以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、図面に示される構成の大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
<第1の実施形態>
<基板処理システムの概略構成>
図1は、基板処理システム100の構成の一例を概略的に示す図である。基板処理システム100は、薬液またはリンス液などの処理液によって半導体ウエハ等の略円形の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理システムである。基板処理システム100は、インデクサブロック110と、インデクサブロック110に結合された処理ブロック120と、基板処理システム100に設けられた装置の動作およびバルブの開閉を制御する制御部130とを含んでいる。
インデクサブロック110は、キャリア保持部111と、インデクサロボットIRと、IR移動機構112とを含んでいる。キャリア保持部111は、複数枚の基板Wを収容できるキャリアCを保持する。複数のキャリアCは、水平なキャリア配列方向Dに配列された状態でキャリア保持部111に保持される。IR移動機構112は、キャリア配列方向DにインデクサロボットIRを移動させる。インデクサロボットIRは、キャリア保持部111に保持されたキャリアCに基板Wを搬入する搬入動作、および基板WをキャリアCから搬出する搬出動作を行う。基板Wは、インデクサロボットIRによって水平姿勢で搬送される。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う状態をいう。
一方、処理ブロック120は、基板Wを処理する複数(たとえば、4つ以上)の処理ユニット121と、センターロボットCRとを含んでいる。複数の処理ユニット121は、平面視において、センターロボットCRを取り囲むように配置されている。複数の処理ユニット121は、基板Wに薬液を供給する薬液供給ユニット121aと、基板Wと薬液との反応を進行させる反応ユニット121bと、基板Wに供給された薬液を洗い流すリンスユニット121cとを含む。センターロボットCRは、処理ユニット121に基板Wを搬入する搬入動作、および基板Wを処理ユニット121から搬出する搬出動作を行う。さらに、センターロボットCRは、複数の処理ユニット121間で基板Wを搬送する。基板Wは、センターロボットCRによって水平姿勢で搬送される。センターロボットCRは、インデクサロボットIRから基板Wを受け取るとともに、インデクサロボットIRに基板Wを渡す。
<基板処理装置1の構成>
処理ユニット121の一例である基板処理装置1の構成について、図2~図4を参照しながら説明する。図2~図4は、基板処理装置1の構成の一例を概略的に示す図である。図2および図3は、それぞれ、基板処理装置1の側面模式図および上面模式図である。図4は、基板処理装置1を斜め上方からみた概略斜視図である。
この基板処理装置1は、基板Wに対してベベルエッチング処理(後述)を行う装置である。基板Wは例えば半導体基板であり、略円板形状を有している。基板Wの半径は例えば150mmである。
図5は、基板Wの周縁部の構成の一例を概略的に示す断面図である。図5は、基板Wの直径に沿う断面を示している。図5に例示するように、基板Wの上面には、多層膜9が形成されている。図5の例では、多層膜9は下層9aと中間層9bと上層9cとを含んでいる。下層9aは例えばチタン層である。中間層9bは例えば窒化チタン層であり、下層9aの上面に形成されている。上層9cは例えばタングステン層であり、中間層9bの上面に形成されている。また、図5の例では、基板Wの表面には下地層91が形成されており、多層膜9はその下地層91の上面に形成されている。下地層91は例えば酸化シリコン層である。基板Wの鉛直上方に着目すれば、下地層91、下層9a、中間層9bおよび上層9cが基板Wの上面からこの順に積層されている。
下層9aおよび中間層9bは例えば同じオーダーの厚みを有しており、上層9cは例えば下層9aおよび中間層9bのいずれよりも厚い。上層9cは、例えば、下層9aよりも10倍以上厚く、また、中間層9bよりも10倍以上厚い。
このような多層膜9は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)およびNAND(Not AND)型のフラッシュメモリなどの半導体デバイスにおいて採用される。
基板処理装置1は、基板Wの周縁側の処理領域R1(図5参照)において多層膜9をエッチングして除去する(いわゆるベベルエッチング処理)。処理領域R1は、基板Wの周縁から幅D1の環状部分である。処理領域R1の幅D1は、例えば、1mm~5mm程度である。
図2を参照して、基板処理装置1は、回転保持機構2、カップ部3、ガス供給部4、処理液供給部5、ノズル移動機構6、および制御部130を含んでいる。これらの各部2~6は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130からの指示に応じて動作する。制御部130としては、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。
制御部130は電子回路であって、例えばデータ処理装置および記憶媒体を有していてもよい。データ処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶媒体は非一時的な記憶媒体(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶媒体(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶媒体には、例えば制御部130が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部130が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部130が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
<回転保持機構2>
回転保持機構2は、基板Wを、その一方の主面(具体的には、多層膜9が形成された上面)を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転可能な機構である。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う状態をいう。回転保持機構2は、基板Wを、その主面の中心部c1を通る鉛直な回転軸線a1のまわりに回転させる。理想的には、回転軸線a1は基板Wの中心を通る。
回転保持機構2は、基板Wを保持するスピンチャック21を含む。スピンチャック21は「保持部材」または「基板保持部」とも呼ばれる。スピンチャック21は例えば略円板形状を有している。スピンチャック21は、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸線a1に略一致するように設けられている。図2の例では、スピンチャック21の径は基板Wの径よりも小さい。スピンチャック21の下面には、略円筒状の回転軸部22が連結されている。回転軸部22はいわゆるシャフトである。回転軸部22は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢で配置される。回転軸部22の軸線は、回転軸線a1と略一致する。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、モータ)23が接続される。回転駆動部23は、回転軸部22をその軸線まわりに回転駆動する。この回転駆動により、スピンチャック21は回転軸部22とともに回転軸線a1のまわりに回転する。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を、回転軸線a1のまわりに回転させる回転機構231である。回転軸部22の下側の一部および回転駆動部23は、筒状のケーシング24内に収容されている。
スピンチャック21の上面には、図示省略の吸引口が設けられており、回転軸部22の内部空間と連通している。内部空間は、図示省略の配管および開閉弁を介して図示省略のポンプに接続されている。当該ポンプおよび当該開閉弁は、制御部130に電気的に接続されている。制御部130は、当該ポンプおよび当該開閉弁の動作を制御する。当該ポンプは、制御部130の制御にしたがって、負圧と正圧とを選択的に供給可能である。基板Wがスピンチャック21の上面に略水平姿勢で置かれた状態でポンプが負圧を供給すると、スピンチャック21は、基板Wを下方から吸着保持する。ポンプが正圧を供給すると、基板Wは、スピンチャック21の上面から取り外し可能となる。
この構成において、スピンチャック21が基板Wを吸着保持した状態で、回転駆動部23が回転軸部22を回転させると、スピンチャック21が鉛直方向に沿った軸線まわりに回転される。これによって、スピンチャック21によって保持された基板Wが、その面内の中心部c1を通る鉛直な回転軸線a1を中心に回転方向AR1に回転する。
なお、上述の例では、スピンチャック21は基板Wを吸着保持しているものの、必ずしもこれに限らない。例えば、スピンチャック21が、その上面の周縁部付近に適当な間隔をおいて設けられた複数個(例えば6個)のチャックピンを含み、当該複数のチャックピンによって基板Wを保持してもよい。この場合のスピンチャック21は、例えば、基板Wより若干大きい円板状である。当該複数のチャックピンは、基板Wがスピンチャック21の上面より僅かに高い位置で略水平姿勢となるように基板Wを着脱自在に保持する。各チャックピンは、制御部130と電気的に接続されたモータ等によって、基板Wの周縁に当接して基板Wを保持する状態と、基板Wの周縁から離れて基板Wを開放する状態とに選択的に切り替えられる。
<処理液供給部5>
処理液供給部5は、スピンチャック21によって保持された基板Wの処理領域R1に処理液を供給する。具体的には、処理液供給部5は、スピンチャック21によって保持されて回転している基板Wの上面(処理面)の処理領域R1内に処理液が着液するように、当該処理液を吐出する。図2および図4では、吐出された処理液の液流L1が模式的に示されている。液流L1は、例えば液柱状である。処理液は処理領域R1内における着液位置PL1に着液するように吐出される。この着液位置PL1は、基板Wが回転軸線a1のまわりに回転することによって、基板Wの処理領域R1の上を相対的に周回する。
なお、ここでいう「処理液」には、薬液処理に用いられる「薬液」と、薬液をすすぎ流すリンス処理に用いられる「リンス液(「洗浄液」とも称される)」と、が含まれる。
図2から図4の例では、処理液供給部5は、ノズルヘッド50を含む。ノズルヘッド50は、ノズル移動機構6が備える長尺のアーム63の先端に取り付けられている。アーム63は、水平面に沿って延在する。ノズル移動機構6は、アーム63を移動させることによって、ノズルヘッド50をその処理位置と退避位置との間で移動させる。なお、図3および図4では、図の煩雑を避けるためにノズル移動機構6の図示を省略している。
図2から図4では、ノズルヘッド50がそれぞれの処理位置に位置する状態で、基板Wがスピンチャック21によって回転軸線a1のまわりに所定の回転方向AR1に回転している状態が示されている。図3の例では、処理位置に位置するノズルヘッド50が実線で示され、退避位置に位置するノズルヘッド50が仮想線で示されている。後述のノズルヘッド48、49についても同様に図示されている。
ノズルヘッド50は、ノズル51a~51cと、これらを保持する保持部材とを含む。図示の例では、ノズルヘッド50はノズル51dも含んでいるものの、ノズル51dについては後に詳述する。保持部材は、例えば、水平面に沿って延在する板状部材と、当該板状部材の一端から上方に突出する突出部材とが接合されて形成されており、L字形の断面形状を有している。当該突出部材の先端は、アーム63の先端に取り付けられており、当該板状部材は、アーム63の先端に対してアーム63の基端とは反対側に突き出ている。ノズル51a~51cは、当該板状部材の先端側から順にアーム63の延在方向に沿って一列に並んで配置されている。ノズル51a~51cは当該板状部材を鉛直方向に貫通した状態で、当該板状部材によって保持されている。ノズル51a~51cの先端部(下端部)は、当該板状部材の下面から下方に突出しており先端に吐出口を有する。ノズル51a~51cの基端部(上端部)は、当該板状部材の上面から上方に突出している。
ノズル51a~51cには、これらに処理液を供給する配管系83が接続されている。具体的には、ノズル51a~51cの上端には、配管系83の配管832a~832cの一端がそれぞれ接続されている。ノズル51a~51cは、配管系83からそれぞれ供給された処理液を先端の吐出口から吐出する。処理液供給部5は、ノズル51a~51cのうち制御部130に設定された制御情報によって定まる1つのノズルから、制御部130の制御にしたがって処理液を吐出する。
配管系83は、具体的には、酸性薬液供給源831a、リンス液供給源831b、SC-1供給源831c、複数の配管832a、832b、832c、および、複数の開閉弁833a、833b、833cを、組み合わせて構成されている。
酸性薬液供給源831aは、酸性薬液を供給する供給源である。酸性薬液は特に限定されないものの、例えば、フッ酸を含む薬液である。酸性薬液供給源831aは、開閉弁833aが介挿された配管832aを介して、ノズル51aに接続されている。したがって、開閉弁833aが開放されると、酸性薬液供給源831aから供給される酸性薬液が、ノズル51aから吐出される。
リンス液供給源831bは、リンス液を供給する供給源である。リンス液は、例えば、純水(DIW:DE-IONIZED WATER)、温水、オゾン水、磁気水、還元水(水素水)、各種の有機溶剤(イオン水、IPA(イソプロピルアルコール)および機能水(CO2水など))の少なくともいずれか一つを含む。リンス液供給源831bは、開閉弁833bが介挿された配管832bを介して、ノズル51bに接続されている。したがって、開閉弁833bが開放されると、リンス液供給源831bから供給されるリンス液が、ノズル51bから吐出される。
SC-1供給源831cは、SC-1を供給する供給源である。SC-1は、水酸化アンモニウムと過酸化水素水と純水とを含む薬液である。水酸化アンモニウムと過酸化水素水との一組と、純水との比(当該一組:純水)は、6:1から11:10の範囲内に設定される。例えば、水酸化アンモニウムと過酸化水素水と純水との比を、1:5:1から1:10:10の範囲内に設定する。SC-1供給源831cは、開閉弁833cが介挿された配管832cを介して、ノズル51cに接続されている。したがって、開閉弁833cが開放されると、SC-1供給源831cから供給されるSC-1が、ノズル51cから吐出される。SC-1は多層膜9をエッチングすることができるので、以下では、SC-1をエッチング液とも呼ぶ。SC-1による上層9cのエッチングレートは中間層9bおよび下層9aのエッチングレートよりも高い。
図3の例では、ノズル51a~51cは基板Wの回転方向AR1の下流側から上流側に向かってこの順で配置されている。つまり、ノズル51aが最も下流側に配置される。
処理液供給部5は、酸性薬液、リンス液およびSC-1を選択的に供給する。処理液(酸性薬液、リンス液およびSC-1)がノズル51a~51cのうち対応するノズルに供給されると、回転している基板Wの上面の周縁部の処理領域R1内の位置に着液するように、当該ノズルは当該処理液を吐出する。開閉弁833a~833cの各々は、制御部130の制御下で開閉される。つまり、ノズルヘッド50からの処理液の吐出態様(具体的には、吐出される処理液の種類、吐出開始タイミング、吐出終了タイミングおよび吐出流量等)は、制御部130によって制御される。基板Wに着液した処理液は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの周縁から外側に飛散する。
図5には、ノズル51cの一例が模式的に示されている。図5の例では、ノズル51cは処理液(エッチング液)を、次に説明する吐出方向に沿って吐出する。すなわち、ノズル51cは、吐出口から下側に向かうにしたがって基板Wの周縁に近づく斜め方向(吐出方向)に処理液を吐出する。つまり、ノズル51cは、下側に向かうにしたがって径方向外側に傾斜した斜め方向に処理液を吐出する。この吐出方向が水平面に対してなす角度は例えば45度程度である。ノズル51cの吐出方向は、例えば、ノズル51c内に形成される内部流路の延在方向によって規定される。具体的には、ノズル51cの内部流路はその吐出側において上記斜め方向に延在して吐出口に至る。これにより、ノズル51cはその吐出口から処理液を上記斜め方向に吐出できる。
このように処理液が上記斜め方向に吐出されると、基板Wの上面の着液位置PL1に着液した処理液は、基板Wの周縁部を径方向外側、つまり基板Wの周縁側に向かって流れやすい。したがって、処理液が径方向内側の非処理領域(「デバイス領域」)R2に進入することを抑制できる。非処理領域R2は、基板Wの上面のうち処理領域R1以外の領域である。他のノズル51a、51bについても同様である。
ノズル51cが基板Wの回転中にエッチング液を吐出することにより、基板Wの処理領域R1の多層膜9がエッチングされて除去される。本実施の形態では、後述のノズル移動機構6はエッチングの進行に応じてノズル51cを空間的に動かして、エッチング液の着液位置PL1を基板Wの周縁側に移動させる。これにより、多層膜9を適切に除去する。この点については後に詳述する。
<カップ部3>
カップ部3は、スピンチャック21とともに回転する基板Wから飛散する処理液等を受け止める。なお、図3および図4では、図の煩雑を避けるため、カップ部3の図示を省略している。
カップ部3は、スプラッシュガード31を含む。スプラッシュガード31は、上端が開放された筒形状の部材であり、回転保持機構2を取り囲むように設けられる。この実施の形態では、スプラッシュガード31は、例えば、底部材311、内部材(「内側ガード」とも、単に「ガード」とも称する)312、および、外部材(「外側ガード」とも称する)313の3個の部材を含んで構成されている。外部材313が設けられていなくてもよいし、逆に、外部材313の外側に、回転保持機構2を取り囲むようにガードがさらに設けられてもよい。
底部材311は、上端が開放された筒形状の部材であり、円環状の底部と、底部の内側縁部から上方に延びる円筒状の内側壁部と、底部の外側縁部から上方に延びる円筒状の外側壁部と、を含む。内側壁部の少なくとも先端付近は、回転保持機構2のケーシング24に設けられた鍔状部材241の内側空間に収容される。
底部には、内側壁部と外側壁部との間の空間と連通する排液溝(図示省略)が形成される。この排液溝は、工場の排液ラインと接続される。また、この排液溝には、溝内を強制的に排気して、内側壁部と外側壁部との間の空間を負圧状態とする排気液機構が接続されている。内側壁部と外側壁部との間の空間は、基板Wの処理に使用された処理液を集めて排液するための空間であり、この空間に集められた処理液は、排液溝から排液される。
内部材312は、上端が開放された筒形状の部材であり、内部材312の上部(「上端側部分」、「上端部分」)は内側上方に向かって延びている。すなわち、当該上部は、回転軸線a1に向かって斜め上方に延びている。内部材312の下部には、上部の内周面に沿って下方に延びる筒状の内周壁部と、上部の外周面に沿って下方に延びる筒状の外周壁部とが形成される。底部材311と内部材312とが近接する状態において、底部材311の外側壁部は、内部材312の内周壁部と外周壁部との間に収容される。内部材312の上部が受けた処理液等は、底部材311を介して排出される。
外部材313は、上端が開放された筒形状の部材であり、内部材312の外側に設けられている。外部材313の上部(「上端側部分」、「上端部分」)は内側上方に向かって延びている。すなわち、当該上部は、回転軸線a1に向かって斜め上方に延びている。下部は、内部材312の外周壁部に沿って下方に延びている。外部材313の上部が受けた処理液等は、内部材312の外周壁部と外部材313の下部との隙間から排出される。
スプラッシュガード31には、これを昇降移動させるガード駆動機構(「昇降駆動部」)32が配設されている。ガード駆動機構32は、例えば、ステッピングモータにより構成される。この実施の形態では、ガード駆動機構32は、スプラッシュガード31が備える3個の部材311、312、313を、独立して昇降させる。
内部材312、および、外部材313の各々は、ガード駆動機構32の駆動を受けて、各々の上方位置と下方位置との間で移動する。ここで、各部材312、313の上方位置は、当該部材312、313の上端縁部が、スピンチャック21によって保持された基板Wの側方、かつ、上方に配置される位置である。一方、各部材312、313の下方位置は、当該部材312、313の上端縁部が、スピンチャック21の上面よりも下方に配置される位置である。外部材313の上方位置(下方位置)は、内部材312の上方位置(下方位置)よりも若干上方に位置する。内部材312と外部材313とは、互いにぶつからないように同時に、若しくは順次に昇降する。底部材311は、その内側壁部が、ケーシング24に設けられた鍔状部材241の内側空間に収容される位置と、その下方の位置との間でガード駆動機構32によって移動する。ただし、ガード駆動機構32は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。つまり、スプラッシュガード31の位置(具体的には、底部材311、内部材312、および、外部材313各々の位置)は、制御部130によって制御される。
<ガス供給部4>
ガス供給部4は、スピンチャック21によって保持されて回転している基板Wの上面の周縁部に当たるように不活性ガスを吐出するガス吐出機構(「周縁部用ガス吐出機構」とも、「ガス吐出部」とも称される)441、445を含む。「不活性ガス」は、基板Wの材質およびその表面に形成された薄膜との反応性に乏しいガスである。不活性ガスは、例えば、窒素(N2)ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスの少なくともいずれか一つを含む。ガス吐出機構441は不活性ガスを吐出して、基板Wの上面の周縁部付近に、例えばガス柱状のガス流G1を形成する。ガス吐出機構445は、ガス吐出機構441とは異なる周方向位置で不活性ガスを吐出して、基板Wの上面の周縁部付近に、例えばガス柱状のガス流G5を形成する。これらのガス流G1、G5は、後に詳述するように、基板Wの処理領域R1上のエッチング液を径方向外側に吹き飛ばすことができる。
ガス供給部4は、スピンチャック21によって保持されて回転している基板Wの上面の中央付近に対して不活性ガスを吐出するガス吐出機構(「中央部用ガス吐出機構」とも、「他のガス吐出部」とも称される)443をさらに含む。図2の例では、ガス吐出機構443から吐出された不活性ガスによって形成されるガス流G3が模式的に示されている。ガス供給部4は、ガス吐出機構441、443、445から基板Wの上面に向かう不活性ガスのガス流G1、G3、G5を形成することによって、処理液が基板Wの上面の非処理領域R2(図5参照)に流れることを抑制する。
ガス吐出機構445はノズル51dを含む。ノズル51dは、処理液供給部5のノズルヘッド50に取り付けられる(図2~図4参照)。ノズル51dは、ノズル51a~51cと同様に、ノズルヘッド50の板状部材に取り付けられる。図3の例では、ノズル51dは、ノズル51a~51cと一列に配列されており、ノズル51a~51cのいずれよりも回転方向AR1の上流側に配置されている。
ガス吐出機構441は、ノズルヘッド48を含む。ガス吐出機構443は、ノズルヘッド49を含む。ノズルヘッド48、49は、後述するノズル移動機構6に設けられた長尺のアーム61、62の先端にそれぞれ取り付けられている。アーム61、62は、水平面に沿って延在する。ノズル移動機構6は、アーム61、62を移動させることによって、ノズルヘッド48、49をそれぞれの処理位置と退避位置との間で移動させる。
ノズルヘッド48は、ノズル(「処理面用ガス吐出ノズル」)41と、これを保持する保持部材とを含む。保持部材は、例えば、水平面に沿って延在する板状部材と、当該板状部材の一端から上方に突出する突出部材とが接合されて形成されており、L字形の断面形状を有している。当該突出部材の先端は、アーム61の先端に取り付けられており、当該板状部材は、アーム61の先端に対してアーム61の基端とは反対側に突き出ている。ノズル41は、当該板状部材を鉛直方向に貫通した状態で、当該板状部材によって保持されている。ノズル41の先端部(下端部)は、当該板状部材の下面から下方に突出し、上端部は上面から上方に突出している。ノズル41の上端には、配管471の一端が接続されている。配管471の他端は、ガス供給源451に接続している。配管471の経路途中には、ガス供給源451側から順に流量制御器481および開閉弁461が設けられている。
ここで、ノズル移動機構6がノズルヘッド48を、その処理位置に移動させると、ノズル41の吐出口は、基板Wの上面の周縁部に対向する。
ノズルヘッド48が処理位置に位置した状態において、ノズル41には、ガス供給源451から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)が供給される。ノズル41は、供給された不活性ガスを基板Wの上面の周縁部の供給位置P1に当たるように上方から吐出する。基板Wは回転軸線a1のまわりに回転するので、供給位置P1も着液位置PL1と同様に、基板Wの周縁部の上を相対的に周回する。
図6および図7は、それぞれ、基板処理装置1が吐出する処理液の液流L1と、不活性ガスのガス流G1、G5とが基板Wの周縁部に当たる各位置の位置関係の一例を示す基板Wの上面模式図と側面模式図である。
ノズル41は、吐出した不活性ガスが供給位置P1に達した後、供給位置P1から基板Wの周縁に向かって流れるように、不活性ガスを吐出口から定められた方向に吐出する。
処理液供給部5のノズルヘッド50から吐出される処理液の液流L1は、基板Wの上面の周縁部における着液位置PL1に着液する。液流L1の基板Wの径方向の幅は、例えば、0.5mm~2.5mmである。ノズルヘッド50は、複数のノズル51a~51cのそれぞれから選択的に処理液を吐出することができる。ノズル51a~51cから吐出される処理液の着液位置PL1は互いに相違する。ガス流G1が当たる供給位置P1は、ノズル51a~51cのいずれに対応する着液位置PL1に対しても、基板Wの回転方向AR1の上流側に位置する。ここでいう着液位置PL1よりも上流側の位置とは、着液位置PL1から回転方向AR1の反対側の半周内の位置をいう。
すなわち、ガス吐出機構441は、基板Wの上面の周縁部のうち処理液供給部5から吐出される処理液が着液する着液位置PL1よりも、基板Wの回転方向AR1の上流側の供給位置P1に向けて上方から不活性ガスを吐出する。ガス吐出機構441によって吐出された不活性ガスが形成するガス流G1は、供給位置P1で基板Wの上面に当たる。ガス吐出機構441は、ガス流G1が供給位置P1から基板Wの周縁に向かうように不活性ガスを定められた吐出方向に吐出する。
さて、着液位置PL1に着液された処理液は基板Wの回転によって回転方向AR1に移動する。この基板W上の処理液が供給位置P1に到達すると、その多くがガス流G1によって基板Wの外側に吹き飛ばされる。つまり、1回転前の古い処理液の多くがガス流G1によって基板Wの外側に吹き飛ばされる。これによれば、着液位置PL1に到達する古い処理液の量を低減できる。言い換えれば、着液位置PL1に着液した新しい処理液に混入する古い処理液の量を低減できる。
ノズル51dの上端には、配管475の一端が接続されている。配管475の他端は、ガス供給源455に接続している(図2も参照)。配管475の経路途中には、ガス供給源455側から順に流量制御器485、開閉弁465が設けられている。ノズル51dの下端は、開口している。当該開口は、ノズル51dの吐出口である。
ノズル移動機構6がノズルヘッド50を、その処理位置に移動させると、ノズル51dの吐出口は基板Wの上面の周縁部に対向する。ノズルヘッド50が処理位置に位置する状態において、ノズル51dには、ガス供給源455から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)が供給される。ノズル51dは、供給された不活性ガスを基板Wの上面の周縁部上の供給位置P5に当たるように上方から吐出して、ガス流G5を形成する。この供給位置P5は、回転軸線a1についての周方向において、供給位置P1と着液位置PL1との間に位置する。つまり、供給位置P5は供給位置P1よりも回転方向AR1の下流側かつ着液位置PL1よりも回転方向AR1の上流側に位置する。供給位置P5も供給位置P1および着液位置PL1と同様に、基板Wの回転に伴って基板Wの周縁部上を相対的に周回する。
ノズル51dは、ガス流G5が供給位置P5に達した後、供給位置P5から基板Wの周縁に向かって流れるように、不活性ガスを吐出口から定められた吐出方向に吐出する。このガス流G5によって、供給位置P5における処理液の多くは基板Wの外側に吹き飛ばされる。つまり、ガス流G1による供給位置P1での吹き飛ばしによってもなお基板Wの周縁部上に残留する処理液を、供給位置P5でのガス流G5によって吹き飛ばす。
ガス吐出機構443のノズルヘッド49は、アーム62の先端部の下面に取り付けられた円柱部材93と、円柱部材93の下面に取り付けられた円板状の遮断板90と、円筒状のノズル43とを含んでいる。円柱部材93の軸線と遮断板90の軸線とは、略一致しており、それぞれ鉛直方向に沿う。遮断板90の下面は、水平面に沿う。ノズル43は、その軸線が遮断板90、円柱部材93の軸線と略一致するように、円柱部材93および遮断板90を鉛直方向に貫通している。ノズル43の上端部は、さらにアーム62の先端部も貫通して、アーム62の上面に開口する。ノズル43の上端部には、配管473の一端が接続されている。配管473の他端は、ガス供給源453に接続している。配管473の経路途中には、ガス供給源453側から順に流量制御器483および開閉弁463が設けられている。ノズル43の下端は、遮断板90の下面に開口している。当該開口は、ノズル43の吐出口である。
ノズル移動機構6がノズルヘッド49をその処理位置に移動させると、ノズル43の吐出口は、基板Wの上面の中心付近に対向する。この状態において、ノズル43には、配管473を介してガス供給源453から不活性ガス(図示の例では、窒素(N2)ガス)を供給される。ノズル43は、供給された不活性ガスを基板Wの上面の中心付近に向けて不活性ガスを吐出して、ガス流G3を形成する。ガス流G3は、基板Wの中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって放射状に広がる。すなわち、ガス吐出機構443は、基板Wの上面の中央部分の上方から不活性ガスを吐出して、当該中央部分の上方から基板Wの周縁に向かって広がるガス流G3を生成させる。ガス流G3は、基板Wの処理領域R1を流れる処理液に対して径方向外側への風圧を与えることができるので、処理液が非処理領域R2に進入することを抑制できる。
流量制御器481、483、485は、例えば、それぞれが設けられている配管471、473、475に流れるガスの流量を検出する流量計と、弁の開閉量に応じて当該ガスの流量を調節可能な可変バルブとを備えて構成されている。制御部130は、流量制御器481、483、485のそれぞれについて、流量計が検出する流量が目標流量になるように、図示省略のバルブ制御機構を介して流量制御器481、483、485の可変バルブの開閉量を制御する。制御部130は、予め設定された設定情報にしたがって所定の範囲内で目標流量を設定することによって、流量制御器481、483、485を通過する各ガスの流量を所定の範囲内で自在に制御することができる。また、制御部130は、当該バルブ制御機構を介して開閉弁461、463、465を開状態または閉状態に制御する。したがって、ノズル41、43、51dからの不活性ガスの吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミングおよび吐出流量等)は、制御部130によって制御される。
<ノズル移動機構6>
ノズル移動機構6は、ノズルヘッド48~50をそれぞれの処理位置と退避位置との間で移動させる機構である。
ノズル移動機構6は、水平に延在するアーム61~63、ノズル基台64~66、駆動部67~69を含む。ノズルヘッド48~50は、アーム61~63の先端部分にそれぞれ取り付けられている。
アーム61~63の基端部は、ノズル基台64~66の上端部分にそれぞれ連結されている。ノズル基台64~66は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢でケーシング24のまわりに分散して配置されている。ノズル基台64~66は、その軸線に沿って鉛直方向に延在している。ノズル基台64~66は、それぞれの軸線まわりに回転可能である。ノズル基台64~66には、それぞれの軸線のまわりに回転させる駆動部67~69が設けられている。駆動部67~69は、例えば、ステッピングモータなどのモータをそれぞれ含んでいる。
駆動部67~69は、ノズル基台64~66の回転軸を介してノズル基台64~66の上端部分をそれぞれ回転させる。各上端部分の回転に伴って、ノズルヘッド48~50もノズル基台64~66の軸線まわりに回転する。これにより、駆動部67~69は、ノズルヘッド48~50をそれぞれの処理位置と、退避位置との間で水平に移動させる。
ノズルヘッド48が処理位置まで移動すると、ノズル41の吐出口は、スピンチャック21によって保持された基板Wの周縁部の一部に対向する。
ノズルヘッド49が処理位置まで移動すると、ノズル43は、基板Wの中心部c1の上方に位置し、ノズル43の軸線は、スピンチャック21の回転軸線a1に略一致する。ノズル43の吐出口(下側の開口)は、基板Wの中心部c1に対向する。また、遮断板90の下面は、基板Wの上面と略平行に対向する。遮断板90は、基板Wの上面と非接触状態で近接する。
ノズルヘッド50が処理位置まで移動すると、ノズル51a~51dがそれぞれの処理位置まで移動する。より厳密には、例えば、ノズル51a~51dがアーム63の延在方向に沿って1列に配置されている場合には、ノズル51a~51dと、円形の基板Wの周縁との各距離は、通常、相互に僅かに異なる。処理領域R1の幅が細い場合でも、ノズル51a~51cから選択的に吐出される処理液が処理領域R1に当たるように、駆動部69は、ノズル51a~ノズル51cのうち処理液を吐出するノズルに応じて、ノズルヘッド50の処理位置を制御部130の制御下で調節する。
基板Wの基板処理装置1への搬入搬出は、ノズルヘッド48~50等が退避位置で停止した状態で、センターロボットCRにより行われる。基板処理装置1に搬入された基板Wは、スピンチャック21により着脱自在に保持される。つまり、ノズルヘッド48~50の各退避位置は、これらが基板Wの搬送経路と干渉せず、かつ、これらが相互に干渉しない各位置である。各退避位置は、例えば、スプラッシュガード31の外側、かつ、上方の位置である。
駆動部67~69は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130の制御下で動作する。制御部130は、ガス流G1、G5および液流L1が基板Wの上面の周縁部内の供給位置P1、P5および着液位置PL1にそれぞれ当たるように、処理位置へのノズルヘッド48、50の移動を予め設定された設定情報にしたがってノズル移動機構6に行わせる。供給位置P1、P5および着液位置PL1は、当該設定情報を変更することによって調節される。また、制御部130は、ガス流G3が基板Wの中心付近に当たるように、処理位置へのノズルヘッド49の移動を当該設定情報にしたがってノズル移動機構6に行わせる。つまり、ノズルヘッド48~50の位置は、制御部130によって制御される。すなわち、ノズル41、43、51a~51dの位置は、制御部130によって制御される。
基板Wの上面の周縁部における着液位置PL1に吐出された処理液は、液膜となって処理領域R1に付着した状態で基板Wの周方向に移動する。処理液の液膜には、当該移動の過程で基板Wの回転による遠心力が作用し、処理液の一部は基板Wの周縁から外側に飛散する。このため、処理液の液膜の量は着液位置PL1から回転方向AR1に沿って離れるほど低下する。この低下の程度は、基板Wの回転速度および多層膜9の膜質、ならびに、吐出される処理液の液量および粘性等によって変動する。基板Wの上面の周縁部上の処理液が回転に伴って供給位置P1に到達すると、その多くがガス流G1によって基板Wの周縁よりも外側に吹き飛ばされる。続いて、ガス流G1によってもなお残留した処理液が供給位置P5に到達すると、ガス流G5によって基板Wの周縁よりも外側に吹き飛ばされる。
処理領域R1の幅D1、すなわちエッチング処理の対象となる領域の幅が2mmであれば、処理液の液流L1は、基板Wの周縁から幅1.5mmの範囲に着液するように吐出されることが好ましい。この場合に、非処理領域R2へ達する液跳ねを抑制しつつ、残留処理液を基板W上から効率良く除くためには、不活性ガスのガス流G1の断面の中心が、基板Wの周縁から例えば、4mm~8mmの範囲に当たるように、ガス流G1を吐出することが好ましい。基板Wの周縁部上の残留処理液の液膜の幅は、通常、着液位置PL1に着液する処理液の液流L1の幅よりも広がる。したがって、上述のように、基板Wの周縁部に着液する処理液の液流L1の幅よりも、不活性ガスのガス流G1の幅の方が広いことがより好ましい。具体的には、不活性ガスのガス流G1の幅は、液流L1の幅の、例えば、3倍から5倍に設定されることが好ましい。これにより、基板Wの周縁部上の残留処理液をガス流G1によって効率良く基板Wの外部に排出できる。
<基板処理装置の動作>
図8は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。初期的には、ノズルヘッド48~50はそれぞれの退避位置で停止している。まず、センターロボットCRが基板Wを基板処理装置1に搬入し、スピンチャック21がこの基板Wを保持する(ステップS1)。次に、回転機構231はスピンチャック21を回転軸線a1のまわりに回転させ始める(ステップS2)。これにより、基板Wも回転軸線a1のまわりに回転し始める。
次に、ガス供給部4がガス流G1、G3、G5の吐出を開始する(ステップS3)。具体的には、まずノズル移動機構6がノズルヘッド48~50をそれぞれの処理位置に移動させる。そして、制御部130が開閉弁461、463、465を開放させることにより、ノズル41、43、51dからそれぞれ不活性ガスを吐出する。これにより、ガス流G1、G3、G5が形成される。
次に、処理液供給部5はエッチング液の吐出を開始する(ステップS4)。つまり、処理液供給部5はノズル51cからエッチング液を吐出して、当該エッチング液を基板W上の着液位置PL1に着液させる。この着液位置PL1(つまり、初期位置)は、基板Wの周縁から所定幅だけ内側の位置であり、例えば1.5mm程度である。具体的には、制御部130が開閉弁833cを開放させることにより、ノズル51cからエッチング液を吐出させる。なお、処理液供給部5は、必要に応じて、他のノズル51a、51bからも処理液を吐出してもよい。これらの処理液の供給は順次に行われてもよく、あるいは、同時期に並行して行われてもよい。ここでいう同時期とは、ノズル51a~51cの少なくとも2つのノズルの吐出期間の少なくとも一部が時間軸上において互いに重なることをいう。ここでは、説明の簡単のために、ノズル51a、51bから処理液を吐出しないものとする。
着液位置PL1に着液されたエッチング液は、基板Wの回転に伴って周方向に移動するとともに、遠心力を受けて径方向外側に流れ、その一部は基板Wの周縁から外側に飛散する。基板Wの処理領域R1上に残留したエッチング液は基板Wの回転により供給位置P1に到達する。エッチング液はこの供給位置P1においてガス流G1によって基板Wよりも外側に吹き飛ばされ、供給位置P1において残留したエッチング液も供給位置P5においてガス流G5によって基板Wよりも外側に吹き飛ばされる。これによれば、着液位置PL1において新たに供給されたエッチング液に古いエッチング液が混入することを抑制できる。
エッチング液が着液位置PL1に向かって供給され続けると、基板Wの多層膜9は主としてその着液位置PL1においてエッチングされる。図9から図13は、基板Wに対するエッチングの様子の一例を模式的に示す図である。図9に示すように、着液位置PL1における多層膜9のエッチングにより、着液位置PL1を径方向位置とする領域に溝92が形成される。つまり、上層9cの上面のうち、着液位置PL1よりも径方向外側の領域が均等にエッチングされるのではなく、着液位置PL1を含む当該領域が主としてエッチングされる。この溝92は初期的には、多層膜9の上層9cがエッチングにより除去されることによって形成される。基板Wは回転軸線a1のまわりに回転しているので、溝92は平面視において、回転軸線a1を中心とした略円形状に形成される。
エッチングが進行すると、溝92の幅が広がるとともに溝92の深さが深くなる。このエッチングの進行により、溝92の底部において中間層9bが露出する。さらなるエッチングの進行により、溝92の底部において下層9aが露出し、さらなるエッチングの進行により、溝92の底部において下地層91が露出する(図10参照)。なお、図10の例では、溝92よりも径方向外側(紙面右側)において上層9cの厚みが低減している。これは、エッチング液が遠心力を受けて上層9cの上面を径方向外側に流れ、その際にエッチング液が上層9cの上面をエッチングするからである。
さて、下地層91が露出すると、多層膜9は溝92によって2つの多層膜9A、9Bに分割される。多層膜9Aは溝92よりも径方向内側(つまり、回転軸線a1側:紙面左側)に位置し、多層膜9Bは溝92よりも径方向外側(つまり、基板Wの周縁側)に位置している。以下では、多層膜9Aに属する下層9a、中間層9bおよび上層9cをそれぞれ下層9aA、中間層9bAおよび上層9cAとも呼び、多層膜9Bに属する下層9a、中間層9bおよび上層9cをそれぞれ下層9aB、中間層9bBおよび上層9cBとも呼ぶ。
下地層91が露出すると、エッチング液は下地層91の上面に着液する。エッチング液は下地層91をほとんどエッチングできないので、以後、着液位置PL1の高さ位置はあまり低下しない。エッチング液は着液の際に下地層91の上面で広がるので、エッチング液の一部は下地層91の上面を径方向内側に向かって流れる。
ここで、溝92を形成する側面のうち径方向内側の側面に対するエッチングについて述べる。この溝92の径方向内側の側面は、下層9aAの側面9a1、中間層9bAの側面9b1および上層9cAの側面9c1によって構成される。
エッチング液の一部は下地層91の上面を径方向内側に向かって流れるので、この溝92の径方向内側の側面に接触し得る。よって、側面9a1、9b1、9c1もエッチングされ得る。しかるに、このエッチングでは、下層9aAの側面9a1に対するエッチングが少なくとも上層9cAの側面9c1よりも進行する。これは、以下の理由によると考察される。
第1に、中間層9bAおよび上層9cAは下層9aAよりも高い位置に形成されるので、下地層91の上面で広がるエッチング液は、少なくとも上層9cAの側面9c1よりも、下層9aAの側面9a1に接触しやすい。これにより、下層9aAの側面9a1がエッチングされて、より径方向内側に退くのに対して、上層9cAの側面9c1はあまり径方向内側に退かない。また、この観点では、中間層9bAの側面9b1も下層9aAの側面9a1に比べれば、径方向内側に退かない。一方で、同様の理由により、中間層9bAの側面9b1は上層9cAの側面9c1よりも径方向内側に退きやすい。
第2に、上層9cAの厚みは下層9aAの10倍以上であるので、下層9aAの側面9a1に対するエッチングが上層9cAの側面9c1よりも進行する、とも考察される。また、上層9cAの厚みは中間層9bAの10倍以上であるので、中間層9bAの側面9b1に対するエッチングも上層9cAの側面9c1より進行する、とも考察される。
そして、下層9aAの側面9a1に対するエッチングが上層9cAの側面9c1よりも進行すると、この上層9cAのうち径方向外側の部分は下層9aAによって支持されなくなる。つまり、この上層9cAが径方向外側に突出する。そして、多層膜9の異種材料同士の接合面における接合力は比較的に弱いので、その突出部分が剥離し得る。このような剥離が生じることは望ましくない。
そこで、本基板処理装置1は、下地層91が露出したときに、ノズル51cを空間的に動かしてエッチング液の着液位置PL1を径方向外側(つまり、基板Wの周縁)側に移動させる。以下、具体的に説明する。
図8を再び参照して、制御部130はエッチング液の吐出開始(ステップS4)後において、溝92の底部において下地層91が露出した否かを、例えば所定周期ごとに判断する(ステップS5)。制御部130は、例えば、エッチング液の吐出開始(ステップS4)からの経過時間に基づいて、この判断を行ってもよい。エッチングの進行状況と経過時間との対応関係は例えばシミュレーションまたは実験等により、予め決定することができる。そこで、制御部130は、エッチング液の吐出開始からの経過時間が基準時間以上であるか否かを判断する。この基準時間は、エッチング液の吐出開始から、溝92の底部において下地層91が露出するまでの時間であり、例えば予め設定される。
経過時間が基準時間未満であるときには、未だ下地層91が溝92の底部において露出していないので、制御部130は再びステップS5を実行する。経過時間が基準時間以上であるときには、下地層91が溝92の底部において露出しているので、ノズル移動機構6はノズル51c(ここではノズルヘッド50)を空間的に動かして、エッチング液の着液位置PL1を所定移動量だけ、径方向外側に移動させる(ステップS6、図11も参照)。具体的には、ノズル移動機構6はノズル51cを所定移動量だけ径方向外側に移動させる。図11の例では、移動前のノズル51cの位置が仮想線で示されている。所定移動量は例えば数百μm程度に予め設定される。
これにより、エッチング液の着液位置PL1が下層9aAの側面9a1から径方向外側に遠ざかる。よって、エッチング液が着液の際に下地層91の上面で広がっても、エッチング液は下層9aAの側面9a1に到達しにくい。言い換えれば、側面9a1に接触するエッチング液の量を低減することができる。これにより、下層9aAの側面9a1に対するエッチングを抑制することができる。したがって、上述の上層9cAの剥離を抑制することができる。
次に、溝92を形成する側面のうち径方向外側の側面に対するエッチングについて述べる。溝92の径方向外側の側面は、下層9aBの側面9a2、中間層9bBの側面9b2および上層9cBの側面9c2によって構成される。
エッチング液は着液の際に下地層91の上面で径方向外側にも広がりつつ、基板Wの回転による遠心力を受けてさらに径方向外側に流れる。よって、エッチング液は当然に溝92の径方向外側の側面にも作用する。具体的には、エッチング液が下地層91の上面を径方向外側に流れると、まず下層9aBの側面9a2に衝突する。そして、エッチング液は遠心力により、下層9aBの側面9a2、中間層9bBの側面9b2および上層9cBの側面9c2に沿って上方に流れて、上層9cBの上面を径方向外側に流れる。
これにより、下層9aBの側面9a2、中間層9bBの側面9b2および上層9cBの側面9c2(さらには上面)はエッチングされる。よって、エッチング液が着液位置PL1へ供給され続ければ、多層膜9Bに対するエッチングが進行して側面9a2、9b2、9c2が径方向外側に徐々に退く。ここでは、エッチング液の上層9cに対するエッチングレートは、中間層9bおよび下層9aに対するエッチングレートよりも高い。しかしながら、下層9aBの側面9a2に対するエッチングは少なくとも上層9cBの側面9c2よりも進行する。これは以下の理由によると考察される。
第1に、エッチング液は下地層91の上面を径方向外側に流れて、下層9aBの側面9a2に対して衝突するのに対して、エッチング液は上層9cBの側面9c2に衝突せずに側面9c2に沿って流れるからと考察される。これにより、エッチング液は上層9cBの側面9c2よりも下層9aBの側面9a2に対して強く作用する。
第2に、エッチング液はまず下層9aBの側面9a2をエッチングした後に、上層9cBの側面9c2をエッチングするからと考察される。つまり、下層9aBに対しては高い清浄度でエッチング液が作用するのに対して、上層9cBに対しては低い清浄度でエッチング液が作用する。この観点でも、上層9cBの側面9c2よりも下層9aBの側面9a2におけるエッチングが進行すると考察される。
第3に、上層9cBの厚みは下層9aBの10倍以上であるので、下層9aBの側面9c2に対するエッチングが上層9cBの側面9a2よりも進行する、とも考察される。
また、上記と同様の理由により、中間層9bBの側面9b2に対するエッチングも上層9cAの側面9c1より進行し得る。
以上のように、多層膜9Bの下層9aBの側面9a2が少なくとも上層9cBの側面9c2よりも径方向外側に退きながら、多層膜9Bに対するエッチングが進行する。
第1の実施の形態では、基板処理装置1は、下地層91が露出した以後において、着液位置PL1をエッチングの進行に応じて(つまり、時間の経過に応じて)、さらに径方向外側に移動させる。例えば、ノズル移動機構6は所定時間ごとにノズル51cを移動させて、着液位置PL1を所定移動量ずつ径方向外側に移動させる(図12も参照)。所定時間は例えば数百μ秒程度に予め設定され、所定移動量は例えば数百μm程度に予め設定される。ただし、着液位置PL1が下地層91の上面に位置するように、所定時間および所定移動量が設定される。言い換えれば、ノズル移動機構6は、エッチング液が下地層91の上面に着液する範囲内で(つまり、着液位置PL1が多層膜9Bの上面に位置しない程度に)、ノズル51cを移動させる。
図14は、着液位置PL1の時間変化の一例を概略的に示すグラフである。図14の例では、縦軸が径方向における着液位置PL1を示しており、横軸が時間を示している。図14では、縦軸は上方の位置ほど径方向外側の位置を示している。図14の例では、ノズル移動機構6は着液位置PL1を径方向外側の一方向のみに移動させており、略一定時間ごとに略一定量だけ着液位置PL1を径方向外側に移動させている。
これにより、着液位置PL1を径方向内側の下層9aAの側面9a1からさらに遠ざけることができる。よって、下層9aAの側面9a1に対するエッチングをさらに抑制できる。
また、着液位置PL1と溝92の径方向外側の側面(つまり、側面9a2、9b2、9c2)との間の距離を短縮することができる。これにより、エッチング液は着液位置PL1に着液してから、速やかに側面9a2、9b2、9c2に作用する。よって、より高い清浄度でエッチング液を側面9a2、9b2、9c2に作用させることができる。
エッチングが進行すると、図12に例示するように、下層9aBの側面9a2に対するエッチングがさらに進行する。そして、下層9aBが除去されると、その下層9aBによって支持されていた上層9cBおよび中間層9bBが塊として基板Wの周縁から落下する(図13参照)。これにより、処理領域R1における多層膜9を除去することができる。なお、下層9aBのみならず中間層9bBもエッチングにより除去された場合には、上層9cBのみが塊として基板Wの周縁から落下する。
処理領域R1における多層膜9を除去すると、処理液供給部5はエッチング液の吐出を停止する(ステップS7)。次に、回転機構231はスピンチャック21の回転を停止する(ステップS8)。これにより、基板Wの回転も停止する。次に、ガス供給部4は不活性ガスの吐出を停止する(ステップS9)。
以上のように、基板処理装置1は処理領域R1において多層膜9を除去することができる。しかも、基板処理装置1の制御部130は、下地層91が溝92の底部において露出したか否かを判断し、下地層91が露出したときに、ノズル移動機構6がノズル51c(ノズルヘッド50)を空間的に動かして、着液位置PL1を径方向外側に移動させる。これにより、着液位置PL1を径方向内側の下層9aAの側面9a1から遠ざけることができる。よって、下層9aAの側面9a1に対するエッチングを抑制することができる。したがって、上層9cAの剥離を抑制することができる。
また、上述の例では、ノズル移動機構6は下地層91が露出した以後において、着液位置PL1を時間の経過にとともに径方向外側に徐々に移動させている。これにより、着液位置PL1を下層9aAの側面9a1からさらに遠ざけることができる。よって、下層9aAの側面9a1に対するエッチングをさらに抑制することができる。
また、上述の例では、ノズル移動機構6は下地層91が露出した以後において、エッチング液が下地層91の上面に着液するように、言い換えれば、エッチング液が多層膜9の上面に着液しないように、着液位置PL1を径方向外側に徐々に移動させている。これによれば、着液位置PL1を下層9aBの側面9a2に近づけることができる。よって、より高い清浄度でエッチング液を下層9aBの側面9a2に接触させることができる。したがって、下層9aBの側面9a2のエッチングを促進することができる。つまり、基板処理装置1のスループットを向上できる。
そして、下層9aBを上層9cBよりも先に除去することにより、少なくとも上層9cBを塊として基板Wから落下させることができる。ここで、比較のために、ノズル51cを径方向に往復移動させて、着液位置PL1を径方向内側の所定位置と基板Wの周縁との間で往復移動させる場合を考慮する。この場合、まず処理領域R1における上層9cが全てエッチングにより除去され、続いて、処理領域R1における中間層9bが全てエッチングにより除去され、続いて、処理領域R1における下層9aが全てエッチングにより除去される。この場合でも、下層9aAの側面9a1に対するエッチングを抑制することができる。なぜなら、エッチング液が、下層9aAの側面9a1に隣接した位置に着液する期間が短いからである。しかしながら、この場合、処理領域R1における下層9a、中間層9bおよび上層9cの全容積をエッチング作用により除去することになる。よって、処理領域R1の多層膜9の除去に要する時間が長くなる。
これに対して、第1の実施の形態では、下層9aBを上層9cBよりも先に除去することにより、少なくとも上層9cBを塊として基板Wから落下させることができる。つまり、エッチング液は当該塊に対してはエッチングしないので、その分、多層膜9の除去に要する時間を短縮することができる。
また、上述の例では、制御部130は、エッチング液の供給開始からの経過時間に基づいて、下地層91の露出の有無を判断している。これによれば、制御部130は、ノズル51cを移動させるタイミングをより簡単に判断することができる。
なお、上述の例では、ノズル移動機構6によるノズル51cの移動開始のトリガとして、溝92の底部における下地層91の露出を採用した。しかしながら、必ずしもこれに限らない。例えばノズル移動機構6は溝92の底部において中間層9bまたは下層9aが露出したときにノズル51cを移動させてもよい。これによっても、下層9aAの側面9a1に対するエッチングを抑制できるからである。
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、制御部130は、下地層91が溝92の底部において露出したか否かを、経過時間に基づいて判断した。しかしながら、多層膜9の厚みのばらつき、および、エッチング液の吐出流量のばらつき等の諸要因により、下地層91が露出するタイミングは基板Wに対する処理毎に変化し得る。そこで、第2の実施の形態では、下地層91が露出するタイミングをより高い精度で特定する。
図15は、基板処理装置1Aの構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理装置1Aは、イメージセンサ7の有無を除いて、基板処理装置1と同様の構成を有している。イメージセンサ7は例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサである。イメージセンサ7に含まれる複数の受光素子は例えば2次元的に配列されており、より具体的な一例としてマトリクス状に配列されている。この場合、イメージセンサ7は2次元の画像データ(以下、単に画像と呼ぶ)を取得する。
イメージセンサ7は、スピンチャック21に保持された基板Wの周縁部によって反射された光を受光する。具体的な一例として、イメージセンサ7は、スピンチャック21に保持された基板Wの処理領域R1の一部を含む撮像領域を撮像する。
図15の例では、平面視において、イメージセンサ7は、ノズル41よりも回転方向AR1の下流側かつノズル51cよりも回転方向AR1の上流側の領域に位置している。つまり、イメージセンサ7は、基板Wの処理領域R1のうち、供給位置P1よりも下流側かつ着液位置PL1よりも上流側の撮像領域を撮像する。さらに言い換えれば、イメージセンサ7は基板Wの周縁部のうち、供給位置P1よりも下流側かつ着液位置PL1よりも上流の領域で反射した反射光を受光する。
イメージセンサ7は撮像領域の直上に設けられてもよい。この場合、イメージセンサ7は撮像領域を真上から撮像する。あるいは、イメージセンサ7は撮像領域を斜め方向から撮像してもよい。例えば、イメージセンサ7は平面視において撮像領域よりも径方向内側に設けられてもよい。これによれば、処理領域R1を流れる処理液または当該処理液から蒸発した気体は、イメージセンサ7に付着しにくい。よって、処理液または気体によるイメージセンサ7の受光面の汚染または腐食を抑制できる。
イメージセンサ7が基板Wの搬出入の際にセンターロボットCRと物理的に干渉する可能性がある場合には、イメージセンサ7をその撮像位置と退避位置との間で移動させるセンサ移動機構が設けられるとよい。撮像位置は、イメージセンサ7が撮像領域を撮像するときの位置である。退避位置は、イメージセンサ7が基板Wと鉛直方向において対向しない位置である。
イメージセンサ7は制御部130によって制御され、取得した画像(画像データ)を制御部130に出力する。イメージセンサ7は、少なくとも、基板Wに対してエッチング液が供給される期間に亘って、画像を繰り返し取得する。
制御部130には、イメージセンサ7によって取得された画像が入力される。制御部130はこの画像に基づいて、多層膜9の直下の下地層91が露出したか否かを判断する。
図16は、イメージセンサ7によって取得された画像IM1の一例を模式的に示す図である。図16の例では、画像IM1には、基板Wの周縁部のうち周方向の一部のみが含まれている。画像IM1には、溝92が含まれている。この溝92の色はエッチングの進行に応じて変化する。例えば、溝92の色は、溝92の底部で露出する層が変化することによっても変化するし、あるいは、溝92の深さが変化することによっても変化し得る。一般的に、溝92が深くなるほど、溝92の色は暗くなる。溝92の底部において下地層91が露出したときの溝92の色は、例えばシミュレーションまたは実験等により、予め知ることができる。
そこで、制御部130は、イメージセンサ7によって取得された画像IM1、つまり、イメージセンサ7によって受光された光に基づいて、下地層91が露出したか否かを判断する。
図17は、下地層91の露出についての判断処理の具体的な動作の一例を示すフローチャートである。この一連の処理は図8のステップS5の具体的な処理の一例に相当する。まず、イメージセンサ7が画像IM1を取得し、これを制御部130に出力する(ステップS51)。次に、制御部130は、溝92の第1色情報を画像IM1から取得する(ステップS52)。第1色情報は、溝92を示す画素群のうち一つの画素の色情報であってもよく、溝92を示す画素群のうち複数の画素の色情報の平均値であってもよい。溝92が形成される位置は予め分かっているので、画像IM1のうち溝92を示す複数の画素の位置は予め設定されていてもよい。あるいは、制御部130は画像IM1に対して画像処理を施すことにより、溝92を示す複数の画素を特定してもよい。
次に、制御部130は、基板Wの上面(つまり、多層膜9の上面)のうち、溝92とは異なる領域の第2色情報を画像IM1から取得する(ステップS53)。当該領域としては、例えば、基板Wの上面のうち溝92よりも径方向内側に位置する任意の領域を採用するとよい。第2色情報は、当該領域を示す画素群のうち一つの画素の色情報であってもよく、当該領域を示す画素群のうち複数の画素の色情報の平均値であってもよい。画像IM1のうち当該領域を示す複数の画素の位置は予め設定されていてもよい。
次に、制御部130は第1色情報と第2色情報との差異(色の差異)を求める(ステップS54)。イメージセンサ7がカラーセンサである場合には、当該色の差異として、例えば色距離を採用することができる。あるいは、当該色の差異として、輝度値の差(または比)を採用してもよい。イメージセンサ7がグレースケールのセンサである場合には、当該色の差異として画素値の差(または比)を採用することができる。なお、グレースケールでは、画素値は輝度値を示していると把握することができる。ここでは、当該色の差異として、第1色情報の輝度値に対する第2色情報の輝度値との比(=第2色情報/第1色情報)を採用する。この比は、コントラストを示す。
制御部130は、当該色の差異が色基準値以上であるか否かを判断する(ステップS55)。色基準値は、下地層91が露出したときの当該色の差異であり、例えばシミュレーションまたは実験等により、予め設定される。当該色の差異が色基準値未満であるときには、未だ下地層91が露出していないので、制御部130はステップS51を再び実行する。当該色の差異が色基準値以上であるときには、制御部130は下地層91が露出したと判断する(ステップS56)。
以上のように、第2の実施の形態によれば、イメージセンサ7が基板Wの上面で反射された反射光を受光し、制御部130が当該反射光に基づいて、下地層91が露出したか否かを判断する。よって、高い精度で下地層91の露出タイミングを特定できる。言い換えれば、イメージセンサ7によって基板7のエッチング状態を確認できるので、より適切なタイミングで着液位置PL1を移動させることができる。
また、上述の例では、制御部130は、溝92の第1色情報と、溝92以外の領域の第2色情報との差異に基づいて、上記判断を行っている。比較のために、第1色情報のみを用いた場合について考慮する。溝92の色は溝92の深さによって相違するものの、その他の諸要因によっても変化する。例えば、基板Wの周囲が明るければ、溝92の色は明るくなり、基板Wの周囲が暗い場合には、溝92の色は暗くなる。よって、例えば基板Wを照らす照明が基板処理装置1に設けられていた場合に、その照明が経時劣化により暗くなると、溝92は暗くなる。この場合、照明の明度が制御部130の下地層91の露出の有無の判断に影響を与える。
これに対して、溝92の第1色情報と溝92以外の領域の第2色情報との差異を算出すれば、そのような照明の明度の影響を抑制することができる。つまり、第1色情報および第2色情報には、共通して照明の明度の影響分が含まれるものの、これらの差異においては、その影響分がほぼキャンセルされる。よって、制御部130は、周囲の照明環境によらず、高い精度で下地層91の露出の有無を判断することができる。
また、上述の例では、第2色情報として、溝92よりも径方向内側に位置する領域の色を採用している。比較のために、第2色情報として溝92よりも径方向外側に位置する領域(以下、外側領域と呼ぶ)を採用した場合ついて説明する。この外側領域はエッチング液によりエッチングされるので、当該外側領域の色はエッチングの進行に応じて変化し得る。よって、第1色情報および第2色情報の差異は、溝92の深さのみならず、外側領域に対するエッチング量にも依存して変化する。したがって、下地層91の露出の判断精度が低下する。
これに対して、溝92よりも径方向内側の領域(以下、内側領域と呼ぶ)はほとんどエッチングされない。よって、内側領域の色はエッチングの進行によらずほぼ一定である。したがって、この内側領域の色を第2色情報に採用すれば、下地層91の露出の有無の判断精度を向上することができる。
また、上述の例では、イメージセンサ7は、平面視において、ノズル41よりも回転方向AR1の下流側かつノズル51cよりも回転方向AR1の上流側の領域を撮像している。つまり、イメージセンサ7は、基板Wの処理領域R1のうち、供給位置P1よりも下流側かつ着液位置PL1よりも上流側の領域を撮像する。この領域では、供給位置P1におけるガス流G1によってエッチング液の大部分が基板Wよりも外側に吹き飛ばされている。よって、画像IM1には、エッチング液があまり含まれていない。したがって、画像IM1の各画素の色情報は、エッチング液の影響をあまり受けない。これにより、画像にエッチング液が含まれることによる判断精度の低下を抑制できる。言い換えれば、制御部130は溝92の色情報を高い精度で取得することができる。
この観点では、イメージセンサ7は、平面視において、ノズル51dよりも回転方向AR1の下流側かつノズル51cよりも回転方向AR1の上流側の領域を撮像してもよい。つまり、イメージセンサ7は、基板Wの処理領域R1のうち、供給位置P5よりも下流側かつ着液位置PL1よりも上流側の領域を撮像してもよい。供給位置P5におけるガス流G5によって、基板Wの処理領域R1上のエッチング液がさらに吹き飛ばされるので、この領域に残留するエッチング液はさらに少ない。よって、画像IM1に含まれるエッチング液をさらに低減できる。したがって、制御部130は溝92の色情報をさらに高い精度で取得することができる。
なお上述の例では、制御部130は溝92の色(具体的には、溝92と内側領域の色の差異)に基づいて、下地層91の露出の有無を判断した。しかるに、必ずしもこれに限らない。上述のように、溝92よりも外側の外側領域の色はエッチングの進行に応じて変化し得る。この場合、制御部130は外側領域の色(例えば外側領域および内側領域の色の差異)に基づいて、下地層91の露出の有無を判断してもよい。
<溝の幅>
溝92の径方向の幅はエッチングの進行に応じて広がる。そして、溝92の底部において下地層91が露出したときの溝92の幅は、例えばシミュレーションまたは実験等により、予め知ることができる。
そこで、制御部130は、イメージセンサ7が取得した画像IM1に基づいて溝92の幅を求め、その溝92の幅に基づいて下地層91の露出の有無の判断を行ってもよい。図18は、下地層91の露出についての判断処理の当該動作の一例を示すフローチャートである。この一連の処理も、図8のステップS5の処理の一例に相当する。
まず、ステップS51と同様に、イメージセンサ7は画像IM1を取得し、この画像IM1を制御部130に出力する(ステップS501)。
次に、制御部130は画像IM1に基づいて溝92の幅を求める(ステップS502)。例えば、制御部130は画像IM1に対して、キャニー法等のエッジ抽出処理を行うことにより、エッジ抽出画像を取得する。このエッジ抽出画像には、溝92の輪郭がエッジとして含まれている。制御部130はエッジ抽出画像から溝92の輪郭以外のエッジを削除すべく、適宜にマスク処理を行ってもよい。画像IM1内において径方向は予め決まっているので、制御部130は溝92の輪郭に基づいて溝92の幅を算出する。
次に、制御部130は溝92の幅が所定の幅基準値以上であるか否かを判断する(ステップS503)。当該幅基準値は、下地層91が露出したときの溝92の幅であり、シミュレーションまたは実験等により、予め設定することができる。溝92の幅が幅基準値未満であるときには、未だ下地層91が露出していないので、制御部130は再びステップS501を実行する。溝92の幅が幅基準値以上であるときには、制御部130は下地層91が露出したと判断する(ステップS504)。
以上のように、制御部130は、下地層91が露出したか否かを溝92の幅に基づいて判断する。これによっても、高い精度で下地層91の露出の有無を判断できる。
なお、上述の例では、制御部130は下地層91の露出の有無を判断しているものの、同様にして中間層9bまたは下層9aの露出の有無を判断し、その判断に応じて、ノズル移動機構6が着液位置PL1を径方向外側に移動させてもよい。
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態にかかる基板処理装置1の構成は、第1および第2の実施の形態と同様である。第3の実施の形態でも、ノズル移動機構6は、下地層91(あるいは、中間層9b若しくは下層9a)が露出した以後において、ノズル51cを時間の経過とともに徐々に径方向外側に移動させる。つまり、ノズル移動機構6は所定時間ごとに所定移動量だけノズル51cを径方向外側に移動させる。ただし、第3の実施の形態では、所定時間は着液位置PL1が径方向外側にあるほど短く設定される。図19は、着液位置PL1の時間変化の一例を模式的に示すグラフである。図19の例では、着液位置PL1は階段状に変化しており、着液位置PL1が基板Wの周縁に近づくほど、所定時間Tが短く設定されている。
さて、基板Wの多層膜9Bはエッチングが進行するほど薄くなる。そして、多層膜9Bが薄くなるほど、多層膜9Bの側面9a2、9b2、9c2はエッチングにより、速く径方向外側に退避する。第3の実施の形態では、エッチングの進行に応じて、より短い時間間隔で着液位置PL1を径方向外側に移動させる。したがって、側面9a2、9b2、9c2の径方向外側への移動(退避)により適切に追随するように、着液位置PL1を移動させることができる。よって、より高い清浄度でエッチング液を多層膜9Bの側面9a2、9b2、9c2に接触させることができる。したがって、スループットをさらに向上できる。
なお、上述の例では、着液位置PL1が基板Wの周縁に近づくほど、所定時間(つまり時間ピッチ)を短く設定しているものの、着液位置PL1が基板Wに近づくほど、所定の移動量(つまり、移動ピッチ)を大きく設定してもよい。これによっても、側面9a2、9b2、9c2の径方向外側への移動(退避)により適切に追随するように、着液位置PL1を移動させることができる。よって、より高い清浄度でエッチング液を多層膜9Bの側面9a2、9b2、9c2に接触させることができる。
以上、実施の形態が説明されたが、この基板処理装置1および基板処理方法はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。本実施の形態は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
例えば、上述の例では、多層膜9において上層9cに対するエッチングレートは、下層9aおよび中間層9bよりも大きいものの、必ずしもこれに限らない。また、例えば、基板処理装置1に、基板Wを加熱するための加熱機構が設けられていてもよい。また、例えば基板Wの下面に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部が設けられてもよい。
また、上述の例では、ノズル移動機構6はノズル51cを水平方向に移動させて着液位置PL1を移動させた。しかしながら、ノズル51cが昇降可能に設けられている場合には、ノズル51cを上昇させてもよい。ノズル51cの吐出方向は径方向外側に傾斜しているので、ノズル51cが上昇すると、着液位置PL1は径方向外側に移動する。あるいは、ノズル51cの姿勢が変更可能に設けられている場合もあり得る。例えばノズル51cが回転可能に取り付けられている場合、ノズル51cのわずかな回転によってノズル51cを傾斜させることができる。これにより、ノズル51cの吐出方向が変化する。例えばノズル51cの先端(吐出口)がその上端に対して径方向外側に位置するように、ノズル51cを傾斜させると、その吐出方向がより径方向外側に傾斜する。これによっても、着液位置PL1を径方向外側に移動させることができる。