JP7298551B2 - 熱間圧延における反り予測方法、反り抑制方法、圧延材の製造方法、並びに、熱間圧延における反り予測装置、反り抑制装置、圧延材の製造設備 - Google Patents

熱間圧延における反り予測方法、反り抑制方法、圧延材の製造方法、並びに、熱間圧延における反り予測装置、反り抑制装置、圧延材の製造設備 Download PDF

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Description

本発明は、熱間圧延において圧延材の先端部で生じる反りを抑制するための技術、及び熱間圧延を用いた圧延材の製造に関する技術である。
加熱炉でスラブを加熱し、その加熱されたスラブを圧延する熱間圧延において、圧延先端部に反りが発生することがある。この反りは、圧延材や圧延機の上下非対称要因に起因して発生することが知られている。上下非対称要因としては、圧延材の上下面の温度差、上下ワークロールの周速差、上下ワークロールの径差、ワークロールと圧延材間の上下の摩擦係数差、圧延材の進入角度などが挙げられる。
圧延工程で反りが生じると、圧延材先端部の衝突による周辺設備の破損が懸念されるだけでなく、圧延後の冷却工程での不均一な水乗りによる材質不良及び形状不良の原因となる。更には、圧延後の精整工程で、反り矯正が必要となる。
従来から、圧延での反りを改善する方法として、上下非対称要因を特定し、これら要因を反り抑止の手段として積極的に用いる方法が提案されている。
特許文献1には、各圧延パスの圧延材の板厚方向の温度分布、上下ワークロール周速比などの上下非対称要因と圧延材の反り情報の関係を過去の操業実績から予め求めておき、オンラインでは反りを抑制するように上下ワークロール周速比を設定する方法が開示されている。
特許文献2には、実測される反り量に対して、予め上下ワークロール周速差やパスライン位置などによる反りへの影響を過去の操業実績から関数式で表しておき、次パスにおいて反りを抑制するために、次パスにおける形状比に応じて、上下ワークロール周速差とパスライン位置のいずれの反り抑制手段を用いるか選択する方法が開示されている。
特許文献3は、スラブを加熱する加熱炉の操業条件として、炉内の上下設定温度差と炉内の加熱帯と均熱帯でのスラブの滞留時間を入力データとして、圧延材の先端部の反りに関する測定結果を出力する関数式を予め求めておき、圧延パスにおける反りを低減するように加熱炉の操業条件を設定する方法が開示されている。
特許文献4は、圧延材が上下ワークロールへ噛込む前に、圧延材の上下の表面粗度と、上下のワークロールの表面粗度を測定し、その測定結果に基づいて、圧延材とワークロールとの接触面における摩擦係数の上下差を推定し、その摩擦係数の上下差を解消するように潤滑油を供給する方法が開示されている。
特開昭63-248506号公報 特許第3298465号公報 特許第3251455号公報 特開2005-254287号公報
しかしながら、上記の従来技術では、いずれの方法でも反り量の予測精度や、操業パラメータと反り量の関係の推定精度が不十分であり、結果として、圧延先端部での反りの抑止が十分に行えないという課題がある。
すなわち、特許文献1の方法は、反り量を予測するために、上下ワークロール周速比と板厚方向の温度分布を入力データとして、これに形状比(接触弧長と平均板厚との比)が与える影響と、圧延パスの出側板厚の影響を考慮した形の関数式が用いられている。しかし、圧延における先端部の反り挙動には、上下ワークロール周速比と板厚方向の温度分布だけではなく、パスライン位置やワークロール径差など他の影響因子が複合して影響している。そのため、上下ワークロール周速比と板厚方向の温度分布が同一でも、パスライン位置が異なれば、先端部の反り量が変化し、その影響度も上下ワークロール周速比や板厚方向の温度分布の程度によって変化する。したがって、実測された反り量を、単純化した関係式のみでは精度よく反りを予測することができない。
特許文献2の方法は、反り量を予測するものではなく、実績の反り量に基づいて、そのような反りを次パスにおいて低減するために、形状比を考慮した反り発生の関係式を用いるものである。しかし、前パスにおいて発生した反り量が、そのまま次パスでも発生するものではない。例えば、前パスで発生した反り量に対して、圧延材の上下面の温度差と圧延材の侵入角度との2つの要因が影響している場合には、圧延材の上下面の温度差は次パスの圧延にも影響を与えると考えられる。しかし、リバース圧延などでは圧延方向が反転するなどの影響もあって、圧延材の侵入角度については次パスの圧延時には前パスとは異なるのが通常である。したがって、特許文献2では前パスの圧延から下流パスに影響を与える要因と与えない要因とが区別されていないため、次パスの圧延において適切な圧延条件を設定できないという問題点がある。
特許文献3は、加熱炉内で発生する板厚方向の温度分布の影響を考慮することが可能である。しかし、上記の通り、反りの発生挙動には、上下ワークロール周速比、パスライン位置など複数の影響因子が複合的に作用している。そのため、特許文献3による方法では、精度よく反り量を予測することができない。また、反りを抑制するために加熱炉の操業条件を変更しても、実際に炉内温度を変化させるためには長時間を要するため、反りの抑制を迅速に行うことができないという問題点もある。
特許文献4は、オンラインで反りの原因となる上下非対称要因の1つである上下摩擦係数差を圧延パスの前に推定し、これに応じて上下の摩擦係数を制御する方法であり、反りの制御を迅速に行うことができる。しかし、摩擦はロールと圧延材との界面で発生する現象であり、上下の摩擦係数差を直接的に求めることができないため、表面粗さから摩擦係数差を推定するのは困難である。また、摩擦係数は、ワークロールや圧延材の表面酸化被膜の厚みや組成によって変化するため、圧延材やワークロールの表面粗さのみから反りを予測するのは困難である。
本発明は、上記のような点に着目して成されたもので、熱間圧延操業において、オンラインで圧延先端部の反り量を高精度に予測して、圧延先端部の反りをより確実に抑制することを目的とする。
課題を解決するために、本発明の一態様は、圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程における、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測する反り予測方法であって、上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとし、圧延条件のデータを入力データに含み、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデルを用いて、圧延条件のデータと上記反り量のデータとからなる学習用データを複数組、取得し、取得した複数組の学習用データを用いた機械学習によって、圧延条件のデータを入力データとし、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとする反り予測モデルを生成しておき、上記非対称要因同定パスにおける圧延機出側で測定した圧延材先端部の反り量と、上記反り予測モデルを用いて予測した上記非対称要因同定パスでの反り量とに基づき、上記非対称要因同定パスにおける、圧延条件に含まれる圧延材の上下非対称要因のうちの圧延材の状態に起因する非対称要因情報のデータを算出し、算出した非対称要因情報のデータに基づき、上記予測対象圧延パスにおける圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測する、を備えることを要旨とする。
また、本発明の態様は、圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を制御する反り抑制方法であって、上記態様に係る熱間圧延における反り予測方法を有し、上記予測対象圧延パスで予測される反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、当該予測した反り量が小さくなる方向に、予測対象圧延パスでの圧延条件を再設定することを要旨とする。
また、本発明の態様は、圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を制御する反り抑制方法であって、上記態様に係る熱間圧延における反り予測方法を有し、上記予測対象圧延パスで予測される反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、上記非対称要因同定パスよりも下流パスであって、かつ予測対象圧延パスよりも上流パスから選択した圧延パスである非対称要因低減パスにおいて、上記予測対象圧延パスで予測される反り量が小さくなる方向に、上記非対称要因低減パスにおける圧延条件を再設定することを要旨とする。
また、本発明の態様は、本発明の対象である熱間圧延における反り抑制方法を備える圧延材の製造方法である。
また、本発明の態様は、圧延材を熱間圧延する圧延機における、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測する反り予測モデルの生成方法であって、上記圧延機の圧延条件のデータを入力データに含み、上記圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデルを用いて、圧延条件のデータと上記反り量とからなる学習用データを複数組、取得する学習用データ取得部と、上記学習用データ取得部が取得した複数組の学習用データを用いた機械学習によって、上記圧延条件のデータを入力データとし、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとする反り予測モデルを生成する反り予測モデル生成部と、を備えることを要旨とする。
また、本発明の態様は、圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程における、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測する反り予測装置であって、上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとして設定し、圧延条件のデータを入力データに含み、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデルを用いて、圧延条件のデータと上記反り量のデータとからなる学習用データを複数組、取得する学習用データ取得部と、上記学習用データ取得部が取得した複数組の学習用データを用いた機械学習によって、圧延条件のデータを入力データとし、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとする反り予測モデルを生成する反り予測モデル生成部と、上記非対称要因同定パスにおける圧延機出側での圧延材先端部の反り量を測定する反り量測定部と、上記反り量測定部が測定した反り量と、上記反り予測モデルを用いて予測した上記非対称要因同定パスにおける反り量とに基づき、上記非対称要因同定パスでの圧延条件に含まれる圧延材の上下非対称要因のうち、圧延材の状態に起因する非対称要因情報のデータを算出する非対称要因同定部と、上記非対称要因同定部が算出した非対称要因情報のデータに基づき、上記予測対象圧延パスにおける圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測する先端反り予測部と、を備えることを要旨とする。
また、本発明の態様は、圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を制御する反り抑制装置であって、上記態様に係る熱間圧延における反り予測装置を有し、上記先端反り予測部が予測した反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、当該予測した反り量が小さくなる方向に、予測対象圧延パスでの圧延条件を再設定する圧延条件再設定部を有することを要旨とする。
また、本発明の態様は、圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を制御する反り抑制装置であって、上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとして設定し、上記態様に係る熱間圧延における反り予測装置を有し、上記先端反り予測部が予測した反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、上記非対称要因同定パスよりも下流パスであって、かつ予測対象圧延パスよりも上流パスから選択した圧延パスである非対称要因低減パスにおいて、上記反り予測部が予測した、上記予測対象圧延パスにおける圧延材先端部の反り量が小さくなる方向に、上記非対称要因低減パスにおける圧延条件を再設定する第2圧延条件再設定部を有することを要旨とする。
本発明の態様は、上記態様に係る熱間圧延における反り抑制装置を備える圧延材の製造設備である。
本発明の態様によれば、加熱工程にてスラブを加熱し、加熱されたスラブを熱間圧延する熱間圧延ラインにおいて、より有効に圧延先端部での反り量を予測することが可能となる。この結果、本発明の態様によれば、圧延機出側での圧延先端部の反り発生を抑制することが可能となる。
本発明に基づく実施形態に係る厚鋼板の熱間圧延ライン(熱間圧延設備)を説明するための模式図である。 圧延機の設備非対称情報の例を説明するための図である。 本発明に基づく実施形態に係る圧延制御装置の構成例を示す図である。 反り予測装置の構成例を示す図である。 反り抑制装置の構成例を示す図である。 圧延材先端部の反り量について説明するための図である。 圧延条件と圧延機出側の圧延材先端部反り量の関係の例を示す図である。 圧延機出側での反り測定方法について説明するための図である。 圧延材の先端部反り量と上下摩擦係数差の関係の例を示す図である。 第1の実施形態について説明するための図である。 第2の実施形態について説明するための図である。 非対称要因低減パスを用いた例を説明するための図である。 デスケーリング条件を変更して上下摩擦係数差を同定した一例を示す図である。 実施例2を説明するための図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、厚鋼板を製造する厚板圧延の熱間圧延設備を例に挙げて説明する。ただし、本発明は、熱延薄鋼板を製造する熱延ラインの粗圧延や仕上げ圧延設備についても適用可能である。すなわち、圧延材1も厚鋼板が限定されず、薄鋼板等の板材であっても良い。また、圧延工程で用いる圧延スタンド数は1台でも2台以上でも構わない。
本実施形態の圧延工程は、1台の圧延スタンドによるリバース圧延で熱間圧延を行って厚鋼板を製造する場合を例に挙げて説明する。
ここで、本実施形態において、圧延先端部とは各圧延パスの進行方向の圧延材1の先端部を指し、圧延尾端部とは各圧延パスの進行方向の圧延材1の後端部を指す。リバース圧延では、進行方向が変わる毎に圧延先端部と圧延尾端部が入れ替わる。また、圧延パスにおける上流とは、一連の圧延工程において、相対的に先に実行される圧延パスを指す。このとき、各圧延パスが同一の圧延機で実行されるか否かに関係はない。
(上下非対称要因)
また、圧延による反りの要因となる上下非対称要因には、圧延機が有する上下非対称要因と、圧延材の物理状態に起因する上下非対称要因とがある。
本明細書では、圧延機が有する上下非対称要因を設備非対称情報と記載し、圧延材の物理状態(性状など)に起因する上下非対称要因を非対称要因情報と記載する。
圧延機が有する設備非対称情報としては、例えば、上下のワークロール径差や周速差、パスライン位置等がある。設備非対称情報は、圧延機自体の設定条件に主として起因する。
また、圧延材1の物理状態に起因する非対称要因情報としては、例えば、ワークロールと圧延材との間の上下の摩擦係数差や、圧延材の上下面の温度差などがある。ここで、上下の摩擦係数差は、圧延材表面の状態(物理状態)だけでなく、圧延ロールの表面状態も影響を与える場合もあるが、圧延材1の上下面の状態に要因を有する場合は、「非対称要因情報」に分類する。
(熱間圧延設備)
本実施形態の圧延材の製造設備は、圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を実行する熱間圧延設備を備える。
本実施形態の熱間圧延設備は、図1に示すように、加熱炉4、圧延機2、デスケーリング設備3、反り測定装置5を有する。また、圧延材1の上下温度差を測定するための放射温度計(不図示)を圧延材1の上下面に設置する場合がある。
加熱炉4は、スラブを加熱する装置である。加熱炉4で加熱されたスラブは圧延機2に搬送される。
本実施形態では、圧延機2によって、予め設定したパス数、リバース圧延を行いながら所定の板厚まで熱間圧延が実行される場合とする。その圧延の際に、デスケーリング設備3によって、適宜、圧延機2に進入する前に、圧延材1の表面がデスケーリングされる。
デスケーリング設備3は、圧延機2の前後面の両方に配備される場合と、片側のみの場合がある。また、製品によっては、材質特性を向上させるため、リバース圧延の途中で圧延材1を所定時間待機空冷又は冷却し、圧延材1を予め設定された温度域で圧延を行う制御圧延を実施する場合がある。
本実施形態では、圧延機2は、図2に示すように、設備非対称情報として、例えば、上下ワークロール2aの周速差、パスライン位置などを、圧延パス毎に変更可能である。一般的な圧延機2では、代表的な値として、ロール径は最小800mmから最大1200mm、上下ワークロールの周速差は最大25%、パスラインの高さ(パスライン位置)は5mmから30mmの範囲で変更可能である。なお、符号2bはバックアップロールを表す。
また、熱間圧延設備は、圧延操業を制御する圧延制御装置11を有する。
ここで、各圧延パスにおける、圧延条件のデータの組を、圧延条件データセットとも記載する。
(圧延制御装置11)
圧延制御装置11は、図3に示すように。反り抑制装置12と圧延制御部16とを有する。
圧延制御部16は、上位コンピュータ10から取得した情報に基づき、各圧延パスでの圧延条件を設定し、設定した圧延条件に基づき、各圧延パスでの圧延操業を制御する。ただし、反り抑制装置12で操業条件の一部が更新された場合には、その操業条件を優先して採用する。
ここで、本実施形態では、目標の反り量以下に反りを制御する圧延パスである予測対象圧延パスを、複数の圧延パスから選択する。本実施形態では、予測対象圧延パスを最終圧延パスとする。予測対象圧延パスは、最終圧延パスでなくても構わないし、2以上設定してもよい。
また、本明細書では、複数の圧延パスのうち、予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとする。非対称要因同定パスは、操業時に動的に決定してもよい。また、非対称要因同定パスを2以上設定しても良い。非対称要因同定パスは、予測対象圧延パスに近いパスほど好ましい。
そして、複数の圧延パスのうち、少なくとも予測対象圧延パス及び非対称要因同定パスでの圧延条件には、上下非対称要因となる圧延条件を含む。例えば、少なくとも予測対象圧延パス及び非対称要因同定パスでの圧延条件として、圧延ロールの上下周速差、上下ワークロール径差、パスライン位置から選択した1又は2以上の設備非対称情報に関するデータと、1以上の非対称要因情報に関するデータと、を含む。
(反り抑制装置12)
反り抑制装置は、予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1の先端部の反り量を制御する処理を実行する。反り抑制装置は、図3に示すように、反り予測装置13、圧延条件再設定部15を有する。
(反り予測装置13)
反り予測装置13は、圧延材1を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程における、予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を予測する装置である。
反り抑制装置は、図4に示すように、学習用データ取得部13A、反り予測モデル生成部13C、反り量測定部13E、非対称要因同定部13D、及び先端反り予測部13Fを備える。
ここで、本実施形態では、学習用データ取得部と反り予測モデル生成部13Cは、オフラインで実行され、反り量測定部13E、非対称要因同定部13D、及び先端反り予測部13Fは、圧延工程の実行中にオンラインで実行される。また、反り予測装置13における先端反り予測部13Fの処理が、予測対象圧延パスでの圧延開始前に完了するように設定する。非対称要因同定パスの次のパスが実行される前に、先端反り予測部13Fの処理が完了していることが好ましい。
<学習用データ取得部13A>
学習用データ取得部13Aは、圧延条件のデータ(圧延条件データセット)を入力データに含み、圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデル13Aaを有する。学習用データ取得部13Aは、数値計算モデル13Aaを用いて、圧延条件データセットと圧延機2出側での反り量のデータとからなる学習用データを複数組、取得する処理を実行する。取得した学習用データは、データベース13Bに順次格納しておく。
すなわち、学習用データ取得部13Aでは、物理モデルを用いた数値計算を、複数の圧延条件データセットに対して実行し、それぞれに対応する圧延機2出側の圧延材1の反り量の計算を行う。
一般的に、数値計算モデル13Aaに有限要素法を適用した場合には、1つの圧延条件データセットに対して、約1~3時間程度の計算時間を要する場合がある。しかし、本実施形態では、学習用データ取得部13Aの処理をオフラインで実行するため、1ケース(1つの圧延条件データセット)の問題を解く際の計算時間の制約は発生せず、予め各圧延条件データセットから反り量を求める計算を実行しておけばよい。また、多数の圧延条件データセットに対する計算の時間を短縮するためには、複数の計算機を用いて複数の圧延条件データセットに対応した数値計算を並行して実行することで短期間に計算を完了させることができる。
<数値計算モデル13Aa>
数値計算モデル13Aaには、有限要素解析やすべり線場法、エネルギー法など、圧延材1の変形状態を計算することができる各種数値解析法などの公知の物理モデルを用いることができる。なお、いわゆる2次元圧延理論のようなスラブ法を基礎とした数値解析法は、圧延材1内部の応力状態を推定することは可能であるが、変形状態を計算することができないため、これらは含まれない。
特に有限要素法については、市販の汎用解析ソフトが多数存在し、これらを適宜選択して組み込むことにより活用が可能である。有限要素法も連続体を有限個の要素に分割した近似解法の一種である。ここで、有限要素法は、要素の節点における力のつり合いと変位の連続性を満足する解を求めるものであり、変形が不均一である場合にも精度の高い解を得ることができる。有限要素法では、要素内の応力、ひずみ、変位は要素毎に独立に定義され、節点の変位(速度)と関連付けられることで、連立方程式を解く問題として定式化される。その際、要素の節点における変位(速度)を未知変数として、それによりひずみ(増分)や応力を評価する方法が広く用いられている。
有限要素法は、要素内の応力のつり合い条件に対して、積分形で表した仮想仕事の原理に基づいて計算を行うのが特徴である。解析結果の精度は、要素分割などの条件によって変化し、計算時間も要する。しかしながら、本実施形態では、学習用データ取得部13Aの実行をオフラインで行うため、問題ない。
また、有限要素法は、塑性力学の基礎式を節点又は要素内で満足する解として、他の方法では解くことが難しい問題に対しても解が得られるのが特徴である。したがって、圧延材1の先端部の反り解析のように多数の因子が複合して影響する問題に対しても、実現象に近い解を得ることができる。
<圧延条件データセット>
圧延条件データセットは、圧延ロールの上下周速差、上下ワークロール径差、パスライン位置から選択した1又は2以上のデータと、上記の非対称要因情報のデータと、を含む。取得した各学習用データ21は、順次、データベース13Bに格納する(図5参照)。
本実施形態では、圧延条件として、圧延パスの入側板厚、出側板厚、変形抵抗、摩擦係数(基準摩擦係数として例えば上面の摩擦係数を用いる)、ワークロール径などの上下対称圧延の解析を行うために必要なデータに加え、設備非対称情報として上下のワークロール径差や周速差、パスライン位置を用いると共に、非対称要因情報である上下摩擦係数差(基準摩擦係数を上面の摩擦係数と仮定すると、下面の摩擦係数を表すことと同じ意味がある)、圧延材1の上下温度差を含む。
なお、圧延パスの入側における圧延材1先端部の反りの影響を考慮する場合には、圧延パス入側の圧延材1先端部の反り量を圧延条件データセットに加えてもよい。ただし、数値計算モデル13Aaへの入力データとなる圧延条件データセットは、これらに限定されることなく、圧延材1の先端部の反りに影響を与える各種因子を定量化したデータを用いることができる。このとき、設備非対称情報について、上下のワークロール径差が同一であれば、そのデータをゼロと仮定することで、上下対称圧延の圧延条件も圧延条件データセットには含まれる。
なお、演算に用いる圧延条件データセットのデータは、予めデータベース13Bに格納しておけば良い。
また、圧延条件に、デスケーリング設備3の操業情報を含めても良い。この場合、デスケーリング装置の操業情報と圧延材1の摩擦係数への影響を予め数式等により関連付けておけばよい。このとき、摩擦係数への影響を表す数式には、デスケーリング水の噴射圧力、噴射回数、噴射の有無の影響を表すことができる数式を用いるのが好ましい。
<非対称要因情報である圧延材上下温度差>
圧延材上下温度差は、圧延材1の表面温度の上下差と定義する。圧延材1の内部温度は、板厚方向に対する2次関数で近似できるものとして、圧延材上下温度差と、板厚方向平均温度又は板厚中心温度を与えることで特定される。伝熱計算で算出される板厚方向の温度分布は定常状態において概ね放物線形状の分布で近似できることに対応する。
<数値計算モデルの出力>
数値計算モデル13Aaの出力は、圧延機2出側での圧延材1の先端部1aの反り量の情報である。圧延機2出側の圧延材1先端部反り量Hは、図6のように、圧延方向の所定の距離範囲に応じた先端部の高さ、若しくは曲率として定義する。この定義は、後述する反り量の測定と同じにする必要がある。ただし、圧延材1を側面からみた横断面で形成される曲線を、先端からの距離の関数として近似した関数式を出力としたり、有限要素法による計算結果が画像として出力した結果を圧延機2出側の圧延材1先端部反り情報として用いたりしてもよい。
<データベース13B>
圧延条件データセットとそれに対応する圧延機2出側の圧延材1の先端部の反り量からなる学習用データ21が、データベース13Bに保存される。データベース13Bに蓄積されるデータは、オンラインの操業と並行して、オフラインで随時計算を行うことで、多くのデータを得ることができる。特に、実操業で蓄積されるデータとは異なり、意図的に圧延条件データセットの値を設定できるため、圧延条件データセットに統計的な偏りが生じにくく、機械学習を行うのに適したデータとなる。また、あくまで厳密な数値計算の結果を蓄積するので、経時的に変動するような学習用データではなく、学習用データ21を蓄積するほど有用なデータベース13Bとなる。
<反り予測モデル生成部13C>
本実施形態の反り予測モデル生成部13Cは、データベース13Bに格納された複数組の圧延条件データセットと反り量の関係に基づき、入力する圧延条件データセットに対する圧延材1先端部の反り量を求める機械学習により学習された反り予測モデル20を生成する。ここで、モデル化とは、数値計算での入出力の関係を等価な関数形に置き換えることを意味する。
ここで、圧延条件と圧延機2出側の圧延材1先端部反り量の関係は、例えば図7に示すように、複雑な非線形性を示す。このため、簡易的に1次線形を仮定した影響係数を用いたモデル化では精度が低く、ニューラルネットワークなどの非線形性を有する関数を用いた機械学習手法により高精度な予測が可能となる。図7中、圧延形状比とは、「接触長/平均板厚」である。
反り予測モデル20の生成に必要な学習用データの数は、図7に示すように、例えば、圧延条件毎に5条件程度の数値計算結果を準備すればよい。例えば、圧延形状比、摩擦係数差、上下温度差、上下周速差、パスラインで各5条件とすれば、5の5乗で数値計算条件は3125通りとなる。仮に、計算時間は1条件1時間として、PCを数台用いれば、数週間のうちに、必要な学習用データが生成できる。これ以上よりもデータが少ないと実際の反り挙動を表現するのは困難である。学習用データは、少なくとも3000個以上のデータが必要であり、好ましくは10000個以上、よし好ましくは30000個以上のデータを用いる。
機械学習の方法は、公知の機械学習の方法を適用すればよい。機械学習は、例えば、ニューラルネットワークなどの公知の機械学習手法を用いればよい。このときニューラルネットワークには深層学習の手法を含むものとする。他の手法としては、決定木学習、ランダムフォレスト、サポートベクター回帰、ガウス過程、k近傍法などが例示できる。反り予測モデル20は例えば、反り量を求める関係式の形で表現できる。
なお、本実施形態では、反り予測モデル20はオフラインで生成することを例示している。ただし、反り予測モデル生成部13Cをオンラインの制御システムに組み込んで、随時オフラインで計算され蓄積される学習用データを用いて、定期的に反り予測モデル20の更新を行ってもよい。
ここで、学習用データ取得部13A及び反り予測モデル生成部13Cを用いて生成された反り予測モデル20は、理論的に求めたものであるので、複数の圧延機2に対して用いることができる。圧延条件データセットに、個々の圧延機特有の情報、例えばワークロール径を含めて対応すればよい。
<反り量測定部13E>
反り量測定部13Eは、圧延工程の処理中に、非対称要因同定パスにおける圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を測定する。具体的には、反り量測定部13Eは、非対称要因同定パスと判定すると、反り測定装置5を介して反り量を取得する。
本実施形態では、非対称要因同定部13Dで用いる反り量の実測値を得るために、圧延パスの出側には、圧延材1の先端部の反り量を測定する反り測定装置5を設置する。
反り測定装置5は、例えば図8のように、圧延先端部1a側をエリアカメラ30で撮影し(図8(b)が撮像範囲の例である)、撮影した撮像データを画像処理により定量化することで得られる。また、レーザーやマイクロ波などの距離計を上面若しくは下面に設置して、反り量の情報である、反り高さを直接測定しても構わない。
反り量とは、例えば、圧延先端からある一定の水平距離だけ離れた位置での高さ方向の差と定義できる。また、圧延先端からある一定距離だけ離れた位置までの反り形状を円で近似し、そのようにして求められた円の曲率を反り情報として定義しても構わない。いずれの方法でも、水平距離は、1~5m程度とすればよい。反りは圧延材1の自重の影響により、先端から最大5m程度の範囲で発生する。また、水平距離を1m以下とすると測定できる反り量が小さくなり評価が困難となる。
<非対称要因同定部13D>
非対称要因同定部13Dは、反り量測定部13Eが測定した反り量と、反り予測モデル20を用いて予測した非対称要因同定パスにおける反り量とに基づき、非対称要因同定パスでの圧延条件に含まれる圧延材1の上下非対称要因のうち、圧延材1の状態に起因する非対称要因情報のデータを算出する。
本実施形態の非対称要因同定部13Dは、反り量測定部13Eが測定した反り量と、反り予測モデル20を用いて予測する反り量との差が予め設定した設定値以下となる非対称要因情報のデータを、先端反り予測部13Fで用いる値として算出する。例えば、反り予測モデル20の入力データ中の少なくとも非対称要因情報を修正して、反り予測モデル20による予測反り量を演算することを繰り返し実行し、実測の反り量と予測反り量との差が、予め設定した設定値以下となったときの反り予測モデル20の入力データに使用した非対称要因情報のデータを、同定した非対称要因情報のデータとする。
本実施形態では、非対称要因情報は、被圧延材1における、上下面の摩擦係数差及び温度差の少なくとも一方とする。
<非対称要因同定パス>
非対称要因同定パスは、圧延中のパススケジュールに基づいて選択された最終パスを除く途中パスから選択された任意の圧延パスである。ただし、非対称要因同定パスは一つの圧延パスでも複数の圧延パスを選択してもよい。
非対称要因同定パスは、予測対象圧延パスの直前又は近い圧延パスから選択するのが好ましい。非対称要因同定パスで同定された非対称要因が、予測対象圧延パスの圧延挙動に対する影響度が大きくなるため、予測対象圧延パスにおける反り予測精度が向上するからである。また、複数の圧延パスを非対称要因同定パスとして選択した場合には、各パスで同定された非対称要因情報の平均値や重み付きの情報を非対称要因情報とすることができる。多数のパスによって非対称要因情報を同定することで、ばらつきの少ない情報の同定が可能だからである。
また、非対称要因同定パスを予め設定するのではなく、圧延材1先端部反り量の測定値がある値を初めて超えた圧延パスを非対称要因同定パスとして定義することもできる。圧延中に大きな反りの発生がないうちは非対称要因となる操業条件が適正な値に設定されていることを意味するため、以降の圧延パスにおいて積極的に反りを修正する必要がないからである。逆に、圧延中に反りが発生した場合には、上下非対称要因が生じており、それ以降の圧延パスに対して上下非対称要因が影響を与える可能性が高いからである。更に、圧延開始から毎パスで上下非対称要因を同定し、同定した上下非対称要因を表す指標の値が、所定の値を超えた圧延パスを、非対称要因同定パスとしてもよい。ただし、この場合、動的に非対称要因同定パスが決定されない場合には、予測対象圧延パスの直前を非対称要因同定パスとする。
<先端反り予測部13F>、
先端反り予測部13Fは、非対称要因同定部13Dが算出した非対称要因情報のデータに基づき、予測対象圧延パスにおける圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を予測する。
本実施形態の先端反り予測部13Fは、圧延条件設定部13Gが設定した圧延条件と反り予測モデル20を用いて、予測対象圧延パスで予測される反り量を演算し、その際、非対称要因同定部13Dが算出した非対称要因情報のデータを、反り予測モデル20の入力データの一つとする。なお、圧延条件設定部13Gは、上位コンピュータ10から取得した情報に基づき、各圧延パスでの圧延条件を設定する処理を行う。
本実施形態では、圧延材1の状態(性状など)に起因する非対称要因情報は、その後の下流の圧延パスでも、ほぼ維持されるとし、非対称要因同定パスで同定した非対称要因情報のデータを、反り予測モデル20の入力データの一つとして、予測対象圧延パスでの反り量を予測する。
なお、非対称要因情報のデータを、反り予測モデル20の入力データとして使用する際に、予め実験や操業結果に基づき求めた、非対称要因情報の伝達に関する影響係数を乗算して用いても良い。
ここで、先端反り予測部13Fでの反り予測は、反り予測モデル20を用いることが、精度良く且つ簡易に計算可能であるため、好ましい。ただし、反り予測は、非対称要因同定部13Dが算出した非対称要因情報のデータを用いて演算可能であれば、特許文献1に記載のような方法によって、反り予測モデル20を用いずに演算してもよい。
(反り抑制装置)
反り抑制装置は、圧延材1を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を制御する。
本実施形態の反り抑制装置は、図3、図5に示すように、上記の反り予測装置13と、許容反り判定部22と、圧延条件再設定部15とを備える。
本実施形態の反り抑制装置は、反り予測装置13の機能部のうち、上述の通り、非対称要因同定部13D、反り量測定部13E、先端反り予測部13Fをオンラインにて実行する。
<許容反り判定部22>
許容反り判定部22は、先端反り予測部13Fが予測した反り量が予め設定した反り量よりも大きいか否かを判定する。予測した反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、圧延条件再設定部15に移行する。
<圧延条件再設定部15>
圧延条件再設定部15は、先端反り予測部13Fが予測した反り量が小さくなる方向に、予測対象圧延パスでの圧延条件を再設定する。再設定する圧延条件は、例えば、圧延ロールの上下周速差及びパスライン位置の少なくとも一方とする。その後、先端反り予測部13Fに移行する。
なお、再設定する圧延条件に、デスケーリング設備3の操業条件も含まれる。
以上によって、許容反り判定部22及び圧延条件再設定部15が繰り返し実行されることで、予測対象圧延パスでの反り量が予め設定した反り量の範囲となる圧延条件に更新される。なお、予め設定した回数だけ、許容反り判定部22及び圧延条件再設定部15が繰り返し実行されたら、処理を終了する。予め設定した回数を1回としてもよい。
また、圧延条件再設定部15の処理は、後述する非対称要因低減パスに対して同様の処理を行うようにしても構わない。この場合、圧延条件再設定部15は第2圧延条件再設定部を構成する。
<圧延制御部16>
圧延制御部16は、上位コンピュータから取得した各圧延パスでの圧延条件設定値に基づき、各圧延パスの圧延操業を制御する。ただし、予測対象圧延パスや非対称要因同定パスにあっては、反り抑制装置で圧延条件の更新があった場合には、その更新情報を用いて圧延操業を制御する。
本実施形態について、更に詳細に説明する。
「第1の実施形態」
第1の実施形態について、図10を参照しつつ説明する。
<非対称要因同定部13D>
第1の実施形態は、非対称要因同定部13Dで同定する非対称要因情報として、圧延材1の上下面における、ロールと圧延材1との接触面における摩擦係数の上下差(上下摩擦係数差と呼ぶ)を用いる場合の例である。
また、第1の実施形態では、非対称要因情報として上下摩擦係数差と、圧延材1の上下温度差とを使用する。第1の実施形態では、上下温度差は実測して取得する。
圧延材1の上下温度差の同定は次のようにして行う。
すなわち、第1の実施形態では、図1の圧延機2に付随して、圧延パスの入側に圧延材1の表裏(上下)の温度を測定するための温度計を設置し、非対称要因同定パスにおける上下温度差を測定する。これにより非対称要因情報として、圧延材1の上下温度差を同定することができる。設置する温度計は、放射温度計が好ましい。温度測定位置は、例えば、デスケーリング後の位置とする。
その他の反り予測モデル20の入力データとなる実績データは、以下のようにして収集する。非対称要因同定パスにおける、圧延条件データセットとしての、入側板厚、出側板厚、変形抵抗、基準摩擦係数、ワークロール径などのデータは、圧延パススケジュールの設定値を用いればよい。必ずしもセンサー等によるオンラインの計測値を用いる必要はない。
また、設備非対称情報である上下のワークロール径差や周速差、パスライン位置については通常の圧延機2の制御装置の制御対象となるパラメータであるため、各制御装置の設定値又は圧延機2に設置されているセンサーで検出される測定値を用いる。
以上から、反り予測モデル20における実績データとして、上下摩擦係数差を除いた圧延条件データセットが収集される。
一方、出力実績データとして、上記の非対称要因同定パスにおける実測反り量が得られる。
<上下摩擦係数差の同定について>
非対称要因情報としての上下摩擦係数差の同定は、以下のように行う。
まず、反り予測モデル20の入力データである上下摩擦係数差を仮定し、他の入力データとともに反り予測モデル20によって予測反り量を求める。
次に、予測反り量と実測反り量との差が、予め設定された範囲内にない場合には、上下摩擦係数差を修正し、改めて予測反り量を算出する。このような計算を繰り返すことで、予測反り量と実測反り量との差が予め設定された範囲内となった時点で計算を終了し、そのときに仮定した上下摩擦係数差を非対称要因情報のデータとして同定する。
また、圧延材1の先端部反り量と上下摩擦係数差の関係は、図9に例示するように単調な関係にある場合が多いため、上記の方法に代えて、例えばニュートン法のような最適化計算手法により同定してもよい。未知変数である上下摩擦係数差が一つであるため、このような方法により非対称要因情報を一意に求めることができる。
一方、上記の実施形態とは異なり、オフラインのデータベース13Bを用いて、上下摩擦係数差を除いた圧延条件データセットと、圧延材1の先端部反り量を入力データとして、上下摩擦係数差を出力データとする機械学習による非対称要因情報の予測モデルを別途生成しておき、これをオンラインの非対称要因同定部13Dに適用してもよい。これにより、繰り返し計算を実行することなく、非対称要因情報を同定することができる。
(予測対象圧延パスにおける先端反り予測)
本発明の実施形態は、上記の非対称要因同定パスよりも下流の圧延パスである予測対象圧延パスにおいて、算出された非対称要因情報に基づいて圧延機2出側での圧延材1先端部1aの反り量を予測するものである。
予測対象圧延パスは、非対称要因同定パスよりも下流側の圧延パスで任意に設定することができる。例えば、圧延中のパススケジュールが設定された場合の最終パスを選択することができる。ただし、予測対象圧延パスは一つの圧延パスでも複数の圧延パスを選択してもよい。
また、予測対象圧延パスを予め設定するのではなく、非対称要因同定パスにおいて算出される非対称要因情報が表す値が、予め設定された値を超えた場合に、以降の圧延パスを予測対象圧延パスとして設定することができる。非対称要因情報が表す値が、予め設定された値を超えるということは、以降の圧延パスにおいて積極的に反りを修正する必要が生じることを意味するからである。
ここで、先端反り予測部13Fにおける予測対象圧延パスにおける先端反り予測には、オフラインで生成した学習済の反り予測モデル20を適用する。その際の、入力データとなる圧延条件データセットには、予測対象圧延パスにおける入側板厚、出側板厚、変形抵抗、ワークロール径などの設定データとして、圧延パススケジュールの設定値を用いる。また、予測対象圧延パスにおける設備非対称情報である上下のワークロール径差や周速差、パスライン位置の設定値を用いる。
更に、非対称要因情報として、非対称要因同定パスにおいて同定された上下摩擦係数差が、予測対象圧延パスにおいても引き継がれると仮定して、反り予測モデル20の入力データに用いる。その際、予測対象圧延パスにおける上下摩擦係数差も同じ値であるとして反り予測モデル20の入力データに用いる。
また、圧延材1の上下温度差については、予測圧延パスの入側で測定される上下温度差を用いる。ただし、圧延材1の上下温度差として、非対称要因同定パスにおいて測定された圧延材1の上下温度差が、そのまま予測圧延パスにおいても維持されると仮定して、非対称要因同定パスにおいて測定された圧延材1の上下温度差を、予測対象圧延パスにおける圧延材1の上下温度差として入力データとしてもよい。
一方、非対称要因同定パスにおいて同定された非対称要因情報を、予測圧延パスにおける反り予測モデル20の入力データに用いると、予測対象圧延パスにおける反り予測が過大となる場合があるため、非対称要因同定パスにおいて同定された上下摩擦係数差をα倍(0<α≦1.0)した値を、予測圧延パスにおける反り予測モデル20の入力データとしてもよい。このとき、αの値は、過去の操業実績に基づいて設定すればよい。
(予測対象圧延パスにおける反り抑制)
以上のようにして予測対象圧延パスにおける圧延材1の先端反りの予測が可能となるので、許容反り判定部22において、予測される反り量が大きいと判定した場合には、予測対象圧延パスにおける圧延条件を再設定することができる。例えば、予測される反りが小さくなるように、上下のワークロール周速差やパスライン位置を再設定する。再設定する方法は、例えば特許文献2に記載されているような従来の手段を適用することができる。これにより、予測対象圧延パスにおける圧延材1の先端反りを低減させることができる。
また、予測対象圧延パスにおける反り量をより小さくするためには、予め予測対象圧延パスにおける許容反り量を設定しておき、予測反り量が許容反り量の範囲内にある場合には、そのまま予測対象圧延パスの圧延条件を当初の設定のままとする。
一方、許容反り量の範囲内から外れると予測される場合には、予測対象圧延パスにおける上下のワークロール周速差やパスライン位置を再設定する。その際、再設定される条件を入力データとする反り予測モデル20によって再度、圧延材1先端部の反り予測を行い、改めて許容反り範囲となるか否かをチェックして、これを圧延材1先端部の反り予測値が許容反り範囲内になるように繰り返す。これにより、予測対象圧延パスにおける反り量を一層低減することができる。
再設定する圧延条件は、1つ又は複数を採用することができる。再設定する圧延条件は設備非対称情報に限定されない。例えば、圧延パス出側の圧延材1の板厚を変更してもよい。設備非対称情報や非対称要因情報は、それぞれ単独で反りに影響を与えるだけでなく、他の圧延条件と複合して影響を与えるため、上下対称の圧延条件を表す操業パラメータを変更しても、反りを抑制することができる場合があるからである。
再設定する圧延条件は、圧延材1先端部の反り予測モデル20を用いて、圧延条件を逐次変更して計算し、圧延材1先端部の反り量が小さくなるように設定すればよい。また、予め、圧延条件を変更した数値計算を行い、圧延材1先端部の反り量との関係を求めておいてもよい。更には、圧延材1先端部反り量の予測値と各圧延条件の変更量を重み付け評価関数とする最適化方式を用いてもよい。これらは、再設定する各操業パラメータの組合せの数が膨大となり、圧延材1先端部反り量が許容値以下となる圧延条件の組合せを求めるのが困難な場合に有効である。
ここで、許容反り範囲とは、周辺設備への圧延材1の衝突を避けるために、100mm以下のように設定するのがよい。より好ましくは50mm以下である。
「第2の実施形態」
第2の実施形態について、図11を参照しつつ説明する。
第2の実施形態は、非対称要因情報として、圧延材1の上下温度差を用いるものである。第2の実施形態は、圧延時の摩擦係数は直接的に測定することが困難なため、摩擦係数は上下で均一であると仮定して、非対称要因同定部13Dにおいて、非対称要因情報としての上下温度差を用いるものである。
ここで、反り予測モデル20の入力データとなる実績データは以下のようにして収集する。非対称要因同定パスにおける入側板厚、出側板厚、変形抵抗、基準摩擦係数、ワークロール径などの入力データは、圧延パススケジュールの設定値を用いればよく、必ずしもセンサー等による計測値を用いる必要はない。また、設備非対称情報の実績データとして、上下のワークロール径差や周速差、パスライン位置については通常の圧延機2の制御装置の制御対象となるパラメータであるため、各制御装置の設定値又は圧延機2に設置されているセンサーで検出される測定値を用いる。また、本実施形態においては、上下摩擦係数差はゼロと仮定する。
このようにして、反り予測モデル20における実績データとして、上下温度差を除いた圧延条件データセットが収集される。一方、出力実績データとして、上記の非対称要因同定パスにおける実測反り量が得られている。
<非対称要因同定部13Dにおける上下温度差の同定>
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態と異なり、図1の圧延機2に付随して、圧延パスの入側に圧延材1の表裏(上下)の温度を測定するための温度計は必ずしも必要ない。圧延材1の裏面(下面)の温度計が設置されていない設備や、スケールの落下や水蒸気などにより温度計の測定精度が劣る場合に適した実施形態である。
非対称要因情報としての上下温度差の同定は、以下のように行う。
まず、反り予測モデル20の入力データである上下温度差を仮定し、他の入力データとともに反り予測モデル20によって予測反り量を求める。次に、予測反り量と実測反り量との差が、予め設定された範囲内にない場合には、上下温度差を修正し、改めて予測反り量を算出する。このような計算を繰り返すことで、予測反り量と実測反り量との差が予め設定された範囲内となった時点で計算を終了し、そのときに仮定した上下温度差を非対称要因情報とする。
また、ニュートン法のような最適化計算手法により同定してもよい。未知変数である上下温度差が一つであるため、このような方法により非対称要因情報を一意に求めることができる。
一方、上記の実施形態とは異なり、オフラインのデータベース13Bを用いて、上下温度差を除いた圧延条件データセットと、圧延材1の先端部反り量を入力データとして、上下温度差を出力データとする機械学習による非対称要因情報の予測モデルを別途生成しておき、これをオンラインの非対称要因同定部13Dに適用してもよい。これにより、繰返し計算を実行することなく、非対称要因情報を同定することができる。
<予測対象圧延パスにおける先端反り予測>
第2の実施形態においても、予測対象圧延パスの設定は、第1の実施形態と同様である。
ただし、第2の実施形態では、予測対象圧延パスにおける先端反り予測に用いる圧延条件データセットの非対称要因情報として、先端反り予測部13Fでは、非対称要因同定パスにおいて同定された上下温度差が、予測対象圧延パスにおいても引き継がれると仮定して、反り予測モデル20の入力データに用いる。その際、予測対象圧延パスにおける上下温度差も同じ値であるとして反り予測モデル20の入力データに用いる。
ただし、予測対象圧延パスにおける反り予測に誤差が過大となる場合があるため、非対称要因同定パスにおいて同定された上下温度差をβ倍(0<β≦1.0)した値を、予測圧延パスにおける反り予測モデル20の入力データとしてもよい。このとき、βの値は、過去の操業実績に基づいて設定すればよい。
<第2の実施形態での予測対象圧延パスにおける反り抑制>
第2の実施形態においても、予測対象圧延パスにおける反り抑制方法は、第1の実施形態と同様である。
「第3の実施形態」
第3の実施形態について、図12を参照しつつ説明する。
第3の実施形態は、非対称要因同定パスの下流パスであって、予測対象圧延パスの上流パスの圧延パスである非対称要因低減パスでの操業条件を再設定して、予測対象圧延パスでの反りを抑制する処理例である。
非対称要因低減パスとは、非対称要因同定パスにおいて同定された非対称要因を、予測対象圧延パスまでの間に、解消するような操業条件を設定する圧延パスである。
第1の実施形態のように非対称要因情報として上下摩擦係数差を用いる場合には、圧延条件再設定部15は、デスケーリング条件を非対称要因低減手段として用いることができる。
圧延材1表面の酸化スケールはロールバイト内で潤滑性と関連するため、デスケーリング水の噴射圧力、噴射回数や噴射有無を圧延材1の上下面で異なるように設定することで上下摩擦係数差を変更できる。
図13はデスケーリング条件を意図的に変更した圧延を行い、圧延材1先端部の反り量から上下摩擦係数差を同定した結果である。図13から、デスケーリング水の噴射圧力を高く設定した側や噴射した側の表面の摩擦係数が小さくなることが分かる。
また、圧延条件再設定部15は、ワークロールと圧延材1間に吐出する潤滑油量を上下で変更するように再設定を実行してもよい。
一方、第2の実施形態のように、非対称要因として上下温度差を用いる場合には、圧延条件再設定部15の再設定処理として、非対称要因低減パスを複数設定し、そのパス間の時間を変更することで、上下温度差を調整することができる。圧延材1の上面は遮蔽物が少ないのに対して、下面はテーブルロールが輻射エネルギーの放出を抑制させ、温度低下が小さいことから、一定の温度調整効果を得ることができる。
「実施形態の作用・効果」
以上のように、本実施形態は、種々の要因が複雑に影響する圧延パスにおける圧延材1先端部の反り挙動に対して、非対称要因同定パスにおいて上下摩擦係数差や上下温度差など、下流側の圧延パスに対しても影響を与える非対称要因情報と、圧延パス毎に設定される上下ワークロール周速やパスライン位置などの設備非対称情報とに分離しながら、オンラインで適用可能な反り予測モデル20を用いて非対称要因情報を同定し、下流側の予測対象圧延パスに対して影響を与える効果を考慮した反り予測を行うことができる。この結果、従来に比べて高精度に反りを予測し、制御することが可能となる。
(効果)
本実施形態は、次のような効果を奏する。
(1)本実施形態は、圧延材1を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程における、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を予測する反り予測方法であって、上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとし、圧延条件のデータを入力データに含み、圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデル13Aaを用いて、圧延条件のデータと上記反り量のデータとからなる学習用データを複数組、取得し、取得した複数組の学習用データを用いた機械学習によって、圧延条件のデータを入力データとし、圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を出力データとする反り予測モデル20を生成しておき、上記非対称要因同定パスにおける圧延機2出側で測定した圧延材1先端部の反り量と、上記反り予測モデル20を用いて予測した上記非対称要因同定パスでの反り量とに基づき、上記非対称要因同定パスにおける、圧延条件に含まれる圧延材1の上下非対称要因のうちの圧延材1の状態に起因する非対称要因情報のデータを算出し、算出した非対称要因情報のデータに基づき、上記予測対象圧延パスにおける圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を予測する、を備える。
反り予測装置13を、例えば、圧延材1を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程における、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を予測する反り予測装置13であって、上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとして設定し、圧延条件のデータを入力データに含み、圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデル13Aaを用いて、圧延条件のデータと上記反り量のデータとからなる学習用データを複数組、取得する学習用データ取得部13Aと、上記学習用データ取得部13Aが取得した複数組の学習用データを用いた機械学習によって、圧延条件のデータを入力データとし、圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を出力データとする反り予測モデル20を生成する反り予測モデル生成部13Cと、上記非対称要因同定パスにおける圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を測定する反り量測定部13Eと、上記反り量測定部13Eが測定した反り量と、上記反り予測モデル20を用いて予測した上記非対称要因同定パスにおける反り量とに基づき、上記非対称要因同定パスでの圧延条件に含まれる圧延材1の上下非対称要因のうち、圧延材1の状態に起因する非対称要因情報のデータを算出する非対称要因同定部13Dと、上記非対称要因同定部13Dが算出した非対称要因情報のデータに基づき、上記予測対象圧延パスにおける圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を予測する先端反り予測部13Fと、を備える構成とする。
この構成によれば、加熱工程にてスラブを加熱し、加熱されたスラブを熱間圧延する熱間圧延ラインにおいて、より有効に圧延先端部での反り量を予測することができる。
ここで、非対称要因情報は、圧延材1の状態に起因する情報であり、特に上下の値の比又は差で規定しているため、非対称要因同定パスよりも下流の圧延パスでもほぼ維持されると推定される。その非対称要因情報を、圧延された圧延時の情報から精度良く同定し、その同定した非対称要因情報を用いることで、反りの予測精度が向上する。
(2)本実施形態は、上記反り予測モデル20を用いて、上記予測対象圧延パスでの反り量を予測し、その際、上記算出した非対称要因情報のデータを、上記反り予測モデル20の入力データの一つとする。
例えば、上記先端反り予測部13Fは、上記反り予測モデル20を用いて、上記予測対象圧延パスで予測される反り量を演算し、その際、上記非対称要因同定部13Dが算出した非対称要因情報のデータを、上記反り予測モデル20の入力データの一つとする。
この構成によれば、予測対象圧延パスでの反り量の予測が、より精度良く且つより短時間で実行可能となる。
(3)本実施形態では、上記圧延条件として、圧延ロールの上下周速差、上下ワークロール径差、パスライン位置から選択した1又は2以上のデータと、上記非対称要因情報のデータと、を含む。
この構成によれば、より確実に圧延先端部での反り量を予測することができる。
(4)本実施形態では、上記非対称要因情報は、被圧延材1における、上下面の摩擦係数差及び温度差の少なくとも一方である。
この構成によれば、非対称要因情報をより確実に設定可能となる。
(5)本実施形態では、上記算出される非対称要因情報のデータは、上記測定した反り量と、上記反り予測モデル20を用いて予測する反り量との差が予め設定した設定値以下となる非対称要因情報のデータである。
例えば、上記非対称要因同定部13Dは、上記反り量測定部13Eが測定した反り量と、上記反り予測モデル20を用いて予測する反り量との差が予め設定した設定値以下となる非対称要因情報のデータを、上記先端反り予測部13Fで用いる値として算出する。
この構成によれば、非対称要因情報のデータの同定をより確実に実行可能となる。
(6)本実施形態では、上記圧延工程は、リバース圧延で行われる。
この構成によれば、同一圧延機による複数圧延パスの実行であるため、非対称要因同定パスよりも下流パスでの非対称要因情報のデータの精度が高くなり、より精度良く反りを予測可能となる。
なお、反り予測モデル20は、物理モデルを用いた演算によるデータを使用しているので、汎用性が高いモデルとなっている。
(7)本実施形態では、圧延材1を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を制御する反り抑制方法であって、上記に記載した熱間圧延における反り予測方法を有し、上記予測対象圧延パスで予測される反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、当該予測した反り量が小さくなる方向に、予測対象圧延パスでの圧延条件を再設定する。
例えば、圧延材1を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を制御する反り抑制装置であって、上記記載した熱間圧延における反り予測装置13を有し、上記先端反り予測部13Fが予測した反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、当該予測した反り量が小さくなる方向に、予測対象圧延パスでの圧延条件を再設定する圧延条件再設定部15を有する装置構成とする。
この構成によれば、圧延先端部での反り発生を抑制することが可能となる。
すなわち、オフラインでの有限要素法等の数値計算によって得られた学習用データを用いて、その学習用データを用いた機械学習により学習された反り予測モデル20を生成し、オンラインで反り予測モデル20を適用することにより、圧延時の上下面の摩擦係数の偏差等を同定し、次パス以降の圧延において反りを抑制する。これにより、圧延材1先端部の反りを予測し、その発生を確実に防止することができる。
このように本実施形態では、熱間圧延において、種々の上下非対称要因の影響を同時に考慮することができないという従来の問題点を解決し、オンラインで圧延先端部の反り量を高精度に予測しながら、その予測に基づき操業パラメータを適切に再設定することで、圧延先端部の反りの発生を確実に防止することが可能となる。
(8)本実施形態では、圧延材1を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を制御する反り抑制方法であって、上記に記載した熱間圧延における反り予測方法を有し、上記予測対象圧延パスで予測される反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、上記非対称要因同定パスよりも下流パスであって、かつ予測対象圧延パスよりも上流パスから選択した圧延パスである非対称要因低減パスにおいて、上記予測対象圧延パスで予測される反り量が小さくなる方向に、上記非対称要因低減パスにおける圧延条件を再設定する。
例えば、圧延材1を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を制御する反り抑制装置であって、上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとして設定し、上記に記載した熱間圧延における反り予測装置13を有し、上記先端反り予測部13Fが予測した反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、上記非対称要因同定パスよりも下流パスであって、かつ予測対象圧延パスよりも上流パスから選択した圧延パスである非対称要因低減パスにおいて、上記反り予測部が予測した、上記予測対象圧延パスにおける圧延材1先端部の反り量が小さくなる方向に、上記非対称要因低減パスにおける圧延条件を再設定する第2圧延条件再設定部を有する装置構成とする。
この構成によれば、圧延先端部での反り発生を抑制することが可能となる。
(9)本実施形態では、上記再設定する圧延条件は、圧延ロールの上下周速差及びパスライン位置の少なくとも一方である。
この構成によれば、より確実に反りを抑制可能となる。
(10)本実施形態では、上記に記載の熱間圧延における反り抑制方法を備える圧延材1の製造方法である。
例えば、上記に記載の熱間圧延における反り抑制装置を備える圧延材1の製造設備で実行する。
この構成によれば、より精度の良い圧延材1を製造可能となる。また、この構成によれば、予測対象圧延パスの実行前に反り抑制の制御が可能となる。
(11)本実施形態は、圧延材1を熱間圧延する圧延機2における、圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を予測する反り予測モデル20の生成方法であって、上記圧延機2の圧延条件のデータを入力データに含み、上記圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデル13Aaを用いて、圧延条件のデータと上記反り量とからなる学習用データを複数組、取得する学習用データ取得部13Aと、上記学習用データ取得部13Aが取得した複数組の学習用データを用いた機械学習によって、上記圧延条件のデータを入力データとし、圧延機2出側での圧延材1先端部の反り量を出力データとする反り予測モデル20を生成する反り予測モデル生成部13Cと、を備える。
例えば、上記反り予測モデル生成部13Cにおける反り予測モデル20は、ニューラルネットワークモデル、ランダムフォレスト、又はSVM回帰で学習されたモデルである。
この構成によれば、より精度良く反り予測のための反り予測モデル20を生成可能となる。
オフラインでの有限要素法等の数値計算によって得られた学習用データを用いて、その学習用データを用いた機械学習により学習された反り予測モデル20を生成するため、精度の高い学習用データを採用して、理論的な反り予測モデル20を生成できる。
以下に、本実施形態に基づく実施例を示す。
本実施例では、加熱炉4、リバース式圧延機2、その圧延機2の前面側にデスケーリング設備を有する厚鋼板の熱間圧延ラインに適用した場合を説明する。
「実施例1」
<本発明例1>
まず、本発明例1について説明する。
本発明例1では、板厚6~30mm、板幅2000~4500mmの炭素鋼からなる材料を反り予測の対象材として、リバース式圧延機2で、圧延パス数15~25で圧延を実行する条件にて、本実施形態に基づく熱間圧延を実行した。
なお、本実施例の熱間圧延ラインは、上下温度差を測定するための温度計と、圧延材1先端部反り量を測定するためのエリアカメラを具備している。
まず、学習用データ取得部13Aとして、市販の有限要素解析ソフトを用いて、圧延条件データセットに対する圧延材1先端部1aの反り量を数値計算により求めた。圧延条件データセットは、上記対象材の圧延条件を内包するように設定し、入側板厚8~250mm、出側板厚6~230mm、変形抵抗5~15kgf/mm、ワークロール径は1000~1100mm(上下同一)、ワークロール周速差は0~40mpm、パスラインは0~50mm、上下摩擦係数差は-0.1~0.1(上面の基準摩擦係数0.25)、圧延材上下温度差は-100~100℃(圧延材1板厚中心温度800~1100℃)とした。
それぞれについて数値計算により求めた圧延材1先端部反り量を、圧延条件データセットとともに学習用データとして、データベース13Bとしてオフラインに蓄積した。
更に、保存した学習用データを機械学習用の学習データとして、ニューラルネットワークを用い、反り予測モデル20を作成した。
非対称要因(上下摩擦係数差)のデータを求める非対称要因同定パスは、圧延材1の圧延中にはじめて圧延材1先端部の実測した反り量が100mmを超えたパスとした。圧延材1先端部反り量の測定は、圧延機2から先端部が2m進んだ時点での圧延先端部さと、圧延機2から1m離れた場所での圧延材1表面の高さの差と定義した。上下摩擦係数差の同定は、反り予測モデル20の入力である上下摩擦係数差を仮定して反り量を予測し、測定値との差の絶対値が10mm以下となるような、上下摩擦係数差を繰り返し計算により同定した。
反り予測対象圧延パスは、ここでは、反り予測精度の検証を目的として、非対称要因同定パス以降の全パスとした。予測対象圧延パスにおける先端反り予測には、上記オフラインで生成した学習済みの反り予測モデル20を適用した。非対称要因情報として、非対称要因同定パスにおいて同定された上下摩擦係数差が、予測対象圧延パスにおいても引き継がれると仮定して、反り予測モデル20の入力データに用いる。その際、予測対象圧延パスにおける上下摩擦係数差も同じ値であるとして反り予測モデル20の入力データに用いる。
<比較例1>
また、従来技術との比較のため、比較例1では、学習用データ取得部13Aにて、上下摩擦係数差をゼロとした圧延条件データセットの数値計算結果をもとに機械学習にて作成した反り予測モデル20を作成し、反り予測対象圧延パスの圧延条件から、反り量を予測した。
<評価>
本発明例1と比較例1での圧延材1先端部の反り量を標準偏差で比較すると、本発明例が19mm、比較例が66mmとなっており、本発明例1を採用した方が、大幅に反りが低減することが分かった。
「実施例2」
<本発明例2>
まず、本発明例2について説明する。
本発明例2では、板厚6~30mm、板幅2000~4500mmの炭素鋼からなる材料を反り抑制対象材として、リバース式圧延機2で、圧延パス数15~25で圧延を実行する条件にて、本発明例の実施例2を実行した。
なお、本実施例の熱間圧延ラインは、上下温度差を測定するための温度計と、圧延材1先端部反り量を測定するためのエリアカメラを具備している。
まず、事前に、有限要素法を用いた数値計算により、圧延条件と圧延機2出側での圧延先端部の反り量のデータを作成した。圧延条件は、入出側板厚、変形抵抗、上下ワークロール周速、上下ワークロール径、パスライン、圧延機入側での圧延材1先端部反り量、基準摩擦係数、上下摩擦係数差、圧延材1板厚方向平均温度、圧延材上下温度差を使用した。変形抵抗は、上記炭素鋼を用いた測定実験を事前に行い、歪と材料温度の関係とした。圧延材1内部温度は板厚方向に2次分布を仮定し、平均温度と上下温度差から求めた。圧延材1先端部反り量は、圧延機2から先端部が2m進んだ時点での圧延先端部さと、圧延機2から1m離れた場所での圧延材1表面の高さの差と定義した。なお、エリアカメラを用いた圧延材1先端部反り量の測定値の定義も同様である。
上記圧延条件を入力データ、数値計算結果である圧延機出側の圧延材1先端部反り量を出力データとする学習用データを用いた機械学習によって、反り予測モデル20を生成した。機械学習手法にはニューラルネットワークを使用し、中間層を3層とし、ノード数は5個ずつとした。活性化関数はシグモイド関数を用いた。
次に、圧延操業中において、非対称要因同定パスにおいて同定した上下摩擦係数差に応じて、上下摩擦係数が同じになるように非対称要因低減パスの操業条件を再設定し、効果を検証した。上下摩擦係数平均値は0.25とした。圧延材1板厚方向平均温度は計算予測値を使用し、上下温度差は上下面に設置した温度計により測定した。また、入出側板厚、上下ワークロール周速、パスラインは設定計算値を使用し、圧延機入出側での圧延材1先端部反り量はエリアカメラによって測定した。上下摩擦係数差同定圧延パスは、圧延材1の圧延中にはじめて圧延材1先端部反り量が100mmを超えたパスとした。上下摩擦係数差を同定した次の圧延パスの圧延入側にて、摩擦係数上下差が解消するように、デスケーリング噴射有無を上下で変更し圧延を行った。本実施例では、上下摩擦係数差が0.03を超えた場合に、摩擦係数が高い側のデスケーリングの噴射を止めた。
<比較例2>
また、比較例2として、上記と同様の圧延材1について、圧延材1の上下温度差の測定値に応じて圧延条件の調整を行った。上下摩擦係数平均値は0.25、上下摩擦係数差はゼロとして、反り予測モデル20により圧延機2出側での圧延材1先端部反り量を予測し、反り量が小さくなるようにパスラインを調整した。本発明の実施例と比較するため、圧延材1の圧延中にはじめて圧延材1先端部反り量が100mmを超えたパスより後の圧延パスに適用した。
<評価>
本発明例2と比較例2の圧延材1先端部の反り量を標準偏差で比較すると、本発明例2が21mm、比較例が52mmと大幅に低減しており、本発明の有効性が確認できた。
また、上下摩擦係数差の同定を、本発明の実施例の上下摩擦係数同定パスよりも後の圧延パス、つまりデスケーリング条件を再調整した以降の圧延パスについても実施した。同様に、従来技術を適用した圧延パスについても、上下摩擦係数差を同定した。
図14に両者の比較を示す。本発明例2が操業条件の調整後に上下摩擦係数差が解消しているのに対し、比較例2の場合は上下摩擦係数差に変化はなかった。圧延材1先端部の反り量は上下摩擦係数差の影響が大きく、上下摩擦係数差を解消することが反り低減に重要であることが分かる。
以上のように、本発明に基づく熱間圧延方法の適用により、圧延材1先端部反り量が大幅に低減した。圧延材1先端部反り量を低位安定に制御でき、設備破損などのトラブルを防止することが可能となることが分かった。
「実施例3」
<本発明例3>
まず、本発明例3について説明する。
本発明例3では、板厚8~20mm、板幅2000~4000mmの炭素鋼厚鋼板の圧延材1について、本発明例1と同じ熱間圧延ラインにて、本発明例と従来例の比較を行った。反り予測モデル20は本発明例1と同様に作成した。
圧延操業中において、非対称要因同定パスにおいて同定した上下摩擦係数差に応じて、上下摩擦係数が同じになるように非対称要因低減パスの操業条件を再設定し、本発明による反りの低減効果を検証した。上下摩擦係数平均値は0.25とした。圧延材1板厚方向平均温度は計算予測値を使用し、上下温度差は上下面に設置した温度計により測定した。また、入出側板厚、上下ワークロール周速、パスラインは設定計算値を使用し、圧延入出側での圧延材1先端部反り量はエリアカメラによって測定した。上下摩擦係数差同定圧延パスは、圧延材1の圧延中にはじめて圧延材1先端部反り量が100mmを超えたパスとした。
同定した上下摩擦係数差を用い、上下摩擦係数差同定圧延パスより後の予測対象圧延パスの圧延材1先端部反り量を予測し、予測対象圧延パスにおける反り量が小さくなるように非対称要因低減パスの圧延条件の再設定を行い、圧延を行った。再設定する圧延条件はパスラインとした。反り予測モデル20を用いて、所定の上下摩擦係数差を有する場合のパスラインと圧延材1先端部反り量の関係を事前に作成し、圧延材1先端部反り量が20mm以内となるようにパスラインを再設定した。
<比較例3>
また、比較例として、上記と同様の圧延材1について、圧延材1の上下温度差の測定値に応じて圧延条件の調整を行った。上下摩擦係数平均値は0.25、上下摩擦係数差はゼロとして、反り予測モデル20により圧延機2出側での圧延材1先端部反り量を予測し、反り量が小さくなるように上下ワークロール周速を調整した。
<評価>
本発明例3と比較例3での圧延材1先端部の反り量を標準偏差で比較すると、本発明が19mm、従来技術が61mmであり大幅に低減しており、本発明の有効性が確認できた。
以上の結果のように、本発明による熱間圧延方法の適用により、先端反り量が大幅に低減した。仕上げ圧延の先端反り量を低位安定に制御でき、設備破損などのトラブルを防止することが可能となることが分かった。
1 圧延材
2 圧延機
3 デスケーリング設備
4 加熱炉
5 反り測定装置
10 上位コンピュータ
11 圧延制御装置
13 反り予測装置
13A 学習用データ取得部
13Aa 数値計算モデル
13B データベース
13C 反り予測モデル生成部
13D 非対称要因同定部
13E 反り量測定部
13F 先端反り予測部
13G 圧延条件設定部
15 圧延条件再設定部(第2圧延条件再設定部)
16 圧延制御部
20 反り予測モデル
21 学習用データ
22 許容反り判定部
41 加熱炉

Claims (18)

  1. 圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程における、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測する反り予測方法であって、
    上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとし、
    圧延条件のデータを入力データに含み、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデルを用いて、圧延条件のデータと上記反り量のデータとからなる学習用データを複数組、取得し、
    取得した複数組の学習用データを用いた機械学習によって、圧延条件のデータを入力データとし、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとする反り予測モデルを生成しておき、
    上記非対称要因同定パスにおける圧延機出側で測定した圧延材先端部の反り量と、上記反り予測モデルを用いて予測した上記非対称要因同定パスでの反り量とに基づき、上記非対称要因同定パスにおける、圧延条件に含まれる圧延材の上下非対称要因のうちの圧延材の状態に起因する非対称要因情報のデータを算出し、
    算出した非対称要因情報のデータに基づき、上記予測対象圧延パスにおける圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測し、
    上記反り予測モデルを用いて、上記予測対象圧延パスでの反り量を予測し、その際、上記算出した非対称要因情報のデータを、上記反り予測モデルの入力データの一つとする、
    を備えることを特徴とする熱間圧延における反り予測方法。
  2. 上記圧延条件として、圧延ロールの上下周速差、上下ワークロール径差、パスライン位置から選択した1又は2以上のデータと、上記非対称要因情報のデータと、を含むことを特徴とする請求項1記載した熱間圧延における反り予測方法。
  3. 上記非対称要因情報は、被圧延材における、上下面の摩擦係数差及び温度差の少なくとも一方であることを特徴とする請求項に記載した熱間圧延における反り予測方法。
  4. 上記算出される非対称要因情報のデータは、上記測定した反り量と、上記反り予測モデルを用いて予測する反り量との差が予め設定した設定値以下となる非対称要因情報のデータである、ことを特徴とする請求項1~請求項のいずれか1項に記載した熱間圧延における反り予測方法。
  5. 上記圧延工程は、リバース圧延で行われることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか1項に記載した熱間圧延における反り予測方法。
  6. 圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を制御する反り抑制方法であって、
    請求項1~請求項のいずれか1項に記載した熱間圧延における反り予測方法を有し、
    上記予測対象圧延パスで予測される反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、当該予測した反り量が小さくなる方向に、予測対象圧延パスでの圧延条件を再設定することを特徴とする熱間圧延における反り抑制方法。
  7. 圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を制御する
    反り抑制方法であって、
    請求項1~請求項のいずれか1項に記載した熱間圧延における反り予測方法を有し、
    上記予測対象圧延パスで予測される反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、上記非対称要因同定パスよりも下流パスであって、かつ予測対象圧延パスよりも上流パスから選択した圧延パスである非対称要因低減パスにおいて、上記予測対象圧延パスで予測される反り量が小さくなる方向に、上記非対称要因低減パスにおける圧延条件を再設定することを特徴とする熱間圧延における反り抑制方法。
  8. 上記再設定する圧延条件は、圧延ロールの上下周速差及びパスライン位置の少なくとも一方であることを特徴とする請求項又は請求項に記載した熱間圧延における反り抑制方法。
  9. 請求項~請求項のいずれか1項に記載の熱間圧延における反り抑制方法を備える圧延材の製造方法。
  10. 圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程における、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測する反り予測装置であって、
    上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとして設定し、
    圧延条件のデータを入力データに含み、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとして演算するための物理モデルに基づく数値計算モデルを用いて、圧延条件のデータと上記反り量のデータとからなる学習用データを複数組、取得する学習用データ取得部と、
    上記学習用データ取得部が取得した複数組の学習用データを用いた機械学習によって、圧延条件のデータを入力データとし、圧延機出側での圧延材先端部の反り量を出力データとする反り予測モデルを生成する反り予測モデル生成部と、
    上記非対称要因同定パスにおける圧延機出側での圧延材先端部の反り量を測定する反り量測定部と、
    上記反り量測定部が測定した反り量と、上記反り予測モデルを用いて予測した上記非対称要因同定パスにおける反り量とに基づき、上記非対称要因同定パスでの圧延条件に含まれる圧延材の上下非対称要因のうち、圧延材の状態に起因する非対称要因情報のデータを算出する非対称要因同定部と、
    上記非対称要因同定部が算出した非対称要因情報のデータに基づき、上記予測対象圧延パスにおける圧延機出側での圧延材先端部の反り量を予測する先端反り予測部と、
    を備え
    上記先端反り予測部は、上記反り予測モデルを用いて、上記予測対象圧延パスで予測される反り量を演算し、その際、上記非対称要因同定部が算出した非対称要因情報のデータを、上記反り予測モデルの入力データの一つとすることを特徴とする、
    ることを特徴とする熱間圧延における反り予測装置。
  11. 上記圧延条件として、圧延ロールの上下周速差、上下ワークロール径差、パスライン位置から選択した1又は2以上のデータと、上記非対称要因情報のデータと、を含むことを特徴とする請求項10に記載した熱間圧延における反り予測装置。
  12. 上記非対称要因情報は、被圧延材における、上下面の摩擦係数差及び温度差の少なくとも一方であることを特徴とする請求項11に記載した熱間圧延における反り予測装置。
  13. 上記非対称要因同定部は、上記反り量測定部が測定した反り量と、上記反り予測モデルを用いて予測する反り量との差が予め設定した設定値以下となる非対称要因情報のデータを、上記先端反り予測部で用いる値として算出することを特徴とする請求項10~請求項12のいずれか1項に記載した熱間圧延における反り予測装置。
  14. 上記圧延工程は、リバース圧延で行われることを特徴とする請求項10~請求項13のいずれか1項に記載した熱間圧延における反り予測装置。
  15. 圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を制御する反り抑制装置であって、
    請求項10~請求項14のいずれか1項に記載した熱間圧延における反り予測装置を有し、
    上記先端反り予測部が予測した反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、当該予測した反り量が小さくなる方向に、予測対象圧延パスでの圧延条件を再設定する圧延条件再設定部を有することを特徴とする熱間圧延における反り抑制装置。
  16. 圧延材を複数の圧延パスで熱間圧延する圧延工程を有し、上記複数の圧延パスから選択した圧延パスである予測対象圧延パスの圧延機出側での圧延材先端部の反り量を制御する反り抑制装置であって、
    上記複数の圧延パスのうち、上記予測対象圧延パスよりも上流の圧延パスから選択した圧延パスを非対称要因同定パスとして設定し、
    請求項10~請求項14のいずれか1項に記載した熱間圧延における反り予測装置を有し、
    上記先端反り予測部が予測した反り量が予め設定した反り量よりも大きい場合、上記非対称要因同定パスよりも下流パスであって、かつ予測対象圧延パスよりも上流パスから選択した圧延パスである非対称要因低減パスにおいて、上記反り予測部が予測した、上記予測対象圧延パスにおける圧延材先端部の反り量が小さくなる方向に、上記非対称要因低減パスにおける圧延条件を再設定する第2圧延条件再設定部を有することを特徴とする熱間圧延における反り抑制装置。
  17. 上記再設定する圧延条件は、圧延ロールの上下周速差及びパスライン位置の少なくとも一方であることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載した熱間圧延における反り抑制装置。
  18. 請求項15~請求項17のいずれか1項に記載の熱間圧延における反り抑制装置を備える圧延材の製造設備。
JP2020100896A 2020-06-10 2020-06-10 熱間圧延における反り予測方法、反り抑制方法、圧延材の製造方法、並びに、熱間圧延における反り予測装置、反り抑制装置、圧延材の製造設備 Active JP7298551B2 (ja)

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