以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1のタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる方向をいう。タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤ1のタイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から最も離れている部分間の距離である。
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ1の要部を示すタイヤ子午断面図である。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、路面に接地する接地面を有し、環状に形成されるトレッド部(図示省略)のタイヤ幅方向における両側に一対のサイドウォール部10が配置されており、サイドウォール部10は、それぞれトレッド部からタイヤ径方向内側に延びて形成されている。サイドウォール部10は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出する部分になっており、ゴム材料であるサイドゴム11を有している。サイドウォール部10が有するサイドゴム11は、ゴム硬さが50以上65以下の範囲内になっている。なお、本実施形態では、ゴム硬さは、JIS K6253に準拠したJIS-A硬度により示されるゴム硬さになっている。
タイヤ幅方向両側の各サイドウォール部10のタイヤ径方向内側には、それぞれビード部20が配置されている。即ち、ビード部20は、サイドウォール部10と同様に一対が配置されている。一対のビード部20のそれぞれには、ビードコア30が配置されている。ビードコア30は、スチールワイヤであるビードワイヤ31をリング状に巻くことにより形成されており、タイヤ回転軸を中心とする円環状の形状で形成されている。また、ビードワイヤ31をリング状に巻くことにより形成されているビードコア30は、タイヤ子午断面で見た場合における形状が、略六角形の形状で形成されている。具体的には、ビードコア30は、ビードコア30全体で見た場合におけるビードコア30の内周面とビードコア30の外周面とが略平行に形成されており、タイヤ幅方向における両端側の位置に、タイヤ幅方向に突出する角部を有する、略六角形の形状で形成されている。
それぞれのビードコア30のタイヤ径方向外側には、ビードフィラー21が配置されている。ビードフィラー21は、後述するカーカス40がビードコア30の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成される空間に少なくとも一部が配置されるゴム材になっている。ビードフィラー21は、ビードコア30の外周面に当接して配置される第1ビードフィラー25と、第1ビードフィラー25よりもタイヤ径方向外側寄りの位置に配置される第2ビードフィラー26とを有している。第1ビードフィラー25と第2ビードフィラー26とは、ゴム材の物性が互いに異なっており、第2ビードフィラー26のゴム硬さよりも、第1ビードフィラー25のゴム硬さの方が硬くなっている。本実施形態では、第1ビードフィラー25のゴム硬さは、75以上90以下の範囲内になっており、第2ビードフィラー26のゴム硬さは、55以上70以下の範囲内になっている。
タイヤ幅方向における両側のビード部20間には、カーカス40が架け渡されている。即ち、カーカス40は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部20のうち、一方のビード部20から他方のビード部20にかけて配置されている。カーカス40は、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア30間にトロイダル状に架け渡されて、空気入りタイヤ1の骨格を構成している。また、カーカス40は、ターンアッププライ41とターンダウンプライ45とを有しており、ターンアッププライ41とターンダウンプライ45とは、カーカス40が配置される範囲の大部分で積層されている。これらのターンアッププライ41とターンダウンプライ45とは、いずれもテキスタイルコードを含んで構成されている。
ターンアッププライ41とターンダウンプライ45とのうち、ターンアッププライ41は、ビードコア30及びビードフィラー21を包み込むように、ビード部20でビードコア30のタイヤ幅方向内側からビードコア30のタイヤ幅方向外側に折り返されている。即ち、ターンアッププライ41は、ビード部20に位置する部分が、ビードコア30のタイヤ幅方向内側からビードコア30のタイヤ径方向内側を通り、ビードコア30のタイヤ幅方向外側にかけて配置されるように、ビード部20でビードコア30周りに折り返されている。このため、ターンアッププライ41は、一対のビード部20間に架け渡されるアッププライ本体部42と、アッププライ本体部42から連続して形成されてタイヤ幅方向外側に折り返されるアッププライターンアップ部43とを有している。
このうち、アッププライ本体部42は、ターンアッププライ41における、一対のビード部20がそれぞれ有するビードコア30のタイヤ幅方向内側同士の間に亘って形成される部分になっている。アッププライターンアップ部43は、ビードコア30のタイヤ幅方向内側でアッププライ本体部42から連続して形成され、ビードコア30のタイヤ径方向内側を通ってタイヤ幅方向外側に折り返される部分になっている。本実施形態では、アッププライターンアップ部43のタイヤ径方向外側の端部であるターンアップ部外側端部43aは、タイヤ径方向における位置が、ビードフィラー21のタイヤ径方向外側の端部であるビードフィラー外側端部22と、ビードコア30との間の位置になっている。このため、アッププライターンアップ部43は、ターンアップ部外側端部43aが、ビードフィラー21のビードフィラー外側端部22よりもタイヤ径方向内側に位置している。
また、ターンダウンプライ45は、ターンアッププライ41の外側に配置されている。このため、ビード部20の位置では、ターンダウンプライ45は、ターンアッププライ41のタイヤ幅方向外側に配置されている。詳しくは、ターンダウンプライ45は、ビード部20の位置では、ビードフィラー21のタイヤ幅方向外側に配置されており、また、ターンアッププライ41のアッププライターンアップ部43に対しても、タイヤ幅方向外側に配置されている。
このため、ターンダウンプライ45は、タイヤ径方向におけるターンアップ部外側端部43aとビードフィラー外側端部22との間の範囲では、ビードフィラー21のタイヤ幅方向外側にビードフィラー21に隣接して配置され、ターンアップ部外側端部43aよりもタイヤ径方向内側の範囲では、アッププライターンアップ部43のタイヤ幅方向外側にアッププライターンアップ部43に重ねて配置されている。また、ターンダウンプライ45は、ビードフィラー21のタイヤ径方向外側では、ターンアッププライ41のアッププライ本体部42の外側に、アッププライ本体部42に重ねて配置されている。このように配置されるターンダウンプライ45は、ターンダウンプライ45のタイヤ径方向内側の端部であるターンダウンプライ内側端部46が、タイヤ径方向においてビードコア30が配置される範囲内に位置している。
また、ビード部20は、リムクッションゴム50を有している。リムクッションゴム50は、ビードコア30のタイヤ径方向内側からビードコア30のタイヤ幅方向外側に亘って配置されるゴム材になっている。詳しくは、リムクッションゴム50は、ビードコア30のタイヤ径方向内側の位置では、カーカス40のターンアッププライ41のタイヤ径方向内側に配置され、ビードコア30のタイヤ幅方向外側の位置では、カーカス40のターンアッププライ41やターンダウンプライ45のタイヤ幅方向外側に配置されている。このように配置されるリムクッションゴム50は、ゴム硬さが65以上75以下の範囲内になっている。
さらに、ビード部20近傍におけるターンダウンプライ45のタイヤ幅方向外側には、中間ゴム60が配置されている。中間ゴム60は、ターンダウンプライ45のタイヤ幅方向外側で、タイヤ径方向においてリムクッションゴム50が配置される位置と、リムクッションゴム50のタイヤ径方向外側の位置とに亘って配置されている。つまり、中間ゴム60のタイヤ径方向外側の端部である中間ゴム外側端部61は、リムクッションゴム50のタイヤ径方向外側の端部であるリムクッションゴム外側端部51よりタイヤ径方向外側に位置している。また、中間ゴム60は、タイヤ径方向における位置がリムクッションゴム50と同じ位置になる範囲では、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間に配置されており、リムクッションゴム50のタイヤ径方向外側の位置では、中間ゴム60は、ターンダウンプライ45とサイドゴム11との間に配置されている。このように配置される中間ゴム60は、ゴム硬さがリムクッションゴム50のゴム硬さより8以上小さくなっており、中間ゴム60のゴム硬さは、50以上65以下の範囲内になっている。
図2は、図1に示すリムクッションゴム50と中間ゴム60の断面積についての説明図である。図3は、図2に示すビードコア30付近の詳細図であり、ビードコア中央線LCについての説明図である。リムクッションゴム50と中間ゴム60とは、タイヤ子午断面において、リムクッションゴム外側端部51を通るリムクッションゴム外端線LRと、ビードコア中央部32を通るビードコア中央線LCと、の間に位置するリムクッションゴム50の断面積Arcと中間ゴム60の断面積Amとの比率が、0.25≦Am/(Arc+Am)≦0.75の範囲内になっている。
この場合におけるリムクッションゴム外端線LRは、タイヤ子午断面において、カーカス40のターンアッププライ41におけるサイドウォール部10からビードコア30のタイヤ幅方向内側にかけて配置される部分に対して、リムクッションゴム外側端部51から引いた垂線になっている。つまり、リムクッションゴム外端線LRは、タイヤ子午断面において、リムクッションゴム外側端部51を通る、ターンアッププライ41に対する仮想の垂線になっている。
また、ビードコア中央部32は、タイヤ子午断面におけるビードコア30の中央の位置になっており、タイヤ子午断面でのビードコア30の断面形状における、いわゆる幾何中心の位置になっている。また、ビードコア中央線LCは、タイヤ子午断面において、ビードコア中央部32を通ってタイヤ幅方向に延びる仮想の線になっており、詳しくは、ビードコア中央部32からタイヤ幅方向外側に延びる仮想の線になっている。
リムクッションゴム50と中間ゴム60とは、タイヤ子午断面において、このように規定されるリムクッションゴム外端線LRとビードコア中央線LCとの間に位置するリムクッションゴム50の断面積Arcと、リムクッションゴム外端線LRとビードコア中央線LCとの間に位置する中間ゴム60の断面積Amとの比率が、0.25≦Am/(Arc+Am)≦0.75の範囲内になっている。
図4は、図1に示す中間ゴム60の配置形態についての説明図である。中間ゴム60は、中間ゴム外側端部61が、リムクッションゴム50のリムクッションゴム外側端部51よりタイヤ径方向外側に位置しているが、中間ゴム60は、リムクッションゴム50に対して所定の範囲内で、リムクッションゴム50よりもタイヤ径方向外側に突出して配置されている。具体的には、リムクッションゴム50と中間ゴム60とは、タイヤ子午断面におけるビードコア中央線LCとビードコア30の輪郭線33(図3参照)との交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcと、リムクッションゴム外側端部51から中間ゴム外側端部61までの距離Hmとの関係が、0.15≦Hm/Hrc≦1.2の範囲内になっている。
この場合におけるビードコア30の輪郭線33は、タイヤ子午断面におけるビードコア30の表面を構成する複数のビードワイヤ31における、ビードコア30の表面側に露出する部分に接する仮想の直線になっている。また、本実施形態では、ビードコア30は、タイヤ子午断面における形状が略六角形の形状で形成されているが、ビードコア30の輪郭線33は、六角形の角に相当する位置にビードワイヤ31が位置する場合には、六角形の角の部分はビードワイヤ31の外周部により形成され、六角形の角に相当する位置にビードワイヤ31が位置しない場合には、六角形の角の部分は、仮想の直線同士の交点によって形成される。
なお、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcと、リムクッションゴム外側端部51から中間ゴム外側端部61までの距離Hmとの関係は、0.3≦Hm/Hrc≦0.8の範囲内であるのが好ましい。
また、本実施形態では、リムクッションゴム外側端部51から中間ゴム外側端部61までの距離Hmは、5.0mm≦Hm≦50.0mmの範囲内になっている。このリムクッションゴム外側端部51から中間ゴム外側端部61までの距離Hmは、10.0mm≦Hm≦30.0mmの範囲内であるのが好ましい。
また、中間ゴム60は、タイヤ子午断面におけるビードコア中央線LCとビードコア30の輪郭線33との交点Pから、中間ゴム60のタイヤ径方向内側の端部である中間ゴム内側端部62までの距離Bmが、Bm≦15.0mmを満たしている。つまり、中間ゴム60は、交点Pから中間ゴム内側端部62までの距離Bmが、15.0mm以下になっている。また、中間ゴム内側端部62は、タイヤ径方向における位置が、ビードコア30の内周面のタイヤ径方向における位置と外周面のタイヤ径方向における位置との間の位置になっている。このため、中間ゴム内側端部62は、タイヤ径方向においてビードコア30が配置される範囲内に位置しており、換言すると、中間ゴム60は、ビードコア30に対してオーバーラップして配置されている。
図5は、図4に示すリムクッションゴム50とリムフランジ高さHrfとの関係を示す説明図である。リムクッションゴム50は、ビード部20を規定リム70に装着した際に規定リム70に接触する部位に配置され、規定リム70に接触するゴム部材になっている。リムクッションゴム50は、タイヤ子午断面における交点Pから、リムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.20≦Hrc/Hrfを満たしている。なお、規定リム70とは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、ここでいうリムフランジ高さHrfは、リム径の測定点から規定リム70のタイヤ径方向における外側端部までのタイヤ径方向における距離になっている。本実施形態では、タイヤ子午断面における交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcは、20mm以上になっている。
図6は、図1に示す中間ゴム60の厚さについての説明図である。リムクッションゴム50と中間ゴム60とは、タイヤ子午断面における交点Pから、当該交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcの1/2の位置における、リムクッションゴム50と中間ゴム60とを合わせた厚さGtrと中間ゴム60の厚さGmとの比率が、0.3≦Gm/Gtr≦0.7の範囲内になっている。
なお、交点Pから、距離Hrcの1/2の位置は、具体的には、タイヤ子午断面におけるリムクッションゴム50と中間ゴム60との境界線上の位置Pbでの位置になっている。また、交点Pから距離Hrcの1/2の位置Pbにおける、中間ゴム60の厚さGmや、リムクッションゴム50と中間ゴム60とを合わせた厚さGtrは、タイヤ子午断面において、交点Pから距離Hrcの1/2の位置Pbを通り、ターンダウンプライ45に対して直交する仮想線の方向における厚さになっている。また、中間ゴム60は、このように規定される厚さGmが、2.0mm以上になっている。
図7は、図1に示すビードフィラー21及び中間ゴム60とリムフランジ高さHrfとの関係を示す説明図である。ビードフィラー21は、ビードフィラー外側端部22が、中間ゴム60の中間ゴム外側端部61よりもタイヤ径方向外側に位置している。このように形成されるビードフィラー21は、タイヤ子午断面における交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、2.0≦HBF/Hrf≦6.0の範囲内になっている。
また、ビードフィラー21と中間ゴム60とは、タイヤ子午断面における交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、タイヤ子午断面における交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.0≦(HBF-Ham)/Hrfを満たしている。なお、タイヤ子午断面における交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、タイヤ子午断面における交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係は、3.0≦(HBF-Ham)/Hrfを満たすのが好ましい。
さらに、中間ゴム60は、タイヤ子午断面における交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.4≦Ham/Hrf≦3.6の範囲内になっている。
[タイヤ製造方法]
次に、実施形態に係る空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。図8は、タイヤ成形用金型100を用いたタイヤ製造方法を示す説明図である。図8は、タイヤ成形用金型100を備える金型支持装置105を空気入りタイヤ1のタイヤ子午断面で見た金型支持装置105の断面図を示しており、即ち、金型支持装置105の軸方向断面図を示している。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、以下の製造工程により製造される。
まず、空気入りタイヤ1を構成する各種ゴム部材(図示省略)や、カーカスプライ(図示省略)やベルトプライ(図示省略)等の各部材が成形機にかけられて、グリーンタイヤGが成形される。次に、このグリーンタイヤGが、金型支持装置105に装着される(図8参照)。
図8において、金型支持装置105は、支持プレート106と、外部リング107と、セグメント109と、上部プレート110及びベースプレート112と、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113と、タイヤ成形用金型100とを備える。支持プレート106は、円盤形状を有し、平面を水平にして配置される。外部リング107は、径方向内側のテーパ面108を有する環状構造体であり、支持プレート106の外周縁下部に吊り下げられて設置される。セグメント109は、タイヤ成形用金型100の各セクター101に対応する分割可能な環状構造体であり、外部リング107に挿入されて外部リング107のテーパ面108に対して軸方向に摺動可能に配置される。上部プレート110は、外部リング107の内側で、且つ、セグメント109と支持プレート106との間にて、軸方向に昇降可能に設置される。ベースプレート112は、支持プレート106の下方で、且つ、軸方向における支持プレート106の反対側の位置に配置される。
上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113は、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における両側面の形状であるサイドプロファイルの成形面を有する。また、上型サイドモールド111と下型サイドモールド113とは、上型サイドモールド111が上部プレート110の下面側に取り付けられ、下型サイドモールド113がベースプレート112の上面側に取り付けられると共に、それぞれの成形面を相互に対向させて配置される。
タイヤ成形用金型100は、上記のように、トレッドプロファイルを成形可能なトレッド成形面102をもつ分割可能な環状構造を有する。つまり、タイヤ成形用金型100は、タイヤ周方向に分割される複数のセクター101を相互に連結して成る環状構造を有している。タイヤ成形用金型100が有する各セクター101は、製品となる空気入りタイヤ1のトレッド部の成形を行う複数のピース103と、これらのピース103を相互に隣接させて装着するバックブロック104とを備える。1つのピース103は、一定のピッチまたは任意のピッチで分割されたトレッドパターンの一部分に対応し、トレッドパターンの一部分を形成するためのトレッド成形面102を有している。1つのセクター101は、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向に、それぞれ複数のピース103を有しており(図示省略)、複数のピース103が集合することにより、1つのセクター101のトレッド成形面102が構成される。一方、バックブロック104は、複数のピース103を所定の配列で装着して保持する。これにより、1つのセクター101が構成される。
また、タイヤ成形用金型100は、各セクター101が、対応するセグメント109の内周面に取り付けられ、トレッド成形面102を、上型サイドモールド111や下型サイドモールド113の成形面が位置する側に向けて配置される。
次に、グリーンタイヤGが、タイヤ成形用金型100の成形面と上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113の成形面との間に装着される。グリーンタイヤGをタイヤ成形用金型100の装着する際には、グリーンタイヤGの内側にブラダー120を入り込ませ、グリーンタイヤGの内側からブラダー120を装着する。ブラダー120は、ゴム風船状に形成されており、内側から高温・高圧の蒸気を注入することによって膨張し、グリーンタイヤGの内側から、外側方向への圧力を付与することにより、グリーンタイヤGに対して内圧を付与することが可能になっている。ここで、グリーンタイヤGの内側からブラダー120によって内圧を付与する際には、まず、グリーンタイヤGを、上型サイドモールド111と下型サイドモールド113との間に配置し、タイヤ成形用金型100をグリーンタイヤGに対してタイヤ径方向外側に離間させた状態で内圧を付与する、いわゆるシェーピングを行う。これにより、タイヤ成形用金型100がグリーンタイヤGからタイヤ径方向外側に離間している状態で、グリーンタイヤGを膨張させる。タイヤ成形用金型100がグリーンタイヤGからタイヤ径方向外側に離間する状態では、グリーンタイヤGはタイヤ径方向へ膨張が規制されないため、シェーピングでは、グリーンタイヤGはタイヤ径方向に大きく膨張する。
図9は、図8に示すタイヤ成形用金型100を縮径した状態を示す説明図である。ブラダー120によってグリーンタイヤGを膨張させることにより、シェーピングを行ったら、グリーンタイヤGからタイヤ径方向外側に離間しているタイヤ成形用金型100を縮径する。タイヤ成形用金型100の縮径は、支持プレート106を軸方向下方に移動させることにより行う。つまり、支持プレート106を軸方向下方に移動させると、外部リング107が支持プレート106と共に軸方向下方に移動し、外部リング107のテーパ面108がセグメント109を径方向内側に押し出す。これにより、タイヤ成形用金型100が縮径して、タイヤ成形用金型100の各セクター101の成形面が環状に接続する。また、タイヤ成形用金型100が縮径することにより、タイヤ成形用金型100の成形面全体と、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113の成形面とが接続する。これにより、グリーンタイヤGは、タイヤ成形用金型100の成形面、上型サイドモールド111の成形面及び下型サイドモールド113の成形面に囲まれて保持される。
次に、加硫前のタイヤであるグリーンタイヤGが加硫成形される。具体的には、タイヤ成形用金型100を加熱し、グリーンタイヤGの内側からブラダー120によって内圧を付与することにより、グリーンタイヤGを膨張させ、グリーンタイヤGをタイヤ成形用金型100のトレッド成形面102に押圧する。これにより、グリーンタイヤGは加熱され、トレッド部のゴム分子と硫黄分子とが結合して加硫が行われる。すると、タイヤ成形用金型100のトレッド成形面102がグリーンタイヤGに転写されて、トレッド部にトレッドパターンが成形される。
その後に、加硫成形後のタイヤが、製品となる空気入りタイヤ1である製品タイヤとして取得される。このとき、支持プレート106及び上部プレート110が軸方向上方に移動することにより、タイヤ成形用金型100、上型サイドモールド111及び下型サイドモールド113が離間して、金型支持装置105が開く。金型支持装置105が開いたら、加硫成形後のタイヤをタイヤ成形用金型100から取り出す。
空気入りタイヤ1の製造時は、このように、グリーンタイヤGの加硫成形を行う前に、ブラダー120によってグリーンタイヤGを膨張させることによりシェーピングを行うが、カーカス40がターンダウンプライ45を有する場合、ターンダウンプライ45は、シェーピング時にタイヤ径方向外側に引っ張られる。これにより、ターンダウンプライ45に隣接する部材との間にせん断力が生じ、従来の空気入りタイヤでは、このせん断力に起因して不具合が生じる虞がある。
図10は、ターンダウンプライ245を有する従来の空気入りタイヤ201の一例の要部を示すタイヤ子午断面図である。図10は、カーカス240がターンアッププライ241とターンダウンプライ245とを有する従来の空気入りタイヤ201のビード部220付近のタイヤ子午断面図になっている。カーカス240がターンアッププライ241とターンダウンプライ245とを有する場合、ターンアッププライ241は、ビードコア230及びビードフィラー221を包み込むように、ビード部220でビードコア230のタイヤ幅方向内側からビードコア230のタイヤ幅方向外側に折り返されている。また、ターンダウンプライ245は、ターンアッププライ241の外側に配置されており、ビード部220付近の位置では、ターンダウンプライ245は、ターンアッププライ241のタイヤ幅方向外側に配置されている。
さらに、カーカス240がターンアッププライ241とターンダウンプライ245とを有する従来の空気入りタイヤ201では、ビード部220付近の位置では、ターンダウンプライ245のタイヤ幅方向外側にリムクッションゴム250が配置されている。このため、ビード部220付近の位置では、ターンダウンプライ245のタイヤ幅方向外側の面は、リムクッションゴム250に隣接している。
図11は、図10に示す空気入りタイヤ201の製造工程でシェーピングを行った状態を示す要部説明図である。ターンダウンプライ245を有する従来の空気入りタイヤ201の製造工程において、ブラダー120でグリーンタイヤGを膨張させることによりシェーピングを行うと、ターンダウンプライ245はタイヤ径方向外側に引っ張られる。しかし、ターンダウンプライ245に隣接するリムクッションゴム250は、ターンダウンプライ245のタイヤ径方向への動きに追従できず、ターンダウンプライ245とリムクッションゴム250との間にせん断力が発生することがある。この場合、このせん断力によってリムクッションゴム250の一部がターンダウンプライ245から離間し、ターンダウンプライ245とリムクッションゴム250との間に空間Sが出来てしまうことがある。ターンダウンプライ245とリムクッションゴム250との間に空間Sが出来ると、その後の加硫成形の工程で、周囲のゴムが空間Sの方向に流れ易くなることにより、不適切なゴムの流れであるゴム流れ不良が発生し、所望の形状に成形し難くなる虞がある。
これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ターンダウンプライ45のタイヤ幅方向外側で、且つ、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間には、ゴム硬さがリムクッションゴム50のゴム硬さより8以上小さい中間ゴム60が配置されている。これにより、グリーンタイヤGのシェーピング工程において、グリーンタイヤGを膨張させることによりターンダウンプライ45がタイヤ径方向外側に移動しようとする際に、中間ゴム60は、リムクッションゴム50から剥離することなく、ターンダウンプライ45の動きに追従することができる。つまり、中間ゴム60は、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間で、双方から剥離することなく、双方の相対的な動きの差を吸収することができる。
また、中間ゴム60は、中間ゴム外側端部61が、リムクッションゴム外側端部51よりタイヤ径方向外側に位置しているため、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム外側端部51との間の位置も含む、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間の広い範囲に、中間ゴム60を配置することができる。これにより、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によってより確実に吸収することができる。
さらに、リムクッションゴム50と中間ゴム60とは、タイヤ子午断面において、リムクッションゴム外端線LRとビードコア中央線LCとの間に位置するリムクッションゴム50の断面積Arcと中間ゴム60の断面積Amとの比率が、0.25≦Am/(Arc+Am)≦0.75の範囲内であるため、ビード部20の耐久性を確保しつつ、ゴム流れ不良の発生を抑制することができる。つまり、リムクッションゴム50の断面積Arcと中間ゴム60の断面積Amとの比率が、Am/(Arc+Am)<0.25である場合は、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間に位置する中間ゴム60の割合が少な過ぎるため、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間に中間ゴム60を配置しても、シェーピング工程における双方の相対的な動きの差を、中間ゴム60によって吸収し難くなる。また、リムクッションゴム50の断面積Arcと中間ゴム60の断面積Amとの比率が、Am/(Arc+Am)>0.75である場合は、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間に位置する中間ゴム60の割合が多くなり過ぎ、反対にリムクッションゴム50の割合が少なくなり過ぎる虞がある。この場合、中間ゴム60よりゴム硬さが大きいリムクッションゴム50の割合が少なくなるため、ビード部20に規定リム70を装着して空気入りタイヤ1を使用する際における、ビード部20の耐久性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、リムクッションゴム50の断面積Arcと中間ゴム60の断面積Amとの比率が、0.25≦Am/(Arc+Am)≦0.75の範囲内である場合は、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、双方の間に配置する中間ゴム60によって吸収することができる。この結果、ゴム流れ不良の発生を抑制することができる。また、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間に中間ゴム60を配置しつつ、リムクッションゴム50の割合を確保することができるため、ビード部20の耐久性が低下することを抑制することができる。この結果、ビード部20の耐久性を確保しつつ、ゴム流れ不良の発生を抑制することができる。
また、タイヤ子午断面におけるビードコア中央線LCとビードコア30の輪郭線33との交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcと、リムクッションゴム外側端部51から中間ゴム外側端部61までの距離Hmとの関係が、0.15≦Hm/Hrc≦1.2の範囲内であるため、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によって効果的に吸収することができる。つまり、距離Hrcと距離Hmとの関係が、Hm/Hrc<0.15である場合は、リムクッションゴム外側端部51と中間ゴム外側端部61との距離Hmが小さ過ぎるため、シェーピング工程時にタイヤ径方向外側に動くターンダウンプライ45に対する、中間ゴム60の追従性を確保し難くなる虞がある。この場合、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によって吸収し難くなる虞がある。また、距離Hrcと距離Hmとの関係が、Hm/Hrc>1.2である場合は、リムクッションゴム外側端部51と中間ゴム外側端部61との距離Hmが大き過ぎるため、中間ゴム60を配置する範囲に対して、中間ゴム60を配置することによる効果を効果的に得難くなる虞がある。
これに対し、距離Hrcと距離Hmとの関係が、0.15≦Hm/Hrc≦1.2の範囲内である場合は、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によって効果的に吸収することができる。この結果、より確実にゴム流れ不良の発生を抑制することができる。
また、タイヤ子午断面におけるビードコア中央線LCとビードコア30の輪郭線33との交点Pから、中間ゴム内側端部62までの距離Bmが、Bm≦15.0mmを満たすため、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によってより確実に吸収することができる。つまり、交点Pから中間ゴム内側端部62までの距離Bmが、Bm>15.0mmである場合は、交点Pから中間ゴム内側端部62までの距離Bmが大き過ぎるため、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間に配置する中間ゴム60の配置範囲が小さくなり過ぎる虞がある。この場合、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間に中間ゴム60を配置しても、シェーピング工程における双方の相対的な動きの差を、中間ゴム60によって吸収し難くなる虞がある。
これに対し、交点Pから中間ゴム内側端部62までの距離Bmが、Bm≦15.0mmを満たす場合は、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間の適切な範囲に、中間ゴム60を配置することができる。これにより、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によってより確実に吸収することができる。この結果、より確実にゴム流れ不良の発生を抑制することができる。
また、タイヤ子午断面におけるビードコア中央線LCとビードコア30の輪郭線33との交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.20≦Hrc/Hrfを満たすため、規定リム70とビード部20との間で作用する荷重を、中間ゴム60と比較してゴム硬さが大きいリムクッションゴム50によって適切に受けることができる。つまり、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.20>Hrc/Hrfである場合は、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcが小さ過ぎるため、リムフランジ高さHrfに対して、タイヤ径方向におけるリムクッションゴム50の配置範囲が小さ過ぎる虞がある。この場合、規定リム70とビード部20との間で作用する荷重を、リムクッションゴム50で適切に受け難くなり、耐久性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.20≦Hrc/Hrfを満たす場合は、規定リム70とビード部20との間で作用する荷重を、中間ゴム60と比較してゴム硬さが大きいリムクッションゴム50によって適切に受けることができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を確保することができる。
また、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcの1/2の位置における、リムクッションゴム50と中間ゴム60とを合わせた厚さGtrと中間ゴム60の厚さGmとの比率が、0.3≦Gm/Gtr≦0.7の範囲内であるため、より確実にビード部20の耐久性を確保しつつ、ゴム流れ不良の発生を抑制することができる。つまり、交点Pから距離Hrcの1/2の位置における、リムクッションゴム50と中間ゴム60とを合わせた厚さGtrと中間ゴム60の厚さGmとの比率が、Gm/Gtr<0.3である場合は、中間ゴム60の厚さGmが薄くなり過ぎる虞がある。この場合、ターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との間に中間ゴム60を配置しても、シェーピング工程における双方の相対的な動きの差を、中間ゴム60によって吸収し難くなる虞がある。また、交点Pから距離Hrcの1/2の位置における、リムクッションゴム50と中間ゴム60とを合わせた厚さGtrと中間ゴム60の厚さGmとの比率が、Gm/Gtr>0.7である場合は、中間ゴム60の厚さGmが厚くなり過ぎる虞がある。この場合、リムクッションゴム50の厚さが薄くなり過ぎるため、規定リム70とビード部20との間で作用する荷重を、リムクッションゴム50で適切に受け難くなり、ビード部20の耐久性が低下し易くなる虞がある。
これに対し、交点Pから距離Hrcの1/2の位置における、リムクッションゴム50と中間ゴム60とを合わせた厚さGtrと中間ゴム60の厚さGmとの比率が、0.3≦Gm/Gtr≦0.7の範囲内である場合は、規定リム70とビード部20との間で作用する荷重をリムクッションゴム50によって適切に受けることを可能にすると共に、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によってより確実に吸収することができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を確保しつつ、ゴム流れ不良の発生を抑制することができる。
また、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcの1/2の位置における中間ゴム60の厚さGmが、2.0mm以上であるため、シェーピング工程時にタイヤ径方向外側に動くターンダウンプライ45への中間ゴム60の追従性を、より確実に高めることができる。これにより、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によってより確実に吸収することができる。この結果、より確実にゴム流れ不良の発生を抑制することができる。
また、タイヤ子午断面におけるビードコア中央線LCとビードコア30の輪郭線33との交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、2.0≦HBF/Hrf≦6.0の範囲内であるため、ビード部20のタイヤ径方向における剛性を適度な大きさにすることができる。つまり、交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、HBF/Hrf<2.0である場合は、ビードフィラー21のタイヤ径方向における高さが低過ぎるため、ビード部20のタイヤ径方向における剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、車両の走行時における操縦安定性を確保し難くなる虞がある。また、交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、HBF/Hrf>6.0である場合は、ビードフィラー21のタイヤ径方向における高さが高過ぎるため、ビード部20のタイヤ径方向における剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、車両の走行時における乗り心地が悪化し易くなる虞がある。
これに対し、交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、2.0≦HBF/Hrf≦6.0の範囲内である場合は、ビードフィラー21のタイヤ径方向における高さを適度な高さにすることができ、ビード部20のタイヤ径方向における剛性を適度な大きさにすることができる。この結果、車両の走行時における操縦安定性と乗り心地を両立することができる。
また、タイヤ子午断面におけるビードコア中央線LCとビードコア30の輪郭線33との交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.4≦Ham/Hrf≦3.6の範囲内であるため、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によって効果的に吸収することができる。つまり、交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、Ham/Hrf<1.4である場合は、中間ゴム60のタイヤ径方向における高さが低過ぎるため、シェーピング工程時にタイヤ径方向外側に動くターンダウンプライ45に対する、中間ゴム60の追従性を確保し難くなる虞がある。この場合、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によって吸収し難くなる虞がある。また、交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、Ham/Hrf>3.6である場合は、中間ゴム60のタイヤ径方向における高さが高過ぎるため、中間ゴム60を配置する範囲に対して、中間ゴム60を配置することによる効果を効果的に得難くなる虞がある。
これに対し、交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.4≦Ham/Hrf≦3.6の範囲内である場合は、シェーピング工程におけるターンダウンプライ45とリムクッションゴム50との相対的な動きの差を、中間ゴム60によって効果的に吸収することができる。この結果、より確実にゴム流れ不良の発生を抑制することができる。
また、タイヤ子午断面における交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.0≦(HBF-Ham)/Hrfを満たすため、成形時におけるエア溜まりの発生を抑制することができる。つまり、交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.0>(HBF-Ham)/Hrfである場合は、ビードフィラー外側端部22と中間ゴム外側端部61との距離が近過ぎる虞がある。この場合、異なる部材同士の境界が、狭い範囲に集中することになるため、成形時にビードフィラー外側端部22や中間ゴム外側端部61の近傍で発生する段差が大きくなり易くなり、これに起因して成形時にエア溜まりが発生し易くなる虞がある。
これに対し、交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係が、1.0≦(HBF-Ham)/Hrfを満たす場合は、ビードフィラー外側端部22と中間ゴム外側端部61との距離が近くなり過ぎることを抑制することができる。これにより、成形時にビードフィラー外側端部22や中間ゴム外側端部61の近傍で大きな段差が発生することを抑制することができ、大きな段差が原因となるエア溜まりの発生を抑制することができる。この結果、成形時における成形不良を抑制することができる。
[変形例]
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、カーカス40は、1枚のターンアッププライ41と、1枚のターンダウンプライ45とを有しているが、カーカス40の構成は、これ以外であってもよい。カーカス40は、少なくとも1枚のターンダウンプライ45を有していれば、その構成は問わない。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ビードフィラー21は、ビードフィラー外側端部22が、カーカス40のターンアッププライ41のターンアップ部外側端部43aよりもタイヤ径方向外側に位置しているが、ビードフィラー外側端部22は、ターンアップ部外側端部43aよりタイヤ径方向内側に位置していてもよい。また、ビードフィラー21は、第1ビードフィラー25と第2ビードフィラー26とを有しているが、ビードフィラー21は、これ以外の構成であってもよく、例えば、単一の部材によって構成されていてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、ビードコア30は、タイヤ子午断面で見た場合に略六角形の形状で形成されているが、ビードコア30は、これ以外の形状で形成されていてもよい。ターンダウンプライ45のタイヤ幅方向外側に、ゴム硬さがリムクッションゴム50のゴム硬さより8以上小さい中間ゴム60が配置され、タイヤ子午断面においてリムクッションゴム外端線LRとビードコア中央線LCとの間に位置するリムクッションゴム50の断面積Arcと中間ゴム60の断面積Amとの比率が、0.25≦Am/(Arc+Am)≦0.75の範囲内であれば、ビードフィラー21やビードコア30の形態は問わない。
[実施例]
図12A、図12Bは、空気入りタイヤの評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった評価試験について説明する。評価試験は、空気入りタイヤ1の製造時におけるゴム流れ不良についての試験を行った。
評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが205/85R16の試験タイヤを用いて行った。ゴム流れ不良の評価方法は、加硫成形後の試験タイヤのゴム流れ不良を目視にて確認し、各従来例、比較例、実施例のそれぞれで、加硫本数50本中のゴム流れ不良の発生率を算出し、ゴム流れ不良の発生率を比較した。ゴム流れ不良は、発生率が低いほどゴム流れ不良が発生し難く、ゴム流れ不良の発生のし難さについての性能に優れていることを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1~14と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1~5との20種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例の空気入りタイヤは、カーカスがターンダウンプライを有しているものの、中間ゴムは有していない。また、比較例1~5の空気入りタイヤは、カーカスがターンダウンプライを有しており、また、ターンダウンプライのタイヤ幅方向外側に中間ゴムを有しているものの、リムクッションゴムのゴム硬さが65以上75以下の範囲内になっていない、または、中間ゴムのゴム硬さがリムクッションゴムのゴム硬さより8以上小さくなっていない、または、リムクッションゴム外端線LRとビードコア中央線LCとの間に位置するリムクッションゴム50の断面積Arcと中間ゴム60の断面積Amとの比率が、0.25≦Am/(Arc+Am)≦0.75の範囲内になっていない。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1~14は、全てカーカス40がターンダウンプライ45を有し、ターンダウンプライ45のタイヤ幅方向外側に中間ゴム60を有しており、リムクッションゴム50のゴム硬さが65以上75以下の範囲内で、中間ゴム60のゴム硬さがリムクッションゴム50のゴム硬さより8以上小さくなっており、リムクッションゴム外端線LRとビードコア中央線LCとの間に位置するリムクッションゴム50の断面積Arcと中間ゴム60の断面積Amとの比率が、0.25≦Am/(Arc+Am)≦0.75の範囲内になっている。さらに、実施例1~14に係る空気入りタイヤ1は、ビードコア中央線LCとビードコア30の輪郭線33との交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcに対する、リムクッションゴム外側端部51から中間ゴム外側端部61までの距離Hm(Hm/Hrc)や、交点Pから中間ゴム内側端部62までの距離Bm、規定リム70のリムフランジ高さHrfに対する、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrc(Hrc/Hrf)、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcの1/2の位置における、リムクッションゴム50と中間ゴム60とを合わせた厚さGtrに対する中間ゴム60の厚さGm(Gm/Gtr)、交点Pからリムクッションゴム外側端部51までの距離Hrcの1/2の位置における中間ゴム60の厚さGm、規定リム70のリムフランジ高さHrfに対する、交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBF(HBF/Hrf)、規定リム70のリムフランジ高さHrfに対する、交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Ham(Ham/Hrf)、交点Pからビードフィラー外側端部22までの距離HBFと、交点Pから中間ゴム外側端部61までの距離Hamと、規定リム70のリムフランジ高さHrfとの関係((HBF-Ham)/Hrf)が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図12A、図12Bに示すように、実施例1~14に係る空気入りタイヤ1は、従来例や比較例1~5に対して、ゴム流れ不良の発生率を低下させることができることが分かった。つまり、実施例1~14に係る空気入りタイヤ1は、ゴム流れ不良の発生を抑制することができる。