以下に添付図面を参照して、本実施の形態の詳細を説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の半導体装置10Aの一例を示す模式図である。
半導体装置10Aは、半導体装置10の一例である。半導体装置10Aは、半導体素子12Aと、電圧印加部14と、を備える。
半導体素子12Aは、半導体素子12の一例である。半導体素子12Aは、半導体基板16と、ウェル層18と、絶縁層20と、ポリシリコン抵抗層22と、を備える。
半導体素子12Aは、半導体基板16、ウェル層18、絶縁層20、およびポリシリコン抵抗層22が、この順に積層された積層体である。以下では、これらの層の積層方向(矢印Z方向)を、積層方向Zと称して説明する。また、積層方向Zに交差する方向(矢印X方向)を、第1方向Xと称して説明する。なお、本実施の形態では、第1方向Xは、積層方向Zに直交する方向である場合を一例として説明する。
半導体基板16は、半導体(例えば、シリコン)を主成分とする材料で構成される。
半導体基板16は、ウェル層18を有する。ウェル層18は、半導体基板16の第1面S1に沿って設けられている。第1面S1は、板状の半導体基板16を構成する外周面の内の積層方向Zに対向する2つ面の内、ポリシリコン抵抗層22側の面である。
本実施の形態では、半導体基板16における、第1面S1を含む積層方向Zに所定の厚さの領域が、ウェル層18として機能する場合を一例として説明する。
ウェル層18は、互いに導電型の異なる第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとが交互に配列されてなる。
図1には、ウェル層18が、第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとを第1方向Xに沿って1つずつ配列してなる構成である場合を一例として示した。なお、図1には、第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとが、第1方向Xに接触配置されている形態を一例として示した。しかし、第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとは、第1方向Xに間隔を隔てて配置された構成であってもよい。
第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとは、導電型が異なる。導電型が異なる、とは、一方がN型であり、他方がP型であることを意味する。
例えば、第1ウェル領域18Aは、第1の導電型の不純物を含む。第2ウェル領域18Bは、第2の導電型の不純物を含む。
第1の導電型と第2の導電型とは、導電型が互いに異なる。第1の導電型は、例えば、N型である。第1の導電型がN型である場合、第1の導電型の不純物は、例えば、リン、砒素などである。第2の導電型は、例えば、P型である。第2の導電型がP型である場合、第2の導電型の不純物は、例えば、ボロンなどである。なお、第1の導電型がP型であり、第2の導電型がN型であってもよい。
絶縁層20は、ウェル層18上に積層されてなる。絶縁層20は、絶縁物(例えば、シリコン酸化物)を主成分とする材料で形成される。
ポリシリコン抵抗層22は、絶縁層20上に積層されてなる。ポリシリコン抵抗層22は、ポリシリコンを主成分とする。主成分とする、とは、含有量が80体積%以上であることを意味する。
ポリシリコン抵抗層22には、第1の導電型または第2の導電型の不純物がドープされている。本実施の形態では、ポリシリコン抵抗層22には、第2の導電型の不純物がドープされてなる場合を、一例として説明する。
詳細には、ポリシリコン抵抗層22は、第1方向Xの両端部の端部領域22A(端部領域22A1、端部領域22A2)の不純物濃度が、端部領域22A以外の中央領域22Bの不純物濃度より高い。
このため、ポリシリコン抵抗層22が第2の導電型(例えば、P型)である場合、端部領域22A(端部領域22A1、端部領域22A2)は、P+領域である。また、中央領域22Bは、P-領域である。
図1に示すように、ウェル層18が第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとを第1方向Xに沿って1つずつ配列してなる構成であると想定する。この場合、第1ウェル領域18Aに対して積層方向Zに重なる位置に端部領域22A1が配置され、第2ウェル領域18Bに対して積層方向Zに重なる位置に端部領域22A2が配置されてなる。
半導体素子12Aの作製方法は限定されない。半導体素子12Aは、例えば、半導体基板16の第1面S1に第1の導電型および第2の導電型の各々の不純物をドープすることで、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bを形成する。これらの第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bからなるウェル層18上に絶縁層20を形成した後に、ポリシリコン抵抗層22を形成する。そして、ポリシリコン抵抗層22の端部領域22Aの不純物濃度が中央領域22Bより高くなるように、第2の導電型の不純物をドープすることで、半導体素子12Aを作製すればよい。
次に、電圧印加部14について説明する。
電圧印加部14は、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bに、互いに異なる極性のバイアス電圧を印加する。
本実施の形態では、電圧印加部14は、電圧印加部14Aと、電圧印加部14Bと、電圧印加部14Cと、を含む。なお、電圧印加部14A、電圧印加部14B、および電圧印加部14Cを総称して説明する場合、単に電圧印加部14と称して説明する。
電圧印加部14Aは、第1ウェル領域18Aの第1方向Xの一端部にバイアス電圧を印加する。詳細には、電圧印加部14Aは、第1ウェル領域18Aの第1方向Xの両端部の内、第2ウェル領域18Bの一端部側とは反対側の端部(すなわち、端部領域22A1側の端部)に、バイアス電圧を印加する。また、電圧印加部14Aは、第2ウェル領域18Bに印加するバイアス電圧とは逆極性のバイアス電圧を第1ウェル領域18Aへ印加する。図1には、電圧印加部14Aが、プラス(+)のバイアス電圧を第1ウェル領域18Aへ印加する形態を一例として示した。
電圧印加部14Bは、第2ウェル領域18Bの第1方向Xの他端部にバイアス電圧を印加する。詳細には、電圧印加部14Bは、第2ウェル領域18Bの第1方向Xの両端部の内、第1ウェル領域18Aの他端部側とは反対側の端部(すなわち、端部領域22A2側の端部)に、バイアス電圧を印加する。また、電圧印加部14Bは、第1ウェル領域18Aに印加するバイアス電圧とは逆極性のバイアス電圧を第2ウェル領域18Bへ印加する。図1には、電圧印加部14Bが、マイナス(-)のバイアス電圧を第2ウェル領域18Bへ印加する形態を一例として示した。
電圧印加部14Cは、端部領域22A1と端部領域22A2との間にバイアス電圧を印加する。
なお、電圧印加部14は、第1ウェル領域18Aが第1閾値を超える電位となり、第2ウェル領域18Bが第1閾値未満の電位となるように、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bにバイアス電圧を印加することが好ましい。
第1閾値は、予め定めればよい。具体的には、第1閾値は、ポリシリコン抵抗層22の電位である。電圧印加部14は、これらの電位の関係を満たすように、図示を省略する抵抗などを介して、第1ウェル領域18A、第2ウェル領域18B、および端部領域22Aと電極とを接続した構成とすればよい。
また、図1に示すように、ウェル層18が第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとを第1方向Xに沿って1つずつ配列してなる構成であると想定する。この場合、電圧印加部14は、ポリシリコン抵抗層22の第1方向Xの一端部の端部領域22A1と、該端部領域22A1に対して積層方向Zに重なる位置に配置された第1ウェル領域18Aとに同じ極性のバイアス電圧を印加することが好ましい。例えば、電圧印加部14は、端部領域22A1と第1ウェル領域18Aとに、プラス(+)のバイアス電圧を印加することが好ましい。
また、この場合、電圧印加部14は、ポリシリコン抵抗層22の第1方向Xの他端部の端部領域22A2と、該端部領域22A2に対して積層方向Zに重なる位置に配置された第2ウェル領域18Bとに同じ極性のバイアス電圧を印加することが好ましい。例えば、電圧印加部14は、端部領域22A2と第2ウェル領域18Bとに、マイナス(-)のバイアス電圧を印加することが好ましい。
次に、半導体装置10Aの作用について説明する。
上述したように、電圧印加部14は、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bに、互いに異なる極性のバイアス電圧を印加する。また、電圧印加部14は、ポリシリコン抵抗層22の端部領域22A1と端部領域22A2との間にバイアス電圧を印加する。
例えば、電圧印加部14Aが、プラス(+)のバイアス電圧を、N型の第1ウェル領域18Aへ印加し、電圧印加部14Bが、マイナス(-)のバイアス電圧をP型の第2ウェル領域18Bへ印加したと想定する。また、電圧印加部14Cが、端部領域22A1と端部領域22A2との間にバイアス電圧を印加したと想定する。
ポリシリコン抵抗層22の端部領域22A1と端部領域22A2との間に上記バイアス電圧が印加されることで、自由キャリア、特に、多数キャリアである正孔が第1方向Xに輸送される(図1中、矢印E2方向参照)。このため、ポリシリコン抵抗層22内の、例えば、端部領域22A1から端部領域22A2へ向かう方向(矢印E2方向参照)へ、ドリフト電流が流れる。
また、上記バイアス電圧がウェル層18へ印加されることで、第1ウェル領域18Aと絶縁層20との界面には、正孔が誘起される。このため、ポリシリコン抵抗層22における積層方向Zに第1ウェル領域18Aと重なる領域の絶縁層20との界面には、電子が誘起される。一方、第2ウェル領域18Bと絶縁層20との界面には、電子が誘起される。このため、ポリシリコン抵抗層22における積層方向Zに第2ウェル領域18Bと重なる領域の絶縁層20との界面には、正孔が誘起される。
このように、ポリシリコン抵抗層22における絶縁層20との界面側の領域の、第1ウェル領域18Aに対向する領域側では電子が誘起され、第2ウェル領域18Bに対向する領域側では正孔が誘起された状態となる。このため、ポリシリコン抵抗層22の絶縁層20との界面における、第1方向Xの中央部(平面視で第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとの境界に相当する領域)に供給されるキャリアが存在しない状態となる。よって、ポリシリコン抵抗層22における、絶縁層20との界面に誘起された電子は端部領域22A1側に輸送されず(矢印E1方向への輸送が生じない)、且つ、該界面に誘起された正孔は端部領域22A2側に輸送されない(矢印E1方向への輸送が生じない)。
すなわち、本実施の形態の半導体装置10Aでは、ポリシリコン抵抗層22における絶縁層20との界面に誘起された電子および正孔の各々が、誘起された領域に対して第1方向Xの反対側の端部に向かってキャリア輸送されない。このため、ポリシリコン抵抗層22内に、界面電流(矢印E1参照)が流れる事を抑制することができる。
よって、ポリシリコン抵抗層22の第1方向Xの両端部の端部領域22A(端部領域22A1、端部領域22A2)にバイアス電圧を印加した時にポリシリコン抵抗層22内を流れる電流は、ドリフト電流(矢印E2方向参照)のみとなる。
すなわち、本実施の形態の半導体装置10Aでは、ポリシリコン抵抗層22における絶縁層20との界面に集まるキャリアが、寄生薄膜トランジスタとして動作することを抑制することができる。このため、該界面に集まるキャリアが寄生薄膜トランジスタとして動作することで生じる、非線形の関係を示す界面伝導電流が抑制される。よって、該界面伝導電流が通常のバルク伝導による電流に対して十分小さくなることで、ポリシリコン抵抗層22への印加電圧とポリシリコン抵抗層22の抵抗値との関係である非線型性が、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化に与える影響を軽減することができる。
このため、本実施の形態の半導体装置10Aは、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化を抑制することができる。
なお、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化の抑制とは、ウェル層18に様々な値のバイアス電圧を印加した場合であっても、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化が抑制されることを意味する。
ここで、従来では、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化を抑制することは困難であった。
図2は、従来の比較半導体装置100の一例を示す模式図である。
比較半導体装置100は、比較半導体素子120を備える。比較半導体素子120は、半導体基板16に設けられたウェル層19と、絶縁層20と、ポリシリコン抵抗層22とをこの順に積層した積層体である。図2には、従来の比較半導体装置100として、第1方向Xに非分離のウェル層19を一例として示した。
比較半導体装置100では、比較半導体素子120のウェル層19には、予め定めた電位となるように、予め定めた電圧が印加される。すなわち、ウェル層19には、ウェル層19全体に、同極性のバイアス電圧が印加される。一般的には、ウェル層19には極性に応じて最高電位や最低電位の電圧が印加されている。
図3は、比較半導体装置100のウェル層19の電位(ウェル電位と称する場合がある)と、変動比率と関係の測定結果を示す図である。具体的には、図3中、横軸はポリシリコン抵抗層22とウェル層19の電圧差をウェル電位の変化として示し、縦軸は変動比率を示す。
変動比率とは、ウェル電位“0V”であるときのポリシリコン抵抗層22の抵抗値を基準としたときの、該基準に対するポリシリコン抵抗層22の抵抗値の変動の比率を示す。図3には、ウェル電位“0V”であるときのウェル層19とポリシリコン抵抗層22との電位差を基準としたときの、該基準に対するウェル層19とポリシリコン抵抗層22との電位差の変動の比率を、該変動比率(抵抗値の変動の比率)として測定した結果を示した。図3に示すように、ウェル電位とポリシリコン抵抗層22の電位差が大きくなるほど、ウェル電位とポリシリコン抵抗層22の電位差が0Vの時に対する抵抗値変動比率が大きくなる。
図3中、線図30は、バルク伝導電流によるポリシリコン抵抗層22のシート抵抗が10Ωである場合の、ウェル電位と変動比率との関係を示す線図である。図3中、線図32は、バルク伝導電流によるポリシリコン抵抗層22のシート抵抗が200Ωである場合の、ウェル電位と変動比率との関係を示す線図である。図3中、線図34は、バルク伝導電流によるポリシリコン抵抗層22のシート抵抗が1000Ωである場合の、ウェル電位と変動比率との関係を示す線図である。ウェル電位に対して右肩下がりの線図30,32は多数キャリアが電子で構成されており、ウェル電位に対して右肩上がりの線図34は多数キャリアが正孔で構成されたものである。
図3に示すように、従来の比較半導体装置100では、ウェル電位とポリシリコン抵抗層22の電位差が大きくなるほど、ウェル電位とポリシリコン抵抗層22の電位差が0Vの時に対する抵抗値変動比率が大きくなっていた。
これは、従来の比較半導体装置100では、印加電圧とポリシリコン抵抗層22の抵抗値との関係である非線形性の影響が、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化に与える影響を抑制することが困難であったためといえる。
また、従来の比較半導体装置100を反転アンプに適用する場合を想定する。反転アンプの構成では、大きな信号レベルを処理する場合、反転アンプを構成する入力抵抗と、帰還抵抗の端子に印加される電圧との差が大きくなる。このため、従来の比較半導体装置100では、非線形の影響が軽減されない問題がある。
この現象は、ウェル層19をゲート端子、ポリシリコン抵抗層22の両端をソース/ドレイン端子とした薄膜トランジスタによる動作モデルによく一致している。すなわち、図3に示す、ウェル電位によるポリシリコン抵抗層22の抵抗値の変動は、ポリシリコン抵抗層22および絶縁層20のパラメータを考慮した薄膜トランジスタの動作による界面電流の影響と一致すると推測される。
ポリシリコン抵抗層22のシート抵抗RS’は、以下式(1)で表される。
RS’=[1/RS+μCOX(VGS-VTH)]-1 式(1)
式(1)中、RS’は、ポリシリコン抵抗層22のシート抵抗を示し、RSは、バルク伝導電流によるポリシリコン抵抗層22のシート抵抗を示す。μは、多結晶ポリシリコンの移動度を示し、COXは、絶縁層20(酸化膜)の容量を示し、VGSは、半導体基板16の基板電位とポリシリコン抵抗層22との間の電位差を示す。VTHは、多結晶ポリシリコンによって形成される薄膜トランジスタの閾値電圧を示す。
ポリシリコン抵抗層22とウェル層19との間に配置された絶縁層20の抵抗は十分に大きいことから、COXは小さく、また、式(1)中の第2項である“μCOX(VGS-VTH)”の値は十分に小さいといえる。しかし、式(1)中のRSが大きいほど、ポリシリコン抵抗層22に印加される電圧の変動によって生じるVGSの変化により、式(1)中の第2項である“μCOX(VGS-VTH)”の影響が無視できなくなる。このため、RS’の変動が大きくなる。これにより、例えば、2つの同じ抵抗値を有する抵抗体を分割出力する構成の場合、入力側の抵抗と、基準端子側の抵抗とでは、端子に印加される電圧が異なる(すなわちVGSが異なる)ことで、2つのRS’が異なるものとなる。よって、抵抗分割の出力は、1/2とならない。すなわち、従来の比較半導体装置100では、反転アンプに適用した場合、音声信号のようなAC信号に出力歪が生じてしまう。
一方、本実施の形態の半導体装置10は、半導体基板16の第1面S1に沿って設けられ、互いに導電型の異なる第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとが交互に配列されてなるウェル層18を備える。また、半導体装置10は、ウェル層18上に積層された絶縁層20と、絶縁層20上に積層されたポリシリコン抵抗層22と、を備える。電圧印加部14は、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bに互いに異なる極性のバイアス電圧を印加する。
このため、本実施の形態の半導体装置10では、ポリシリコン抵抗層22における絶縁層20との界面に誘起された電子および正孔の各々が、誘起された領域に対して第1方向Xの反対側の端部に向かってキャリア輸送される事を抑制することができる。このため、本実施の形態の半導体装置10では、ポリシリコン抵抗層22内を流れる電流は、ドリフト電流(図1中、矢印E2方向参照)のみとなり、ポリシリコン抵抗層22への印加電圧とポリシリコン抵抗層22の抵抗値との関係である非線型性が、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化に与える影響を軽減することができる。
従って、本実施の形態の半導体装置10は、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化を抑制することができる。
すなわち、本実施の形態の半導体装置10は、ウェル層18とポリシリコン抵抗層22との電位差によって生じる、ポリシリコン抵抗層22の抵抗の変化の低減を図ることができる。
なお、本実施の形態では、ポリシリコン抵抗層22が第2の導電型(例えば、P型)である場合を一例として説明した。しかし、ポリシリコン抵抗層22は、第1の導電型(例えば、N型)であってもよい。
(第2の実施の形態)
本実施の形態では、ウェル層18が、3つのウェル領域から構成される形態を説明する。
図4は、本実施の形態の半導体装置10Bの一例を示す模式図である。
半導体装置10Bは、半導体装置10の一例である。半導体装置10Bは、半導体素子12Bと、電圧印加部14と、を備える。
半導体素子12Bは、半導体素子12の一例である。半導体素子12Bは、半導体基板16と、ウェル層18と、絶縁層20と、ポリシリコン抵抗層22と、を備える。半導体素子12Bは、半導体基板16、ウェル層18、絶縁層20、およびポリシリコン抵抗層22が、この順に積層された積層体である。
半導体基板16、絶縁層20、およびポリシリコン抵抗層22は、第1の実施の形態と同様である。
ウェル層18は、第1の実施の形態と同様に、半導体基板16の第1面S1に沿って設けられている。ウェル層18は、互いに導電型の異なる第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとが交互に配列されてなる。
本実施の形態では、ウェル層18は、第1方向Xに沿って配列された2つの第1ウェル領域18Aの間に、第2ウェル領域18Bが配置されてなる。具体的には、ウェル層18は、第1ウェル領域18A1、第2ウェル領域18B、および第1ウェル領域18A2が、第1方向Xに沿ってこの順に配列されてなる。第1ウェル領域18A1および第1ウェル領域18A2は、ウェル層18の一例であり、配置位置が異なる点以外は、同じ構成のウェル領域である。第1ウェル領域18A1および第1ウェル領域18A2を総称して説明する場合には、単に、第1ウェル領域18Aと称して説明する。
なお、図4には、第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとが、第1方向Xに接触配置されている形態を一例として示した。しかし、第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとは、第1方向Xに間隔を隔てて配置された構成であってもよい。
第1の実施の形態で説明したように、第1ウェル領域18Aと第2ウェル領域18Bとは、導電型が異なる。このため、例えば、第1ウェル領域18AがN型である場合、第2ウェル領域18BはP型である。なお、第1ウェル領域18AがP型であり、第2ウェル領域18BがN型であってもよい。
本実施の形態では、2つの第1ウェル領域18Aの各々に対して積層方向Zに重なる位置の各々に、端部領域22Aが配置されてなる。具体的には、複数の第1ウェル領域18Aの内、第1方向Xの一端部側に配置された第1ウェル領域18A1に対して積層方向Zに重なる位置に端部領域22A1が配置され、他端部側に配置された第1ウェル領域18A2に対して積層方向Zに重なる位置に端部領域22A2が配置されてなる。
半導体素子12Bの作製方法は限定されない。半導体素子12Bは、ウェル層18を、第1方向Xに沿って第1ウェル領域18A1、第2ウェル領域18B、第1ウェル領域18A2の順に配置した構成とする以外は、第1の実施の形態の半導体素子12Aと同様にして作製すればよい。
次に、電圧印加部14について説明する。電圧印加部14は、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bに、互いに異なる極性のバイアス電圧を印加する。
本実施の形態では、電圧印加部14は、電圧印加部14Aと、電圧印加部14Bと、電圧印加部14Cと、電圧印加部14Dと、を含む。
電圧印加部14Aは、第1ウェル領域18A1の第1方向Xの一端部に、バイアス電圧を印加する。電圧印加部14Dは、第1ウェル領域18A2の第1方向Xの他端部に、バイアス電圧を印加する。電圧印加部14Bは、第2ウェル領域18Bに、バイアス電圧を印加する。
電圧印加部14Aおよび電圧印加部14Dと、電圧印加部14Bとは、互いに逆極性のバイアス電圧を印加する。図4には、一例として、電圧印加部14Aおよび電圧印加部14Dが、プラス(+)のバイアス電圧を第1ウェル領域18A(第1ウェル領域18A1、第1ウェル領域18A2)へ印加する形態を一例として示した。また、電圧印加部14Bが、マイナス(-)のバイアス電圧を第2ウェル領域18Bへ印加する形態を一例として示した。
電圧印加部14Cは、端部領域22A1と端部領域22A2との間にバイアス電圧を印加する。電圧印加部14Cは、第1の実施の形態の電圧印加部14Cと同様である。
なお、電圧印加部14は、第1の実施の形態と同様に、第1ウェル領域18A(第1ウェル領域18A1、第1ウェル領域18A2)が第1閾値を超える電位となり、第2ウェル領域18Bが第1閾値未満の電位となるように、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bにバイアス電圧を印加することが好ましい。第1閾値は、第1の実施の形態と同様である。電圧印加部14は、これらの電位の関係を満たすように、図示を省略する抵抗などを介して、第1ウェル領域18A1、第1ウェル領域18A2、第2ウェル領域18B、および端部領域22Aと電極とを接続した構成とすればよい。
次に、半導体装置10Bの作用について説明する。
上述したように、電圧印加部14は、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bに、互いに異なる極性のバイアス電圧を印加する。また、電圧印加部14は、ポリシリコン抵抗層22の端部領域22A1と端部領域22A2との間にバイアス電圧を印加する。
例えば、電圧印加部14Aおよび電圧印加部14Dが、プラス(+)のバイアス電圧を、N型の第1ウェル領域18A1および第1ウェル領域18A2へ印加し、電圧印加部14Bが、マイナス(-)のバイアス電圧をP型の第2ウェル領域18Bへ印加したと想定する。また、電圧印加部14Cが、端部領域22A1と端部領域22A2との間にバイアス電圧を印加したと想定する。
ポリシリコン抵抗層22の端部領域22A1と端部領域22A2との間に上記バイアス電圧が印加されることで、自由キャリア、特に、多数キャリアである正孔が第1方向Xに輸送される(図1中、矢印E2方向参照)。このため、ポリシリコン抵抗層22内の、例えば、端部領域22A1から端部領域22A2へ向かう方向(矢印E2方向参照)へ、ドリフト電流が流れる。
また、上記バイアス電圧がウェル層18へ印加されることで、第1ウェル領域18A1および第1ウェル領域18A2の各々と絶縁層20との界面には、正孔が誘起される。また、第2ウェル領域18Bと絶縁層20との界面には、電子が誘起される。
このため、ポリシリコン抵抗層22における積層方向Zに第1ウェル領域18A1および第1ウェル領域18A2の各々と重なる領域の絶縁層20との界面には、電子が誘起される。また、ポリシリコン抵抗層22における積層方向Zに第2ウェル領域18Bと重なる領域の絶縁層20との界面には、正孔が誘起される。
このように、ポリシリコン抵抗層22における絶縁層20との界面側の領域の、第1方向Xの両端部の領域では電子が誘起され、第1方向Xの中央部の領域では正孔が誘起された状態となる。このため、ポリシリコン抵抗層22の絶縁層20との界面における、第1方向Xの中央より端部領域22A2側で誘起された電子は、第1方向Xの中央付近で誘起された正孔と再結合し、端部領域22A1側に輸送されない。また、ポリシリコン抵抗層22の絶縁層20との界面における、第1方向Xの中央より端部領域22A1側で誘起された電子は、供給されるキャリアが存在しないため、端部領域22A1側へ輸送されない。このため、ポリシリコン抵抗層22における絶縁層20との界面側の領域では、界面電流が流れない状態となる(矢印E1方向参照)。
すなわち、本実施の形態の半導体装置10Bでは、ポリシリコン抵抗層22における絶縁層20との界面に集まるキャリアが、寄生薄膜トランジスタとして動作することを抑制することができる。このため、該界面に集まるキャリアが寄生薄膜トランジスタとして動作することで生じる、非線形の関係を示す界面伝導電流が抑制される。よって、通常のバルク伝導による電流が該界面伝導電流に対して十分大きくなることで、ポリシリコン抵抗層22への印加電圧とポリシリコン抵抗層22の抵抗値との関係である非線型性が、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化に与える影響を軽減することができる。
このため、本実施の形態の半導体装置10Bは、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、ポリシリコン抵抗層22が第2の導電型(例えば、P型)である場合を一例として説明した。しかし、ポリシリコン抵抗層22は、第1の導電型(例えば、N型)であってもよい。
また、第1ウェル領域18A(第1ウェル領域18A1、第1ウェル領域18A2)および第2ウェル領域18Bの内、半導体基板16と同じ導電型を示す領域については、半導体基板16の一部を該領域(例えば、第1ウェル領域18A)として機能させてもよい。また、半導体基板16上に、ウェル層18を積層した構成としてもよい。
(変形例)
なお、上記実施の形態では、半導体装置10(半導体装置10A、半導体装置10B)が、半導体基板16、ウェル層18、絶縁層20、およびポリシリコン抵抗層22をこの順に積層した積層体である形態を説明した。
しかし、半導体装置10は、積層方向Zに間隔を隔てて配置された2つの絶縁層20の間に、ウェル層18を配置した構成であってもよい。
図5は、本変形例の半導体装置10Cの一例を示す模式図である。
半導体装置10Cは、半導体装置10の一例である。半導体装置10Cは、半導体素子12Cと、電圧印加部14とを備える。電圧印加部14は、上記実施の形態と同様であるため、図5では図示を省略した。
半導体素子12Cは、半導体基板16上に、第1の絶縁層20A、ウェル層18、第2の絶縁層20B、およびポリシリコン抵抗層22をこの順に積層した積層体である。
半導体基板16、ウェル層18、およびポリシリコン抵抗層22は、上記実施の形態と同様である。図5には、上記第2の実施の形態と同様に、第1ウェル領域18A1、第2ウェル領域18B、および第1ウェル領域18A2を第1方向Xに沿ってこの順に配置した構成のウェル層18を一例として示した。しかし、本変形例のウェル層18は、第1の実施の形態と同様に、第1ウェル領域18Aおよび第2ウェル領域18Bを第1方向Xに沿って配置した構成であってもよい。
第1の絶縁層20Aおよび第2の絶縁層20Bは、上記実施の形態の絶縁層20と同様である。すなわち、本変形例では、絶縁層20が、積層方向Zに間隔を隔てて配置された、第1の絶縁層20Aと、第2の絶縁層20Bと、から構成される。そして、本変形例の半導体素子12Cは、これらの第1の絶縁層20Aと第2の絶縁層20Bとの間に、ウェル層18が配置されてなる。
このように、ウェル層18が、第1の絶縁層20Aと第2の絶縁層20Bとの間に配置された構成であってもよい。
(適用形態)
上記実施の形態および変形例の半導体装置10(半導体装置10A、半導体装置10B、および半導体装置10C)は、増幅回路、可変抵抗器などに適用可能である。
図6は、増幅回路40の一例を示す図である。
増幅回路40は、オペアンプ44、入力抵抗42、および帰還抵抗43から構成され、例えば、半導体基板上に一体的に形成される。
オペアンプ44は、入力抵抗42を介して入力端子41に接続されている。また、オペアンプ44は、出力端子45に接続されている。オペアンプ44の反転入力端子“-”と入力端子41との間には、帰還抵抗43が接続されている。オペアンプ44の出力端子は、出力端子45に接続されている。オペアンプ44には、入力端子41から入力抵抗42を介して入力信号が供給される。
上記実施の形態および変形例の半導体装置10は、例えば、増幅回路40の入力抵抗42および帰還抵抗43として適用される。
図7は、可変抵抗器50の一例を示す模式図である。可変抵抗器50は、ボリューム回路と称される場合もある。
可変抵抗器50は、オペアンプ54、抵抗52、および抵抗53から構成され、例えば、半導体基板上に一体的に形成される。
オペアンプ54は、抵抗52を介して入力端子51に接続されている。また、オペアンプ44は、出力端子55に接続されている。オペアンプ44の反転入力端子“-”と入力端子51との間には、抵抗52が接続されている。オペアンプ44の入力端子“+”は、抵抗53を介して接地されている。
上記実施の形態および変形例の半導体装置10は、例えば、可変抵抗器50の抵抗52および抵抗53として適用される。
上記実施の形態および変形例の半導体装置10を、増幅回路40または可変抵抗器50などに適用することで、増幅回路40および可変抵抗器50の精度向上および波形歪みの抑制を図ることができる。
例えば、上記実施の形態および変形例の半導体装置10を、2つの抵抗体によって抵抗分割した減衰器(増幅回路40、可変抵抗器50)を構成する場合であっても、ポリシリコン抵抗層22の不純物濃度に拘らず、ポリシリコン抵抗層22の抵抗変化の違いを抑制することができ、減衰量に差が出る事を抑制することができる。
ここで、従来では、オーディオ信号のような交流信号を増幅回路40および可変抵抗器50の入力信号として用いる場合、入力信号の振幅に応じて抵抗の相対比が変化することになり、歪悪化の影響が大きくなっていた。このため、従来では、抵抗の変化率を低減するためにポリシリコン抵抗層22の不純物濃度が高いもの、すなわち、シート抵抗の小さいポリシリコン抵抗層22を選択していた。この場合、所望の抵抗値を実現する為には、非常に大きなシート数のポリシリコン抵抗層22が必要となり、結果的にチップ面積の増大が生じていた。また、特開平9-321229号公報および特開2014-99639号公報に示されるように、各抵抗体のウェル領域をそれぞれ分離して各抵抗体の一端と接続することによって、抵抗体とウェル領域との電位差を一定にする手法が知られている。しかし、このような従来方式では、反転アンプのように抵抗体の数が少ない構成には有効であるが、可変抵抗器50のように多数の抵抗体を必要とする構成の場合、チップ面積が増大していた。また、反転アンプの構成では、大きな信号レベルを処理する場合、反転アンプを構成する入力抵抗と帰還抵抗の端子に印加される電圧と差が大きくなるため、上述した非線形の影響が軽減されない問題があった。
一方、本実施の形態および変形例の増幅回路40を、増幅回路40または可変抵抗器50などに適用した場合、上述した非線形性の影響が抑制される。このため、上記実施の形態および変形例の半導体装置10を、増幅回路40または可変抵抗器50などに適用することで、増幅回路40および可変抵抗器50の精度向上、波形歪みの抑制、および、チップ面積の増大の抑制、を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態および変形例を説明したが、これらの実施の形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。