JP7272112B2 - サーボシステムのパラメータ同定方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、図10に示すように、トルク指令信号をハイパスフィルタ11により演算した信号ΔTbとモータの加速度フィードバック信号をハイパスフィルタ12により演算した信号Δbと推定値記憶手段13の出力とを用いて、トルク指令信号の今回値及び前回値の差分の誤差enを求め、加速度フィードバック信号中の振動が所定の閾値以上である時は慣性モーメントの推定ゲインに0以上1未満の係数αを掛けた値を誤差enに乗算し、上記振動が閾値未満である時は推定ゲインをそのまま誤差enに乗算することにより、定常的な外乱や振動に影響されずに慣性モーメント推定値Jnを逐次同定する方法が記載されている。
図13はパラメータ同定部55を示しており、内部信号ベクトル[φ]を構成する内部信号q1,q1’,q2及び外乱補償信号daを用いた乗算や積分を行って推定誤差δJ*,δD*及び定常外乱Tc *を演算し、オブザーバモデルの慣性モーメントJa及び粘性抵抗係数Daを用いて慣性モーメント同定値J*及び粘性抵抗係数同定値D*を求めると共に、Tc *をクーロン摩擦同定値としてそのまま出力し、内部信号q0と外乱補償信号daとに基づいて定常外乱同定値dc *を求めている。
また、同じ機械を同じ条件で運転する場合において、通常、摩擦トルクや粘性抵抗係数は大きく変化することはないが、機械に異常が生じた場合に、著しい異常が生じる前兆として摩擦トルク等が大きく変化して見える場合がある。この種の変化を正確にとらえることができれば事故予防等に適用可能であるが、同じ機械を同じ条件で運転する目的の装置に対して日常的に各種パラメータを監視する目的の特殊運転を加えることは、可能であれば回避したいという要請がある。
更新のための所定条件を満たしている際の、モータ加速度とモータ速度とモータ速度の符号と印加トルクとの4信号からなる時系列データに基づいて、前記制御対象の慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを同定するサーボシステムのパラメータ同定方法において、
前記所定条件は、モータ速度の絶対値が第1閾値より大きく、かつ、モータ加速度の絶対値が第2閾値より大きいことであり、
時刻tiにおける前記4信号をそれぞれXk(ti)(k=1~4)と表記した時に、時刻tiにおいてモータ速度及びモータ加速度が前記所定条件を満たしている場合にのみ更新する変数Skl=Σ[Xk(ti)×Xl(ti)](k,l=1~4)を定義し、モータ速度の絶対値が前記第1閾値以下である間は前記変数Sklにゼロを与え、モータ速度の絶対値が前記第1閾値より大きくなった時点で前記変数Sklの更新を開始し、その後にモータが減速してモータ速度の絶対値が前記第1閾値以下になった時点で前記変数Sklの更新を完了し、後述する数式1の解として慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを同時に同定することを特徴とする。
前記数式Aを解いて慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを同定した直後に、その同定結果と前記Sklと前記Sklの更新回数である積算カウント数SUM=Σ1とを用いて、後述する数式5により求めた推定誤差εが所定の閾値εmaxを上回った場合にその時の同定結果を無効とすることを特徴とする。
数式1の解として得られる慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfの同定結果を第1同定結果と定義し、かつ、前記第1同定結果の移動平均値を第2同定結果と定義すると共に、前記第1同定結果が有効値として更新される度に移動平均演算を実行して前記第2同定結果を更新し、この第2同定結果である慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを制御に用いることを特徴とする。
前記第2同定結果を得るための移動平均点数及び移動平均値のリセットタイミングは、慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfのそれぞれについて個別に与えられることを特徴とする。
数式1の解として得られる慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfの同定結果を第1同定結果と定義し、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfについては前記第1同定結果の移動平均値として得られる第2同定結果を定義し、前記第1同定結果が有効値として更新される度に移動平均演算を実行して前記第2同定結果を更新し、前記サーボシステムの制御には前記第2の同定結果を用いると共に、
クーロン摩擦Tfについては、前記第1同定結果に対して速度極性別の移動平均値としてそれぞれ得られる第3同定結果及び第4同定結果を定義し、前記第1同定結果が有効値として更新される度に、速度極性に対応する側の移動平均演算を実行して前記第3同定結果または第4同定結果を更新し、前記サーボシステムの制御には速度極性に応じて前記第3同定結果または第4同定結果を用いることを特徴とする。
前記第3同定結果または第4同定結果を得るための移動平均点数及び移動平均値のリセットタイミングは、慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfのそれぞれについて個別に与えられることを特徴とする。
加減速運転を行う毎に慣性モーメントが変化するサーボシステムでは、前回までの運転により推定した粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを適用し、モータの印加トルクから粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを減じた値とモータ加速度とに基づいて慣性モーメントの暫定推定値をモータ加速中に求め、モータの減速過程においてモータの速度絶対値が前記第1閾値以下になって慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfの各真値が得られるまで、前記暫定推定値を前記サーボシステムの制御に用いることを特徴とする。
図1は、この実施形態に係る機械系パラメータ同定方法が適用されるサーボシステムのブロック図である。このサーボシステムは、モータ及び負荷機械からなる制御対象100の運動を制御するシステムであって、前記モータを駆動するために、速度指令v*及びモータ速度vに基づいて速度制御器101からインバータ等の電流源102にトルク指令τ*を与え、このトルク指令τ*に応じた電流Iをモータに通電するシステムであり、モータによる印加トルクτ(=KτI)と共にモータ速度v及び加速度aを取得可能なシステムであるものとする。なお、図1において、103は減算手段、104は伝達関数(1/Js)によって表される制御対象100のモデル、105は近似摩擦特性を示す。
更に、負荷トルクは、モータのゼロ速度近傍を除いて、モータ速度vに対してDv+Tfsign(v)という形で近似可能であることを想定している。なお、sign(v)はモータ速度vの符号である。
上記の負荷トルク(Dv+Tfsign(v))において、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfは、モータ及び負荷機械からなる制御対象の全慣性モーメント(以下、単に慣性モーメントという)Jと共に未知のパラメータであり、本発明による同定対象の機械系パラメータであるものとする。
この図2以降のフローチャートは、モータ速度vやモータ加速度a等の各データが更新される度に実行しても良いし、データ更新周期の整数倍の周期により実行しても良い。また、各フローチャートにおいて、「計測中」とは、パラメータ同定に関する計測を行っていることを示している。
更に、各フローチャートでは、サンプリング時刻tiにおけるモータ加速度a、モータ速度v、モータ速度符号sign(v)、印加トルクτからなる4つの信号Xk(ti)(k=1~4)を、それぞれX1,X2,X3,X4と表記することとする。前述したごとく、モータ加速度X1はモータ速度X2の数値微分により求めた値でも良く、また、モータ速度X2はモータの回転子位置の数値微分により求めた値でも良い。
仮に、J,D,Tfが全て真値であってモデル化誤差もない場合、トルクτはモータの加速度a及び速度vを用いて数式2のように表される。
従って、数式2によりモデル化した場合の二乗誤差fは、数式3となる。
同定時の運転パターンを指定しない場合、計測完了時におけるデータの点数や変数Sklの値のオーダーを事前に予測することはできないが、変数Sklに関して浮動小数点演算を採用することで、オーバーフロー等のリスクを回避することができる。
この第2実施例では、第1実施例における各ステップに加えて、ステップS304により、行列要素Sklと共にSklの更新回数である積算カウント数としてSUM←SUM+1、すなわちSUM=Σ1を得ておく。そして、Sklの更新を完了した時点で数式1によりJ,D,Tfを算出し(S308,S309)、その後に、数式5(特許請求の範囲における数式Bと同一)によって表される推定誤差εを計算し(S310)、この推定誤差εが閾値εmaxより大きい場合にはその時に得たJ,D,Tfを破棄し(S311Yes,S312)、推定誤差εが閾値εmax以下である場合にのみ、J,D,Tfを同定結果として採用する(S311No,S313)。
なお、図3におけるステップS301~S303,S305~S309は、図2に示した第1実施例のステップS201~S203,S205~S209にそれぞれ相当している。
実際のトルクτに対して、数式2によりモデル化した場合の1点あたりの二乗誤差f’は数式6のように表される。
この第3実施例が第1実施例と異なる部分は、数式1により算出した値を第1同定結果とし(S409)、その移動平均値を第2同定結果として(S410)、この第2同定結果による各パラメータを制御に採用することにある。
図5(a)に示すように、ステップS409による第1同定結果が入力される移動平均処理手段501では、各パラメータJ,D,Tfに対して移動平均点数Nをそれぞれ設定可能であり、また、リセット指令に従って各パラメータJ,D,Tfの移動平均値に対するリセットも個別に実行可能とする。例えば、ある装置を初めて駆動する場合には、全てのパラメータの移動平均値をリセットしてから起動し、また、同じ装置について慣性モーメントJだけが増減した場合には、慣性モーメントJに関する移動平均値のみをリセットすれば良い。なお、各パラメータに対する移動平均点数Nは、それぞれの同定結果のばらつきに基づいて設定すると良い。
図6のステップS601~S612は、図3に示した第2実施例のステップS301~S312にそれぞれ相当し、図6のステップS613は図4に示した第3実施例のステップS410に相当している。
すなわち、この第4実施例は、数式5により求めた推定誤差εが閾値εmaxより大きい場合、その時の同定結果を無効として破棄し(S611Yes,S612)、推定誤差εが閾値εmax以下である場合の同定結果を第1同定結果として移動平均処理を行ってその移動平均値を第2同定結果として出力する(S611No,S613)ものであり、第2実施例と同様に、誤った同定結果によって制御が乱されるのを防ぐことができる。
図7のステップS701~S709は、図4に示した第3実施例の実施例のステップS401~S409にそれぞれ相当している。
この第5実施例が第3実施例と異なるのは、クーロン摩擦Tfに関して、モータ速度vの極性、すなわちモータの回転方向に応じて個別に移動平均処理を行い、実際の制御においても回転方向に応じて移動平均値を求めることで同定したクーロン摩擦Tf(回転方向の正逆に応じた第3同定結果、第4同定結果)を用いる点である。一方、慣性モーメントJ及び粘性抵抗Dについては、モータ速度vの極性を考慮せずに移動平均処理を行う(図7のステップS710)。
本実施例のようにモータの回転方向ごとにクーロン摩擦Tfを同定し、その結果を用いて回転方向に応じた摩擦補償を行うことで、サーボ制御性能の向上を図ることができる。
図8のステップS801~S812は、図6に示した第4実施例のステップS401~S412にそれぞれ相当し、図8のステップS813は、図7に示した第5実施例のステップS710に相当している。
この第6実施例によれば、第4実施例と同様に、誤った同定結果に乱されるのを防ぐことができ、また、第5実施例と同様に、回転方向に応じた摩擦補償を可能にしてサーボ制御性能の向上を図ることができる。
この第7実施形態は、加減速運転を行う毎に慣性モーメントJが変わり得るサーボシステムにおいて、前回までの運転により推定した粘性抵抗係数Dとクーロン摩擦Tfとを用いて、印加トルクから粘性抵抗係数Dとクーロン摩擦Tfとを減じた値とモータ加速度とに基づいて、慣性モーメントJの暫定推定値をモータ加速中に求めるようにしたものである。
ここでは、モータ速度vのパターンが台形(台形加減速パターン)である場合を例示しているが、速度パターンはこの形に限らなくても良い。
この場合、慣性モーメントJの暫定推定値を求めるのとは別に、前述した方法によりモータ速度v>vminとなってからv≦vminとなるまでの期間ΔT0を用いてJ,D,Tfの同定も並行して行う。その上で、慣性モーメントJが確定する前にその暫定推定値を求める。
D,Tfが真値であれば、τaccは慣性×加速度に一致する。加速度aの絶対値がaminを超える期間において、慣性モーメントJの暫定推定値Jtempを、例えば数式8のように更新する(αは1未満の正数)。
なお、図9において、時刻t1~t4の期間ΔT0は、前述したごとくパラメータ同定に関する計測を行っている「計測中」の期間であり、時刻t1~t2の期間ΔT1、及び、時刻t3~t4の期間ΔT2は、例えば図2におけるステップS202,S203がYes側に分岐して変数Sklが更新されている期間に相当する。
101:速度制御器
102:電流源
103:減算手段
104:モデル
105:近似摩擦特性
501:移動平均処理手段
501a:リングバッファ
501b:算術平均手段
Claims (8)
- トルク指令に応じた電流をモータに通電して前記モータ及びその負荷機械からなる制御対象の運動を制御するサーボシステムを対象として、
更新のための所定条件を満たしている際の、モータ加速度とモータ速度とモータ速度の符号と印加トルクとの4信号からなる時系列データに基づいて、前記制御対象の慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを同定するサーボシステムのパラメータ同定方法において、
前記所定条件は、モータ速度の絶対値が第1閾値より大きく、かつ、モータ加速度の絶対値が第2閾値より大きいことであり、
時刻tiにおける前記4信号をそれぞれXk(ti)(k=1~4)と表記した時に、時刻tiにおいてモータ速度及びモータ加速度が前記所定条件を満たしている場合にのみ更新する変数Skl=Σ[Xk(ti)×Xl(ti)](k,l=1~4)を定義し、モータ速度の絶対値が前記第1閾値以下である間は前記変数Sklにゼロを与え、モータ速度の絶対値が前記第1閾値より大きくなった時点で前記変数Sklの更新を開始し、その後にモータが減速してモータ速度の絶対値が前記第1閾値以下になった時点で前記変数Sklの更新を完了し、下記の数式Aの解として慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを同時に同定することを特徴とする、サーボシステムのパラメータ同定方法。
- 請求項1または2に記載したサーボシステムのパラメータ同定方法において、
前記数式Aの解として得られる慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfの同定結果を第1同定結果と定義し、かつ、前記第1同定結果の移動平均値を第2同定結果と定義すると共に、前記第1同定結果が有効値として更新される度に移動平均演算を実行して前記第2同定結果を更新し、この第2同定結果である慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを制御に用いることを特徴とする、サーボシステムのパラメータ同定方法。 - 請求項3に記載したサーボシステムのパラメータ同定方法において、
前記第2同定結果を得るための移動平均点数及び移動平均値のリセットタイミングは、慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfのそれぞれについて個別に与えられることを特徴とする、サーボシステムのパラメータ同定方法。 - 請求項1または2に記載したサーボシステムのパラメータ同定方法において、
前記数式Aの解として得られる慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfの同定結果を第1同定結果と定義し、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfについては前記第1同定結果の移動平均値として得られる第2同定結果を定義し、前記第1同定結果が有効値として更新される度に移動平均演算を実行して前記第2同定結果を更新し、前記サーボシステムの制御には前記第2の同定結果を用いると共に、
クーロン摩擦Tfについては、前記第1同定結果に対して速度極性別の移動平均値としてそれぞれ得られる第3同定結果及び第4同定結果を定義し、前記第1同定結果が有効値として更新される度に、速度極性に対応する側の移動平均演算を実行して前記第3同定結果または第4同定結果を更新し、前記サーボシステムの制御には速度極性に応じて前記第3同定結果または第4同定結果を用いることを特徴とする、サーボシステムのパラメータ同定方法。 - 請求項5に記載したサーボシステムのパラメータ同定方法において、
前記第3同定結果または第4同定結果を得るための移動平均点数及び移動平均値のリセットタイミングは、慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfのそれぞれについて個別に与えられることを特徴とする、サーボシステムのパラメータ同定方法。 - 請求項1~6の何れか1項に記載したサーボシステムのパラメータ同定方法において、
加減速運転を行う毎に慣性モーメントが変化するサーボシステムでは、前回までの運転により推定した粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを適用し、モータの印加トルクから粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfを減じた値とモータ加速度とに基づいて慣性モーメントの暫定推定値をモータ加速中に求め、モータの減速過程においてモータの速度絶対値が前記第1閾値以下になって慣性モーメントJ、粘性抵抗係数D及びクーロン摩擦Tfの各真値が得られるまで、前記暫定推定値を前記サーボシステムの制御に用いることを特徴とする、サーボシステムのパラメータ同定方法。 - 請求項1~7の何れか1項に記載したサーボシステムのパラメータ同定方法において、
前記変数Sklの演算に浮動小数点演算を用いることを特徴とする、サーボシステムのパラメータ同定方法。
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