JP7297402B2 - ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及びビールテイスト飲料の麦由来の雑味のキレを改善する方法 - Google Patents

ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及びビールテイスト飲料の麦由来の雑味のキレを改善する方法 Download PDF

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Description

本発明は、ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及びビールテイスト飲料の麦由来の雑味のキレを改善する方法に関する。
ビール、発泡酒、リキュール等のビールテイスト飲料の香味を向上させる方法が報告されている。例えば特許文献1には、ビールテイスト飲料のキレを維持しつつ、コクを増強する方法として、水溶性食物繊維と、一定量の高甘味度甘味料を含有するビールテイスト飲料が開示されている。
一方、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料の需要が高まっている。
特開2016-149975号公報
原料中の麦芽比率が50質量%以上である糖質オフビールテイスト飲料は、これまで得られていなかった。麦芽比率が50質量%以上である糖質オフビールテイスト飲料の製造を試みたところ、本発明者らは、糖質含有量が1.0g/100ml以下であるビールテイスト飲料において、原料中の麦芽の比率を50質量%以上とすると、麦由来の雑味のキレが良好でないという問題が生じることを見出した。
本発明は、原料中の麦芽の比率が50質量%以上でありながら、麦由来の雑味のキレが改善された糖質オフビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは、原料として糖類を使用することにより、原料中の麦芽比率が50質量%以上である糖質オフビールテイスト飲料の、麦由来の雑味のキレを改善できることを見出した。
すなわち本発明のビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が50質量%以上であり、原料として糖類を含み、ビールテイスト飲料の糖質含有量が1.0g/100ml以下である。上記ビールテイスト飲料は、麦由来の雑味のキレに優れる。
上記ビールテイスト飲料において、原料中の糖類の比率が20質量%以上であることが好ましい。
上記ビールテイスト飲料において、酢酸エチル濃度が50ppm以下であることが好ましい。酢酸エチル濃度が上記範囲であることにより、麦由来の雑味のキレを更に改善するとともに、香味の最大強度からの落差を更に大きくすることができる。
上記ビールテイスト飲料において、アルコール度数が3.0v/v%以上であることが好ましい。アルコール度数が上記範囲であることにより、香味の最大強度からの落差を更に大きくするとともに、より良好な麦由来の味わいを得ることができる。
上記ビールテイスト飲料において、原料中の麦芽の比率が50質量%以上75質量%以下であることが好ましい。比率が上記範囲であることにより、得られるビールテイスト飲料の、麦由来の雑味のキレを更に改善するとともに、香味の最大強度からの落差をより大きくし、麦由来の味わいをより高め、穀物臭をより低減することができる。
上記ビールテイスト飲料において、原料中の糖類における、単糖類、二糖類及び三糖類の合計比率が50質量%以上であることが好ましい。
本発明はまた、麦芽の比率が50質量%以上であり、かつ糖類を含む原料を用い、ビールテイスト飲料の糖質含有量が1.0g/100ml以下となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法を提供する。上記製造方法により、麦由来の雑味のキレに優れたビールテイスト飲料を製造することができる。
本発明はまた、原料として糖類を用いること、及び糖質含有量が1.0g/100ml以下となるように調節することを含む、原料中の麦芽の比率が50質量%以上であるビールテイスト飲料の、麦由来の雑味のキレを改善する方法を提供する。
本発明により、原料中の麦芽の比率が50質量%以上でありながら、麦由来の雑味のキレが改善された糖質オフビールテイスト飲料を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「原料」とは、酒税法(平成二八年三月三一日法律第一六号)に基づいて決定されたビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が50質量%以上であり、原料として糖類を含み、ビールテイスト飲料の糖質含有量が1.0g/100ml以下である。
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビール様の香味を有する飲料を意味する。ビールテイスト飲料は、アルコール度数(濃度)が1.0v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1.0v/v%未満であるノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が1.0v/v%以上であるビールテイストアルコール飲料であることが好ましい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(平成二八年三月三一日法律第一六号)上のビール、発泡酒、その他の発泡性酒類、リキュールに分類されるものが挙げられる。
ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の下限は、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、3.5v/v%以上、4.0v/v%以上、4.5v/v%以上、5v/v%以上、5.5v/v%以上又は6.0v/v%以上であってよい。また、ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の上限は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下、5.5v/v%以下、5v/v%以下、4.5v/v%以下、4v/v%以下、3.5v/v%以下又は3v/v%以下であってよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、3.0v/v%以上であることが好ましい。アルコール度数が3.0v/v%以上であると、ビールテイスト飲料の香味の最大強度からの落差をより大きくするとともに、麦由来の味わいをより高めることができる。
ビールテイスト飲料のアルコール度数を調整する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、任意のアルコール度数となるように発酵の程度を調整する、水又はアルコールを添加してアルコール度数を調整する等の方法を用いることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であってもよく、非発泡性であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であることが好ましい。本明細書において発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)未満であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度であってもよく、0.235MPa(2.4kg/cm)程度であってもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の麦芽の比率が50質量%以上である。すなわち原料は、麦芽を50質量%以上含む。原料中の麦芽の比率は、66.7質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってもよい。原料中の麦芽の比率は、例えば、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下又は66.7質量%以下であってもよい。原料中の麦芽の比率は50質量%以上75質量%以下であることが好ましい。
麦芽は、麦を発芽させることにより得ることができる。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等であってよく、大麦であることが好ましい。麦芽にはモルトエキスが含まれる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として糖類(糖質原料)を含む。糖類(糖質原料)としては、平成11年6月25日付けの酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第3条において規定される「糖類」であれば特に制限されない。糖類は、単糖類、二糖類及び三糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよく、更に四糖以上の糖類を含んでいてもよい。単糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、キシロース、アラビノース、タガトース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、ショ糖、ラクトース、麦芽糖、イソマルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、マルトトリオース、イソマルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。四糖以上の糖類としては、例えば、スタキオース、マルトテトラオース等が挙げられる。糖類の形態は、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、液状等であってよい。液状の糖類としては、例えば、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖等の液糖であってもよい。糖類はグラニュー糖又は上白糖であってもよい。糖類は、ブドウ糖、果糖、ショ糖及び麦芽糖からなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の糖類における、単糖類、二糖類及び三糖類の合計比率が50質量%以上、70%質量以上、90%質量以上又は95質量%以上であってもよい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の糖類における単糖類の比率が50質量%以上、70%質量以上、90%質量以上又は95質量%以上であってもよい。また、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の糖類における二糖類の比率が50質量%以上、70%質量以上、90%質量以上又は95質量%以上であってもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料中の糖類の比率が50質量%以下である。原料中の糖類の比率は、例えば、33.3質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、10質量%以下又は5質量%以下であってもよい。原料中の糖類の比率は、例えば、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上又は33.3質量%以上であってよい。原料中の糖類の比率は20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦芽以外の麦原料を含んでいてよい。麦芽以外の麦原料としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等の麦;麦エキス等の麦加工物が挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキスを抽出することにより得られる。麦芽以外の麦原料としては、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として麦原料以外の植物原料を含んでもよい。麦原料以外の植物原料としては、例えば、とうもろこし、米類、コウリャン等の穀類;馬鈴薯、サツマイモ等のイモ類;大豆、エンドウ等の豆類等が挙げられる。麦原料以外の植物原料としては、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、原料としてとうもろこしを用いないことが好ましい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料としてスターチ、グリッツ等の澱粉原料を含んでいてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸エチルの濃度は、例えば100ppm以下であってよい。ビールテイスト飲料の酢酸エチルの濃度は、50ppm以下であることが好ましい。酢酸エチルの濃度が50ppm以下であると、ビールテイスト飲料の麦由来の雑味のキレを更に改善することができ、かつ香味の最大強度からの落差を更に大きくすることができる。酢酸エチルの濃度は、40ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましい。酢酸エチルの濃度を上記範囲に設定することにより、ビールテイスト飲料の麦由来の雑味のキレ、香味の最大強度からの落差、及び麦由来の味わいをより改善することができる。酢酸エチルの濃度は、例えば5ppm以上、10ppm以上又は15ppm以上であってよい。
ビールテイスト飲料の酢酸エチル濃度は、公知の方法で調整することができる。例えば、酢酸エチル産生量が少ない酵母を用いる、発酵温度等の醸造条件を管理するなどの方法により、ビールテイスト飲料中の酢酸エチル濃度を任意の範囲に低減することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、糖質含有量が1.0g/100ml以下である。本明細書における糖質とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づく糖質をいう。具体的には、糖質は、食品から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分を除いたものをいう。また、食品中の糖質の量は、当該食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、水分及びアルコール分の量を控除することにより算定される。タンパク質、脂質、灰分、水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定する。アルコール分の量は、水分量とともに測定することができる。具体的には、タンパク質の量は改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法で測定し、脂質の量はエーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法又はレーゼゴットリーブ法で測定し、灰分の量は酢酸マグネシウム添加灰化法、直接灰化法又は硫酸添加灰化法で測定し、水分及びアルコール分の量はカールフィッシャー法、乾燥助剤法、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法又はプラスチックフィルム法で測定する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、糖質含有量が1.0g/100ml以下であり、0.9g/100ml以下、0.8g/100ml以下、0.7g/100ml以下、0.6g/100ml以下、0.5g/100ml以下、0.5g/100ml未満、0.4g/100ml以下又は0.3g/100ml以下であってもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、糖質含有量が0.1g/100ml以上、0.2g/100ml以上、0.3g/100ml以上、0.4g/100ml以上又は0.5g/100ml以上であってもよい。ビールテイスト飲料の糖質含有量は、公知の方法によって調整することができ、例えば、製造工程における酵素(特に多糖分解酵素)の添加量、原料の種類及び使用量等を調整することによって所望の程度に低減することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、食物繊維を含んでいてもよい。本実施形態に係るビールテイスト飲料の食物繊維含有量は、例えば、1.0g/100ml未満、0.7g/100ml未満、0.5g/100ml未満、0.3g/100ml未満又は0.2g/100ml未満であってよい。食物繊維含有量は、高速液体クロマトグラフ法又はプロスキー法で測定することができる。食物繊維含有量は、原料の種類及び使用量等によって調整することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、植物原料由来の食物繊維のほか、原料として別途用いた食物繊維を含んでいてもよい。このような食物繊維としては、例えば難消化性デキストリンが挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料においては、原料としての食物繊維を含まないことが好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、酵母エキスを原料として使用してもよいが、酵母エキス特有の香りをビールテイスト飲料に持ち込まない観点から、原料として酵母エキスを使用していないことが好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、高甘味度甘味料を含んでいてもよい。高甘味度甘味料としては、人工甘味料、ステビア等が挙げられる。人工甘味料としては、例えば、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、アドバンテーム、ネオテーム等が挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、人工甘味料を含まないことが好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、着色料を含んでいてもよい。着色料としては、例えば、カラメル色素、クチナシ色素、果汁色素、野菜色素、合成色素等が挙げられる。本実施形態に係るビールテイスト飲料は、カラメル色素を含まないことが好ましい。
原料中の麦芽は色麦芽を含んでいてもよい。原料中の色麦芽の使用比率は、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上又は10質量%以上であってよい。原料中の色麦芽の使用比率は、例えば、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下又は3質量%以下であってよい。色麦芽を配合することによって、得られるビールテイスト飲料の色を調整することができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、飲料に通常配合される酸化防止剤、香料、酸味料、塩類等の添加剤を含んでいてもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、麦芽の比率が50質量%以上であり、かつ糖類を含む原料を用い、ビールテイスト飲料の糖質含有量が1.0g/100ml以下となるように調整することを含む。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、例えば、麦芽及び糖類を含む原料、水、酵素、及び必要に応じて各種添加剤を混合して原料を糖化し、糖化液を濾過して得られた麦汁に、必要に応じて、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を得る仕込工程、発酵前液にビール酵母を添加して発酵させる発酵工程を経ることで製造することができる。また、発酵工程後の発酵後工程として、発酵工程で得られた発酵後液に対して濾過、加熱(殺菌)、アルコールの添加、カーボネーション等を行ってもよい。
仕込工程及び/又は発酵工程で添加する酵素としては、例えば、多糖分解酵素(例:α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼ、イソアミラーゼ、セルラーゼ(β-グルカナーゼを含む)、ヘミセルラーゼ)、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を用いることができる。酵素は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。酵素の添加量は、例えば、原料の総量に対して0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上又は0.3質量%以上であってよく、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下又は0.1質量%以下であってよい。
上記仕込工程で添加するプロテアーゼとしては、例えば、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、エキソ型プロテアーゼ、エンド型プロテアーゼ等が挙げられる。また、エンド型及びエキソ型両方の性質を有するプロテアーゼが挙げられる。プロテアーゼは、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。プロテアーゼの添加量は、使用する酵素の種類、酵素活性、原料の種類等に応じて適宜調節することができる。プロテアーゼの添加量は、例えば、原料の総量に対して0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上又は0.3質量%以上であってよく、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下又は0.1質量%以下であってよい。
仕込工程で添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができ、中でも大麦スピリッツが好ましい。一実施形態として、ビールテイスト飲料はスピリッツ(好ましくは、大麦スピリッツ)を含んでもよい。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦由来の雑味のキレに優れるという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、原料として糖類を用いること、及び糖質含有量が1.0g/100ml以下となるように調整することを含む、原料中の麦芽の比率が50質量%以上であるビールテイスト飲料の、麦由来の雑味のキレを改善する方法が提供される。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
(糖質量)
本実施例において飲料の糖質量は以下の方法で測定した。まず、測定対象である飲料の水分、アルコール分、タンパク質、灰分の量をそれぞれ測定した。水分とアルコール分は常圧加熱乾燥法により測定した。タンパク質量は、改良デュマ法による全窒素(タンパク質)の定量法により測定した。灰分量は、直接灰化法により測定した。サンプル中の脂質量を0g/100ml、食物繊維量を0g/100mlとみなし、サンプルの重量から、水分、アルコール分、タンパク質量及び灰分量を引いた値をサンプルの糖質量(g/100ml)として算定した。なお、水又は糖類等の添加により濃度調整を行ったサンプルの糖質量については、上記方法で測定した濃度調整前のサンプルの糖質量の値から添加量に応じて算出した。
[試験例1]
表1に示す比率の麦芽(粉砕した大麦麦芽)、水、及び多糖分解酵素を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。比較例1、参考例2及び参考例4では、原料中の比率0.01%未満のエンドウタンパクも原料として用いた。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁に、表1に示す比率の糖類(グラニュー糖)、及びホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させ、表1に示すアルコール度数となるように必要に応じて水を添加して濃度調整を行い、参考例2~5、比較例1、参考例1のビールテイスト飲料を得た。
得られたサンプルについて、訓練された6名のパネルにより官能評価を行った。官能評価は、麦由来の雑味のキレ、香味の最大強度からの落差、麦由来の味わい、及び穀物臭について、1~5の5段階で行い、その平均値を評価スコアとした。結果を表1に示す。麦由来の雑味のキレとは、飲用後に麦由来の雑味が口に残らずに消える感覚である。麦由来の雑味のキレの評価項目では、数値が高いほど、麦由来の雑味のキレがよい、すなわち飲用後に麦由来の雑味がより早く消え、良好に感じられることを示す。麦由来の味わいの評価項目では、数値が高いほど味わいが強く、良好に感じられることを示す。穀物臭の評価項目では、数値が高いほど穀物臭が少なく、良好に感じられることを示す。
一般に、ビールテイスト飲料を飲用すると、感じられる香味の強度は飲用直後から時間と共に増大し、やがてピークを迎え、その後徐々に減少していく。飲料によってピークの強度には大小がある。また、飲料によって、ピーク後にすばやく香味が口から消える、すなわち香味のキレがよいものもあれば、香味が後に残る、すなわち香味のキレが悪いものもある。本官能試験において、香味の最大強度からの落差とは、香味強度の、上記ピークからの一定時間内での低下量を指し、数値が高いほど落差が大きく良好に感じられることを示す。
Figure 0007297402000001
参考例2~5で得られたビールテイスト飲料は、いずれの評価項目でも優れていた。麦芽比率が100質量%である比較例1は、麦由来の雑味のキレ及び穀物臭において好ましくない結果であった。麦芽比率が低い参考例1では、麦由来の雑味のキレは優れていたものの、香味の最大強度からの落差、及び麦由来の味わいにおいて、好ましくない結果であった。
[試験例2]
表2に示す比率の麦芽(粉砕した大麦麦芽)、水、及び多糖分解酵素を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁に、表2に示す比率の糖類(グラニュー糖)、及びホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させ、表2に示すアルコール度数となるように必要に応じて水を添加して濃度調整を行い、参考例6、実施例6、7のビールテイスト飲料を得た。試験例1と同様に官能評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0007297402000002
参考例6、実施例6、7で得られたビールテイスト飲料は、いずれの評価項目においても良好な結果であった。アルコール度数が3.0v/v%以上であると、香味の最大強度からの落差、及び麦由来の味わいがより向上することが示された。
[試験例3]
表3に示す比率の麦芽(粉砕した大麦麦芽)、水、及び多糖分解酵素を仕込槽に投入し、常法に従って糖化液を製造した。得られた糖化液を濾過して麦汁を得た。得られた麦汁に、表3に示す比率の糖類(グラニュー糖)、及びホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、所定期間発酵させ、糖質量を表3に示す値となるように適宜調整し、比較例2、実施例8、9のビールテイスト飲料を得た。試験例1と同様に官能評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0007297402000003
糖質量が1.2g/100mlである比較例2では、麦由来の雑味のキレが好ましくない結果であった。ビールテイスト飲料の糖質量が低いほど、麦由来の雑味のキレ、香味の最大強度からの落差、及び穀物臭はより良好となる傾向であった。
[試験例4]
実施例6で得られたビールテイスト飲料の酢酸エチル濃度を、BCOJビール分析法の「8.22 低沸点香気成分」の方法に従い、FID検出器付きガスクロマトグラフ(Agilent6890ガスクロマトグラフ、アジレントテクノロジー社製)を用いて測定した。実施例6で得られたビールテイスト飲料に、飲料中の酢酸エチル濃度が表4に示す値となるように酢酸エチルを適宜添加し、実施例10~12のビールテイスト飲料を得た。試験例1と同様に官能評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 0007297402000004
実施例10~12で得られたビールテイスト飲料は、いずれの評価項目においても良好な結果であった。酢酸エチル濃度が低いほど、麦由来の雑味のキレ、香味の最大強度からの落差、及び麦由来の味わいはより良好となる傾向であった。

Claims (4)

  1. 原料中の麦芽の比率が50質量%以上であり、原料として糖類を含み、前記原料中の前記糖類の比率が30質量%以上であり、
    ビールテイスト飲料の糖質含有量が0.5g/100ml以下であり、アルコール度数が3.5v/v%以上6v/v%以下であ酢酸エチル濃度が10ppm以上30ppm以下である、ビールテイスト飲料。
  2. 前記原料中の前記糖類における、単糖類、二糖類及び三糖類の合計比率が50質量%以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
  3. 麦芽の比率が50質量%以上であり、かつ糖類を含む原料を用い、前記原料中の前記糖類の比率が30質量%以上であり、
    ビールテイスト飲料の糖質含有量が0.5g/100ml以下アルコール度数が3.5v/v%以上6v/v%以下、及び酢酸エチル濃度が10ppm以上30ppm以下となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。
  4. 原料として糖類を用いること、前記原料中の前記糖類の比率を30質量%以上とすること、並びに、糖質含有量が0.5g/100ml以下、アルコール度数が3.5v/v%以上6v/v%以下、及び酢酸エチル濃度が10ppm以上30ppm以下となるように調整することを含む、
    原料中の麦芽の比率が50質量%以上であるビールテイスト飲料の、麦由来の雑味のキレを改善する方法。
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