JPH06190945A - 空気入りタイヤおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、ビード部の構造の適正化を図るこ
とによりビードトゥにおけるゴム欠損を防止した空気入
りタイヤおよびその製造方法に関するものである。 【構成】 本発明は、インナーライナー４の裏打ちをも
つカーカスプライ５を有し、ビード部２に、カーカスプ
ライ５で内包した一対のリング状のビードコア６および
ビードコア６の外周上に位置するフィラー７を配設し、
ビードヒールを含む側面にはチェーファーゴム８を配設
し、さらにこのチェーファ−ゴム８からインナーライナ
ー４にわたる領域にファブリックチェーファー９を配設
してなる空気入りタイヤ１において、チェーファーゴム
８をファブリックチェーファー９の外面に固着して備
え、カーカスプライ５とファブリックチェーファー９と
の間のビードトゥにエッジゴム１０をファブリックチェ
ーファー９の内面に固着して備えることを特徴とする空
気入りタイヤおよびその製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ビード部のビードトゥ
損傷を防止した空気入りタイヤおよびその製造方法に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】最近、資源・環境等の問題が深刻化して
いるなか、空気入りタイヤにおいてもこれらの問題に対
処するため、再生タイヤの研究開発が進められている。

【０００３】再生タイヤは、古くなったタイヤの損傷部
分を新しく取り替えることにより新品タイヤとほぼ同様
な性能を具備させたタイヤであり、一般には消耗の激し
いトレッド部を新しく交換することにより再生したタイ
ヤである。現在では、主としてトラック、バス、航空機
等に使用する重荷重用空気入りタイヤを対象として、そ
のタイヤの再生が行われている。タイヤを再生するにあ
たって重要なのは、トレッド部以外の部分が期待通りの
使用寿命を全うしうることであり、その使用寿命内での
損傷および劣化が生じないことが保証されなければなら
ない。

【０００４】一般に空気入りタイヤは、文献（図２ａ）
に開示されたビード部形状を有すること、特にチェーフ
ァーゴムとファブリックチェーファーを適正位置に備え
るビード部形状を有することを製品目標として研究開発
が行われている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、タイヤのビー
ド部は、一般にリムの脱着工程によるリムとの摩擦等か
ら損傷を受けやすく、期待した使用寿命が得られないこ
とがある。このようにビード部が損傷してしまうと、再
生処理が作業性、コスト等の制約を受けることになり、
タイヤの再生価値が薄らいでしまう。

【０００６】また従来の空気入りタイヤは、図２ａに示
すようにビードトゥに特定部材をもたないことが多いた
め、ビードトゥに実質上のスペースＳを生じ、タイヤの
加硫成形時にチェーファーゴムの一部が流動してスペー
スＳへの流れ込みが生じる。したがって、実際のビード
部は、図２ｂに示すようにチェーファーゴムの内側端が
ビードトゥにまで達する形状になり、これがビードトゥ
の損傷の原因になっていた。それというのは、チェーフ
ァーゴムが硬質ゴムからなるためである。

【０００７】さらに、ビードヒールを補強するためのチ
ェーファーゴムと、ビードトゥを保護するためのファブ
リックチェーファをビード部に備える空気入りタイヤの
場合は、ビルディングドラム上にてファブリックチェー
ファー、カーカスプライの順に貼り合わせ、これらを折
り返してから、チェーファーゴムを所定位置に貼り合わ
せていたが、この空気入りタイヤの製造方法では、チェ
ーファーゴムとファブリックチェーファーをそれぞれ独
立して貼り合わせるため、これらの相互位置関係にばら
つきを生じて、決められたリムの位置に精度よく備える
ことができなかった。

【０００８】そこで本発明は、タイヤのビード部構造お
よびその製造方法を適正化することによりビードトゥの
損傷を防止することを課題とし、それにより再生タイヤ
の総使用寿命を延ばすことを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明の空気入りタイヤ
のビード部の主要断面を図１に示し、図中１は空気入り
タイヤ、２はビード部、３はサイドウォール部、４はイ
ンナーライナー、５はカーカスプライ、６はビードコ
ア、７はフィラー、８はチェーファーゴム、９はファブ
リックチェーファー、１０はエッジゴムである。

【００１０】本発明の空気入りタイヤ１は、ビード部
２、サイドウォール部３、およびトレッド部にかけてト
ロイド状に連なり、インナーライナー４の裏打ちをもつ
カーカスプライ５を有し、ビード部２に、カーカスプラ
イ５で内包した一対のリング状のビードコア６およびビ
ードコア６の外周上に位置するフィラー７を配設すると
ともに、ビードヒールを含む側面にチェーファーゴム８
を配設し、さらにこのチェーファ−ゴム８からインナー
ライナー４にわたる領域にファブリックチェーファー９
を配設してなり、チェーファーゴム８をファブリックチ
ェーファー９の外面に固着して備えるとともに、カーカ
スプライ５とファブリックチェーファー９との間のビー
ドトゥにエッジゴム１０をファブリックチェーファー９
の内面に固着して備えることを特徴とする。

【００１１】チェーファーゴム８のゴム硬さは６０〜８
０°の範囲であることが好ましい。このゴム硬さが、６
０°未満では走行によりビード部の変形を生じやすく、
８０°を超えるとリム組みの作業性が悪くなる。また、
チェーファーゴム８の伸び率は、リムずれおよびリム組
みの点から２５０〜４５０％の範囲であることが好まし
い。エッジゴム１０のゴム硬さは５５〜７０°の範囲で
あることが好ましい。このゴム硬さが５５°未満ではリ
ム解きにより歪が生じやすく、７０°を超えるとリム組
みの作業性が悪くなる。

【００１２】また本発明の空気入りタイヤ１の製造方法
は、ビルディングドラム上にてインナーライナー４にカ
ーカスプライ５を貼り合わせるに先立って、予めファブ
リックチェーファー９の表裏両面にそれぞれタイヤビー
ド部２のビードトゥに対応して位置するエッジゴム１０
と、ビードヒールに対応して位置するチェーファーゴム
８とを一体化した複合ゴムシート状部材（図３）の一対
をインナーライナー４の両側にて貼り合わせ、その後ビ
ードコア６の打ち込みを経てカーカスプライ５および複
合ゴムシート状部材をビードコア６の周りに折り返して
グリーンケースを形成することを特徴とする。

【００１３】

【作用】空気入りタイヤは、インナーライナーの裏打ち
をもつカーカスプライでビードコアとフィラーとを内包
し、ビードヒールを含む側面にその補強としてチェーフ
ァーゴムを備えるとともに、チェーファーゴムからイン
ナーライナーにわたる領域にビードトゥを保護するファ
ブリックチェーファーを備えたビード部を有し、図２ａ
に示すビード部を有するものとされている。

【００１４】従来タイヤは、図２ａに示すようにビード
トゥのスペースＳに特定部材を備えていないのが一般的
である。そのため、加硫成形時にチェーファーゴムの一
部が流動し、これがビードトゥのスペースＳに流れ込み
やすく、そのためチェーファーゴムの内側端の位置が、
実際には図２ｂに示すようにビードトゥにまで達してい
た。その結果、ビードトゥが損傷しやすくなり、ビード
部の耐久性を悪化させていた。

【００１５】また、チェーファーゴムおよびファブリッ
クチェーファーは、成形工程ではそれぞれ独立にビルデ
ィングドラム上で所定の位置に貼り合わせるため、相互
の位置関係がばらつきやすいという欠点を有していた。
このばらつきは、ビードコアの内周面を包みこむカーカ
スプライがリムと接触して損傷するのを防ぐため、特に
チェーファーゴムがビードトゥ側にずれる傾向が強く、
このこともビードトゥを損傷させる原因に関係してい
た。

【００１６】これに対し本発明タイヤは、ビードトゥに
エッジゴムを備えることにより、加硫成形時のチェーフ
ァーゴムの溶けたゴムがスペースＳに流れ込むのを防止
できるため、所定形状のチェーファーゴムを予定した位
置に配置することができる。したがって、従来タイヤの
ようなビードトゥの欠損は生じにくいためビード部の耐
久性が向上する。

【００１７】また、ビードトゥに対応して位置するエッ
ジゴムと、ビードヒールに対応して位置するチェーファ
ーゴムとを、それぞれファブリックチェーファーの表裏
両面に一体化した複合ゴムシート状部材とすることによ
り（図３）、それらの相互の位置関係のばらつきを少な
くして配置することができるため、この点からもビード
トゥの損傷を生じにくくできる。

【００１８】

【実施例】タイヤサイズがＬＴ２３５／８５Ｒ１６ １
０ＰＲの空気入りタイヤを供試タイヤとした。 ◎供試タイヤ 実施例に使用した発明タイヤの要部断面を図１に、従来
例に使用した従来タイヤの要部断面を図２（ｂ）に示
す。

【００１９】・実施例 図１に示す発明タイヤは、ビード部２、サイドウォール
部３、およびトレッド部にかけてトロイド状に連ねたイ
ンナーライナー４の裏打ちをもつカーカスプライ５を有
し、カーカスがアップ／ダウン構造をなしている。な
お、カーカスプライのコードには、ポリエステル（１５
００ｄ／２）を使用し、コードの配設角度をタイヤ赤道
面に対し９０°とした。

【００２０】ビード部２には、カーカスプライ５で内包
した一対のリング状のビードコア６およびビードコア６
のリング外側に位置するフィラー７を配設するととも
に、ビードヒールを含む側面にチェーファーゴム８を配
設し、さらにこのチェーファ−ゴム８からインナーライ
ナー４にわたる領域にファブリックチェーファー９を配
設してなり、チェーファーゴム８をファブリックチェー
ファー９の外面に固着して備えるとともに、カーカスプ
ライ５とファブリックチェーファー９との間のビードト
ゥにエッジゴム１０をファブリックチェーファー９の内
面に固着して備えている。

【００２１】チェーファーゴムには、ゴム硬さが７２
°、伸び率が３４０％であるものを使用し、ファブリッ
クチェーファーには、ナイロンキャンバスを使用し、エ
ッジゴムには、ゴム硬さが６５°、伸び率が４６０％で
あるものを使用した。

【００２２】・従来例 従来例に使用した従来タイヤは、エッジゴムを用いない
こと以外は実施例に使用した発明タイヤと同じ構造を有
している。

【００２３】◎試験方法 試験は上記の供試タイヤ（各ｎ＝５）を用いてリム組み
・リム解きを２回繰り返した後、ビードトゥの損傷の程
度を肉眼で５段階評価を行った。

【００２４】◎試験結果 上記の試験を行った結果の値を表１に示す。なお、表中
の数値は大きいほど良好であり、具体的には、肉眼で観
察したときのビードトゥの損傷程度が、１はカーカスプ
ライの露出している場合、２はファブリックチェーファ
ーの破損している場合、３はファブリックチェーファー
コードの露出している場合、４はビードトゥ先端の軽度
の欠損を生じている場合、５は異状がない場合である。

【００２５】

【表１】

【００２６】試験結果から、発明タイヤは、従来タイヤ
に比べてビードトゥの損傷程度が大幅に改善されてい
る。

【００２７】

【発明の効果】本発明によれば、比較的軟質のゴムから
なり適正形状をもつエッジゴムをビードトゥに備えるこ
とにより、エッジゴムをもたない従来タイヤに比べ、リ
ム組み作業性は向上し、リム解きによる歪も生じにくく
なるためビードトゥの損傷を防止することができる。ま
た製造方法においても、本発明は、加硫成形時にチェー
ファーゴムの一部が流動してビードトゥのスペースＳに
流れ込むのをエッジゴムの存在により防止でき、チェー
ファーゴムおよびエッジゴムを、それぞれビード部の予
定された位置に精度よく配置したグリーンケースを形成
することができる。さらに、ビードトゥに対応して位置
するエッジゴムと、ビードヒールに対応して位置するチ
ェーファーゴムとを、それぞれファブリックチェーファ
ーの表裏両面に一体化した複合ゴムシート状部材として
ビード部に貼り合わせることにより、チェーファーゴム
およびファブリックチェーファーを独立してビルディン
グドラム上で貼り合わせる従来の成形工程で生じてい
た、それら相互の位置関係のばらつきが少なくできる。
以上のことから、本発明は、タイヤのトレッド部を新し
いものに交換して再使用することができる再生タイヤの
実用性を高めるものであり、再生タイヤの総使用寿命を
延ばすのに有用である。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例に使用した発明タイヤのビード部の要部
断面図である。

【図２】ａが、タイヤ設計時の理想的なビード部形状の
要部断面図であり、ｂが、実際のビード部形状の要部断
面図である。

【図３】図１に示す発明タイヤのビード部を形成する複
合ゴムシート状部材の要部側面図である。

【図４】ａが、ビードコアの周りにカーカスプライおよ
び複合ゴムシート状部材を折り返すタイヤ成形工程終了
直後の状態を示した発明タイヤの要部断面図であり、ｂ
が、ａと同様な成形工程終了直後の状態を示した従来タ
イヤの要部断面図である。

【符号の説明】

１ 空気入りタイヤ ２ ビード部 ３ サイドウォール部 ４ インナーライナー ５ カーカスプライ ６ ビードコア ７ フィラー ８ チェーファーゴム ９ ファブリックチェーファ− １０ エッジゴム Ｓ スペース

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ビード部、サイドウォール部、およびト
   レッド部にかけてトロイド状に連なり、インナーライナ
   ーの裏打ちをもつカーカスプライを有し、ビード部に、
   カーカスプライで内包した一対のリング状のビードコア
   およびビードコアの外周上に位置するフィラーを配設す
   るとともに、ビードヒールを含む側面にチェーファーゴ
   ムを配設し、さらにこのチェーファ−ゴムからインナー
   ライナーにわたる領域にファブリックチェーファーを配
   設してなる空気入りタイヤにおいて、 チェーファーゴムをファブリックチェーファーの外面に
   固着して備えるとともに、カーカスとファブリックチェ
   ーファーとの間のビードトゥにエッジゴムをファブリッ
   クチェーファーの内面に固着して備えることを特徴とす
   る空気入りタイヤ。
2. 【請求項２】 ビルディングドラム上にてインナーライ
   ナーにカーカスプライを貼り合わせるに先立って、予め
   ファブリックチェーファーの表裏両面にそれぞれタイヤ
   ビード部のビードトゥに対応して位置するエッジゴム
   と、ビードヒールに対応して位置するチェーファーゴム
   とを一体化した複合ゴムシート状部材の一対をインナー
   ライナーの両側にて貼り合わせ、その後ビードコアの打
   ち込みを経てカーカスプライおよび複合ゴムシート状部
   材をビードコアの周りに折り返してグリーンケースを形
   成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。