[第1実施形態]
第1実施形態の緩衝器について、図1~図3を参照しつつ以下に説明する。
図1は、第1実施形態の緩衝器11を示すものである。この緩衝器11は、自動車や鉄道車両等の車両のサスペンション装置に用いられる緩衝器であり、具体的には自動車のサスペンション装置に用いられる油圧緩衝器である。緩衝器11は、円筒状の内筒15と、内筒15よりも大径で内筒15の外周側に同軸状に設けられる有底筒状の外筒16とを有するシリンダ17を備えた複筒式の緩衝器である。外筒16と内筒15との間は、リザーバ室18となっている。言い換えれば、シリンダ17は、外筒16と、外筒16の内周側に設けられて外筒16との間にリザーバ室18を形成する内筒15とを有している。
外筒16は、金属製の一部材からなる一体成形品であり、円筒状の胴部21と、胴部21の軸方向の一端部側を閉塞する底部22と、胴部21の底部22とは反対側で径方向の内側に折り曲げられる折曲部23と、折曲部23の径方向内側の開口部24とを有している。言い換えれば、外筒16は、内筒15を覆い、一端が閉塞され、他端が開口している。内筒15は、金属製の一部材からなる一体成形品であり、円筒状をなしている。緩衝器11は、外筒16の開口部24側を覆うカバー26を有している。
緩衝器11は、内筒15の軸方向の一端部に設けられる円環状のバルブボディ27と、内筒15および外筒16の軸方向の他端部に設けられる筒状のロッドガイド28と、を有している。バルブボディ27の外周側には、軸方向一側に小径部31が形成されており、軸方向他側に、小径部31も大径の大径部32が形成されている。
ロッドガイド28の外周側には、軸方向一側に小径外周部33が、軸方向他側に小径外周部33よりも大径の大径外周部34が、軸方向のこれらの間に、これらの中間の径の中径外周部35が、それぞれ形成されている。
内筒15は、軸方向の一端部が、バルブボディ27の小径部31に、大径部32に軸方向に当接するまで嵌合されており、このバルブボディ27を介して外筒16の底部22に載置されている。また、内筒15は、軸方向の他端部が、ロッドガイド28の小径外周部33に、中径外周部35に軸方向に当接するまで嵌合されており、ロッドガイド28を介して外筒16の胴部21に係合している。この状態で、内筒15は、外筒16に対して径方向に位置決めされている。ここで、バルブボディ27と底部22との間は、バルブボディ27の大径部32の位置に形成された通路溝37を介して内筒15と外筒16との間に連通しており、内筒15と外筒16との間と同様、リザーバ室18を構成している。
バルブボディ27は、大径部32の軸方向の小径部31側の部分および小径部31が形成された有孔円板状の主体部38と、大径部32の軸方向の小径部31とは反対側の部分が形成された円環状の脚部39とを有している。この脚部39の主体部38とは反対側の部分に、この脚部39を径方向に貫通するように上記した通路溝37が形成されている。バルブボディ27は、脚部39において外筒16の底部22に当接して径方向に位置決めされている。
緩衝器11は、ロッドガイド28の底部22とは反対側に、円環状のロッドシール41を有している。このロッドシール41も、ロッドガイド28と同様に胴部21の内周部に嵌合されている。胴部21の底部22とは反対の端部には、胴部21をカール加工等の加締め加工によって径方向内方に塑性変形させて上記した折曲部23が形成されている。ロッドシール41は、この折曲部23とロッドガイド28とに挟持されている。ロッドシール41は、外筒16の開口部24を閉塞するものであり、具体的にはオイルシールである。
緩衝器11は、シリンダ17内に設けられるピストン45を有している。ピストン45は、内筒15に摺動可能に嵌装されている。ピストン45は、内筒15内を第1室48と第2室49との2室に区画している。第1室48は、内筒15内のピストン45とロッドガイド28との間に設けられ、第2室49は、内筒15内のピストン45とバルブボディ27との間に設けられている。第2室49は、バルブボディ27によって、リザーバ室18と画成されている。第1室48および第2室49には作動流体としての油液Lが充填されており、リザーバ室18には作動流体としてのガスGと油液Lとが充填されている。これらのガスGおよび油液Lは、シリンダ17内に封入されている。
緩衝器11は、一端側が内筒15内に挿入されてピストン45に連結され、他端側が内筒15および外筒16から開口部24を介して外部に突出するピストンロッド51を有している。ピストンロッド51には、ピストン45がナット53によって連結されている。ピストンロッド51は、ロッドガイド28およびロッドシール41を通って内筒15および外筒16から外部へと延出している。言い換えれば、ロッドガイド28は内筒15および外筒16のピストンロッド51が突出する側の端部に設けられている。ピストンロッド51は、ロッドガイド28に案内されて、内筒15および外筒16に対して、ピストン45と一体に軸方向に移動する。
ロッドガイド28は、ピストンロッド51を、その径方向の移動を規制しつつその軸方向に摺動可能となるように支持する。言い換えれば、筒状のロッドガイド28は、ピストンロッド51を摺動可能に案内する。
ロッドシール41は、外筒16とピストンロッド51との間、具体的には、外筒16の胴部21の開口部24側とピストンロッド51との間をシールして、内筒15内の油液Lと、リザーバ室18内のガスGおよび油液Lとが外部に漏出するのを規制する。ロッドシール41は、ロッドガイド28のピストン45とは反対側に対面して外筒16内に設けられている。
ピストン45には、軸方向に貫通する通路55および通路56が形成されている。通路55,56は、第1室48と第2室49とを連通可能となっている。緩衝器11は、ピストン45に当接することで通路55を閉塞可能な円環状のディスクバルブ57を、ピストン45の軸方向の底部22とは反対側に有している。また、緩衝器11は、ピストン45に当接することで通路56を閉塞可能な円環状のディスクバルブ58を、ピストン45の軸方向の底部22側に有している。ディスクバルブ57,58は、ピストン45とともにピストンロッド51にナット53で連結されている。通路55は、第2室49に開口しており、通路56は、第1室48に開口している。
ディスクバルブ57は、ピストンロッド51が内筒15および外筒16内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動して第2室49の圧力が第1室48の圧力よりも所定値以上高くなると通路55を開いて第2室49の油液Lを第1室48に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。ディスクバルブ58は、ピストンロッド51が内筒15および外筒16からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン45が第1室48を狭める方向に移動して第1室48の圧力が第2室49の圧力よりも所定値以上高くなると通路56を開いて第1室48の油液Lを第2室49に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。
ピストン45およびディスクバルブ57のうちの少なくとも一方には、ディスクバルブ57が通路55を最も閉塞した状態でも通路55を介して第1室48と第2室49とを連通させる図示略の固定オリフィスが形成されている。また、ピストン45およびディスクバルブ58のうちの少なくとも一方にも、ディスクバルブ58が通路56を最も閉塞した状態でも通路56を介して第1室48と第2室49とを連通させる図示略の固定オリフィスが形成されている。
バルブボディ27には、軸方向に貫通する液通路61および液通路62が形成されている。液通路61,62は、第2室49とリザーバ室18とを連通可能となっている。バルブボディ27の軸方向の底部22側に、バルブボディ27に当接することで液通路61を閉塞可能な円環状のディスクバルブ65が設けられている。また、バルブボディ27の軸方向の底部22とは反対側に、バルブボディ27に当接することで液通路62を閉塞可能な円環状のディスクバルブ66が設けられている。ディスクバルブ65,66は、固定ピン68によってバルブボディ27に連結されている。
ディスクバルブ65は、ピストンロッド51が縮み側に移動しピストン45が第2室49を狭める方向に移動して第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力よりも所定値以上高くなると、液通路61を開くことになり、その際に減衰力を発生させる。ディスクバルブ66は、ピストンロッド51が伸び側に移動しピストン45が第1室48側に移動して第2室49の圧力がリザーバ室18の圧力より低下すると、液通路62を開くことになる。ディスクバルブ66は、その際にリザーバ室18から第2室49内に実質的に減衰力を発生させずに油液Lを流すサクションバルブである。
ピストンロッド51には、ピストン45とロッドガイド28との間に係止部材71が固定されており、係止部材71とロッドガイド28との間に緩衝部材72が設けられている。緩衝部材72は、係止部材71に当接しており、ピストンロッド51が伸び側の所定位置まで移動すると、ロッドガイド28に当接して衝撃を緩和する。
図2に示すように、ロッドガイド28は、略段付き円環状をなすロッドガイドボディ81と、ロッドガイドボディ81の内周部に嵌合固定される円筒状のカラー82とからなるロッドガイド本体83と、ロッドガイド本体83とは別体の隔壁部材85(隔壁部)とを有している。ロッドガイドボディ81はロッドガイド28を主体的に構成するものであり、カラー82はピストンロッド51を摺動可能に支持する。ロッドガイド28は、ロッドガイドボディ81とカラー82とからなるロッドガイド本体83が、筒状をなしてピストンロッド51を摺動可能に案内する。
ロッドガイドボディ81は金属製であり、焼結により一体成形されている。ロッドガイドボディ81の外周側に、上記した小径外周部33、大径外周部34および中径外周部35が形成されている。小径外周部33、大径外周部34および中径外周部35は、いずれも外周面が円筒面状をなしており、互いに軸方向の位置をずらして同軸状に形成されている。
ロッドガイドボディ81は、大径外周部34が、外筒16の胴部21の内周部に嵌合している。また、ロッドガイドボディ81は、小径外周部33が、内筒15の内周部に嵌合している。そして、ロッドガイドボディ81は、中径外周部35の小径外周部33側の端部が内筒15の端部に当接している。この状態で、ロッドガイドボディ81は、その全体が、外筒16の折曲部23および開口部24よりも軸方向の内側(ピストン45側)に位置している。
ロッドガイドボディ81の内周側には、軸方向の開口部24側に大径内周部96が、大径内周部96に対し軸方向の開口部24とは反対側に大径内周部96よりも小径の中間内周部97が、中間内周部97に対し軸方向の開口部24とは反対側に中間内周部97よりも小径の小径内周部98が、それぞれ形成されている。
ロッドガイドボディ81には、その軸方向の開口部24側の端部に、開口部24側に向けて軸方向に突出する円環状の外側凸部101および円環状の内側凸部102が形成されている。外側凸部101は、ロッドガイドボディ81の外周側に、内側凸部102は、ロッドガイドボディ81の内周側に、それぞれ形成されている。外側凸部101は、内側凸部102に対し径方向に離れて同軸状に形成されている。
外側凸部101と内側凸部102との間には、軸方向の開口部24とは反対側に凹む凹部105がロッドガイドボディ81の周方向に断続的に複数形成されている。凹部105は、外側凸部101と、内側凸部102と、これらの間の凹底部106とで形成されている。ロッドガイドボディ81を含むロッドガイド本体83は、環状の内側凸部102と、内側凸部102の径方向外側に設けられる環状の外側凸部101と、内側凸部102と外側凸部101との間の凹部105と、を有する。ロッドガイドボディ81の周方向に隣り合う凹部105と凹部105との間の部分は、内側凸部102と同じ高さで内側凸部102と外側凸部101とを繋ぐ連結壁部107となっている。外側凸部101と内側凸部102と凹部105と連結壁部107とは、ロッドガイドボディ81の焼結時に形成される。
図3に示すように、凹底部106は、開口部24側に向く凹み方向奥側の底面106aがロッドガイドボディ81の中心軸線に直交して広がる平面状をなしている。
外側凸部101は、その軸方向の最も底面106aとは反対側にあって底面106aとは反対側に向く先端面101aがロッドガイドボディ81の中心軸線に直交して広がる平面状をなしている。外側凸部101は、その径方向内側の内周面101bが、ロッドガイドボディ81の中心軸線を中心とするテーパ面となっている。内周面101bは軸方向の底面106a側ほど小径となるテーパ面となっている。
内側凸部102は、その軸方向の最も底面106aとは反対側にあって底面106aとは反対側に向く先端面102aがロッドガイドボディ81の中心軸線に直交して広がる平面状をなしている。内側凸部102は、その径方向外側の外周面102bが、ロッドガイドボディ81の中心軸線を中心とするテーパ面となっている。外周面102bは軸方向の底面106a側ほど大径となるテーパ面となっている。
外側凸部101は、底面106aから先端面101aまでの長さである突出高さが、内側凸部102の底面106aから先端面102aまでの長さである突出高さよりも高くなっている。
内側凸部102には、その軸方向の底面106aとは反対側の先端部に、先端面102aよりも軸方向の底面106a側に凹む先端溝部111が形成されている。先端溝部111は内側凸部102を先端面102aを含んで径方向に横断している。また、内側凸部102には、その外周部に、外周面102bよりも径方向内方に凹む外周溝部112が形成されている。外周溝部112は、一端が先端溝部111に繋がっており、他端が底面106aまで延びている。先端溝部111および外周溝部112が、内側凸部102の先端部から外周部にかけて形成された、L字状の通路溝113を構成している。通路溝113を構成する先端溝部111および外周溝部112も、ロッドガイドボディ81の焼結時に形成される。
ロッドガイドボディ81には、外側凸部101の位置に、軸方向に沿って貫通する連通穴121が形成されている。図2に示すように、連通穴121は、一端が外筒16と内筒15との間のリザーバ室18に開口している。また、連通穴121は、図3に示すように、他端が外側凸部101の内周面101bにおける、内側凸部102の先端面102aよりも先端面101a側の部分と、先端面101aとに開口している。
図2に示すように、カラー82は、ロッドガイドボディ81の小径内周部98内に嵌合されて固定されており、このカラー82内に、ピストンロッド51が摺接するように挿入されている。ロッドガイドボディ81の中間内周部97内には、摩擦部材125が嵌合固定されている。摩擦部材125は、環状をなしており、その内周部でピストンロッド51の外周部に摺接して、ピストンロッド51に摩擦抵抗を発生させる。なお、摩擦部材125とロッドガイドボディ81との間には、摩擦部材125を軸方向に貫通する図示略の通路が形成されており、摩擦部材125の軸方向両側に差圧が生じないようになっている。
図3に示すように、隔壁部材85は、有孔円形平板状の環状部131と、環状部131の外周縁部から環状部131の軸方向一側に延びる側壁部132とからなっている。側壁部132は、環状部131の周方向に断続的に複数形成されており、凹部105と同数形成されている。環状部131は、軸方向における側壁部132とは反対側の端面131aおよび側壁部132側の端面131bが、共に隔壁部材85の中心軸線に直交して広がる平面状をなしている。
すべての側壁部132は、軸方向における環状部131とは反対側の先端面132aが隔壁部材85の中心軸線に直交して広がる平面状をなしている。すべての側壁部132は、環状部131の径方向における内側の湾曲面132bが隔壁部材85の中心軸線を中心とする同一のテーパ面に含まれる。このテーパ面は、環状部131から軸方向に離れるほど大径となるテーパ面であり、内側凸部102の外周面102bと同等のテーパである。
隔壁部材85は、側壁部132が一対一でロッドガイドボディ81の凹部105内に挿入される。隔壁部材85は、全部の側壁部132によって内側凸部102に嵌合しており、全部の側壁部132が湾曲面132bを内側凸部102の外周面102bに面接触させている。また、隔壁部材85は、環状部131が端面131bにおいて内側凸部102の先端面102aに当接している。言い換えれば、隔壁部材85は、環状部131が内側凸部102に当接し、側壁部132が凹部105内に延びて構成されている。
この状態で、隔壁部材85は、側壁部132の環状部131とは反対側の先端面132aが凹底部106の底面106aから軸方向に若干離間している。この状態で、隔壁部材85の環状部131の端面131aは、ロッドガイド28の軸方向における位置を外側凸部101の先端面101aと合わせて同一平面に配置されている。この状態で、隔壁部材85と内側凸部102とが、環状部131の端面131bと側壁部132の湾曲面132bと内側凸部102の通路溝113とで絞り通路135を形成している。絞り通路135は、折れ曲がった形状をなしており、いわゆるラビリンスシール構造をなしている。
ロッドシール41は、円環状をなすその外周部が外筒16の胴部21の内周部とロッドガイド28とに接触して外筒16の胴部21とロッドガイド28との隙間をシールする。また、ロッドシール41は、筒状をなすその内周部がピストンロッド51の外周部に接触して、ピストンロッド51の外周部をシールする。これにより、ロッドシール41は、外筒16とピストンロッド51との間を閉塞する。
ロッドシール41は、弾性部材141に円環部材142が埋設された一体成形品である。弾性部材141は、ニトリルゴムやフッ素ゴムなどの摺動性が良くシール性の高いゴム材からなっている。円環部材142は、金属製の有孔円形平板状をなしている。円環部材142は、ロッドシール41の形状を維持するためのものであり、対象部位に固定するための強度をロッドシール41に生じさせるものである。
ロッドシール41は、シリンダ17の外筒16に係止され内方にピストンロッド51を挿通させる円環状の環状ベース部150と、環状ベース部150の内周側に設けられてピストンロッド51の外周面に摺接するシール部151とを有している。シール部151は、環状ベース部150の内周側から軸方向のロッドガイド28側に延出してピストンロッド51に密封接触するオイルリップ152と、環状ベース部150の内周側から軸方向のロッドガイド28とは反対側に延出してピストンロッド51に密封接触するダストリップ153とを備えている。オイルリップ152およびダストリップ153は、弾性部材141の一部からなっている。
環状ベース部150は、円環部材142の全部と、弾性部材141の一部とからなっている。環状ベース部150の弾性部材141からなる部分は、円環部材142の円筒面状をなす径方向内側の内周面を被覆する円筒状の内周被覆部161と、円環部材142の円筒面状をなす径方向外側の外周面を被覆する円筒状の外周被覆部162と、円環部材142の軸方向のロッドガイド28とは反対側の平坦な端面を被覆する円環板状の外側被覆部163と、円環部材142の軸方向のロッドガイド28側の平坦な端面を被覆する円環板状の内側被覆部164と、内側被覆部164の外周縁部から軸方向のロッドガイド28側に向け突出する円環状のシールリップ165と、を有している。
いずれも弾性部材141からなる、内周被覆部161、外周被覆部162、外側被覆部163、内側被覆部164、シールリップ165、オイルリップ152およびダストリップ153は、一体に形成されている。
オイルリップ152は、円環部材142の内周側から軸方向のロッドガイド28側に向け筒状をなして延出している。オイルリップ152の外周部には環状のスプリング172が装着されている。ダストリップ153は、円環部材142の内周側から軸方向のロッドガイド28とは反対側に向け筒状をなして延出している。ダストリップ153の外周部には環状のスプリング176が装着されている。内周被覆部161は、円環部材142の内周部を覆いつつオイルリップ152とダストリップ153とを連結している。
ロッドシール41は、折曲部23が形成される前の外筒16の胴部21に嵌合される。すると、ロッドシール41は、内筒15および外筒16の胴部21に嵌合された状態にあるロッドガイド28のロッドガイド本体83の外側凸部101および隔壁部材85の環状部131に載置される。その際に、ロッドシール41は、環状ベース部150が、シールリップ165をロッドガイド28の外側凸部101と外筒16の胴部21との間に配置し、内側被覆部164を外側凸部101の先端面101aと隔壁部材85の端面131aとに当接させる。これにより、ロッドシール41は、環状ベース部150が、ロッドガイド28と軸方向に対面する。このとき、隔壁部材85は、環状部131が、ロッドガイド本体83の内側凸部102とロッドシール41の環状ベース部150とに同時に当接する。
この状態で、環状ベース部150を軸方向のロッドガイド28とは反対側から押圧してロッドガイド本体83の外側凸部101および隔壁部材85の環状部131に押し付けた状態で、外筒16に塑性変形により折曲部23が形成される。これにより、ロッドシール41は、環状ベース部150が、ロッドガイド本体83の外側凸部101および隔壁部材85の環状部131と、外筒16の折曲部23とで締め代をもって挟持される。このとき、シールリップ165は、ロッドガイド28の外側凸部101の外周部と、外筒16の胴部21の内周部とに接触して、ロッドガイド28と外筒16との隙間をシールする。また、このとき、環状ベース部150の内側被覆部164が、隔壁部材85との隙間をシールする。
ロッドシール41には、オイルリップ152、内周被覆部161およびダストリップ153の内側にピストンロッド51が挿通されている。そして、ピストンロッド51はロッドシール41からシリンダ17の外部に突出している。よって、折曲部23は、外筒16のピストンロッド51が突出する端部側に設けられてロッドシール41に向け径方向の内側に折り曲げられている。
図2に示すように、ロッドガイド本体83の外側凸部101の位置に形成された連通穴121内と、ロッドガイド本体83の凹部105の内周側と隔壁部材85の外周側とロッドシール41の環状ベース部150とで囲まれた部分とが、リザーバ室18に常時連通する連通路181となっている。よって、連通路181は、その一部が、ロッドガイド28の隔壁部材85とは別体のロッドガイド本体83に形成されており、より詳しくはロッドガイドボディ81の外側凸部101に形成されている。
ロッドガイド本体83の内周側と隔壁部材85の内周側とロッドシール41のオイルリップ152側とピストンロッド51とで囲まれた部分が内室182となっている。ここで、摩擦部材125とロッドガイドボディ81との間に摩擦部材125を軸方向に貫通して形成された図示略の通路は、内室182を構成している。この内室182は、ロッドガイド28のカラー82とピストンロッド51との間の摺動のための微小隙間を介して第1室48に連通している。
ロッドガイド本体83と、隔壁部材85とにより形成された絞り通路135は、連通路181と内室182とを常時連通させている。連通路181は、その一部がロッドガイド28に形成されており、ロッドガイド28とロッドシール41とピストンロッド51との間の内室182を絞り通路135を介してリザーバ室18に常時連通させている。
絞り通路135は、その両側にある連通路181および内室182よりも流路断面積が小さく絞られている。ロッドガイド28の隔壁部材85は、ロッドシール41の環状ベース部150に当接して内室182と連通路181との間を区画し、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを、絞り通路135による絞られた流れのみに制限する。隔壁部材85は、ロッドガイド本体83とロッドシール41の環状ベース部150との間に、これらに当接して設けられて、内室182と連通路181との間を区画し、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを、絞り通路135による絞られた流れのみに制限する。ロッドガイド28には、凹部105が周方向に間隔をあけて複数設けられたロッドガイド本体83と、ロッドシール41との間に、凹部105に嵌め込まれる側壁部132を有する環状の隔壁部材85が設けられている。ロッドガイド28には、ロッドガイド本体83と、側壁部132を有する隔壁部材85とが嵌合することで絞り通路135が形成されている。
上記した特許文献1の緩衝器は、ロッドシールにチェックリップを設けて、ロッドガイドとロッドシールとの間の内室からリザーバ室への作動流体の流通を許容するとともに、これとは逆向きの作動流体の流通を規制するようになっている。また、特許文献1の緩衝器は、外筒の開口側の端部を径方向内方に加締めて加締め部を形成する際に、ロッドシールの加締め部とは干渉しない径方向内側の部分にロッドシールとは反対側から押圧治具で軸荷重をかけるようになっているが、このときに、ロッドシールの内周側の撓みを抑えるために、ロッドシールのロッドガイドとは反対側に円環状の補強部材が設けられている。
ところで、緩衝器において作動流体としての油液を充填する際に、空気が混入してしまうことがある。第1実施形態の緩衝器11においては、緩衝器11をロッドガイド28を鉛直方向上側にし底部22を鉛直方向下側にすることで、このように混入した空気が、内筒15内のロッドガイド28の下面側に溜まることになる。このような空気は、ピストンロッド51を伸び方向に移動させてピストン45を内筒15内で摺動させることより第1室48側の圧力を高めることで、ロッドガイド28のカラー82とピストンロッド51との微小隙間を介して内室182に排出されることになる。このとき、特許文献1の緩衝器のようにチェックリップを設ける構造であると、チェックリップが開かず、内室182からリザーバ室18に圧力を逃がすことができない可能性がある。すると、内室182の圧力が高く、エア抜き性が低下してしまう可能性がある。特に、減衰力が低く設定されていて内室182とリザーバ室18との間に圧力差が生じにくい緩衝器11では、エア抜き性の低下が顕著となる。
これに対して、第1実施形態の緩衝器11は、チェック弁機構が設けられておらず、ロッドガイド28に、ロッドシール41の環状ベース部150に当接して内室182と連通路181との間を区画し、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを絞り通路135によって制限する隔壁部材85が設けられているため、内室182と、連通路181およびリザーバ室18とを、絞り通路135で常時連通させることができる。したがって、内室182内の圧力を、内室182から絞り通路135および連通路181を介してリザーバ室18に円滑に逃がすことができる。このため、ピストンロッド51を伸び方向に移動させてピストン45を内筒15内で摺動させることより第1室48側の圧力を高めることで、内筒15内のロッドガイド28の下面側に溜まった空気を、ロッドガイド28のカラー82とピストンロッド51との微小隙間を介して良好に内室182に排出することができる。よって、エア抜き性の低下を抑制することが可能となる。なお、内室182の圧力が連通路181およびリザーバ室18よりも下がった場合には、隔壁部材85の側壁部132が隔壁となって作動流体の逆流を抑制する。
また、ロッドガイド28に、ロッドシール41の環状ベース部150に当接して内室182と連通路181との間を区画し、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを絞り通路135によって制限する隔壁部材85が設けられているため、ロッドシール41の環状ベース部150の内周側を隔壁部材85およびロッドガイド28の内側凸部102で軸方向に支持することができる。よって、外筒16の開口部24側の端部を径方向内方に折り曲げて折曲部23を形成する際に、押圧治具で環状ベース部150の内周側にかけられた軸荷重を隔壁部材85および内側凸部102で受けることができる。その結果、特許文献1の緩衝器のような補強専用の部材を設けなくても、ロッドシール41の撓みを抑制することができる。このように、一つの隔壁部材85で補強と絞り通路135の形成とを行うことができる。よって、補強と絞り通路135の形成とを別部品で行う場合と比べて、部品点数を低減することができる。
また、ロッドガイド28は、ピストンロッド51を摺動可能に案内すると共に連通路181が形成された筒状のロッドガイド本体83が隔壁部材85とは別体で設けられており、隔壁部材85が、ロッドガイド本体83とロッドシール41の環状ベース部150との間に、これらに当接して設けられて、内室182と連通路181との間を区画し、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを絞り通路135で制限する。よって、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを制限する絞り通路135の形成が容易となる。
また、ロッドガイド本体83は、環状の内側凸部102と、内側凸部102の径方向外側に設けられて連通路181が形成される環状の外側凸部101と、内側凸部102と外側凸部101との間の凹部105と、を有している。そして、隔壁部材85は、環状部131と環状部131から延びる側壁部132とからなり、環状部131が内側凸部102およびロッドシール41の環状ベース部150に当接し、側壁部132が凹部105内に延びて構成されている。側壁部132を凹部105内に入り込ませることによって、隔壁部材85をロッドガイド本体83に対し径方向および周方向に位置決めすることができる。
また、ロッドガイド本体83と、これとは別体の隔壁部材85とにより、内室182と連通路181とを連通させる絞り通路135が形成されるため、絞り通路135を容易に形成することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の緩衝器を主に図4および図5に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図4に示すように、第2実施形態の緩衝器11Aには、ロッドガイド28とは一部異なるロッドガイド28Aが設けられている。ロッドガイド28Aは、ロッドガイドボディ81とは一部異なるロッドガイドボディ81Aと、第1実施形態と同様のカラー82とを有しており、第1実施形態の隔壁部材85は設けられていない。
ロッドガイドボディ81Aは、内側凸部102とは一部異なる内側凸部102A(隔壁部)を有している。図5に示すように、内側凸部102Aは、その軸方向の最も底面106aとは反対側にあって底面106aとは反対側に向く先端面102Aaが、ロッドガイドボディ81Aの中心軸線に直交して広がる平面状をなしている。先端面102Aaは、底面106aからの高さが、外側凸部101の先端面101aと同等になっている。言い換えれば、内側凸部102Aの先端面102Aaと外側凸部101の先端面101aとは、ロッドガイドボディ81Aの軸方向における位置が一致して同一平面に配置されている。よって、ロッドガイド28Aは、内側凸部102Aの先端面102Aaと外側凸部101の先端面101aとがロッドシール41の環状ベース部150の内側被覆部164に同時に当接する。
ロッドガイド28Aにおいても、環状の内側凸部102Aと、内側凸部102Aの径方向外側に設けられて連通路181が形成される環状の外側凸部101と、内側凸部102Aと外側凸部101との間の凹部105とが焼結時に一体成形されている。
内側凸部102Aには、径方向内側の内周面102Acの軸方向の先端面102Aa側から外周面102Abの軸方向における底面106a側に、直線状の絞り通路135Aが穿設されている。絞り通路135Aは、内側凸部102Aの径方向における内側ほど軸方向において先端面102Aa側に近づくように傾斜している。絞り通路135Aは、ロッドガイドボディ81Aの焼結後に穴開け加工で形成されている。絞り通路135Aは、内室182と連通路181とを結んでいる。
ロッドガイド28Aは、内側凸部102Aが、ロッドシール41の環状ベース部150に当接して内室182と連通路181との間を区画し、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを、絞り通路135Aによる絞られた流れのみに制限する。
第2実施形態の緩衝器11Aは、チェック弁機構が設けられておらず、ロッドガイド28Aに、ロッドシール41の環状ベース部150に当接して内室182と連通路181との間を区画し、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを絞り通路135Aによる流れのみに制限する内側凸部102Aが設けられているため、内室182と、連通路181およびリザーバ室18とを、絞り通路135Aで常時連通させることができる。したがって、内室182内の圧力を、内室182から絞り通路135Aおよび連通路181を介してリザーバ室18に円滑に逃がすことができる。よって、第1実施形態と同様、エア抜き性の低下を抑制することが可能となる。
また、ロッドガイド28Aに、ロッドシール41の環状ベース部150に当接して内室182と連通路181との間を区画し、内室182と連通路181との間の作動流体の流れを絞り通路135Aによって制限する内側凸部102Aが設けられているため、ロッドシール41の環状ベース部150の内周側を内側凸部102Aで軸方向に支持することができる。よって、外筒16の開口部24側の端部を径方向内方に折り曲げて折曲部23を形成する際に、押圧治具で環状ベース部150の内周側にかけられた軸荷重を内側凸部102Aで受けることができる。したがって、第1実施形態と同様、補強部材が不要となり、部品点数を低減することができる。
ロッドガイド28Aは、環状の内側凸部102Aと、内側凸部102Aの径方向外側に設けられて連通路181が形成される環状の外側凸部101と、内側凸部102Aと外側凸部101との間の凹部105とが一体成形されており、内側凸部102Aで内室182と連通路181との間の作動流体の流れを制限すると共に、この内側凸部102Aに、内室182と連通路181とを結ぶ絞り通路135Aが穿設されている。よって、第1実施形態よりも部品点数を低減することができる。
なお、絞り通路135,135Aは、上記形状に限らず、種々の形状を採用することが可能である。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、外筒と該外筒の内周側に設けられて該外筒との間にリザーバ室を形成する内筒とを有して作動流体が封入されるシリンダと、前記内筒に摺動可能に嵌装されるピストンと、一端側が前記内筒内に挿入されて前記ピストンに連結され他端側が前記内筒および前記外筒から外部に突出するピストンロッドと、前記内筒の前記ピストンロッドが突出する側に設けられて該ピストンロッドを摺動可能に案内する筒状のロッドガイドと、前記ロッドガイドの前記ピストンとは反対側に対面して前記外筒内に設けられて該外筒と前記ピストンロッドとの間をシールするロッドシールと、前記ロッドガイドに形成されて該ロッドガイドと前記ロッドシールとの間の内室を前記リザーバ室に連通させる連通路と、前記外筒の前記ピストンロッドが突出する端部側に設けられて前記ロッドシールに向け径方向の内側に折り曲げられる折曲部と、を備える緩衝器であって、前記ロッドシールは、前記ロッドガイドと対面する環状ベース部と、該環状ベース部の内周側に設けられて前記ピストンロッドの外周面に摺接するシール部とを有し、前記ロッドガイドには、前記環状ベース部に当接して前記内室と前記連通路との間を区画し、前記内室と前記連通路との間の作動流体の流れを制限する隔壁部が設けられている。これにより、エア抜き性の低下を抑制することが可能となる。
第2の態様は、第1の態様において、前記ロッドガイドは、前記ピストンロッドを摺動可能に案内すると共に前記連通路が形成された筒状のロッドガイド本体が前記隔壁部とは別体で設けられており、前記隔壁部が、前記ロッドガイド本体と前記環状ベース部との間に、これらに当接して設けられて、前記内室と前記連通路との間を区画し、前記内室と前記連通路との間の作動流体の流れを制限する。
第3の態様は、第2の態様において、前記ロッドガイド本体は、環状の内側凸部と、該内側凸部の径方向外側に設けられて前記連通路が形成される環状の外側凸部と、前記内側凸部と前記外側凸部との間の凹部と、を有し、前記隔壁部は、環状部と該環状部から延びる側壁部とからなり、前記環状部が前記内側凸部および前記環状ベース部に当接し、前記側壁部が前記凹部内に延びて構成される。
第4の態様は、第2または第3の態様において、前記ロッドガイド本体と、前記隔壁部とにより、前記内室と前記連通路とを連通させる絞り通路が形成される。
第5の態様は、第1の態様において、前記ロッドガイドは、環状の前記隔壁部と、該隔壁部の径方向外側に設けられて前記連通路が形成される環状の外側凸部と、前記隔壁部と前記外側凸部との間の凹部と、が一体成形され、前記隔壁部に、前記内室と前記連通路とを結ぶ絞り通路が穿設されている。