JP7263826B2 - 硫黄系有機材料、及び該硫黄系有機材料により表面修飾を施した無機材料 - Google Patents
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本明細書における「屈折率」とは、光線屈折率を指し、ヘリウムの輝線波長587.56nmによる測定値を用いる。
<1> 下記一般式(1)で表される硫黄系有機材料である。
K-N-M 式(1)
(式中、Kは、アミン、カルボン酸、リン酸、亜リン酸、アミン塩、カルボン酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、下記一般式(k1)で表される基、及び下記一般式(k2)で表される基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)~(m7)で表される硫黄原子を含む基からなる群より選択される親油性の部分構造を1以上含み、Nは、炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される1以上を含む二価の連結基を表す。)
<2> Nで表される二価の連結基が、下記構造式(n1)~(n4)で表される基からなる群より選択される1以上を含む、上記<1>に記載の硫黄系有機材料である。
<3> 上記<1>又は<2>に記載の硫黄系有機材料により表面修飾を施した無機材料である。
<4> 前記無機材料が板状ガラスである、上記<3>に記載の無機材料である。
<5> 上記<4>に記載の無機材料と硬化性樹脂組成物とを接触もしくは混合させた有機無機複合材料である。
<6> 前記硫黄系有機材料における親水性の部分構造が前記無機材料と接触し、前記硫黄系有機材料における親油性の部分構造が前記硬化性樹脂組成物と接触してなる、上記<5>に記載の有機無機複合材料である。
<7> 前記硬化性樹脂組成物が、下記一般式(2)~(9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を20質量%以上含む、上記<5>又は<6>に記載の有機無機複合材料である。
<8> 前記硬化性樹脂組成物の硬化後のd線屈折率が1.6以上であり、厚さ0.25mmの可視光領域の光透過率が80%以上であり、ヘーズ値が1.0%以下である、上記<5>から<7>のいずれかに記載の有機無機複合材料である。
<9> 前記硬化性樹脂組成物が、光重合開始剤、光増感剤、又は熱硬化剤をさらに含む、上記<5>から<8>のいずれかに記載の有機無機複合材料である。
<10> 前記硬化性樹脂組成物と前記無機材料との静的接触角が30度以下である、上記<5>から<9>のいずれかに記載の有機無機複合材料である。
<11> 上記<5>から<10>のいずれかに記載の有機無機複合材料を熱または活性エネルギー線により硬化させた、有機無機複合材料の硬化物である。
本発明の硫黄系有機材料は、下記一般式(1)で表される化合物より選択される。
K-N-M 式(1)
式(1)中、Kは、アミン、カルボン酸、リン酸、亜リン酸、アミン塩、カルボン酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、下記一般式(k1)で表される基、及び下記一般式(k2)で表される基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含む。Kは、無機材料表面との相互作用の観点から好ましくは下記一般式(k2)で表される基を含む。
本発明の硫黄系有機材料と組み合わせて使用するシランカップリング剤は特に限定されず、ラジカル重合反応性の官能基を有するシランカップリング剤及びその他のシランカップリング剤が挙げられる。
本発明の硫黄系有機材料にて修飾する無機材料は、石英、ガラス、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Fe等の金属基材、TFTアレイ基材、PDPの電極板、ITOや金属などの導電性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーン等の半導体作製基材等が挙げられる。基材の形状は、板状でもよいし、ロール状でもよい。これらの中でも、面内の一様な修飾量の観点から板状ガラスが特に好ましい。
前記無機材料を、本発明の硫黄系有機材料で表面修飾する方法は特に限定されず、例えば、浸漬、塗布(スピンコート、スプレーコートなど)又は蒸着によって修飾できる。
本発明で使用される硬化性樹脂組成物としては、分子内に硫黄原子を含有する化合物が挙げられる。例えば、エピチオ化合物やチオール化合物が好ましく挙げられる。さらに、分子内に硫黄原子を含有する化合物とアリル化合物やイソシアネート化合物とを組み合わせて用いてもよい。
エピチオ化合物としては、例えば、ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルプロパン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルブタン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3-チアペンタン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-メチルヘキサン、3,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-3,6-ジチアオクタン、1,2,3-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1-(2,3-エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアペンタン、1-(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-4-チアヘキサン、1,5,6-トリス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3-チアヘキサン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4-(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-2,4,5-トリス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6-ジチアオクタン、1,1,1-トリス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2-テトラキス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]エタン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,8-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-4,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン、1,11-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)-5,7-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物;及び、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[{2-(2,3-エピチオプロピルチオ)エチル}チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン等の環状脂肪族の2,3-エピチオプロピルチオ化合物;及び、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2,3-エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}メタン、2,2-ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}プロパン、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフィド、ビス{4-(2,3-エピチオプロピルチオ)フェニル}スルフォン、4,4’-ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族2,3-エピチオプロピルチオ化合物等;更に、3-メルカプトプロピレンスルフィド、4-メルカプトブテンスルフィド等のメルカプト基含有エピチオ化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例示化合物のみに限定されるものではない。
チオール化合物としては、例えば、脂肪族チオール化合物、脂環族チオール化合物、芳香族チオール化合物、複素環含有チオール化合物等が挙げられる。より具体的には、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、(2-メルカプトエチル)スルフィド、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]3-メルカプトプロパン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例示化合物のみに限定されるものではない。
本発明の有機無機複合材料は、前記硫黄系有機材料により表面修飾を施した無機材料と前記硬化性樹脂組成物とを接触もしくは混合させたものである。
本発明の有機無機複合材料は、前記硫黄系有機材料における親水性の部分構造が前記無機材料と接触し、前記硫黄系有機材料における親油性の部分構造が前記硬化性樹脂組成物と接触してなる態様が好ましい。
また、本発明の有機無機複合材料は、前記硬化性樹脂組成物が、下記一般式(2)~(9)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種類を20質量%以上含む態様が好ましく、40質量%以上含む態様がより好ましい。
また、本発明の有機無機複合材料は、前記硬化性樹脂組成物が、光重合開始剤、光増感剤、又は熱硬化剤をさらに含む態様が好ましい。
更に、本発明の有機無機複合材料は、前記硬化性樹脂組成物と前記無機材料との静的接触角が30度以下であることが好ましく、10度以下であることがより好ましい。
硬化性樹脂組成物を、本発明の硫黄系有機材料により表面修飾を施した無機材料に塗布する方法としては、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法等が挙げられる。板状の無機材料に対しては、スピンコート法が好適である。
硬化性樹脂組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm~30μmであるのが好ましい。
本発明で使用することができる重合開始剤としては、イオンを発生するアニオン重合開始剤やカチオン重合開始剤、加熱により重合開始ラジカルを発生する熱重合開始剤、紫外線の照射により重合開始ラジカルを発生する光重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、熱重合促進剤、光増感剤、光重合促進剤などをさらに添加することも好ましい。
本発明の有機無機複合材料の硬化物は、上記の有機無機複合材料を熱または活性エネルギーにより硬化させて得られる。本発明では、特に、硬化性樹脂組成物中の上記一般式(2)~(9)で示される硬化性成分を架橋して、硬化させたものが好ましい。
本発明は、光学素子、特に回折格子等の作製に利用されるインプリント材料への展開が可能である。インプリント成型硬化体の製造方法は、特に限定されないが、特開2012-214716号公報に記載された方法が挙げられる。具体的には、インプリント成型硬化体の製造方法は、下記工程(1)~(4):
(1)前記硬化性樹脂組成物を、硫黄系有機材料により表面修飾を施した無機材料に塗布する工程、
(2)前記無機材料上に塗布された硬化性樹脂組成物に、微細凹凸パターンを有するスタンパを圧接する工程、
(3)工程(2)の後、前記硬化性樹脂組成物を硬化させてインプリント成型硬化体を得る工程、及び、
(4)前記インプリント成型硬化体を前記スタンパから剥離する工程を含む。
金型は、転写されるべきパターンを有する金型が使われる。金型は、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成されている。
(合成例1)
100mlバイアル瓶にチオール化合物である4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール(GST)を97.3g仕込み、触媒としてトリフェニルホスフィンを0.12g添加した。室温で30分攪拌した後、アクリレート系シランカップリング剤(信越化学、型番KBM-5103)を25.0g添加した。更に、100℃で5日間攪拌した。反応終点は赤外吸収スペクトル(IR)分析により行い、KBM-5103の化学構造内にある1640cm-1付近のアルケンに起因する吸収の消失により確認した。反応後、生成物を含む混合液を中圧分取精製装置にて未反応のGSTを除去し、親水性構造と親油性構造を有する下記式(10)で表される化合物を得た。
100mlバイアル瓶にチオール化合物である2,2’-チオジエタンチオール(DMDS)を57.6g仕込み、触媒としてトリフェニルホスフィンを0.8g添加した。室温で30分攪拌した後、アクリレート系シランカップリング剤(信越化学、型番KBM-5103)を25.0g添加した。更に、100℃で5日間攪拌した。反応終点は赤外吸収スペクトル(IR)分析により行い、KBM-5103の化学構造内にある1640cm-1付近のアルケンに起因する吸収の消失により確認した。反応後、生成物を含む混合液を中圧分取精製装置にて未反応のDMDSを除去し、親水性構造と親油性構造を有する下記式(11)で表される化合物を得た。
100mlバイアル瓶にチオール化合物である4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール(GST)を73.7g仕込み、触媒としてペンタメチルピペリジルメタクリレ-トを0.02g添加した。室温で30分攪拌した後、イソシアネート系シランカップリング剤(信越化学、型番KBE-9007N)を20.0g添加した。更に、100℃で3日間攪拌した。反応終点は赤外吸収スペクトル(IR)分析により行い、KBE-9007Nの化学構造内にある2260cm-1付近のイソシアネート基に起因する吸収の消失により確認した。反応後、生成物を含む混合液を中圧分取精製装置にて未反応のGSTを除去し、親水性構造と親油性構造を有する下記式(12)で表される化合物を得た。
100mlバイアル瓶にチオール化合物である2,2’-チオジエタンチオール(DMDS)を43.7g仕込み、触媒としてペンタメチルピペリジルメタクリレ-トを0.01g添加した。室温で30分攪拌した後、イソシアネート系シランカップリング剤(信越化学、型番KBE-9007N)を20.0g添加した。更に、100℃で3日間攪拌した。反応終点は赤外吸収スペクトル(IR)分析により行い、KBE-9007Nの化学構造内にある2260cm-1付近のイソシアネート基に起因する吸収の消失により確認した。反応後、生成物を含む混合液を中圧分取精製装置にて未反応のDMDSを除去し、親水性構造と親油性構造を有する下記式(13)で表される化合物を得た。
100ml丸底フラスコにチオ尿素3.04gを仕込み、エタノール30mlを加えた。3-グリシドキシプロピルエトキシシラン5.56gを30mlのアセトンで希釈し、無水酢酸1.32gを加え、丸底フラスコ内に滴下し、6時間室温で攪拌した。反応終点は赤外吸収スペクトル(IR)分析により行い、3-グリシドキシプロピルエトキシシランの化学構造内にある850cm-1付近のエポキシ基に起因する吸収の消失により確認し、617cm-1付近のエピスルフィド環に起因する吸収の出現を確認した。得られた白色固体沈殿物について、エバポレータにより溶媒を留去した。その後、白色固体と液体の混合物を濾過し、親水性構造と親油性構造を有する透明液体の下記式(14)で表される化合物を得た。
イソプロピルアルコールと純水を質量比90:10の割合で混合した混合液100.0部に対し、1.0部の表面修飾剤(それぞれ合成例1~5で合成した硫黄系有機材料)を添加した。さらに混合液100.0部に対し1.0質量部の酢酸を添加した。室温下で30分間十分に攪拌し、表面修飾剤の加水分解を進行させ表面修飾液を用意した。無機材料に表面修飾を施すには、例えば板状のガラス基板の場合、表面修飾液に10分間浸漬させ、イソプロピルアルコールで洗浄した後、風乾した。
300mlフラスコに、2,4-ビス(メルカプトメチル)-1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン53.0部、シアヌル酸トリアリル47.0部、および光重合開始剤として1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン3.0部を混合し、均一になるまで撹拌し、チオール-エン構造を有する硬化性樹脂組成物(以下、「チオール-エン組成物」と呼ぶ)を調製した。
光学物性の測定用試料として、前記調製した硬化性樹脂組成物を離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、UV照射装置(Iwasaki, 型番LHPUV365/2501-00)にて30cm離れた距離から3分間照射し、硬化した膜(硬化物)をガラス板から剥がし用意した。屈折率測定には、多波長アッベ屈折率計(アタゴ、DR-M4)を用いた。硬化物の屈折率は1.62であった。透過率測定には、紫外可視分光光度計(日本分光、V-630)を用いた。可視光領域の透過率は80%以上であった。ヘーズ値の測定には、分光測色計(コニカミノルタ、CM-5)を用いた。ヘーズ値は1.0%以下であった。
なお、離形処理した板状ガラスは、板状ガラスをフッ素系離形処理剤(ダイキン、型番オプツールDSX)と希釈液(3M、型番NOVEC7100)を処理剤:希釈液=1:200で調製した混合液に24時間浸漬させた後、希釈液で洗浄し風乾させ用意した。
下記式(15)で示されるエピスルフィド化合物(EPS)を用いた。
光学物性の測定用試料として、前記調製した硬化性樹脂組成物を離型処理した板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9213)で厚み0.25mmスペーサと共に挟み、その後乾燥機で100℃30分加熱硬化させた。硬化した膜(硬化物)をガラス板から剥がし用意した。屈折率測定には、多波長アッベ屈折率計(アタゴ、DR-M4)を用いた。硬化物の屈折率は1.71であった。透過率測定には、紫外可視分光光度計(日本分光、V-630)を用いた。可視光領域の透過率は80%以上であった。ヘーズ値の測定には、分光測色計(コニカミノルタ、CM-5)を用いた。ヘーズ値は1.0%以下であった。
なお、離形処理した板状ガラスは、前記処理方法にて同様に用意した。
無機材料の基材として板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)を用意し、前記表面処理方法にて表面を修飾した。濡れ性を評価するために、修飾した板状ガラスに硬化性樹脂組成物を滴下し、静的接触角を測定した(協和界面科学、型番Drop Master 500)。静的接触角が30度以下のものを「○」、30度を超えるものを「×」とした。
次に、同板状ガラスをスピンコータ―(MIKASA, 型番MS-A150)に設置し、硬化性樹脂組成物をガラス表面に1.5ml滴下後、回転数1500rpmで30秒間コートした。濡れ性を評価するために、コート後、成膜ができたか否かを目視にて判断した。成膜できたものを「○」、成膜できなかったものを「×」とした。
成膜できたものに、表面未処理な同板状ガラスをコート面に被せ、更に、光硬化、又は熱硬化により硬化させた。複合材料としての密着性を評価するため、硬化後に、ガラス同士を剥がし、表面修飾剤にて修飾したガラスから硬化物が剥がれなかったものを「○」、剥がれたものを「×」とした。
合成例1~5で合成した硫黄系有機材料をそれぞれ含む表面修飾液に板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)を室温で10分間浸漬させた。板状ガラスを各表面修飾液からそれぞれ取り出した後、イソプロピルアルコールで洗浄し、風乾した。修飾した各板状ガラスに前記チオール-エン組成物を滴下し、静的接触角を測定した(協和界面科学、型番Drop Master 500)。接触角はいずれも30度以下であった。
次に、表面修飾した各板状ガラスをスピンコーター(MIKASA, 型番MS-A150)の台座に設置し、前記チオール-エン組成物をガラス表面に2.0ml滴下後、回転数1500rpmで30秒間コートした。コート後、いずれの表面修飾した板状ガラスもチオール-エン組成物に覆われ成膜できたことを目視で確認した。
さらに、前記チオール-エン組成物が成膜された各板状ガラスに、表面未処理な板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)をコート面に被せ、3分間光硬化させた(Iwasaki, 型番LHPUV365/2501-00)。硬化後に、ガラス同士を剥がすと、表面修飾剤にて修飾したガラスからは、いずれも硬化物は剥がれなかった。結果を表1に示す。
合成例1~5で合成した硫黄系有機材料をそれぞれ含む表面修飾液に板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)を室温で10分間浸漬させた。板状ガラスを各表面修飾液からそれぞれ取り出した後、イソプロピルアルコールで洗浄し、風乾した。修飾した各板状ガラスに前記エピスルフィド組成物を滴下し、静的接触角を測定した(協和界面科学、型番Drop Master 500)。接触角はいずれも30度以下であった。
次に、表面修飾した各板状ガラスをスピンコーター(MIKASA, 型番MS-A150)の台座に設置し、前記エピスルフィド組成物をガラス表面に2.0ml滴下後、回転数1500rpmで30秒間コートした。コート後、いずれの表面修飾した板状ガラスもエピスルフィド組成物に覆われ成膜できたことを目視で確認した。
さらに、前記エピスルフィド組成物が成膜された各板状ガラスに、表面未処理な板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)をコート面に被せ、乾燥機で100℃30分加熱硬化させた。硬化後に、ガラス同士を剥がすと、表面修飾剤にて修飾したガラスからは、いずれも硬化物は剥がれなかった。結果を表1に示す。
表面未処理な板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)に前記チオール-エン組成物を滴下し、静的接触角を測定した(協和界面科学、型番Drop Master 500)。接触角は30度以下であった。
次に、同板状ガラスをスピンコーター(MIKASA, 型番MS-A150)の台座に設置し、前記チオール-エン組成物をガラス表面に2.0ml滴下後、回転数1500rpmで30秒間コートした。コート後、表面未処理な板状ガラスはチオール-エン組成物に覆われ成膜できたことを目視で確認した。
さらに、前記チオール-エン組成物が成膜された板状ガラスに、表面未処理な板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)をコート面に被せ、3分間光硬化させた(Iwasaki, 型番LHPUV365/2501-00)。硬化後に、ガラス同士を剥がすと、ガラスからは、硬化物が一部剥がれていた。結果を表1に示す。
シランカップリング剤(信越化学、型番KBM-5103)を含む表面修飾液に板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)を室温で10分間浸漬させた。板状ガラスを該表面修飾液から取り出した後、イソプロピルアルコールで洗浄し、風乾した。表面修飾した板状ガラスに前記チオール-エン組成物を滴下し、静的接触角を測定した(協和界面科学、型番Drop Master 500)。接触角は30度以下であった。
次に、同板状ガラスをスピンコーター(MIKASA, 型番MS-A150)の台座に設置し、前記チオール-エン組成物をガラス表面に2.0ml滴下後、回転数1500rpmで30秒間コートした。コート後、表面修飾した板状ガラスはチオール-エン組成物に覆われ成膜できたことを目視で確認した。
さらに、前記チオール-エン組成物が成膜された板状ガラスに、表面未処理な板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)をコート面に被せ、3分間光硬化させた(Iwasaki, 型番LHPUV365/2501-00)。硬化後に、ガラス同士を剥がすと、ガラスからは、硬化物が一部剥がれていた。結果を表1に示す。
表面未処理な板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)に前記エピスルフィド組成物を滴下し、静的接触角を測定した(協和界面科学、型番Drop Master 500)。接触角は30度を超えていた。
次に、同板状ガラスをスピンコーター(MIKASA, 型番MS-A150)の台座に設置し、前記エピスルフィド組成物をガラス表面に2.0ml滴下後、回転数1500rpmで30秒間コートした。コート後、エピスルフィド組成物は板状ガラス表面からはじかれ、成膜できなかった。結果を表1に示す。
シランカップリング剤(信越化学、型番KBM-5103)を含む表面修飾液に板状ガラス(松浪硝子工業、型番S9112)を室温で10分間浸漬させた。板状ガラスを該表面修飾液から取り出した後、イソプロピルアルコールで洗浄し、風乾した。表面修飾した板状ガラスに前記エピスルフィド組成物を滴下し、静的接触角を測定した(協和界面科学、型番Drop Master 500)。接触角は30度を超えていた。
次に、同板状ガラスをスピンコーター(MIKASA, 型番MS-A150)の台座に設置し、前記エピスルフィド組成物をガラス表面に2.0ml滴下後、回転数1500rpmで30秒間コートした。コート後、エピスルフィド組成物は板状ガラス表面からはじかれ、成膜できなかった。結果を表1に示す。
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表される硫黄系有機材料により表面修飾を施した板状ガラス。
K-N-M 式(1)
(式中、Kは、下記一般式(k2)で表される基からなる群より選択される親水性の部分構造を1以上含み、Mは、下記一般式(m1)、(m6)、及び(m7)で表される硫黄原子を含む基からなる群より選択される親油性の部分構造を1以上含み、Nで表される二価の連結基は、下記構造式(n1)~(n3)で表される基からなる群より選択される1以上を含む。)
- 請求項1に記載の板状ガラスと硬化性樹脂組成物とを接触もしくは混合させた有機無機複合材料。
- 前記硫黄系有機材料における親水性の部分構造が前記板状ガラスと接触し、前記硫黄系有機材料における親油性の部分構造が前記硬化性樹脂組成物と接触してなる、請求項2に記載の有機無機複合材料。
- 前記硬化性樹脂組成物の硬化後のd線屈折率が1.6以上であり、厚さ0.25mmの可視光領域の光透過率が80%以上であり、ヘーズ値が1.0%以下である、請求項2から4のいずれかに記載の有機無機複合材料。
- 前記硬化性樹脂組成物が、光重合開始剤、光増感剤、又は熱硬化剤をさらに含む、請求項2から5のいずれかに記載の有機無機複合材料。
- 前記硬化性樹脂組成物と前記板状ガラスとの静的接触角が30度以下である、請求項2から6のいずれかに記載の有機無機複合材料。
- 請求項2から7のいずれかに記載の有機無機複合材料を熱または活性エネルギー線により硬化させた、有機無機複合材料の硬化物。
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