以下、本開示による先行車車線変更推定方法及び先行車追従制御方法、先行車車線変更推定装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1~実施例4に基づいて説明する。
実施例1~実施例4における先行車車線変更推定方法及び先行車追従制御方法、先行車車線変更推定装置は、先行車追従機能を有する運転支援システム又は自動運転システムを搭載した車両に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「先行車追従コントローラの制御ブロック構成」、「先行車追従制御処理構成」に分けて説明する。
[先行車追従コントローラの制御ブロック構成(図1)]
先行車追従コントローラ10は、先行車追従機能を有し、図1に示すように、車線構造取得部11と、物体検出部12と、自車経路算出部13と、先々行車・先行車特定部14と、を備えている。さらに、先々行車車線変更検出部15と、車両挙動情報取得部16と、先行車挙動判断部17と、先行車意図推定部18と、追従対象判定部19と、自車経路生成部20と、車両制御部21と、を備えている。
ここで、「先行車追従機能」とは、下記(a)~(d)に述べるような制御内容により先行車追従制御(ACC:Adaptive Cruise Controlの略)を行い、ドライバのアクセル操作やブレーキ操作を支援する機能をいう。
(a) 先行車を検出しているときは、ドライバやシステムがセットした設定車速を上限とし、車速に応じた車間距離(=車間時間)を保つように車間制御を行う。
(b) 先行車を検出していないときは、設定車速で定速走行する。
(c) 先行車が停止したときは、先行車に続いて自車も停止する。
(d) 先行車が停止から発進したときは、ドライバ操作やシステム判断により停止状態を解除し、再び追従走行を開始する。
車線構造取得部11は、自車が走行する前方の車線構造を取得し、取得した車線構造情報を自車経路算出部13へ出力する。ここで、車線構造取得センサとしては、運転支援システムや自動運転システムにおいて既知のカメラを用い、カメラからの撮像データに基づく車線認識技術を用いる。
ここで、カメラでは、車線構造(レーンマーカー、停止線、横断歩道、等)以外に、自車線上物体(先行車、先々行車、後続車、等)・自車線外物体(道路構造物、停止車両、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車、等)・道路標識(制限速度、等)を検知可能である。なお、単眼カメラであってもステレオカメラであっても良いが、ステレオカメラを用いると対象物までの距離を比較的容易に計測することが可能となる。
物体検出部12は、自車周囲の車両を検出し、その位置、姿勢(向き)、縦速度(車速)、横速度(車線幅方向における速度)を取得する。物体検出方法としては、車線構造取得部11で車線構造を認識するためのカメラを搭載しているため、ライダーからの点群データとカメラからの撮像データに基づく画像認識技術とを融合させ、物体を検出・追跡できるフュージョンセンサを用いる。そして、先々行車・先行車を特定するために周囲物体検出結果を先々行車・先行車特定部14に出力する。
ここで、「ライダー(「Lidar」:Light Detection and Rangingの略)」とは、パルス状に発光するレーザー照射に対する散乱光を測定し、自車線上物体・自車線外物体等の方向や距離の情報を点群データとして取得する測距センサである。なお、物体検出方法として、ライダーのみを用いる手法としても良いし、また、発射した電波の反射信号を受信して物体の方向や距離の情報を取得するミリ波レーダーとカメラを融合させたフュージョンセンサを用いても良い。
自車経路算出部13は、車線構造取得部11からの自車前方の車線構造に基づいて、自車が走行する経路を生成する。そして、先々行車・先行車を特定するために生成した自車走行経路の情報を先々行車・先行車特定部14に出力する。
先々行車・先行車特定部14は、車線構造取得部11からの車線構造情報と、自車経路算出部13からの自車走行経路とに基づいて、自車が走行している自車線上で自車前方を走行する先行車と、先行車の前方を走行する先々行車を特定する。そして、特定された先行車と先々行車の情報は、先々行車車線変更検出部15に出力する。なお、自車は、特定された先行車に追従するように先行車追従制御(ACC)により走行する。
先々行車車線変更検出部15は、先々行車・先行車特定部14により先行車と先々行車が特定されたことに基づいて、先行車の前方を走行する先々行車の車線変更動作を検出する。ここで、先々行車が減速すると共に自車線のレーンマーカー(隣接車線との車線境界を示す白線)に対して所定範囲内に近づいた位置関係になると、先々行車の車線変更動作有りと検出する。或いは、先々行車が減速すると共に自車線のレーンマーカーに対して所定速度以上の横速度で近づくと、先々行車の車線変更動作有りと検出する。なおここで、「車線変更動作」とは、実際に車線変更を行ったか否か(現在走行中の車線から隣接車線に進入したか否か)に関係なく、車線変更のための動作を意味する。
なお、先々行車、先行車、自車が直線上を走行しているときについても、先々行車が物体検出部12により検出できるシステムとしている。しかし、互いの大きさ関係や位置関係等により先々行車と特定できない場合が稀にある。よって、その場合は、先行車の前方位置で、先行車両よりも隣接車線側に新しい移動物体が検出されたら、先々行車の車線変更動作有りと検出してもよい。
車両挙動情報取得部16は、先々行車車線変更検出部15により先々行車の車線変更動作有りと検出されると、先々行車と先行車のそれぞれの車両挙動を示す車両挙動情報を取得する。ここで、実施例1での「車両挙動情報」は、先々行車と先行車のそれぞれの進行方向車両速度(縦速度)を示す車速情報であり、車両挙動情報取得部16は車速情報を取得する。車速情報は、先々行車と自車の相対車速及び自車速を用いて先々行車車速を取得し、先行車と自車の相対車速及び自車速を用いて先行車車速を取得する。
先行車挙動判断部17は、先々行車が車線変更動作を開始した後、車両挙動情報取得部16にて取得した先々行車の車両挙動情報(先々行車車速)と先行車の車両挙動情報(先行車速)の差が車両挙動判定閾値(車速判定閾値)以下であるか否かを判断する。即ち、先々行車車線変更検出部15で先々行車の車線変更が検出されたときには、先々行車の車線変更動作の開始をトリガーとし、先々行車と先行車との車両挙動の比較判断が開始される。なお、先々行車の車線変更が検出されない場合は、先行車のみを対象として先行車の挙動により車線変更を判定する手法が用いられる。
ここで、「車両挙動判定閾値(車速判定閾値)」は、車両挙動情報(車速情報)が類似性を示す許容範囲の値(予め実験等によって求めた、類似していると判定できる程度の許容範囲の値)に設定される。そして、先々行車の車両挙動情報と先行車の車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下になったか否かの比較判断は、先々行車が車線変更動作を開始した時刻から繰り返えされる。この比較判断終了タイミングは、先行車が最終的に車線変更する/直進する(車線変更しない)と推定されるまでの所要時間と、先々行車の車線変更動作開始時刻からの経過時間が設定時間に到達するまでの所要時間のうち、より早期に到達する時間までとされる。なお、「設定時間」は、例えば、先行車の横ずれ量に基づいて先行車単独で車線変更することを推定することが可能な予測時間に予め設定される。なお、以下では例えば「車線変更する可能性が高い」ことを「車線変更の可能性が高い」のように、「車線変更する」ことを単に「車線変更」と簡略化して記載する場合が有る。同様に、例えば「直進する可能性が高い」ことを「直進の可能性が高い」のように、「直進する」ことを単に「直進」と簡略化して記載する場合が有る。
先行車意図推定部18は、先行車挙動判断部17において車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下と判断されると、先行車は車線変更する(車線変更する可能性が有る)と一時判定する。ここで、先行車が車線変更するか否かの最終的な推定判定に際しては、比較判断の繰り返し処理により加算される推定評価値(車線変更の確信度、直進の確信度)の大きさが用いられる。
即ち、推定評価値として、車線変更する可能性の高さをあらわす車線変更の確信度を用いた場合は、車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下であると判断される毎に車線変更の確信度を加算する。そして、車線変更の確信度が閾値を超えると車線変更する可能性が高い、すなわち「先行車は車線変更する」と推定する。ここで、「車線変更の確信度の閾値」は、先行車が車線変更する可能性が高い領域に入ったことを示す値であって、先行車の車線変更による横移動量が所定量になる前に「先行車は車線変更する」と推定できる値に設定する。
また、推定評価値として、直進する(車線変更しない)可能性の高さをあらわす直進の確信度を用いた場合は、車両挙動情報の差が判定閾値を超えていると判断される毎に直進の確信度を加算する。そして、直進の確信度が閾値を超えると直進する可能性が高い、すなわち「先行車は直進する」と推定する。ここで、「直進の確信度の閾値」は、先行車が直進する可能性が高い領域に入ったことを示す値に設定される。
追従対象判定部19は、先行車意図推定部18から送られた先行車の車線変更/直進の推定結果によって、自車の追従対象を設定する。即ち、「先行車は車線変更する」と推定された場合は、そのときの先行車を追従対象から外し、「先行車は直進する(車線変更しない)」と推定された場合は、そのときの先行車を追従対象として保持する。
自車経路生成部20は、追従対象判定部19により判定された追従対象に応じて自車経路を更新する。即ち、「先行車は車線変更する」との推定に基づいて、そのときの先行車が追従対象から外れる場合は、車線変更する先行車と自車とが干渉しないように自車経路を生成して更新する。先行車が直進する場合は、先行車を追従するための自車経路を生成する。
車両制御部21は、自車経路生成部20により生成された自車経路に沿うと共に、先行車追従制御(ACC)にしたがって走行するように自車の駆動/制動/操舵の制御を行う。即ち、先行車が追従対象から外れる場合は、先行車追従制御での設定車速まで自車の車速を上昇させる加速走行になる。又、先行車が直進する場合は、先々行車が自車線外に逸脱したことで先行車が加速すると、先行車との車間時間を保ちながら自車の車速を上昇させる加速走行になる。
[先行車追従制御処理構成(図2)]
図2は、実施例1の先行車追従コントローラ10において車速情報を用いる先行車の車線変更推定に基づいて実行される先行車追従制御処理の流れを示す。以下、図2の各ステップについて説明する。
ステップS101では、先行車追従制御の開始、或いは、S102でのNOとの判断、或いは、S103でのNOとの判断、或いは、S115での確信度のクリアに続き、先行車追従制御を実行し、ステップS102へ進む。
ステップS102では、S101での先行車追従制御の実行に続き、先々行車と先行車が特定されたか否かを判断する。YES(先々行車と先行車が特定された)の場合はステップS103へ進み、NO(先々行車と先行車が特定されていない)の場合はステップS101へ戻る。
ステップS103では、S102での先々行車と先行車が特定されたとの判断に続き、先々行車の車線変更動作が検出されたか否かを判断する。YES(先々行車の車線変更動作検出)の場合はステップS104へ進み、NO(先々行車の車線変更動作非検出)の場合はステップS101へ戻る。ここで、「先々行車の車線変更動作検出」は、先々行車が減速すると共に横方向へ移動すると、位置判断や移動速度の判断により「先々行車の車線変更動作検出」と判断される。
ステップS104では、S103での先々行車の車線変更検出との判断、或いは、S109又はS113での確信度が閾値以下との判断に続き、先々行車と先行車の車速を取得し、ステップS106へ進む。
ステップS106では、S104での先々行車と先行車の車速取得に続き、先々行車と先行車の車速差(=車速差の絶対値)は所定閾値(=車速判定閾値)以下であるか否かを判断する。YES(車速差≦所定閾値)の場合はステップS107へ進み、NO(車速差>所定閾値)の場合はステップS111へ進む。
ステップS107では、S106での車速差≦所定閾値であるとの判断に続き、先行車は車線変更すると判定(判定時刻Tのみの一時判定)、すなわち先行車が車線変更する可能性が有ると判定してステップS108へ進む。
ステップS108では、S107での先行車の車線変更一時判定に続き、車線変更の確信度(すなわち車線変更する可能性)を予め定めた所定の確信度分だけ加算し、ステップS109へ進む。
ステップS109では、S108での車線変更の確信度加算に続き、車線変更の確信度が閾値を超えたか否か(すなわち、車線変更する可能性が所定の可能性以上か否か)を判断する。YES(車線変更の確信度>閾値)の場合はステップS110へ進み、NO(車線変更の確信度≦閾値)の場合はステップS104へ戻る。なお、ステップS109からステップS104へ戻る場合、車速差の比較判断開始からの経過時間が比較判断終了タイミングとして予め設定されている設定時間に到達していると、車速差の比較判断処理を止め、ステップS101へ戻る。
ステップS110では、S109での車線変更の確信度>閾値であるとの判断に続き、先行車は車線変更する(最終)と推定し、ステップS115へ進む。
ステップS111では、S106での車速差>所定閾値であるとの判断に続き、先行車は車線変更しない、すなわち、直進すると判定(判定時刻Tのみの一時判定)、ステップS112へ進む。
ステップS112では、S111での先行車の直進一時判定に続き、直進の確信度(すなわち車線変更しない可能性)を予め定めた所定の確信度分だけ加算し、ステップS113へ進む。
ステップS113では、S112での直進の確信度加算に続き、直進の確信度が閾値を超えたか否か(すなわち、車線変更しない可能性が所定の可能性以上か否か)を判断する。YES(直進の確信度>閾値)の場合はステップS114へ進み、NO(直進の確信度≦閾値)の場合はステップS104へ戻る。なお、ステップS113からステップS104へ戻る場合、車速差の比較判断開始からの経過時間が比較判断終了タイミングとして予め設定されている設定時間に到達していると、車速差の比較判断処理を止め、ステップS101へ戻る。
ステップS114では、S113での直進の確信度>閾値であるとの判断に続き、先行車は車線変更しない、すなわち直進する(最終)と推定し、ステップS115へ進む。
ステップS115では、S110での先行車は車線変更する(最終)との推定、或いは、S114での先行車は直進する(最終)との推定に続き、車線変更の確信度、又は、直進の確信度をクリアし、ステップS101へ戻る。
次に、「背景技術の課題及び課題解決方策」を説明する。そして、実施例1の作用を、「先行車の車線変更推定作用」、「先行車の直進推定作用」に分けて説明する。
[背景技術の課題及び課題解決方策(図3~図5)]
特開2016-43809号公報に開示されている背景技術においては、自車の走行予測経路に対する先行車のラップ率が判定値以下である場合に先行車が車線変更を行うことを推定している。このため、自車の走行予測経路に対する先行車の横位置が所定量以上変化しなければ、先行車が車線変更するか否かを推定することができない、という課題があった。
一方、先行車の前方であって、且つ、自車及び先行車が走行している自車線上を先々行車が走行している場合に、先々行車に引き続いて先行車が車線変更する場合がある。このような場合、自車前方の先行車及び先々行車の2台が車線変更することによって、自車線上には自車前方の長い距離に渡って先行車が存在しなくなるため、例えば、先行車が車線変更するか否かを早期に推定して自車を加速させたいという要望がある。
しかしながら、上記背景技術においては、先行車の横位置の変化量が所定量以上発生していない段階では先行車が車線変更するか否かを推定することができないため、先行車が車線変更するか否かを早期に推定して自車を加速させたいという要望に応えることができない。
例えば、図3(a)に示すように、自車が走行している自車線の前方に先行車が存在し、先行車の前方に右隣接車線に向かって車線変更を開始した先々行車が存在し、先々行車が向かう右隣接車線に信号待ちの停止車両が存在するシーンを想定する。このシーンにおいて、自車が直進する場合には、早期に先行車の車線変更を予測して先行車を回避したい。しかし、背景技術においては、先行車のずれ量が所定量になるまで(先行車の横位置の変化量が所定量以上発生するまで)は車線変更するか否か推定することができない。よって、先行車の車線幅方向ずれ量が所定量になるまでは先行車が先行車追従制御の対象として維持されることになる。このため、図3(b)に示すように、走行している自車が先行車の後方位置にて停止できるように急減速する必要があるし、先行車の後方位置にて停止した自車は、先行車が先行車追従制御の対象から外されるまでの間の停車待ち時間が生じる。
本発明者等は、上記課題と要望に対して、その解決手法を検証した結果、
(A) 先々行車に引き続いて先行車が車線変更する場合には、先々行車の車線変更挙動(車線変更動作)が先行車の車線変更挙動よりも早いタイミングで発生する。
(B) 先々行車に引き続いて先行車が車線変更する場合、先々行車と先行車の挙動が連動する関係にあり、応答遅れはあるものの挙動特性の類似性が高い。
ということを知見した。そして、先々行車の車線変更挙動(車線変更動作)をトリガーとし、先々行車と先行車の挙動特性の類似性を判定することにより、先行車が車線変更するか否かを早期に推定したいという要望に応えることができる点に着目した。
上記着目点に基づいて本開示は、自車が走行している自車線上で自車前方を走行する先行車が車線変更をするか否かを推定する先行車追従コントローラ10を備える。この先行車車線変更推定方法において、先行車追従コントローラ10は、先行車の前方を走行する先々行車の車線変更動作を検出する。先々行車と先行車のそれぞれの車両挙動を示す車両挙動情報を取得する。先々行車が車線変更動作を開始した後、先々行車の車両挙動情報と先行車の車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下であるか否かを判断する。車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下と判断されると、先行車は車線変更すると推定する、という課題解決方策を採用した。
即ち、上記ロジックによる先行車車線変更推定方法を採用することで、図4及び図5に示す作用効果を奏することができる。なお、以下の説明において、自車A、先行車B、先々行車C、停止車両D、自車線CL、左隣接車線LL、右隣接車線RL、自車線CLと左隣接車線LLのレーンマーカーLM、自車線CLと右隣接車線RLのレーンマーカーRMという。
まず、図4(a)に示すように、自車Aが走行している自車線CLの前方に先行車Bが存在し、先行車Bの前方に左隣接車線LLに向かって車線変更を開始した先々行車Cが存在し、先々行車Cが向かう左隣接車線LLに信号待ちの停止車両Dが存在するシーンを想定する。このシーンにおいて、自車Aが直進を予定する場合には、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、先々行車Cと先行車Bの車両挙動の差が車両挙動判定閾値以下と判断されると、先行車Bは車線変更すると推定される。つまり、先々行車Cが減速を伴って車線変更を開始し、先行車Bが先々行車Cに続いて減速すると、先行車Bが車線変更することを検出可能な程度の大きな車線幅方向のずれ量が発生しなくても車線変更することを推定することができる。
よって、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、車両挙動差収束条件が成立すると(すなわち、先々行車Cと先行車Bの車両挙動の差が車両挙動判定閾値以下と判断した場合に)先行車Bが車線変更すると判断して、先行車Bが自車Aにとっての先行車追従制御の対象から外されることになる。このため、図4(b)の実線矢印に示すように、走行している自車Aが先行車Bの右横をすり抜けるように自車経路を生成し、生成した自車経路に沿って走行することで、応答良く先行車Bを追い越すことができる。
次に、図5(a)に示すように、自車Aが走行している自車線CLの前方に先行車Bが存在し、先行車Bの前方に右隣接車線RLに向かって車線変更を開始した先々行車Cが存在し、先々行車Cが向かう右隣接車線RLに信号待ちの停止車両Dが存在するシーンを想定する。このシーンにおいて、自車Aが直進を予定する場合には、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、先々行車Cと先行車Bの車両挙動の差が車両挙動判定閾値以下と判断されると、先行車Bは車線変更すると推定される。つまり、先々行車Cが減速を伴って車線変更動作を開始し、先行車Bが先々行車Cに続いて減速すると、先行車Bが車線幅方向に車線変更することを検出可能な程度の大きな車線幅方向のずれ量が発生しなくても車線変更することを推定することができる。
よって、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、車両挙動差収束条件が成立すると(すなわち、先々行車Cと先行車Bの車両挙動の差が車両挙動判定閾値以下と判断した場合に)先行車Bが車線変更すると判断して、先行車Bは自車Aにとっての先行車追従制御の対象から外されることになる。このため、図5(b)に示すように、先行車Bがブレーキ減速をしたとしても自車Aの過剰な減速が抑えられるし、停車待ち時間を回避することが可能になる。さらに、左隣接車線LLを走行している他車や障害物等が存在しない場合には、図5(b)の破線矢印に示すように、自車Aが先行車Bの左横をすり抜けるように自車経路を生成し、生成した自車経路に沿って走行することで、先行車Bを追い越すことも可能である。
このように、先々行車Cの車線変更動作をトリガーとし、先々行車Cと先行車Bの挙動特性の類似性の有無を車両挙動情報の差により判定している。この結果、自車Aの前方を走行する先行車Bと先々行車Cが存在するシーンにおいて、先行車Bが車線変更動作を開始した後の早期タイミングにて先行車Bが車線変更するか否かを推定することができることになる。
[先行車の車線変更推定作用(図2、図6、図7)]
自車Aが先行車Bを追従対象として先行車追従制御にて走行している場合であって、先々行車Cと先行車Bが特定され、且つ、先々行車Cの車線変更動作が検出されると、図2のフローチャートにおいて、S101→S102→S103→S104→S106へと進む。S104では、先々行車Cと先行車Bの車速Vx1,Vx2が取得される。S106では、先々行車車速Vx1と先行車車速Vx2の車速差(=|Vx1-Vx2|)は車速判定閾値Vxth以下であるか否かが判断される。
先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更する場合、先々行車車速Vx1に対して先行車車速Vx2が収束するまでの短い区間は車速差が車速判定閾値Vxthを超えることで、S104→S106→S111→S112→S113へと進む流れが繰り返される。しかし、先々行車車速Vx1に対して先行車車速Vx2が収束すると車速差が車速判定閾値Vxth以下になり、S104→S106→S107→S108→S109へと進む流れが繰り返される。S107では、先行車Bが車線変更すると一時判定され、S108では、車線変更の確信度が加算される。次のS109では、車線変更の確信度が閾値を超えたか否かが判断される。
S104→S106→S107→S108→S109へと進む流れの繰り返しにより、S109にて車線変更の確信度>閾値であると判断されると、S109からS110へと進み、S110では、先行車Bは車線変更する(最終)と推定される。次のS115では、車線変更の確信度がクリアされ、S101へ戻り、先行車Bは車線変更するとの推定に基づいて先行車Bを自車Aの追従対象から外し、先行車追従制御(ACC)が実行される。なお、S104→S106→S107→S108→S109の処理はおおよそ50msec/サイクル程度で実行される。
ここで、図6(a)に示すように、先行車Bの前方に右隣接車線RLに向かって車線変更を開始した先々行車Cが存在している状態から、図6(b)に示すように、先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更を開始する状態へと移行するシーンを想定する。
図6に示すシーンにおいて、車線変更する先々行車Cの車速である先々行車車速Vx1の特性は、図7の細実線特性に示すように、車線変更動作開始と共に低下を開始する。そして、低下勾配を緩やかにしながら低下する。
一方、先々行車Cに引き続いて車線変更する先行車Bは、先々行車Cとの車間時間を保持するための車速調整を行う。つまり、先行車車速Vx2の特性は、図7の太実線特性に示すように、先々行車Cの先々行車車速Vx1が低下し始める時刻より少し遅れた車線変更開始時刻ts1から低下を開始する。なお、先行車Bは先々行車Cの後方につくために減速Gが強くなる(Vx2低下勾配>Vx1低下勾配となる)。そして、先行車Bの車線変更検出時刻ts2の前に先々行車車速Vx1の特性と交差し、その後、先行車Bの車線変更検出時刻ts2を過ぎると、先行車車速Vx2の低下勾配が緩やかになる。
このため、先行車Bの車線変更開始時刻ts1と先行車Bの車線変更検出時刻ts2との間の区間E1において、車速差(=|Vx1-Vx2|)が車速判定閾値Vxth以下に収束することになる。よって、車速収束経験を複数回繰り返すことで、この区間E1にて先行車Bは車線変更すると推定することができる。即ち、先々行車Cが減速を伴って車線変更動作を開始し、先行車Bが先々行車Cに続いて減速すると、先行車Bが車線幅方向に車線変更を検出可能な程度までの横ずれ量が発生する前に、先行車Bが車線変更すると推定できる。なおここで、例えば車速収束経験(S106でYES判断)を5回繰り返した場合に(車線変更の確信度が5回加算された場合に)車線変更の確信度が閾値を超える(S109でYES判断)と仮定する。この場合、最初の車速収束経験から先行車が車線変更すると判定されるまでの時間は、最短で50msec/サイクル×5サイクルの約250msecの極短時間で先行車Bが車線変更することを判定することができる。
[先行車の直進推定作用(図2、図8、図9)]
自車Aが先行車Bを追従対象として先行車追従制御にて走行している場合であって、先々行車Cと先行車Bが特定され、且つ、先々行車Cの車線変更動作が検出されると、図2のフローチャートにおいて、S101→S102→S103→S104→S106へと進む。S104では、先々行車Cと先行車Bの車速Vx1,Vx2が取得される。S106では、先々行車車速Vx1と先行車車速Vx2の車速差(=|Vx1-Vx2|)は車速判定閾値Vxth以下であるか否かが判断される。
先々行車Cは車線変更するが先行車Bは直進する場合、減速する先々行車車速Vx1に対して先行車車速Vx2との間で車速乖離幅が小さい短い区間は、車速差が車速判定閾値Vxth以下になる。このため、S104→S106→S107→S108→S109へと進む流れが繰り返される。しかし、減速する先々行車車速Vx1に対して直進する先行車車速Vx2との間で車速乖離幅が大きくなって車速差が車速判定閾値Vxthを超えると、その後、S104→S106→S111→S112→S113へと進む流れが繰り返される。S111では、先行車Bが直進する、すなわち車線変更しないと一時判定され、S112では、直進の確信度が加算される。次のS113では、直進の確信度が閾値を超えたか否かが判断される。なお、S104→S106→S111→S112→S113の処理はおおよそ50msec/サイクル程度で実行される。
S104→S106→S111→S112→S113へと進む流れの繰り返しにより、S113にて直進の確信度>閾値であると判断されると、S113からS114へと進み、S114では、先行車Bは直進する(最終)、すなわち車線変更しないと推定される。次のS115では、直進の確信度がクリアされ、S101へ戻り、先行車Bは直進するとの推定に基づいて先行車Bを自車Aの追従対象として継続し、先行車追従制御(ACC)が実行される。
ここで、図8(a)に示すように、先行車Bの前方に右隣接車線RLに向かって車線変更動作を開始した先々行車Cが存在している状態から、図8(b)に示すように、先々行車Cの車線変更動作にかかわらず先行車Bが直進を維持する状態へと移行するシーンを想定する。
図8に示すシーンにおいて、車線変更する先々行車車速Vx1の特性は、図9の細実線特性に示すように、先行車Bが先々行車Cに追従して車線変更する場合に減速を開始するタイミングの車線変更開始時刻ts1(先行車Bの車線変更開始時刻ts1)の直前付近から先々行車車速Vx1の低下を開始する。そして、時間の経過にしたがって先々行車車速Vx1の低下勾配を緩やかにしながらも車速低下を維持する。
一方、先々行車Cの車線変更動作にかかわらず直進する先行車Bは、先々行車Cを数秒後に追い越すために先々行車Cと比較して弱い減速で車間時間を縮める車速調整を行う。つまり、先行車車速Vx2の特性は、図9の太実線特性に示すように、先々行車車速Vx1の速い低下に比して先行車車速Vx2は緩やかな低下(Vx2低下勾配<Vx1の低下勾配)を開始する。なお、先行車Bと先々行車Cは互いの干渉を避けるために緩やかな減速を行う。そして、先行車Bの車線変更開始時刻ts1から時間が経過すると、先行車車速Vx2を維持する定速走行から先行車車速Vx2を徐々に高くする加速走行へと移行する。
このため、先行車Bの車線変更開始時刻ts1の直後から先々行車車速Vx1と先行車車速Vx2とが車速乖離幅を拡大してゆくことになる。よって、区間F1において車速差(=|Vx1-Vx2|)が車速判定閾値Vxthを超える経験を複数回繰り返すことで、この区間F1にて先行車Bは直進すると推定することができる。即ち、先々行車Cが減速を伴って車線変更動作を開始し、先行車Bが先々行車Cの車線変更動作にかかわらず直進すると、先行車Bの車線変更開始時刻ts1から判断必要時間が経過したタイミングで、先行車Bは直進する(車線変更しない)と推定できる。なおここで、例えば車速差が車速判定閾値Vxthを超える経験(S106でNO判断)を5回繰り返した場合に(直進の確信度が5回加算された場合に)直進の確信度が閾値を超える(S113でYES判断)と仮定する。この場合、最初の車速差が車速判定閾値Vxthを超える経験から先行車が直進すると判定されるまでの時間は、最短で50msec/サイクル×5サイクルの約250msecの極短時間で先行車Bが直進することを判定することができる。
以上説明したように、実施例1の先行車車線変更推定方法及び先行車車線変更推定装置にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
(1) 自車Aが走行している自車線CL上で自車前方を走行する先行車Bが車線変更するか否かを推定するコントローラ(先行車追従コントローラ10)を備える先行車車線変更推定方法において、コントローラ(先行車追従コントローラ10)は、先行車Bの前方を走行する先々行車Cの車線変更動作を検出し、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの車両挙動を示す車両挙動情報を取得し、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、先々行車Cの車両挙動情報と先行車Bの車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下であるか否かを判断し、車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下と判断されると、先行車Bは車線変更すると推定する(図5)。
このため、自車Aの前方を走行する先行車Bと先々行車Cが存在するシーンにおいて、先行車Bが車線変更を開始した後の早期タイミングにて先行車Bが車線変更するか否かを推定する先行車車線変更推定方法を提供することができる。
(2) 車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値より大きいと判断されると、先行車Bは直進すると推定する(図2)。
このため、自車Aの前方を走行する先行車Bと先々行車Cが存在するシーンにおいて、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、早期タイミングにて先行車Bが車線変更することなく直進すると推定することができる。
(3) 先々行車Cの車線変更動作の有無は、先々行車Cと自車線CLとの位置関係に基づいて検出する(図6)。
このため、先々行車Cと自車線CLとの位置関係を判断基準とし、先々行車Cの車線変更動作の有無を検出することができる。
(4) 先々行車Cが自車線CLのレーンマーカーRMに対して所定範囲内に近づいた位置関係になると、先々行車Cの車線変更動作有りと検出する(図6)。
このため、車線変更する先々行車Cが自車線CLのレーンマーカーRMに対して所定範囲内に近づいた位置関係にまで移動すると、先々行車Cの車線変更動作有りと検出することができる。
(5) 先々行車Cが自車線CLのレーンマーカーRMに対して所定速度以上の横速度で近づくと、先々行車Cの車線変更動作有りと検出する(図6)。
このため、車線変更する先々行車Cが自車線CLのレーンマーカーRMに対して所定速度以上の横速度で近づく場合、所定範囲内に近づいた位置関係になる前に早期に先々行車Cの車線変更動作有りと検出することができる。
(6) 先々行車Cの車両挙動情報と先行車Bの車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下になったか否かの比較判断を、先々行車Cが車線変更動作を開始した時刻から繰り返し、比較判断の繰り返し処理により加算される推定評価値(車線変更の確信度、直進の確信度)の大きさに基づいて、先行車Bが車線変更するか否かを推定する(図2)。
このため、比較判断の繰り返し処理により加算される推定評価値(車線変更の確信度、直進の確信度)を用いた推定にしたことで、一時的な比較判断結果による誤推定が排除され、先行車Bが車線変更するか否かを精度よく推定することができる。
(7) 推定評価値として、車線変更可能性の高さをあらわす車線変更の確信度を用い、車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下であると判断される毎に車線変更の確信度を加算し、車線変更の確信度が閾値を超えると、先行車Bは車線変更すると推定する(図7)。
このため、先行車Bは車線変更すると推定する際、車線変更の確信度を用いた推定にしたことで、一時的な判断結果による誤推定が排除され、先行車Bは車線変更するとの推定精度を高めることができる。
(8) 推定評価値として、直進可能性(車線変更しない可能性)の高さをあらわす直進の確信度を用い、車両挙動情報の差が判定閾値を超えていると判断される毎に直進の確信度を加算し、直進の確信度が閾値を超えると、先行車Bは直進する(車線変更しない)と推定する(図9)。
このため、先行車Bは直進と推定する際、直進の確信度を用いた推定にしたことで、一時的な判断結果による誤推定が排除され、先行車Bは直進する(車線変更しない)との推定精度を高めることができる。
(9) 車両挙動情報は、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの進行方向車両速度を示す車速情報であり、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、先々行車車速Vx1と先行車車速Vx2の車速差(|Vx1-Vx2|)が車速判定閾値Vxth以下であるか否かを判断する(図7、図9)。
このため、先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更する際、類似した車速変化による縦方向挙動になることに着目し、車速情報を用いて先行車Bが車線変更するか否かを推定することができる。なお、車両挙動情報として車速情報(車両進行方向の縦速度情報)を用いた場合には、先行車Bの横方向移動距離が大きくなる前に先行車Bが車線変更するか否かを推定することが可能である。
(10) コントローラは、自車Aが走行している自車線CL上で自車前方を走行する先行車Bに追従走行する先行車追従制御を行う先行車追従コントローラ10であり、先行車追従コントローラ10は、先行車Bは車線変更すると推定されると、そのときの先行車Bを追従対象から外す(図1)。
このため、自車前方を走行する先行車Bが車線変更すると推定した際に、適切に自車Aの追従対象車を切替えて、良好な先行車追従走行を維持する先行車追従制御方法を提供することができる。
(11) 自車Aが走行している自車線CL上で自車前方を走行する先行車Bが車線変更するか否かを推定するコントローラ(先行車追従コントローラ10)を備える先行車車線変更推定装置において、コントローラ(先行車追従コントローラ10)は、先行車Bの前方を走行する先々行車Cの車線変更動作を検出する先々行車車線変更検出部15と、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの車両挙動を示す車両挙動情報を取得する車両挙動情報取得部16と、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、先々行車Cの車両挙動情報と先行車Bの車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下であるか否かを判断する先行車挙動判断部17と、車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下と判断されると、先行車Bは車線変更すると推定する先行車意図推定部18と、を有する(図1)。
このため、自車Aの前方を走行する先行車Bと先々行車Cが存在するシーンにおいて、先行車Bが車線変更を開始した後の早期タイミングにて先行車Bが車線変更するか否かを推定する先行車車線変更推定装置を提供することができる。
実施例2は、車両挙動情報として、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの進行方向加速度を示す加速度情報を用いた例である。なお、実施例2の構成のうち「先行車追従コントローラの制御ブロック構成」は、図1に示す実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
[先行車追従制御処理構成(図10)]
図10は、実施例2の先行車追従コントローラ10において加速度情報を用いる先行車の車線変更推定に基づいて実行される先行車追従制御処理の流れを示す。以下、図10の各ステップについて説明する。なお、S201~S204、及び、S207~S215の各ステップは、図2のS101~S104、及び、S107~S115の各ステップに対応するので説明を省略する。
ステップS205では、S204での先々行車・先行車の車速取得に続き、先々行車・先行車の加速度を算出し、ステップS206へ進む。ここで、先々行車の加速度は、先々行車車速の時間微分により算出し、先行車の加速度は、先行車車速の時間微分により算出する。また、本実施形態においては加速する方向の加速度を正、減速する側の加速度(減速加速度)を負の値とし、加速する方向及び減速する方向の加速度を総称して“加速度”という。
ステップS206では、S205での先々行車と先行車の加速度算出に続き、先々行車と先行車の加速度差(=加速度差の絶対値)は所定閾値(=加速度判定閾値)以下であるか否かを判断する。YES(加速度差≦所定閾値)の場合はステップS207へ進み、NO(加速度差>所定閾値)の場合はステップS211へ進む。
次に、実施例2の作用を、「先行車の車線変更推定作用」、「先行車の直進推定作用」に分けて説明する。
[先行車の車線変更推定作用(図10、図11)]
先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更する場合、先々行車加速度XG1に対して先行車加速度XG2が収束するまで(値が近づくまで)の短い区間は加速度差が加速度判定閾値XGthを超えることで、S204→S205→S206→S211→S212→S213へと進む流れが繰り返される。しかし、先々行車加速度XG1に対して先行車加速度XG2が収束すると加速度差が加速度判定閾値XGth以下になり、S204→S205→S206→S207→S208→S209へと進む流れが繰り返される。S207では、先行車Bが車線変更であると一時判定され、S208では、車線変更の確信度が加算される。次のS209では、車線変更の確信度が閾値を超えたか否かが判断される。
S204→S205→S206→S207→S208→S209へと進む流れの繰り返しにより、S209にて車線変更の確信度>閾値であると判断されると、S209からS210へと進み、S210では、先行車Bは車線変更する(最終)と推定される。次のS215では、車線変更の確信度がクリアされ、S201へ戻り、先行車Bが車線変更するとの推定に基づいて先行車Bを自車Aの追従対象から外し、先行車追従制御(ACC)が実行される。
図6に示すシーンにおいて、車線変更する際の先々行車Cの加速度である先々行車加速度XG1の特性は、図11の細実線特性に示すように、車線変更動作の開始と共に低下(減速加速度の増大)を開始する。そして、加速度の変化を緩やかにしながら略一定加速度(一定減速加速度)に収束する。
一方、先々行車Cに引き続いて車線変更する先行車Bは、先々行車Cとの車間時間を保持するための車速調整を行う。つまり、先行車加速度XG2の特性は、図11の太実線特性に示すように、先々行車加速度XG1の低下開始から少し遅れた車線変更開始時刻ts1から低下を開始する。そして、先行車Bの車線変更検出時刻ts2の前に先々行車加速度XG1の特性と交差し、その後、先行車Bの車線変更検出時刻ts2を過ぎると、先行車加速度XG2が低下勾配から略一定勾配、又は、緩やかな上昇勾配へと移行する。
このため、先行車Bが先々行車Cに追従して車線変更する場合に減速を開始するタイミングである車線変更開始時刻ts1と先行車Bの車線変更検出時刻ts2との間の区間E2において、加速度差(=|XG1-XG2|)が加速度判定閾値XGth以下に収束することになる。よって、加速度差(=|XG1-XG2|)が加速度判定閾値XGth以下である判定を複数回繰り返すことで、この区間E2にて先行車Bは車線変更すると推定することができる。即ち、先々行車Cが減速を伴って車線変更を開始し、先行車Bが先々行車Cに続いて減速すると、先行車Bが車線幅方向に車線変更を検出可能な程度までの横ずれ量が発生する前に、先行車Bは車線変更すると推定できる。
[先行車の直進推定作用(図10、図12)]
先々行車Cは車線変更するが先行車Bは直進する場合、減速する先々行車加速度XG1に対して先行車加速度XG2との間で加速度乖離幅が小さい短い区間は、加速度差が加速度判定閾値XGth以下になる。このため、S204→S205→S206→S207→S208→S209へと進む流れが繰り返される。しかし、減速する先々行車加速度XG1に対して先行車加速度XG2との間で加速度乖離幅が大きくなって加速度差が加速度判定閾値XGthを超えると、その後、S204→S205→S206→S211→S212→S213へと進む流れが繰り返される。S211では、先行車Bが直進すると一時判定され、S212では、直進の確信度が加算される。次のS213では、直進の確信度が閾値を超えたか否かが判断される。
S204→S205→S206→S211→S212→S213へと進む流れの繰り返しにより、S213にて直進の確信度>閾値であると判断されると、S213からS214へと進み、S214では、先行車Bは直進する、すなわち車線変更しない(最終)と推定される。次のS215では、直進の確信度がクリアされ、S201へ戻り、先行車Bは直進との推定に基づいて先行車Bを自車Aの追従対象として継続し、先行車追従制御(ACC)が実行される。
図8に示すシーンにおいて、車線変更する先々行車加速度XG1の特性は、図12の細実線特性に示すように、車線変更動作開始と共に低下を開始する。そして、所定の時間が経過すると低下勾配を緩やかにしながら徐々に緩やかな上昇勾配へと移行する。
一方、先々行車Cの車線変更にかかわらず直進する先行車Bは、先々行車Cを数秒後に追い越すために減速を弱めて車間時間を縮める車速調整を行う。つまり、先行車加速度XG2の特性は、図12の太実線特性に示すように、先々行車Cの減速開始(先々行車加速度XG1の低下開始)より少し遅れた車線変更開始時刻ts1から先行車加速度XG2の緩やかな低下(XG2低下勾配<XG1の低下勾配)を開始する。そして、先行車Bの車線変更開始時刻ts1から時間が経過すると、先行車加速度XG2を維持する定速走行あるいは小さな減速加速度での減速走行から先行車加速度XG2を徐々に高くして加速走行へと移行する。
このため、先行車加速度XG2の対価が開始するタイミングである先行車Bの車線変更開始時刻ts1の直後から先々行車加速度XG1と先行車加速度XG2とが加速度乖離幅を拡大してゆくことになる。よって、区間F2において加速度差(=|XG1-XG2|)が加速度判定閾値XGthを超える経験を複数回繰り返すことで、この区間F2にて先行車Bは直進する(車線変更しない)と推定することができる。即ち、先々行車Cが減速を伴って車線変更動作を開始し、先行車Bが先々行車Cの車線変更にかかわらず直進すると、先行車Bの車線変更開始時刻ts1から判断必要時間が経過したタイミングで、先行車Bは直進すると推定できる。
以上説明したように、実施例2の先行車車線変更推定方法及び先行車車線変更推定装置にあっては、実施例1の(1)~(8)及び(10),(11)の効果に加え、下記の効果を奏する。
(12) 車両挙動情報は、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの進行方向加速度を示す加速度情報であり、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、先々行車加速度XG1と先行車加速度XG2の加速度差(|XG1-XG2|)が加速度判定閾値XGth以下であるか否かを判断する(図11、図12)
このため、先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更する際、類似した加速度変化による縦方向挙動になることに着目し、加速度情報を用いて先行車Bが車線変更するか否かを推定することができる。なお、車両挙動情報として加速度情報(車両進行方向の縦加速度情報)を用いた場合には、先行車Bの横方向挙動が大きくなる前に先行車Bが車線変更するか否かを推定することが可能である。
実施例3は、車両挙動情報として、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの車線幅方向速度を示す横速度情報を用いた例である。なお、実施例3の構成のうち「先行車追従コントローラの制御ブロック構成」は、図1に示す実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
[先行車追従制御処理構成(図13)]
図13は、実施例3の先行車追従コントローラ10において横速度情報を用いる先行車の車線変更推定に基づいて実行される先行車追従制御処理の流れを示す。以下、図13の各ステップについて説明する。なお、S301~S303、及び、S307~S315の各ステップは、図2のS101~S103、及び、S107~S115の各ステップに対応するので説明を省略する。
ステップS304では、S303での先々行車の車線変更動作検出との判断に続き、先々行車・先行車の横速度を取得し、ステップS306へ進む。ここで、先々行車の横速度は、先々行車と自車の相対横速度と自車の横速度により取得し、先行車の横速度は、先行車と自車の相対横速度と自車の横速度により取得する。なお、本実施形態において横速度は、車線幅方向で左方向の速度を正の値、車線幅方向で右方向の値を負の値として記載する。
ステップS306では、S304での先々行車と先行車の横速度取得に続き、先々行車と先行車の横速度差(=横速度差の絶対値)は所定閾値(=横速度判定閾値)以下であるか否かを判断する。YES(横速度差≦所定閾値)の場合はステップS307へ進み、NO(横速度差>所定閾値)の場合はステップS311へ進む。
次に、実施例3の作用を、「先行車の車線変更推定作用」、「先行車の直進推定作用」に分けて説明する。
[先行車の車線変更推定作用(図13、図14)]
先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更する場合、先々行車横速度Vy1に対して先行車横速度Vy2が収束するまでの短い区間は横速度差が横速度判定閾値Vythを超えることで、S304→S306→S311→S312→S313へと進む流れが繰り返される。しかし、先々行車横速度Vy1に対して先行車横速度Vy2が収束すると横速度差が横速度判定閾値Vyth以下になり、S304→S306→S307→S308→S309へと進む流れが繰り返される。S307では、先行車Bが車線変更すると一時判定され、S308では、車線変更の確信度が加算される。次のS309では、車線変更の確信度が閾値を超えたか否かが判断される。
S304→S306→S307→S308→S309へと進む流れの繰り返しにより、S309にて車線変更の確信度>閾値であると判断されると、S309からS310へと進み、S310では、先行車Bは車線変更する(最終)と推定される。次のS315では、車線変更の確信度がクリアされ、S301へ戻り、先行車Bは車線変更との推定に基づいて先行車Bを自車Aの追従対象から外し、先行車追従制御(ACC)が実行される。
図6に示すシーンにおいて、車線変更する先々行車横速度Vy1の特性は、図14の細実線特性に示すように、先々行車Cの車線変更動作開始から右隣接車線RLに近づく横速度(マイナス)の発生を開始する。そして、先々行車横速度Vy1の横速度絶対値が時間と共に増大した後、先行車Bの車線変更検出時刻ts2以降になると、横速度絶対値が緩やかに小さくなる。
一方、先々行車Cに引き続いて車線変更する先行車Bは、先々行車横速度Vy1の横速度から遅れて類似した横速度が発生する。つまり、先行車横速度Vy2の特性は、図14の太実線特性に示すように、先々行車Cの車線変更動作開始より少し遅れた車線変更開始時刻ts1から右隣接車線RLに近づく横速度(マイナス)の発生を開始し、その後、先々行車横速度Vy1と類似した横速度特性を示す。
このため、先行車Bが先々行車Cに追従して車線変更する場合に、先行車Bが横速度(マイナス)の発生を開始する時刻である車線変更開始時刻ts1と先行車Bの車線変更検出時刻ts2との間の区間E3において、横速度差(=|Vy1-Vy2|)が横速度判定閾値Vyth以下に収束することになる。よって、横速度収束経験を複数回繰り返すことで、この区間E3にて先行車Bは車線変更すると推定することができる。即ち、先々行車Cが横移動を伴って車線変更動作を開始し、先行車Bが先々行車Cに続いて横移動すると、先行車Bが車線幅方向に車線変更を検出可能な程度までの横ずれ量が発生する前に、先行車Bが車線変更すると推定できる。
[先行車の直進推定作用(図13、図15)]
先々行車Cは車線変更するが先行車Bは直進する場合、先々行車横速度Vy1に対して先行車横速度Vy2との間で横速度乖離幅が小さい短い区間は、横速度差が横速度判定閾値Vyth以下になる。このため、S304→S306→S307→S308→S309へと進む流れが繰り返される。しかし、先々行車横速度Vy1に対して先行車横速度Vy2との間で横速度乖離幅が大きくなって横速度差が横速度判定閾値Vythを超えると、その後、S304→S306→S311→S312→S313へと進む流れが繰り返される。S311では、先行車Bが直進すると一時判定され、S312では、直進の確信度が加算される。次のS313では、直進の確信度が閾値を超えたか否かが判断される。
S304→S306→S311→S312→S313へと進む流れの繰り返しにより、S313にて直進の確信度>閾値であると判断されると、S313からS314へと進み、S314では、先行車Bは直進する(最終)と推定される。次のS315では、直進の確信度がクリアされ、S301へ戻り、先行車Bは直進との推定に基づいて先行車Bを自車Aの追従対象として継続し、先行車追従制御(ACC)が実行される。
図8に示すシーンにおいて、車線変更する先々行車横速度Vy1の特性は、図15の細実線特性に示すように、先々行車Cの車線変更動作開始に伴って横速度(マイナス)の発生を開始する。そして、先々行車横速度Vy1の横速度絶対値が先行車Bの車線変更検出時刻ts2に向かうにしたがって大きくなる。そして、車線変更検出時刻ts2以降になると、横速度絶対値が緩やかに小さくなる。
一方、先々行車Cの車線変更にかかわらず直進する先行車Bは、先々行車Cを数秒後に追い越すのに備えて横移動することがない。つまり、先行車横速度Vy2の特性は、図15の太実線特性に示すように、ほぼ横速度=0の状態を維持する。
このため、先々行車Cの車線変更動作開始の直後から先々行車横速度Vy1と先行車横速度Vy2とが横速度乖離幅を拡大してゆくことになる。よって、区間F3において横速度差(=|Vy1-Vy2|)が横速度判定閾値Vythを超える経験を複数回繰り返すことで、この区間F3にて先行車Bは直進と推定することができる。即ち、先々行車Cが横移動を伴って車線変更を開始し、先行車Bが先々行車Cの車線変更にかかわらず直進すると、先々行車Cの車線変更動作開始から判断必要時間が経過したタイミングで、先行車Bが直進すると推定できる。
以上説明したように、実施例3の先行車車線変更推定方法及び先行車車線変更推定装置にあっては、実施例1の(1)~(8)及び(10),(11)の効果に加え、下記の効果を奏する。
(13) 車両挙動情報は、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの車線幅方向速度を示す横速度情報であり、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、先々行車横速度Vy1と先行車横速度Vy2の横速度差(|Vy1-Vy2|)が横速度判定閾値Vyth以下であるか否かを判断する(図14、図15)。
このため、先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更する際、類似した横速度変化による横方向挙動になることに着目し、横速度情報を用いて先行車Bが車線変更するか否かを推定することができる。
実施例4は、車両挙動情報として、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの車線幅方向加速度を示す横加速度情報を用いた例である。なお、実施例4の構成のうち「先行車追従コントローラの制御ブロック構成」は、図1に示す実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
[先行車追従制御処理構成(図16)]
図16は、実施例4の先行車追従コントローラ10において横加速度情報を用いる先行車の車線変更推定に基づいて実行される先行車追従制御処理の流れを示す。以下、図16の各ステップについて説明する。なお、S401~S403、及び、S407~S415の各ステップは、図2のS101~S103、及び、S107~S115の各ステップに対応するので説明を省略する。
ステップS404では、S403での先々行車の車線変更動作検出との判断に続き、先々行車・先行車の横速度を取得し、ステップS405へ進む。
ステップS405では、S404での先々行車・先行車の横速度取得に続き、先々行車・先行車の横加速度を算出し、ステップS406へ進む。ここで、先々行車の横加速度は、先々行車横速度の時間微分により算出し、先行車の横加速度は、先行車横速度の時間微分により算出する。
ステップS406では、S405での先々行車と先行車の横加速度算出に続き、先々行車と先行車の横加速度差(=横加速度差の絶対値)は所定閾値(=横加速度判定閾値)以下であるか否かを判断する。YES(横加速度差≦所定閾値)の場合はステップS407へ進み、NO(横加速度差>所定閾値)の場合はステップS411へ進む。
次に、実施例4の作用を、「先行車の車線変更推定作用」、「先行車の直進推定作用」に分けて説明する。
[先行車の車線変更推定作用(図16、図17)]
先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更する場合、先々行車横加速度YG1に対して先行車横加速度YG2が収束するまでの短い区間は横速度差が横加速度判定閾値YGthを超えることで、S404→S405→S406→S411→S412→S413へと進む流れが繰り返される。しかし、先々行車横加速度YG1に対して先行車横加速度YG2が収束すると横加速度差が横加速度判定閾値YGth以下になり、S404→S405→S406→S407→S408→S409へと進む流れが繰り返される。S407では、先行車Bが車線変更すると一時判定され、S408では、車線変更の確信度が加算される。次のS409では、車線変更の確信度が閾値を超えたか否かが判断される。
S404→S405→S406→S407→S408→S409へと進む流れの繰り返しにより、S409にて車線変更の確信度>閾値であると判断されると、S409からS410へと進み、S310では、先行車Bは車線変更する(最終)と推定される。次のS415では、車線変更の確信度がクリアされ、S401へ戻り、先行車Bは車線変更するとの推定に基づいて先行車Bを自車Aの追従対象から外し、先行車追従制御(ACC)が実行される。
図6に示すシーンにおいて、車線変更する先々行車横加速度YG1の特性は、図17の細実線特性に示すように、先々行車Cの車線変更動作開始に伴って、先々行車横加速度YG1が右隣接車線RLに近づくときの横加速度(マイナス)の発生を開始する。そして、先々行車横加速度YG1の横加速度絶対値が先行車Bの車線変更検出時刻ts2に向かう途中まで大きくなった後に小さくなる変化を示す。そして、車線変更検出時刻ts2以降になると、横加速度(プラス)の発生を開始する。つまり、先々行車Cが車線変更するときの操舵に応じた横加速度特性を示す。
一方、先々行車Cに引き続いて車線変更する先行車Bは、先々行車横加速度YG1の横加速度から遅れて類似した横加速度が発生する。つまり、先行車横加速度YG2の特性は、図17の太実線特性に示すように、先々行車Cの車線変更動作開始に伴う横加速度(プラス)の発生開始から、少し遅れた車線変更開始時刻ts1から右隣接車線RLに近づくときの横加速度(マイナス)の発生を開始し、その後、先々行車横加速度YG1と類似した横速度特性を示す。
このため、先行車Bの車線変更開始時刻ts1と先行車Bの車線変更検出時刻ts2との間の区間E4において、横加速度差(=|YG1-YG2|)が横加速度判定閾値YGth以下に収束することになる。よって、横加速度収束経験を複数回繰り返すことで、この区間E4にて先行車Bは車線変更すると推定することができる。即ち、先々行車Cが横加速度の発生を伴って車線変更を開始し、先行車Bが先々行車Cに続いて横加速度を発生させると、先行車Bが車線幅方向に車線変更を検出可能な程度までの横ずれ量が発生する前に、先行車Bは車線変更すると推定できる。
[先行車の直進推定作用(図16、図18)]
先々行車Cは車線変更するが先行車Bは直進する場合、先々行車横加速度YG1に対して先行車横加速度YG2との間で横加速度乖離幅が小さい短い区間は、横加速度差が横加速度判定閾値YGth以下になる。このため、S404→S405→S406→S407→S408→S409へと進む流れが繰り返される。しかし、先々行車横加速度YG1に対して先行車横加速度YG2との間で横加速度乖離幅が大きくなって横加速度差が横加速度判定閾値YGthを超えると、その後、S404→S405→S406→S411→S412→S413へと進む流れが繰り返される。S411では、先行車Bが直進すると一時判定され、S412では、直進の確信度が加算される。次のS413では、直進の確信度が閾値を超えたか否かが判断される。
S404→S405→S406→S411→S412→S413へと進む流れの繰り返しにより、S413にて直進の確信度>閾値であると判断されると、S413からS414へと進み、S414では、先行車Bは直進する(最終)と推定される。次のS415では、直進の確信度がクリアされ、S401へ戻り、先行車Bは直進との推定に基づいて先行車Bを自車Aの追従対象として継続し、先行車追従制御(ACC)が実行される。
図8に示すシーンにおいて、車線変更する先々行車横加速度YG1の特性は、図18の細実線特性に示すように、先々行車Cが車線変更するときの操舵に応じた横加速度特性を示す。つまり、図17の細実線に示す先々行車横加速度YG1の特性と同様である。
一方、先々行車Cの車線変更にかかわらず直進する先行車Bは、先々行車Cを数秒後に追い越すのに備えて横移動することなく、横加速度YGの発生が殆どない。つまり、先行車横加速度YG2の特性は、図18の太実線特性に示すように、ほぼ横加速度=0の状態を維持する。
このため、先々行車Cの車線変更動作開始に伴う横加速度(プラス)の発生開始から先々行車横加速度YG1と先行車横加速度YG2とが横加速度乖離幅を拡大してゆくことになる。よって、区間F4において横加速度差(=|YG1-YG2|)が横加速度判定閾値YGthを超える経験を複数回繰り返すことで、この区間F4にて先行車Bは直進すると推定することができる。即ち、先々行車Cが横移動を伴って車線変更を開始し、先行車Bが先々行車Cの車線変更にかかわらず直進すると、先々行車Cの車線変更動作開始から判断必要時間が経過したタイミングで、先行車Bは直進すると推定できる。
以上説明したように、実施例4の先行車車線変更推定方法及び先行車車線変更推定装置にあっては、実施例1の(1)~(8)及び(10),(11)の効果に加え、下記の効果を奏する。
(14) 車両挙動情報は、先々行車Cと先行車Bのそれぞれの車幅方向加速度を示す横加速度情報であり、先々行車Cが車線変更動作を開始した後、先々行車横加速度YG1と先行車横加速度YG2の横加速度差(|YG1-YG2|)が横加速度判定閾値YGth以下であるか否かを判断する(図17、図18)。
このため、先々行車Cに引き続いて先行車Bが車線変更する際、類似した横加速度変化による横方向挙動になることに着目し、横加速度情報を用いて先行車Bが車線変更するか否かを推定することができる。
以上、本開示の先行車車線変更推定方法及び先行車追従制御方法、先行車車線変更推定装置を、実施例1~実施例4に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
実施例1では、先々行車車線変更検出部15として、先々行車が自車線のレーンマーカーに対して所定範囲内に近づいた位置関係になる、又は、所定速度以上の横速度で近づくと、先々行車の車線変更動作有りと検出する例を示した。しかし、先々行車車線変更検出部としては、先々行車のウィンカー点灯を検出する例としても良いし、また、車車間通信により先々行車の車線変更情報を取得する例としても良い。
車両挙動情報取得部16として、車速情報を取得する例(実施例1)、加速度情報を取得する例(実施例2)、横速度情報を取得する例(実施例3)、横加速度情報を取得する例(実施例4)を示した。しかし、車両挙動情報取得部としては、ヨーレイト情報等のように他の車両挙動情報を取得する例としても良いし、また、これらの車両挙動情報のうち複数の車両挙動を組み合わせた組み合わせ情報とする例としても良い。
先行車挙動判断部17として、車速差を判断する例(実施例1)、加速度差を判断する例(実施例2)、横速度差を判断する例(実施例3)、横加速度差を判断する例(実施例4)を示した。しかし、先行車挙動判断部としては、取得される車両挙動情報に応じて車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下であるか否かを判断する例としても良い。
実施例1では、先行車意図推定部18として、先々行車と先行車の車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下になったか否かの比較判断を、先々行車が車線変更動作を開始した時刻から繰り返す。そして、比較判断の繰り返し処理により加算される確信度の大きさに基づいて先行車が車線変更をするか否かを推定する例を示した。しかし、先行車意図推定部としては、例えば、車両挙動情報の差が車両挙動判定閾値以下との判断が所定時間継続すると先行車は車線変更すると推定する例としても良い。また、推定評価値として、経験回数を単純に加算した確信度を用いる例を示した。しかし、推定評価値としては、車両挙動情報の差の大きさ、判定条件成立の継続時間、自車周囲の走行環境、等を考慮し、判定条件成立を経験する毎に可変値として与え、先行車の車線変更意図の推定タイミングをより早期化するような例としても良い。
実施例1では、本開示の先行車車線変更推定方法及び先行車車線変更推定装置を、自車が走行している自車線上で自車前方を走行する先行車に追従走行する先行車追従制御を行う先行車追従コントローラ10に適用する例を示した。しかし、本開示の先行車車線変更推定方法及び先行車車線変更推定装置を適用するコントローラとしては、先行車追従コントローラに限らない。例えば、先行車の車線変更推定情報を修正走行経路や車速プロファイルの生成に利用する運転支援システムや自動運転システムに有する他のコントローラであっても勿論良い。