JP7295685B2 - 下水汚泥発酵原料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、下水汚泥を好気発酵させるための原料の製造方法に関する。
下水汚泥は、有機物及び水を含む泥状の物質であり、生活活動に伴う下水処理の過程で不可避的に排出されるものである。下水汚泥は、その排出量が下水処理量の増加に伴って増えており、都市ゴミと同様に、その処理が問題となっている。下水汚泥を処理するために、例えば該汚泥を焼却処理して、その際に生じた熱をエネルギー源として利用する試みが行われているが、更なる効率的な焼却処理を行うために、下水汚泥の含水率を下げることが望まれている。
下水汚泥の含水率を安価に低下させる技術として、下水汚泥を好気発酵させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、有機性廃棄物の堆積物を攪拌して、所定の空間率を有する状態で発酵処理した有機性廃棄物の処理方法が開示されている。また特許文献2には、好気発酵における空気の流通を確保するために、空気取出口及び吸引口を設けて、処理対象を攪拌させながら発酵可能にする、有機質材料の発酵処理装置が開示されている。
また特許文献3ないし5には、脱水効率の向上及び悪臭防止等のために、有機汚泥と、フライアッシュとを混合して発酵する方法も開示されている。
特開2010-284608号公報 特開2012-20224号公報 特開昭63-185881号公報 特開平09-074899号公報 特開平11-228267号公報
ところで、好気発酵を安定的に行うためには、一般的に、通気量の他に、処理対象物に含まれる微生物の栄養源となる栄養素及び水の量や、発酵温度などの各種条件の最適化が必要である。特に、悪臭などの環境汚染防止の観点から、発酵槽の上部から処理対象物を供給して該処理対象物を発酵させ、その発酵物を該発酵槽の下部から排出する構成を有する縦型発酵槽を用いて、密閉条件で好気発酵を行う場合、処理対象物の堆積に起因する質量増加によって、発酵槽内部の処理対象物が圧縮されて密度が高くなってしまい、発酵槽内での通気量が十分なものとならない。その結果、処理対象物の安定的な好気発酵を行うことができなかった。
この点に関して、特許文献1及び2に記載の技術は通気量の向上に寄与すると考えられるが、これらはいずれも装置上の工夫であり、下水汚泥又は該汚泥を含む処理対象物の組成及び性状等が変動した場合に、安定的な好気発酵が十分に行えないことがあった。また特許文献3ないし5では、密閉時での発酵条件及び縦型発酵槽を用いた場合の発酵については何ら検討されていない。
そこで本発明は、槽内の処理対象物の高密度化を抑制して、好気発酵を安定的に行うことができる下水汚泥発酵原料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下水汚泥と資材とを混合した下水汚泥発酵原料を発酵に供する際に、下水汚泥発酵原料の圧縮時の密度に着目することで、好気発酵を安定的に行うことができることを知見し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明は、下水汚泥と資材とを、混合するか又は堆積させて、下水汚泥発酵原料を得る工程を備え、
前記資材として通気助材を含み、前記下水汚泥発酵原料の突き固め密度が0.84g/cm以下である、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、通気助材を下水汚泥100質量部に対して5質量部以上100質量部以下含有させる、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、通気助材としてフライアッシュを含み、フライアッシュを、下水汚泥100質量部に対して5質量部以上100質量部以下含有させる、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、資材として栄養助材を更に含み、栄養助材を、下水汚泥100質量部に対して10質量部以上200質量部以下含有させる、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記下水汚泥と前記資材とを密閉式縦型発酵槽に投入して、該発酵槽内で混合するか、又は該発酵槽内に堆積させて、前記下水汚泥発酵原料を得る工程を備える、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記下水汚泥と前記資材とを予め混合した混合物を密閉式縦型発酵槽に投入して、前記下水汚泥発酵原料を得る工程を備える、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記密閉式縦型発酵槽として、その設置面に対して鉛直方向に延び、且つ前記下水汚泥及び前記資材を収容可能な筒状の槽部と、
前記槽部の上部に、前記下水汚泥及び前記資材、又は前記混合物を発酵槽に投入可能な投入口と、
前記槽部の下部に、好気発酵処理された前記下水汚泥発酵原料を前記槽部外へ排出可能な排出口と、
前記投入口及び前記排出口をそれぞれ覆う蓋状部材とを備え、
前記各蓋状部材の装着によって、前記槽部を密閉可能に構成されているものを用いる、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記密閉式縦型発酵槽として、攪拌設備及び空気流通設備の少なくとも一つを更に備えるものを用いる、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記下水汚泥を、前記資材と混合するか又は堆積させるのに先立ち、該下水汚泥の含水率、該下水汚泥の消化の有無、及び該下水汚泥の脱水処理方法の少なくとも一つに基づいて選別する選別工程と、
選別された前記下水汚泥と、前記資材とを、混合するか又は堆積させて、下水汚泥発酵原料を得る工程とを備える、下水汚泥発酵原料の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記方法によって得られた下水汚泥発酵原料を好気発酵に供して、汚泥発酵物を得る工程を備える、汚泥発酵物の製造方法を提供するものである。
また本発明は、前記方法によって得られた汚泥発酵物をセメントクリンカー製造設備に導入して、該汚泥発酵物をセメントクリンカー原料として処理する、汚泥発酵物の処理方法を提供するものである。
また本発明は、前記汚泥発酵物の使用量を、目的とするセメントクリンカー組成に基づいて設計し、
設計した使用量に基づいて前記汚泥発酵物をセメントクリンカー製造設備に導入して、該汚泥発酵物をセメントクリンカー原料として処理する、汚泥発酵物の処理方法を提供するものである。
本発明の下水汚泥発酵原料の製造方法によれば、下水汚泥と、資材とを含む下水汚泥発酵原料の突き固め密度を所定値以下にするという簡便な操作で、処理対象物が圧縮された場合でも、下水汚泥を安定して発酵させることができる。その結果、セメント工場等の工業地域や住宅に隣接する地域でも、悪臭などの環境汚染を防ぎつつ、安定かつ大量に下水汚泥を発酵処理することができ、資源の有効利用に繋げることができる。
図1は、突き固め密度の測定方法を示した図である。 図2は、密閉型縦型発酵槽の一実施形態を示す断面模式図である。 図3は、セメントクリンカー製造装置の一実施形態を示す断面模式図である。 図4(a)は、発酵試験に用いた発酵容器の外観及び寸法を示す斜視図であり、図4(b)は温度測定時における各部材の配置位置を示した断面図である。 図5は、無機系資材を添加したときの下水汚泥発酵原料の発酵試験結果を示すグラフである。 図6は、密度及び含水率と発酵に及ぼす影響との関係を示すグラフである。
本発明の好適な実施形態を以下に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明の下水汚泥発酵原料の製造方法は、下水汚泥と資材とを混合するか、又は堆積させて、下水汚泥発酵原料を得る工程を備える。この下水汚泥発酵原料は、その突き固め密度が0.84g/cm以下となるように調整される。また本製造方法に用いられる資材として、通気助材を含む。
本発明の原材料として用いられる下水汚泥は、排水処理又は下水処理の過程で生じる廃棄物であり、有機物、無機物及び水を含む泥状の物質である。このような下水汚泥としては、例えば一般下水汚泥、工業下水汚泥などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて用いることができる。下水汚泥は、これをそのまま用いてもよく、或いは、脱水汚泥、消化汚泥などの下水汚泥の自己発酵処理物を用いてもよい。
本発明の原材料として用いられる資材は、下水汚泥ともに含有させることによって、下水汚泥発酵原料を発酵に供する際に、下水汚泥の安定的な好気発酵を促すための材料である。具体的には、資材は、下水汚泥の含水率を低減させたり、下水汚泥と資材とを含む下水汚泥発酵原料の通気性を高めたり、好気発酵に寄与する微生物の栄養源となる易分解性有機分を供給したり、好気発酵を効率良く進行させるための好気性微生物群を供給したりするために用いられる。
用いられる資材の形状は特に制限はなく、例えば、固形状、粒状、粉状、ペースト状、流動状、液状等の形状としてもよい。資材の総含有量は、用いられる資材の物性や目的に応じて適宜調整できるが、下水汚泥100質量部に対する資材の総質量部として、好ましくは15質量部以上300質量部以下、より好ましくは22質量部以上230質量部以下、更に好ましくは28質量部以上170質量部以下とすることができる。このとき、基準となる下水汚泥の質量は、含水状態での質量とする。
本発明では、含水率の低減や通気性の向上を目的とする資材として通気助材を含む。通気助材としては、例えば、稲わら、もみがら、おがくず、バーク、草木又はこれらの乾燥物若しくは破砕物などの有機系通気助材や、パーライト、ゼオライト、珪藻土、フライアッシュなどの無機系通気助材等が用いられる。
通気助材の形状は特に制限はなく、例えば、固形状、粒状、粉状、ペースト状、流動状、液状等の形状としてもよい。通気助材の含有量は、用いられる資材の物性や目的に応じて適宜調整できるが、下水汚泥100質量部に対する通気助材の総質量部を、好ましくは7質量部以上80質量部以下、更に好ましくは8質量部以上50質量部以下とすることができる。このとき、基準となる下水汚泥の質量は、含水状態での質量とする。
得られる下水汚泥発酵原料の突き固め密度を好適な範囲となるように調整しやすくする観点から、通気助材の嵩密度は、0.56g/cm以下であることが好ましく、0.50g/cm以下であることがより好ましく、0.49g/cm以下であることが更に好ましい。また、通気助材の嵩密度の下限は低ければ低いほど好ましいが、飛散性等のハンドリング面を考慮して、0.10g/cm以上が現実的である。通気助材の嵩密度は、例えば、漏斗口の下部に所定の容量を有する容器を配した状態で、漏斗を介して、漏斗口から通気助材を静かに落下させて容器内に充填した。次いで、容器に充填された通気助材を容器の上部開口端に沿って、振動を与えないように平行に擦り切り、容器内に充填された通気助材の質量(g)を測定した。嵩密度(g/cm)は、容器内に充填された通気助材の質量(g)を容器の容積(cm)で除することによって算出することができる。また、この測定方法に代えて、JIS K 2151「コークス類-試験方法」、又はJIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」を参考に、試験器具や試験手順を定めて、嵩密度を測定することができる。
本発明は、上述した下水汚泥と資材とを用いて、下水汚泥発酵原料を得る。下水汚泥発酵原料は、例えば、下水汚泥と資材とを混合して混合物とするか、又はこれらを任意の順序で堆積させて堆積物とすることができる。詳細には、発酵槽等の発酵容器に供給する前に、下水汚泥と資材とを予め混合して下水汚泥発酵原料を得たり、又は、屋内若しくは屋外で、下水汚泥及び資材のうち一方の上に他方を堆積させた堆積物として下水汚泥発酵原料を得る方法が挙げられる。或いは、下水汚泥及び資材のうち一方を容器に供給し、次いで他方を容器内に供給して、容器内で各原材料を交互に堆積させた堆積物とし、これをそのままで、又はこれに加えて、該堆積物を容器内で混合した混合物として、下水汚泥発酵原料を得る方法が挙げられる。
下水汚泥と資材とを混合又は堆積させて得られる下水汚泥発酵原料は、その突き固め密度を、好ましくは0.84g/cm以下とする。また、突き固め密度の下限は低ければ低いほど好ましいが、下水汚泥発酵原料に含まれる原材料の嵩密度を考慮して、0.2g/cm以上が現実的である。また、下水汚泥発酵原料の非圧密状態(圧縮されていない状態)での密度は、好ましくは0.1g/cm以上0.8g/cm以下であり、より好ましくは0.2g/cm以上0.7g/cm以下である。このような突き固め密度又は非圧密状態の密度は、用いる下水汚泥及び資材の種類、物性、組成又はこれらの組み合わせ、あるいは後述するように含水率を適宜変更することによって、調整することができる。
下水汚泥と資材とを含む下水汚泥発酵原料を好気発酵に供する場合、下水汚泥発酵原料が非圧密状態では、空気の流通が確保されて好気発酵が良好に進行するが、外力あるいは下水汚泥発酵原料の自重等の圧力の付与によって該下水汚泥発酵原料が圧縮された状態(以下、これを「圧密状態」ともいう。)では、空気の流通が十分に確保されず、好気発酵の進行が非常に遅くなる場合があった。特にこのような不具合は、後述する縦型発酵槽を用いた場合に多く発生していた。このような問題点を解決すべく本発明者が鋭意検討した結果、下水汚泥発酵原料の突き固め密度と、圧密状態における好気発酵の進行度合とに関係性があることを見出し、また、突き固め密度を所定の密度以下とすることによって、下水汚泥発酵原料が圧密状態となっていても、下水汚泥の好気発酵が十分且つ安定的に進行することを見出した。
突き固め密度は、JIS A 1109:2006「細骨材の密度及び吸水率試験方法」、又はJGS 1611「突き砂による土の密度試験方法」で規定される突き棒を用いて、以下の方法で、下水汚泥と資材とを含む下水汚泥発酵原料を突き固めたときの密度である。詳細には、図1に示すように、例えば底面φ85mm×高さ85mmの寸法の容器に、測定試料として非圧密状態の下水汚泥発酵原料を約400mL分投入し、このときの下水汚泥発酵原料の質量A(g)を測定する。次いで、容器上端の50mm上方から、測定試料の上面をまんべんなく突き固めるように、上述の突き棒を試料高さが変化しなくなるまで自由落下させる。このときの測定試料の高さ(cm)と、容器の底面積(cm)との積から測定試料の容積B(cm)を求め、質量Aを容積Bで除することによって、突き固め密度(g/cm)を算出することができる。本工程における自由落下の回数は、用いる容器、原材料の組成及び種類、並びに試料高さの変化度合によって適宜変更可能であるが、上述の寸法の容器を用いた場合、例えば10~20回程度とすることができる。
特に、下水汚泥発酵原料自体の性状に依存せず、突き固め密度を上述の範囲となるように調整しやすくする観点から、通気助材としてフライアッシュを含むことが好ましい。この場合、フライアッシュの含有量は、下水汚泥100質量部に対して、好ましくは5質量部以上100質量部以下、より好ましくは7質量部以上70質量部以下、更に好ましくは8質量部以上50質量部以下である。このとき、基準となる下水汚泥の質量は、含水状態での質量とする。フライアッシュは、石炭の燃焼によって生成した石炭灰の一種であり、例えば、石炭火力発電所等にて微粉石炭を燃焼した際に生成する石炭灰であって、電気集塵機等で回収されるものが挙げられる。フライアッシュは、その嵩密度が好ましくは0.2g/cm以上0.56g/cm以下、ブレーン比表面積が好ましくは1000cm/g以上20000cm/g以下のものであり、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム等を含む。
このように、フライアッシュを特定の含有量で含むことによって、下水汚泥発酵原料中の通気性をより確実に確保することができ、圧密状態においても、下水汚泥の好気発酵を十分且つ安定的に進行させることができる。また、好気発酵の安定的な進行に伴って、廃棄物且つ処理対象物である下水汚泥を大量に処理することができるので、資源の有効利用及び環境保護に寄与する。更に、フライアッシュも下水汚泥と同様に廃棄物として扱われるところ、フライアッシュを下水汚泥とともに再利用することによって、資源の有効利用及び環境保護に一層寄与するという利点も奏される。
下水汚泥の好気発酵を促進させる観点から、下水汚泥発酵原料は、資材として栄養助材を更に含むことが好ましい。栄養助材は、好気発酵に寄与する微生物の栄養源となる易分解性有機分を供給したり、好気発酵を効率良く進行させるための好気性微生物群を供給したりするために用いられる資材である。栄養助材としては、例えば、食品汚泥、酒粕及び焼酎粕等の食品加工残渣、廃白土、製紙スラッジ、廃食油、廃棄物固形燃料(RDF)、肉骨粉、生ごみ、し尿、畜糞、堆肥、活性汚泥、スカム等が挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。
これらのうち、活性汚泥やスカムは、栄養源としての作用に加えて、好気発酵を行う好気性微生物群を更に供給して、好気発酵をより促進することが可能となるので好適である。また、上述した栄養助材のうち、好気発酵をより一層促進させて、発酵の温度上昇効果を大きくさせるという理由から、肉骨粉を用いることが一層好適である。肉骨粉は、例えば、牛・豚・鶏から食肉を除いた後に、内蔵や屑肉等とともに加熱処理されたものであり、好ましくは粉末状に粉砕された乾燥粉砕物である。栄養助材の含有量は、下水汚泥100質量部に対して、好ましくは15質量部以上150質量部以下、更に好ましくは20質量部以上120質量部以下である。このとき、基準となる下水汚泥の質量は、含水状態での質量とする。
突き固め密度を上述の範囲となるように調整しやすくするとともに、好気発酵を促進させるために十分な水分量を確保する観点から、下水汚泥発酵原料の含水率は、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。含水率は、例えば市販の赤外線水分計又はハロゲン水分計を用いて、100℃~120℃の加熱温度で乾燥したときの乾燥前後の質量の差に基づいて測定することができる。またこれに代えて、JIS A 1203「土の含水比試験方法」に準じて測定することができる。下水汚泥発酵原料の含水率は、例えば、所望の含水率となるように原材料を選択したり、原材料又は下水汚泥発酵原料に対して、水を添加したりすることによって適宜調整することができる。
上述の下水汚泥発酵原料は、これを堆積物又は混合物として屋外又は屋内に配するか、或いはこれを堆積物又は混合物として容器に供給して、好気発酵処理に供することができる。詳細には、下水汚泥発酵原料は、これを堆肥舎内に堆積させて好気発酵に供したり、これを開放系又は密閉系の発酵槽に供給して好気発酵に供したりすることができる。下水汚泥発酵原料を発酵槽に供給して好気発酵処理に供する場合、発酵槽内の攪拌設備の有無あるいは攪拌方法を問わず、安定的に下水汚泥の好気発酵を行うことができる。悪臭などの周囲環境への汚染を低減する観点から、下水汚泥発酵原料を密閉系の発酵槽内で好気発酵に供することが好ましい。密閉系とは、好気発酵時において固体及び液体の進入が防止され、且つ空気等の気体の進入が妨げられない反応系を指し、開放系とは、好気発酵時において固体、液体及び気体の進入が妨げられない反応系を指す。
特に、上述の方法によって得られた下水汚泥発酵原料は、密閉可能且つ縦型の発酵槽(以下、これを「密閉式縦型発酵槽」ともいう。)を用いて好気発酵に供された場合でも、下水汚泥の好気発酵が安定的に進行するので好適である。つまり、下水汚泥を発酵処理する方法として、下水汚泥と資材とを、これらを任意の順序で縦型の発酵槽内に供給するか、或いはこれらの原材料を含む混合物を縦型の発酵槽内に供給して、突き固め密度が0.84g/cm以下である下水汚泥発酵原料とし、然る後に、該原料中の下水汚泥を好気発酵させる工程を有することが好ましく、当該工程は密閉系で行われることが更に好ましい。
図2は、密閉式縦型発酵槽の一実施形態を示している。密閉式縦型発酵槽10は、設置面に対して鉛直方向に延びており、下水汚泥及び資材、又はこれらの混合物を収容可能な筒状の槽部20を有し、その上部に、下水汚泥及び資材、或いはこれらの混合物を槽部20に投入可能な投入口30と、該槽部20の下部に、好気発酵処理された下水汚泥発酵原料を槽部20外へ排出可能な排出口40とを備えている。投入口30及び排出口40はともに蓋などの開閉可能又は脱着可能な蓋状部材(図示せず)が設けられ、該蓋状部材を投入口30及び排出口40に装着することによって、発酵槽10における槽部20を密閉可能に構成されている。つまり、密閉式縦型発酵槽10は密閉系で好気発酵を行うことができるものである。
好気発酵効率をより向上させる観点から、密閉式縦型発酵槽10は、例えば槽部20の外周面に断熱材を配する等の方法によって、断熱構造を有していることが好ましい。また、密閉式縦型発酵槽10は、発酵槽内の原材料を混合するための攪拌設備50を備えていることも好ましい。図2に示す攪拌設備50は、例えば槽部20内に設けられた攪拌翼51と、該攪拌翼51に接続された攪拌軸52と、槽部20外に設けられたモータ(図示せず)とを備えている。攪拌翼51は、攪拌軸52を介して槽部20外に設けられたモータに接続されており、モータを駆動源として一定方向に回転するようになっている。攪拌設備50を更に備えることによって、下水汚泥発酵原料の過度の圧密状態を抑制し、好気発酵効率を一層向上させることができる。
また、密閉式縦型発酵槽10は、空気や酸素などの酸素含有気体を発酵槽内に供給するための空気流通設備60と、槽部20内の気体を槽部20外へ排気可能な排気口70とを備えていることも好ましい。図2に示す形態では、酸素含有気体Fは、槽部20外に設けられた空気流通設備60から、好ましくは中空の攪拌軸52及び攪拌翼51の各内部を介して、攪拌翼51の鉛直方向下方側に供給できるようになっている。攪拌翼51の鉛直方向下方側には、酸素含有気体Fを流通可能な気体流通孔(図示せず)を複数備えていることも好ましい。槽部20内に存在する酸素含有気体及び好気発酵によって生じたガスは、排気口70を介して、排気空気として槽部20の上部から排気される。
酸素含有気体の供給効率を高めて、下水汚泥の好気発酵効率を高める観点から、酸素含有気体Fは槽部20の鉛直方向下方側から供給され、且つ、酸素含有気体F及びガスは、槽部20の鉛直方向上方側から排気されることが好ましい。下水汚泥発酵原料は、投入口から連続的又は断続的に発酵槽における槽部内に投入し、下水汚泥発酵原料を発酵槽内で2週間程度好気発酵させ、その後、発酵した下水汚泥発酵原料を汚泥発酵物として排出口から排出する。
密閉式縦型発酵槽は、周囲環境への悪臭の流出を低減する観点、及び設備の省スペース化の観点から、下水汚泥の発酵処理に好ましく用いられる。一方で、縦型発酵槽を用いて好気発酵を行う場合、発酵槽内の下水汚泥発酵原料は、発酵槽の上部から下部へと移行するにしたがって、該原料の自重によって下水汚泥発酵原料が圧縮されて圧密状態となり、下水汚泥の好気発酵が進行しづらくなる。この点に関して、所定の範囲の突き固め密度を有する下水汚泥発酵原料を好気発酵に供することによって、圧密状態となっても、下水汚泥の好気発酵を十分に且つ安定的に行うことができる。
下水汚泥発酵原料を発酵に供することで生成される汚泥発酵物は、例えば肥料、土壌改良材、園芸用土壌などの緑農地材料、固形燃料、セメントクリンカー原料、熱エネルギー源等の用途に用いることができる。
汚泥発酵物をセメントクリンカー原料として用いる場合、上述の下水汚泥発酵原料を得る工程、及び下水汚泥発酵原料中の下水汚泥を好気発酵させて、汚泥発酵物を得る工程の前に、用いる下水汚泥を所定の基準に基づいて選別する選別工程を備えていることが好ましい。また、汚泥発酵物を得た後、汚泥発酵物をセメントクリンカー製造装置に導入して汚泥発酵物を処理する工程、及び汚泥発酵物の使用量を設計する工程を含んでいることも好ましい。
(A)下水汚泥の選別工程
本工程では、下水汚泥を、前記資材と混合するか又は堆積させるのに先立ち、該下水汚泥をその含水率、消化の有無、及び脱水処理方法の少なくとも一つに基づいて選別することが好ましい。そして、選別された下水汚泥と資材とを、混合するか又は堆積させて、下水汚泥発酵原料を得る。
詳細には、セメント工場に設置されているセメントクリンカー製造装置には、焼成炉であるロータリーキルンの排熱を利用して廃棄物を乾燥する乾燥設備や、泥状廃棄物のロータリーキルンへの投入設備を有することが多い。したがって、本発明に用いられる下水汚泥を受け入れる際に、下水汚泥発酵原料の製造に適した下水汚泥と、下水汚泥発酵原料の製造に適さない下水汚泥とを選別し、製造に適するもののみを本発明に使用することが好ましい。下水汚泥発酵原料の製造に適さない下水汚泥は、前記乾燥設備や前記投入設備を利用して下水汚泥を処理することも好ましい。これにより、下水汚泥の受入量を増加させても、効率的に下水汚泥を処理することが可能となる。
下水汚泥発酵原料の製造に好適に用いられる下水汚泥の選別の指標としては、例えば、下水汚泥の含水率が85質量%以下であるものを用いたり(含水率による選別)、下水汚泥の種類として未消化汚泥を用いたり(消化の有無による選別)、及び下水汚泥の脱水処理方法としてフィルタープレスされたものを用いたりする(脱水処理方法による選別)等の少なくとも一つに基づいて選別される。
(B)汚泥発酵物の処理工程
また、上述の方法によって得られた汚泥発酵物をセメントクリンカー製造設備に導入して、該汚泥発酵物を、セメントクリンカー原料、あるいは熱エネルギー源として処理することも好ましい。
セメントクリンカー原料として、一般的には、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料(鉄鉱等)等の混合物が用いられるところ、上述の方法によって得られた汚泥発酵物は、これを焼成した際の成分が、上記原料の混合物の成分と比較的類似していることから、汚泥発酵物自体をセメントクリンカー原料として用いることができる。
セメントクリンカー原料は、例えば図3に示すような構造を有するセメントクリンカー製造設備で焼成される。同図に示すセメントクリンカー製造設備100は、例えば、サスペンジョンプレヒーター110と、ロータリーキルン120と、これらの間に仮焼炉130及びロータリーキルン入口フット部140とを備えており、これらの部材はそれぞれ連通している。これに加えて、上述のセメントクリンカー原料を製造設備100内に導入可能な原料供給口の少なくとも一つを備えている。原料供給口の形状は、管状であってもよく、穴状であってもよい。同図に示すサスペンジョンプレヒーター110には、原料の加熱によって発生した排ガスを外部に排出する排気管150を備えている。
汚泥発酵物をセメントクリンカー原料として処理する方法としては、例えば図3に示すように、第1原料供給口135Aを介してサスペンジョンプレヒーター110上部に導入して、加熱されながらサスペンジョンプレヒーター110内を下降し、サスペンジョンプレヒーター110に連結されている仮焼炉130でさらに加熱された後、ロータリーキルン入口フット部140を経由してロータリーキルン内に導入され、バーナー170からロータリーキルン内に発生した炎によって焼成される。焼成された原料は、クーラー180を介して冷却され、目的とするセメントクリンカーとなる。このようにして、セメントクリンカーを製造しながら、汚泥発酵物を処理することができる。
また、汚泥発酵物を処理する方法として、例えば、上述した第1原料供給口135Aからの導入の他に、ロータリーキルン入口フット部140の側面に配された第2原料供給口135Bから導入したり、仮焼炉130の上部に配された第3原料供給口135Cから導入したり、あるいは、仮焼炉130の側面に配された第4原料供給口135Dから導入してもよい。これに代えて、又はこれに代えて、汚泥発酵物をバーナー170からロータリーキルン内に直接吹き込んで導入してもよいし、バーナー近傍に原料供給口を更に配して吹き込んで導入してもよい。いずれの処理方法であっても、汚泥発酵物は、これをセメントクリンカー原料として処理できることに加えて、熱エネルギー源として処理できる利点がある。運用の容易さの観点からは、ロータリーキルン入口フット部の近傍から汚泥発酵物を導入することが好ましい。いずれの場合であっても、汚泥発酵物を前記製造装置に導入する際は、汚泥発酵物単独でもよいし、他のセメントクリンカー原料と混合したものでもよい。汚泥発酵物の導入は、連続的に又は断続的に行われてもよい。また汚泥発酵物の導入は、一つの原料供給口を介して行われてもよく、又は複数の原料供給口を介してそれぞれ行われてもよい。
(C)汚泥発酵物の使用量設計工程
セメント工場では、製造されるセメントクリンカーの組成の管理が重要であるところ、管理の容易さの観点から、汚泥発酵物の使用量を、目的とするセメントクリンカーの組成に基づいて設計し、設計した使用量に基づいて前記汚泥発酵物をセメントクリンカー製造設備に導入して、該汚泥発酵物をセメントクリンカー原料として処理することも好ましい。具体的には、下水汚泥発酵原料中の資材の添加量、汚泥発酵物の生産速度(発酵速度)、並びに汚泥発酵物以外に用いられる他のセメントクリンカー原料の組成及びその混合割合のうち一つ以上と、製造されるセメントクリンカーの組成との関係を予め把握し、汚泥発酵物の使用量を多くするか、又は少なくするように設計する。これらの関係を基づいて、製造装置の安定した運転管理を行うことができ、また、汚泥発酵物の使用量を多くするように設計することで、廃棄物の低減につながるという利点もある。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。なお、実施例中、突き固め密度の測定方法に基づいて下水汚泥発酵原料を突き固めた後の状態を「圧密状態」ともいい、突き固めていない状態を「非圧密状態」ともいう。以下に示す嵩密度は、上述した方法で測定した。また、以下に示す含水率は、ハロゲン水分計(アズワン株式会社製、HM1105)を用いて120℃の加熱温度で乾燥したときの乾燥前後の質量差から算出した。
〔1.下水汚泥発酵原料の調製〕
〔参考例1及び2〕
下水汚泥として、以下の表1に示す消化汚泥(参考例1)、及び未消化汚泥(参考例2)を用いた。また、栄養助材として、肉骨粉(肥料用、含水率5.1質量%、発熱量3900kcal/kg)、及び堆肥(宇部セメント工場内試製品、下水汚泥発酵堆肥化物、含水率28.1質量%、発熱量3480kcal/kg)を用いた。上述の下水汚泥と栄養助材とを混合し、参考例1(含水率51.4質量%)及び参考例2(含水率50.0質量%)の下水汚泥発酵原料をそれぞれ調製した。各参考例において、肉骨粉の含有量は下水汚泥100質量部に対して58質量部、堆肥の含有量は下水汚泥100質量部に対して50質量部とした。
Figure 0007295685000001
〔実施例1及び2〕
参考例1の下水汚泥発酵原料に、資材として、以下の無機系通気助材を更に混合して、各実施例の下水汚泥発酵原料を調製した。
・実施例1:調湿建材破砕物(宇部興産建材株式会社製、珪藻土を主成分とする無機板状物を破砕して5~10mmの粒度に調整した粒状物、嵩密度0.29g/cm)を用いた。調湿建材破砕物の含有量は、下水汚泥100質量部に対して27.4質量部とした。本実施例の下水汚泥発酵原料の含水率は、45.8質量%であった。
・実施例2:フライアッシュ(宇部興産株式会社製、石炭火力自家発電所より採取した微粉状物、嵩密度0.49g/cm)を用いた。フライアッシュの含有量は、下水汚泥100質量部に対して46.5質量部とした。本実施例の下水汚泥発酵原料の含水率は、42.5質量%であった。
〔実施例3及び4〕
参考例1の下水汚泥発酵原料に、資材として以下の有機系通気助材を更に混合して、各実施例の下水汚泥発酵原料を調製した。
・実施例3:もみがら(嵩密度0.13g/cm)を用いた。もみがらの含有量は、下水汚泥100質量部に対して12.4質量部とした。本実施例の下水汚泥発酵原料の含水率は、48.7質量%であった。
・実施例4:木屑(4.75mm以下調整品、嵩密度0.20g/cm)を用いた。木屑の含有量は、下水汚泥100質量部に対して19.2質量部とした。本実施例の下水汚泥発酵原料の含水率は、47.3質量%であった。
〔実施例5ないし8〕
参考例2の下水汚泥発酵原料に、実施例1ないし4で用いた無機系通気助材を混合して、各実施例の下水汚泥発酵原料を調製した。
〔比較例1及び2〕
参考例1の下水汚泥発酵原料に、以下の資材を更に混合して、各比較例の下水汚泥発酵原料を調製した。
・比較例1:クリンカアッシュ(宇部興産株式会社製、石炭火力自家発電所の石炭燃焼ボイラ落下採取物、嵩密度0.59g/cm)。クリンカアッシュの含有量は、下水汚泥100質量部に対して56.4質量部とした。本比較例の下水汚泥発酵原料の含水率は、47.7質量%であった。
・比較例2:珪石粉(宇部サンド工業株式会社製、嵩密度1.30g/cm)。珪石粉の含有量は、下水汚泥100質量部に対して86.3質量部とした。本比較例の下水汚泥発酵原料の含水率は、42.5質量%であった。
〔比較例3及び4〕
参考例1の下水汚泥発酵原料に、水を更に加えて含水率を60.0質量%に調整し、その後、資材として、以下の有機系通気助材を混合して、各比較例の下水汚泥発酵原料を調製した。
・比較例3:実施例3で用いたもみがらを、実施例3と同様の含有量で混合した。本比較例の下水汚泥発酵原料の含水率は、57.4質量%であった。
・比較例4:実施例4で用いた木屑を、実施例4と同様の含有量で混合した。本比較例の下水汚泥発酵原料の含水率は、56.1質量%であった。
〔2.好気発酵時の温度変化の測定〕
実施例、比較例及び参考例の下水汚泥発酵原料を用いて、圧密状態での下水汚泥の好気発酵の進行度合を温度変化として経時的に評価した。発酵容器として500mL容量のポリビーカーと、該ビーカーの側面及び底面を覆う発泡スチロール製の簡易断熱容器と、開口を有する発泡スチロール製の蓋とを用いた。これらの配置位置及び寸法は、図4(a)に示すとおりとした。各ビーカーに実施例、比較例及び参考例の下水汚泥発酵原料を約400mLずつ収容して、そのときの該原料の質量(g)と、該原料の高さ(cm)とを測定して容積(cm)を算出し、質量を容積で除することによって、非圧密状態の密度(g/cm)を算出した。これらの結果を以下の表2に示す。次いで、ビーカーに収容した非圧密状態の各下水汚泥発酵原料に対して、上述の突き棒を自由落下させて、下水汚泥発酵原料の高さが均一となるように突き固めた。このときの各下水汚泥発酵原料の突き固め密度を測定した。実施例、比較例及び参考例における非圧密状態の密度及び突き固め密度を以下の表2に示す。なお、比較例2~4並びに参考例1及び2の非圧密状態の密度は測定していない。
その後、図4(b)に示すように、突き固めた状態の測定対象の中心部にT型熱電対(アズワン社製)を挿入し、データロガーで温度を連続的に計測可能な状態で好気発酵に供した。温度変化の測定は、20℃に設定した室内で行い、測定開始から90時間までとした。実施例、比較例及び参考例の圧密状態での温度変化の結果を図5及び表2に示す。好気発酵が安定的に進行しているか否かは、表2において、参考例1よりも最大到達温度(ピーク温度)が高く、且つ参考例1よりも30℃到達時間が短いものを、「好気発酵が安定的且つ良好に進行している」ものであると評価した。表2中、測定開始から90時間経過後も30℃に到達しなかった下水汚泥発酵原料は、到達時間を「>90」と表記した。
また図6では、実施例、比較例及び参考例の圧密状態での下水汚泥の好気発酵の進行度合について、参考例1及び2(図6中、黒塗り三角印の記号で示す。)よりも最大到達温度(ピーク温度)が高く、且つ30℃到達時間が短くなる配合を良好(実施例;図6中、記号〇で示す。)と評価し、それ以外の配合は不良(比較例;図6中、記号×で示す。)と評価した。これらの評価結果を図6に示す。また、参考として、実施例及び比較例における非圧密状態での下水汚泥の好気発酵の進行度合も併せて評価し、図6中、灰色塗り丸印の記号で示している。なお図6では、比較例2~4並びに参考例1及び2の非圧密状態での好気発酵評価は実施していない。
Figure 0007295685000002
表2及び図5に示すように、突き固め温度が0.84g/cm以下である実施例の下水汚泥発酵原料は、参考例及び比較例のものと比較して、最大到達温度が高いとともに30℃到達時間が短く、好気発酵が安定的且つ良好に進行していることが判る。特にフライアッシュは、多孔質材料である珪藻土と比べても良好な発酵促進作用が認められ、圧密状態であっても、下水汚泥の好気発酵が一層安定的且つ良好に進行することが判る。この理由として、フライアッシュ自体が低密度な粒子であること、及びフライアッシュに含まれるCaO成分によって下水汚泥の粒子が凝集しフロックを形成しやすくなり、下水汚泥発酵原料の突き固め密度が低下することが考えられる。
また図6に示すように、非圧密状態ではいずれの試料も下水汚泥の好気発酵は良好に進行するが、圧密状態になると下水汚泥の好気発酵の進行度合が異なることが判る。特に、実施例に示すように、突き固め密度を0.84g/cm以下とすることで、下水汚泥の好気発酵が安定的且つ良好に進行することが判る。また、突き固め密度は、下水汚泥の種類や資材の種類、及びその配合を変更したり、含水率を変更したりすることによって容易に調整できることも判る。
以上のとおり、本発明の下水汚泥発酵原料の調製方法によれば、下水汚泥と、通気助材を含む資材とを混合又は堆積させた下水汚泥発酵原料の突き固め密度を所定値以下にするという簡便な操作で、処理対象物が圧縮された場合でも、下水汚泥の安定した発酵処理を実施できる。その結果、セメント工場等の工業地域や住宅に隣接する地域でも、悪臭などの環境汚染を防ぎつつ、安定かつ大量に下水汚泥を発酵処理することができ、資源の有効利用に繋げることができる。

Claims (11)

  1. 下水汚泥と資材とを含み、含水率が40質量%以上48.7質量%以下であり、且つ非圧密状態での密度が0.44g/cm以上0.61g/cm以下である下水汚泥発酵原料における、該下水汚泥と該資材とを混合するか又は堆積させて、以下の方法で測定される突き固め密度が0.72g/cm 以上0.84g/cm以下である下水汚泥発酵原料を得る工程を備え、
    前記資材として嵩密度が0.10g/cm 以上0.50g/cm 以下である通気助材を含
    前記通気助材は、稲わら、もみがら、おがくず、バーク、草木若しくはこれらの乾燥物若しくは破砕物や、パーライト、ゼオライト、珪藻土又はフライアッシュから選択され、
    前記下水汚泥100質量部に対する前記通気助材の総質量部が12.4質量部以上46.5質量部以下である、
    下水汚泥発酵原料の製造方法。
    〔突き固め密度の測定方法〕
    JIS A 1109:2006「細骨材の密度及び吸水率試験方法」、又はJGS 1611「突き砂による土の密度試験方法」で規定される突き棒を用いる。底面φ85mm×高さ85mmの寸法の容器に、測定試料として非圧密状態の下水汚泥発酵原料を約400mL分投入し、このときの下水汚泥発酵原料の質量A(g)を測定する。次いで、容器上端の50mm上方から、測定試料の上面をまんべんなく突き固めるように、突き棒を試料高さが変化しなくなるまで自由落下させる。このときの測定試料の高さ(cm)と、容器の底面積(cm )との積から測定試料の容積B(cm )を求め、質量Aを容積Bで除することによって、突き固め密度(g/cm )を算出する。
  2. 前記通気助材としてフライアッシュを含、請求項に記載の下水汚泥発酵原料の製造方法。
  3. 前記資材として栄養助材を更に含み、
    前記栄養助材を、前記下水汚泥100質量部に対して10質量部以上200質量部以下含有させる、請求項1又は2に記載の下水汚泥発酵原料の製造方法。
  4. 前記下水汚泥と前記資材とを密閉式縦型発酵槽に投入して、該発酵槽内で混合するか、又は該発酵槽内に堆積させて、前記下水汚泥発酵原料を得る工程を備える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の下水汚泥発酵原料の製造方法。
  5. 前記下水汚泥と前記資材とを予め混合した混合物を密閉式縦型発酵槽に投入して、前記下水汚泥発酵原料を得る工程を備える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の下水汚泥発酵原料の製造方法。
  6. 前記密閉式縦型発酵槽として、その設置面に対して鉛直方向に延び、且つ前記下水汚泥及び前記資材を収容可能な筒状の槽部と、
    前記槽部の上部に、前記下水汚泥及び前記資材を発酵槽に投入可能な投入口と、
    前記槽部の下部に、好気発酵処理された前記下水汚泥発酵原料を前記槽部外へ排出可能な排出口と、
    前記投入口及び前記排出口をそれぞれ覆う蓋状部材とを備え、
    前記各蓋状部材の装着によって、前記槽部を密閉可能に構成されているものを用いる、請求項に記載の下水汚泥発酵原料の製造方法。
  7. 前記密閉式縦型発酵槽として、攪拌設備及び空気流通設備の少なくとも一つを更に備えるものを用いる、請求項4ないし6のいずれか一項に記載の下水汚泥発酵原料の製造方法。
  8. 前記下水汚泥を、前記資材と混合するか又は堆積させるのに先立ち、該下水汚泥の含水率、該下水汚泥の消化の有無、及び該下水汚泥の脱水処理方法の少なくとも一つに基づいて選別する選別工程と、
    選別された前記下水汚泥と、前記資材とを、混合するか又は堆積させて、下水汚泥発酵原料を得る工程とを備える、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の下水汚泥発酵原料の製造方法。
  9. 請求項1ないし8のいずれか一項に記載の方法によって得られた下水汚泥発酵原料を好気発酵に供して、汚泥発酵物を得る工程を備える、汚泥発酵物の製造方法。
  10. 請求項に記載の方法によって得られた汚泥発酵物をセメントクリンカー製造設備に導入して、該汚泥発酵物をセメントクリンカー原料として処理する、汚泥発酵物の処理方法。
  11. 前記汚泥発酵物の使用量を、目的とするセメントクリンカー組成に基づいて設計し、
    設計した使用量に基づいて前記汚泥発酵物をセメントクリンカー製造設備に導入して、該汚泥発酵物をセメントクリンカー原料として処理する、請求項10に記載の汚泥発酵物の処理方法。
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