特許法第30条第2項適用 埼玉県川越市大字小室566番地6、令和4年6月9日着工倉沢建設株式会社のウェブサイト、http://kurasawa-const.com、令和4年9月26日掲載金子弘行のFacebook、https://www.facebook.com/kaneko.hiroyuki、令和5年1月26日掲載倉沢延寿のFacebook、https://www.facebook.com/nobuhisa.kurasawa、令和5年2月7日掲載
建築の現場では分業によって施工されるので、本来、鉄骨は鉄骨とび職人が、木質の耐力壁(耐震壁)等は大工が、それぞれ作業を行う。しかしながら、特許文献1に記載の建物が有する耐力壁は、引きボルト及びボルトによって鉄骨に直接接合されるので、施工に際し、鉄骨及び木造の知識や経験が必要となる。このため、鉄骨とび職人及び大工が共同で施工する必要があるが、共同で施工する場合、施工の責任の所在が不明確になることが考えられる。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、施工の責任の所在を明確にした耐力壁及び建物を提供することを目的とする。
(1)本発明は、左右一対の柱(例えば、後述する左右一対の柱3,4)、上方の鉄骨造梁(例えば、後述する鉄骨造梁5)、及び下方の鉄筋コンクリート造梁(例えば、後述する鉄筋コンクリート造梁6)で構成された矩形枠状の鉄骨造の架構(例えば、後述する架構2A)内に設けられ、前記鉄骨造梁及び前記鉄筋コンクリート造梁の各々に対して、左右各々の第1接合機構(例えば、後述する第1接合機構8)、及び前記左右各々の第1接合機構の間に位置する第2接合機構(例えば、後述する第2接合機構9)を介して接合される矩形状の木質の耐力壁(例えば、後述する耐力壁7)であって、前記左右各々の第1接合機構は、それぞれ、前記耐力壁に鉛直に組み込まれた一つの引きボルト(例えば、後述する引きボルト11)と、前記一つの引きボルトで前記耐力壁に固定された第1壁側金物(例えば、後述する第1壁側金物12)と、前記鉄骨造梁に溶接され又は第1アンカーボルト(例えば、後述する第1アンカーボルト17)で前記鉄筋コンクリート造梁に固定され、かつ、複数の第1接合ボルト(例えば、後述する第1接合ボルト16)で前記第1壁側金物に接合された第1架構側金物(例えば、後述する第1架構側金物13)と、を有し、前記第2接合機構は、複数の固定ボルトで前記耐力壁に固定された第2壁側金物(例えば、後述する第2壁側金物21)と、前記鉄骨造梁に溶接され又は第2アンカーボルト(例えば、後述する第2アンカーボルト24)で前記鉄筋コンクリート造梁に固定され、かつ、一つの第2接合ボルト(例えば、後述する第2接合ボルト23)で前記第2壁側金物に接合された第2架構側金物(例えば、後述する第2架構側金物22)と、を有している耐力壁である。
本発明によれば、耐力壁を製造する工場において、耐力壁に第1壁側金物を引きボルトで仮固定しておくと共に、耐力壁に第2壁側金物を固定ボルトで仮固定しておき、また、鉄骨を製造する工場において、鉄骨造梁に第1架構側金物及び第2架構側金物を溶接しておくことで、建築の現場では、鉄筋コンクリート造梁に対して、第1架構側金物を第1アンカーボルトで、第2架構側金物を第2アンカーボルトでそれぞれ固定してから、第1壁側金物を第1架構側金物に第1接合ボルトで接合すると共に、第2壁側金物を第2架構側金物に第2接合ボルトで接合するだけで、耐力壁を鉄骨造の架構内に設置することができる。このため、建築の現場では、鉄骨の知識や経験に基づいて、鉄骨とび職人が単独で施工することができる。
また、本発明によれば、第1接合機構として、引きボルトで耐力壁に固定された第1壁側金物が、鉄骨造梁に溶接され又は第1アンカーボルトで鉄筋コンクリート造梁に固定された第1架構側金物に複数の第1接合ボルトで接合され、また、第2接合機構として、固定ボルトで耐力壁に固定された第2壁側金物が、鉄骨造梁に溶接され又は第2アンカーボルトで鉄筋コンクリート造梁に固定された第2架構側金物に一つの第2接合ボルトで接合されるので、地震時に生じる耐力壁の曲げを、第1接合機構を介して鉄骨造の架構へ伝達すると共に、地震時に生じる耐力壁のせん断力を、第2接合機構を介して鉄骨造の架構へ伝達することができ、結果として、建物の耐震性を向上させることができる。
また、本発明によれば、第1接合機構として、引きボルトで耐力壁に固定された第1壁側金物が、鉄骨造梁に溶接され又は第1アンカーボルトで鉄筋コンクリート造梁に固定された第1架構側金物に複数の第1接合ボルトで接合されるので、耐力壁は、地震時に引きボルトが伸びることにより鉄骨造の架構の層間変形に追従し、地震後に戻る復元力特性を有する。このため、本発明によれば、鉄骨造の架構の高い変形性能を維持した状態で、地震時の層間変形角を小さく抑えることができ、結果として、地震時の変形を抑制でき、損傷低減に寄与する。
具体的に、本発明によれば、中地震時において、耐力壁が建物を元の状態に戻す働きをするため、建物の揺れを小さく抑えることができ、残留する損傷も少なくすることができる。また、本発明によれば、仮に、大地震時に耐力壁が損傷した場合であっても、容易に交換することができ、交換することで元の耐震性を復活させることができ、将来の大地震にも備えることができる。
(2)本発明はまた、前記耐力壁の下方に固定された前記第2壁側金物は、前記第2接合ボルトが通されるボルト孔として、相対的に縦に長い長孔(例えば、後述する長孔21a)を有している上記(1)に記載の耐力壁である。
本発明によれば、耐力壁の下方に固定された第2壁側金物が、第2接合ボルトが通されるボルト孔として、相対的に横よりも縦に長い長孔を有しているので、多少の施工誤差がある場合であっても、第2壁側金物を第2架構側金物に容易に接合することができる。
(3)本発明はまた、前記耐力壁の下方に固定された前記第1壁側金物は、前記第1接合ボルトが通されるボルト孔として、相対的に横に長い長孔(例えば、後述する長孔12a)を有している上記(1)に記載の耐力壁である。
本発明によれば、耐力壁の下方に固定された第1壁側金物が、第1接合ボルトが通されるボルト孔として、相対的に縦よりも横に長い長孔を有しているので、多少の施工誤差がある場合であっても、第1壁側金物を第1架構側金物に容易に接合することができる。
(4)本発明はまた、前記鉄筋コンクリート造梁に対して前記耐力壁を接合させる前記第1接合機構は、前記耐力壁、及び前記耐力壁の下方に固定された前記第1壁側金物の間に介在して、該第1壁側金物の高さ方向の位置を調整する鋼板(例えば、後述する鋼板19)を有している上記(1)に記載の耐力壁である。
本発明によれば、鉄筋コンクリート造梁に対して耐力壁を接合させる第1接合機構が、耐力壁、及び耐力壁の下方に固定された第1壁側金物の間に介在して、当該第1壁側金物の高さ方向の位置を調整する鋼板を有しているので、多少の施工誤差がある場合であっても、第1壁側金物を第1架構側金物に容易に接合することができる。
(5)本発明はまた、直交集成板である上記(1)に記載の耐力壁である。
本発明によれば、耐力壁が、コンクリートに匹敵する強度を有する直交集成板であるので、建物の耐震性を向上させることができる。
(6)本発明はまた、左右一対の柱(例えば、後述する左右一対の柱3,4)及び上下一対の鉄骨造梁(例えば、後述する上下一対の鉄骨造梁5,27)で構成された矩形枠状の鉄骨造の架構(例えば、後述する架構2B)内に設けられ、前記上下一対の鉄骨造梁の各々に対して、左右各々の第1接合機構(例えば、後述する第1接合機構8)、及び前記左右各々の第1接合機構の間に位置する第2接合機構(例えば、後述する第2接合機構9)を介して接合される矩形状の木質の耐力壁(例えば、後述する耐力壁7)であって、前記左右各々の第1接合機構は、それぞれ、前記耐力壁に鉛直に組み込まれた一つの引きボルト(例えば、後述する引きボルト11)と、前記一つの引きボルトで前記耐力壁に固定された第1壁側金物(例えば、後述する第1壁側金物12)と、前記鉄骨造梁に溶接され、かつ、前記複数の第1接合ボルト(例えば、後述する第1接合ボルト16)で前記第1壁側金物に接合された第1架構側金物(例えば、後述する第1架構側金物13)と、を有し、前記第2接合機構は、複数の固定ボルトで前記耐力壁に固定された第2壁側金物(例えば、後述する第2壁側金物21)と、前記鉄骨造梁に溶接され、かつ、一つの第2接合ボルト(例えば、後述する第2接合ボルト23)で前記第2壁側金物に接合された第2架構側金物(例えば、後述する第2架構側金物22)と、を有している耐力壁である。
本発明によれば、耐力壁を製造する工場において、耐力壁に第1壁側金物を引きボルトで仮固定しておくと共に、耐力壁に第2壁側金物を固定ボルトで仮固定しておき、また、鉄骨を製造する工場において、上下一対の鉄骨造梁の各々に第1架構側金物及び第2架構側金物を溶接しておくことで、建築の現場では、第1壁側金物を第1架構側金物に第1接合ボルトで接合すると共に、第2壁側金物を第2架構側金物に第2接合ボルトで接合するだけで、耐力壁を鉄骨造の架構内に設置することができる。このため、建築の現場では、鉄骨の知識や経験に基づいて、鉄骨とび職人が単独で施工することができる。
また、本発明によれば、第1接合機構として、引きボルトで耐力壁に固定された第1壁側金物が、鉄骨造梁に溶接された第1架構側金物に複数の第1接合ボルトで接合され、また、第2接合機構として、固定ボルトで耐力壁に固定された第2壁側金物が、鉄骨造梁に溶接された第2架構側金物に一つの第2接合ボルトで接合されるので、地震時に生じる耐力壁の曲げを、第1接合機構を介して鉄骨造の架構へ伝達すると共に、地震時に生じる耐力壁のせん断力を、第2接合機構を介して鉄骨造の架構へ伝達することができ、結果として、建物の耐震性を向上させることができる。
また、本発明によれば、第1接合機構として、引きボルトで耐力壁に固定された第1壁側金物が、鉄骨造梁に溶接された第1架構側金物に複数の第1接合ボルトで接合されるので、耐力壁は、地震時に引きボルトが伸びることにより鉄骨造の架構の層間変形に追従し、地震後に戻る復元力特性を有する。このため、本発明によれば、鉄骨造の架構の高い変形性能を維持した状態で、地震時の層間変形角を小さく抑えることができ、結果として、地震時の変形を抑制でき、損傷低減に寄与する。
具体的に、本発明によれば、中地震時において、耐力壁が建物を元の状態に戻す働きをするため、建物の揺れを小さく抑えることができ、残留する損傷も少なくすることができる。また、本発明によれば、仮に、大地震時に耐力壁が損傷した場合であっても、容易に交換することができ、交換することで元の耐震性を復活させることができ、将来の大地震にも備えることができる。
(7)本発明はまた、前記耐力壁の下方に固定された前記第2壁側金物は、前記第2接合ボルトが通されるボルト孔として、相対的に縦に長い長孔(例えば、後述する長孔21a)を有している上記(6)に記載の耐力壁である。
本発明によれば、耐力壁の下方に固定された第2壁側金物が、第2接合ボルトが通されるボルト孔として、相対的に横よりも縦に長い長孔を有しているので、多少の施工誤差がある場合であっても、第2壁側金物を第2架構側金物に容易に接合することができる。
(8)本発明はまた、前記耐力壁の下方に固定された前記第1壁側金物は、前記第1接合ボルトが通されるボルト孔として、相対的に横に長い長孔(例えば、後述する長孔12a)を有している上記(6)に記載の耐力壁である。
本発明によれば、耐力壁の下方に固定された第1壁側金物が、第1接合ボルトが通されるボルト孔として、相対的に縦よりも横に長い長孔を有しているので、多少の施工誤差がある場合であっても、第1壁側金物を第1架構側金物に容易に接合することができる。
(9)本発明はまた、前記上下一対の鉄骨造梁のうち下方の鉄骨造梁に対して前記耐力壁を接合させる第1接合機構は、前記耐力壁、及び前記耐力壁の下方に固定された前記第1壁側金物の間に介在して、該第1壁側金物の高さ方向の位置を調整する鋼板(例えば、後述する鋼板19)を有している上記(6)に記載の耐力壁である。
本発明によれば、上下一対の鉄骨造梁のうち下方の鉄骨造梁に対して耐力壁を接合させる第1接合機構が、耐力壁、及び耐力壁の下方に固定された第1壁側金物の間に介在して、当該第1壁側金物の高さ方向の位置を調整する鋼板を有しているので、多少の施工誤差がある場合であっても、第1壁側金物を第1架構側金物に容易に接合することができる。
(10)本発明はまた、直交集成板である上記(6)に記載の耐力壁である。
本発明によれば、耐力壁が、コンクリートに匹敵する強度を有する直交集成板であるので、建物の耐震性を向上させることができる。
(11)本発明はまた、上記(1)~(10)のいずれかに記載の耐力壁を備えている建物である。
本発明によれば、耐力壁を製造する工場において、耐力壁に第1壁側金物を引きボルトで仮固定しておくと共に、耐力壁に第2壁側金物を固定ボルトで仮固定しておき、また、鉄骨を製造する工場において、鉄骨造梁に第1架構側金物及び第2架構側金物を溶接しておくことで、建築の現場では、下方に鉄筋コンクリート造梁がある場合には、鉄筋コンクリート造梁に対して、第1架構側金物を第1アンカーボルトで、第2架構側金物を第2アンカーボルトでそれぞれ固定してから、下方に鉄骨造梁がある場合には、そのまま、第1壁側金物を第1架構側金物に第1接合ボルトで接合すると共に、第2壁側金物を第2架構側金物に第2接合ボルトで接合するだけで、耐力壁を鉄骨造の架構内に設置することができる。このため、建築の現場では、鉄骨の知識や経験に基づいて、鉄骨とび職人が単独で施工することができる。
また、本発明によれば、第1接合機構として、引きボルトで耐力壁に固定された第1壁側金物が、鉄骨造梁に溶接され又は第1アンカーボルトで鉄筋コンクリート造梁に固定された第1架構側金物に複数の第1接合ボルトで接合され、また、第2接合機構として、固定ボルトで耐力壁に固定された第2壁側金物が、鉄骨造梁に溶接され又は第2アンカーボルトで鉄筋コンクリート造梁に固定された第2架構側金物に一つの第2接合ボルトで接合されるので、地震時に生じる耐力壁の曲げを、第1接合機構を介して鉄骨造の架構へ伝達すると共に、地震時に生じる耐力壁のせん断力を、第2接合機構を介して鉄骨造の架構へ伝達することができ、結果として、建物の耐震性を向上させることができる。
また、本発明によれば、第1接合機構として、引きボルトで耐力壁に固定された第1壁側金物が、鉄骨造梁に溶接され又は第1アンカーボルトで鉄筋コンクリート造梁に固定された第1架構側金物に複数の第1接合ボルトで接合されるので、耐力壁は、地震時に引きボルトが伸びることにより鉄骨造の架構の層間変形に追従し、地震後に戻る復元力特性を有する。このため、本発明によれば、鉄骨造の架構の高い変形性能を維持した状態で、地震時の層間変形角を小さく抑えることができ、結果として、地震時の変形を抑制でき、損傷低減に寄与する。
具体的に、本発明によれば、中地震において、耐力壁が建物を元の状態に戻す働きをするため、建物の揺れを小さく抑えることができ、残留する損傷も少なくすることができる。また、本発明によれば、仮に、大地震時に耐力壁が損傷した場合であっても、容易に交換することができ、交換することで元の耐震性を復活させることができ、将来の大地震にも備えることができる。
上記(1)~(10)に記載の耐力壁、及び上記(11)に記載の建物によれば、施工の責任の所在を明確にすることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る建物1(図1~図3、及び図6~図8参照)の架構2A(図1~図3参照),2B(図6~図8参照)及び耐力壁7(図1~図8参照)について詳細に説明する。
[第1実施形態]まず、図1~図5を用いて、第1実施形態に係る建物1の1階の架構2A及び耐力壁7の構成について説明する。図1は、建物1の1階の架構2A及び耐力壁7を示す正面図である。図2は、図1の矢印II-II方向に視た断面図である。図3は、図1の矢印III-III方向に視た断面図である。図4は、鋼板19を介して耐力壁7の下方に固定された第1壁側金物12を示す正面図である。図5は、耐力壁7の下方に固定された第2壁側金物21を示す正面図である。
図1~図3に示すように、建物1の1階の架構2Aは、左右一対の柱3,4、上方の鉄骨造梁5、及び下方の鉄筋コンクリート造梁6で構成された矩形枠状の鉄骨造である。この架構2Aは、矩形状の木質の耐力壁7を活用して耐震化を実現している。耐力壁7は、直交集成板(CLT:Cross laminated timber、クロス・ラミネーティド・ティンバー)であることが好ましいが、木質系であれば、直交集成板ではなく集成材や合板などであってもよい。この耐力壁7は、架構2A内に設けられ、鉄骨造梁5及び鉄筋コンクリート造梁6の各々に対して、左右各々の第1接合機構8、及び左右各々の第1接合機構8の間に位置する第2接合機構9を介して接合される。
図1及び図2に示す左右各々の第1接合機構8は、それぞれ、一つの引きボルト11と、第1壁側金物12と、第1架構側金物13と、金属板14と、ナット15と、複数の第1接合ボルト16と、を有している。耐力壁7を鉄筋コンクリート造梁6に接合する左右各々の第1接合機構8にあっては、更に、第1アンカーボルト17と、ナット18と、を有している。また、耐力壁7を鉄筋コンクリート造梁6に接合する左右各々の第1接合機構8にあっては、第1壁側金物12の高さ方向の位置を調整する必要がある場合には、更に、鋼板19(図4参照)を有している。
一つの引きボルト11は、耐力壁7に鉛直に組み込まれ、第1壁側金物12を耐力壁7に固定する。この引きボルト11は、第1壁側金物12が設けられた耐力壁7の上端又は下端から、耐力壁7に鉛直に形成された引きボルト孔(図示省略)に鉛直に通されていることで、当該引きボルト11の先端が耐力壁7に形成された貫通口7aに到達して、貫通口7aに設けられた金属板14を介してナット15で締め付けられている。貫通口7aは、耐力壁7の表面から裏面に貫通する略立方体形状の空洞であり、当該貫通口7aには、引きボルト11の先端、金属板14及びナット15が配置されている。
第1壁側金物12は、一つの引きボルト11で耐力壁7の上端又は下端に固定され、かつ、複数の第1接合ボルト16で第1架構側金物13に接合されている。図4に示すように、耐力壁7の下方に固定された第1壁側金物12は、第1接合ボルト16(図1及び図2参照)が通されるボルト孔として、相対的に縦よりも横に長い長孔12aを有している。
図1及び図2に戻って説明する。耐力壁7を鉄骨造梁5に接合する左右各々の第1接合機構8において、第1架構側金物13は、鉄骨造梁5に溶接され、かつ、複数の第1接合ボルト16で第1壁側金物12に接合されている。
耐力壁7を鉄筋コンクリート造梁6に接合する左右各々の第1接合機構8において、第1架構側金物13は、第1アンカーボルト17で鉄筋コンクリート造梁6に固定され、かつ、複数の第1接合ボルト16で第1壁側金物12に接合されている。
金属板14は、耐力壁7に形成された貫通口7aの上面又は下面に設けられることで、引きボルト11を締め付けているナット15と貫通口7aの上面又は下面との間に介在する。この金属板14は、座金として機能する。
ナット15は、耐力壁7に形成された貫通口7aに設けられ、引きボルト11を締め付けていることで、第1壁側金物12を耐力壁7に固定している。
複数の第1接合ボルト16は、第1壁側金物12と第1架構側金物13とを接合している。
第1アンカーボルト17は、鉄筋コンクリート造梁6に鉛直に埋め込まれていると共に、当該第1アンカーボルト17の先端が鉄筋コンクリート造梁6から鉛直に突出している。この第1アンカーボルト17は、ナット18が締め付けられていることで、第1架構側金物13を鉄筋コンクリート造梁6に固定している。
ナット18は、第1アンカーボルト17を締め付けていることで、第1架構側金物13を鉄筋コンクリート造梁6に固定している。
図4に示すように、鋼板19は、耐力壁7、及び耐力壁7の下方に固定された第1壁側金物12の間に介在して、当該第1壁側金物12の高さ方向の位置を調整する。ただし、鋼板19は、必須の構成要素ではなく、状況に応じてその有無及びその厚みが決定される。
図1及び図3に戻って説明する。第2接合機構9は、第2壁側金物21と、第2架構側金物22と、複数の固定ボルト(図示省略)と、一つの第2接合ボルト23と、を有している。耐力壁7を鉄筋コンクリート造梁6に接合する第2接合機構9にあっては、更に、第2アンカーボルト24と、ナット25と、を有している。
第2壁側金物21は、複数の固定ボルト(図示省略)で耐力壁7の上端又は下端に固定され、かつ、第2接合ボルト23で第2架構側金物22に接合されている。図5に示すように、耐力壁7の下方に固定された第2壁側金物21は、第2接合ボルト23(図1及び図3参照)が通されるボルト孔として、相対的に横よりも縦に長い長孔21aを有している。
図1及び図3に戻って説明する。耐力壁7を鉄骨造梁5に接合する第2接合機構9において、第2架構側金物22は、鉄骨造梁5に溶接され、かつ、一つの第2接合ボルト23で第2壁側金物21に接合されている。
耐力壁7を鉄筋コンクリート造梁6に接合する第2接合機構8において、第2架構側金物22は、第2アンカーボルト24で鉄筋コンクリート造梁6に固定され、かつ、一つの第2接合ボルト23で第2壁側金物21に接合されている。
一つの第2接合ボルト23は、第2壁側金物21と第2架構側金物22とを接合している。
第2アンカーボルト24は、鉄筋コンクリート造梁6に鉛直に埋め込まれていると共に、当該第2アンカーボルト24の先端が鉄筋コンクリート造梁6から鉛直に突出している。この第2アンカーボルト24は、ナット25が締め付けられていることで、第2架構側金物22を鉄筋コンクリート造梁6に固定している。
ナット25は、第2アンカーボルト24を締め付けていることで、第2架構側金物22を鉄筋コンクリート造梁6に固定している。
このように、建物1及び耐力壁7によれば、耐力壁7を製造する工場において、耐力壁7に第1壁側金物12を引きボルト11で仮固定しておくと共に、耐力壁7に第2壁側金物21を固定ボルト(図示省略)で仮固定しておき、また、鉄骨を製造する工場において、鉄骨造梁5に第1架構側金物13及び第2架構側金物22を溶接しておくことで、建築の現場では、鉄筋コンクリート造梁6に対して、第1架構側金物13を第1アンカーボルト17で、第2架構側金物22を第2アンカーボルト24でそれぞれ固定してから、第1壁側金物12を第1架構側金物13に第1接合ボルト16で接合すると共に、第2壁側金物21を第2架構側金物22に第2接合ボルト23で接合するだけで、耐力壁7を鉄骨造の架構2A内に設置することができる。このため、建築の現場では、鉄骨の知識や経験に基づいて、鉄骨とび職人が単独で施工することができる。これにより、施工の責任の所在を明確にすることができる。
また、建物1及び耐力壁7によれば、第1接合機構8として、引きボルト11で耐力壁7に固定された第1壁側金物12が、鉄骨造梁5に溶接され又は第1アンカーボルト17で鉄筋コンクリート造梁6に固定された第1架構側金物13に複数の第1接合ボルト16で接合され、また、第2接合機構9として、固定ボルト(図示省略)で耐力壁7に固定された第2壁側金物21が、鉄骨造梁5に溶接され又は第2アンカーボルト24で鉄筋コンクリート造梁6に固定された第2架構側金物22に一つの第2接合ボルト23で接合されるので、地震時に生じる耐力壁7の曲げを、第1接合機構8を介して鉄骨造の架構2Aへ伝達すると共に、地震時に生じる耐力壁7のせん断力を、第2接合機構9を介して鉄骨造の架構2Aへ伝達することができ、結果として、建物1の耐震性を向上させることができる。
また、建物1及び耐力壁7によれば、第1接合機構8として、引きボルト11で耐力壁7に固定された第1壁側金物12が、鉄骨造梁5に溶接され又は第1アンカーボルト17で鉄筋コンクリート造梁6に固定された第1架構側金物13に複数の第1接合ボルト16で接合されるので、耐力壁7は、地震時に引きボルト11が伸びることにより鉄骨造の架構2Aの層間変形に追従し、地震後に戻る復元力特性を有する。このため、建物1及び耐力壁7によれば、鉄骨造の架構2Aの高い変形性能を維持した状態で、地震時の層間変形角を小さく抑えることができ、結果として、地震時の変形を抑制でき、損傷低減に寄与する。
具体的に、建物1及び耐力壁7によれば、中地震において、耐力壁7が建物1を元の状態に戻す働きをするため、建物1の揺れを小さく抑えることができ、残留する損傷も少なくすることができる。また、建物1及び耐力壁7によれば、仮に、大地震時に耐力壁7が損傷した場合であっても、容易に交換することができ、交換することで元の耐震性を復活させることができ、将来の大地震にも備えることができる。
また、耐力壁7によれば、耐力壁7の下方に固定された第2壁側金物21が、第2接合ボルト23が通されるボルト孔として、相対的に横よりも縦に長い長孔21aを有しているので、多少の施工誤差がある場合であっても、第2壁側金物21を第2架構側金物22に容易に接合することができる。
また、耐力壁7によれば、耐力壁7の下方に固定された第1壁側金物12が、第1接合ボルト16が通されるボルト孔として、相対的に縦よりも横に長い長孔12aを有しているので、多少の施工誤差がある場合であっても、第1壁側金物12を第1架構側金物13に容易に接合することができる。
また、耐力壁7によれば、鉄筋コンクリート造梁6に対して耐力壁7を接合させる第1接合機構8が、耐力壁7、及び耐力壁7の下方に固定された第1壁側金物12の間に介在して、当該第1壁側金物12の高さ方向の位置を調整する鋼板19を有している場合には、多少の施工誤差があるときであっても、第1壁側金物12を第1架構側金物13に容易に接合することができる。
また、耐力壁7によれば、耐力壁7が、コンクリートに匹敵する強度を有する直交集成板である場合には、建物1の耐震性を向上させることができる。
なお、建物1及び耐力壁7は、設計及び施工を標準化することで、たくさんの設計者や施工者に普及できることを目指したものである。施工のポイントは、異なる力(曲げモーメント、せん断力)に対応し、かつ、異なる構造形式(コンクリート、鉄骨、木質系)に対応した接合を、金物(プレート)と金物(プレート)をボルト(HTB:high tension bolt、ハイテンションボルト)で締め付ける作業で標準化したことであり、鉄骨とび職人が、日常、作業し慣れている手順で組み立てることができ、早くて安く施工することができる。
[第2実施形態]次に、図6~図8を用いて、第2実施形態に係る建物1の2階以上の階の架構2B及び耐力壁7の構成について説明する。図6は、建物1の2階以上の階の架構2B及び耐力壁7を示す正面図である。図7は、図6の矢印VII-VII方向に視た断面図である。図8は、図6の矢印VIII-VIII方向に視た断面図である。
なお、ここでは、第2実施形態に係る建物1の架構2B及び耐力壁7の特徴部分のみを説明し、第1実施形態に係る建物1の架構2A及び耐力壁7と同様の構成、作用及び効果についての説明は適宜省略する。
図6~図8に示すように、建物1の2階以上の階の架構2Bは、左右一対の柱3,4及び上下一対の鉄骨造梁5,27で構成された矩形枠状の鉄骨造である。耐力壁7は、架構2B内に設けられ、上下一対の鉄骨造梁5,27の各々に対して、左右各々の第1接合機構8、及び左右各々の第1接合機構8の間に位置する第2接合機構9を介して接合される。
図4に示すように、耐力壁7を下方の鉄骨造梁27(図6及び図7参照)に接合する左右各々の第1接合機構8にあっては、第1壁側金物12の高さ方向の位置を調整する必要がある場合には、鋼板19を有している。耐力壁7の下方に固定された第1壁側金物12は、第1接合ボルト16(図6及び図7参照)が通されるボルト孔として、相対的に縦よりも横に長い長孔12aを有している。
図5に示すように、耐力壁7の下方に固定された第2壁側金物21は、第2接合ボルト23(図6及び図8参照)が通されるボルト孔として、相対的に横よりも縦に長い長孔21aを有している。
図6及び図7に戻って説明する。第1架構側金物13は、鉄骨造梁5,27に溶接され、かつ、複数の第1接合ボルト16で第1壁側金物12に接合されている。
図6及び図8に戻って説明する。第2架構側金物22は、鉄骨造梁5,27に溶接され、かつ、一つの第2接合ボルト23で第2壁側金物21に接合されている。
このように、建物1及び耐力壁7によれば、耐力壁7を製造する工場において、耐力壁7に第1壁側金物12を引きボルト11で仮固定しておくと共に、耐力壁7に第2壁側金物21を固定ボルト(図示省略)で仮固定しておき、また、鉄骨を製造する工場において、鉄骨造梁5,27に第1架構側金物13及び第2架構側金物22を溶接しておくことで、建築の現場では、第1壁側金物12を第1架構側金物13に第1接合ボルト16で接合すると共に、第2壁側金物21を第2架構側金物22に第2接合ボルト23で接合するだけで、耐力壁7を鉄骨造の架構2B内に設置することができる。このため、鉄骨の知識や経験に基づいて、鉄骨とび職人が単独で施工することができる。これにより、施工の責任の所在を明確にすることができる。
また、建物1及び耐力壁7によれば、第1接合機構8として、引きボルト11で耐力壁7に固定された第1壁側金物12が、鉄骨造梁5,27に溶接された第1架構側金物13に複数の第1接合ボルト16で接合され、また、第2接合機構9として、固定ボルト(図示省略)で耐力壁7に固定された第2壁側金物21が、鉄骨造梁5,27に溶接された第2架構側金物22に一つの第2接合ボルト23で接合されるので、地震時に生じる耐力壁7の曲げを、第1接合機構8を介して鉄骨造の架構2Bへ伝達すると共に、地震時に生じる耐力壁7のせん断力を、第2接合機構9を介して鉄骨造の架構2Bへ伝達することができ、結果として、建物1の耐震性を向上させることができる。
また、建物1及び耐力壁7によれば、第1接合機構8として、引きボルト11で耐力壁7に固定された第1壁側金物12が、鉄骨造梁5,27に溶接された第1架構側金物13に複数の第1接合ボルト16で接合されるので、耐力壁7は、地震時に引きボルト11が伸びることにより鉄骨造の架構2Bの層間変形に追従し、地震後に戻る復元力特性を有する。このため、建物1及び耐力壁7によれば、鉄骨造の架構2Bの高い変形性能を維持した状態で、地震時の層間変形角を小さく抑えることができ、結果として、地震時の変形を抑制でき、損傷低減に寄与する。
具体的に、建物1及び耐力壁7によれば、中地震において、耐力壁7が建物1を元の状態に戻す働きをするため、建物1の揺れを小さく抑えることができ、残留する損傷も少なくすることができる。また、建物1及び耐力壁7によれば、仮に、大地震時に耐力壁7が損傷した場合であっても、容易に交換することができ、交換することで元の耐震性を復活させることができ、将来の大地震にも備えることができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。すなわち、各構成の位置・大きさ・長さ・数量・形状・材質などは適宜変更できる。
例えば、上記実施形態では、耐力壁7の下方に固定された第2壁側金物21が、第2接合ボルト23が通されるボルト孔として、相対的に横よりも縦に長い長孔21aを有している場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、当該長孔は、耐力壁7の上方に固定された第2壁側金物21、鉄骨造梁5,27に溶接された第2架構側金物22、鉄筋コンクリート造梁6に固定された第2架構側金物22に有していてもよい。
また、上記実施形態では、耐力壁7の下方に固定された第1壁側金物12が、第1接合ボルト16が通されるボルト孔として、相対的に縦よりも横に長い長孔12aを有している場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、当該長孔は、耐力壁7の上方に固定された第1壁側金物12、鉄骨造梁5,27に溶接された第1架構側金物13、鉄筋コンクリート造梁6に固定された第1架構側金物13に有していてもよい。