以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層を含んで構成されている。上記粘着シートは、例えば、粘着剤層の一方の表面により構成された第一粘着面と、該粘着剤層の他方の表面により構成された第二粘着面と、を備える基材レス両面粘着シートの形態であり得る。あるいは、ここに開示される粘着シートは、上記粘着剤層が支持基材の片面または両面に積層された基材付き粘着シートの形態であってもよい。以下、支持基材のことを単に「基材」ということもある。
<粘着シートの構成例>
一実施形態に係る粘着シートの構造を図1に模式的に示す。この粘着シート1は、粘着剤層21からなる基材レスの両面粘着シートとして構成されている。粘着シート1は、粘着剤層21の一方の表面(第一面)により構成された第一粘着面21Aと、粘着剤層21の他方の表面(第二面)により構成された第二粘着面21Bとを、被着体の異なる箇所に貼り付けて用いられる。粘着面21A,21Bが貼り付けられる箇所は、異なる部材のそれぞれの箇所であってもよく、単一の部材内の異なる箇所であってもよい。使用前(すなわち、被着体への貼付け前)の粘着シート1は、図1に示すように、第一粘着面21Aおよび第二粘着面21Bが、少なくとも粘着剤層21に対向する側がそれぞれ剥離面となっている剥離ライナー31,32によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート100の構成要素であり得る。剥離ライナー31,32としては、例えば、シート状の基材(ライナー基材)の片面に剥離処理剤による剥離層を設けることで該片面が剥離面となるように構成されたものを好ましく使用し得る。あるいは、剥離ライナー32を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー31を用い、これと粘着シート1とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面21Bが剥離ライナー31の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。
他の一実施形態に係る粘着シートの構造を図2に模式的に示す。この粘着シート2は、第一面10Aおよび第二面10Bを有するシート状の支持基材(例えば樹脂フィルム)10と、その第一面10A側に設けられた粘着剤層21とを備える基材付き片面粘着シートとして構成されている。粘着剤層21は、支持基材10の第一面10A側に固定的に、すなわち当該支持基材10から粘着剤層21を分離する意図なく、設けられている。使用前の粘着シート2は、図2に示すように、粘着剤層21の表面(粘着面)21Aが、少なくとも粘着剤層21に対向する側が剥離面となっている剥離ライナー31によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート200の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー31を省略し、第二面10Bが剥離面となっている支持基材10を用い、粘着シート2を巻回することにより粘着面21Aが支持基材10の第二面(背面)10Bに当接して保護された形態(ロール形態)であってもよい。
さらに他の一実施形態に係る粘着シートの構造を図3に模式的に示す。この粘着シート3は、第一面10Aおよび第二面10Bを有するシート状の支持基材(例えば樹脂フィルム)10と、その第一面10A側に固定的に設けられた第一粘着剤層21と、第二面10B側に固定的に設けられた第二粘着剤層22と、を備える基材付き両面粘着シートとして構成されている。使用前の粘着シート3は、図3に示すように、第一粘着剤層21の表面(第一粘着面)21Aおよび第二粘着剤層22の表面(第二粘着面)22Aが剥離ライナー31,32によって保護された形態の剥離ライナー付き粘着シート300の構成要素であり得る。あるいは、剥離ライナー32を省略し、両面が剥離面となっている剥離ライナー31を用い、これと粘着シート3とを重ね合わせて渦巻き状に巻回することにより第二粘着面22Aが剥離ライナー31の背面に当接して保護された形態(ロール形態)の剥離ライナー付き粘着シートを構成していてもよい。
上述の剥離ライナーとしては、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、ポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)やフッ素系樹脂等の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。電子機器用の分野においては、紙粉の発生を避ける観点から、樹脂フィルムの表面に剥離処理層を有する剥離ライナーまたは低接着性材料からなる剥離ライナーが好ましい。
なお、ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着フィルム、粘着ラベル等と称されるものが包含され得る。粘着シートは、ロール形態であってもよく、枚葉形態であってもよく、用途や使用態様に応じて適宜な形状に切断、打ち抜き加工等されたものであってもよい。
<粘着剤層>
(ポリエステル系ポリマー)
ここに開示される粘着シートは、ポリエステル系ポリマーを含む粘着剤層を備える。換言すれば、上記粘着剤層および粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、ポリエステル系ポリマーを含む(以下、特に断りがないかぎり、粘着剤層について説明する事項は、粘着剤組成物にも適用され得る。)。このような、ポリエステル系ポリマーを含む粘着剤や粘着剤組成物は、ポリエステル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤組成物ともいう。上記ポリエステル系ポリマーは、典型的にはベースポリマーとして粘着剤層に含まれる。ここで、ベースポリマーとは、粘着剤層に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)の主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。また、本明細書においてポリエステル系ポリマーとは、ジカルボン酸とジオールとを重縮合して得られるポリマーをいう。
粘着剤層に含まれるポリエステル系ポリマーは、その構成炭素の50%以上がバイオマス由来炭素である。換言すれば、上記ポリエステル系ポリマーのバイオマス炭素比(バイオ率ともいう。)は50%以上である。このようにバイオ率が所定値以上であるポリエステル系ポリマーを用いることによって、粘着剤の化石資源系材料への依存度を低減することができる。いくつかの態様において、ポリエステル系ポリマーのバイオ率は、52%以上であり、55%以上が適当であり、例えば60%以上であってもよい。ポリエステル系ポリマーのバイオ率は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上であり、85%以上であってもよく、88%以上でもよい。バイオ率の上限は定義上100%であるが、いくつかの態様において、ポリエステル系ポリマーのバイオ率は、例えば95%以下であってよく、より粘着性能が重視される場合には92%以下でもよく、90%以下でもよく、85%以下でもよい。ポリエステル系ポリマーの合成に使用するジカルボン酸とジオールの少なくとも一方(例えば両方)にバイオマス由来の化合物を使用することにより、ポリエステル系ポリマーのバイオ率を50%以上とすることができる。
ここで、本明細書においてバイオマス由来炭素とは、バイオマス材料、すなわち再生可能な有機資源に由来する材料に由来する炭素(再生可能炭素)を意味する。上記バイオマス材料とは、典型的には、太陽光と水と二酸化炭素とが存在すれば持続的な再生産が可能な生物資源(典型的には、光合成を行う植物)に由来する材料のことをいう。したがって、採掘後の使用によって枯渇する化石資源に由来する材料(化石資源系材料)は、ここでいうバイオマス材料の概念から除かれる。ポリエステル系ポリマーのバイオ率、すなわち該ポリエステル系ポリマーに含まれる全炭素に占めるバイオマス由来炭素の割合は、ASTM D6866に準拠して測定される質量数14の炭素同位体含有量から見積もることができる。後述の実施例についても同様である。
ここに開示される技術において使用されるポリエステル系ポリマーは、そのポリマー分子内に芳香環を有する。芳香環を含むポリエステル系ポリマーを、芳香環を有する粘着付与樹脂とともに使用することにより、せん断接着力を向上することができる。ポリエステル系ポリマーが芳香環を含むことにより、粘着剤は適度な硬度(弾性)を有するとともに、ポリエステル系ポリマーと粘着付与樹脂に含まれる芳香環同士の相互作用(π-πスタッキング)により凝集力が向上し、せん断接着力向上に寄与するものと考えられる。なお、ここに開示される技術は、上記の解釈に限定されない。また、芳香環含有ポリエステル系ポリマーの使用により、良好な耐反発性が得られやすく、高温保持力も得られやすい。上記芳香環は、芳香環を有するモノマー(芳香族ジカルボン酸や芳香族ジオール)の使用によってポリマー内に導入される。ポリエステル系ポリマーが芳香環を有する態様において、芳香環含有モノマー(典型的には芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール)の共重合割合は、特に限定されず、凡そ1重量%以上とすることが適当であり、せん断接着力向上等の観点から、好ましくは凡そ3重量%以上、より好ましくは凡そ5重量%以上、さらに好ましくは凡そ7重量%以上である。芳香環含有モノマーの共重合割合が大きいほど、高温保持力も向上する傾向がある。また、上記芳香環含有モノマーの共重合割合の上限は、例えば凡そ30重量%以下とすることが適当であり、接着力等の粘着特性の観点から、好ましくは凡そ15重量%以下、より好ましくは凡そ12重量%以下、さらに好ましくは凡そ10重量%以下であり、特に好ましくは凡そ8重量%以下である。
また、ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、通常、凡そ10,000以上であり、例えば凡そ20,000以上であることが適当である。いくつかの態様において、ポリエステル系ポリマーのMwは30,000以上であり、50,000超であることが適当であり、より優れた特性を得る観点から、好ましくは60,000超、より好ましくは70,000超、さらに好ましくは80,000超、特に好ましくは90,000超であり、95,000以上であってもよい。Mwが所定値以上のポリエステル系ポリマーを用いることで、粘着剤層の凝集力が高くなり、せん断接着力および耐反発性が向上する。また、Mwの高いポリエステル系ポリマーの使用により、保持力、ひいては高温保持力を向上させることができる。いくつかの好ましい態様において、ポリエステル系ポリマーのMwは、100,000超であり、より好ましくは110,000以上(例えば110,000超)、さらに好ましくは120,000以上であり、125,000以上であってもよい。このように高分子量のポリエステル系ポリマーを使用することにより、より優れたせん断接着力、耐反発性が得られやすい。ポリエステル系ポリマーのMwの上限は、通常は、凡そ30×104以下であることが適当であり、接着力等の観点から、好ましくは凡そ20×104以下、より好ましくは凡そ15×104以下であり、例えば凡そ12×104以下であってもよい。
なお、本明細書において、ポリエステル系ポリマーのMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgelGMH-H(S)、東ソー社製)を用いることができる。GPC測定は、より具体的には、以下の条件で行うことができる。後述の実施例においても同様の方法で測定される。
[GPC測定]
カラム:TSKgelGMH-H(S)
カラム温度:40℃
溶離液:THF(アミン系成分0.1重量%添加)
流速:0.5mL/min
注入量:100μL
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン(PS)
ポリエステル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、凡そ15℃以下であることが有利であり、好ましくは凡そ0℃以下、より好ましくは凡そ-15℃以下、さらに好ましくは凡そ-20℃以下、特に好ましくは凡そ-25℃以下(例えば凡そ-30℃以下)である。Tgが低いポリエステル系ポリマーを用いることにより、接着力を好ましく向上させることができる。また、粘着剤層の凝集力の観点から、ポリエステル系ポリマーのTgは、通常は凡そ-80℃以上であり、好ましくは凡そ-60℃以上、より好ましくは凡そ-45℃以上、さらに好ましくは凡そ-40℃以上であり、凡そ-35℃以上であってもよい。ポリエステル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。
ポリエステル系ポリマーのTgは、以下の方法で測定される。すなわち、測定対象であるポリエステル系ポリマーを用いて、厚さ2mm×直径8mmの円盤状の試験片を作製する。この試験片を、せん断試験用のパラレルプレートで挟み込み、測定装置(ARES、Rheometric Scientific社製)を用いて、周波数1Hzにて、tanδ(損失弾性率G''/貯蔵弾性率G')のピーク値を求め、当該ピーク値の温度をTg(ガラス転移温度)[℃]とする。後述の実施例においても同様の方法で測定される。
(ジカルボン酸)
上記ポリエステル系ポリマーの合成に用いられるジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、ダイマー酸、脂環式ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸のいずれも使用可能である。ジカルボン酸の具体例としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ジメチルグルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸;オレイン酸、エルカ酸等の脂肪酸を二量体化したダイマー酸;1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ドデセニル無水コハク酸等の不飽和ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸、ベンジルマロン酸、2,2’―ビフェニルジカルボン酸、4,4’―ビフェニルジカルボン酸、4,4’―ジカルボキシジフェニルエーテル、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;これらの誘導体;等が挙げられる。なお、上記ジカルボン酸の誘導体には、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル等の誘導体が含まれる。これらのジカルボン酸の1種または2種以上を適切に選定して用いることで、所望の特性(具体的には、高いせん断接着力、好ましくは、さらに耐反発性、高温保持力等の一つ以上)を発揮し得るポリエステル系ポリマーを得ることができる。
ジカルボン酸としては、バイオ率が50%以上であるポリエステル系ポリマーを得る観点から、植物由来のジカルボン酸を用いることが好ましい。そのようなジカルボン酸の好適例としては、植物(例えばヒマシ油)由来のセバシン酸、オレイン酸やエルカ酸等の脂肪酸から誘導されるダイマー酸が挙げられる。植物由来のジカルボン酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
石油資源系材料への依存度を低減する観点から、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分としてのジカルボン酸の総量(合計重量)に占める植物由来のジカルボン酸の重量割合は、凡そ1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ10重量%以上、より好ましくは凡そ50重量%以上、さらに好ましくは凡そ70重量%以上、特に好ましくは凡そ80重量%以上であり、凡そ90重量%以上であってもよく、凡そ95重量%以上(例えば95~100重量%)でもよい。また、上記植物由来のジカルボン酸の重量割合の上限は、100重量%であり、粘着特性の観点から、凡そ99重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ95重量%以下であり、凡そ90重量%以下であってもよい。
いくつかの好ましい態様では、植物由来のジカルボン酸としてダイマー酸が用いられる。ダイマー酸を用いることにより、良好な粘着特性を得つつ、ポリエステル系ポリマーのバイオ率を高めることができる。ダイマー酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記ジカルボン酸としてダイマー酸を用いる態様において、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分としてのジカルボン酸の総量(合計重量)に占めるダイマー酸の重量割合は、凡そ1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ10重量%以上、より好ましくは凡そ50重量%以上、さらに好ましくは凡そ70重量%以上、特に好ましくは凡そ80重量%以上であり、凡そ90重量%以上であってもよく、凡そ95重量%以上(例えば95~100重量%)でもよい。ダイマー酸の使用量を所定量以上とすることにより、ダイマー酸の特性に基づき、ポリマーを設計することができる。また、上記ダイマー酸の重量割合の上限は、100重量%であり、せん断接着力、耐反発性、高温保持力等の粘着特性の観点から、凡そ99重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ95重量%以下であり、凡そ90重量%以下であってもよい。
いくつかの態様では、植物由来のジカルボン酸としてセバシン酸を用いてもよい。セバシン酸を用いることによっても、ポリエステル系ポリマーのバイオ率を高めることができる。上記ジカルボン酸としてセバシン酸を用いる態様において、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分としてのジカルボン酸の総量(合計重量)に占めるセバシン酸の重量割合は、凡そ1重量%以上であってもよく、例えば凡そ10重量%以上でもよく、凡そ50重量%以上でもよく、凡そ70重量%以上でもよく、凡そ90重量%以上(例えば95~100重量%)でもよい。また、上記セバシン酸の重量割合は、凡そ95重量%以下であってもよく、粘着特性の観点から、凡そ75重量%以下でもよく、凡そ60重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、ポリエステル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分としてのジカルボン酸がセバシン酸を含む態様、あるいはセバシン酸を含まない態様のいずれの態様でも実施することができる。例えば、上記セバシン酸の重量割合は、凡そ50重量%以下であってもよく、凡そ30重量%以下でもよく、凡そ10重量%以下でもよく、凡そ3重量%以下でもよく、1重量%未満でもよく、ポリエステル系ポリマーの合成に用いられるジカルボン酸は、実質的にセバシン酸を含まなくてもよい。
上記植物由来のジカルボン酸の分子量は、特に限定されず、100以上であることが適当であり、150以上であってもよい。植物由来のジカルボン酸の分子量が大きいほど、ポリエステル系ポリマーのバイオ率を高めやすい。そのような観点から、植物由来のジカルボン酸の分子量は、250以上であってもよく、350以上でもよく、450以上でもよく、500以上(例えば550以上)でもよい。一方、モノマー入手性や合成性等の観点から、植物由来のジカルボン酸の分子量は、1000以下程度であることが適当であり、例えば800以下であってもよく、700以下でもよく、600以下でもよい。上記分子量を有するジカルボン酸の好適例としては、ダイマー酸が挙げられる。
なお、本明細書において、ジカルボン酸の分子量としては、化学式から算出される分子量が採用される。また、ジカルボン酸(例えば上記植物由来のジカルボン酸)を2種以上用いる態様においては、ジカルボン酸(例えば上記植物由来のジカルボン酸)の分子量として、各ジカルボン酸の分子量と重量分率との積の総和(合計値)が採用される。
また、ここに開示されるポリエステル系ポリマーの合成に用いられるジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸が好ましく用いられる。芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸を用いることにより、凝集力が高まり、せん断接着力が向上する傾向がある。芳香族ジカルボン酸の使用は、耐反発性高王、高温保持力向上の点でも有利である。ジカルボン酸として芳香族ジカルボン酸を含ませることにより、架橋剤の使用量を抑制することができるので、接着力を維持または向上させつつ、凝集力を向上させやすい。芳香族ジカルボン酸の好適例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸が挙げられ、テレフタル酸がより好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ここに開示される技術は、バイオマス由来の芳香族ジカルボン酸を用いることによって、ポリエステル系ポリマーのバイオ率を高める態様を包含する。いくつかの態様では、上記ジカルボン酸として、バイオマス由来のテレフタル酸およびその誘導体が用いられ得る。上記バイオマス由来のジカルボン酸を得る方法は特に限定されず、例えば、バイオマス由来のテレフタル酸は、とうもろこしや糖類、木材からイソブタノールを得た後、イソブチレンへ変換し、それを二量化してイソオクテンを得て、Chemische Technik, vol.38, No.3, p116-119;1986に記載の方法、すなわちラジカル開裂、再結合、環化を経てp-キシレンを合成し、これを酸化してテレフタル酸を得る方法が挙げられる(国際公開第2009/079213号公報)。
ジカルボン酸として芳香族ジカルボン酸を使用する態様において、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分におけるジカルボン酸の総量(合計重量)に占める芳香族ジカルボン酸の重量割合は、特に限定されず、凡そ1重量%以上とすることが適当であり、せん断接着力向上等の観点から、好ましくは凡そ3重量%以上、より好ましくは凡そ5重量%以上、さらに好ましくは凡そ7重量%以上である。また、上記芳香族カルボン酸の重量割合の上限は、他のジカルボン酸種等によって異なり得るので特定の範囲に限定されず、例えば凡そ50重量%以下とすることが適当であり、接着力等の粘着特性の観点から、好ましくは凡そ30重量%以下、より好ましくは凡そ20重量%以下、さらに好ましくは凡そ15重量%以下であり、特に好ましくは凡そ10重量%以下である。
また、いくつかの態様において、生産性や効率、コストを考慮して、所望の粘着特性を得る観点から、化石資源に由来するジカルボン酸(例えば脂肪族ジカルボン酸)を用いてもよい。そのようなジカルボン酸(例えば脂肪族ジカルボン酸)の例としては、ジメチルグルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸が挙げられる。なかでも、脂肪族ジカルボン酸として、アジピン酸が好ましく用いられる。上記化石資源に由来するジカルボン酸(例えば脂肪族ジカルボン酸)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここに開示されるポリエステル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分としてのジカルボン酸の分子量は、特に限定されず、100以上であることが適当であり、150以上であってもよい。いくつかの態様において、用いられるジカルボン酸の分子量は、200以上であってもよく、250以上でもよく、350以上でもよく、450以上でもよく、500以上(例えば530以上)でもよい。一方、モノマー入手性や、合成性等の観点から、ジカルボン酸の分子量は、1000以下程度であることが適当であり、例えば800以下であってもよく、700以下でもよく、600以下(例えば550以下)でもよい。ここに開示されるポリエステル系ポリマー(所定値以上のMwを有し、好ましくは所定範囲のTgを有するポリエステル系ポリマー)は、上記範囲の分子量を有するジカルボン酸を用いて好ましく合成される。
(ジオール)
ここに開示されるポリエステル系ポリマーの合成に用いられるジオールとしては、(ポリ)アルキレングリコール類、脂肪族ジオール、ダイマージオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、不飽和ジオールのいずれも使用可能である。上記ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコール類;1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族ジオール;ダイマージオール(オレイン酸、エルカ酸等の脂肪酸から誘導されるダイマージオール等);1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;4,4′-チオジフェノール、4,4′-メチレンジフェノール、4,4′-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオールおよびそれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール;等が挙げられる。これらのジオールの1種または2種以上を適切に選定して用いることで、所望の特性(具体的には、高いせん断接着力、好ましくは、さらに耐反発性、高温保持力等の一つ以上)を発揮し得るポリエステル系ポリマーを得ることができる。
いくつかの態様において、ジオールとしては、(ポリ)アルキレングリコール類、脂肪族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、(ポリ)アルキレングリコール類、脂肪族ジオールがより好ましい。これらのジオール(好ましくはエチレングリコールや脂肪族ジオール)を、上述のジカルボン酸(好ましくはダイマー酸や芳香族ジカルボン酸)と組み合わせて合成することで、粘着特性に優れたポリエステル系ポリマーを好ましく得ることができる。好適例としては、(ポリ)エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが挙げられ、反応性等の観点から、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上述の(ポリ)アルキレングリコール類、脂肪族ジオール、脂環式ジオールは、植物由来であってもよく、化石資源由来であってもよい。なお、本明細書において、上記(ポリ)エチレングリコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールを包含する意味で用いられる。
ポリエステル系ポリマーのモノマー成分におけるジオールの総量(合計重量)に占める(ポリ)アルキレングリコール類、脂肪族ジオールおよび脂環式ジオールの重量割合(好ましくはエチレングリコールおよび脂肪族ジオールの重量割合)は、特に限定されず、凡そ50重量%以上とすることが適当であり、良好な粘着特性を得る観点から、好ましくは凡そ70重量%以上、より好ましくは凡そ80重量%以上、さらに好ましくは凡そ90重量%以上、特に好ましくは凡そ95重量%以上(例えば99~100重量%)である。また、上記(ポリ)アルキレングリコール類、脂肪族ジオールおよび脂環式ジオールの重量割合(好ましくはエチレングリコールおよび脂肪族ジオールの重量割合)は、例えば凡そ95重量%以下であってもよい。
いくつかの好ましい態様では、ジオールとして、(ポリ)エチレングリコールが用いられる。(ポリ)エチレングリコールを適当なジカルボン酸と組み合わせて用いることにより、良好な粘着特性(せん断接着力等)を好ましく得ることができる。上記ジオールとして上記(ポリ)エチレングリコールを用いる態様において、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分としてのジオールの総量(合計重量)に占める上記(ポリ)エチレングリコールの重量割合は、凡そ1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ10重量%以上、より好ましくは凡そ50重量%以上、さらに好ましくは凡そ80重量%以上、特に好ましくは凡そ90重量%以上(例えば95~100重量%)である。(ポリ)エチレングリコールの使用量を所定値以上とすることにより、(ポリ)エチレングリコールの特性に基づき、ポリマーを設計することができる。また例えば、(ポリ)エチレングリコールの使用により、ヘイズの低い粘着剤層が得られやすい。また、上記(ポリ)エチレングリコールの重量割合は、凡そ95重量%以下であってもよく、凡そ70重量%以下でもよく、凡そ50重量%以下でもよい。上述の(ポリ)エチレングリコールは、植物由来であってもよく、化石資源由来であってもよい。(ポリ)エチレングリコールは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、ジオールとしては、バイオ率が50%以上であるポリエステル系ポリマーを得る観点から、植物由来のジオールを用いることが好ましい。そのようなジオールの例としては、バイオマスエタノールを原料として得られるバイオマスジオール(例えばバイオマス(ポリ)エチレングリコール等)、植物(例えばヒマシ油)から誘導される脂肪酸エステル、オレイン酸やエルカ酸等の脂肪酸から誘導されるダイマージオール、グルコースを用いて生成されるブタンジオール等が挙げられる。植物由来のジオールは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、石油資源系材料への依存度を低減する観点から、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分としてのジオールの総量(合計重量)に占める植物由来のジオールの重量割合は、凡そ1重量%以上であってもよく、凡そ10重量%以上でもよく、凡そ50重量%以上でもよく、凡そ80重量%以上でもよく、凡そ90重量%以上(例えば95~100重量%)でもよい。また、上記植物由来のジオールの重量割合は、凡そ95重量%以下であってもよく、凡そ70重量%以下でもよく、凡そ50重量%以下でもよい。このように、植物由来のジオールの使用量が相対的に低く、石油資源由来のジオールを用いる態様においても、例えば、石油資源由来のジオールとして、相対的に分子量の低いものを使用することにより、ポリエステル系ポリマーは所定値以上のバイオ率を有するものとなり得る。そのような観点から、上記植物由来のジオールの重量割合は、凡そ30重量%以下であってもよく、凡そ10重量%以下でもよく、凡そ3重量%以下(例えば1重量%未満)でもよい。ここに開示される技術は、ポリエステル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分としてのジオールが、植物由来のジオールを実質的に含まない態様でも好ましく実施することができる。
いくつかの態様では、植物由来のジオールとしてダイマージオールが用いられる。ダイマージオールを用いることによっても、ポリエステル系ポリマーのバイオ率を高めることができる。ダイマージオールは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記ジオールとしてダイマージオールを用いる態様において、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分としてのジオールの総量(合計重量)に占めるダイマージオールの重量割合は、凡そ1重量%以上であってもよく、例えば凡そ10重量%以上でもよく、凡そ50重量%以上でもよく、凡そ70重量%以上でもよく、凡そ80重量%以上でもよく、凡そ90重量%以上(例えば95~100重量%)でもよい。また、上記ダイマージオールの重量割合は、凡そ95重量%以下であってもよく、凡そ85重量%以下でもよく、凡そ60重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、ポリエステル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分としてのジオールがダイマージオールを含む態様、あるいはダイマージオールを含まない態様のいずれの態様でも実施することができる。例えば、上記ダイマージオールの重量割合は、凡そ50重量%以下(例えば50重量%未満)であってもよく、凡そ30重量%以下でもよく、凡そ10重量%以下でもよく、凡そ3重量%以下でもよく、1重量%未満でもよく、ポリエステル系ポリマーの合成に用いられるジオールは、実質的にダイマージオールを含まなくてもよい。
上記ジオールの分子量は特に限定されない。ジオールの分子量は、モノマー入手性や合成性等の観点から、例えば500以下であることが適当であり、300以下であってもよく、150以下でもよく、100以下でもよく、80以下でもよい。また、ジオールの分子量は、50以上程度であることが適当であり、例えば100超であってもよい。上記分子量の範囲のジオールを用いる態様で、高いせん断接着力を発揮し得るポリエステル系ポリマーが好ましく合成され得る。また、例えば、上記ジオールが化石資源由来である態様において、化石資源由来のジオールの分子量は、500以下であることが適当であり、300以下であってもよい。化石資源由来のジオールの分子量が小さいほど、ポリエステル系ポリマーは、高いバイオ率を有しやすい。そのような観点からは、化石資源由来のジオールの分子量は、150以下であってもよく、100以下でもよく、80以下でもよい。また、化石資源由来のジオールの分子量は、50以上程度であることが適当であり、例えば100超であってもよい。上記分子量を有するジオールの好適例としては、エチレングリコールが挙げられる。
なお、本明細書において、ジオールの分子量としては、化学式から算出される分子量を採用することができる。また、ジオール(例えば上記化石資源由来のジオール)を2種以上用いる態様においては、ジオール(例えば上記化石資源由来のジオール)の分子量として、各ジオールの分子量と重量分率との積の総和(合計値)が採用される。
ここに開示されるポリエステル系ポリマーは、上述のジカルボン酸とジオールから実質的に構成され得るが、所望の官能基の導入や分子量の調節等を目的として、ここに開示される技術による効果が損なわれない範囲で、ジカルボン酸およびジオール以外の他の共重合成分が共重合されていてもよい。そのような他の共重合成分としては、カルボキシ基を3つまたは4つ以上含む多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸、アダマンタントリカルボン酸、トリメシン酸、トリマー酸等の三価以上の多価カルボン酸)、一分子中に水酸基を3つまたは4つ以上含むポリオール(ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,3,6-ヘキサントリオール、アダマンタントリオール等)、モノカルボン酸、モノアルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられる。上記他の共重合成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら他の共重合成分は、植物由来であってもよく、植物由来でなくてもよい。上記他の共重合成分の割合は、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分中、例えば10重量%未満とすることが適当であり、3重量%未満、典型的には1重量%未満(さらには0.1重量%未満)程度であってもよい。ここに開示される技術は、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分が上記他の共重合成分を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
ここに開示されるポリエステル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分において、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸とジオールとの合計割合は、凡そ90重量%以上であることが適当であり、好ましくは凡そ95重量%以上、より好ましくは凡そ98重量%以上、さらに好ましくは凡そ99重量%以上(例えば99~100重量%)である。ここに開示される技術は、実質的にジカルボン酸とジオールとから合成されるポリエステル系ポリマーを用いる態様で好ましく実施される。
いくつかの好ましい態様において、ポリエステル系ポリマーのモノマー成分は、ジカルボン酸としてのダイマー酸と、ジオールとしての(ポリ)エチレングリコールとを併用する。ダイマー酸と(ポリ)エチレングリコールとを組み合わせて使用することにより、所定値以上のMwを有し、せん断接着力を発揮し得るポリエステル系ポリマーを好ましく合成することができる。ポリエステル系ポリマーのモノマー成分総量に占めるダイマー酸と(ポリ)エチレングリコールとの合計割合は、凡そ50重量%以上であることが適当であり、好ましくは凡そ60重量%以上、より好ましくは凡そ70重量%以上、さらに好ましくは凡そ80重量%以上であり、凡そ90重量%以上(例えば99~100重量%)であってもよい。
ここに開示されるポリエステル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、ポリエステル系ポリマーの合成手法として知られている重合方法を適宜採用することができる。ポリエステル系ポリマーの合成に用いるモノマー原料は、例えば、ジオール1当量あたり、ジカルボン酸0.95~1.05当量(好ましくは0.98~1.02当量)となるようモノマーを配合したものを用いることができる。ジカルボン酸とジオールとを上記の割合で配合することにより、高分子量のポリエステル系ポリマーが得られやすい。また、上記ポリマーは、適度に架橋(例えばイソシアネート系架橋剤等の架橋剤との反応に基づく架橋)して凝集力を高めるものとなり得る。
ここに開示される技術において、ポリエステル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分としてのジカルボン酸とジオールとの重量比率は、特に限定されず、目的とするポリマー物性や合成性等を考慮して、適当な重量比率が設定され得る。いくつかの態様では、上記モノマー成分として用いられるジカルボン酸の重量A1とジオールの重量A2との比率(重量比率A1/A2)は、10/90以上であってもよく、30/70以上でもよい。いくつかの好ましい態様では、上記重量比率(A1/A2)は、凡そ50/50以上であり、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上であり、80/20以上でもよく、90/10以上でもよい。例えば、上記のようにジカルボン酸の重量比率を高めることにより、ジカルボン酸に基づく特性を好適に発現させることができる。また、植物由来のジカルボン酸を用いる態様においては、得られるポリエステル系ポリマーのバイオ率を効果的に高めることができる。また、上記重量比率(A1/A2)は、例えば95/5以下であってもよく、85/15以下でもよい。いくつかの態様においては、ジオールに基づく特性を好適に発現する観点から、上記重量比率(A1/A2)は、75/25以下であってもよく、50/50以下(例えば30/70以下)でもよい。植物由来のジオールを用いる態様では、上記重量比率とすることで、ポリエステル系ポリマーは、高いバイオ率を有することができる。なお、ジカルボン酸、ジオールともに植物由来の材料を用いる態様においては、ジカルボン酸とジオールとの重量比率にかかわらず、所定値以上のバイオ率を有するポリエステル系ポリマーを得ることができる。
ここに開示される技術におけるポリエステル系ポリマーは、一般的なポリエステルと同様、ジカルボン酸とジオールとの重縮合により得ることができる。より詳しくは、ジカルボン酸の有するカルボキシ基とジオールの有する水酸基との反応を、典型的には上記反応により生成する水(生成水)等を反応系外に除去しつつ進行させることにより、ポリエステル系ポリマーを合成することができる。上記生成水を反応系外に除去する方法としては、反応系内に不活性ガスを吹き込んで該不活性ガスとともに生成水を反応系外に取り出す方法、トルエンやキシレン等の反応水排出溶剤として共沸脱水させる方法、減圧下で反応系から生成水を留去する方法(減圧法)等を用いることができる。
上記反応(エステル化および重縮合を包含する。)を行う際の反応温度や反応時間、減圧法を採用する場合における減圧度(反応系内の圧力)は、目的とする特性(例えば分子量)のポリエステル系ポリマーが効率よく得られるように、適宜設定することができる。特に限定するものではないが、通常は、上記反応温度は凡そ150℃以上(例えば180℃~260℃)とすることが適当である。反応温度を上記範囲内とすることにより、良好な反応速度が得られ、生産性が向上し、また生成したポリエステル系ポリマーの劣化を防止または抑制しやすい。反応時間としては、特に限定されず、3~48時間(例えば10~30時間)程度であり得る。減圧法を採用する場合、特に限定するものではないが、通常は上記減圧度を10kPa以下(典型的には10kPa~0.1kPa)とすることが適当であり、例えば4kPa~0.1kPaとすることができる。反応系内の圧力を上記範囲内とすることにより、反応により生成した水を系外に効率よく留去することができ、良好な反応速度を維持しやすい。また、反応温度が比較的高い場合には、反応系内の圧力を上記下限値以上とすることにより、原料であるジカルボン酸やジオールの系外留去を防止しやすい。反応系内の圧力の安定維持の観点から、通常は、反応系内の圧力を0.1kPa以上とすることが適当である。
上記反応には、一般的なポリエステルの合成と同様、公知ないし慣用の触媒がエステル化、縮合のために適当量用いられ得る。かかる触媒として、例えば、チタン系、ゲルマニウム系、アンチモン系、スズ系、亜鉛系等の種々の金属化合物;p-トルエンスルホン酸や硫酸等の強酸;等が挙げられる。触媒の使用量は、反応速度等に応じて適切に設定され得るので、ここでは詳細な説明は省略する。
ジカルボン酸とジオールとの反応によってポリエステル系ポリマーを合成する上記過程において、溶媒は用いてもよく、用いなくてもよい。上記合成は、有機溶媒を実質的に使用することなく(例えば、上記反応の際の反応溶媒として意図的に有機溶媒を使用する態様を排除する意味である。)実施することができる。このように有機溶媒を実質的に使用することなくポリエステル系ポリマーを合成すること、および、かかるポリエステル系ポリマーを用いてポリエステル系粘着剤を調製することは、その製造過程において有機溶媒の使用を控えたいとの要請に適うものであり好ましい。
なお、上記反応の際、合成されるポリエステル系ポリマーの分子量と反応系の粘度との間には一般に相関があるので、このことを利用してポリエステル系ポリマーの分子量を管理することができる。例えば、反応中に攪拌機のトルクや反応系の粘度を連続的あるいは間欠的に測定(監視)することにより、目標とする分子量を満たすポリエステル系ポリマーを精度よく合成することが可能である。
(粘着付与樹脂)
ここに開示される粘着剤層(および粘着剤組成物)は粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂としては、分子内に芳香環を有する粘着付与樹脂(芳香環含有粘着付与樹脂)が用いられる。芳香環を含む粘着付与樹脂を、芳香環を含むポリエステル系ポリマーとともに使用することにより、せん断接着力を向上することができる。また、芳香環を含む粘着付与樹脂の使用により、良好な耐反発性が得られやすく、高温保持力も得られやすい。また、上記ポリエステル系ポリマーと粘着付与樹脂とがともに芳香環を有することで、相溶性に優れ、所望の粘着特性を良好に発現させることができる。芳香環を含む粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香環を有する粘着付与樹脂の好適例としては、フェノール系粘着付与樹脂が挙げられる。フェノール系粘着付与樹脂は、他の粘着付与樹脂(例えばロジン系粘着付与樹脂)に比べて、ポリエステル系ポリマーとの相溶性に優れる傾向がある。フェノール系粘着付与樹脂の例には、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂およびロジンフェノール樹脂が含まれる。フェノール系粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、テルペンフェノール樹脂とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペン類とフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)と、テルペン類またはその単独重合体もしくは共重合体をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。このようなテルペンフェノール樹脂を構成するテルペン類の好適例としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペン類が挙げられる。水素添加テルペンフェノール樹脂とは、このようなテルペンフェノール樹脂を水素化した構造を有する水素添加テルペンフェノール樹脂をいう。水添テルペンフェノール樹脂と称されることもある。
アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールとホルムアルデヒドから得られる樹脂(油性フェノール樹脂)である。アルキルフェノール樹脂の例としては、ノボラックタイプおよびレゾールタイプのものが挙げられる。
ロジンフェノール樹脂は、典型的には、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体(ロジンエステル類、不飽和脂肪酸変性ロジン類および不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類を包含する。)のフェノール変性物である。ロジンフェノール樹脂の例には、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合する方法等により得られるロジンフェノール樹脂が含まれる。
上記フェノール系粘着付与樹脂のうち、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂およびアルキルフェノール樹脂が好ましく、テルペンフェノール樹脂および水素添加テルペンフェノール樹脂がより好ましく、なかでもテルペンフェノール樹脂が好ましい。
ここに開示される技術は、例えば、粘着付与樹脂の総量の凡そ25重量%以上(より好ましくは凡そ30重量%以上)がフェノール系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)である態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂の総量の凡そ50重量%以上がフェノール系粘着付与樹脂であってもよく、凡そ80重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)がフェノール系粘着付与樹脂であってもよい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95重量%以上100重量%以下、さらには凡そ99重量%以上100重量%以下)がフェノール系粘着付与樹脂であってもよい。
分子内に芳香環を有する粘着付与樹脂としては、芳香環比率が高い粘着付与樹脂が好ましく使用される。芳香環としてフェノール構造を有する粘着付与樹脂においては、フェノール比率の高い粘着付与樹脂が好ましく用いられる。芳香環比率(例えばフェノール比率)の高い粘着付与樹脂を使用することにより、より優れたせん断接着力が得られやすい。また、より優れた耐反発性、高温保持力が得られやすい。粘着付与樹脂の芳香環比率(例えばフェノール比率)は、例えば10重量%以上であり、耐反発性等の観点から、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは25重量%以上であり、特に好ましくは30重量%以上である。粘着付与樹脂の芳香環比率(例えばフェノール比率)の上限は、例えば65重量%以下であり、接着力等の観点から、50重量%以下であってもよく、40重量%以下でもよく、35重量%以下でもよい。
本明細書において、粘着付与樹脂の芳香環比率(例えばフェノール比率)とは、核磁気共鳴(NMR)装置によって測定した
1H-NMRスペクトルにより算出される芳香環比率(例えばフェノール比率)をいう。例えば、粘着付与樹脂が以下に示す化学構造を有する場合、
1H-NMRスペクトルにおいて、化学シフトが7.5~6.3ppmの間にあるピークはフェノール骨格由来であり、5.6~0.1ppmの間にあるピークはピネン骨格由来であると考えられる。
前者ピークの積分値合計をA、後者ピークの積分値合計をBとした場合、それらを各骨格の繰返し単位中に含まれるH数で割ることで、粘着付与樹脂中のフェノール骨格とピネン骨格のモル比率を算出することができる。
モル比率[フェノール骨格:ピネン骨格]=[A/3:B/16]
次に算出したモル比率に、フェノール(分子量94.1)およびピネン(分子量136.2)の分子量をそれぞれ掛けることで、粘着付与樹脂中のフェノール骨格とピネン骨格の重量比率を算出することができる。
重量比率[フェノール骨格:ピネン骨格]=[(A/3)×94.1:(B/16)×136.2]
そして、求められたフェノール骨格の重量比率をa、ピネン骨格の重量比率をbとした場合、以下の式により、上記粘着付与樹脂の芳香環比率(フェノール比率)を算出することができる。
芳香環比率(%)=100×(a/(a+b))
NMR装置としては、例えば機種名「AVANCE III-400」(Bruker Biospin製)を用いることができる。
1H-NMRスペクトル測定は、より具体的には、以下の条件で行うことができる。後述の実施例においても同様の方法で測定される。
[
1H-NMR測定]
観測周波数:400MHz
測定温度:23℃
測定溶媒:1,1,2,2-テトラクロルエタン-d
2(TCE-d
2)
測定濃度:33mg/mL
芳香環含有粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。凝集力向上の観点から、いくつかの態様において、芳香環含有粘着付与樹脂の軟化点(軟化温度)は、凡そ50℃以上であることが適当であり、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上、例えば凡そ115℃以上)である芳香環含有粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。いくつかの好ましい態様において、用いられる芳香環含有粘着付与樹脂の軟化点は、凡そ120℃以上(例えば135℃以上または145℃以上)であってもよい。ここに開示される技術は、上記軟化点を有する芳香環含有粘着付与樹脂が、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体のうち50重量%超(より好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)である態様で好ましく実施され得る。より好ましい態様において、軟化点が凡そ120℃以上(より好ましくは135℃以上、例えば145℃以上)のテルペンフェノール樹脂を用いることができる。芳香環含有粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されない。接着力等の観点から、いくつかの態様において、軟化点が凡そ200℃以下(より好ましくは凡そ180℃以下、さらに好ましくは160℃未満、例えば155℃以下または150℃以下)の芳香環含有粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
芳香環含有粘着付与樹脂の含有量は、例えば、ポリエステル系ポリマー100重量部に対して0重量部超とすることができ、凡そ3重量部以上(例えば凡そ5重量部以上)としてもよい。いくつかの好ましい態様において、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環含有粘着付与樹脂の含有量は凡そ10重量部以上であり、より好ましくは凡そ20重量部以上、さらに好ましくは凡そ30重量部以上であり、特に好ましくは凡そ35重量部以上である。芳香環含有粘着付与樹脂の使用量が多くなるほど、優れたせん断接着力が得られやすい傾向がある。芳香環含有粘着付与樹脂の含有量の上限は特に限定されず、ポリエステル系ポリマーとの相溶性や接着性の観点から、いくつかの態様において、通常、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環含有粘着付与樹脂の含有量は、凡そ120重量部以下とすることが適当であり、80重量部未満とすることが好ましく、凡そ70重量部以下(例えば凡そ50重量部以下)とすることがより好ましい。例えば、Tgが0℃以下であるポリエステル系ポリマーに対して、上記範囲の使用量で芳香環含有粘着付与樹脂を用いることが効果的である。
ここに開示される粘着剤層は、発明の効果を損なわない範囲で、芳香環含有粘着付与樹脂に加えて、任意に、芳香環を含まない粘着付与樹脂(芳香環非含有粘着付与樹脂)を含んでもよい。かかる芳香環非含有粘着付与樹脂としては、テルペン系粘着付与樹脂、変性テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の、公知の各種粘着付与樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。
いくつかの態様において、上記粘着付与樹脂としては、粘着剤層全体のバイオ率向上の観点から、植物に由来する粘着付与樹脂(植物性粘着付与樹脂)が好ましく用いられる。植物性粘着付与樹脂は、樹脂の少なくとも一部が植物に由来する成分から構成されており、樹脂のすべてが植物由来であってもよく、樹脂の一部が植物由来であり、他の一部が化石資源由来であってもよい。植物性粘着付与樹脂の例としては、上述のロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂等が挙げられる。植物性粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂の総量に占める植物性粘着付与樹脂の割合は、30重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には80重量%以上)であってもよく、粘着付与樹脂の総量に占める植物性粘着付与樹脂の割合は、90重量%以上(例えば95重量%以上、典型的には99~100重量%)でもよい。ここに開示される技術は、植物性粘着付与樹脂以外の粘着付与樹脂を実質的に含まない態様で実施され得る。
粘着付与樹脂の総量(総含有量)は、例えば、ポリエステル系ポリマー100重量部に対して0重量部超とすることができ、凡そ3重量部以上(例えば凡そ5重量部以上)としてもよい。いくつかの好ましい態様において、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の総量は凡そ10重量部以上であり、より好ましくは凡そ20重量部以上、さらに好ましくは凡そ30重量部以上であり、特に好ましくは凡そ35重量部以上である。粘着付与樹脂の使用量が多くなるほど、優れた接着力が得られやすい傾向がある。粘着付与樹脂の総量の上限は特に限定されず、ポリエステル系ポリマーとの相溶性や接着性の観点から、いくつかの態様において、通常、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の総量は、凡そ120重量部以下とすることが適当であり、80重量部未満とすることが好ましく、凡そ70重量部以下(例えば凡そ50重量部以下)とすることがより好ましい。例えば、Tgが0℃以下であるポリエステル系ポリマーに対して、上記範囲の使用量で粘着付与樹脂を用いることが効果的である。
(架橋剤)
粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は、架橋剤として、芳香環を有しない架橋剤(芳香環非含有架橋剤)を含む。芳香環を含むポリエステル系ポリマーおよび粘着付与樹脂を含む組成に芳香環非含有架橋剤を使用することにより、良好な架橋構造(架橋反応)を得つつ、ポリエステル系ポリマーおよび粘着付与樹脂に含まれる芳香環の作用が好適に発揮され得る。ここに開示される技術における粘着剤層は、上記架橋剤を、架橋反応後の形態、架橋反応前の形態、部分的に架橋反応した形態、これらの中間的または複合的な形態等で含有し得る。上記架橋剤は、通常、専ら架橋反応後の形態で粘着剤層に含まれている。なお、ポリエステル系ポリマーの架橋に用いられる架橋剤は、鎖延長剤としても機能するものであり得る。
架橋剤の種類は、芳香環を含まない構造を有するかぎり特に制限されず、従来公知の架橋剤から、芳香環を含まないものを適宜選択して用いることができる。そのような芳香環非含有架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。芳香環非含有架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、イソシアネート系架橋剤が好ましい。芳香環を有しないイソシアネート系架橋剤を用いることにより、ポリエステル系ポリマーと粘着付与樹脂とを含有する粘着剤組成物において、架橋阻害少なく効果的に架橋度を高めることができる。
イソシアネート系架橋剤としては、1分子当たり平均して2個または3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート系化合物(イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が例示される。かかる多官能イソシアネート系化合物は、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(例えば、2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネート系化合物が挙げられる。上記イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香環を含まない多官能イソシアネート系化合物の例として、脂肪族ポリイソシアネート系化合物、脂環族ポリイソシアネート系化合物等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート系化合物の具体例としては、1,2-エチレンジイソシアネート;1,2-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート系化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2-シクロペンチルジイソシアネート、1,3-シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
上記芳香環非含有イソシアネートの好適例としては、脂肪族イソシアネート系化合物が挙げられる。ここに開示される技術は、ポリエステル系ポリマーおよび粘着付与樹脂がともに芳香環を有する構成に、架橋剤として、脂肪族イソシアネート系化合物を用いる態様で特に好ましく実施される。
いくつかの態様において、官能基数の異なる2種以上の架橋剤(好適にはイソシアネート系架橋剤)を使用することが好ましい。官能基数の異なる架橋剤を2種以上用いることにより、複数の特性(例えばせん断接着力や耐反発性等)をバランスよく両立しやすい。なお、上記官能基とは架橋反応性基のことをいい、例えば、上述の多官能イソシアネート系化合物においては、イソシアネート基を指す。いくつかの好ましい態様において、架橋剤として、1種または2種以上の2官能架橋剤と、1種または2種以上の3官能以上の架橋剤(例えば3官能架橋剤)とが併用される。2官能タイプと3官能以上タイプとを併用することにより、優れた耐反発性を有する粘着剤が得られやすく、せん断接着力と耐反発性とを両立しやすい。2官能架橋剤は主として鎖延長剤として機能し、粘着剤組成物の硬化時にポリエステル系ポリマーを長鎖化して耐反発性向上に寄与する一方、3官能以上の架橋剤の使用により、粘着剤の凝集力が高まり、せん断接着力が得られるものと考えられる。なお、ここに開示される技術は、上記の解釈に限定されない。2官能架橋剤、3官能以上の架橋剤としては、上記各種の架橋剤のなかから、2官能のもの、3官能以上のものを特に制限なく利用できる。いくつかの好ましい態様において、2官能架橋剤、3官能以上の架橋剤として、芳香環を含まないイソシアネート系化合物が好ましく用いられる。
架橋剤として2官能架橋剤を使用する態様において、2官能架橋剤の使用量は特に限定されず、例えば、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する2官能架橋剤の使用量は、2官能架橋剤の使用効果を得る観点から、凡そ0.01重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.1重量部以上、より好ましくは凡そ0.5重量部以上、さらに好ましくは凡そ0.8重量部以上であり、凡そ1.5重量部以上であってもよく、凡そ3重量部以上でもよい。また、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する2官能架橋剤の使用量は、通常、凡そ10重量部以下が適当であり、凡そ7重量部以下が好ましく、4重量部以下であってもよい。
架橋剤として3官能以上の架橋剤を使用する態様において、3官能以上の架橋剤の使用量は特に限定されず、例えば、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する3官能以上の架橋剤の使用量は、3官能以上の架橋剤の使用効果を得る観点から、凡そ0.01重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.1重量部以上、より好ましくは凡そ0.5重量部以上、さらに好ましくは凡そ1重量部以上であり、特に好ましくは凡そ2重量部以上(例えば凡そ2.5重量部以上)である。3官能以上の架橋剤を適当量使用することにより、凝集力が高まり、優れた特性(せん断接着力等)が得られやすい。また、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する3官能以上の架橋剤の使用量は、通常、凡そ8重量部以下が適当であり、凡そ5重量部以下が好ましく、4重量部以下であってもよい。
2官能架橋剤と3官能以上の架橋剤とを併用する態様において、2官能架橋剤と3官能以上の架橋剤との使用割合は、目的とする複数の粘着特性(せん断接着力、接着力、高温保持力、耐反発性等)がバランスよく実現されるよう適切に設定され、特定の範囲に限定されない。2官能架橋剤の量CAに対する3官能以上の架橋剤の量CBの比(CB/CA)は、例えば0.1以上であり、凝集力向上の観点から、0.3以上が適当であり、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上であり、1.5以上であってもよく、2以上でもよい。また、上記比(CB/CA)は、例えば10以下であり、耐反発性向上の観点から、7以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下であってもよく、2.5以下でもよく、1.5以下でもよい。
芳香環非含有架橋剤の使用量は特に限定されず、例えば、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環非含有架橋剤の使用量は、凡そ0.005重量部以上(例えば0.01重量部以上、典型的には0.1重量部以上)程度とすることができる。凝集力を向上する観点から、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環非含有架橋剤の使用量は、通常、凡そ0.5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量部以上、より好ましくは凡そ2重量部以上(例えば2重量部超)、さらに好ましくは2.5重量部以上である。また、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環非含有架橋剤の使用量は、通常、凡そ12重量部以下であり、例えば凡そ10重量部以下であり、凡そ8重量部以下とすることが適当であり、凡そ5重量部以下とすることが好ましい。ここに開示される技術によると、上記のように制限された架橋剤使用量で、高いせん断接着力、耐反発性等を好ましく発揮する凝集力を得ることができる。ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環非含有架橋剤の使用量は、より好ましくは4重量部以下、さらに好ましくは凡そ3.5重量部以下である。
芳香環非含有イソシアネート系架橋剤を使用する態様において、その使用量は特に限定されない。芳香環非含有イソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば、ポリエステル系ポリマー100重量部に対して、凡そ0.5重量部以上凡そ10重量部以下とすることができる。凝集力を向上する観点から、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環非含有イソシアネート系架橋剤の使用量は、通常、凡そ1重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ2重量部以上(例えば2重量部超)、より好ましくは凡そ2.5重量部以上、さらに好ましくは2.8重量部以上であり、凡そ3.5重量部以上であってもよく、凡そ4.0重量部以上でもよく、4.5重量部以上でもよい。また、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環非含有イソシアネート系架橋剤の使用量は、通常、凡そ8重量部以下とすることが適当であり、凡そ5重量部以下とすることが好ましい。ここに開示される技術によると、上記のように制限された芳香環非含有イソシアネート系架橋剤の使用量で、せん断接着力、耐反発性等を好ましく発揮する凝集力を得ることができる。ポリエステル系ポリマー100重量部に対する芳香環非含有イソシアネート系架橋剤の使用量は、より好ましくは4.5重量部以下、さらに好ましくは凡そ4.2重量部以下、特に好ましくは3.8重量部以下(例えば3.5重量部以下)であり、3.2重量部以下程度であってもよい。
ここに開示される粘着剤組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、芳香環非含有架橋剤に加えて、任意に、芳香環を含む架橋剤(芳香環含有架橋剤)を含んでもよい。かかる芳香環含有架橋剤としては、特に制限されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等のうち芳香環を有するもの(例えば、芳香族ポリイソシアネート系化合物等)が用いられ得る。芳香環含有架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤の総使用量は特に限定されず、例えば、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する架橋剤の総使用量は、凡そ0.005重量部以上(例えば0.01重量部以上、典型的には0.1重量部以上)程度とすることができる。凝集力を向上する観点から、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する架橋剤の総使用量は、通常、凡そ0.5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ1重量部以上、より好ましくは凡そ2重量部以上(例えば2重量部超)、さらに好ましくは2.5重量部以上である。また、ポリエステル系ポリマー100重量部に対する架橋剤の総使用量は、通常、凡そ12重量部以下であり、例えば凡そ10重量部以下であり、凡そ8重量部以下とすることが適当であり、凡そ5重量部以下とすることが好ましい。ここに開示される技術によると、上記のように制限された架橋剤使用量で、良好な凝集力を得ることができる。ポリエステル系ポリマー100重量部に対する架橋剤の総使用量は、より好ましくは4重量部以下、さらに好ましくは凡そ3.5重量部以下である。
(架橋触媒)
ここに開示される技術においては、架橋反応をより効果的に進行させるために、上記架橋剤に加えて、架橋触媒を用いることが好ましい。架橋触媒としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、オクチル酸ジルコニウム化合物等のジルコニウム含有化合物(ジルコニウム系触媒);ジラウリン酸ジオクチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、ジブチルスズジアセチルアセトナート、テトラ-n-ブチルスズ、トリメチルスズヒドロキシド、ブチルスズオキシド等のスズ(Sn)含有化合物(スズ系触媒);アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等のアルミニウム含有化合物(アルミニウム系触媒);ナーセム第二鉄等の鉄含有化合物(鉄系触媒);テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタン含有化合物(チタン系触媒);等の有機金属触媒が挙げられる。架橋触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの好ましい態様において、環境への影響、安全性の観点から、上記架橋触媒はスズ含有化合物を含まない。架橋触媒として、非スズ系化合物を用いることにより、粘着剤におけるスズ系化合物(典型的には有機スズ)の使用量を低減することができる。ここに開示される粘着剤組成物によると、一般に反応速度に優れる傾向があるスズ系架橋触媒を用いることなく、良好な架橋構造を生産性よく形成することができる。また、いくつかの態様において、架橋触媒は鉄系触媒を含まない。例えば、粘着剤に透明性や光学特性が要求される使用態様においては、粘着剤が着色される可能性がある鉄系化合物の使用を避けることが望ましい。
架橋触媒の使用量は特に制限されない。架橋触媒の使用量は、ポリエステル系ポリマー100重量部に対して、例えば凡そ0.001重量部以上とすることができ、凡そ0.01重量部以上が適当であり、凡そ0.05重量以上(例えば0.10重量部以上)であってもよい。また、架橋触媒の使用量は、ポリエステル系ポリマー100重量部に対して、例えば凡そ3重量部以下とすることができ、凡そ1重量部以下が適当であり、凡そ0.3重量以下であってもよい。
(耐加水分解剤)
また、ここに開示される粘着剤組成物は、耐加水分解剤(加水分解防止剤ともいう。)を含んでもよい。耐加水分解剤を添加することにより、粘着剤中での加水分解反応が抑制され、良好な耐久性が得られやすい。耐加水分解剤としては、特に限定されず、公知ないし慣用の耐加水分解剤を用いることができる。例えば、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。なかでも、カルボジイミド基含有化合物が好ましい。耐加水分解剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
カルボジイミド基含有化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t-ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-t-ブチルカルボジイミド、ジ-β-ナフチルカルボジイミド、一官能性環状構造カルボジイミド等が挙げられる。ここで、一官能性環状構造カルボジイミドとは、分子構造内にカルボジイミド基を1個有し、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせにより構成される結合基により、カルボジイミド基の第1窒素原子と第2窒素原子とが結合された化合物をいう。なお、上記結合基は、ヘテロ原子、置換基を含んでもよい。カルボジイミド基含有化合物の好適例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、一官能性環状構造カルボジイミドが挙げられる。
耐加水分解剤(好適には、カルボジイミド基含有化合物)の使用量は、特に限定されず、耐加水分解剤含有の効果が好ましく発現するよう、ポリエステル系ポリマー100重量部に対して、凡そ0.05重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.1重量部以上であり、例えば凡そ0.3重量部以上であってもよい。上記耐加水分解剤の使用量の上限は、例えばポリエステル系ポリマー100重量部に対して凡そ5重量部以下であることが適当であり、好ましくは凡そ3重量部以下であり、例えば1重量部以下であってもよい。
(その他の添加剤)
粘着剤組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じてレベリング剤、充填剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤が含まれていてもよい。上記各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
(粘着剤組成物)
ここに開示される粘着剤層(粘着剤からなる層)は、上述したポリエステル系ポリマー、粘着付与樹脂および架橋剤を含む粘着剤組成物から形成される。粘着剤組成物としては、粘着特性等の観点から、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の溶剤型粘着剤組成物が好適である。有機溶媒としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒を用いることができる。
上記より、本明細書によると、ここに開示される粘着剤層に含まれ得る成分の1種または2種以上を含む粘着剤組成物が提供される。具体的には、粘着剤組成物は、構成炭素の50%以上がバイオマス由来炭素である芳香環含有ポリエステル系ポリマーを含み、芳香環含有粘着付与樹脂および芳香環非含有架橋剤をさらに含むものであり得る。かかる粘着剤組成物によると、化石資源系材料への依存度を低減することができ、かつ、高いせん断接着力を発揮し得る粘着剤を形成することができる。上記粘着剤組成物は、さらに架橋触媒、耐加水分解剤等の成分を含み得る。上記粘着剤組成物に含まれ得る成分の詳細については、粘着剤層において説明したとおりであるので、重複する説明は省略する。
(粘着剤層の形成)
粘着剤組成物からの粘着剤層の形成は、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、基材レスの両面粘着シートの場合は、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与した後、該粘着剤組成物を硬化させることにより該表面上に粘着剤層を形成することで粘着シートが形成され得る。また、基材付きの粘着シートの場合は、該基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して硬化させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を好ましく採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して硬化させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。また、上記粘着剤組成物の硬化は、該粘着剤組成物に乾燥、架橋、重合、冷却等の硬化処理を施すことにより行うことができる。2種以上の硬化処理を同時にまたは段階的に行ってもよい。なお、ここに開示される粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
粘着剤組成物の乾燥は、常温または加熱下で行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば凡そ40~150℃程度とすることができ、通常は凡そ40~130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行うことが好ましい。エージングの条件は特に限定されず、例えば凡そ70℃以下(典型的には凡そ40~70℃)、1日以上(例えば3日以上)の条件とすることができる。
(粘着剤層厚さ)
ここに開示される粘着シートにおいて、粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。粘着剤層の厚さは、例えば2μm~500μm程度とすることができる。被着体に対する接着性の観点から、粘着剤層の厚さは、通常、3μm以上であることが適当であり、5μm以上であることが好ましい。より高いせん断接着力を発揮する粘着シートを実現しやすくする観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば8μm以上であってよく、12μm以上が好ましく、15μm以上でもよく、18μm以上でもよい。また、粘着シートの薄型化の観点から、粘着剤層の厚さは、例えば200μm以下であってよく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよく、70μm以下でもよく、50μm以下でもよく、30μm以下でもよい。より薄型化を重視する態様において、粘着剤層の厚さは、例えば25μm以下であってよく、22μm以下でもよい。ここに開示される粘着シートが基材の両面に粘着剤層を備える両面粘着シートの場合、各粘着剤層の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
(粘着剤層のバイオ率)
ここに開示される技術は、バイオ率が50%以上であるポリエステル系ポリマーを含む粘着剤を用いて実施されることから、粘着剤層(および粘着剤組成物。特に断りがないかぎり以下同じ。)は、所定値以上のバイオ率を有する。特に限定されるものではないが、粘着剤層のバイオ率は凡そ30%以上(例えば30%超)であってもよく、凡そ40%以上であることが適当であり、50%以上であることが好ましい。粘着剤層のバイオ率が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。粘着剤層のバイオ率が高くなるよう設計することで、粘着剤層全体としての化石資源系材料への依存度を低減することができる。例えば、粘着剤層のバイオ率は、55%以上であってもよく、60%以上でもよく、70%以上でもよく、75%以上でもよい。バイオ率の上限は定義上100%であるが、ここに開示される粘着剤層では、含有成分が化石資源由来の材料を含み得るため、典型的にはバイオ率は100%未満であり得る。携帯電子機器用途に適した性能(例えばせん断接着力)を得やすくする観点から、いくつかの態様において、粘着剤層のバイオ率は、例えば90%未満であってよく、より粘着性能が重視される場合には80%未満でもよく、70%未満でもよい。
なお、粘着剤層のバイオ率、すなわち該粘着剤層に含まれる全炭素に占めるバイオマス由来炭素の割合は、ASTM D6866に準拠して測定される質量数14の炭素同位体含有量から見積もることができる。後述する基材のバイオ率および粘着シートのバイオ率についても、同様の方法で見積もることができる。
<基材>
ここに開示される粘着シートは、基材の片面または両面に粘着剤層を備える基材付き粘着シートの形態であり得る。基材としては、各種のシート状基材を用いることができ、例えば樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。電子機器用の分野においては、塵埃(例えば紙粉等の、微小な繊維または粒子)の発生源となりにくい基材が好ましく用いられ得る。かかる観点から、紙や布等の繊維状物を含まない基材が好ましく、例えば樹脂フィルム、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を好ましく使用し得る。
樹脂フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;塩化ビニル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等のポリオレフィンフィルム;塩化ビニリデン樹脂フィルム;酢酸ビニル樹脂フィルム;ポリスチレンフィルム;ポリアセタールフィルム;ポリイミドフィルム;ポリアミドフィルム;フッ素樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリオレフィンシート等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。
上記基材としては、樹脂フィルムの使用が好適である。樹脂フィルムは、寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)、加工性、引張強度に優れる材料として、好ましく用いられる。また、樹脂フィルム(例えば後述するPETフィルム等のポリエステルフィルム)はリサイクルが可能であるので、植物由来の材料を用いているか否かにかかわらず、使用後の樹脂フィルムを再利用することで、持続的な再生産が可能であり、環境負荷を低減することができる。このような、リサイクル可能な樹脂フィルムや、リサイクルされた樹脂フィルムは、リサイクルフィルムともいう。このような樹脂フィルムのリサイクル性は、上述の剥離ライナーに用いられる樹脂フィルムにも適用され得る。なお、この明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念である。
いくつかの態様において、強度や加工性の観点から、上記基材としてポリエステルフィルムを好ましく採用し得る。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、典型的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合して得られるポリエステルを主成分として含むポリエステル樹脂が用いられる。
上記ポリエステルを構成するジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸等の脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;これらの誘導体(例えば、テレフタル酸等の上記ジカルボン酸の低級アルキルエステル等);等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリエステルを構成するジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。透明性等の観点から脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。上記ポリエステルを構成するジオールに占める脂肪族ジオール(好ましくはエチレングリコール)の割合は、50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には95重量%以上)であることが好ましい。上記ジオールは、実質的にエチレングリコールのみから構成されていてもよい。上記エチレングリコールとしては、バイオマス由来のエチレングリコール(典型的には、バイオマスエタノールを原料として得られるバイオマスエチレングリコール)が好ましく用いられ得る。例えば、上記ポリエステルを構成するエチレングリコールのうちバイオマス由来のエチレングリコールの占める割合は、例えば50重量%以上であってよく、75重量%以上であることが好ましく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。上記エチレングリコールの実質的に全部がバイオマス由来のエチレングリコールであってもよい。
ポリエステル樹脂フィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリブチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
ここに開示される基材がポリエステルフィルム基材である場合、該ポリエステルフィルム基材は、ポリエステルに加えて上記ポリエステル以外のポリマーを含んでもよい。上記ポリエステル以外のポリマーとしては、上述の基材を構成し得る樹脂フィルムとして例示した各種ポリマー材料のうち、ポリエステル以外のものが好適例として挙げられる。ここに開示されるポリエステルフィルム基材がポリエステルに加えて上記ポリエステル以外のポリマーを含む場合、該ポリエステル以外のポリマーの含有量は、ポリエステル100重量部に対して100重量部未満とすることが適当であり、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。ポリエステル以外のポリマーの含有量は、ポリエステル100重量部に対して5重量部以下であってもよく、1重量部以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、ポリエステルフィルム基材の99.5~100重量%がポリエステルである態様で好ましく実施され得る。
他のいくつかの態様において、強度と柔軟性の観点から、上記基材としてポリオレフィンフィルムを好ましく採用し得る。ポリオレフィンフィルムは、α-オレフィンを主モノマー(モノマー成分のなかの主成分)とする重合体を主成分とするフィルムである。上記重合体の割合は、通常は50重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には90~100重量%)である。ポリオレフィンの具体例としては、エチレンを主モノマーとするもの(ポリエチレン)、プロピレンを主モノマーとするもの(ポリプロピレン)等が挙げられる。上記ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと他のオレフィン(例えば、炭素原子数が3~10のα-オレフィンから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよく、エチレンとオレフィン以外のモノマー(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のエチレン性不飽和モノマーから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよい。また、上記ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他のオレフィン(例えば、炭素原子数が2,4~10のα-オレフィンから選択される1種または2種以上)との共重合体であってもよく、プロピレンとオレフィン以外のモノマーとの共重合体であってもよい。ここに開示される基材は、上記のうち1種のポリオレフィンのみを含んでもよく、2種以上のポリオレフィンを含んでもよい。
ここに開示される基材がポリオレフィンフィルム基材である場合、該ポリオレフィンフィルム基材は、ポリオレフィンに加えて上記ポリオレフィン以外のポリマーを含んでもよい。上記ポリオレフィン以外のポリマーとしては、上述の基材を構成し得る樹脂フィルムとして例示した各種ポリマー材料のうち、ポリオレフィン以外のものが好適例として挙げられる。ここに開示されるポリオレフィンフィルム基材がポリオレフィンに加えて上記ポリオレフィン以外のポリマーを含む場合、該ポリオレフィン以外のポリマーの含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して100重量部未満とすることが適当であり、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。ポリオレフィン以外のポリマーの含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して5重量部以下であってもよく、1重量部以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、ポリオレフィンフィルム基材の99.5~100重量%がポリオレフィンである態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される基材は、化石資源系材料の使用量低減の観点から、バイオマス材料を含むことが好ましい。上記基材を構成し得るバイオマス材料は特に限定されないが、例えば、バイオマスPET、バイオマスポリトリメチレンテレフタレート(バイオマスPTT)等のバイオマスポリエステル;ポリ乳酸;バイオマス高密度ポリエチレン(バイオマスHDPE)、バイオマス低密度ポリエチレン(バイオマスLDPE)、バイオマス直鎖状低密度ポリエチレン(バイオマスLLDPE)等のバイオマスポリエチレン、バイオマスポリプロピレン(バイオマスPP)等のバイオマスポリオレフィン;バイオマスポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート);ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリ(キシリレンセバカミド)等のバイオマスポリアミド;バイオマスポリエステルエーテルウレタン、バイオマスポリエーテルウレタン等のバイオマスポリウレタン;セルロース系樹脂;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、バイオマスPET、バイオマスPTTが好ましく、バイオマスHDPE、バイオマスLDPE、バイオマスLLDPE、バイオマスPP、バイオマスPETが特に好ましい。上記のバイオマス材料は樹脂材料であることから、基材が樹脂フィルムである構成に好ましく適用され得る。上記のバイオマス材料を用いることによって、樹脂フィルム(好ましくはポリオレフィンフィルム)を基材とする粘着シートにおいて、化石資源系材料の使用量を低減することができる。
基材を備える態様の粘着シートにおいて、該基材のバイオ率は、20%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。化石資源系材料の使用量低減をより重視する場合には、基材のバイオ率は、例えば50%以上であってよく、70%以上でもよく、85%以上でもよく、90%以上でもよい。上記バイオ率の上限は100%以下であるが、いくつかの態様においては、加工性や強度等を考慮して、基材のバイオ率は、例えば80%以下であってよく、60%以下でもよく、40%以下でもよく、20%未満でもよい。
基材は、透明性を有するものであってもよく、遮光性や減光性を有するものであってもよい。いくつかの態様において、基材(例えば樹脂フィルム)には着色剤を含有させることができる。これにより基材の光透過性(遮光性)を調整することができる。基材の光透過性(例えば垂直光透過率)を調整することは、該基材の光透過性、さらには該基材を含む粘着シートの光透過性の調整にも役立ち得る。
着色剤としては、粘着剤層に含有させ得る着色剤と同様、従来公知の顔料や染料を用いることができる。着色剤は、特に制限されず、例えば、黒色、灰色、白色、赤色、青色、黄色、緑色、黄緑色、橙色、紫色、金色、銀色、パール色等の着色剤であり得る。
基材は、ベースフィルム(好ましくは樹脂フィルム)の表面に配置された着色層により着色されていてもよい。このようにベースフィルムと着色層を含む構成の基材において、上記ベースフィルムは、着色剤を含んでもよく、含まなくてもよい。上記着色層は、ベースフィルムのいずれか一方の表面に配置されてもよく、両方の表面にそれぞれ配置されてもよい。ベースフィルムの両方の表面にそれぞれ着色層を配置した構成において、それらの着色層の構成は、同一であってもよく、異なってもよい。着色層を配置することにより、粘着シートの色味や透過性は調節され、所望の意匠性や、遮光性、隠蔽性を得ることができる。着色層の色は、特に限定されず、目的に応じて、種々の色彩が採用され得る。いくつかの態様において、着色層は、例えば黒色印刷により形成された黒色層(例えば黒色印刷層)であり得る。
着色層は、例えば、着色剤およびバインダーを含有する着色層形成用組成物を、ベースフィルムに塗布して形成することができる。バインダーとしては、塗料または印刷の分野において公知の材料を特に制限なく使用することができる。例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素メラミン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等が例示される。着色層形成用組成物は、例えば、溶剤型、紫外線硬化型、熱硬化型等であり得る。着色層の形成は、従来より着色層の形成に採用されている手段を特に制限なく採用して行うことができる。例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷により着色層(印刷層)を形成する方法を好ましく採用し得る。
着色層は、全体が1層からなる単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上のサブ着色層を含む多層構造であってもよい。2層以上のサブ着色層を含む多層構造の着色層は、例えば、着色層形成用組成物の塗布(例えば印刷)を繰り返して行うことにより形成することができる。各サブ着色層に含まれる着色剤の色や配合量は、同一であってもよく、異なってもよい。遮光性を付与するための着色層では、ピンホールの発生を防止して光漏れ防止の信頼性を高める観点から、多層構造とすることが特に有意義である。
着色層の着色に使用する着色剤としては、目的とする色に応じた公知の顔料や染料を適宜選択することができる。特に限定するものではないが、白色顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛華、鉛白等が挙げられる。黒色顔料の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、松煙、黒鉛等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
着色剤の含有量は、要求される色味や光透過性等に応じて設定されるため特定の範囲に限定されるものではないが、着色層中、凡そ1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは2重量%以上(例えば5重量%以上)であり、15重量%以上であり得る。また、上記着色剤の含有量は、凡そ65重量%以下とすることが適当であり、好ましくは30重量%以下(例えば15重量%以下)であり、8重量%以下であってもよい。
着色層全体の厚さは、通常、0.1μm以上が適当であり、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.7μm以上である。着色層全体の厚さは、凡そ0.8μm以上であってもよく、凡そ1μm以上であってもよい。他のいくつかの態様では、十分な遮光性を得る観点から、着色層全体の厚さを2μm以上(例えば3μm以上)としてもよく、4μm以上としてもよい。また、上記着色層全体の厚さは、通常は10μm以下が適当であり、好ましくは7μm以下、より好ましくは5μm以下である。いくつかの態様において、着色層全体の厚さは、凡そ3μm以下とすることができ、さらには凡そ2μm以下とすることができる。2層以上のサブ着色層を含む着色層において、各サブ着色層の厚さは、通常、0.5μm~2μm程度が好ましい。
基材(例えば樹脂フィルムやゴムシート、発泡体シート等)の粘着剤層が配置される面(粘着剤層側表面)には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り層の形成等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。あるいは、上記基材は、上記粘着剤層側表面に投錨性を向上させるような表面処理が施されていないものであってもよい。下塗り層を形成する場合、該形成に使用する下塗り剤(プライマー)は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されず、例えば0.01μm超とすることができ、通常は0.1μm以上とすることが適当であり、効果を高める観点から0.2μm以上としてもよい。また、下塗り層の厚さは、1.0μm未満とすることが好ましく、0.7μm以下でもよく、0.5μm以下でもよい。一般的にプライマーは化石資源系材料への依存度が高いことから、下塗り層の厚さが大きすぎないことは、後述する粘着シートのバイオ率を低減する観点から有利となり得る。
基材の片面に粘着剤層が設けられた片面粘着シートの場合、基材の粘着剤層非形成面(背面)には、剥離処理剤(背面処理剤)によって剥離処理が施されていてもよい。背面処理層の形成に用いられ得る背面処理剤としては、特に限定されず、シリコーン系背面処理剤やフッ素系背面処理剤、長鎖アルキル系背面処理剤その他の公知または慣用の処理剤を目的や用途に応じて用いることができる。背面処理剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
基材(例えば樹脂フィルム基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%以下(例えば20重量%以下、典型的には10重量%以下)程度である。例えば、基材に顔料(例えば白色顔料)を含ませる場合、その含有割合は0.1~10重量%(例えば1~8重量%、典型的には1~5重量%)程度とすることが適当である。
基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、一般的には1μm~500μm程度である。基材の取扱い性の観点から、上記基材の厚さは、例えば1.5μm以上であってよく、2μm以上でもよく、3μm以上でもよく、4μm以上でもよく、4.5μm以上でもよい。また、粘着シートの薄型化の観点から、いくつかの態様において、基材の厚さは、例えば150μm以下であってよく、100μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、20μm以下でもよく、10μm以下でもよく、7μm以下でもよく、5μm未満でもよく、4μm未満でもよい。
<粘着シート>
ここに開示される粘着シート(粘着剤層を含み、基材付き粘着シートではさらに基材を含むが、剥離ライナーは含まない。)の厚さ(総厚)は、特に限定されず、例えば凡そ2μm~1000μmの範囲とすることができる。いくつかの態様において、粘着シートの厚さは、粘着特性等を考慮して、5μm~500μm(例えば10μm~300μm、典型的には15μm~200μm)程度とすることが好ましい。あるいは、薄型化を重視するいくつかの態様において、粘着シートの厚さは、100μm以下(例えば5μm~100μm)であってよく、70μm以下(例えば5μm~70μm)でもよく、45μm以下(例えば5μm~45μm)でもよく、30μm以下(例えば5μm~30μm)でもよい。
ここに開示される粘着シートは、該粘着シートに含まれる全炭素の凡そ30%以上(例えば30%超)がバイオマス由来の炭素であることが好ましい。すなわち、粘着シートのバイオ率が30%以上であることが好ましい。このようにバイオ率の高い粘着シートを用いることにより、化石資源系材料の使用量を低減することができる。かかる観点において、粘着シートのバイオ率は高いほど好ましいといえる。粘着シートのバイオ率は、40%以上であることが好ましく、50%以上でもよく、60%以上でもよく、70%以上でもよく、75%以上でもよい。バイオ率の上限は定義上100%であるが、粘着シートを構成するすべての材料を植物由来とすることは、生産性や性能等の点で効率的でない場合もあることから、粘着シートのバイオ率は100%未満であってもよい。携帯電子機器用途に適した性能(例えばせん断接着力)を得やすくする観点から、いくつかの態様において、粘着シートのバイオ率は、例えば90%以下であってよく、より粘着性能が重視される場合には80%以下でもよく、70%以下でもよい。
なお、粘着剤層からなる基材レス粘着シートでは、該粘着剤層のバイオ率と粘着シート全体のバイオ率とは一致する。
ここに開示される粘着シートは、100N/100mm2を超えるせん断接着力を示すことが好ましい。かかるせん断接着力を示す粘着シートは、接着界面をずらそうとする動的な負荷(すなわち、せん断力)に対して強い抵抗力を示すので、被着体の保持性能に優れ、例えば携帯電子機器内の部材固定などの場面における剥がれの発生を効果的に防止するものとなり得る。より高い接着信頼性を得る観点から、粘着シートのせん断接着力は、好ましくは180N/100mm2以上、より好ましくは220N/100mm2以上、さらに好ましくは250N/100mm2以上、特に好ましくは280N/100mm2以上(例えば320N/100mm2以上)である。上記せん断接着力の上限は特に制限されず、一般的には高いほど好ましい。一方、他の特性(例えば、保持力等の他の粘着特性や、必要な場合、光透過率などの光学特性)との両立の観点から、いくつかの態様において、上記せん断接着力は、例えば700N/100mm2以下であってよく、500N/100mm2以下でもよい。上記せん断接着力は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
また、ここに開示される粘着シートは、後述の実施例において、厚さ125μmのPETフィルムを用いて測定される耐反発試験において合格レベルの耐反発性を有する(すなわち、剥がれが生じない)ものであり得る。上記の耐反発性を有する粘着シートは、曲げに対して耐久性を有し、3次元形状等の曲面形状の表面に貼り付けて使用する態様においても、浮きや剥がれのない接着信頼性を発揮し得る。
いくつかの態様に係る粘着シートは、ステンレス鋼板に対する180度剥離強度(対SUS粘着力)が10N/20mm以上であることが好ましい。上記特性を示す粘着シートは、被着体に強固に接合することから、典型的には再剥離を意図しない態様で好ましく用いられ得る。より信頼性の高い接合を実現する観点から、上記粘着力は、例えば11N/20mm以上であってよく、12N/20mm以上が好ましく、13N/20mm以上でもよく、14N/20mm以上でもよく、15N/20mm以上でもよい。上記粘着力の上限は特に制限されず、いくつかの態様において、上記粘着力は、例えば50N/20mm以下であってよく、30N/20mm以下でもよく、25N/20mm以下でもよい。上記対SUS粘着力は、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定される。
<用途>
ここに開示される粘着シートの用途は特に限定されず、各種用途に制限なく用いることができる。例えば、粘着シートは、電子機器を構成する部材に貼り付けられる態様で、例えば部材の固定、接合、補強等の目的で使用することができる。ここに開示される粘着シートは、例えば両面粘着シートの形態で、部材を固定または接合する用途に好ましく利用され得る。かかる用途では、粘着シートが良好なせん断接着力を有し、剥がれを防止することが特に有意義である。上記両面粘着シートは、基材レスでもよく、基材付きでもよい。薄型化の観点から、いくつかの態様において、基材レスの両面粘着シートまたは薄手の基材を用いた基材付き両面粘着シートの形態が好ましく採用され得る。上記薄手の基材としては、厚さが10μm以下(例えば5μm未満)の基材が好ましく用いられ得る。
ここに開示される粘着シートは、例えば、携帯電子機器における部材固定用途に好適である。ここに開示される粘着シートは、高いせん断接着力に基づき、高い接着信頼性を有するので、高性能が求められる携帯電子機器用途に好適である。携帯電子機器における接合固定は、接着面積が制限されているため、高いせん断接着力を有する粘着シートの使用が特に有意義である。上記携帯電子機器の非限定的な例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等が含まれる。ここに開示される粘着シートは、例えば、このような携帯電子機器のうち感圧センサを備える携帯電子機器内において、感圧センサと他の部材とを固定する目的で好ましく利用され得る。いくつかの好ましい態様では、粘着シートは、画面上の位置を指示するための装置(典型的にはペン型、マウス型の装置)と位置を検出するための装置とで、画面に対応する板(典型的にはタッチパネル)の上で絶対位置を指定することを可能とする機能を備える電子機器(典型的には携帯電子機器)内において、感圧センサと他の部材とを固定するために用いられ得る。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
また、ここに開示される粘着シートは、良好な耐反発性を有するものであるので、当該耐反発性に基づき、曲げに対しても優れた接着信頼性を発揮し、3次元形状等の曲面形状を有する携帯電子機器(例えば、曲面形状を有するディスプレイを備える携帯電子機器)の当該曲面に貼り付けられる態様で好ましく用いられる。
また、上記のとおり、携帯電子機器の内部は、バッテリー等の発熱要素を含み得ることから、例えば40℃以上の温度に曝されることがあり、ここに開示される好ましい態様に係る高温保持力に優れる粘着シートを使用して、上記のような高温状態においても、浮きや剥がれのない接着信頼性を得ることが有意義である。
ここに開示される粘着シートが貼り付けられる材料(被着体材料)としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料;各種樹脂材料(典型的にはプラスチック材);ガラス等の無機材料;等が挙げられる。上記樹脂材料としては、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂(PET系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂(いわゆるアラミド樹脂等)、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。なかでも、ここに開示される粘着シートは、上記金属材料や、PET等のポリエステル系樹脂や、ポリイミド系樹脂、アラミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の接合に好ましく用いられる。上記の材料は、携帯電子機器等の製品を構成する部材材料であり得る。ここに開示される粘着シートは、上記材料から構成された部材に貼り付けられて用いられ得る。
図4は、ここに開示される粘着シートが用いられた携帯電子機器(スマートフォン)を模式的に示す一例である。図4に示すように、携帯電子機器500の筐体520の内部には、バッテリー(発熱要素)540が内蔵されている。また、携帯電子機器500は、粘着シート550を含んで構成されている。この構成例では、粘着シート550は、携帯電子機器500を構成する部材を固定する両面接着性のシート(両面粘着シート)の形態を有する。なお、携帯電子機器500は、表示部が入力部としても機能するタッチパネル570を備えている。ここに開示される粘着シートは、上記のような携帯電子機器の構成要素(部材接合手段)として好ましく用いられる。
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
〔1〕 携帯電子機器であって、
筐体と、表示部が入力部としても機能するタッチパネルと、を備え、
前記筐体の内部には、発熱要素(例えばバッテリー)が内蔵されており、
前記携帯電子機器を構成する多数の部材のうち、少なくとも第1の部材と第2の部材とは粘着シートによって接合されており、
前記粘着シートは、構成炭素の50%以上がバイオマス由来炭素であるポリエステル系ポリマーを含む粘着剤層を有し、
前記粘着剤層は、粘着付与樹脂および架橋剤をさらに含み、
前記ポリエステル系ポリマーは芳香環を含み、前記粘着付与樹脂も芳香環を含み、前記架橋剤は芳香環を含まない、携帯電子機器。
〔2〕 前記ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量は30,000以上である、上記〔1〕に記載の携帯電子機器。
〔3〕 前記ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量は100,000よりも大きい、上記〔1〕または〔2〕に記載の携帯電子機器。
〔4〕 前記ポリエステル系ポリマーのガラス転移温度は0℃以下である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔5〕 前記粘着付与樹脂の芳香環比率は20重量%以上である、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔6〕 前記粘着付与樹脂は、テルペンフェノール樹脂を含む、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔7〕 前記粘着剤層は、前記架橋剤として、イソシアネート系架橋剤を含む、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔8〕 前記粘着剤層は、前記架橋剤として、脂肪族イソシアネート系化合物を含む、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔9〕 前記粘着剤層における前記架橋剤の含有量は、前記ポリエステル系ポリマー100重量部に対して5重量部以下である、上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔10〕 前記粘着剤層は架橋触媒をさらに含み、該架橋触媒はスズ系化合物を含まない、上記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の携帯電子機器。
〔11〕 構成炭素の50%以上がバイオマス由来炭素であるポリエステル系ポリマーを含む粘着剤組成物であって、
粘着付与樹脂および架橋剤をさらに含み、
前記ポリエステル系ポリマーは芳香環を含み、前記粘着付与樹脂も芳香環を含み、前記架橋剤は芳香環を含まない、粘着剤組成物。
〔12〕 前記ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量は30,000以上である、上記〔11〕に記載の粘着剤組成物。
〔13〕 前記ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量は60,000よりも大きい、上記〔11〕または〔12〕に記載の粘着剤組成物。
〔14〕 前記ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量は100,000よりも大きい、上記〔11〕~〔13〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔15〕 前記ポリエステル系ポリマーのガラス転移温度は0℃以下である、上記〔11〕~〔14〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔16〕 前記粘着付与樹脂の芳香環比率は20重量%以上である、上記〔11〕~〔15〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔17〕 前記粘着付与樹脂は、テルペンフェノール樹脂を含む、上記〔11〕~〔16〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔18〕 前記架橋剤として、イソシアネート系架橋剤を含む、上記〔11〕~〔17〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔19〕 前記架橋剤として、脂肪族イソシアネート系化合物を含む、上記〔11〕~〔18〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔20〕 前記架橋剤の含有量は、前記ポリエステル系ポリマー100重量部に対して5重量部以下である、上記〔11〕~〔19〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔21〕 架橋触媒をさらに含み、該架橋触媒はスズ系化合物を含まない、上記〔11〕~〔20〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔22〕 架橋剤として、2官能架橋剤と、3官能以上の架橋剤とを含む、上記〔11〕~〔21〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔31〕 構成炭素の50%以上がバイオマス由来炭素であるポリエステル系ポリマーを含む粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層は、粘着付与樹脂および架橋剤をさらに含み、
前記ポリエステル系ポリマーは芳香環を含み、前記粘着付与樹脂も芳香環を含み、前記架橋剤は芳香環を含まない、粘着シート。
〔32〕 前記ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量は30,000以上である、上記〔31〕に記載の粘着シート。
〔33〕 前記ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量は60,000よりも大きい、上記〔31〕または〔32〕に記載の粘着シート。
〔34〕 前記ポリエステル系ポリマーの重量平均分子量は100,000よりも大きい、上記〔31〕~〔33〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔35〕 前記ポリエステル系ポリマーのガラス転移温度は0℃以下である、上記〔31〕~〔34〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔36〕 前記粘着付与樹脂の芳香環比率は20重量%以上である、上記〔31〕~〔35〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔37〕 前記粘着付与樹脂は、テルペンフェノール樹脂を含む、上記〔31〕~〔36〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔38〕 前記粘着剤層は、前記架橋剤として、イソシアネート系架橋剤を含む、上記〔31〕~〔37〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔39〕 前記粘着剤層は、前記架橋剤として、脂肪族イソシアネート系化合物を含む、上記〔31〕~〔37〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔40〕 前記粘着剤層における前記架橋剤の含有量は、前記ポリエステル系ポリマー100重量部に対して5重量部以下である、上記〔31〕~〔39〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔41〕 前記粘着剤層は架橋触媒をさらに含み、該架橋触媒はスズ系化合物を含まない、上記〔31〕~〔40〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔42〕 前記粘着剤層は、架橋剤として、2官能架橋剤と、3官能以上の架橋剤とを含む、上記〔31〕~〔41〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔43〕 ステンレス鋼板に対するせん断接着力が100N/100mm2よりも大きい、上記〔31〕~〔42〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔44〕 ステンレス鋼板に対する180度剥離強度が10N/20mm以上である、上記〔31〕~〔43〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔51〕 携帯電子機器に用いられる、上記〔31〕~〔44〕のいずれかに記載の粘着シート。
〔52〕 上記〔31〕~〔44〕のいずれかに記載の粘着シートを含む携帯電子機器。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<評価方法>
[せん断接着力]
粘着シート(両面粘着シート)を10mm×10mmのサイズにカットして測定サンプルを作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの各粘着面を2枚のステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面にそれぞれ重ねて2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に2日間放置した後、引張試験機を用いて、引張速度10mm/分、剥離角度0度の条件で、せん断接着力[N/100mm2]を測定する。せん断接着力が100N/100mm2を超えれば、高いせん断接着力を有すると評価される。片面接着性の粘着シート(片面粘着シート)の場合は、該シートの非粘着面を接着剤等でステンレス鋼板に固定し、その他は上記と同様にして測定すればよい。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG-1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。
[耐反発試験]
図5の(a)に示すように、長さ30mm、幅10mm、厚さ2mmのポリカーボネート(PC)板50と、長さ100mm、幅10mm、厚さ125μmのPETフィルム60と、を用意し、PC板50とPETフィルム60の長手方向の一端を揃えるようにして重ね合わせ、PETフィルム60の残りの部分がPC板50の他端から突出した状態でPC板50とPETフィルム60とを固定する。上記固定には市販の両面粘着テープ(日東電工社製、「No.5000NS」)を使用する。
2枚の剥離ライナーで両粘着面が保護された各例に係る粘着シートを10mm×10mmのサイズにカットして粘着シート試料片70を用意する。PC板50のPETフィルムの固定面とは反対側の表面を上側に設置し、上記粘着シート試料片70から一方の剥離ライナーを剥がして、PC板50の長手方向の他端と粘着シート試料片70の一辺とが一致するようにして粘着シート試料片70をPC板50の上面に貼り付け固定する。上記固定は、粘着シート試料片70のもう一方の剥離ライナーで保護された上面を2kgローラを一往復させることによって行う。
次いで、23℃、50%RHの環境下にて、PC板50に貼り付けた粘着シート試料片70のもう一方の剥離ライナーを剥がして、図5の(b)に示すように、PC板50に固定されたPETフィルム60のPC板50からの突出部分(長さ70mm)をPC板50側に折り返して、粘着シート試料片70とPETフィルム60の他端(自由端)とを一致させて、0.1kgのローラをPETフィルム60上から1往復させることにより、折り曲げられたPETフィルム60の他端を粘着シート試料片70を介してPC板50上面に固定する。PETフィルム60が粘着シート試料片70から剥離するかどうかを、60℃95%RHの環境下および室温(23℃)環境下で、それぞれ24時間観察し、折り曲げられたPETフィルム60の弾性反撥に基づく粘着シート厚さ方向に対する粘着シート試料片70の接着保持力を、耐反発性として評価する。
粘着シート試料片70とPETフィルム60との接着状態が60℃95%RH環境下および室温環境下で24時間保持された場合を「◎」、粘着シート試料片70とPETフィルム60との接着状態が室温環境下で24時間保持された場合を「〇」、60℃95%RH環境下および室温環境下で24時間以内に図5の(c)に示すようにPETフィルム60が剥がれた場合を「×」と判定する。耐反発試験の結果が◎または〇の場合、良好な耐反発性を有し(すなわち合格)、×の場合、耐反発性は不十分(すなわち不合格)であると評価される。
[対SUS粘着力]
粘着シートを幅20mm、長さ150mmのサイズにカットして測定サンプルを作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの粘着面を露出させ、その粘着面を被着体としてのステンレス鋼板(SUS304BA板)に2kgのゴムローラを1往復させて圧着する。これを、23℃、50%RHの環境下に30分放置し、次いで同環境下にて引張試験機を使用してJIS Z0237:2000に準じて、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で剥離強度(対SUS粘着力)[N/20mm]を測定する。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」、ミネベア社製)を使用することができる。
なお、対SUS粘着力の測定にあたっては、必要に応じて(例えば、基材レス両面粘着シートの場合や、基材付き粘着シートであって基材が変形しやすい場合等)、測定対象の粘着シートに適切な裏打ち材を貼り付けて補強することができる。裏打ち材としては、例えば厚さ50μm程度のPETフィルムを用いることができ、実施例ではこの裏打ち材を使用した。
<合成例>
(合成例1)
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、窒素管および水分離管を付し、これにエチレングリコール(東京化成工業社製、分子量62)100g、ダイマー酸(製品名「プリポール1009」、クローダ社製、分子量567)700g、テレフタル酸(東京化成社製、分子量166)63g、重合触媒としてジ-n-ブチルスズオキシド(キシダ化学社製、分子量249)0.46g、反応水排出溶剤としてキシレン40gを仕込み、窒素雰囲気で撹拌しながら180℃まで昇温し、この温度を保持した。しばらくすると反応水の流出分離が認められ、反応が進行しはじめた。約24時間反応を続けて、バイオ率が81%のポリエステル系ポリマー(A1)を得た。このポリエステル系ポリマー(A1)の重量平均分子量(Mw)は10万であり、ガラス転移温度(Tg)は-33℃であった。
(合成例2)
四つ口セパラブルフラスコに攪拌機、温度計、窒素管および水分離管を付し、これにエチレングリコール(東京化成工業社製、分子量62)100g、ダイマー酸(製品名「プリポール1009」、クローダ社製、分子量567)915g、重合触媒としてジ-n-ブチルスズオキシド(キシダ化学社製、分子量249)0.46g、反応水排出溶剤としてキシレン40gを仕込み、窒素雰囲気で撹拌しながら180℃まで昇温し、この温度を保持した。しばらくすると反応水の流出分離が認められ、反応が進行しはじめた。約24時間反応を続けて、バイオ率が89%のポリエステル系ポリマー(A2)を得た。このポリエステル系ポリマー(A2)のMwは10万であり、ガラス転移温度(Tg)は-36℃であった。
(合成例3)
合成例1における反応時間を約36時間に変更した他は合成例1と同様にして、ポリエステル系ポリマー(A1)よりも高分子量のポリエステル系ポリマー(A3)を得た。このポリエステル系ポリマー(A3)のモノマー組成は、ポリエステル系ポリマー(A1)と同じであり、Mwは13万であった。
<例1>
ポリエステル系ポリマー(A1)100部に、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターS145」、ヤスハラケミカル社製、フェノール比率22%、以下「S145」と表記する場合がある。)40部、架橋剤Aとしてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名「コロネートHX」、東ソー社製、芳香環非含有、以下「3官能架橋剤」ともいう。)3部、架橋触媒として有機ジルコニウム化合物(商品名「オルガチックスZC-162」、マツモトファインケミカル社製)0.13部、耐加水分解剤としてカルボジイミド基含有化合物(商品名「カルボジライトV-03」、日清紡ケミカル社製)0.5部を配合し、酢酸エチルを加え、粘着剤組成物(粘着剤溶液)を調製した。この粘着剤溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「ダイアホイルMRF♯38」、三菱ケミカル社製)の剥離処理面に、乾燥後の厚みが20μmになるように塗工し、120℃で3分乾燥させ、粘着剤層を得た。その後、剥離処理したPETフィルム(商品名「ダイアホイルMRE♯38」、三菱ケミカル社製)の剥離処理面に上記粘着剤層を貼り合わせて、さらに50℃3日間放置し、本例に係る基材レス粘着シートを得た。
<例2>
架橋触媒として、有機ジルコニウム化合物に代えて、有機スズ化合物(商品名「ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)」、富士フィルム和光純薬社製)0.01部を使用した他は例1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして本例に係る基材レス粘着シートを得た。
<例3>
架橋剤の使用量を、ポリエステル系ポリマー(A1)100部に対して4部に変更し、架橋触媒として、有機ジルコニウム化合物に代えて有機アルミニウム化合物(商品名「ナーセムアルミニウム」、日本化学産業社製)0.13部を使用した。その他は例1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして本例に係る基材レス粘着シートを得た。
<例4>
ポリエステル系ポリマー(A3)100部に、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターG150」、ヤスハラケミカル社製、フェノール比率32%、以下「G150」と表記する場合がある。)40部、架橋剤A(商品名「コロネートHX」、東ソー社製)2部、架橋触媒として有機ジルコニウム化合物(商品名「オルガチックスZC-162」、マツモトファインケミカル社製)0.03部、耐加水分解剤としてカルボジイミド基含有化合物(商品名「カルボジライトV-03」、日清紡ケミカル社製)0.5部を配合し、酢酸エチルを加え、粘着剤組成物(粘着剤溶液)を調製した。得られた粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る基材レス粘着シート(厚さ20μm)を得た。
<例5>
ポリエステル系ポリマー(A3)100部に、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターS145」、ヤスハラケミカル社製、フェノール比率22%)40部、架橋剤A(商品名「コロネートHX」、東ソー社製)3部、架橋触媒として有機スズ化合物(商品名「ジラウリン酸ジブチルスズ(IV)」、富士フィルム和光純薬社製)0.01部を使用した他は例4と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を用いた他は例4と同様にして本例に係る基材レス粘着シートを得た。
<例6>
ポリエステル系ポリマー(A1)100部に、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターG150」、ヤスハラケミカル社製、フェノール比率32%)40部、架橋剤A(商品名「コロネートHX」、東ソー社製)2部および2官能架橋剤(商品名「デュラネートD101」、旭化成社製、芳香環非含有)2部、架橋触媒として有機ジルコニウム化合物(商品名「オルガチックスZC-162」、マツモトファインケミカル社製)0.03部、耐加水分解剤としてカルボジイミド基含有化合物(商品名「カルボジライトV-03」、日清紡ケミカル社製)0.5部を配合し、酢酸エチルを加え、粘着剤組成物(粘着剤溶液)を調製した。得られた粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る基材レス粘着シート(厚さ20μm)を得た。
<例7>
ポリエステル系ポリマー(A1)に代えてポリエステル系ポリマー(A2)を使用し、架橋剤の使用量を、ポリエステル系ポリマー(A2)100部に対して5部に変更した。その他は例2と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、この粘着剤組成物を用いた他は例2と同様にして本例に係る基材レス粘着シートを得た。
<例8>
粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂S145(40部)に代えて、水添ロジングリセリンエステル(商品名「ハリタック SE10」、ハリマ化成社製)20部を使用し、架橋剤として、芳香環を含む架橋剤B(商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液、東ソー社製)を、ポリエステル系ポリマー(A1)100部に対して2部使用した。その他は例1と同様にして本例に係る粘着剤組成物を調製し、得られた粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして本例に係る基材レス粘着シートを得た。
各例により得られた粘着シートのせん断接着力および対SUS粘着力を上述の方法で測定した。また、例2、例4~8については、耐反発試験を実施した。結果を表1に示す。
表1に示されるように、バイオ率が50%以上であるポリエステル系ポリマーを含む粘着剤において、上記ポリエステル系ポリマーおよび粘着付与樹脂が芳香環を含み、架橋剤が芳香環を含まない例1~6に係る粘着剤は、100N/100mm2を超える高いせん断接着力を有していた。また、例2、例4~6は耐反発試験の結果が合格であり、なかでも、例4~6は耐反発試験の結果が特に優れていた。一方、芳香環を含まないポリエステル系ポリマーを使用した例7では、高いせん断接着力は得られなかった。芳香環を含まない粘着付与樹脂を使用し、芳香環を含む架橋剤を使用した例8においても、高いせん断接着力は得られなかった。
上記の結果から、構成炭素の50%以上がバイオマス由来炭素であるポリエステル系ポリマーと、粘着付与樹脂と、架橋剤とを含み、ポリエステル系ポリマーおよび粘着付与樹脂が芳香環を含み、架橋剤が芳香環を含まない粘着剤によると、高いせん断接着力が得られることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。