単結合、-CH-、-C-、-C(CH-、-CF-、-C(CF-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH)-、-CONH-、-NHCO-、-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-CON(CH)-又は-N(CH)CO-を表し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~4の整数を表し、かつm1+m2は1~4の整数を表す。式(3b-2)中、m3及びm4はそれぞれ独立して、1~5の整数を表す。式(3b-3)中、Aは炭素数1~5の直鎖又は分岐アルキル基を表し、m5は1~5の整数を表す。式(3b-4)中、A及びAはそれぞれ独立して、単結合、-CH-、-C-、-C(CH-、-CF-、-C(CF-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH)-、-CONH-、-NHCO-、-CHO-、-OCH-、-COO-、-OCO-、-CON(CH)-又は-N(CH)CO-を表し、m6は1~4の整数を表す。)
Figure 0007302744000016
Figure 0007302744000017
<<テトラカルボン酸誘導体成分>>
上記重合体(A)を製造する場合、ジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸誘導体成分は、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドなどのテトラカルボン酸二無水物の誘導体を用いることもできる。テトラカルボン酸誘導体成分は、一種のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体(A)を得る為のテトラカルボン酸誘導体成分は、上記式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含む。式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、1種類のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体からなるものであってもよく、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体からなるものであってもよい。
なお、本発明において、脂環式テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、これら4つのカルボキシ基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や脂環式構造を有していてもよい。
非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。
上記式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい具体例としては、Xが、上記式(x-1)~(x-6)であるものがより好ましく、上記式(x-1)であるものが更に好ましい。
上記式(x-1)は、なかでも、下記式(X1-1)~(X1-6)からなる群から選ばれるものが好ましい。液晶配向性を高める観点から、更に好ましくは下記式(X1-1)である。
Figure 0007302744000018
(*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
上記式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の使用割合は、重合体(A)の合成に使用される全テトラカルボン酸誘導体成分1モルに対して、10~100モル%が好ましく、20~100モル%がより好ましく、50~100モル%がさらに好ましい。
重合体(A)の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体は、上記式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体(以下、その他のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体)を含有していてもよい。その他のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体の例として、下記式(2T)で表されるテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体が挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0007302744000019
(Xは、下記式(x-8)~(x-13)及び下記式(t-1)~(t-26)からなる群から選ばれる構造を表す。)
Figure 0007302744000020
Figure 0007302744000021
Figure 0007302744000022
Figure 0007302744000023
Figure 0007302744000024
(j及びkは、0又は1の整数であり、A及びAは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、フェニレン、スルホニル、又はアミド基を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手を表す。*は酸無水物基に結合する結合手を表す。Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基である。液晶配向性の点から、Rは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。式(x-13)において、2つのAは、同一でも異なってもよい。式(t-8)において、6つのRは、同一でも異なってもよい。)
上記式(x-12)、(x-13)の好ましい具体例としては、下記式(x-14)~(x-29)が挙げられる。なお、式中の「*」は酸無水物基に結合する結合手を表す。
Figure 0007302744000025
Figure 0007302744000026
<重合体(B)>
本発明の液晶配向剤は、残留DC由来の残像を少なくする観点から、テトラカルボン酸誘導体成分とジアミン成分とを用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる重合体(B)(但し、重合体(A)を除く。)を含有してもよい。このような重合体の具体例を挙げると、テトラカルボン酸誘導体成分と、上記特定ジアミンを含まないジアミン成分とを用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる重合体が挙げられる。
上記ポリイミド前駆体の具体例としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルなどが挙げられる。
重合体(B)は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合体(B)を得るためのテトラカルボン酸誘導体成分としては、非環式脂肪族テトカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体が挙げられる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトカルボン酸二無水物の具体例としては、重合体(A)で例示したテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。中でも好ましいテトカルボン酸誘導体成分としては、上記式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体、Xが、上記(x-8)~(x-13)である式(2T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体(以下、これらを総称して特定のテトラカルボン酸誘導体成分(b)ともいう。)が好ましい。上記テトラカルボン酸誘導体成分は、一種のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体(B)を得るためのジアミン成分としては、上記重合体(A)で例示したジアミン(但し、上記特定ジアミンは除く)、窒素原子含有複素環、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素原子含有構造(以下、特定窒素原子含有構造ともいう。)を有するジアミン(但し、上記(5-8)で表されるジアミンは除く)が挙げられる。
上記特定窒素原子含有構造を有するジアミンが有していてもよい窒素原子含有複素環としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、カルバゾール、アクリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。なかでも、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、キノリン、カルバゾール又はアクリジンが好ましい。
上記特定窒素原子含有構造を有するジアミンが有していてもよい第二級アミノ基及び第三級アミノ基は、例えば、下記式(n)で表される。
Figure 0007302744000027
上記式(n)において、Rは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。「*」は、炭化水素基に結合する結合手を表す。
上記式(n)中のRのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基が挙げられる。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基である。
上記特定窒素原子含有構造を有するジアミンの具体例としては、例えば、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,6-ジアミノアクリジン、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、下記式(Dp-1)~(Dp-8)で表される化合物、下記式(z-1)~式(z-18)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007302744000028
Figure 0007302744000029
Figure 0007302744000030
残留DC由来の残像が少ない観点において、重合体(B)は窒素原子含有構造を有するジアミン、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、上記式(3b-1)~式(3b-4)で示されるジアミン化合物などのカルボキシル基を有するジアミン、4-(2-(メチルアミノ)エチル)アニリン、4-(2-アミノエチル)アニリン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、及び上記式(h-1)~(h-3)で表されるジアミンなどのウレア結合を有するジアミンからなる群から選ばれるジアミン(これらを総称してジアミン(b)ともいう。)を使用して得られる重合体であることが好ましい。
残留DC由来の残像が少ない観点において、ジアミン(b)の含有量は、重合体(B)の合成に使用するジアミン成分1モルに対して、1~100モル%であることが好ましく、5~100モル%がより好ましい。ジアミン(b)以外のジアミンを含有する場合は、ジアミン(b)の含有量の合計は、90モル%以下が好ましく、80モル%以下であることがより好ましい。
残留DC由来の残像が少ない観点において、重合体(A)と重合体(B)の含有割合が、[重合体(A)]/[重合体(B)]の質量比で10/90~90/10であってもよく、20/80~90/10であってもよく、20/80~80/20であってもよい。
上記特定のテトラカルボン酸誘導体成分(b)の使用割合は、重合体(B)の合成に使用される全テトラカルボン酸誘導体成分1モルに対して、1~100モル%であることが好ましく、5~100モル%であることがより好ましく、10~100モル%であることがさらに好ましい。
<重合体(A)、重合体(B)の製造方法>
重合体(A)又は(B)の製造は、上記ジアミン成分と、テトラカルボン酸誘導体成分と、を溶媒中で(縮重合)反応させることにより行われる。重合体(A)又は(B)の一部にアミック酸構造を含む場合、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させることにより、アミック酸構造を有する重合体(ポリアミック酸)が得られる。溶媒としては、生成した重合体が溶解するものであれば特に限定されない。
上記溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。また、重合体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は下記式[D-1]~[D-3]で示される溶媒を用いることができる。
Figure 0007302744000031
(式[D-1]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、Dは炭素数1~4のアルキル基を表す。)。
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、重合体を溶解させない溶媒であっても、生成した重合体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分とを溶媒中で反応させる際には、反応は任意の濃度で行うことができるが、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することもできる。
反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸誘導体成分の合計モル数の比は0.8~1.2であることが好ましい。通常の縮重合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成する重合体(A)、重合体(B)の分子量は大きくなる。
アミック酸エステル構造を含む重合体は、例えば、[I]上記の方法で得られたポリアミック酸とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などの既知の方法によって得ることができる。
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(A)又は(B)におけるイミド化物は上記で得られた重合体を閉環させて得られる。該イミド化物は、アミック酸基又はその誘導体が有する官能基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
液晶配向性を高める観点から、重合体(A)のイミド化率は、20~100%が好ましく、50~95%が好ましく、更に好ましくは60~90%である。
イミド化物を得る方法としては、上記反応で得られた重合体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、又は重合体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、好ましくは100~400℃、より好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
上記触媒イミド化は、反応で得られた重合体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、好ましくは-20~250℃、より好ましくは0~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の好ましくは0.5~30モル倍、より好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の好ましくは1~50モル倍、より好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、なかでも、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
上記イミド化の反応溶液から、生成したイミド化物を回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
<重合体の溶液粘度・分子量>
本発明に用いられる重合体(A)又は(B)は、これを濃度10~15質量%の溶液としたときに、例えば10~1000mPa・sの溶液粘度を持つものが作業性の観点から好ましいが、特に限定されない。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10~15質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
上記重合体(A)又は(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~500,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性及び安定性を確保することができる。
<末端封止剤>
本発明における重合体(A)、重合体(B)を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸誘導体成分、及びジアミン成分とともに、適当な末端封止剤を用いて末端封止型の重合体を合成することとしてもよい。末端封止型の重合体は、塗膜によって得られる液晶配向膜の膜硬度の向上や、シール剤と液晶配向膜の密着特性の向上という効果を有する。
本発明における重合体(A)、重合体(B)の末端の例としては、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基又はこれらの誘導体が挙げられる。アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基又はこれらの誘導体は通常の縮合反応により得るか、又は以下の末端封止剤を用いて末端を封止することにより得ることができ、前記誘導体は、例えば、以下の末端封止剤を用いて、同様に得ることができる。
末端封止剤としては、例えば無水酢酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、3-(3-トリメトキシシリル)プロピル)-3,4-ジヒドロフラン-2,5-ジオン、4,5,6,7-テトラフルオロイソベンゾフラン-1,3-ジオン、4-エチニルフタル酸無水物などの酸無水物;二炭酸ジ-tert-ブチル、二炭酸ジアリルなどの二炭酸ジエステル化合物;アクリロイルクロリド、メタクリロイルクロリド、ニコチン酸クロリドなどのクロロカルボニル化合物;アニリン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、シクロヘキシルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミンなどのモノアミン化合物;エチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物などを挙げることができる。
末端封止剤の使用割合は、使用するジアミン成分の合計100モル部に対して、0.01~20モル部とすることが好ましく、0.01~10モル部とすることがより好ましい。
<液晶配向剤における他の成分>
本発明の液晶配向剤は、重合体(A)及び必要に応じて重合体(B)を含有する。本発明の液晶配向剤は、重合体(A)、重合体(B)に加えて、その他の重合体を含有していてもよい。その他の重合体の種類としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン又はその誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
液晶配向剤は、液晶配向膜を作製するために用いられるものであり、均一な薄膜を形成させるという観点から、塗布液の形態をとる。本発明の液晶配向剤においても上記した重合体成分と、有機溶媒とを含有する塗布液であることが好ましい。その際、液晶配向剤中の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができる。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から、1質量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下が好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
液晶配向剤中の重合体(A)の含有量は、液晶配向剤の塗布方法や目的とする液晶配向膜の膜厚によって、適宜変更することができるが、2~10質量%であることが好ましく、特に、3~7質量%が好ましい。
液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルラクトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(tert-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(これらを総称して「良溶媒」ともいう)などを挙げられる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド又はγ-ブチロラクトンが好ましい。良溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、特に好ましいのは、30~80質量%である。
また、液晶配向剤に含有される有機溶媒は、上記溶媒に加えて液晶配向剤を塗布する際の塗布性や塗膜の表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう。)を併用した混合溶媒の使用が好ましい。併用する貧溶媒の具体例を下記するが、これらに限定されない。貧溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が特に好ましい。貧溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。
例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(2-ブトキシエトキシ)-2-プロパノール、2-(2-ブトキシエトキシ)-1-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)など。
なかでも、ジイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、又はジイソブチルケトンが好ましい。
良溶媒と貧溶媒との好ましい溶媒の組み合わせとしては、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールジアセテート、N,N-ジメチルラクトアミドとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチル、N-エチル-2-ピロリドンと3-エトキシプロピオン酸エチル、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、N-エチル-2-ピロリドンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとエチレングリコールモノブチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N,N-ジメチルラクトアミドとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとN-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-エチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジイソブチルケトン、γ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとプロピレングリコールジアセテート、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルカルビノール、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとプロピレングリコールジアセテート、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジイソブチルケトン、N-エチル-2-ピロリドンとN,N-ジメチルラクトアミドとジイソブチルケトンなどを挙げることができる。
本発明の液晶配向剤は、重合体成分及び有機溶媒以外の成分(以下、添加剤成分ともいう。)を追加的に含有してもよい。このような添加剤成分としては、液晶配向膜と基板との密着性や液晶配向膜とシール剤との密着性を高めるための密着助剤、液晶配向膜の強度を高めるための化合物(以下、架橋性化合物ともいう。)、イミド化を促進するための化合物、液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための誘電体や導電物質などが挙げられる。
上記架橋性化合物として、AC残像に対して良好な耐性を発現し、膜強度の改善が高い観点から、オキシラニル基、オキセタニル基、保護イソシアネート基、保護イソチオシアネート基、オキサゾリン環構造を含む基、メルドラム酸構造を含む基、シクロカーボネート基、下記式(d)で表される基及び下記式(d1)で表される基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物、又は下記式(e)で表される化合物から選ばれる化合物であってもよい。
Figure 0007302744000032
(R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は「*-CH-OH」である。*は結合手であることを示す。Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数2~6のアルキニル基を表す。Zは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数2~6のアルキニル基を表す。Aは芳香環を有する(m+n)価の有機基を表す。R’は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す。mは1~6の整数を表し、nは0~4の整数を表す。)
オキシラニル基を有する化合物の具体例としては、特開平10-338880号公報の段落[0037]に記載の化合物や、国際公開第2017/170483号に記載のトリアジン環を骨格にもつ化合物などの、2個以上のオキシラニル基を有する化合物が挙げられる。これらのうち、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、下記式(r-1)~(r-3)で表される化合物などの窒素原子を含有する化合物であってもよい。
Figure 0007302744000033
オキセタニル基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2011/132751号の段落[0170]~[0175]に記載の2個以上のオキセタニル基を有する化合物等が挙げられる。
保護イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、日本特開2014-224978号公報の段落[0046]~[0047]に記載の2個以上の保護イソシアネート基を有する化合物、国際公開第2015/141598号の段落[0119]~[0120]に記載の3個以上の保護イソシアネート基を有する化合物等が挙げられ、下記式(bi-1)~(bi-3)で表される化合物であってもよい。
Figure 0007302744000034
保護イソチオシアネート基を有する化合物の具体例としては、日本特開2016-200798号公報に記載の、2個以上の保護イソチオシアネート基を有する化合物が挙げられる。
オキサゾリン環構造を含む基を有する化合物の具体例としては、日本特開2007-286597号公報の段落[0115]に記載の、2個以上のオキサゾリン構造を含む化合物が挙げられる。
メルドラム酸構造を含む基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2012/091088号に記載の、メルドラム酸構造を2個以上有する化合物が挙げられる。
シクロカーボネート基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2011/155577号に記載の化合物が挙げられる。
上記式(d)で表される基のR、Rの炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
上記式(d)で表される基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2015/072554号や、日本特開2016-118753号公報の段落[0058]に記載の、上記式(d)で表される基を2個以上有する化合物、日本特開2016-200798号公報に記載の化合物等が挙げられ、下記式(hd-1)~(hd-8)で表される化合物であってもよい。
Figure 0007302744000035
上記(d1)で表される基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2019/142927号に記載の化合物が挙げられ、より好ましくは下記式(hd1-1)~(hd1-4)で表される化合物であってもよい。
Figure 0007302744000036
上記式(e)のAにおける芳香環を有する(m+n)価の有機基としては、炭素数6~30の(m+n)価の芳香族炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が直接又は連結基を介して結合した(m+n)価の有機基、芳香族複素環を有する(m+n)価の基が挙げられる。上記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、ナフタレンなどが挙げられる。芳香族複素環としては、上記特定窒素原子含有構造で例示した芳香族複素環が挙げられる。上記連結基としては、炭素数1~10のアルキレン基、又は該アルキレン基から水素原子を一つ除いた基、2価又は3価のシクロヘキサン環等が挙げられる。尚、該アルキレン基の任意の水素原子は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基などの有機基で置換されてもよい。上記式(e)のR’における炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基が挙げられる。具体例を挙げるならば、国際公開第2010/074269号に記載の化合物、下記式(e-1)~(e-10)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007302744000037
上記化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されるものではない。例えば、国際公開第2015/060357号の53頁[0105]~55頁[0116]に開示されている上記以外の成分などが挙げられる。また、架橋性化合物は、2種類以上組み合わせてもよい。
本発明の液晶配向剤における、架橋性化合物の含有量は、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、架橋反応が進行し、かつAC残像に対して良好な耐性を発現する観点から、より好ましくは1~15質量部である。
上記密着助剤としては、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤を使用する場合は、AC残像に対して良好な耐性を発現する観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
上記イミド化を促進するための化合物としては、塩基性の部位(例:第一級アミノ基、脂肪族ヘテロ環(例:ピロリジン骨格)、芳香族ヘテロ環(例:イミダゾール環、インドール環)、又はグアニジノ基等)を有する化合物(但し、上記架橋性化合物及び密着助剤は除く。)、又は、焼成時に上記塩基性の部位が発生する化合物が好ましい。より好ましくは、焼成時に上記塩基性の部位が発生する化合物であり、好ましい具体例を挙げると、アミノ酸が有する塩基性の部位の一部又は全てが保護されたアミノ酸が挙げられる。上記アミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、オルニチンが挙げられる。イミド化を促進するための化合物のより好ましい具体例を挙げると、N-α-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-N-τ-(tert-ブトキシカルボニル)-L-ヒスチジンが挙げられる。
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤から得られる。本発明の液晶配向膜は、水平配向型若しくは垂直配向型(VA型)の液晶配向膜に用いることができるが、中でもIPS方式又はFFS方式等の水平配向型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜である。本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶表示素子は、例えば以下の工程(1)~(4)或いは工程(1)~(2)及び(4)を含む方法により製造することができる。
<工程(1):液晶配向剤を基板上に塗布する工程>
パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法により塗布する。ここで基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板とともに、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることもできる。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。また、IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。
液晶配向剤を基板に塗布し、成膜する方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法、又はスプレー法等が挙げられる。なかでも、インクジェット法による塗布、成膜法が好適に使用できる。
<工程(2):塗布した液晶配向剤を焼成する工程>
工程(2)は、基板上に塗布した液晶配向剤を焼成し、膜を形成する工程である。液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させたり、ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルの熱イミド化を行ったりすることができる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができ、複数回行ってもよい。乾燥温度としては、例えば40~180℃で行うことができる。プロセスを短縮する観点で、40~150℃で行ってもよい。乾燥時間としては特に限定されないが、1~10分又は、1~5分が挙げられる。ポリアミック酸又はポリアミック酸エステルの熱イミド化を行う場合には、上記乾燥工程の後、例えば150~300℃、又は150~250℃の温度範囲で焼成する工程ができる。焼成時間としては特に限定されないが、5~40分、又は、5~30分の焼成時間が挙げられる。
焼成後の膜状物は、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
<工程(3):工程(2)で得られた膜に配向処理する工程>
工程(3)は、場合により、工程(2)で得られた膜に配向処理する工程である。即ち、IPS方式又はFFS方式等の水平配向型の液晶表示素子では該塗膜に対し配向能付与処理を行う。一方、VA方式又はPSAモード等の垂直配向型の液晶表示素子では、形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。液晶配向膜の配向処理方法としては、ラビング処理法、光配向処理法が挙げられ、光配向処理法がより好適である。光配向処理法としては、上記膜状物の表面に、一定方向に偏向された放射線を照射し、場合により、好ましくは、150~250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向性(液晶配向能ともいう)を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100~800nmの波長を有する紫外線又は可視光線を用いることができる。なかでも、好ましくは100~400nm、より好ましくは、200~400nmの波長を有する紫外線である。
上記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cmが好ましく、100~5,000mJ/cmがより好ましく、100~1500mJ/cmがさらに好ましく、100~1000mJ/cmが特に好ましい。通常の液晶配向剤を使用した場合には、配向処理における光照射量は、100~5000mJ/cmであるが、本発明の液晶配向剤においては、配向処理における光照射量を低減させても、液晶配向膜面内での液晶配向性のバラツキ(不均一性)が抑制された液晶配向膜を得ることができる。
また、放射線を照射する場合、液晶配向性を改善するために、上記膜状物を有する基板を、50~250℃で加熱しながら照射してもよい。このようにして作製した上記液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
更に、上記の方法で、偏光された放射線を照射した液晶配向膜に、溶媒を用いて、これらと接触処理するか、放射線を照射した液晶配向膜を加熱処理することもできる。
上記接触処理に使用する溶媒としては、放射線の照射によって膜状物から生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシル等が挙げられる。なかでも、汎用性や溶媒の安全性の点から、水、2-プロパンール、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルが好ましい。より好ましいのは、水、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルである。溶媒は、1種類でも、2種類以上組み合わせてもよい。
上記の放射線を照射した塗膜に対する加熱処理の温度は、50~300℃がより好ましく、120~250℃がさらに好ましい。加熱処理の時間としては、それぞれ1~30分とすることが好ましい。
<工程(4):液晶セルを作製する工程>
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置する。具体的には以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置する。次いで、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶組成物を注入充填して膜面に接触した後、注入孔を封止する。
また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶組成物を滴下する。その後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて液晶組成物を基板の全面に押し広げて膜面に接触させる。次いで、基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化する。いずれの方法による場合でも、更に、用いた液晶組成物が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
なお、塗膜に対してラビング処理を行った場合には、2枚の基板は、各塗膜におけるラビング方向が互いに所定の角度、例えば直交又は逆平行となるように対向配置される。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましい。
そして、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。使用した化合物の略語及び各物性の測定方法は、以下の通りである。また、「Boc」は、tert-ブトキシカルボニル基を表す。「Fmoc」は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基を表す。
(特定ジアミン)
WA-1:下記式(WA-1)で表される化合物
Figure 0007302744000038
(その他のジアミン)
A1~A9:それぞれ、下記式(A1)~(A9)で表される化合物
Figure 0007302744000039
(テトラカルボン酸二無水物)
B1~B3:それぞれ、下記式(B1)~(B3)で表される化合物
Figure 0007302744000040
(添加剤)
AD-1~AD-4:それぞれ、下記式(AD-1)~(AD-4)で表される化合物
Figure 0007302744000041
(溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
GBL:γ-ブチロラクトン
(分子量の測定)
分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805)(昭和電工社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10mL/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
(粘度の測定)
溶液の粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)を用いて、温度25℃で測定した。
<重合体の合成>
(合成例1)
WA-1(1.26g,5.20mmol)、A1(1.27g,5.20mmol)、A3(1.20g,5.20mmol)、A4(1.79g,5.20mmol)、A2(1.23g,5.20mmol)及びB1(5.48g,24.4mmol)をNMP(87.9g)中で混合し、40℃で3時間反応させ、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液(粘度:212mPa・s)を得た。なお、ジアミン成分におけるWA-1の割合は、ジアミン成分1モルに対して、20モル%であった。
得られたポリアミック酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて固形分濃度9.0質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.39g)及びピリジン(0.618g)を加え、65℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(220ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、80℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は89%であり、数平均分子量は10,216であり、重量平均分子量は43,193であった。
得られたポリイミド粉末(3.00g)に、NMP(22.0g)を加え、80℃にて15時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(SPI-1)を得た。
(合成例2)
WA-1(1.26g,5.20mmol)、A1(2.54g,10.4mmol)、A4(1.79g,5.20mmol)、A2(1.23g,5.20mmol)及びB1(5.48g,24.4mmol)をNMP(87.3g)中で混合し、40℃で3時間反応させ、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液(粘度:199mPa・s)を得た。なお、ジアミン成分におけるWA-1の割合は、ジアミン成分1モルに対して、20モル%であった。
得られたポリアミック酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて固形分濃度9.0質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.33g)及びピリジン(0.602g)を加え、60℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(210ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、80℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は88%であり、数平均分子量は11,829であり、重量平均分子量は42,836であった。
得られたポリイミド粉末(3.00g)に、NMP(22.0g)を加え、80℃にて15時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(SPI-2)を得た。
(合成例3)
WA-1(2.52g,10.4mmol)、A1(2.54g,10.4mmol)、A2(1.23g,5.20mmol)及びB1(5.48g,24.4mmol)をNMP(86.2g)中で混合し、40℃で3時間反応させ、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液(粘度:189mPa・s)を得た。なお、ジアミン成分におけるWA-1の割合は、ジアミン成分1モルに対して、40モル%であった。
得られたポリアミック酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて固形分濃度9.0質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.33g)及びピリジン(0.602g)を加え、60℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(210ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、80℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は88%であり、数平均分子量は11,194であり、重量平均分子量は40,838であった。
得られたポリイミド粉末(3.00g)に、NMP(22.0g)を加え、80℃にて15時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(SPI-3)を得た。
(合成例4)
WA-1(1.89g,7.80mmol)、A1(1.91g,7.80mmol)、A6(0.562g,5.20mmol)、A8(2.07g,5.20mmol)及びB1(5.59g,25.0mmol)をNMP(86.2g)中で混合し、40℃で3時間反応させ、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-4)(粘度:412mPa・s)を得た。なお、ジアミン成分におけるWA-1の割合は、ジアミン成分1モルに対して、30モル%であった。このポリマーの数平均分子量は15,832であり、重量平均分子量は46,829であった。
(合成例5)
WA-1(1.26g,5.20mmol)、A1(1.91g,7.80mmol)、A6(0.562g,5.20mmol)、A8(3.11g,7.80mmol)及びB1(5.59g,25.0mmol)をNMP(91.1g)中で混合し、40℃で3時間反応させ、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-5)(粘度:398mPa・s)を得た。なお、ジアミン成分におけるWA-1の割合は、ジアミン成分1モルに対して、20モル%であった。このポリマーの数平均分子量は16,888であり、重量平均分子量は46,001であった。
(合成例6)
A9(4.14g,20.8mmol)、A5(1.55g,5.20mmol)及びB3(4.84g,24.7mmol)をNMP(94.8g)中で混合し、40℃で15時間反応させ、樹脂固形分濃度10質量%のポリアミック酸溶液(PAA-6)(粘度:315mPa・s)を得た。このポリマーの数平均分子量は15,888であり、重量平均分子量は43,741であった。
(合成例7)
A9(4.14g,20.8mmol)、A5(1.55g,5.20mmol)及びB2(7.34g,25.0mmol)をNMP(95.6g)中で混合し、70℃で15時間反応させ、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-7)(粘度:465mPa・s)を得た。このポリマーの数平均分子量は13,182であり、重量平均分子量は42,252であった。
(比較合成例1)
A5(1.55g,5.20mmol)、A1(1.27g,5.20mmol)、A3(1.20g,5.20mmol)、A4(1.79g,5.20mmol)、A2(1.23g,5.20mmol)及びB1(5.48g,24.4mmol)をNMP(91.8g)中で混合し、40℃で3時間反応させ、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液(粘度:203mPa・s)を得た。
得られたポリアミック酸溶液(30.0g)に、NMPを加えて固形分濃度9.0質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.28g)及びピリジン(0.591g)を加え、60℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(220ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、80℃で減圧乾燥しポリイミド粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は86%であり、数平均分子量は11,191であり、重量平均分子量は40,381であった。
得られたポリイミド粉末(3.00g)に、NMP(22.0g)を加え、80℃にて15時間撹拌して溶解させ、ポリイミド溶液(SPI-R1)を得た。
(比較合成例2)
A8(2.07g,5.20mmol)、A1(1.91g,7.80mmol)、A7(2.50g,7.80mmol)、A6(0.562g,5.20mmol)、及びB1(5.60g,25.0mmol)をNMP(92.6g)中で混合し、40℃で3時間反応させ、樹脂固形分濃度12質量%のポリアミック酸溶液(PAA-R2)(粘度:423mPa・s)を得た。このポリマーの数平均分子量は14,921であり、重量平均分子量は45,956であった。
<液晶配向剤の調製>
(実施例1)
合成例1で得られたポリイミド溶液(SPI-1)(2.08g)に、合成例7で得られたポリアミック酸溶液(PAA-7)(2.08g)、GBL(3.00g)、BCS(2.00g)、AD-1の10質量%NMP希釈溶液(0.500g)、AD-2(0.050g)、AD-3(0.050g)及びAD-4の1質量%GBL希釈溶液(0.500g)を加え、室温で5時間撹拌して、液晶配向剤(V-1)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
(実施例2)
合成例2で得られたポリイミド溶液(SPI-2)(3.33g)に、NMP(1.67g)、GBL(3.00g)及びBCS(2.00g)を加え、室温で2時間撹拌して、液晶配向剤(V-2)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
(実施例3)
実施例2において、ポリイミド溶液(SPI-2)の代わりにポリイミド溶液(SPI-3)としたこと以外は、実施例2と同様にして液晶配向剤(V-3)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
(実施例4)
合成例4で得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)(3.33g)にNMP(3.67g)とBCS(3.00g)を加え、室温で2時間撹拌して、液晶配向剤(V-4)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
(実施例5)
実施例4において、ポリアミック酸溶液(PAA-4)の代わりにポリアミック酸溶液(PAA-5)としたこと以外は、実施例4と同様にして液晶配向剤(V-5)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
(実施例6)
合成例5で得られたポリアミック酸溶液(PAA-5)(1.83g)に、合成例6で得られたポリアミック酸溶液(PAA-6)(3.30g)、NMP(0.770g)、BCS(3.00g)、AD-1の10質量%NMP希釈溶液(0.550g)及びAD-4の1質量%NMP希釈溶液(0.550g)を加え、室温で2時間撹拌して、液晶配向剤(V-6)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
(比較例1)
比較合成例1で得られたポリイミド溶液(SPI-R1)(2.08g)に、合成例7で得られたポリアミック酸(PAA-7)(2.08g)、GBL(3.00g)、BCS(2.00g)、AD-1の10質量%NMP希釈溶液(0.500g)、AD-2(0.050g)、AD-3(0.050g)及びAD-4の1質量%GBL希釈溶液(0.500g)を加え、室温で5時間撹拌して、液晶配向剤(V-R1)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
(比較例2)
比較合成例2で得られたポリアミック酸溶液(PAA-R2)(3.33g)に、NMP(1.67g)、GBL(3.00g)及びBCS(2.00g)を加え、室温で2時間撹拌して、液晶配向剤(V-R2)を得た。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
上記で得られた液晶配向剤を用いて以下に示す手順でFFS駆動液晶セルを作製し、各種評価を行った。
<FFS駆動液晶セルの構成>
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:FFS)モード用の液晶セルは、面形状の共通電極-絶縁層-櫛歯形状の画素電極からなるFOP(Finger on Plate)電極層が表面に形成されている第1のガラス基板と、表面に高さ4μmの柱状スペーサーを有し裏面に帯電防止の為のITO膜が形成されている第2のガラス基板とを、一組とした。上記の画素電極は、中央部分が内角160°で屈曲した幅3μmの電極要素が6μmの間隔を開けて平行になるように複数配列された櫛歯形状を有しており、1つの画素は、複数の電極要素の屈曲部を結ぶ線を境に第1領域と第2領域を有している。
なお、第1のガラス基板に形成する液晶配向膜は、画素屈曲部の内角を等分する方向と液晶の配向方向とが直交するように配向処理し、第2のガラス基板に形成する液晶配向膜は、液晶セルを作製した時に第1の基板上の液晶の配向方向と第2の基板上の液晶の配向方向とが一致するように配向処理する。
<液晶セルの作製>
上記一組のガラス基板それぞれの表面に、孔径1.0μmのフィルターで濾過した液晶配向剤をスピンコート塗布にて塗布し80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた。その後、塗膜面に偏光板を介して消光比26:1の直線偏光した波長254nmの紫外線を照射し、次いで230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜付き基板を得た。前記紫外線の照射量は表1および2に記載された通りである。
次に、上記一組の液晶配向膜付きガラス基板の一方にシール剤を印刷し、もう一方の基板を液晶配向膜面が向き合うように貼り合わせ、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-7026(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、一晩放置してから残像特性の評価を実施した。
<コントラストの面内均一性評価>
シンテック社製OPTIPRO-microを用いて液晶表示素子のツイスト角の評価を行った。上記で作製した液晶セルを測定ステージに設置し、電圧無印加の状態で、第1画素面内を20点測定して標準偏差σの3倍である3σを算出した。ツイスト角のバラツキが小さいことは、液晶配向膜面内での液晶配向性にバラツキが少ないことを示す。評価は、上記3σ値が1.3未満の場合は「良好」とし、1.3以上の場合は「不良」と定義して評価を行った。上記実施例及び比較例の各液晶配向剤を使用する液晶表示素子に関して実施した評価結果を表1に示す。
<長期交流駆動による残像特性評価>
上記で作製したFFS駆動液晶セルに対し、60℃の恒温環境下、周波数60Hzで±10Vの交流電圧を120時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。上記の処理を行った液晶セルに関して、電圧無印加状態における、画素の第1領域の液晶の配向方向と第2領域の液晶の配向方向とのずれを角度として算出した。具体的には、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に液晶セルを設置し、バックライトを点灯させ、画素の第1領域の透過光強度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整し、次に画素の第2領域の透過光強度が最も小さくなるように液晶セルを回転させたときに要する回転角度を求めた。長期交流駆動による残像特性は、この回転角度の値が0.1°以下の場合は「良好」とし、0.1°より大きい場合は「不良」と定義して評価を行った。残像特性の評価結果を表2に示す。
Figure 0007302744000042
Figure 0007302744000043
上記の結果からわかるように、ジアミンWA-1を用いた液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、ジアミンA5を用いた液晶配向剤V-R1又はジアミンWA-1を含まない液晶配向剤V-R2から得られる液晶配向膜と比較して、液晶配向膜面内での液晶配向性にバラツキが少ないことがわかった。具体的には表1に示す実施例1~6と比較例1~2の比較において示される。
さらに、表2に示されるように、ジアミンWA-1を用いた液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、良好な残像特性を示した。
本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。また、上記液晶配向剤に含まれる重合体組成物は、位相差フィルム用の液晶配向膜、走査アンテナや液晶アレイアンテナ用の液晶配向膜又は透過散乱型の液晶調光素子用の液晶配向膜、或いはこれら以外の用途、例えばカラーフィルタの保護膜、フレキシブルディスプレイのゲート絶縁膜、基板材料にも用いることができる。
なお、2020年7月17日に出願された日本特許出願2020-122979号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (18)

  1. 下記式(1)で表されるジアミンを使用されるジアミン成分1モルに対して5モル%以上含むジアミン成分と、下記式(T)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含むテトラカルボン酸誘導体成分と、を用いて得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(A)を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
    Figure 0007302744000044
    (ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。)
    Figure 0007302744000045
    (Xは、下記式(x-1)~(x-7)からなる群から選ばれる構造を表す。)
    Figure 0007302744000046
    (R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
  2. 式(1)で表されるジアミンが、下記式(1-1)~(1-3)で表されるジアミンである、請求項1に記載の液晶配向剤。
    Figure 0007302744000047
  3. 前記ジアミン成分中の10~60モル%が、式(1)で表されるジアミンである、請求項1~2のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  4. 前記ジアミン成分が、更に下記式(2)又は(2i)で表されるジアミンを含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
    Figure 0007302744000048
    (Yは下記式(O)で表される2価の有機基を表す。2つのRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。2つのY2iは、それぞれ独立して下記式(O’)で表される2価の有機基を表す。)
    Figure 0007302744000049
    (Arは、2価のベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環を表す。2つのArは同一でも異なってもよく、該ベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。pは0又は1の整数である。Qは-(CH-(nは2~18の整数である。)、又は該-(CH-の-CH-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
    Figure 0007302744000050
    (Ar’は、2価のベンゼン環、又はビフェニル構造を表す。2つのAr’は同一でも異なってもよく、該ベンゼン環、又はビフェニル構造の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。p’は0又は1の整数である。Q2’は-(CH-(nは2~18の整数である。)、又は該-(CH-の-CH-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
  5. 前記式(O)で表される2価の有機基が、下記式(o-1)~(o-16)であり、前記式(O’)で表される2価の有機基が、下記式(o-7)~(o-16)である、請求項4に記載の液晶配向剤。
    Figure 0007302744000051
    Figure 0007302744000052
    (式(o-14)において、2つのmは、それぞれ独立して、1~3の整数を表す。)
    Figure 0007302744000053
  6. 前記重合体(A)が、分子内に基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  7. 前記ジアミン成分が、基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を有するジアミンをさらに含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  8. テトラカルボン酸誘導体成分と、前記式(1)で表されるジアミンを含まないジアミン成分とを用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(B)を更に含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  9. 前記重合体(B)を得るためのジアミン成分が、窒素原子含有複素環、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素原子含有構造を有するジアミンを含む、請求項8に記載の液晶配向剤。
  10. 架橋性化合物、末端封止剤及び密着助剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  11. 前記Xが式(x-1)で表される構造である、請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  12. 光配向処理法用の液晶配向膜に用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
  14. 請求項13に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
  15. 下記の工程(1)~(3)を含む、液晶配向膜の製造方法。
    工程(1):請求項1~11のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布する工程
    工程(2):塗布した液晶配向剤を焼成する工程
    工程(3):工程(2)で得られた膜に配向処理する工程
  16. 前記配向処理が、光配向処理である、請求項15に記載の液晶配向膜の製造方法。
  17. 前記光配向処理における放射線の照射量が、100~1500mJ/cmである、請求項16に記載の液晶配向膜の製造方法。
  18. 配向処理された膜に対して50~300℃の加熱処理を更に行う、請求項15~17のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法。
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