JP3774563B2 - 板圧延方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、板状の金属製品を製造する圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
板材の圧延時に発生する反りは、圧延能率の低下、設備事故の発生、精整工程の増加など、製品の生産性に多大な影響を及ぼす。例えば、精整工程に関しては、レベラー、プレス等による反りの矯正が必要となり、極端な場合、不良部を切断しなければならないこともある。また、さらに大きな反りが発生した場合、板の衝突によって、圧延設備が破損することもある。この場合、板自体が製品価値を失うばかりでなく、生産停止、圧延設備の修理など多大の損害をもたらす。
【0003】
圧延反りが発生するメカニズムについては、一般に、下記の圧延における上下の非対称要因が原因であると言われている。
1) ワークロールと圧延材との摩擦係数の上下差…Δμ
2) 上下材料温度差(変形抵抗の上下差)…………Δt
3) 上下ワークロール周速度の差……………………ΔV
4) 幾何学条件
・上下ワークロールの半径差………………………ΔR
・板入射角(上下パスライン差)…………………α
しかしながら、上記の上下非対称要因が反りに及ぼす影響は、必ずしも全て解明されている訳ではない。そこで、前パスの反りを測定することによって当該パスの反り制御を行う方法が、特開昭63−60012号公報、特開昭63−132708号公報、特開平3−234309号公報、特開平4−262811号公報に示されている。これらの方法は、いずれも前パスの反りを測定し、その反りを解消する制御(例えば、異周速圧延)を当該パスで実施する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の特開昭63−60012号公報、特開昭63−132708号公報、特開平3−234309号公報、特開平4−262811号公報においては、いずれの方法においても前パスの反りが、当該パスでも継続することを前提としている。しかしながら、実際の圧延では、条件によっては前パスと当該パスにおいて反り方向が逆になることもあり、従来の方法では、制御すると却って反りを増大させる場合もあった。
【0005】
本発明の目的は、以上の点に鑑み、板状の金属製品の製造において、高精度の反り制御の方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するため、前パスの反り量および上下ワークロール周速度を測定し、その測定結果から当該パスの反りを予測することにより、当該パスの反りを制御することを特徴とする。
すなわち、本発明の要旨とする処は、以下の通りである。
【0007】
(1)本発明は、板上下面の温度差を測定する温度測定装置が設置されていない、少なくとも上下ワークロールを有する圧延機により板材を圧延する方法において、前パスにおける上下ワークロールの周速度および前パスにおける圧延材先端部の反り曲率半径を測定し、これらから、それぞれ、前パスにおける異周速に起因する反り曲率(以降、「異周速起因反り曲率」ともいう。)及び圧延材先端部の反り曲率(以降、「先端実測反り曲率」ともいう。)を求め、さらに、前記異周速起因反り曲率及び前記先端実測反り曲率から前パスにおける上下材料温度差及び上下摩擦係数差等の要因を含む異周速以外の要因による反り曲率(以降、「異周速以外の要因による反り曲率」ともいう。)を求め、この前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率に基づいて、当該パスにおける反り曲率を求め、これを解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの周速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差を単独あるいは組み合わせて設定して板材を圧延することを特徴とする板圧延方法である。
(2)また、本発明は、当該パスにおける反り曲率を、前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率と等しいと予測し、この反り曲率を解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差を単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする前記(1)記載の板圧延方法である。
(3)更に本発明は、好ましくは、当該パスにおける反り曲率は、前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率に前パスと当該パスとの形状比の変動の影響を考慮した反り曲率等しいと予測し、この反り曲率を解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの周速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差を単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする前記(1)記載の板圧延方法である。
【0008】
(4)また、本発明は好ましくは、板上下面の温度差を測定する温度測定装置が設置されていない、少なくとも上下ワークロールを有する圧延機により板材を圧延する方法において、前パスに於ける上下ワークロール周速度(V R1,V R1)および前パスにおける圧延材先端部の反り曲率半径ρ1を測定し、この測定したロールの周速度と、反り曲率半径とから前パスにおける反り曲率(先端実測反り曲率)κM1と異周速率χ1を求め、この異周速率χ1に起因する前パスにおける反り曲率(異周速起因反り曲率)κV1を求め、前パスにおける先端実測反り曲率κM1からこの異周速起因反り曲率κV1を差し引いて、前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP1 =κ M1 −κ V1 を求め、当該パスにおける反り曲率κP2をκP2=κP1 =κ M1 −κ V1 と予測し、この反り曲率κP2を解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの周速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差を単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする板圧延方法である。
【0009】
(5)加えて、本発明は好ましくは、前記当該パスにおける反り曲率κP2を、前記前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP1 を用いて、前パスと当該パスとの形状比の変動の影響を考慮した下式に基づいて求めることを特徴とする前記(4)記載の板圧延方法である。
κP2=δ1・κP1
ただし、δ1:反り曲率と前パスと当該パスとの関係から得られた学習係数
(6)さらに、本発明はより好ましくは、前記当該パスにおける反り曲率κP2を、前記前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP1 を用いて、前パスと当該パスとの形状比の変動の影響を考慮した下式に基づいて求めることを特徴とする前記(4)記載の板圧延方法である。
【0010】
κP2=δ2・κP1
ただし、δ2:異周速以外の要因(Δt,Δμ)が変わらない場合の、形状比がΓ2の場
合に発生する反り曲率q(Γ2 )と形状比がΓ1 の場合に発生する反り
曲率q(Γ1)との比(q(Γ2)/q(Γ1))
Δt:圧延材の上下温度差
Δμ:ワークロールと圧延材との摩擦係数の上下差
Γ1 :前パスの形状比
Γ2 :当該パスの形状比
Γ :形状比:圧延材とワークロールとの接触投影弧長を入側と出側板厚の平均値で除
した値
(7)た、本発明においては、当該パスの圧延時に上下材料温度差Δt 2を付与して圧延を行った場合において、次パスに継続する反り曲率κP'2
κP'2=κM2−κV2−κT2
または
κP'2=κM2−κV2−β・κT2として、次パスにおける反り曲率κP3
κP3=κP'2
と予測し、この反りを解消するように、次パスにおいて上下ワークロール速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差のいずれかを単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする前記(4)記載の板圧延方法である。
ここで、κM2は当該パスにおける先端実測反り曲率であり、κV2は当該パスにおける異周速起因反り曲率であり、κT2は当該パスにおけるΔt 2起因の反り曲率であり、βは学習、実験あるいは計算で求めた補正係数である。
(8)また、本発明は、当該パスの圧延時に上下摩擦係数差Δμ 2を付与して圧延を行った場合において、次パスに継続する反り曲率κP'2
κP'2=κM2−κV2−κL2
または
κP'2=κM2−κV2−γ・κL2
として、次パスにおける反り曲率κP3
κP3=κP'2
と予測し、この反りを解消するように、次パスにおいて上下ロール速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差のいずれかを単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする前記(4)記載の板圧延方法である。
ここで、κL2は当該パスにおけるΔμ 2起因の反り曲率であり、γは学習、実験あるいは計算で求めた補正係数である。
(9)更に、本発明においては、好ましくは次パスにおける反り曲率κP3を、当該パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP'2に、当該パスと次パスとの形状比の変動の影響を考慮した
κ P3 =δ 1 ・κ P'2
または、
κ P3 =δ 2 ・κ P'2
に基づいて求めることを特徴とする前記(7)または(8)記載の板圧延方法である
し、
δ1:反り曲率と前パスと当該パスとの関係から得られた学習係数
δ2:異周速以外の要因(Δt,Δμ)が変わらない場合の、形状比がΓ2の場合
に発生する反り曲率q(Γ2)と形状比がΓ1の場合に発生する反り曲率q
(Γ1)との比(q(Γ2)/q(Γ1))
Δt:圧延材の上下温度差
Δμ:ワークロールと圧延材との摩擦係数の上下差
Γ1 :前パスの形状比
Γ2 :当該パスの形状比
Γ :形状比:圧延材とワークロールとの接触投影弧長を入側と出側板厚の平均値で除
した値
(10)なお、本発明においては反り曲率に、ワークロール半径/反り曲率半径として規格化した反り曲率を用いることを特徴とする前記(1)ないし()のいずれかに記載の板圧延方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1に、本発明を適用する圧延機の一例を示す。上下のワークロール1,2を有する圧延機7の前後には、ローラーテーブル4,4が設けられている。ローラーテーブル4の上に図示されている圧延材3は、上ワークロール1と下ワークロール2で所定の板厚に圧延される。上ロール系は、上ワークロール1と上バックアップロール5とから構成され、下ロール系は、下ワークロール2と下バックアップロール6とから構成される。なお、以下、特にことわりの無い限り、ロールとはワークロールを示すこととする。
【0012】
また、異周速率χ、反り曲率κ、規格化した反り曲率κおよび形状比を以下の様に定義するものとする。
異周速率χ=(V−V)/max(V,V)×100(%)
ここで、Vは上ロールの周速度、Vは下ロールの周速度。
反り曲率κ=1/反り曲率半径ρ(圧延ラインより上方向に反る反りを上反り、正とし、圧延ラインより下方向に反る反りを下反り、負として表す。)
規格化した反り曲率κ=ロール半径R/反り曲率半径ρ(上反り:+、下反り:−)
形状比Γ:圧延材とワークロールとの接触投影弧長をロール入側と出側の板厚の平均値で除した値
【0013】
図1に示す圧延機においてリバース圧延を行う場合に反りが生じると、前述したように、圧延の中断、大事故の発生等の大きな問題が生じる。反りの発生原因としては、上述したような観点から以下に示すような上下非対称要因が考えられる。
1) ワークロールと圧延材との摩擦係数の上下差…Δμ
2) 圧延材の上下温度差(変形抵抗の上下差)……Δt
3) 上下ワークロール周速度の差……………………ΔV
4) 幾何学条件
・上下ワークロールの半径差………………………ΔR
・板入射角(上下パスライン差)…………………α
したがって、当該パスにおける、これら全ての値を正確に測定できれば、反りの予測はかなりの精度で可能と考えられる。しかしながら、パス毎のΔμを正確に測定することは、実際上、殆ど不可能である。また、Δtに関しても、板上下面の温度測定装置が設置されていない場合には、パス毎の上下面の温度を正確に測定することは、非常に困難である。
【0014】
そこで、発明者らは、創意工夫の結果、前パス圧延における反り量に加えて、前パスの圧延時において、上下ロール周速度を測定し、その両者に基づいて異周速以外の要因による反りを演算すれば、Δμ,Δtの測定を行わなくても、正確に当該パスの反りが予測でき、ひいては正確な反り制御が可能なことを見出した。以下に、リバース圧延の場合を例に、その詳細を説明する。なお、前パスにおける反り曲率とは前パス圧延時に発生する反りの曲率を示し、当該パスにおける反り曲率とは当該パス圧延時に発生する反りの曲率を示すことにする。
【0015】
発明者らは、まず、図1に示した圧延機を用いてリバース圧延実験を行い、反りの発生挙動を調べた。その結果、Δt,Δμ,ΔV等の上下非対称条件が存在する時、圧延材の先端部を圧延する場合には反り(上反りおよび下反りのいずれも発生し得る)が発生するが、圧延材の圧延方向中央部および後端部を圧延する場合には反りが発生しないことを見出し、さらに、そのメカニズムを明らかにした。そのメカニズムは、以下の通りである。
【0016】
なお、先端部および後端部の定義に関しては、圧延材が圧延によって移動する際に、その前方の端部を先端部、後方の端部を後端部とする。リバース圧延の場合、パス毎に圧延材の移動する向きが逆になるために、圧延材自体に着目すれば、先端部と後端部はパス毎に入れ替わる。すなわち、リバース圧延においては、圧延材における同一場所が先端部の圧延となるのは、2パス毎ということになる。したがって、反りを制御すべき当該パスをNパスとすれば、そのためにκとχを測定すべき前パスは、N−2となる。一方、一方向圧延の場合は、圧延材が圧延によって移動する向きは常に一定のため、圧延材自体に着目しても、先端部と後端部の場所は変化しない。すなわち、一方向圧延では、パス毎に、圧延材における同一場所が先端部の圧延となるので、当該パスをNパスとすれば、κとχを測定すべき前パスは、N−1となる。
【0017】
先端部の圧延時には、上述したように、上反りおよび下反りのいずれもが発生し得る。これは、先端部の圧延の場合、材料がテーブルローラーに達するまでは材料の変形(反り)を拘束するものが無く、また出側の材料長さ、すなわちロールバイト出口から材料の圧延方向先端部までの距離も短いので材料の自重の影響も小さく、圧延材の上下の温度差等の上下非対称性により反りが発生し始めると、反りの曲率は限界まで拡大するからである。
【0018】
一方、圧延材の圧延方向中央部および後端部の圧延時には、反りは発生しない。まず、下反りに関しては、下反りが発生しようとしても、出側のテーブルローラーにより材料が拘束され、材料が下方向に大きく変形できないためである。また、上反りに関しての発生メカニズムは以下の通りである。ここでは、上下の非対称要因として、圧延材の上下面の温度差を例示する。図2に、材料下面が高温の場合における、圧延挙動を示す。下面が高温のため、下面の材料の延伸が大きくなり、まず上方向の先端部の反りが発生する(図2(a))。圧延が進むとロールバイト前後の材料の拘束のために、反りは発生しなくなる(図2(b))。さらに圧延が進むと後端側の材料は短くなり後端が自由となるために、再び上反りが発生しようとする。しかしながら、ロールバイト出側には既に圧延を終了した長い材料が存在するので、自重によって、ロールバイト出口における出側速度の材料上下面での不均一性を解消する大きな張力差が材料上下面に作用し、後端部においては反りは発生しない(図2(c))。以上の結果から、制御すべき反りは、先端部の反りであることが判明した。
【0019】
次に、発明者らは、ツインドライブのリバース圧延機を用いた圧延実験により、前パス(1パス目)と当該パス(3パス目)の先端圧延時における反り発生挙動および上下ロール周速度を詳細に調べた。表1に、板厚が異なる3本(条件1,2,3)の鋼材における、1パス目と3パス目の反り発生挙動を示す。この結果から、いずれの条件においても、1パス目と3パス目において、発生した反り曲率半径ρは大きく異なることが判る。例えば、条件2では、1パス目が下反りなのに対し、3パス目では上反りが発生している。
【0020】
発明者らは、各パス後に発生した反り曲率κから、後述する式(3)より算出した異周速起因の反り曲率κを減じた反り曲率κ=κ−κは、いずれの条件でも1パス目と3パス目で非常に良く一致することを見出した。すなわち、当該パス(3パス目)に継続するのは、前パス(1パス目)圧延後に観察された反り曲率κではなく、κから異周速起因の反り曲率κを差し引いた反り曲率κということになる。これは、異周速以外の上下非対称要因、摩擦係数の上下差Δμ、圧延材の上下温度差Δt、板入射角α等は、パス間での変化が小さいのに対して、上下ワークロール周速度の差(異周速率)は、インパクトドロップ等によってパス毎に大きく変化するためだと考えられる。したがって、前パス圧延後に発生した反りの曲率κM1およびその時の異周速率χ1を測定し、異周速起因の反りκV1をκM1から減じれば、当該パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP2が正確に予測できることになる。
【0021】
【表1】
Figure 0003774563
【0022】
以上の結果を基に、発明者らは、前パスの圧延機先端部の圧延における反り量と前パス圧延時の上下ロール速度を測定し、その両者から当該パスの反り量を予測・演算して、その予測した反り量を解消する上下ワークロールの異周速率を演算し、該異周速率に基づいて、上下ワークロール周速度差を設定制御する方法、およびより好ましくは前パスに於ける上下ワークロール周速度(V R1,V R1)および前パスにおける圧延材先端部の反り曲率半径ρ1を測定し、この測定したロールの周速度と、反り曲率半径とから前パスにおける先端実測反り曲率κM1と異周速率χ1を求め、χ1に起因する前パスにおける異周速起因反り曲率κV1を求め、前パスにおける先端実測反り曲率κM1からこの異周速起因反り曲率κV1を差し引いて、前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP1を求め、当該パスにおける反り曲率κP2をκP2=κP1とし、この反り曲率κP2を解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの速度差を設定して圧延する方法を見出した。すなわち、本方法を用いれば、前パスと当該パスの反り方向が逆転する場合においても、正確な反り制御が可能となる。以下、本制御方法の一例の手順を説明する。また、表2にそのフローチャートで示す。
(1)前パスの圧延データ測定
先端圧延時の反り曲率半径ρ1および上下ロール速度V R1,V R1を測定し、先端実測反り曲率κM1および異周速率χ1を求める。先端実測反り曲率κM1に関しては、式(3)を求める際に、異なるロール半径での結果も利用できるように、式(1)で示すような規格化を行う方が好ましい。また、反り曲率自体の測定が困難であれば、反りの高さから反り曲率を算出しても良い。式(2)に、異周速率の求め方の一例を示す。
【0023】
κM1 =ロール半径R/ρ1(上反り:+、下反り:−) …(1)
χ1=(V R1−V R1)/Max(V R1,V R1)×100(%) …(2)
(2)前パスの反り分析
1) 異周速圧延起因の反り曲率(異周速起因反り曲率)κV1 の導出
Δt=0,Δμ=0の条件での異周速率χと反り曲率κ の関係から、異周速起因反り曲率κV1 を求める。χとκ の関係は例えば、あらかじめ、Δt=0,Δμ=0の条件下で実験あるいは有限要素法の計算を行い、その結果から回帰曲線、例えば式(3)、あるいはテーブル等をΓに対応させて作成して、求めておく。なお、素材温度t、板厚、鋼種等の影響があれば、これらの条件毎にχとκ の実験又は計算を行って、その結果を式(3)、あるいはテーブル等に考慮すればよい。図3(a)は、Δt=0,Δμ=0とした場合の実験により、形状比Γと反り曲率κ との関係を異周速率に関して示したものである。
【0024】
次に、前パスにおける形状比Γ1と異周速率χ1 に対応する異周速起因反り曲率κV1 を式(3)あるいはテーブルあるいは図3(a)から求める。
κV1 =fa(χ1,Γ1) …(3)
2) 異周速以外の要因による反り曲率κP1 の算出
式(4)に従い、異周速以外の要因による反り曲率κP1 を算出する。
【0025】
κP1 =κM1 −κV1 …(4)
(3)当該パスの反り曲率κP2 の予測
異周速以外の要因による反り曲率κP1 は、当該パス(3パス目)に継続することから、当該パスでの異周速以外の要因による反り曲率κP2 は、式(5)で予測することができる。
【0026】
κP2 =κP1 …(5)
(4)当該パスのロール速度設定値の算出
1) 先端圧延中に確保すべき異周速率χ2の計算
当該パスで発生すると予想されるκP2 の反りを解消するために必要な異周速率χ2は、当該パスにおける形状比Γ2とκP2 により式(6)から求めることができる。式(6)は、式(3)を変形するだけで容易に求められる。
【0027】
χ2=fb(κP2 ,Γ2)(%) …(6)
またχ2は、図3(a)から求めることができる。χ2が求まれば、式(2)を逆算することにより、当該パスにおいて先端圧延中に確保すべきV R2,V R2が求まる。
2) 上記のロール速度を得るのに必要な上下ロール設定速度V S2,V S2の計算
上記のV R2,V R2は、先端圧延時に確保すべきロール速度である。したがって、速度制御性の高い圧延機であれば、V S2=V R2,V S2=V R2とすれば良いが、速度制御性が不十分な圧延機の場合には、V R2,V R2を確保するためのロール設定速度V S2,V S2を実験などで求めておく方が好ましい。
【0028】
【表2】
Figure 0003774563
【0029】
このようにして求めたロール速度を設定して当該パス(Γ2)を行うことにより反りを制御することができる。
ところで、図3(b)はΔt=0,ΔV=0とした場合の実験により形状比Γと反り曲率κとの関係をΔμに関して、また図3(c)はΔμ=0,ΔV=0とした場合の実験により形状比Γと反り曲率κとの関係をΔtに関して、それぞれ示したものである。これらの関係から異周速以外の要因、すなわちΔμとΔt起因の反り曲率は、図3(b),(c)に示すようにΓの影響を受けることが分かる。
【0030】
上記フローチャート(3)中の式においては、当該パスに継続される反り曲率κP2 は、(5)式のようにκP1 に相当するとしている。
これは、通常の圧延においてはパス毎のΓの変動幅は小さく、図3(b),(c)からも分かるように、Γの変化に対するΔt,Δμ起因の反り曲率の変化は小さいのでフローチャート(3)中の式で仮定したように上述の(5)式のκP2 =κP1 として周速を設定すればよいが、パス毎にΓが大きく変わる場合などはΔμとΔtに起因する反り曲率とΓの関係を考慮する方法を以下に説明する。
【0031】
すなわち、上記フローチャート(3)中の式において想定したκP2 を式(7)により想定することが好ましい。
κP2 =δ・κP1 …(7)
δは、後述するように学習して得るδ 1 の場合と、式(8)で示されるように、ΔtおよびΔμが一定である時の、形状比がΓ2 の場合に発生する反り曲率qと形状比がΓ1の場合に発生する反り曲率qとの比であるδ 2 の場合とがある
【0032】
δ 2 =q(Γ2)/q(Γ1) …(8)
ここで、Γ1は前パスの形状比、Γ2は当該パスの形状比。q(Γ)の具体的な求め方は、一例として、図3(b)あるいは(c)の任意の曲線、例えばΔμ=0.10の場合の曲線から読みとってもよいし、これを数式化した式から求めれば良い。
【0033】
【数1】
Figure 0003774563
【0034】
なお、図3(b),(c)から分かるように、q(Γ)自体は、Δμ,Δtによって異なるために、厳密には、下記の式とすべきである。
【0035】
【数2】
Figure 0003774563
【0036】
しかしながら、図3(b),(c)から分かるように、その関係の曲線の形が非常に良く類似しているので、近似的には、下記のようにみなすことができる。
【0037】
【数3】
Figure 0003774563
【0038】
ここで、k1は定数。
また、最終的に必要なのは、q(Γ)自体では無く、q(Γ2)/q(Γ1)なので、式(11)より、
【0039】
【数4】
Figure 0003774563
【0040】
となる。したがって、式(9)を用いても良いことになる。
なお、δは簡易的に、前パスと当該パスにおける形状比Γ1,Γ2とその時の異周速以外の要因による反り曲率κM1−κV1,κM2−κV2を実生産で測定し、学習することにより求めても良い。
また、上記のδに関しては、Δμ,Δtのみを考慮し、入射角αの影響を考慮していないが、αに関しては、下記に示すように実生産の条件では、反りに影響を殆ど及ぼさないので、特に考慮する必要は無い。
【0041】
1) −1°<α<1°の範囲ではαを変化させても、図3(a)の曲線は全く変化が無く、この範囲ではαは反りに全く影響を及ぼさない。
2) 通常の圧延条件では、パスラインを調整しなくても、板の寸法上、αが1°以上になることは、殆どあり得ない。
3) 特に、本発明では、前パスと当該パスとの板入射角の変化量Δαによる反り量の変化が最も重要であるが、実際のΔαの値は非常に小さい(例えば、ロール半径500mm、板長さ1000mmの場合、N−2パス目で130mmから110mmまで圧延し、Nパス目で50mmから30mmまで圧延するという、非常に極端な条件(Γ1=0.83,Γ2=2.49)の場合でさえも、両者の板入射角の差Δαは、パスラインを調整せずに一定としても、わずかΔα=0.1°程度である)。
【0042】
さらに、以上は、全て、リバース圧延を例に説明してきたが、板先端部が圧延されている場合に測定および制御を行えば、複数のシングルスタンドの圧延機で一方向にのみ圧下して圧延する場合やタンデム圧延機で圧延する場合にも、本発明を用いることが可能である。この場合には、当該パスをNパス目とすると前パスはN−1目となる。
さらに、以上は全て、制御手段として、異周速圧延を用いたが、1)上下材料温度差および 2)上下摩擦係数差を強制的に付与することによっても反りを制御することができる。以下にその方法を示す。
〔上下材料温度差による制御〕
前パス(添え字1)での圧延データを測定して、当該パスで(添え字2)で材料温度差によって反り制御を実施し、さらに、当該パスで圧延データを測定し、次パス(添え字3)の反りを予測・制御するまでを示す。
(1)前パスの板先端部の圧延データ測定
前述の異周速圧延での制御の場合と同様、先端圧延時の反り曲率半径ρ1および上下ロール速度V R1,V R1を測定し、式(1−1)、(1−2)から、反り曲率κM1および異周速率χ1を求める。
κM1 =ロール半径R/ρ1(上反り:+、下反り:−) …(1−1)
χ1=(V R1−V R1)/Max (V R1,V R1)×100(%) …(1−2)
(2)前パスの反りの分析
前述の異周速圧延での制御の場合と全く同様に、式(1−3)、(1−4)から、κV1 ,κ 1 を求める。
1) 異周速圧延起因反り曲率κV1 の導出
κV1 =fa(χ1,Γ1) …(1−3)
2) 異周速以外の要因による反り曲率κP1 の算出
κP1 =κM1 −κV1 …(1−4)
(3)当該パスで発生する反り曲率κP2 の予測
この場合も、異周速圧延での制御の場合と全く同様に、式(1−5)からκP2 を求める。なお、この場合も式(7)の場合と同様、(1−5)’の方が好ましい。
κP2 =κP1 …(1−5)
κP2 =δ・κP1 …(1−5)’
(4)当該パスでの反り制御
1) 付与すべき上下材料温度差Δt 2の計算
χ=0、Δμ=0の条件でのΔtと反り曲率κ の関係から、κP2 を解消するために付与すべき上下材料温度差Δt 2を求める。Δtとκ との関係は例えば、あらかじめ、χ=0、Δμ=0の条件下で実験あるいは有限要素法の計算を行い、その結果から回帰曲線、例えば式(1−6)、あるいはテーブル等をΓに対応させて作成して、求めておく。なお、板厚、鋼種等の影響があれば、これらの条件毎に実験又は計算を行って、その結果を式(1−6)、あるいはテーブル等に考慮すればよい。図3(c)は、χ=0、Δμ=0とした場合の実験により、形状比Γと反り曲率κ との関係をΔtに関して示したものである。
Δt 2=fe(κP2 ,Γ2) …(1−6)
2) Δt 2の付与
上記で求めたΔt 2を圧延中の材料に付与する。方法としては、例えば、圧延前の素材の上面あるいは下面を冷却あるいは加熱すれば良く、冷却には水冷装置等、加熱にはヒーター等を用いれば良い。必要なΔt 2を得るための冷却能力等の調整(例えば、冷却水の流量)は、予め、有限要素法等による計算や実験で求めておけば良い。
(5)当該パスの板先端部の圧延データ測定
次パスの反り曲率を予測するために、下記の測定を行う。
1) 発生反りの曲率 κM2
2) 先端圧延時の異周速率 χ2
(6)当該パスの反りの分析
上記のχ2および式(1−7)から異周速圧延起因の反り曲率κV2 を求め、その結果およびκM2 から、式(1−8)を用いて、次パスに継続する反り曲率κP'2 を算出する。('を付けて、当該パスで発生すると予測される反り曲率κP2 と区別した。)式(1−8)において、κT2 は反り制御で付与したΔt 2起因の反り曲率を表す。Δt 2は短時間で付与されるために、圧延後に温度が均一化する速度も速く、次パスの圧延までには、Δt 2 ≒0になると考えられる。したがって、次パスに継続する反り曲率κP'2 は、式(1−8)で示されることになる。ただし、Δt 2の影響が残存する場合もあるので、その場合は式(1−9)に示すように、Δt 2の影響を考慮すればよい。βは、補正係数であるが、学習で求めても良いし、実験あるいは有限要素法等による計算で求めても良い。
1) 異周速圧延起因の反り曲率(異周速起因反り曲率)κV2* の導出
κV2 =fa(χ2,Γ2) …(1−7)
2) 次パスに継続する反り曲率κP'2 の算出
κP'2 =κM2 −κV2 −κT2 …(1−8)
κP'2 =κM2 −κV2 −β・κT2 …(1−9)
(7)次パスで発生する反り曲率κP3 の予測
反り曲率κP'2 は、次パスに継続することから、次パスでの異周速以外の要因による反り曲率κP3 は、式(1−10)で予測することができる。なお、式(7)で示したように、κP3 は、式(1−10)’で予測する方が好ましい。
κP3 =κP'2 …(1−10)
κP3 =δ・κP'2 …(1−10)’
(8)次パスの反り制御(κP3 を解消する制御)
式(1−10)で次パスの反りが予測できることから、κP3 を解消するためには、下記のいずれかの方法で、再度反りを制御すれば良い。なお、上下摩擦係数差による反り制御に関しては、後述する。
1) 異周速圧延による反り制御
2) 上下材料温度差による反り制御
3) 上下摩擦係数差による反り制御(後述)
なお、表3に、以上の方法のフローチャートを示す。
【表3】
Figure 0003774563
〔上下摩擦係数差による制御〕
前述の上下材料温度差の場合と同様、前パス(添え字1)での圧延データを測定して、当該パスで(添え字2)で上下摩擦係数差によって反り制御を実施し、さらに、当該パスで圧延データを測定し、次パス(添え字3)の反りを予測・制御するまでを示す。
(1)前パスの板先端部の圧延データ測定
前述の異周速圧延での制御の場合と同様、先端圧延時の反り曲率半径ρ1および上下ロール速度V R1,V R1を測定し、式(2−1)、(2−2)から、先端実測反り曲率κM1および異周速率χ1を求める。
κM1 =ロール半径R/ρ1(上反り:+、下反り:−) …(2−1)
χ1=(V R1−V R1)/Max(V R1,V R1)×100(%) …(2−2)
(2)前パスの反りの分析
前述の異周速圧延での制御の場合と全く同様に、式(2−3)、(2−4)から、κV1 ,κP1 を求める。
1) 異周速圧延起因の反り曲率(異周速起因反り曲率)κV1 の導出
κV1 =fa(χ1,Γ1) …(2−3)
2) 異周速以外の要因による反り曲率κP1 の算出
κP1 =κM1 −κV1 …(2−4)
(3)当該パスで発生する反り曲率κP2 の予測
この場合も、異周速圧延での制御の場合と全く同様に、式(2−5)からκP2 を求める。なお、この場合も式(7)の場合と同様、(2−5)’の方が好ましい。
κP2 =κP1 …(2−5)
κP2 =δ・κP1 …(2−5)’
(4)当該パスでの反り制御
1) 付与すべき上下摩擦係数差Δμ 2の計算
χ=0、Δt=0の条件でΔμと反り曲率κμの関係から、κP2 を解消するために付与すべき上下摩擦係数差Δμ 2を求める。Δμとκμとの関係は例えば、あらかじめ、χ=0、Δt=0の条件下で実験あるいは有限要素法の計算を行い、その結果から回帰曲線、例えば式(2−6)、あるいはテーブル等をΓに対応させて作成して、求めておく。なお、板厚、鋼種等の影響があれば、これらの条件毎に実験又は計算を行って、その結果を式(2−6)、あるいはテーブル等に考慮すればよい。図3(b)は、χ=0、Δt=0とした場合の実験により、形状比Γと反り曲率κμとの関係をΔμに関して示したものである。
Δμ 2=fg(κP2 ,Γ2) …(2−6)
2) Δμ 2の付与
上記で求めたΔμ 2を付与する。方法の一例としては、上面あるいは下面を潤滑すれば良い。必要なΔμ 2を得るための潤滑の調整(例えば、潤滑油の流量等)は、予め、有限要素法等による計算や実験で求めておけば良い。
(5)当該パスの板先端部の圧延データ測定
次パスの反り曲率を予測するために、下記の測定を行う。
1) 発生反りの曲率 κM2
2) 先端圧延時の異周速率 χ2
(6)当該パスの反りの分析
上記のχ2および式(2−7)から異周速圧延起因の反り曲率κV2 を求め、その結果およびκM2 から、式(2−8)を用いて、次パスに継続する反り曲率κP'2 を算出する。式(2−8)において、κL2 は反り制御で付与したΔμ 2 起因の反り曲率を表す。Δμ 2は上下の潤滑の差で付与されるのが一般的なので、その場合には次パスまでに潤滑油は冷却水で流されてしまい、次パスの圧延までにはΔμ 2≒0になると考えられる。したがって、次パスに継続する反り曲率κP'2 は、式(2−8)で示されることになる。ただし、Δμ 2の影響が残存する場合もあるので、その場合は式(2−9)に示すように、Δμ 2の影響を考慮すればよい。γは、補正係数であるが、学習で求めても良いし、実験あるいは有限要素法等による計算で求めても良い。
1) 異周速圧延起因の反り曲率κV2 の導出
κV2 =fa(χ2,Γ2) …(2−7)
2) 次パスに継続する反り曲率κP'2 の算出
κP'2 =κM2 −κV2 −κL2 …(2−8)
κP'2 =κM2 −κV2 −β・κL2 …(2−9)
(7)次パスで発生する反り曲率κP3 の予測
反り曲率κP'2 は、次パスに継続することから、次パスでの異周速以外の要因による反り曲率κP3 は、式(2−10)で予測することができる。なお、式(7)で示したように、κP3 は、式(2−10)’で予測する方が好ましい。
κP3 =κP'2 …(2−10)
κP3 =δ・κP'2 …(2−10)’
(8)次パスの反り制御(κP3 を解消する制御)
式(2−10)で次パスの反りが予測できることから、κP3 を解消するためには、下記のいずれかの方法で、再度反りを制御すれば良い。
1) 異周速圧延による反り制御
2) 上下材料温度差による反り制御
3) 上下摩擦係数差による反り制御
なお、表4に、以上の方法のフローチャートを示す。
【表4】
Figure 0003774563
【0043】
【実施例】
〔実施例1〕
ワークロール径1000mmの圧延機を用いて、板厚100mm、板幅1760mmのスラブを板厚55mmまで、表5に示したパススケジュールでリバース圧延した。
【0044】
【表5】
Figure 0003774563
【0045】
表6に実施例と比較例を示す。本発明の実施例では、まず、前パス(1パス目)での圧延時の反りの曲率半径とロール周速を測定した結果、先端実測反り曲率はκM1 =−0.103(下反り)であり、先端部圧延時の異周速率はχ1=5.0%(上高速)が得られた。このχ1に起因する前パスにおける異周速起因反り曲率κV1 を、あらかじめ実験で求めておいた回帰式より算出したところ、κV1 =−0.178であった。次に、当該パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP2 =κP1 =κM1 −κV1 =−0.103−(−0.178)=0.075(上反り)を予測し、これを解消する異周速率χ2=2.1%(上高速)を前述の回帰式から求めて、当該パス(3パス目)で付与した。その結果、殆ど反りの無い板を圧延することができた。
【0046】
一方、比較例では、前パス(1パス目)での先端実測反り曲率κM1 =−0.103(下反り)を測定し、その反りが当該パスにも継続するとして(κP2 =−0.103:下反り)、その反りを解消するχ2=−2.8%(下高速)を当該パス(3パス目)で付与した。反り方向を誤って予測したために、制御によって、大きな上反りが発生した。
【0047】
【表6】
Figure 0003774563
〔実施例2〕
上記実施例1においては異周速圧延による制御の実施例を示したが、以下に、上下材料温度差および上下摩擦係数差を強制的に付与することによって反りを制御する方法に関しての実施例を示す。両者ともに、ワークロール径1000mmの圧延機を用いて、板厚100mm、板幅1760mmのスラブを板厚42mmまで、表7に示したパススケジュールでリバース圧延した。
【表7】
Figure 0003774563
表8に上下材料温度差による制御方法に関しての実施例を示す。まず、前パス(1パス目)での圧延時の反りの曲率半径とロール周速を測定した結果、先端部の反り曲率はκM1 =−0.103(下反り)であり、先端部圧延時の異周速率はχ1=5.0%(上高速)であった。このχ1に起因する前パスにおける反り曲率κV1 を、あらかじめ実験で求めておいた回帰式より算出したところ、κV1 =−0.178であった。以上の結果から、当該パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP2 =κP1 =κM1 −κV1 =−0.103−(−0.178)=0.075(上反り)を予測し、これを解消するために付与すべき上下材料温度差Δt 2=34℃(下面冷却)を別途算出した回帰式から求めた。次に、Δt 2=34℃が付与できる冷却水の条件(流量、流速、時間等)を回帰式から算出し、当該パス(3パス目)において、その条件での下面冷却を行った上で、同速圧延(χ2=0%)を実施した。その結果、殆ど反りの無い板(κM2 =0.002)を圧延することができた。さらに、次パス(5パス目)で発生する反りκP3 =κP'2 =κM2 −κV2 −κT2 =0.002−0−(−0.075)=0.077を予測し、その反りを解消する異周速率χ3=2.1%を回帰式より求めて、異周速圧延を実施した。本パス(5パス目)においても、殆ど反りの無い板(κM3 =0.001)を圧延することができた。
【表8】
Figure 0003774563
次に、表9に上下摩擦係数差による制御方法に関しての実施例を示す。まず、前パス(1パス目)での圧延時の反りの曲率半径とロール周速を測定した結果、先端実測反り曲率はκM1 =−0.103(下反り)であり、先端部圧延時の異周速率はχ1=5.0%(上高速)であった。このχ1に起因する前パスにおける反り曲率κV1 を、あらかじめ実験で求めておいた回帰式より算出したところ、κV1 =−0.178であった。以上の結果から、当該パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP2 =κP1 =κM1 −κV1 =−0.103−(−0.178)=0.075(上反り)を予測し、これを解消するために付与すべき上下摩擦係数差Δμ 2=−0.034(上面潤滑)を別途算出した回帰式から求めた。次に、Δμ 2=−0.034Δt 2が付与できる潤滑の条件(流量、流速、時間等)を回帰式から算出し、当該パス(3パス目)において、その条件での潤滑を行った上で、同速圧延(χ2=0%)を実施した。その結果、殆ど反りの無い板(κM2 =−0.001)を圧延することができた。さらに、次パス(5パス目)で発生する反りκP3 =κP'2 =κM2 −κV2 −κT2 =−0.001−0−(−0.075)=0.074を予測し、その反りを解消する異周速率χ3=2.0%を回帰式より求めて、異周速圧延を実施した。本パス(5パス目)においても、殆ど反りの無い板(κM3 =0.002)を圧延することができた。
【表9】
Figure 0003774563
【0048】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、反りの無い板を容易に製造できることを可能としたので、形状の優れた板状の金属製品を効率よく生産できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用する圧延機の一例を示す図。
【図2】 圧延材下面が高温の場合における、圧延時の反り発生挙動を示す図。
【図3】 形状比が反り曲率に及ぼす非対称要因と形状比の影響を示す図。
【符号の説明】
1…上ワークロール
2…下ワークロール
3…圧延材
4…ローラーテーブル
5…上バックアップロール
6…下バックアップロール
7…圧延機

Claims (10)

  1. 板上下面の温度差を測定する温度測定装置が設置されていない、少なくとも上下ワークロールを有する圧延機により板材を圧延する方法において、前パスにおける上下ワークロールの周速度および前パスにおける圧延材先端部の反り曲率半径を測定し、これらから、それぞれ、前パスにおける異周速に起因する反り曲率(以降、「異周速起因反り曲率」ともいう。)及び圧延材先端部の反り曲率(以降、「先端実測反り曲率」ともいう。)を求め、さらに、前記異周速起因反り曲率及び前記先端実測反り曲率から前パスにおける上下材料温度差及び上下摩擦係数差等の要因を含む異周速以外の要因による反り曲率(以降、「異周速以外の要因による反り曲率」ともいう。)を求め、この前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率に基づいて、当該パスにおける反り曲率を求め、これを解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの周速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差を単独あるいは組み合わせて設定して板材を圧延することを特徴とする板圧延方法。
  2. 当該パスにおける反り曲率を、前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率と等しいと予測し、この反り曲率を解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差を単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする請求項1記載の板圧延方法。
  3. 当該パスにおける反り曲率は、前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率に前パスと当該パスとの形状比の変動の影響を考慮した反り曲率等しいと予測し、この反り曲率を解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差を単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする請求項1記載の板圧延方法。
  4. 板上下面の温度差を測定する温度測定装置が設置されていない、少なくとも上下ワークロールを有する圧延機により板材を圧延する方法において、前パスに於ける上下ワークロール周速度(V R1,V R1)および前パスにおける圧延材先端部の反り曲率半径ρ1を測定し、この測定したロールの周速度と、反り曲率半径とから前パスにおける反り曲率(先端実測反り曲率)κM1と異周速率χ1を求め、この異周速率χ1に起因する前パスにおける反り曲率(異周速起因反り曲率)κV1を求め、前パスにおける先端実測反り曲率κM1からこの異周速起因反り曲率κV1を差し引いて、前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP1 =κ M1 −κ V1 を求め、当該パスにおける反り曲率κP2をκP2=κP1 =κ M1 −κ V1 と予測し、この反り曲率κP2を解消するように、当該パスにおける上下ワークロールの周速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差を単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする板圧延方法。
  5. 前記当該パスにおける反り曲率κP2を、前記前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP1 を用いて、前パスと当該パスとの形状比の変動の影響を考慮した下式に基づいて求めることを特徴とする請求項記載の板圧延方法。
    κP2=δ1・κP1
    ただし、δ1:反り曲率と前パスと当該パスとの関係から得られた学習係数
  6. 前記当該パスにおける反り曲率κP2を、前記前パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP1 を用いて、前パスと当該パスとの形状比の変動の影響を考慮した下式に基づいて求めることを特徴とする請求項記載の板圧延方法。
    κP2=δ2・κP1
    ただし、δ2:異周速以外の要因(Δt,Δμ)が変わらない場合の、形状比がΓ2の場
    合に発生する反り曲率q(Γ2)と形状比がΓ1の場合に発生する反り曲
    率q(Γ1)との比(q(Γ2)/q(Γ1))
    Δt:圧延材の上下温度差
    Δμ:ワークロールと圧延材との摩擦係数の上下差
    Γ1 :前パスの形状比
    Γ2 :当該パスの形状比
    Γ :形状比:圧延材とワークロールとの接触投影弧長を入側と出側板厚の平均値で除 した値
  7. 当該パスの圧延時に上下材料温度差Δt 2を付与して圧延を行った場合において、次パスに継続する反り曲率κP'2
    κP'2=κM2−κV2−κT2
    または
    κP'2=κM2−κV2−β・κT2として、次パスにおける反り曲率κP3
    κP3=κP'2
    と予測し、この反りを解消するように、次パスにおいて上下ワークロール速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差のいずれかを単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする請求項4記載の板圧延方法。
    ここで、κM2は当該パスにおける先端実測反り曲率であり、κV2は当該パスにおける異周速起因反り曲率であり、κT2は当該パスにおけるΔt 2起因の反り曲率であり、βは学習、実験あるいは計算で求めた補正係数である。
  8. 当該パスの圧延時に上下摩擦係数差Δμ 2を付与して圧延を行った場合において、次パスに継続する反り曲率κP'2
    κP'2=κM2−κV2−κL2
    または
    κP'2=κM2−κV2−γ・κL2
    として、次パスにおける反り曲率κP3
    κP3=κP'2
    と予測し、この反りを解消するように、次パスにおいて上下ロール速度差、上下材料温度差、上下摩擦係数差のいずれかを単独あるいは組み合わせて設定して圧延することを特徴とする請求項4記載の板圧延方法。
    ここで、κL2は当該パスにおけるΔμ 2起因の反り曲率であり、γは学習、実験あるいは計算で求めた補正係数である。
  9. 次パスにおける反り曲率κP3を、当該パスにおける異周速以外の要因による反り曲率κP'2に、当該パスと次パスとの形状比の変動の影響を考慮した
    κ P3 =δ 1 ・κ P'2
    または、
    κ P3 =δ 2 ・κ P'2
    に基づいて求めることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の板圧延方法
    し、δ1:反り曲率と前パスと当該パスとの関係から得られた学習係数
    δ2:異周速以外の要因(Δt,Δμ)が変わらない場合の、形状比がΓ2の場合
    に発生する反り曲率q(Γ2)と形状比がΓ1の場合に発生する反り曲率q
    (Γ1)との比(q(Γ2)/q(Γ1))
    Δt:圧延材の上下温度差
    Δμ:ワークロールと圧延材との摩擦係数の上下差
    Γ1 :前パスの形状比
    Γ2 :当該パスの形状比
    Γ :形状比:圧延材とワークロールとの接触投影弧長を入側と出側板厚の平均値で除
    した値
  10. 反り曲率に、ワークロール半径/反り曲率半径として規格化した反り曲率を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の板圧延方法。
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