以下、本発明の実施形態に係る車両制御方法及び車両制御装置を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態は車両に搭載された車両制御装置を例示して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置100の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両制御装置100は、センサ群110と、自車位置検出装置120と、地図データベース130と、ナビゲーションシステム140と、駆動制御装置150と、駆動機構160と、ステアリングアクチュエータ170と、制御装置(プロセッサ)180とを有している。これら装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
センサ群110は、自車両の周囲の状態(外部状態)を検出する外部用のセンサ(外界センサ)と、自車両の状態(内部状態)を検出する内部用のセンサ(内界センサ)とを有している。外部用のセンサとしては、例えば、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー等が挙げられる。内部用のセンサとしては、自車両の車速を検出する車速センサ、自車両の室内を撮像する車内カメラ、路面に対する自車両の相対的な方向を検出するヨー角センサ、およびステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサなどが挙げられる。なお、外部用のセンサ及び内部用のセンサとして、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ群110の検出結果(検出データ)は、ナビゲーションシステム140及び制御装置180に出力される。これにより、ナビゲーションシステム140及び制御装置180は、外部情報及び走行情報を取得する。
センサ群110が検出する検出物としては、例えば、自転車、バイク、自動車(以降、他車両ともいう)、路上障害物、交通信号機、路面標示(車線表示を含む)、及び横断歩道が挙げられる。例えば、自車両の周辺を走行している他車両が存在する場合、センサ群110は、自車両の位置を基準として他車両が存在する方向及び他車両までの距離と、自車両の車速を基準として他車両の相対速度を検出する。また、センサ群110は、自車両の車速、ヨー角、及び操舵角を検出する。また、例えば、自車両が特定の車線を走行している場合、センサ群110は、自車両が走行している走行車線(以降、自車線ともいう)と、自車線の側方(車幅方向)に位置し自車線に対して隣接する車線(以降、隣接車線ともいう)を検出する。自車線及び隣接車線は、車線境界線で区切られており、センサ群は、画像認識技術等を用いて、撮像画像から車線境界線(白線などの線)を特定することで、車線を検出する。
自車位置検出装置120は、現在の自車両の位置を示す位置情報を取得する装置である。自車位置検出装置120は、例えば、GPSユニット、ジャイロセンサなどから構成されている。自車位置検出装置120は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサ(不図示)から取得した車速に基づいて、自車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置120が取得した位置情報は、ナビゲーションシステム140及び制御装置180へ出力される。これにより、ナビゲーションシステム140及び制御装置180は、位置情報を取得する。
地図データベース130は、地図情報を格納している。地図情報は、道路情報と交通規則情報を含む。道路情報は、ノードと、ノード間を接続するリンクにより定義される。リンクは車線レベルで識別される。
本実施形態の道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、道路幅、道路形状、直進の可否、進行の優先関係、追い越しの可否(隣接車線への進入の可否)、車線変更の可否その他の道路に関する情報を対応づけて記憶する。また、道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶する。
また、地図データベース130に記憶された地図情報は、自動運転に適した高精度地図情報でもよい。高精度地図情報は、センサ群110を用いてリアルタイムで取得した情報に基づき生成されてもよい。なお、本実施形態において自動運転とは、運転主体が運転者のみで構成されていない運転を示すものとする、例えば、運転主体に運転者とともに、運転者が行う運転操作を支援する車両コントローラ(図示しない)が含まれている場合や、運転者に代わり運転操作を実行する車両コントローラ(図示しない)が含まれている場合が該当する。なお、自動運転は、交通法規の遵守の下、実行される。
地図データベース130に格納された地図情報は、ナビゲーションシステム140及び制御装置180に出力される。これにより、ナビゲーションシステム140及び制御装置180は、位置情報を取得する。
ナビゲーションシステム140は、自車両の現在位置の情報に基づいて、自車両の現在位置から目的地までの経路を示して自車両の運転者を誘導するシステムである。ナビゲーションシステム140には、センサ群110、自車位置検出装置120、地図データベース130から各種情報が入力される。また、運転者又は他の乗員が自車両の目的地の情報を入力すると、ナビゲーションシステム140には、目的地の情報が入力される。ナビゲーションシステム140は、入力された各種情報に基づいて、自車両の現在位置から目的地までの走行経路を生成する。そして、ナビゲーションシステム140が生成した走行経路を案内するための経路案内情報は、ディスプレイ等で、運転者及び他の乗員に出力される。
駆動制御装置150は、自車両の走行を制御する。駆動制御装置150は、ブレーキ制御機構、アクセル制御機構、エンジン制御機構、及びHMI(ヒューマンインターフェイス)機器等を備えている。駆動制御装置150には、後述する制御装置180から制御信号が入力される。駆動制御装置150は、制御装置180の制御に応じて、駆動機構160の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む、ブレーキの動作も含む)、及びステアリングアクチュエータ170の動作等を制御することで、自車両の自動運転を実行する。また駆動制御装置150は、制御装置180からの制御信号に応じて、車両の各輪の制動量を制御することで自車両の移動方向を制御してもよい。なお、各機構の制御は、完全に自動で行われてもよいし、運転者の運転操作を支援する態様で行われてもよい。各機構の制御は、運転者の介入操作により中断又は中止させることができる。駆動制御装置150による走行制御方法は、上記の制御方法に限られず、その他の周知の方法を用いることもできる。
駆動機構160は、内燃機関及び/又はモータと、ブレーキ機構である。ステアリングアクチュエータ170は、車両のステアリングを駆動させるための装置である。
制御装置180は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)を有する。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。なお、本実施形態では、駆動制御装置150と制御装置180を2つコントローラに分けているが、駆動制御装置150と制御装置180は1つのコントローラで構成されてもよい。
制御装置180は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、車両状態取得機能、対象車両特定機能、目標領域設定機能、目標地点設定機能、及び走行制御機能を有している。
ここで、制御装置180が各種機能を実行することで、車両を制御する際の具体的なシーンについて説明する。自車両は、複数の車線のうち一方の車線(走行車線)を走行し、複数の他車両が他方の車線(隣接車線)を走行している。このような状態で、自車両は、隣接車線を走行する複数の車両の間に合流するために、自車両は合流地点に近づくように車速を制御する。このとき、自車両は、車線変更先となるスペースの中央よりも前方の位置で、隣接車線上の他車両と並走するように、加減速を行う。そして、自車両は、車線変更先となるスペースの中央よりも前方の位置から車線変更を開始して、減速しながら走行車線から隣接車線に移動し、複数の車両の間の位置で合流する。以下、制御装置180の各機能について説明する。
車両状態取得機能について説明する。制御装置180は、センサ群110に含まれる車速センサ、車速センサ、操舵センサ等から、センサ群110により検出された情報を含む検出データを取得する。検出データは、自車両の車速、ヨー角、操舵角等の情報を含んでいる。また制御装置180は、自車位置検出装置120から自車両の現在位置の情報を取得する。これにより、制御装置180は、車速、現在地、姿勢角などの自車両の車両状態の状態を含む検出データを取得する。また制御装置180は、センサ群110に含まれるカメラ、レーダー等から、自車両の周囲に位置する複数の他車両の車両状態の状態を含む検出データを取得する。他車両の車両状態は、他車両の位置及び/又は車速等で示される。制御装置180は、自車両の車両状態及び他車両の車両状態から、自車両と他車両の位置関係、及び、自車両に対する他車両の相対速度をそれぞれ演算する。
対象車両特定機能について説明する。制御装置180は、車両状態取得機能により取得された、自車両と他車両の位置関係から、隣接車線を走行している他車両を特定する。制御装置180は、隣接車線上の他車両の位置から、車線変更先の前後に位置する複数の他車両を、対象車両として設定する。対象車両は、自車両が車線を変更する際に、車両の前方又は後方に合流するための目標となる車両である。例えば、自車両が複数の車両の間に、車線変更で合流する場合には、制御装置180は、合流先となる領域の前方に位置する前方車両、及び、合流先となる領域の後方に位置する後方車両を、それぞれ対象車両として特定する。自車両の周囲に、3台以上の他車両が隣接車線上を走行している場合には、制御装置180は、各車両間の車間距離を算出し、例えば、最も車間の広い領域の前後に位置する他車両を対象車両として特定する。
目標領域設定機能について説明する。制御装置180は、対象車両特定機能により特定された複数の対象車両の間に、車線変更可能領域を設定する。車線変更可能領域は、前方に位置する対象車両と後方に位置する対象車両との間で、隣接車線上に設定される。車線変更可能領域は、自車両が合流する合流位置を含んでおり、隣接車線を走行する複数の車両の間に設定される。車両変更可能領域は、少なくとも、車線変更先として適した距離を有している。車線変更に適した距離は、車両の進行方向に沿う方向の長さである。車線変更に適した距離は、自車両の車両状態及び他車両の車両状態により決まる。例えば、自車両が、隣接車線上の合流位置に対して遠くに位置し、自車線上を走行している場合には、自車両が合流位置に近づくまで時間がかかり、合流するまでに周囲の走行環境が変わる可能性が高い。そのため、制御装置180は、自車両の現在位置と合流位置までの距離が長いほど、車線変更に適した距離を長くする。
車線変更可能領域の下限値が予め設定されており、制御装置180は、車線に沿う方向の長さ(隣接車線上を走行する複数の車両の車間距離に相当)が下限値以上の長さをもつ領域を、車線変更可能領域に設定する。下限値は、自車両の車速に応じて設定される。例えば、自車両の車速が高いほど、制御装置180は、車線変更可能領域の下限値を長くする。そして、複数の対象車両の車間距離が車線変更可能領域より長い場合には、制御装置180は前方車両から後方車両までの領域を車線変更可能領域に設定する。
目標地点設定機能について説明する。制御装置180は、車線変更可能領域の中央に車線変更完了地点を設定する。車線変更完了地点は、自車両が走行車線から隣接車線に移動する際の目標地点となり、車線変更制御における最終的な目標となる位置を表している。車線変更完了地点は、車線変更可能領域の中心又は中心付近に設定される。制御装置180は、走行車線上に車線変更開始地点を設定する。車線変更開始地点は、自車両が走行車線から隣接車線に移動するために減速を開始する地点である。車線変更開始地点は、走行車線に沿う方向で、車線変更完了地点より前方の位置に設定される。
走行制御機能について説明する。制御装置180は、走行制御機能により、駆動制御装置150を介して自車両の走行を制御する。制御装置180は、車両状態取得機能により取得された自車両の車両状態に基づき、自車両の位置が車線変更開始点に近づくための車速を車両制御値として算出し、車速の現在の車速が車両制御値と一致するように、駆動機構160の出力トルクを制御する。また、制御装置180は、センサ群110の検出結果に基づいて、自車線のレーンマークを特定し、自車両が自車線内を走行するように、自車両の車幅方向における走行位置を制御を行ってもよい(いわゆるレーンキープ制御)。制御装置180は、自車両の現在位置が車線変更開始地点と一致すると、車線変更のためのステアリング制御及び減速制御を実行する。制御装置180は、車線変更完了地点から車線変更可能領域に移動するように、駆動機構160及びステアリングアクチュエータ170を制御する。自車両の現在位置が車線変更完了地点と一致する、又は、自車両の現在位置が車線変更可能領域内に位置する時に、制御装置180は車線変更制御を終了する。
次に、図2及び図3A~図3Dを用いて、制御装置180の制御フローを説明する。図2は、制御装置180の制御フローを示すフローチャートである。図3A~図3Dは、自車両が車線変更を行う前の準備状態から、自車両が車線変更を完了するまでのシーンを表している。なお、図3A~図3Dにおいて、x軸方向は車幅方向であり、y軸方向は車両の進行方向及び車線に沿う方向である。
図2に示す制御フローは、制御装置180が車両変更を必要とすると判定した時、又は、ユーザが操作した時をトリガーにして実行される。制御装置180は、例えば、車両の走行経路に合流地点が含まれており、自車両の現在位置が、合流地点から所定距離、後方の位置にある時に、車線変更が必要であると判定する。なお、車線変更の要否の判定方法は他の方法でもよい。ユーザによる操作は、例えば、車線変更を行うために自動運転モードを実行するためのスイッチ等の操作である。
ステップS1にて、制御装置180は自車位置検出装置120から自車両の現在位置の情報を含む検出データを取得する。ステップS2にて、制御装置180はセンサ群110から、自車両の周囲に位置する複数の他車両の車両状態を示す情報を含む検出データを取得する図3Aの例では、自車両Aは、他車両P(前方車両P)と他車両Q(後方車両Q)との間で、前方車両Pよりも後方車両Qに近い位置を走行しており、自車両Aの制御装置180は、他車両P、Qの検出データを取得する。なお、制御装置180は、以下のステップS3以降の制御処理を実行しつつ、自車両の車両状態に関する検出データの取得及び他車両の車両状態に関する検出データの取得を行っており、ステップS3以降の制御処理において、検出データを適宜使っている。
ステップS3にて、制御装置180は、ステップS2の制御フローで取得された複数の車両の検出データを用いて、車線変更先の前後に位置する他車両を特定する。車線変更先は、隣接車線上であって、複数の車両の間に位置する。複数の車両が3台以上ある場合には、制御装置180は、最も車間距離が長い領域を車線変更先に設定する。
ステップS4にて、制御装置180は、自車両の車速が前方車両の車速及び後方車両の車速のうち少なくともいずれか一方の車速と対応するように、自車両の車速を制御する。すなわち、制御装置180は、自車両の現在の位置、前方車両の現在の位置、及び、後方車両の現在の位置に基づき、自車両の進行方向において、自車両が前方車両と後方車両との間で、前方車両及び/又は後方車両と並列して走行できるように、自車両の車速を制御する。例えば、自車両が後方車両の後方の位置で走行しており、前方車両の車速が後方車両の車速より高い場合には、制御装置180は、自車両の車速が前方車両の車速と一致するように、自車両の車速を制御する。これにより、自車両は車速の遅い後方車両を追い越して、自車両は前方車両と後方車両との間で前方車両と並走できる状態となる。また、自車両が前方車両の前方を走行しており、前方車両の車速が後方車両の車速より高い場合には、制御装置180は、自車両の車速が後方車両の車速と一致するように、自車両の車速を制御する。これにより、前方車両が自車両を追い越して、自車両は前方車両と後方車両との間で後方車両と並走できる状態となる。なお、制御装置180は、自車両の車速が前方車両の車速と後方車両の車速との平均車速と一致させることで、自車両の車速を、前方車両の車速及び後方車両の車速と対応させてもよい。また、制御装置180は、自車両の車速が前方車両の車速と後方車両の車速との平均車速より高く、前方車両の車速より低くなるように、自車両の車速を制御してもよい。これにより、自車両が前方車両を追い越すことがなくなるため、自車両が前方車両を追い越すという誤解を、後方車両に与えることを防止できる。
ステップS5にて、制御装置180は、前方車両と後方車両との間の車間距離を算出し、算出された車間距離と車線変更可能領域の下限値(Llim)とを比較する。そして、算出された車間距離が車線変更可能領域の下限値(Llim)以上である場合には、制御装置180は、車線変更可能領域を設定できると判定し、隣接車線上で、前方車両と後方車両の間に車線変更可能領域を設定する。一方、算出された車間距離が車線変更可能領域の下限値(Llim)未満である場合には、制御装置180は、車線変更可能領域を設定できないと判定し、ステップS1の制御フローを実行する。すなわち、制御装置180は、前方車両と後方車両との間の車間距離と車線変更可能領域の下限値(Llim)とを比較することで、車線変更可能か否かを判定している。図3Aの例では、前方車両Pと後方車両Qとの間の車間距離(LM)は車線変更可能領域の下限値(Llim)より長く、車線変更可能領域Mが前方車両Pと後方車両Qとの間に設定される。
ステップS6にて、制御装置180は車線変更可能領域の中央に、車線変更完了地点(最終目標点)を設定する。図4の例では、車線変更完了地点mは、x軸方向では隣接車線Tの中心に位置し、y軸方向では前方車両Pと後方車両Qと車間距離の中点に位置する。
ステップS7にて、制御装置180は、走行車線上であり、走行車線に沿う方向で車線変更完了地点mよりも前方の位置に、車線変更開始地点を設定する。また制御装置180は、前方車両の前端より後方に、所定距離を空けた位置に車線変更開始地点を設定する。車線変更開始点が、前方車両よりも前方に設定された場合には、後方車両のドライバーは、自車両が前方車両を追い越そうとしており、自身の前方のスペースに合流しないと判断する恐れがある。そこで本実施形態では、車線変更開始点は前方車両の前端より後方の位置に設定されている。また、車線変更開始点のx軸方向の位置は、前方車両までの距離が所定の幅以上になるように設定される。所定の幅は、自車両及び/又は他車両の車速、道路形状等に応じて決まる。例えば、制御装置180は、自車両の車速が高いほど、所定の幅が広くなるように、所定の幅の大きさを設定する。図3Aの例では、車線変更開始点nは、x軸方向では走行車線Sの中心に位置し、y軸方向では、車線変更完了地点mよりも前方であって、前方車両Pの後端よりも前方に位置する。
ステップS8にて、制御装置180は、自車両の位置を後方車両に対して相対的に前方に移動させるために、加速制御を行う。このとき、制御装置180は、自車両の車速が少なくとも後端車両の車速よりも高くなるように自車両の車速を制御する。なお、後方車両が減速している場合には、自車両を減速させることで、自車両の位置を後方車両に対して相対的に前方に移動させてもよい。
ステップS9にて、制御装置180は、自車両の現在位置が車線変更開始地点と一致するか否かを判定する。なお、自車両の現在位置と車線変更開始地点の一致は、完全に一致する必要はなく、例えば、自車両の現在位置が車線変更開始地点を中心といた所定範囲内に含まれる場合を、自車両の現在位置と車線変更開始地点が一致していると判定してもよい。自車両の現在位置が車線変更開始地点と一致しない場合には、制御装置180はステップS8の制御フローを実行する。図3Bの例では、自車両Aが加速し、自車両Aの位置が後方車両Qの位置より相対的に前に移動し、自車両Aの位置が車線変更開始地点nと一致している。
自車両の現在位置が車線変更完了地点と一致する場合には、ステップS10からステップS13までの制御フローで示される車線変更制御を実行する。すなわち、自車両の位置が車線変更開始点に位置する時から、車線変更制御を実行している。ステップS10にて、制御装置180は、自車両が車線変更開始地点から車線変更完了地点に向けて減速するように、自車両の車速を制御する。ステップS11にて、制御装置180は、自車両が車線変更開始地点から車線変更完了地点に向けて移動するように、駆動制御装置150を介して、操舵指令をステアリングアクチュエータ170に出力して自車両の操舵を制御する。また、制御装置180は、自車両の車速及び操舵を制御する際に、自車両と前方車両との間のマージンを狭くし、自車両と後方車両との間のマージンを広くした状態で自車両を移動させる。
図3Cを用いて、ステップS10及びステップS11の制御処理を説明する。図3Cに示すように自車両Aは車線変更開始地点nから車線変更完了地点mに向かって移動する。このとき、自車両Aと前方車両Pとの間の距離L1が自車両Aと後方車両Qとの間の距離L2より短くなるように、制御装置180は自車両Aの位置を制御する。例えば、車線変更制御を実行中に後方車両Qが急に加速した場合には、自車両Aと後方車両Qとの間のマージン(距離L2に相当)は広いため、自車両Aは余裕をもって加速できる。そのため、操舵制御の低下を抑制できる。また、車線変更制御を実行中に前方車両Pが急に減速した場合には、自車両Aも減速する必要があるが、操舵制御の精度は減速時の方が高くなるため、前方車両Pの減速に応じて自車両Aを減速させても操舵制御の精度は低下しにくい。
ステップS12にて、制御装置180は、車線変更制御の実行中に、車線変更可能領域の長さLMが車線変更可能領域の下限値(Llim)以上であるか否かを判定する。車線変更可能領域の長さLMが車線変更可能領域の下限値(Llim)以上である場合には、制御装置180はステップS13の制御フローを実行する。車線変更可能領域の長さLMが車線変更可能領域の下限値(Llim)未満である場合には、制御装置180はステップS14の制御フローを実行する。
ステップS13にて、制御装置180は、自車両の現在位置が車線変更完了地点と一致するか否かを判定する。なお、自車両の現在位置と車線変更完了地点の一致は、完全に一致する必要はなく、例えば、自車両の現在位置が車線変更完了地点を中心といた所定範囲内に含まれる場合を、自車両の現在位置と車線変更完了地点が一致していると判定してもよい。車両の現在位置が車線変更完了地点と一致しない場合には、制御装置180はステップS10の制御フローを実行する。一方、車両の現在位置が車線変更完了地点と一致した場合には、制御装置180は車線変更制御を終了する。図3Dの例では、自車両Aの現在位置が車線変更完了地点mと一致するため、車線変更制御が終了する。これにより図2に示す制御フローは終了する。
ステップS12の制御処理において、車線変更可能領域の長さLMが車線変更可能領域の下限値(Llim)未満であると判定した場合には、制御装置180は、車線変更制御を中止する。そして、図2に示す制御フローは終了する。
上記のように本実施形態では、隣接車線を走行する複数の他車両の検出データを取得し、複数の他車両のうち前方車両と後方車両をそれぞれ特定し、車線変更可能領域を前方車両と後方車両との間で隣接車線上に設定し、自車両の走行車線上であり、走行車線に沿う方向で車線変更可能領域の中央よりも前方の位置に、車線変更開始点を設定し、自車両の位置が車線変更開始点に位置する時から、自車両が車線変更開始点から車線変更可能領域に向けて減速するように、車線変更制御を実行する。これにより、車線変更完了地点よりも前方の位置から、車線変更先に向けて減速制御となるため、車線変更する時に操舵制御の精度が低下することを抑制できる。
ここで、車両の状態と操舵制御の精度の関係について説明する。車両の角速度は、概ね、比例定数Aに対して、車速及び舵角を乗じた値で近似できる。車両の姿勢が、Δθの角度変化量で変化した場合には、車両は、舵角変化量(Δθ)に車速(V)を乗じた値分、これまでの軌道から横方向にずれることになる。このことから、車速が高くなるほど、車両は、わずかな舵角変化で横方向に大きく移動する。また、操舵制御では、車速に応じて操舵指令値を決めているが、システムの遅延時間があるため、制御演算時の速度と、指令値が機構に反映される時の速度は異なる。そして、加速制御時の速度は、制御演算時の速度より高いため、本来よりも過大な操舵量が適用される可能性が高く、操舵制御の精度が低下しやすい。一方、減速時は、制御演算時の速度よりも速度が低いため、本来よりも過小な操舵量になる傾向がある。減速時には、操舵量が過少になる傾向はあるが、横方向への移動速度が遅くなるだけで、操舵制御の精度への影響は小さい。
加速制御を行った場合には、車速は上昇する結果、車速は高速域になり易い。そのため、自車両が車線変更を行う際に、自車両の走行車線から隣接車線に加速しながら移動した場合には、高速域で操舵を行う可能性が高く、少しの操舵の誤差又は操作量によって、車両挙動に与える影響が大きくなる。本実施形態では、自車両が走行する車線から隣接車線に移動する際には、車線変更先に向けて減速制御となるため、車速が減少し、より低速域で車線変更が行われる。その結果として、操舵制御の精度への影響を抑制することができる。
また本実施形態では、自車両が走行車線上を走行する時の車速が、前方車両の車速及び後方車両の車速のうち少なくともいずれか一方の車速と対応するように、自車両の車速を制御し、自車両の車速を制御した後に、前方車両と後方車両との間の距離が所定の閾値(Llim)以上であるか否かを判定し、前方車両と後方車両との間の距離が所定の閾値(Llim)以上である場合に、車線変更可能領域を設定する。すなわち、自車両の車速を、車線変更先の車線を走行する他車両の車速に合わせた状態で、複数の他車両間の車間距離が車間距離に適した距離以上になった場合に車線変更制御が実行される。これにより、より安全性の高い車線変更制御を実行できる。
また本実施形態では、自車両が走行車線上を走行する時の車速が、前方車両の車速と後方車両の車速との平均車速より高く、前方他車両の車速より低くなるように、自車両の車速を制御する。これにより、自車両が前方車両を追い抜くという誤解を後方車両に与えることなく、車線変更を実現できる。
また本実施形態では、車線変更制御を実行している時に、車線変更可能領域の隣接車線に沿う方向の長さが閾値(Llim)未満になった場合には、車線変更制御を中止する。これにより、例えば後方車両が加速し、車線変更先のスペースが狭まったら、当該スペースに対する車線変更制御を中止できる。