JP2006246846A - 乳酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高濃度の乳酸を高い対糖収率で生産する方法を提供する。
【解決手段】 発酵槽に仕込む培養液の糖質濃度を120g/L未満50g/L超とし、発酵につれて減少する糖質濃度を糖質の後添加によって60〜10g/Lに維持することにより、極めて高濃度の乳酸を発酵培養液中に蓄積できる。
【選択図】 なし
【解決手段】 発酵槽に仕込む培養液の糖質濃度を120g/L未満50g/L超とし、発酵につれて減少する糖質濃度を糖質の後添加によって60〜10g/Lに維持することにより、極めて高濃度の乳酸を発酵培養液中に蓄積できる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、乳酸を生産する微生物を用いて、発酵槽内に糖質原料を供給しつつ乳酸を製造する方法に関し、より詳細には、発酵槽内の糖質濃度を60〜10g/Lに維持して乳酸を発酵させる、乳酸の製造方法に関する。
乳酸は食品添加物として清酒、清涼飲料、漬物、醤油、製パン、ビールなどの製造に使用され、また、皮革、繊維などの工業用糖質原料として利用される産業上有用な化合物である。また最近生分解性プラスチックの一種であるポリ乳酸の糖質原料として乳酸が注目されており、近い将来、大量の需要が期待される。
このような乳酸、特にL−乳酸は、発酵法によりリゾプス オリゼ(Rhizopus oryzae)やラクトバチルス(Lactobacillus)などの微生物を、好気的あるいは嫌気的に培養する方法で生産されている。例えば、光学純度95%以上のL−乳酸を生産する能力を有するバチルス sp.SHO−1を用いて、グルコース濃度20g/L、ポリペプトンS10g/L、リン酸第二カリウム35g/Lを含む培地を好気的条件または嫌気的条件で培養し、回分培養法で乳酸を発酵させている。嫌気的培養の場合の生成乳酸量は、16.0g/Lであり、好気的培養の場合の生成乳酸量は14.3g/Lとなっている(特許文献1)。また、光学純度70%以上のL−乳酸を生産する能力を有するバチルス・アントラシスなどを用いて、グルコース濃度20g/L、ポリペプトンS 10g/L、リン酸第二カリウム35g/Lを含む培地を好気的条件または嫌気的条件で培養し、回分培養法で乳酸を発酵させる方法もある(特許文献2)。該方法では、嫌気的培養の場合の生成乳酸量は、13.5g/Lであり、好気的培養の場合の生成乳酸量は11.9g/Lである。
一方、乳酸の発酵につれて培養液が酸性となり、発酵速度が減速するのを防止するため、発酵の進行に伴い乳酸をアルカリ水溶液で中和する方法もある(特許文献3)。乳酸生成能を有する糸状菌の胞子を液体培地に植菌し、通気による撹拌を行いつつ培養して生成する菌体集合物のペレットを液体培地中に浮遊させて発酵する方法であって、培地のpHを、10容量%アンモニア水を滴下して植菌後3時間目まではpH5.5に保ち、その後植菌後20時間目までアンモニア水の供給によるコントロールを止めてpHを3.3に低下させ、その後コントロールを開始して常時pH5.5に保っている。この方法によって、最終的に85時間後にグルコースを完全に消費し、培地中に濃度7.6%で乳酸を得ている。
特開平9−121844号
特開平9−121877号
特開平6−253871号
一般に、微生物を使用する発酵方法は、原則として原料を一回仕込んだ後は、仕込原料を消費するまで発酵を継続する回分培養法と、原料を連続的に仕込み、かつ連続的に培養液を抜き出す連続法とに大別される。連続法は長期間の微生物の利用を目的とするが、回分培養法では微生物を一般的には再利用しないため、高濃度の目的物が得られやすい。
上記特許文献の方法はいずれも回分培養法であるが、一般に微生物によって乳酸を生産する場合、その生産物濃度はせいぜい100g/L以下である。また、醗酵液中の乳酸濃度を高める方法として、仕込み培地の糖質濃度を増加させることもできるが、糖質はそれ自体菌体の増殖あるいは乳酸の生産を阻害する。このため、培地中の糖質濃度を高めると、発酵が遅延したり、あるいは収率が低下する場合がある。
また、連続法では、菌の長期使用を可能とするためにより緩和な条件で発酵を進行させる必要があり、発酵槽の糖質濃度も低く、連続的に排出される培養液に含まれる乳酸濃度も低いことが一般的である。なお、流動床型リアクターなどを用いて菌体濃度を高めた方法で培養し、乳酸濃度を高めた状態で培養する方法などは、少量スケールの場合は可能であっても、工業生産を目的とした場合には、経済性や雑菌による汚染などの観点から実用性は低いと考えられている。
一方、例えば乳酸を食品添加剤として用いる場合には、最終的に90質量%程度まで濃縮する必要がある。従来の乳酸の製造方法では、培養液に含まれる乳酸濃度が低いため、濃縮のためのエネルギーを大量に必要とし、濃縮コストが増加し、製品コストの上昇を引き起こす一因となる。このため、発酵で得られる乳酸の濃度は出来るだけ高いことが望ましいが、未だ不十分である。
本発明は上記課題に鑑み、従来の乳酸の生産方法に代わり、グルコース、でんぷんあるいは農産物廃棄物から得られた糖化液を炭素源として微生物を培養し、これらの糖質原料を培養の進行にあわせて逐次添加し、培養液中のグルコース濃度を適切に維持しながら培養し、高濃度の乳酸を高い対糖収率で生産する方法を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、発酵槽に仕込む培養液の糖質濃度を120g/L未満50g/L超とし、発酵につれて減少する糖質濃度を糖質の後添加によって60〜10g/Lに維持すると、極めて高濃度の乳酸を発酵培養液中にの蓄積できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、糖質原料を追加しつつ発酵を継続することで、高い対糖収率を維持しながら高濃度の乳酸を製造することができる。また、連続発酵のように長期間に渡り微生物を利用をしないため、雑菌などによる汚染の心配が少なく、操作性に優れる。
更に高濃度の乳酸を製造できるため、濃縮エネルギーを軽減することができ、安価に乳酸を製造することができる。
なお、この方法で生産された乳酸は、食品添加物として清酒、清涼飲料水、漬物、醤油、製パン、ビールなどの製造に使用でき、また工業糖質原料として皮革、繊維ことに生分解性プラスチックなどに幅広く利用することができる。
本発明の第一は、乳酸を生産する微生物を使用した乳酸発酵において、発酵開始時の仕込み培養液の糖質濃度を120g/L未満50g/L超とし、発酵の進行につれて糖質濃度が低減した後に、糖質を培養液に追加して糖質濃度を60〜10g/Lの範囲で維持することを特徴とする、乳酸の製造方法である。
従来から、回分培養法では糖質濃度を120g/L以下で仕込み、そのまま糖質が消費されるまで発酵を維持する方法は存在したが、糖質を追加して糖質濃度を所定濃度に維持し、具体的には60〜10g/Lの範囲に維持して発酵させる方法は存在しなかった。しかしながら本発明では、後記する参考例に示すように、発酵の進行に伴い低減する糖質濃度を、糖質を添加しつつ60〜10g/Lの範囲に維持することで、最終的に得られる発酵槽内の乳酸濃度を向上させうることを見出した。参考例に示す実験は、発酵槽内の初発グルコース濃度を、60g/L、120g/L、200g/Lならびに300g/Lと変化させ、好気的条件で回分培養を行ない、糖質消費の際の乳酸生産速度を算出したところ、グルコースの初発濃度を60g/Lで培養をスタートさせ、発酵が進行し、発酵槽のグルコース濃度が30g/Lとなったときの乳酸の生産速度が他に比して高いことが判明した。そこで、発酵開始時の糖質濃度を120g/L未満50g/L超とし、発酵の進行に伴って糖濃度は減少するが、糖質原料を追加することで所定濃度、より具体的には60〜10g/Lに維持し、常にL−乳酸の生産速度が高い状態で発酵を行うことにした。
発酵槽内の発酵開始時の糖質濃度は、120g/L未満50g/L超であり、より好ましくは50〜70g/L、特に好ましくは55〜65g/Lである。後記する参考例1およびその結果を示す図2に示すように、培養液の糖質の消費量、乳酸の生成量および菌体量を経時的に観測すると、初発グルコース濃度が60g/Lの場合が、最も菌体量の増加が速やかに行なわれ、この結果、糖質の消費および乳酸の生成が速やかに行なわれることが判明した。120g/Lを超えると、高濃度の糖質によって発酵が阻害される場合がある。一方、50g/Lを下回ると、発酵開始時の乳酸の生産性が低いために、全体の生産性が低下する場合がある。
また、発酵槽内で維持する糖質濃度は、60〜10g/Lであり、より好ましくは40〜20g/L、特に好ましくは35〜25g/Lである。本発明は、発酵開始時の糖質濃度を比較的高くし、かつ発酵の進行に伴って減少する糖質濃度を、糖質を後添加することで60〜10g/Lに維持し、常に高い乳酸生産性を確保するものであるから、発酵過程で維持すべき糖質濃度は発酵開始時の糖質濃度よりも低いものとなる。したがって、発酵開始時の糖質濃度が、例えば50g/Lである場合には、発酵過程で維持すべき糖質濃度は発酵開始時の糖質濃度である50g/Lよりも低い濃度とする。
本発明で使用する微生物の栄養源としては、通常使用される、例えば炭水化物、窒素源、無機物などの同化できる栄養源を使用できる。例えば炭素源としては、コーンスターチ、コーンミール、デンプン、コーンコブ、デキストリン、麦芽、ブドウ糖、グリセリン、シュクロース、糖蜜等が単独で又は混合物として用いられる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、大豆粉、コーンスティープリカー、グルテンミール、肉エキス、脂肉骨粉、酵母エキス、乾燥酵母、綿実粉、ペプトン、小麦胚芽、魚粉、ミートミール、脱脂米糠、脱脂肉骨粉、麦芽エキス、コーングルテンミール等の無機又は有機の窒素源を単独で又は混合物として使用できる。無機塩としては、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、臭化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム又はリン酸第一カリウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム等の各種無機塩が単独でまたは混合物として使用できる。また、必要に応じて、鉄、マンガン、亜鉛、コバルト、モリブデン酸等の重金属を微量添加することもできる。その他、乳酸を生産するものであれば、いずれの栄養源も使用でき公知のカビの培養材料いずれも使用できる。また、加熱滅菌時および培養中における発泡を押さえるため、大豆油、亜麻仁油などの植物油、オクタデカノール等の高級アルコール類、各種シリコン等の消泡剤を添加してもよい。上記のごとき栄養源の配合割合は、特に制限されるものではなく、広範囲に亘って変えることができ、使用する条件によって最適の栄養源の組成および配合割合は、簡単な小規模実験によって容易に決定することができる。
また、栄養培地は、培養に先立ち滅菌後のpHが5〜7前後になるように水酸化ナトリウムの水溶液、アンモニア水またはアンモニアガスを用いてpHを調整することが好ましい。
上記したように、本発明では発酵槽の発酵開始時の仕込み培養液の糖質濃度を120g/L未満50g/L超とする点に特徴があり、発酵の進行に伴って低減する糖質濃度を、適宜糖質を添加して60〜10g/Lに制御する。
添加する糖質としては、発酵槽に仕込んだ糖質と同じであっても異なってもよく、使用する微生物の糖質源となるものを培養液に供給すればよい。添加する糖質が粉体の場合には、そのまま培養液に添加してもよく、糖質が水溶性の場合には溶液にして添加してもよい。また、コーンスターチ、コーンミール、コーンコブ、デンプン、デキストリンなど多糖類を使用する場合には、予めこれらをアミラーゼなどを使用して単糖に変換したものを使用してもよい。培養液に供給する糖質が水溶液で供給される場合には、その濃度に制限はないが、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは60〜80質量%である。40質量%を下回ると相対的に水が多くなるため培養液の乳酸濃度を低下させる一因となる。
本発明において、糖質濃度の調整方法としては、例えば、発酵層に糖類供給パイプを配設し、このようなパイプを介して糖類を培養液に供給してもよい。このような制御は手動でも自動制御であってもよい。例えば、自動制御の一例として、培養液の糖質濃度を検知するための糖濃度検知器と連動させて、糖質濃度の変動に対応して該パイプから所定濃度の糖質を供給する方法がある。なお、回分式の場合に発酵の進行に伴って糖質などを後添加する場合には、発酵槽の最大容量を越えない範囲で培養を行う必要がある。従って、例えば、培養液濃度を30/Lに維持する場合には、発酵槽の最大容量Vmaxと発酵槽内の実際の培養液量Vとを比較し、V>Vmaxでない場合に、培養液の糖質濃度が30g/L未満であれば糖質を添加し、30g/L以上の場合には、そのまま所定時間発酵を継続させ、再度、培養液量、培養液の糖質濃度を評価しつつ培養を継続する。最終的には、培養液量Vが最大容量Vmaxとなったら糖質の添加を停止する。次いで、培養液の糖質濃度が0g/Lになるまで培養を継続させて発酵を終了させる。
本発明では、発酵により生産された乳酸をアルカリで中和してもよい。乳酸発酵の進行に伴い、pHが低下すると乳酸を生産する微生物の活性が低下する場合がある。そこで、アルカリ水溶液を添加し、pHを4〜8、より好ましくは5〜7に制御する。
使用するアルカリとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物や、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアなどを好ましく使用することができ、特にアンモニアが好適である。アンモニアは、アンモニア水で添加しても良く、アンモニアガスで添加してもよい。なお、中和のために添加するアルカリによって培養液の糖質濃度が低下するため、高濃度のアルカリ水溶液を使用することが好適である。例えば、アンモニア水を使用する場合の濃度としては、一般に5〜28質量%のものを好適に使用することができる。
pHの制御のため、培養液に、pHセンサーおよびpHコントローラーを用いて水酸化ナトリウム水溶液またはアンモニア水又はアンモニアガスなどを添加し、自動的に適切なpHの値に維持してもよい。
本発明で使用する微生物としては、乳酸を生産する微生物であれば特に制限はない。したがって、ラクトバチルス属、リゾプス属、ラクトコッカス属、バチルス属などを使用することができる。本発明では、これらの中でもリゾプス属に属するカビが好適である。乳酸生産能に優れるからである。リゾプスに属する乳酸発酵能を有する微生物としては、例えば、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、リゾプス・デレマ(Rhizopus delemar)、リゾプス・ジャバニクス(Rhizopus javanicus)、クロネ(Rhizopus nigricans)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、クモノスカビ(リゾプス)(Rhizopus stolonifer)等が挙げられ、これらの中でもリゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)やリゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)が好ましい。L−乳酸産生能が高いからである。これらのリゾプス属に属する乳酸発酵能を有する菌類は、ペレット状、塊状で培養することもできる。
本発明では、特に、リゾプス属に属しアンモニア耐性であるL−乳酸産生菌が好ましい。このようなアンモニア耐性を有するL−乳酸産生菌としては、リゾプス・エスピーMK96(Rhizopus sp.MK96)や、リゾプス・エスピーMK96−1156(Rhizopus sp.MK96−1156)菌株がある。アンモニアは一般に微生物の増殖に対して阻害的に働き、アンモニアの濃度が一定以上であれば殆ど増殖が阻害されるが、アンモニア耐性を有する乳酸産生菌であれば、アンモニア存在下においても優れた乳酸産生能を発揮する。従って、これにより乳酸の収率よく生産しうると共に、生じた塩類の処理、乳酸の分離精製等を含むその後の処理を容易にすることができる。
本発明では、乳酸発酵は好気的条件でも嫌気的条件でもよい。使用する菌の乳酸生産性に応じて適宜選択すればよい。従って、使用する培養装置も適宜選択することができ、前記したリゾプス・エスピーMK96−1156菌株、その胞子や菌糸を用いる場合には、栄養源含有培地に接種し、通気撹拌型もしくは気泡塔型バイオリアクターで好気的に増殖させることによって乳酸を生産することができる。
栄養培地での本菌株のシード培養は、原則的には、一般のカビによる乳酸の製造において通常使用されている液体培養に準じて行うことができる。液体培養の場合は、静置培養、撹拌培養、振盪培養又は通気培養などのいずれを実施してもよい。本発明では、特に振盪培養、通気撹拌培養が好ましい。
培養において好気的な培養を行う場合には、酸素または純酸素の導入量は、0.05〜3.0vvmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0vvmである。この様な条件を満たすものとして培養装置に特に制限はないが、空気または純酸素あるいは両者の混合気体を通気しながら撹拌型リアクターあるいは気泡塔型リアクターのいずれかで培養することが好ましい。
培養温度は、使用する微生物の増殖が実質的に阻害されず乳酸を生産しうる範囲であれば特に制限されるものではないが、一般に20〜45℃、好ましくは30〜40℃の範囲内の温度が好適である。
また、培養時間はグルコース等の炭水化物源の消費や乳酸の生産の時間的推移、リアクターの種類などにより総合的に判断すればよい。特にリゾプス・エスピーMK96−1156は、L(+)−乳酸生産活性に優れるため、例えば150時間以内、72〜144時間、より好ましくは80〜136時間、更には88〜128時間でも十分なL(+)−乳酸量を得ることができる。
本発明では、発酵を終了させるには糖質濃度を上記した濃度範囲に維持した後、培養液に含まれる糖質を微生物で消費させれば、発酵を終了させることが好ましい。本発明によれば、培養液への糖質を後添加し、60〜10g/Lの濃度に維持することで乳酸の生産速度を高め、かつアルカリ中和によって生産物による阻害を防止することで、最終的に培養液の乳酸濃度を135g/L以上に向上させることができる。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
参考例1
表1に示す前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液を得た。この前培養液200mlを、表1で示す組成の本培養培地2Lを仕込んだ3−Lエアリフト型培養槽に摂種した。通気量1vvm、培養温度30℃で培養を開始し、途中10%アンモニア水でpHを6.0に制御した。
表1に示す前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液を得た。この前培養液200mlを、表1で示す組成の本培養培地2Lを仕込んだ3−Lエアリフト型培養槽に摂種した。通気量1vvm、培養温度30℃で培養を開始し、途中10%アンモニア水でpHを6.0に制御した。
上記と同様にして、発酵槽内の初発グルコース濃度を、120g/L、200g/Lならびに300g/Lとしたもので同様の発酵を行った。結果を図2に示す。(a)〜(d)において、黒三角は菌体量を、黒丸は乳酸濃度を、黒菱はグルコース濃度を示す。また、それぞれのグルコースの初発濃度毎に、培養液中の残存グルコース濃度におけるL−乳酸の生産速度を算出し、図3にその結果を示した。図3(a)〜(d)において、初発グルコース濃度が60g/Lであり、糖質の減少に伴って培養液の濃度が30g/Lとなった場合の乳酸生産速度が、もっとも高いことがわかる。
実施例1
表1に示す組成の前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液を調製した。この前培養液200mlを、表1で示した本培養培地2Lを仕込んだ3−Lエアリフト型培養槽に摂種した。通気量1vvm、培養温度30℃で培養を開始し、途中10%アンモニア水でpHを6.0に制御した。培養液中のグルコース濃度を6時間毎に分析し、その濃度が30g/Lになったら予め調製していた70%グルコース溶液を手動でぺリスタポンプを用いて添加し、グルコース濃度を30g/Lに維持した。グルコース溶液の添加により培養液の容量が増加するため、2.3Lを超えたらグルコースの添加を停止し、グルコースが完全に消失するまで培養を継続した。
表1に示す組成の前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液を調製した。この前培養液200mlを、表1で示した本培養培地2Lを仕込んだ3−Lエアリフト型培養槽に摂種した。通気量1vvm、培養温度30℃で培養を開始し、途中10%アンモニア水でpHを6.0に制御した。培養液中のグルコース濃度を6時間毎に分析し、その濃度が30g/Lになったら予め調製していた70%グルコース溶液を手動でぺリスタポンプを用いて添加し、グルコース濃度を30g/Lに維持した。グルコース溶液の添加により培養液の容量が増加するため、2.3Lを超えたらグルコースの添加を停止し、グルコースが完全に消失するまで培養を継続した。
図4に培養の経過図を示した。図4からも明らかなように培養120時間でグルコースは完全に消費され、144g/LのL−乳酸が生産された。またこの時の対糖収率は83%であった。
実施例2
実施例1と同じ方法で3−Lエアリフト型培養槽での培養を行った。なお、実施例1ではグルコースの分析ならびにグルコース溶液の添加を手動でおこなったが、実施例2においては、オンライングルコースセンサー(BF400、エイブル社)ならびにコンピューターソフト(FermExpert,丸菱バイオエンジニアリング社、)を用いたコンピューターコントロールによるグルコースの添加を行った。図5にコンピューターコントロールによるL−乳酸生産の培養経過図を示す。実施例1とほぼ同様に、対糖収率83%で、141g/LのL−乳酸が得られた。またこの場合、培養時間は実施例1よりも24時間短縮された。
実施例1と同じ方法で3−Lエアリフト型培養槽での培養を行った。なお、実施例1ではグルコースの分析ならびにグルコース溶液の添加を手動でおこなったが、実施例2においては、オンライングルコースセンサー(BF400、エイブル社)ならびにコンピューターソフト(FermExpert,丸菱バイオエンジニアリング社、)を用いたコンピューターコントロールによるグルコースの添加を行った。図5にコンピューターコントロールによるL−乳酸生産の培養経過図を示す。実施例1とほぼ同様に、対糖収率83%で、141g/LのL−乳酸が得られた。またこの場合、培養時間は実施例1よりも24時間短縮された。
実施例1、実施例2、参考例1の結果を表2に示す。表2に示すように、参考例1の回分培養の場合、実施例1、2と同等以上の対糖収率で、最も高い乳酸濃度となるのは、グルコースの初発濃度が202g/Lであり、最終培養液の乳酸濃度は136g/L、対糖収率は72%である。これに対し、実施例1、実施例2のように、初発グルコース濃度を60g/Lとし、培養開始後培養液中のグルコース濃度を30g/Lになるようにグルコースを添加した場合、手動制御であるかコンピューター制御であるかを問わず、対糖収率は83%、最終培養液の乳酸濃度は140g/L以上であった。グルコースを逐次添加する方法が極めて優れていることが明らかである。
実施例3
表1に示す組成の前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液を得た。表1に示す組成の本培養培地2Lを仕込んだ通気撹拌式5−L ジャーファーメンター(MLD500型、丸菱)に、この前培養液200mlを摂種した。攪拌数300rpm、通気量0.5vvm、培養温度30℃で培養を開始し、途中10%アンモニア水でpHを6.0に制御した。培養液中のグルコース濃度を6時間毎に分析し、発酵槽内のグルコース濃度が30g/Lになったら予め調製した70質量%グルコース溶液を手動でぺリスタポンプを用いて添加し、グルコース濃度を30g/Lに維持した。グルコース溶液の添加により培養液の容量が増加するため、2.3Lを超えた際にグルコース溶液の添加を停止し、グルコースが完全に消失するまで培養を継続した。培養120時間でグルコースは完全に消費され、140g/LのL−乳酸が生産された。この時の対糖収率は83%であった。
表1に示す組成の前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液を得た。表1に示す組成の本培養培地2Lを仕込んだ通気撹拌式5−L ジャーファーメンター(MLD500型、丸菱)に、この前培養液200mlを摂種した。攪拌数300rpm、通気量0.5vvm、培養温度30℃で培養を開始し、途中10%アンモニア水でpHを6.0に制御した。培養液中のグルコース濃度を6時間毎に分析し、発酵槽内のグルコース濃度が30g/Lになったら予め調製した70質量%グルコース溶液を手動でぺリスタポンプを用いて添加し、グルコース濃度を30g/Lに維持した。グルコース溶液の添加により培養液の容量が増加するため、2.3Lを超えた際にグルコース溶液の添加を停止し、グルコースが完全に消失するまで培養を継続した。培養120時間でグルコースは完全に消費され、140g/LのL−乳酸が生産された。この時の対糖収率は83%であった。
実施例4
表1に示す組成の前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液200mlを調製した。次いで130gのコーンスターチにα−アミラーゼ(スピターゼHK)を0.13g添加し、100℃で30分間加熱処理して得たコーンスターチ加水分解物に、表1で示す本培養培地の組成の内、グルコース以外の成分を含む溶液を加えて全量を2.0Lとして本培養培地を調製した。これを図1で示す3−Lエアリフト型培養槽に仕込み、滅菌を行った。滅菌後、これに前培養液200mlを摂種した。
表1に示す組成の前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液200mlを調製した。次いで130gのコーンスターチにα−アミラーゼ(スピターゼHK)を0.13g添加し、100℃で30分間加熱処理して得たコーンスターチ加水分解物に、表1で示す本培養培地の組成の内、グルコース以外の成分を含む溶液を加えて全量を2.0Lとして本培養培地を調製した。これを図1で示す3−Lエアリフト型培養槽に仕込み、滅菌を行った。滅菌後、これに前培養液200mlを摂種した。
仕込み培養液の初発のグルコース換算濃度は61g/Lであった。通気量1vvm、培養温度30℃で培養を開始し、途中10%アンモニア水でpHを6.0に制御した。培養開始後グルコース換算濃度が30g/L以下となったら、別に調製したグルコース換算濃度70%のコーンスターチ加水分解物を、グルコース換算濃度が30g/L付近に維持されるように制御した。
培養開始後96時間目に培養液の容量が2.3Lに達したのでコーンスターチ加水分解物の添加を停止し、グルコース換算濃度が0になった120時間まで培養を継続した。
最終的に対糖収率82%で140g/LのL−乳酸が蓄積され、コーンスターチのα−アミラーゼによる加水分解物が本発明にかかわる培地糖質原料として利用可能なことが実証された。
実施例5
表1に示す組成の前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液200mlを調製した。次いで、中国東北部で得られた乾燥コーンコブをボールミルで粉砕したものを200g/Lになるように水道水に懸濁し、硫酸でpHを4.5とし約1時間室温で放置してコーンコブ処理液を得た。コーンコブ処理液に、表1で示す、グルコース以外の成分を含む水溶液を加えて2.0Lとした本培養培地を調製した。この本培養培地を、図1で示した3−Lエアリフト型培養槽に仕込み滅菌を行った。滅菌後、これに市販のセルラーゼ10ug/gを添加し、更に前培養液を摂種した。
表1に示す組成の前培養培地100mlを仕込んだ500ml三角フラスコに、Rhizopus sp.MK96−1196の胞子濃度が107spores/mlになるように摂種し、30℃で18時間振盪培養して前培養液200mlを調製した。次いで、中国東北部で得られた乾燥コーンコブをボールミルで粉砕したものを200g/Lになるように水道水に懸濁し、硫酸でpHを4.5とし約1時間室温で放置してコーンコブ処理液を得た。コーンコブ処理液に、表1で示す、グルコース以外の成分を含む水溶液を加えて2.0Lとした本培養培地を調製した。この本培養培地を、図1で示した3−Lエアリフト型培養槽に仕込み滅菌を行った。滅菌後、これに市販のセルラーゼ10ug/gを添加し、更に前培養液を摂種した。
仕込み培養液の初発の糖質濃度は62g/Lであった。通気量1vvm、培養温度30℃で培養を開始し、途中10%アンモニア水でpHを6.0に制御した。培養開始後グルコース濃度が30g/L以下となったら、別に調製した70%グルコース溶液を、グルコース濃度が30g/Lに維持されるように逐次添加した。培養開始後104時間目に培養液の容量が2.3Lに達したのでグルコース溶液の添加を停止し、グルコース濃度が0になった120時間まで培養を継続した。
最終的に対糖収率79%で136g/LのL−乳酸が蓄積され、トウモロコシ廃棄物であるコーンコブのセルラーゼによる加水分解物が本発明にかかわる添加培養のスタート培地での糖質原料として利用可能なことが実証された。
本発明は、高濃度の乳酸を製造でき、産業上有用である。
1.グルコース貯槽、
2.アンモニア水貯槽、
3.ポンプ、
4.制御装置、
5.水ジャケット、
6.PHセンサー、
7.DOセンサー、
8.フイルター、
9.グルコースアナライザー、
10.コンピューター、
11.サンプリング管、
12.スパージャー、
13.エアーフイルター、
14.流量計、
15.空気圧縮機。
2.アンモニア水貯槽、
3.ポンプ、
4.制御装置、
5.水ジャケット、
6.PHセンサー、
7.DOセンサー、
8.フイルター、
9.グルコースアナライザー、
10.コンピューター、
11.サンプリング管、
12.スパージャー、
13.エアーフイルター、
14.流量計、
15.空気圧縮機。
Claims (6)
- 乳酸を生産する微生物を使用した乳酸発酵において、発酵開始時の仕込み培養液の糖質濃度を120g/L未満50g/L超とし、発酵の進行につれて糖質濃度が低減した後に、糖質を培養液に追加して糖質濃度を60〜10g/Lの範囲で維持することを特徴とする、乳酸の製造方法。
- 前記仕込み培養液の糖質濃度は50〜70g/Lであり、維持する糖質濃度は20〜40g/Lである、請求項1記載の乳酸の製造方法。
- 更に、発酵により生産された乳酸をアルカリで中和することを特徴とする、請求項1または2記載の乳酸の製造方法。
- 前記アルカリが、アンモニアである、請求項3記載の乳酸の製造方法。
- 前記微生物が、リゾプス属に属するカビである、請求項1〜4のいずれかに記載の乳酸の製造方法。
- 前記リゾプス属に属するカビが、アンモニア耐性を有するL(+)−乳酸産生菌である、請求項5記載の乳酸の製造方法。
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- 2005-03-14 JP JP2005071403A patent/JP2006246846A/ja active Pending
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