JP7253482B2 - 耐炎化繊維及び炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、耐炎化繊維及び炭素繊維の製造方法に関する。
炭素繊維の製造方法としては、従来から、ポリアクリロニトリルを紡糸して得られる炭素繊維前駆体に耐炎化処理を施した後、炭化処理を施す方法が主として採用されている(例えば、特公昭37-4405号公報(特許文献1)、特開2015-74844号公報(特許文献2)、特開2016-40419号公報(特許文献3)、特開2016-113726号公報(特許文献4))。この方法に用いられるポリアクリロニトリルは安価な汎用溶媒に溶解しにくいため、重合や紡糸の際に、ジメチルスルホキシドやN,N-ジメチルアセトアミド等の高価な溶媒を使用する必要があり、炭素繊維の製造コストが高くなるという問題があった。
また、特開2013-103992号公報(特許文献5)には、アクリロニトリル単位96~97.5質量部と、アクリルアミド単位2.5~4質量部と、カルボン酸含有ビニルモノマー0.01~0.5質量部とからなるポリアクリロニトリル系共重合体からなる炭素繊維前駆体繊維が記載されている。このポリアクリロニトリル系共重合体は、ポリマーの水溶性に寄与するアクリルアミド単位やカルボン酸含有ビニルモノマー単位を含有するものの、これらの含有量が少ないため、水には不溶であり、重合や成形加工(紡糸)の際に、N,N-ジメチルアセトアミド等の高価な溶媒を使用する必要があり、炭素繊維の製造コストが高くなるという問題があった。
さらに、ポリアクリロニトリルやその共重合体に加熱処理を施すと、急激な発熱が起こり、ポリアクリロニトリルやその共重合体の熱分解が加速されるため、炭素材料(炭素繊維)の収率が低くなるという問題があった。このため、ポリアクリロニトリルやその共重合体を用いて炭素材料(炭素繊維)を製造する場合には、耐炎化処理の昇温過程において、急激な発熱が発生しないように、長時間をかけて徐々に昇温する必要があった。
また、ポリアクリロニトリルやその共重合体からなる炭素繊維前駆体繊維束に耐炎化処理を施すと、単繊維同士が融着し、得られる炭素繊維において、毛羽立ちや糸切れが発生したり、繊維強度が低下したりするという問題があった。
一方、アクリルアミド単位を多く含有するアクリルアミド系ポリマーは水溶性のポリマーであり、重合や成形加工(フィルム化、シート化、紡糸等)の際に、安価で環境負荷の小さい水を溶媒として使用することができるため、炭素材料の製造コストの削減が期待される。例えば、特開2018-90791号公報(特許文献6)には、アクリルアミド系ポリマーと、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分とを含有する炭素材料前駆体組成物、及びそれを用いた炭素材料の製造方法が記載されている。また、特開2019-26827号公報(特許文献7)には、アクリルアミド系モノマー単位50~99.9モル%とシアン化ビニル系モノマー単位0.1~50モル%とを含有するアクリルアミド/シアン化ビニル系共重合体からなる炭素材料前駆体、及びこの炭素材料前駆体と、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分とを含有する炭素材料前駆体組成物、並びに、これらを用いた炭素材料の製造方法が記載されている。しかしながら、これらの炭素材料の製造方法における炭化収率は、必ずしも十分なものではなく、未だ改良の余地があった。
また、特開2018-178344号公報(特許文献8)には、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束に、酸化性雰囲気下で密度が1.22~1.24g/cm3になるまで熱処理を施した後、密度が1.32~1.35g/cm3になるまで熱処理を施し、さらに、密度が1.46~1.50g/cm3になるまで、1.6~4.0mN/dtexの張力をかけながら、酸化性雰囲気下、275~295℃で熱処理を施して耐炎化繊維束を得た後、この耐炎化繊維束に不活性雰囲気中で1200~3000℃で熱処理を施す炭素繊維束の製造方法が記載されている。
本発明者らは、アクリルアミド系ポリマーからなる炭素繊維前駆体繊維束においても、耐炎化処理の際に、繊維表面が軟化して単繊維同士の融着が発生する場合があることを見出した。そして、本発明者らは、このような単繊維同士の融着は、前駆体繊維束に張力を付与しながら耐炎化処理を施すことによって抑制されることを見出した。しかしながら、アクリルアミド系ポリマーからなる炭素繊維前駆体繊維束に張力を付与しながら耐炎化処理を施した場合でも、単繊維同士の融着が十分に抑制されない場合があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、アクリルアミド系ポリマーに由来し、単繊維同士の融着が抑制され、高温での耐荷重性に優れ、高い強度及び高い炭化収率を有する耐炎化繊維を製造することが可能な耐炎化繊維の製造方法、並びに高収率で炭素繊維を製造することが可能な炭素繊維の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アクリルアミド系モノマー単位とシアン化ビニル系モノマー単位と不飽和カルボン酸系モノマー単位とを特定の割合で含有するアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維に所定の張力を付与しながら耐炎化処理を施すことによって、単繊維同士の融着が抑制され、高温での耐荷重性に優れ、高い強度及び高い炭化収率を有する耐炎化繊維が得られ、さらに、このような耐炎化繊維に炭化処理を施すことによって、高収率で炭素繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の耐炎化繊維の製造方法は、アクリルアミド系モノマー単位40~99.8モル%とシアン化ビニル系モノマー単位0.1~50モル%と不飽和カルボン酸系モノマー単位0.1~30モル%とを含有するアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維に、0.05~200mN/texの張力を付与しながら耐炎化処理を施すことを特徴とする方法である。
本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、前記アクリルアミド系ポリマー繊維に付与する張力が0.1~200mN/texであることが好ましく、また、酸化性雰囲気下、150~500℃の範囲内の温度で前記耐炎化処理を施すことが好ましい。
また、本発明の炭素繊維の製造方法は、前記本発明の耐炎化繊維の製造方法により耐炎化繊維を製造する工程と、前記耐炎化繊維に炭化処理を施す工程と、を含むことを特徴とする方法である。
なお、本発明の耐炎化繊維の製造方法によって、単繊維同士の融着が抑制され、高温での耐荷重性に優れ、高い強度及び高い炭化収率を有する耐炎化繊維が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維においては、不飽和カルボン酸系モノマー単位とシアン化ビニル系モノマー単位とが存在することによって、耐炎化処理時に、不飽和カルボン酸系モノマー単位同士の分子内環化反応や分子間架橋反応並びに不飽和カルボン酸系モノマー単位とシアン化ビニルモノマー単位との分子内環化反応や分子間架橋反応が起こり、ポリマー鎖に環状構造が導入されるため、繊維表面の耐熱性が向上して繊維表面の軟化による単繊維同士の融着が抑制されるとともに、高温での耐荷重性や繊維強度が向上すると推察される。また、本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、前記アクリルアミド系ポリマー繊維に所定の張力を付与しながら耐炎化処理を施すため、ポリマー分子が繊維軸方向に配向・配列し、前記分子内環化反応や前記分子間架橋反応が効率的に進行することによって、環状構造が連続した構造が形成されやすく、単繊維同士の融着防止性、高温での耐荷重性及び繊維強度が更に向上すると推察される。
本発明によれば、アクリルアミド系ポリマーに由来し、単繊維同士の融着が抑制され、高温での耐荷重性に優れ、高い強度及び高い炭化収率を有する耐炎化繊維を得ることができる。また、このような耐炎化繊維に炭化処理を施すことによって、高収率で炭素繊維を製造することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の耐炎化繊維の製造方法について説明する。本発明の耐炎化繊維の製造方法は、アクリルアミド系モノマー単位40~99.8モル%とシアン化ビニル系モノマー単位0.1~50モル%と不飽和カルボン酸系モノマー単位0.1~30モル%とを含有するアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維に、0.05~200mN/texの張力を付与しながら耐炎化処理を施す方法である。
(アクリルアミド系ポリマー)
本発明に用いられるアクリルアミド系ポリマーは、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体であり、全モノマー単位100モル%に対して、アクリルアミド系モノマー単位を40~99.8モル%の割合で含有するものである。アクリルアミド系モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体が後述する水性溶媒又は水系混合溶媒に溶解しにくくなる。他方、アクリルアミド系モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、高い炭化収率を有する耐炎化繊維が得られない。また、前記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性の観点から、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の下限としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。さらに、耐炎化繊維の炭化収率が向上するという観点から、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の上限としては、99モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下が更に好ましく、90モル%以下が特に好ましい。
本発明に用いられるアクリルアミド系ポリマーは、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体であり、全モノマー単位100モル%に対して、アクリルアミド系モノマー単位を40~99.8モル%の割合で含有するものである。アクリルアミド系モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体が後述する水性溶媒又は水系混合溶媒に溶解しにくくなる。他方、アクリルアミド系モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、高い炭化収率を有する耐炎化繊維が得られない。また、前記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性の観点から、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の下限としては、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。さらに、耐炎化繊維の炭化収率が向上するという観点から、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の上限としては、99モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下が更に好ましく、90モル%以下が特に好ましい。
また、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体は、全モノマー単位100モル%に対して、シアン化ビニル系モノマー単位を0.1~50モル%の割合で含有するものである。シアン化ビニル系モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の紡糸性が低下する。他方、シアン化ビニル系モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体が後述する水性溶媒又は水系混合溶媒に溶解しにくくなる。また、前記共重合体の紡糸性及び耐炎化繊維の炭化収率が向上するという観点から、シアン化ビニル系モノマー単位の含有量の下限としては、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が更に好ましく、15モル%以上が特に好ましい。さらに、前記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性の観点から、シアン化ビニル系モノマー単位の含有量の上限としては、40モル%以下が好ましく、35モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましく、25モル%以下が特に好ましい。
さらに、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体は、全モノマー単位100モル%に対して、不飽和カルボン酸系モノマー単位を0.1~30モル%の割合で含有するものである。不飽和カルボン酸系モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、高い炭化収率を有する耐炎化繊維が得られない。他方、不飽和カルボン酸系モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の紡糸性が低下する。また、耐炎化繊維の炭化収率が向上するという観点から、不飽和カルボン酸系モノマー単位の含有量の下限としては、0.2モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、2モル%以上が特に好ましい。さらに、前記共重合体の紡糸性が向上するという観点から、不飽和カルボン酸系モノマー単位の含有量の上限としては、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
また、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体においては、シアン化ビニル系モノマー単位に対する不飽和カルボン酸系モノマー単位のモル比(不飽和カルボン酸系モノマー単位/シアン化ビニル系モノマー単位)が0.01/1~20/1であることが好ましく、0.02/1~15/1であることがより好ましく、0.05/1~10/1であることが特に好ましい。不飽和カルボン酸系モノマー単位/シアン化ビニル系モノマー単位が前記下限未満になると、単繊維同士の融着防止性、高温での耐荷重性及び繊維強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の紡糸性が低下する傾向にある。
前記アクリルアミド系モノマーとしては、例えば、アクリルアミド;N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド等のN-アルキルアクリルアミド;N-シクロヘキシルアクリルアミド等のN-シクロアルキルアクリルアミド;N,N-ジメチルアクリルアミド等のジアルキルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルアクリルアミド;N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のヒドロキシアルキルアクリルアミド;N-フェニルアクリルアミド等のN-アリールアクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド;N,N’-メチレンビスアクリルアミド等のN,N’-アルキレンビスアクリルアミド;メタクリルアミド;N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド等のN-アルキルメタクリルアミド;N-シクロヘキシルメタクリルアミド等のN-シクロアルキルメタクリルアミド;N,N-ジメチルメタクリルアミド等のジアルキルメタクリルアミド;ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド;N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等のヒドロキシアルキルメタクリルアミド;N-フェニルメタクリルアミド等のN-アリールメタクリルアミド;ジアセトンメタクリルアミド;N,N’-メチレンビスメタクリルアミド等のN,N’-アルキレンビスメタクリルアミドが挙げられる。これらのアクリルアミド系モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのアクリルアミド系モノマーの中でも、水性溶媒又は水系混合溶媒への溶解性が高いという観点から、アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、ジアルキルアクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、ジアルキルメタクリルアミドが好ましく、アクリルアミドが特に好ましい。
前記シアン化ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-ヒドロキシエチルアクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、クロロメタクリロニトリル、メトキシアクリロニトリル、メトキシメタクリロニトリルが挙げられる。これらのシアン化ビニル系モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのシアン化ビニル系モノマーの中でも、耐炎化繊維の炭化収率が向上するという観点から、アクリロニトリルが好ましい。
前記不飽和カルボン酸系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸及びその塩;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸系モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの不飽和カルボン酸系モノマーの中でも、単繊維同士の融着防止性が向上するという観点から、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸無水物が好ましい。
また、本発明に用いられるアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体においては、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリルアミド系モノマー単位、シアン化ビニル系モノマー単位及び不飽和カルボン酸系モノマー単位以外の他の重合性モノマー単位が含まれていてもよい。このような他の重合性モノマー単位の含有量としては、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の全モノマー単位100モル%に対して、30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下が特に好ましく、1モル%以下が最も好ましい。前記他の重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル等の不飽和カルボン酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;塩化ビニル、ビニルアルコール等のシアン化ビニル系モノマー以外のビニル系モノマー;エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。
さらに、本発明に用いられるアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の重量平均分子量の上限としては、特に制限はないが、通常500万以下であり、前記共重合体の紡糸性の観点から、200万以下が好ましく、100万以下がより好ましく、50万以下が更に好ましく、30万以下がまた更に好ましく、20万以下が特に好ましく、13万以下がまた特に好ましく、10万以下が最も好ましい。また、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の重量平均分子量の下限としては、特に制限はないが、通常1万以上であり、耐炎化繊維の強度の観点から、2万以上が好ましく、3万以上がより好ましく、4万以上が特に好ましい。なお、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定されるものである。
また、本発明に用いられるアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体は、水性溶媒(水、アルコール等、及びこれらの混合溶媒)及び水系混合溶媒(前記水性溶媒と有機溶媒(テトラヒドロフラン等)との混合溶媒)のうちの少なくとも一方に可溶なものであることが好ましい。これにより、前記共重合体を紡糸する際には、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた乾式紡糸、乾湿式紡糸、湿式紡糸、又はエレクトロスピニングが可能となり、低コストで安全に耐炎化繊維及び炭素繊維を製造することが可能となる。また、前記共重合体に後述する添加成分を配合する場合に、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた湿式混合が可能となり、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体と後述する添加成分とを均一かつ低コストで安全に混合することが可能となる。なお、前記水系混合溶媒中の有機溶媒の含有量としては、前記水性溶媒に不溶又は難溶なアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体が有機溶媒を混合することによって溶解する量であれば特に制限はない。また、このようなアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の中でも、より低コストで安全に耐炎化繊維及び炭素繊維を製造することが可能となるという観点から、前記水性溶媒に可溶なアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体が好ましく、水に可溶な(水溶性の)アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体がより好ましい。
このようなアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体を合成する方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合等の公知の重合反応を、溶液重合、懸濁重合、沈殿重合、分散重合、乳化重合(例えば、逆相乳化重合)等の重合方法によって行う方法を採用することができる。前記重合反応の中でも、前記共重合体を低コストで製造できるという観点から、ラジカル重合が好ましい。また、溶液重合を採用する場合、溶媒としては、原料のモノマー及び得られるアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体が溶解するものを使用することが好ましく、低コストで安全に製造できるという観点から、前記水性溶媒(水、アルコール等、及びこれらの混合溶媒等)又は前記水系混合溶媒(前記水性溶媒と有機溶媒(テトラヒドロフラン等)との混合溶媒)を使用することがより好ましく、前記水性溶媒を使用することが特に好ましく、水を使用することが最も好ましい。
前記ラジカル重合においては、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の従来公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、溶媒として前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を使用する場合には、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒(好ましくは前記水性溶媒、より好ましくは水)に可溶なラジカル重合開始剤が好ましい。また、前記共重合体の紡糸性の向上と、前記共重合体の前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒に対する溶解性の向上という観点から、前記重合開始剤に代えて又は加えて、テトラメチルエチレンジアミン等の従来公知の重合促進剤やn-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン等の分子量調節剤を用いることが好ましく、前記重合開始剤と前記重合促進剤とを併用することが好ましく、過硫酸アンモニウムとテトラメチルエチレンジアミンとを併用することが特に好ましい。
重合開始剤を添加する際の温度としては特に制限はないが、前記共重合体の紡糸性の向上という観点から、35℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、45℃以上が更に好ましく、50℃以上が特に好ましく、55℃以上が最も好ましい。また、前記重合反応の温度としては特に制限はないが、前記共重合体の前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒に対する溶解性の向上という観点から、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上が最も好ましい。
〔アクリルアミド系ポリマー繊維〕
本発明に用いられるアクリルアミド系ポリマー繊維は、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体からなるものであり、その繊度としては特に制限はないが、1×10-8~100tex/本が好ましく、1×10-6~60tex/本がより好ましく、0.001~40tex/本が更に好ましく、0.01~10tex/本がまた更に好ましく、0.02~2tex/本が特に好ましく、0.03~0.4tex/本が最も好ましい。アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が前記下限未満になると、糸切れが発生しやすく、安定した巻取りや耐炎化処理が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、耐炎化繊維の表層付近と中心付近の構造差が大きくなり、得られる炭素繊維の引張強度が低下する傾向にある。
本発明に用いられるアクリルアミド系ポリマー繊維は、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体からなるものであり、その繊度としては特に制限はないが、1×10-8~100tex/本が好ましく、1×10-6~60tex/本がより好ましく、0.001~40tex/本が更に好ましく、0.01~10tex/本がまた更に好ましく、0.02~2tex/本が特に好ましく、0.03~0.4tex/本が最も好ましい。アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が前記下限未満になると、糸切れが発生しやすく、安定した巻取りや耐炎化処理が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、耐炎化繊維の表層付近と中心付近の構造差が大きくなり、得られる炭素繊維の引張強度が低下する傾向にある。
また、前記アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径としては特に制限はないが、3nm~300μmが好ましく、30nm~250μmがより好ましく、1~200μmが更に好ましく、3~100μmがまた更に好ましく、4~40μmが特に好ましく、5~20μmが最も好ましい。アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径が前記下限未満になると、糸切れが発生しやすく、安定した巻取りや耐炎化処理が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、耐炎化繊維の表層付近と中心付近の構造差が大きくなり、得られる炭素繊維の引張強度が低下する傾向にある。
さらに、前記アクリルアミド系ポリマー繊維においては、特に制限はないが、絶乾状態での密度が1.20~1.37g/cm3であることが好ましく、1.21~1.36g/cm3であることがより好ましく、1.22~1.34g/cm3であることが更に好ましく、1.23~1.32g/cm3であることが特に好ましく、1.24~1.29g/cm3であることが最も好ましい。このような密度を有するアクリルアミド系ポリマー繊維を用いることによって、耐炎化処理における環化反応が加速する傾向にあり、耐炎化繊維の引張強度が向上する傾向にある。
また、前記アクリルアミド系ポリマー繊維は、高い炭化収率を示すため、酸等の添加成分を配合せずに、そのまま耐炎化繊維及び炭素繊維の製造に使用することが可能であるが、脱水反応や脱アンモニア反応による環状構造の形成が加速して耐熱性が向上することによって、耐炎化処理時の単繊維同士の融着が更に抑制されるという観点から、前記アクリルアミド系ポリマー繊維には、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体に加えて、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分が含まれていることが好ましい。さらに、前記添加成分を含むアクリルアミド系ポリマー繊維に張力を付与しながら耐炎化処理を施すことによって、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の脱水反応や脱アンモニア反応による環状構造の形成が加速し、高い炭化収率を有する耐炎化繊維が得られる。また、本発明の耐炎化繊維においては、前記添加成分及びその残渣の少なくとも一部が残存していてもよい。さらに、耐炎化繊維に前記添加成分を加えて炭化処理を行ってもよい。
このような添加成分の含有量としては、アクリルアミド系ポリマー繊維から作製した耐炎化繊維の炭化収率がより向上するという観点から、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体100質量部に対して0.1~100質量部が好ましく、0.2~50質量部がより好ましく、0.5~30質量部が更に好ましく、1~20質量部が特に好ましい。
前記酸としては、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ポリホウ酸、硫酸、硝酸、炭酸、塩酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸、スルホン酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。また、このような酸の塩としては、金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、アンモニウム塩、アミン塩が好ましく、アンモニウム塩がより好ましい。特に、これらの添加成分のうち、アクリルアミド系ポリマー繊維から作製した耐炎化繊維の炭化収率が更に向上するという観点から、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ポリホウ酸、硫酸、及びこれらのアンモニウム塩が好ましく、リン酸、ポリリン酸、及びこれらのアンモニウム塩が特に好ましい。
前記添加成分は、前記水性溶媒及び前記水系混合溶媒のうちの少なくとも一方(より好ましくは前記水性溶媒、特に好ましくは水)に可溶なものであることが好ましい。これにより、添加成分を含有するアクリルアミド系ポリマー繊維を製造する際に、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた湿式混合が可能となり、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体と前記添加成分とを均一かつ低コストで安全に混合することが可能となる。また、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた乾式紡糸、乾湿式紡糸、湿式紡糸、又はエレクトロスピニングが可能となり、低コストで安全に耐炎化繊維及び炭素繊維を製造することが可能となる。
このようなアクリルアミド系ポリマー繊維は以下のようにして作製(製造)することができる。先ず、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体又は前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体と前記添加成分とを含有する共重合体組成物を紡糸する。このとき、溶融状態の前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体又は前記共重合体組成物を用いて溶融紡糸、スパンボンド、メルトブローン、遠心紡糸してもよいが、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体又は前記共重合体組成物が前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒に可溶な場合には、紡糸性が高まるという観点から、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体又は前記共重合体組成物を前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒に溶解し、得られた水性溶液又は水系混合溶液を用いて紡糸すること、或いは、前述の重合後のアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の溶液又は後述する湿式混合で得られる前記共重合体組成物の溶液をそのまま若しくは所望の濃度に調整した後、紡糸することが好ましい。このような紡糸方法としては、乾式紡糸、湿式紡糸、乾湿式紡糸、ゲル紡糸、フラッシュ紡糸、又はエレクトロスピニングが好ましい。これにより、所望の繊度及び平均繊維径を有するアクリルアミド系ポリマー繊維を低コストで安全に作製(製造)することができる。また、より低コストで安全にアクリルアミド系ポリマー繊維を製造することができるという観点から、溶媒として前記水性溶媒を使用することがより好ましく、水を使用することが特に好ましい。
また、前記水性溶液又は前記水系混合溶液における前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の濃度としては特に制限はないが、生産性向上とコスト低減の観点から、20質量%以上の高濃度が好ましい。なお、前記共重合体の濃度が高くなりすぎると、前記水性溶液又は前記水系混合溶液の粘度が高くなり、紡糸性が低下するため、前記水性溶液又は前記水系混合溶液の濃度を、粘度を指標として、紡糸が可能な濃度に調整することが好ましい。
前記共重合体組成物を製造する方法としては、溶融状態の前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体に前記添加成分を直接混合する方法(溶融混合)、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体と前記添加成分とをドライブレンドする方法(乾式混合)、前記添加成分を含有する水性溶液又は水系混合溶液、或いは前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体は完全溶解していないが前記添加成分は溶解している溶液に繊維状に成形した前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体を浸漬したり、通過させたりする方法等を採用することも可能であるが、使用する前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体及び前記添加成分が前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒に可溶な場合には、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体と前記添加成分とを均一に混合することができるという観点から、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体と前記添加成分とを前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒中で混合する方法(湿式混合)が好ましい。また、湿式混合としては、前記アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の合成に際し、前述の重合を前記水性溶媒中又は前記水系混合溶媒中で行った場合に、重合後等に前記添加成分を混合する方法も採用することができる。さらに、得られる溶液から前記溶媒を除去することによって前記共重合体組成物を回収し、これを後述する炭素繊維の製造に用いることができるほか、前記溶媒を除去することなく、得られる溶液をそのまま後述する炭素繊維の製造に用いることもできる。また、前記湿式混合においては、より低コストで安全に前記共重合体組成物を製造できるという観点から、溶媒として前記水性溶媒を使用することが好ましく、水を使用することがより好ましい。さらに、前記溶媒を除去する方法としては特に制限はなく、減圧留去、再沈殿、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の公知の方法のうちの少なくとも1つの方法を採用することができる。
このようなアクリルアミド系ポリマー繊維は、単繊維として使用してもよいし、繊維束として使用してもよい。前記アクリルアミド系ポリマー繊維を繊維束として使用する場合、1糸条あたりのフィラメント数としては特に制限はないが、耐炎化繊維及び炭素繊維の高生産性及び機械特性が向上するという観点から、50~96000本が好ましく、100~48000本がより好ましく、500~36000本が更に好ましく、1000~24000本が特に好ましい。1糸条あたりのフィラメント数が前記上限を超えると、耐炎化処理時に焼成ムラが生じる場合がある。
また、このようなアクリルアミド系ポリマー繊維には、繊維の集束性、ハンドリングの向上、繊維同士の癒着の防止という観点から、シリコーン系油剤等の従来公知の油剤を塗布してもよい。
(耐炎化繊維の製造方法)
本発明の耐炎化繊維の製造方法は、前記アクリルアミド系ポリマー繊維に、0.05~200mN/texの張力を付与しながら耐炎化処理を施す方法である。本発明に用いられる前記アクリルアミド系ポリマー繊維は、耐炎化処理によって熱分解されにくく、また、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の構造が耐炎化処理によって耐熱性の高い構造に変換されるため、得られる耐炎化繊維は、高い炭化収率を示す。特に、前記添加成分を含有する前記アクリルアミド系ポリマー繊維においては、添加成分である酸やその塩の触媒作用により、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の脱アンモニア反応や脱水反応が促進されるため、分子内に環状構造(イミド環構造)や2環以上の多環が連続した構造が形成されやすく、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の構造が耐熱性の高い構造に変換されやすいため、耐炎化繊維の炭化収率が更に高くなる。
本発明の耐炎化繊維の製造方法は、前記アクリルアミド系ポリマー繊維に、0.05~200mN/texの張力を付与しながら耐炎化処理を施す方法である。本発明に用いられる前記アクリルアミド系ポリマー繊維は、耐炎化処理によって熱分解されにくく、また、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の構造が耐炎化処理によって耐熱性の高い構造に変換されるため、得られる耐炎化繊維は、高い炭化収率を示す。特に、前記添加成分を含有する前記アクリルアミド系ポリマー繊維においては、添加成分である酸やその塩の触媒作用により、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の脱アンモニア反応や脱水反応が促進されるため、分子内に環状構造(イミド環構造)や2環以上の多環が連続した構造が形成されやすく、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の構造が耐熱性の高い構造に変換されやすいため、耐炎化繊維の炭化収率が更に高くなる。
また、本発明の耐炎化繊維の製造方法において、前記アクリルアミド系ポリマー繊維に付与する張力は、0.05~200mN/texであり、0.07~200mN/texであることが好ましく、0.1~200mN/texであることがより好ましく、0.1~100mN/texであることが更に好ましく、0.3~15mN/texであることが特に好ましい。前記アクリルアミド系ポリマー繊維に付与する張力が前記下限未満になると、単繊維同士の融着が十分に抑制されず、耐炎化繊維の高温での耐荷重性、強度及び炭化収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、耐炎化処理時に前記アクリルアミド系ポリマー繊維の切断が生じる場合がある。なお、本発明において、前記アクリルアミド系ポリマー繊維に付与する張力(単位:mN/tex)は、耐炎化処理時に前記アクリルアミド系ポリマー繊維に付与する張力(単位:mN)を、前記アクリルアミド系ポリマー繊維の絶乾状態での繊度(単位:tex)で除した値、すなわち、前記アクリルアミド系ポリマー繊維の単位繊度当たりの張力である。また、このような前記アクリルアミド系ポリマー繊維に付与する張力は、耐炎化炉等の加熱装置の出口側等でロードセル、バネ、重り等によって調整することができる。
さらに、本発明の耐炎化繊維の製造方法において、前記耐炎化処理は、150~500℃の範囲内の温度で施されることが好ましく、200~450℃の範囲内の温度で施されることがより好ましく、250~420℃の範囲内の温度で施されることが更に好ましいが、特に制限はない。なお、このような温度で施される耐炎化処理には、後述する耐炎化処理時の最高温度(耐炎化処理温度)での耐炎化処理だけでなく、前記耐炎化処理温度までの昇温過程等における耐炎化処理も包含される。
また、前記耐炎化処理時の最高温度(耐炎化処理温度)としては、200~500℃が好ましく、250~450℃がより好ましく、305~440℃が更に好ましく、310~430℃が特に好ましく、315~420℃が最も好ましい。前記耐炎化処理温度が前記下限未満になると、アクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体の脱アンモニア反応や脱水反応が促進されず、分子内に環状構造(イミド環構造)が形成されにくいため、生成する耐炎化繊維の耐熱性が低く、耐炎化繊維の炭化収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、生成する耐炎化繊維が熱分解される傾向にある。
さらに、本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、前記耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)において前記アクリルアミド系ポリマー繊維に所定の張力が付与されていれば、前記耐炎化処理温度までの昇温過程等において所定の張力が付与されていても、施されていなくてもよいが、張力の付与による効果が十分に得られるという観点から、前記昇温過程等においても所定の張力が付与されていることが好ましい。また、張力は、前記昇温過程等の初期段階から付与されていてもよいし、途中の段階から付与されていてもよい。
また、本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、前記耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)で所定の張力を付与しながら加熱処理を施した後に、前記耐炎化処理温度より高い温度で所定の張力以外の張力を付与しながら又は張力を付与せずに加熱処理を施してもよい。
耐炎化処理時間(前記最高温度での加熱時間)としては特に制限はなく、長時間(例えば2時間超)の加熱も可能であるが、1~120分間が好ましく、2~60分間がより好ましく、3~50分間が更に好ましく、4~40分間が特に好ましい。耐炎化処理における前記加熱時間を前記下限以上とすることにより、炭化収率を向上させることができ、他方、2時間以下とすることにより、コストを低減することができる。
〔耐炎化繊維〕
本発明によって得られる耐炎化繊維の密度としては特に制限はないが、1.30~1.75g/cm3が好ましく、1.35~1.70g/cm3がより好ましく、1.37~1.65g/cm3が更に好ましく、1.39~1.60g/cm3が特に好ましく、1.44~1.55g/cm3が最も好ましい。耐炎化繊維の密度が前記下限未満になると、耐炎化繊維の耐熱性と構造の緻密性とが不十分となるため、耐炎化繊維の炭化収率が低下する傾向にある。他方、前記上限を超えると、前記上限を超える密度を有する耐炎化繊維を得るためには、耐炎化処理時間を長くしてエネルギー量を増大させる必要があり、また、前記上限を超える密度を有する耐炎化繊維においては、耐炎化繊維の密度の増加によって炭化収率を高める効果が飽和する傾向にあるため、生産性の観点から、耐炎化繊維の密度は前記上限以下であることが好ましい。
本発明によって得られる耐炎化繊維の密度としては特に制限はないが、1.30~1.75g/cm3が好ましく、1.35~1.70g/cm3がより好ましく、1.37~1.65g/cm3が更に好ましく、1.39~1.60g/cm3が特に好ましく、1.44~1.55g/cm3が最も好ましい。耐炎化繊維の密度が前記下限未満になると、耐炎化繊維の耐熱性と構造の緻密性とが不十分となるため、耐炎化繊維の炭化収率が低下する傾向にある。他方、前記上限を超えると、前記上限を超える密度を有する耐炎化繊維を得るためには、耐炎化処理時間を長くしてエネルギー量を増大させる必要があり、また、前記上限を超える密度を有する耐炎化繊維においては、耐炎化繊維の密度の増加によって炭化収率を高める効果が飽和する傾向にあるため、生産性の観点から、耐炎化繊維の密度は前記上限以下であることが好ましい。
また、本発明によって得られる耐炎化繊維の平均繊維径としては特に制限はないが、3nm~300μmが好ましく、30nm~150μmがより好ましく、1~60μmが更に好ましく、2~20μmがまた更に好ましく、3~15μmが特に好ましく、5~10μmが最も好ましい。耐炎化繊維の平均繊維径が前記下限未満になると、炭化処理前や炭化処理時の耐炎化繊維束の搬送性が低下し、一部の繊維において切断が生じる場合があり、他方、前記上限を超えると、炭化処理時に繊維の表層付近と中心付近の構造差が大きくなるため、得られる炭素繊維の引張強度が低下する傾向にある。
また、本発明によって得られる耐炎化繊維の平均繊維径は、耐炎化繊維の炭化収率が向上するという観点から、耐炎化処理前の前記アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径に比べて、5%以上小さいことが好ましく、10%以上小さいことがより好ましく、15%以上小さいことが更に好ましく、20%以上小さいことが特に好ましく、25%以上小さいことがとりわけ好ましく、30%以上小さいことが最も好ましい。
〔炭素繊維の製造方法〕
本発明の炭素繊維の製造方法は、前記本発明の耐炎化繊維の製造方法により耐炎化繊維を製造する工程と、前記耐炎化繊維に炭化処理を施す工程とを含む方法である。
本発明の炭素繊維の製造方法は、前記本発明の耐炎化繊維の製造方法により耐炎化繊維を製造する工程と、前記耐炎化繊維に炭化処理を施す工程とを含む方法である。
前記耐炎化繊維炭化処理を施す方法としては、前記耐炎化繊維に、不活性雰囲気下(窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中)、前記耐炎化処理における温度よりも高い温度で加熱処理を施す(炭化処理)。これにより、耐炎化繊維が炭化し、所望の炭素繊維が得られる。このような炭化処理における加熱温度としては500℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましく、1100℃以上が更に好ましく、1200℃以上が特に好ましく、1300℃以上が最も好ましい。なお、本発明にかかる「炭化処理」には、一般的に、不活性ガス雰囲気下、2000~3000℃で加熱することによって行われる「黒鉛化」を含んでいてもよい。また、加熱温度の上限としては3000℃以下が好ましく、2500℃以下がより好ましい。さらに、炭化処理における加熱時間としては特に制限はないが、30秒~60分間が好ましく、1~30分間がより好ましい。また、前記炭化処理においては、例えば、先に1000℃未満の温度で加熱処理(予備炭化処理)を行った後、1000℃以上の温度で加熱処理(炭化処理)を行い、さらに、2000℃以上の温度で加熱処理(黒鉛化処理)を行うといったように、複数回の加熱処理を行うこともできる。
このようにして得られる炭素繊維の平均繊維径としては特に制限はないが、3nm~300μmが好ましく、30nm~150μmがより好ましく、1~60μmが更に好ましく、3~20μmがまた更に好ましく、4~15μmが特に好ましく、5~10μmが最も好ましい。炭素繊維の平均繊維径が前記下限未満になると、樹脂等をマトリックスとして複合材料を作製する場合に、マトリックスの粘度が高いと炭素繊維束中への樹脂等の含浸不足が生じ、複合材料の引張強度が低下する場合があり、他方、前記上限を超えると、炭素繊維の引張強度が低下する傾向にある。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した各アクリルアミド系ポリマー繊維は以下の方法により調製した。
(調製例1)
アクリルアミド(AM)73mol%、アクリロニトリル(AN)25mol%及びアクリル酸(AA)2mol%からなるモノマー100質量部とテトラメチルエチレンジアミン4.36質量部とをイオン交換水566.7質量部に溶解し、得られた水溶液に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、過硫酸アンモニウム3.43質量部を添加した後、70℃で150分間加熱し、次いで、90℃まで30分かけて昇温した後、90℃で1時間加熱して重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に滴下して共重合物を析出させ、これを回収して80℃で12時間真空乾燥させ、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(AM/AN/AA共重合体)を得た。
アクリルアミド(AM)73mol%、アクリロニトリル(AN)25mol%及びアクリル酸(AA)2mol%からなるモノマー100質量部とテトラメチルエチレンジアミン4.36質量部とをイオン交換水566.7質量部に溶解し、得られた水溶液に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、過硫酸アンモニウム3.43質量部を添加した後、70℃で150分間加熱し、次いで、90℃まで30分かけて昇温した後、90℃で1時間加熱して重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に滴下して共重合物を析出させ、これを回収して80℃で12時間真空乾燥させ、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル/アクリル酸共重合体(AM/AN/AA共重合体)を得た。
<AM/AN/AA共重合体の組成比の測定>
得られたAM/AN/AA共重合体を重水に溶解し、得られた各溶液について、室温、周波数100MHzの条件で13C-NMR測定を行った。得られた13C-NMRスペクトルにおいて、約177ppm~約182ppmに現れるアクリルアミドのカルボニル基の炭素に由来するピークと、約121ppm~約122ppmに現れるアクリロニトリルのシアノ基の炭素に由来するピークと、約179ppm~約182ppmに現れるアクリル酸のカルボニル基の炭素に由来するピークとの積分強度比に基づいて、AM/AN/AA共重合体中のアクリルアミド(AM)単位及びアクリル酸(AA)単位のアクリロニトリル(AN)単位に対するモル比((AM+AA)/AN)を算出した。
得られたAM/AN/AA共重合体を重水に溶解し、得られた各溶液について、室温、周波数100MHzの条件で13C-NMR測定を行った。得られた13C-NMRスペクトルにおいて、約177ppm~約182ppmに現れるアクリルアミドのカルボニル基の炭素に由来するピークと、約121ppm~約122ppmに現れるアクリロニトリルのシアノ基の炭素に由来するピークと、約179ppm~約182ppmに現れるアクリル酸のカルボニル基の炭素に由来するピークとの積分強度比に基づいて、AM/AN/AA共重合体中のアクリルアミド(AM)単位及びアクリル酸(AA)単位のアクリロニトリル(AN)単位に対するモル比((AM+AA)/AN)を算出した。
また、AM/AN/AA共重合体について、赤外分光分析(IR)を行い、得られたIRスペクトルにおいて、約1678cm-1に現れるアクリルアミド(AM)に由来するピークと、約2239cm-1に現れるアクリロニトリル(AN)に由来するピークと、約1715cm-1に現れるアクリル酸(AA)に由来するピークとの強度比に基づいて、AM/AN/AA共重合体中のアクリルアミド(AM)単位とアクリル酸(AA)単位とのモル比(AM/AA)を算出した。
前記(AM+AA)/ANと前記AM/AAとからAM/AN/AA共重合体中のアクリルアミド(AM)単位とアクリロニトリル(AN)単位とアクリル酸(AA)単位とのモル比(AM/AN/AA)を求めたところ、AM/AN/AA=73mol%/25mol%/2mol%であった。
(比較調製例1)
アクリルアミド(AM)75mol%及びアクリロニトリル(AN)25mol%からなるモノマー100質量部とテトラメチルエチレンジアミン4.36質量部とをイオン交換水400質量部に溶解し、得られた水溶液に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、過硫酸アンモニウム3.43質量部を添加した後、70℃で150分間加熱し、次いで、90℃まで30分かけて昇温した後、90℃で1時間加熱して重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に滴下して共重合物を析出させ、これを回収して80℃で12時間真空乾燥させ、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AM/AN共重合体)を得た。
アクリルアミド(AM)75mol%及びアクリロニトリル(AN)25mol%からなるモノマー100質量部とテトラメチルエチレンジアミン4.36質量部とをイオン交換水400質量部に溶解し、得られた水溶液に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、過硫酸アンモニウム3.43質量部を添加した後、70℃で150分間加熱し、次いで、90℃まで30分かけて昇温した後、90℃で1時間加熱して重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に滴下して共重合物を析出させ、これを回収して80℃で12時間真空乾燥させ、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AM/AN共重合体)を得た。
<AM/AN共重合体の組成比の測定>
得られたAM/AN共重合体を重水に溶解し、得られた各溶液について、室温、周波数100MHzの条件で13C-NMR測定を行った。得られた13C-NMRスペクトルにおいて、約177ppm~約182ppmに現れるアクリルアミドのカルボニル基の炭素に由来するピークと、約121ppm~約122ppmに現れるアクリロニトリルのシアノ基の炭素に由来するピークとの積分強度比に基づいて、AM/AN共重合体中のアクリルアミド(AM)単位のアクリロニトリル(AN)単位に対するモル比(AM/AN)を算出したところ、AM/AN=75mol%/25mol%であった。
得られたAM/AN共重合体を重水に溶解し、得られた各溶液について、室温、周波数100MHzの条件で13C-NMR測定を行った。得られた13C-NMRスペクトルにおいて、約177ppm~約182ppmに現れるアクリルアミドのカルボニル基の炭素に由来するピークと、約121ppm~約122ppmに現れるアクリロニトリルのシアノ基の炭素に由来するピークとの積分強度比に基づいて、AM/AN共重合体中のアクリルアミド(AM)単位のアクリロニトリル(AN)単位に対するモル比(AM/AN)を算出したところ、AM/AN=75mol%/25mol%であった。
(比較調製例2)
アクリルアミド(AM)100質量部とテトラメチルエチレンジアミン8.78質量部とをイオン交換水2912質量部に溶解し、得られた水溶液に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、過硫酸アンモニウム1.95質量部を添加した後、60℃で3時間重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に滴下して単独重合物を析出させ、これを回収して80℃で12時間真空乾燥させ、水溶性のポリアクリルアミド(PAM、AM=100mol%)を得た。
アクリルアミド(AM)100質量部とテトラメチルエチレンジアミン8.78質量部とをイオン交換水2912質量部に溶解し、得られた水溶液に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、過硫酸アンモニウム1.95質量部を添加した後、60℃で3時間重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に滴下して単独重合物を析出させ、これを回収して80℃で12時間真空乾燥させ、水溶性のポリアクリルアミド(PAM、AM=100mol%)を得た。
(製造例1)
調製例1で得られたAM/AN/AA共重合体(AM/AN/AA=73mol%/25mol%/2mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.6tex/本、平均繊維径が約24μmとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)を作製し、以下の方法により、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.57tex/本であり、平均繊維径は24μmであった。
調製例1で得られたAM/AN/AA共重合体(AM/AN/AA=73mol%/25mol%/2mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.6tex/本、平均繊維径が約24μmとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)を作製し、以下の方法により、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.57tex/本であり、平均繊維径は24μmであった。
<アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度>
得られたアクリルアミド系ポリマー繊維600本を束ねてアクリルアミド系ポリマー繊維束を作製し、この繊維束の質量を測定して、下記式:
繊維束の繊度[tex]=繊維束の質量[g]/繊維長[m]×1000[m]
により前記繊維束の繊度を算出し、前記繊維束を構成する単繊維の繊度(前記アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度)を求めた。
得られたアクリルアミド系ポリマー繊維600本を束ねてアクリルアミド系ポリマー繊維束を作製し、この繊維束の質量を測定して、下記式:
繊維束の繊度[tex]=繊維束の質量[g]/繊維長[m]×1000[m]
により前記繊維束の繊度を算出し、前記繊維束を構成する単繊維の繊度(前記アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度)を求めた。
<アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径>
乾式自動密度計(マイクロメリティックス社製「アキュピックII 1340」)を用いて前記アクリルアミド系ポリマー繊維束の密度を測定し、下記式:
D={(Dt×4×1000)/(ρ×π×n)}1/2
〔前記式中、Dは繊維束を構成する単繊維の平均繊維径[μm]を表し、Dtは繊維束の繊度[tex]を表し、ρは繊維束の密度[g/cm3]を表し、nは繊維束を構成する単繊維の本数[本]を表す。〕
により前記繊維束を構成する単繊維の平均繊維径(前記アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径)を求めた。
乾式自動密度計(マイクロメリティックス社製「アキュピックII 1340」)を用いて前記アクリルアミド系ポリマー繊維束の密度を測定し、下記式:
D={(Dt×4×1000)/(ρ×π×n)}1/2
〔前記式中、Dは繊維束を構成する単繊維の平均繊維径[μm]を表し、Dtは繊維束の繊度[tex]を表し、ρは繊維束の密度[g/cm3]を表し、nは繊維束を構成する単繊維の本数[本]を表す。〕
により前記繊維束を構成する単繊維の平均繊維径(前記アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径)を求めた。
(製造例2)
アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.3tex/本、平均繊維径が約17μmとなるように乾式紡糸を行った以外は製造例1と同様にして、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-2)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-2)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.29tex/本であり、平均繊維径は17μmであった。
アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.3tex/本、平均繊維径が約17μmとなるように乾式紡糸を行った以外は製造例1と同様にして、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-2)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-2)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.29tex/本であり、平均繊維径は17μmであった。
(製造例3)
調製例1で得られたAM/AN/AA共重合体(AM/AN/AA=73mol%/25mol%/2mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液にAM/AN/AA共重合体100質量部に対して3質量部のリン酸を添加して完全に溶解させた。得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.6tex/本、平均繊維径が約24μmとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-3)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-3)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.68tex/本であり、平均繊維径は26μmであった。
調製例1で得られたAM/AN/AA共重合体(AM/AN/AA=73mol%/25mol%/2mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液にAM/AN/AA共重合体100質量部に対して3質量部のリン酸を添加して完全に溶解させた。得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.6tex/本、平均繊維径が約24μmとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-3)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-3)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.68tex/本であり、平均繊維径は26μmであった。
(比較製造例1)
比較調製例1で得られたAM/AN共重合体(AM/AN=75mol%/25mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.3tex/本、平均繊維径が約17mとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.33tex/本であり、平均繊維径は18μmであった。
比較調製例1で得られたAM/AN共重合体(AM/AN=75mol%/25mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.3tex/本、平均繊維径が約17mとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.33tex/本であり、平均繊維径は18μmであった。
(比較製造例2)
比較調製例1で得られたAM/AN共重合体(AM/AN=75mol%/25mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液にAM/AN共重合体100質量部に対して3質量部のリン酸を添加して完全に溶解させた。得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.3tex/本、平均繊維径が約17μmとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c2)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c2)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.38tex/本であり、平均繊維径は19μmであった。
比較調製例1で得られたAM/AN共重合体(AM/AN=75mol%/25mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液にAM/AN共重合体100質量部に対して3質量部のリン酸を添加して完全に溶解させた。得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.3tex/本、平均繊維径が約17μmとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c2)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c2)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.38tex/本であり、平均繊維径は19μmであった。
(比較製造例3)
比較調製例2で得られたPAM(AM=100mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.3tex/本、平均繊維径が約17μmとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c3)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c3)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.40tex/本であり、平均繊維径は20μmであった。
比較調製例2で得られたPAM(AM=100mol%)をイオン交換水に溶解し、得られた水溶液を用いて、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度が約0.3tex/本、平均繊維径が約17μmとなるように乾式紡糸を行い、アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c3)を作製し、製造例1と同様にして、前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-c3)の繊度及び平均繊維径を測定したところ、繊度は0.40tex/本であり、平均繊維径は20μmであった。
(実施例1)
製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、この前駆体繊維束を加熱炉内に設置して、空気雰囲気下、室温から350℃まで10℃/分で昇温した後、前記前駆体繊維束に0.2mN/texの張力を付与しながら、350℃(耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度))で30分間加熱処理(耐炎化処理)を施して耐炎化繊維束を得た。
製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、この前駆体繊維束を加熱炉内に設置して、空気雰囲気下、室温から350℃まで10℃/分で昇温した後、前記前駆体繊維束に0.2mN/texの張力を付与しながら、350℃(耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度))で30分間加熱処理(耐炎化処理)を施して耐炎化繊維束を得た。
得られた耐炎化繊維束4束を束ねて耐炎化繊維2400本からなる耐炎化繊維束を作製し、この耐炎化繊維束を加熱炉内に搬送して、窒素雰囲気下、1000℃で3分間の加熱処理(炭化処理)を施して炭素繊維束を得た。
(実施例2)
前駆体繊維束に付与する張力を0.4mN/texに変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前駆体繊維束に付与する張力を0.4mN/texに変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(実施例3)
前駆体繊維束に付与する張力を0.1mN/texに変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前駆体繊維束に付与する張力を0.1mN/texに変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(実施例4)
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに製造例2で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-2)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、耐炎化処理時間(前記最高温度での加熱時間)を10分間に変更した以外は実施例2と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに製造例2で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-2)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、耐炎化処理時間(前記最高温度での加熱時間)を10分間に変更した以外は実施例2と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(実施例5)
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに製造例3で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-3)600本を束ねて前駆体繊維束を作製した以外は実施例2と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに製造例3で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-3)600本を束ねて前駆体繊維束を作製した以外は実施例2と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(実施例6)
耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)を320℃に変更した以外は実施例5と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)を320℃に変更した以外は実施例5と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(実施例7)
耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)を300℃に変更した以外は実施例5と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)を300℃に変更した以外は実施例5と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(比較例1)
前駆体繊維束に張力を付与しなかった以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前駆体繊維束に張力を付与しなかった以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(比較例2)
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)600本を束ねて前駆体繊維束を作製した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)600本を束ねて前駆体繊維束を作製した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(比較例3)
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例2で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c2)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、前駆体繊維束に付与する張力を0.1mN/texに変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例2で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c2)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、前駆体繊維束に付与する張力を0.1mN/texに変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(比較例4)
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)を300℃に変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)を300℃に変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(比較例5)
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)を320℃に変更し、前駆体繊維束に張力を付与しなかった以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c1)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、耐炎化処理温度(耐炎化処理時の最高温度)を320℃に変更し、前駆体繊維束に張力を付与しなかった以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
(比較例6)
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例3で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c3)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、耐炎化処理時間(前記最高温度での加熱時間)を10分間に変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
前記アクリルアミド系ポリマー繊維(f-1)の代わりに比較製造例3で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維(f-c3)600本を束ねて前駆体繊維束を作製し、耐炎化処理時間(前記最高温度での加熱時間)を10分間に変更した以外は実施例1と同様にして、耐炎化繊維束及び炭素繊維束を作製した。
<耐炎化繊維及び炭素繊維の平均繊維径>
得られた耐炎化繊維束及び炭素繊維束をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「デジタルマイクロスコープVHX-1000」)を用いて観察し、単繊維の繊維径の測定点を無作為に10箇所抽出して前記耐炎化繊維束を構成する耐炎化単繊維及び前記炭素繊維束を構成する炭素繊維の繊維径を測定し、その平均値(耐炎化繊維及び炭素繊維の平均繊維径)を求めた。その結果を表1に示す。
得られた耐炎化繊維束及び炭素繊維束をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「デジタルマイクロスコープVHX-1000」)を用いて観察し、単繊維の繊維径の測定点を無作為に10箇所抽出して前記耐炎化繊維束を構成する耐炎化単繊維及び前記炭素繊維束を構成する炭素繊維の繊維径を測定し、その平均値(耐炎化繊維及び炭素繊維の平均繊維径)を求めた。その結果を表1に示す。
<融着防止性>
得られた耐炎化繊維束から長さ5cmの評価用繊維束を切出し、この評価用繊維束を構成する繊維を無作為に30本抽出してマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「デジタルマイクロスコープVHX-1000」)を用いて観察し、繊維の融着の状態を下記基準で評価した。その結果を表1に示す。
A:部分的又は完全に融着している繊維の本数が4本以下。
B:部分的又は完全に融着している繊維の本数が5本以上6本以下。
C:部分的又は完全に融着している繊維の本数が7本以上9本以下。
D:部分的又は完全に融着している繊維の本数が10本以上。
得られた耐炎化繊維束から長さ5cmの評価用繊維束を切出し、この評価用繊維束を構成する繊維を無作為に30本抽出してマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「デジタルマイクロスコープVHX-1000」)を用いて観察し、繊維の融着の状態を下記基準で評価した。その結果を表1に示す。
A:部分的又は完全に融着している繊維の本数が4本以下。
B:部分的又は完全に融着している繊維の本数が5本以上6本以下。
C:部分的又は完全に融着している繊維の本数が7本以上9本以下。
D:部分的又は完全に融着している繊維の本数が10本以上。
<耐炎化繊維の高温耐荷重性>
得られた耐炎化繊維束を加熱炉内に設置して所定の質量の重りを取付け、窒素雰囲気下、室温から350℃まで10℃/分で昇温した後、350℃で10分間加熱処理を行い、繊維の切断の有無を観察した。この測定を種々の質量の重りを用いて行い、繊維の切断が確認されたときの重りの質量から繊維1000本当たりの質量を算出し、これを高温での耐荷重として、下記基準で高温耐荷重性を評価した。その結果を表1に示す。
A:高温での耐荷重が繊維1000本当たり15g以上。
B:高温での耐荷重が繊維1000本当たり8g以上15g未満。
C:高温での耐荷重が繊維1000本当たり8g未満。
得られた耐炎化繊維束を加熱炉内に設置して所定の質量の重りを取付け、窒素雰囲気下、室温から350℃まで10℃/分で昇温した後、350℃で10分間加熱処理を行い、繊維の切断の有無を観察した。この測定を種々の質量の重りを用いて行い、繊維の切断が確認されたときの重りの質量から繊維1000本当たりの質量を算出し、これを高温での耐荷重として、下記基準で高温耐荷重性を評価した。その結果を表1に示す。
A:高温での耐荷重が繊維1000本当たり15g以上。
B:高温での耐荷重が繊維1000本当たり8g以上15g未満。
C:高温での耐荷重が繊維1000本当たり8g未満。
<耐炎化繊維の引張強度及び引張弾性率>
得られた耐炎化繊維束から単繊維を取出し、微小強度評価試験機(株式会社島津製作所製「マイクロオートグラフMST-I」)を用いてJIS R7606に準拠して室温にて引張試験(標線間距離:25mm、引張速度:1mm/分)を行い、引張強度及び引張弾性率を測定し、5回の測定の平均値を求めた。
得られた耐炎化繊維束から単繊維を取出し、微小強度評価試験機(株式会社島津製作所製「マイクロオートグラフMST-I」)を用いてJIS R7606に準拠して室温にて引張試験(標線間距離:25mm、引張速度:1mm/分)を行い、引張強度及び引張弾性率を測定し、5回の測定の平均値を求めた。
<炭化収率>
炭化収率を下記式:
炭化収率[%]=炭素繊維束の質量[mg]/炭化処理前の耐炎化繊維束の質量[mg]×100
により求めた。その結果を表1に示す。なお、炭化処理前の耐炎化繊維束の質量としては、耐炎化繊維束を120℃で2時間真空乾燥して耐炎化繊維束に吸着した水分量を算出し、この水分量を考慮した値を使用した。
炭化収率を下記式:
炭化収率[%]=炭素繊維束の質量[mg]/炭化処理前の耐炎化繊維束の質量[mg]×100
により求めた。その結果を表1に示す。なお、炭化処理前の耐炎化繊維束の質量としては、耐炎化繊維束を120℃で2時間真空乾燥して耐炎化繊維束に吸着した水分量を算出し、この水分量を考慮した値を使用した。
表1に示したように、AM/AN/AA共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維に所定の張力を付与しながら耐炎化処理を施した場合(実施例1~7)には、アクリルアミド系ポリマー繊維に張力を付与せずに耐炎化処理を施した場合(比較例1、5)、AM/AN共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維に所定の張力を付与しながら耐炎化処理を施した場合(比較例2~4)、PAMからなるアクリルアミド系ポリマー繊維に所定の張力を付与しながら耐炎化処理を施した場合(比較例6)に比べて、耐炎化処理時の繊維の融着が抑制され、また、高温での耐荷重性に優れ、さらに、強度及び炭化収率が向上することがわかった。
特に、実施例1~3と比較例1とを対比すると明らかなように、同じアクリルアミド系ポリマー繊維に同じ温度及び同じ時間で耐炎化処理を施した場合でも、所定の張力を付与した場合(実施例1~3)には、張力を付与しなかった場合(比較例1)に比べて、耐炎化処理時の繊維の融着が抑制され、また、高温での耐荷重性、強度及び炭化収率が向上することがわかった。また、実施例1~2と実施例3とを対比すると明らかなように、付与する張力が大きいほど、耐炎化処理時の繊維の融着が抑制され、炭化収率が向上することがわかった。
また、実施例1と比較例2、実施例3と比較例3とを対比すると明らかなように、同じ温度、同じ時間及び同じ張力で耐炎化処理を施した場合でも、AM/AN/AA共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維を用いた場合(実施例1、3)には、AM/AN共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維を用いた場合(比較例2)、AM/AN共重合体とリン酸とを含有するアクリルアミド系ポリマー繊維を用いた場合(比較例3)に比べて、耐炎化処理時の繊維の融着が抑制され、また、高温での耐荷重性に優れ、さらに、強度及び炭化収率が向上することがわかった。
以上説明したように、本発明によれば、アクリルアミド系ポリマーに由来し、単繊維同士の融着が抑制され、高温での耐荷重性に優れ、高い強度及び高い炭化収率を有する耐炎化繊維を得ることができる。また、このような耐炎化繊維に炭化処理を施すことによって、高収率で炭素繊維を製造することが可能となる。
さらに、このような炭素繊維は、軽量性、強度、弾性率、耐腐食性等の各種特性に優れているため、例えば、航空用材料、宇宙用材料、自動車用材料、圧力容器、土木・建築用材料、ロボット用材料、通信機器材料、医療用材料、電子材料、ウェアラブル材料、風車、ゴルフシャフト、釣竿等のスポーツ用品等の各種用途の材料として広く使用することができる。また、本発明の耐炎化繊維は、耐熱性及び難燃性に優れているため、炭素繊維の中間原料のほか、防炎断熱材、スパッタシート、各種フィルター等にも使用することができる。
Claims (4)
- アクリルアミド系モノマー単位40~99.8モル%とシアン化ビニル系モノマー単位0.1~50モル%と不飽和カルボン酸系モノマー単位0.1~30モル%とを含有するアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維に、0.05~200mN/texの張力を付与しながら耐炎化処理を施すことを特徴とする耐炎化繊維の製造方法。
- 前記アクリルアミド系ポリマー繊維に付与する張力が0.1~200mN/texであることを特徴とする請求項1に記載の耐炎化繊維の製造方法。
- 酸化性雰囲気下、150~500℃の範囲内の温度で前記耐炎化処理を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の耐炎化繊維の製造方法。
- 請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の方法により耐炎化繊維を製造する工程と、
前記耐炎化繊維に炭化処理を施す工程と、
を含むことを特徴とする炭素繊維の製造方法。
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JP2008150733A (ja) | 2006-12-15 | 2008-07-03 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 炭素繊維前駆体の耐炎化処理方法 |
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