JP2023174468A - 炭素繊維前駆体、炭素繊維前駆体の製造方法、耐炎化繊維の製造方法、炭素繊維の製造方法及び複合繊維 - Google Patents

炭素繊維前駆体、炭素繊維前駆体の製造方法、耐炎化繊維の製造方法、炭素繊維の製造方法及び複合繊維 Download PDF

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Mitsumasa Matsushita
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麻美子 成田
Mamiko Narita
好秀 片桐
Yoshihide Katagiri
翔太 谷口
Shota TANIGUCHI
晃 國友
Akira Kunitomo
望 重光
Nozomi Shigemitsu
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Abstract

【課題】優れた炭化収率を維持しつつ、繊維間の融着抑制性に優れ、且つ耐水性に優れる炭素繊維前駆体、炭素繊維前駆体の製造方法、耐炎化繊維の製造方法、炭素繊維の製造方法及び複合繊維の提供。
【解決手段】アクリルアミド系ポリマー繊維と、アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤の架橋物を含む油剤組成物層とを備え、油剤組成物層の質量をX、23℃のヘキサンに48時間含浸させることにより溶解する油剤組成物層の質量をYとしたとき、下記式Aより求められる油剤組成物層の架橋度が3%以上である、炭素繊維前駆体。
(式A)油剤組成物層の架橋度(%)=([X-Y]/X)×100
【選択図】なし

Description

本開示は、炭素繊維前駆体、炭素繊維前駆体の製造方法、耐炎化繊維の製造方法、炭素繊維の製造方法及び複合繊維に関する。
炭素繊維の製造方法としては、従来から、ポリアクリロニトリルを紡糸して得られる繊維に、シリコーン系油剤を塗布、乾燥した複合繊維に耐炎化処理を施した後、炭化処理を施す方法が主として採用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
ポリアクリロニトリルは、安価な汎用溶媒に溶解しにくいため、重合、紡糸等を行う際に、ジメチルスルホキシドやN,N-ジメチルアセトアミド等の高価な有機溶媒を使用する必要があり、炭素繊維の製造コストが高くなるという問題があった。
一方、アクリルアミド系モノマーを含有するアクリルアミド系ポリマーは水溶性のポリマーであり、重合、紡糸等を行う際に、安価であり、且つ環境負荷の小さい水を溶媒として使用することができるため、炭素材料の製造コストの削減が期待される(例えば、特許文献3及び特許文献4)。
アクリルアミド系ポリマーを含む炭素繊維前駆体は耐炎化時の軟化温度と、環化温度とが近いため、繊維の融着が生じる場合があった。また、アクリルアミド系ポリマーは吸湿性が高く、アクリルアミド系ポリマーを含む炭素繊維前駆体は、その保管時、耐炎化処理時等において、単繊維同士が融着する場合があった。
単繊維同士が融着すると、耐炎化処理及びこれに続く炭化処理が十分に進行せず、炭化収率が低下するおそれがあった。また、単繊維同士が融着すると、耐炎化処理及びこれに続く炭化処理における延伸性が不十分となったり、表面が荒れてしまい、炭素繊維前駆体等において切断、毛羽等が発生したりするおそれがあった。
単繊維同士の融着抑制及び炭化収率の改善を目的として、特許文献5では、アクリルアミド系モノマー単位40~99.8モル%とシアン化ビニル系モノマー単位0.1~50モル%と不飽和カルボン酸系モノマー単位0.1~30モル%とを含有するアクリルアミド/シアン化ビニル/不飽和カルボン酸系共重合体からなるアクリルアミド系ポリマー繊維に、0.05~200mN/texの張力を付与しながら耐炎化処理を施すことを特徴とする耐炎化繊維の製造方法が提案されている。
特開2006-183159号公報 特開2008-202208号公報 特開2019-26827号公報 特開2019-167516号公報 特開2021-80610号公報
上記の特許文献5のように、従前から単繊維同士の融着抑制性の改善が試みられているが、融着抑制性にはさらなる改善が求められている。また、炭素繊維前駆体には、保管時の膨潤、癒着等を抑制する観点から、優れた耐水性を有することが要求される。
本開示の実施形態が解決しようとする課題は、優れた炭化収率を維持しつつ、繊維間の融着抑制性に優れ、且つ耐水性に優れる炭素繊維前駆体、炭素繊維前駆体の製造方法、耐炎化繊維の製造方法、炭素繊維の製造方法及び複合繊維を提供することである。
課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> アクリルアミド系ポリマー繊維と、上記アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤の架橋物を含む油剤組成物層とを備え、
上記油剤組成物層の質量をX、23℃のヘキサンに48時間含浸させることにより溶解する上記油剤組成物層の質量をYとしたとき、下記式Aより求められる上記油剤組成物層の架橋度が3%以上である、炭素繊維前駆体。
(式A)油剤組成物層の架橋度(%)=([X-Y]/X)×100
<2> 上記アクリルアミド系ポリマー繊維100質量部に対する、上記油剤組成物層の割合が、0.05質量部~30質量部である、上記<1>に記載の炭素繊維前駆体。
<3> 上記油剤組成物層の架橋度が5%以上である、上記<1>又は<2>に記載の炭素繊維前駆体。
<4> 上記アクリルアミド系ポリマー繊維が、架橋アクリルアミド系ポリマー繊維である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の炭素繊維前駆体。
<5> 上記架橋アクリルアミド系ポリマー繊維のゲル分率が5%以上である、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の炭素繊維前駆体。
<6> 上記アクリルアミド系ポリマー繊維が、アクリルアミド系ポリマーを含み、且つ 上記アクリルアミド系ポリマーが、30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位を含む、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の炭素繊維前駆体。
<7> アクリルアミド系ポリマー繊維と、上記アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤を含む塗膜とを備える複合繊維を用意する工程と、
上記複合繊維が備える上記塗膜に含まれる上記シリコーン系油剤を架橋させ、油剤組成物層を形成する工程と、を含み、且つ
上記油剤組成物層の質量をX、23℃のヘキサンに48時間含浸させることにより溶解する上記油剤組成物層の質量をYとしたとき、下記式Aより求められる上記油剤組成物層の架橋度が3%以上である、炭素繊維前駆体の製造方法。
(式A)油剤組成物層の架橋度(%)=([X-Y]/X)×100
<8> 上記シリコーン系油剤の架橋が、上記複合繊維に対し、活性光線を照射することにより行われる、上記<7>に記載の炭素繊維前駆体の製造方法。
<9> 上記活性光線が、線量10kGy~50000kGyの電子線である、上記<8>に記載の炭素繊維前駆体の製造方法。
<10> 上記シリコーン系油剤が、アクリル基及びメタクリル基の少なくとも一方を有する、上記<7>~<9>のいずれか1つに記載の炭素繊維前駆体の製造方法。
<11> 上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の炭素繊維前駆体に対して、耐炎化処理を施す工程を含む、耐炎化繊維の製造方法。
<12> 上記<11>に記載の耐炎化繊維の製造方法により耐炎化繊維を製造する工程と、
上記耐炎化繊維に対して炭化処理を施す工程とを含む、炭素繊維の製造方法。
<13> アクリルアミド系ポリマー繊維と、上記アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤を含む塗膜とを備える、上記<7>~<9>のいずれか1つに記載の炭素繊維前駆体の製造方法に用いられる複合繊維。
本開示によれば、優れた炭化収率を維持しつつ、繊維間の融着抑制性に優れ、且つ耐水性に優れる炭素繊維前駆体、炭素繊維前駆体の製造方法、耐炎化繊維の製造方法、炭素繊維の製造方法及び複合繊維を提供することができる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、合成例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。炭素繊維前駆体中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、炭素繊維前駆体中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、「炭素繊維前駆体」とは、炭化処理、又は耐炎化処理及び炭化処理を施すことにより、炭素繊維を得ることができる繊維を意味する。
本開示において、「架橋アクリルアミド系ポリマー繊維」は、アクリルアミド系ポリマー繊維が、活性光線照射、加熱等により架橋したポリマー繊維を意味する。
本開示において、「アクリルアミド系ポリマー」とは、アクリルアミド系モノマーの単独重合体又はアクリルアミド系モノマーとアクリルアミド系モノマー以外のモノマー(以下、他の重合性モノマーという。)との共重合体を意味する。
本開示において、「活性光線」とは、シリコーン系油剤を架橋可能な光線を意味し、α線、β線、γ線、X線、中性子線、電子線、紫外線、赤外線等が挙げられる。上記した中でも、深度、強度等の調整が容易であるため、電子線を使用することが好ましい。
<炭素繊維前駆体>
本開示の炭素繊維前駆体は、アクリルアミド系ポリマー繊維と、アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤の架橋物を含む油剤組成物層とを備え、
油剤組成物層の質量をX、23℃のヘキサンに48時間含浸させることにより溶解する油剤組成物層の質量をYとしたとき、下記式Aより求められる油剤組成物層の架橋度(以下、単に「架橋度」ともいう。)が3%以上である。
(式A)油剤組成物層の架橋度(%)=([X-Y]/X)×100
本開示の炭素繊維前駆体は、繊維間の融着抑制性及び耐水性に優れる。
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
本開示の炭素繊維前駆体は、アクリルアミド系ポリマー繊維の表面にシリコーン系油剤の架橋物を含む油剤組成物層を備える。シリコーン系油剤の架橋物が、アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に存在することにより、炭素繊維前駆体の水との親和性が低下し、耐水性が向上すると推測される。また、シリコーン系油剤の架橋物が、アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に存在することにより、耐炎化処理時における軟化を抑制することができ、単繊維同士の融着を抑制することができると推測される。さらに、特定の架橋度を有する油剤組成物層がアクリルアミド系ポリマー繊維の表面に存在することにより、表面の硬度が向上し、延伸時の繊維の切断、毛羽等の発生を抑制することができると推測される。
(アクリルアミド系ポリマー繊維)
アクリルアミド系ポリマー繊維は、1種又は2種以上のアクリルアミド系ポリマーを含む。
融着抑制性及び耐水性の観点から、アクリルアミド系ポリマー繊維は、架橋アクリルアミド系ポリマーを含む架橋アクリルアミド系ポリマー繊維であることが好ましい。
なお、架橋アクリルアミド系ポリマーは、アクリルアミド系モノマーの単独重合体であってもよく、アクリルアミド系モノマーとアクリルアミド系モノマー以外のモノマー(以下、他の重合性モノマーという。)との共重合体であってもよい。
アクリルアミド系ポリマーにおけるアクリルアミド系モノマー単位の含有率は、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、55モル%以上であることが特に好ましく、60モル%以上であることが最も好ましい。
アクリルアミド系モノマー単位の含有率が30モル%以上であることにより、アクリルアミド系ポリマーの水性溶媒又は水系混合溶媒に対する溶解性を向上させることができる傾向にある。
また、アクリルアミド系モノマー単位の含有率の上限は、特に限定されるものではないが、融着抑制性等の観点からは、99.9モル%以下であることが好ましく、99モル%以下であることがより好ましく、95モル%以下であることがさらに好ましく、90モル%以下であることが特に好ましく、85モル%以下であることが最も好ましい。
アクリルアミド系モノマー単位の含有率は、30モル%~99.9モル%であることが好ましい。
アクリルアミド系ポリマーがアクリルアミド系モノマーと他の重合性モノマーとの共重合体である場合、上記共重合体における他の重合性モノマー単位の含有量は、融着抑制性等の観点から、0.1モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることがさらに好ましく、10モル%以上であることが特に好ましく、15モル%以上であることが最も好ましい。
また、アクリルアミド系ポリマーの水性溶媒又は水系混合溶媒に対する溶解性の向上という観点から、他の重合性モノマー単位の含有率の上限は、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、50モル%であることがさらに好ましく、45モル%以下であることが特に好ましく、40モル%以下であることが最も好ましい。
他の重合性モノマー単位の含有率は、0.1モル%~70モル%であることが好ましい。
アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド;エタクリルアミド;クロトンアミド;イタコン酸ジアミド;ケイ皮酸アミド;マレイン酸ジアミド;N‐メチルアクリルアミド、N‐エチルアクリルアミド、N-n-プロピルアクリルアミド、N‐イソプロピルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド等のN-アルキルアクリルアミド;N-シクロヘキシルアクリルアミド等のN-シクロアルキルアクリルアミド;N,N’-ジメチルアクリルアミド等のジアルキルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルアクリルアミド;N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のヒドロキシアルキルアクリルアミド;N‐フェニルアクリルアミド等のN-アリールアクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド;N,N’-メチレンビスアクリルアミド等のN,N’-アルキレンビスアクリルアミド;メタクリルアミド;N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N‐n-ブチルメタクリルアミド、N‐tert-ブチルメタクリルアミド等のN-アルキルメタクリルアミド;N-シクロヘキシルメタクリルアミド等のN-シクロアルキルメタクリルアミド;N,N-ジメチルメタクリルアミド等のジアルキルメタクリルアミド;ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド;N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等のヒドロキシアルキルメタクリルアミド;N-フェニルメタクリルアミド等のN‐アリールメタクリルアミド;ジアセトンメタクリルアミド;N,N’-メチレンビスメタクリルアミド等のN,N’-アルキレンビスメタクリルアミドなどが挙げられる。
また、アクリルアミド系ポリマーの水性溶媒又は水系混合溶媒に対する溶解性の観点から、上記したアクリルアミド系モノマーの中でも、アクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、ジアルキルアクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド又はジアルキルメタクリルアミドが好ましく、アクリルアミドがより好ましい。
アクリルアミド系モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
他の重合性モノマーとしては、シアン化ビニル系モノマー、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸エステル、ビニルアルコール系モノマー、カルボン酸ビニル系モノマー、オレフィン系モノマー等が挙げられる。
シアン化ビニル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2-ヒドロキシエチルアクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、クロロメチルアクリロニトリル、エトキシアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸の塩としては、不飽和カルボン酸の金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。
不飽和カルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物等が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
ビニル系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル等のカルボン酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコールなどが挙げられる。
オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
上記した他の重合性モノマーの中でも、アクリルアミド系ポリマーの紡糸性、融着抑制性、紡糸性等の観点からは、シアン化ビニル系モノマーが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
また、上記した他の重合性モノマーの中でも、上記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する溶解性の観点からは、不飽和カルボン酸及びその塩が好ましく、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸又はイタコン酸がより好ましい。
また、上記した他の重合性モノマーの中でも、融着抑制性の観点からは、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物が好ましく、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸又はマレイン酸無水物がより好ましい。
上記した他の重合性モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
上記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する溶解性、紡糸性、融着抑制性等の観点から、アクリルアミド系ポリマーは、アクリルアミド系モノマーと、シアン化ビニル系モノマーと、不飽和カルボン酸との共重合体であることが特に好ましく、アクリルアミドと、アクリロニトリルと、アクリル酸との共重合体であることが最も好ましい。
紡糸性、融着抑制性等の観点から、上記共重合体におけるシアン化ビニル系モノマー単位の含有率は、1モル%~50モル%であることが好ましく、5モル%~40モル%であることがより好ましく、10モル%~35モル%であることがさらに好ましい。
上記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する溶解性、融着抑制性等の観点から、上記共重合体における不飽和カルボン酸単位の含有率は、0.1モル%~30モル%であることが好ましく、1モル%~20モル%であることがより好ましく、1モル%~15モル%であることがさらに好ましく、2モル%~10モル%であることが特に好ましい。
上記共重合体におけるアクリルアミド系モノマー単位の含有率の好ましい数値範囲は上記したため、ここでは記載を省略する。
融着抑制性、耐水性等の観点から、アクリルアミド系ポリマー繊維の総質量に対するアクリルアミド系ポリマーの含有率は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、99質量%以上であることがまた特に好ましく、100質量%以上であることが最も好ましい。
アクリルアミド系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではなく、通常、500万以下であるが、炭素繊維前駆体の成形加工性の観点から、200万以下であることが好ましく、100万以下であることがより好ましく、50万以下であることがさらに好ましく、20万以下であることが特に好ましく、13万以下であることがまた特に好ましく、10万以下であることが最も好ましい。
また、アクリルアミド系ポリマーの重量平均分子量の下限は、特に限定されるものではないが、通常1万以上であるが、炭素繊維前駆体及び炭素繊維の強度の観点から、2万以上であることが好ましく、3万以上であることがさらに好ましく、4万以上であることが特に好ましい。
なお、本開示において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、下記条件により測定する。測定装置としては、東ソー社製のHLC-8220GPC又はこれと同程度の装置を使用することができる。
(測定条件)
・カラム:TSKgel GMPWXL×2本+TSKgel G2500PWXL×1本
・溶離液:100mM硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル(=80/20(体積比))
・溶離液流量:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・分子量標準物質:標準ポリエチレンオキシド/標準ポリエチレングリコール
・検出器:示差屈折率検出器
本開示の炭素繊維前駆体は、融着抑制性に優れるため、酸等の添加成分を配合しなくともよいが、アクリルアミド系ポリマー繊維は、アクリルアミド系ポリマーに加えて、酸及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の添加成分が含んでいてもよい。上記添加成分を含むアクリルアミド系ポリマー繊維を備える炭素繊維前駆体に対して、耐炎化処理を施すことによって、脱水反応、脱アンモニア反応等による環状構造の形成が加速し、融着抑制性がさらに改善される傾向にある。
また、耐炎化繊維においては、添加成分及びその残渣の少なくとも一部が残存していてもよい。さらに、耐炎化繊維に添加成分を加えて炭化処理を行ってもよい。
酸としては、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、硫酸、硝酸、炭酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。
上記酸の塩としては、金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩、グアニジン塩、尿素塩、メラミン塩、イミダゾール塩などが挙げられ、アンモニウム塩、アミン塩が好ましく、アンモニウム塩がより好ましい。
上記した添加成分の中でも、融着抑制性、炭化収率及び形状安定性の観点から、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、硫酸又はこれらのアンモニウム塩が好ましく、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸又はこれらのアンモニウム塩がより好ましく、リン酸、ポリリン酸、リン酸のアンモニウム塩又はポリリン酸のアンモニウム塩がさらに好ましい。
アクリルアミド系ポリマー繊維に含まれるアクリルアミド系ポリマー100質量部に対する添加成分の含有量は、融着抑制性の観点から、0.1質量部~100質量部であることが好ましく、0.2質量部~50質量部であることがより好ましく、0.5質量部~30質量部であることがさらに好ましく、1質量部~20質量部であることが特に好ましい。
アクリルアミド系ポリマー繊維は、その効果を損なわない範囲において、N-ビニルアセトアミド、酢酸ビニルモノマー、ビニルエトキシシラン、メタクリル酸、2-イソシアナトエチルメタクリレート、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-カプロラクタム、トリエチレングリコールジビニルエーテル、エチレンジメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等の活性光線により架橋する低分子化合物を含んでいてもよい。
アクリルアミド系ポリマー繊維は、単繊維であってもよく、繊維束であってもよい。
アクリルアミド系ポリマー繊維が繊維束である場合、1束あたりのフィラメント数は、特に限定されるものではないが、耐炎化繊維及び炭素繊維の生産性及び機械特性の観点から、50本~96000本であることが好ましく、100本~48000本であることがより好ましく、500本~36000本であることがさらに好ましい。
また、1束あたりのフィラメント数を96000本以下とすることにより、耐炎化処理時における焼成ムラの発生を抑制することができる。
アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度は、特に限定されるものではないが、1×10-8tex/本~100tex/本であることが好ましく、1×10-6tex/本~60tex/本であることがより好ましく、1×10-3tex/本~40tex/本であることがさらに好ましく、1×10-2tex/本~10tex/本であることがまたさらに好ましく、2×10-2tex/本~2tex/本であることが特に好ましく、3×10-2tex/本~4×10-1tex/本であることが最も好ましい。
アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度を1×10-8tex/本以上とすることにより、糸切れの発生を抑制することができ、これにより炭素繊維前駆体の巻き取りの容易性及び耐炎化処理の安定性を向上させることができる傾向にある。
アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度を100tex/本以下とすることにより、耐炎化処理により得られる炭素繊維の表層付近の構造と、中心付近の構造との差を低減することができ、炭素繊維の引張強度及び引張弾性率を向上することができる傾向にある。
本開示において、アクリルアミド系ポリマー繊維の繊度は、アクリルアミド系ポリマー繊維束の質量を測定して、1000m当たりの質量を繊維束の繊度[tex]として算出し、繊維束を構成する単繊維の繊度を求めることにより測定した。
アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径は、特に限定されるものではないが、3nm~300μmであることが好ましく、30nm~250μmであることがより好ましく、1μm~200μmであることがさらに好ましく、3μm~100μmであることが特に好ましく、4μm~40μmであることがまた特に好ましく、5μm~30μmであることが最も好ましく、6μm~20μmであってもよい。
アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径を3nm以上とすることにより、耐炎化処理の安定性を向上させることができる傾向にある。また、アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径を3nm以上とすることにより、糸切れの発生を抑制することができ、これにより炭素繊維前駆体の巻き取りの容易性及び耐炎化処理の安定性を向上させることができる傾向にある。
アクリルアミド系ポリマー繊維の平均繊維径を300μm以下とすることにより、耐炎化処理により得られる炭素繊維の表層付近の構造と、中心付近の構造との差を低減することができ、炭素繊維の引張強度及び引張弾性率を向上することができる傾向にある。
本開示において、平均繊維径は、アクリルアミド系ポリマー繊維の密度を、乾式自動密度計を用いて繊維束の密度を測定し、下記式により繊維を構成する単繊維の平均繊維径を求める。なお、乾式自動密度計としては、マイクロメリティックス社製のアキュピックII 1340又はこれと同程度の装置を使用することができる。
D={(Dt×4×1000)/(ρ×π×n)}1/2
〔式中、
Dは繊維束を構成する単繊維の平均繊維径(μm)を表し、
Dtは繊維束の繊度(tex)を表し、
ρは繊維束の密度(g/cm)を表し、
nは繊維束を構成する単繊維の本数(本)を表す。
なお、πは3.14である。〕
融着抑制性、耐水性、及び延伸時の繊維の切断、毛羽等の発生抑制の観点からは、アクリルアミド系ポリマー繊維のゲル分率は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることがよりさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましい。
炭素繊維前駆体の延伸性の観点から、アクリルアミド系ポリマー繊維のゲル分率は、98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、100%であってもよい。
融着抑制性、耐水性及び炭素繊維前駆体の延伸性の観点から、アクリルアミド系ポリマー繊維のゲル分率は5%~98%であることが好ましい。
アクリルアミド系ポリマーが架橋しているか否かの確認は、アクリルアミド系ポリマー繊維のゲル分率により行い、アクリルアミド系ポリマー繊維のゲル分率が3%以上である場合に、アクリルアミド系ポリマーが架橋しているとする。
本開示において、アクリルアミド系ポリマー繊維のゲル分率は、下記の方法により測定する。
炭素繊維前駆体を0.3g、試料として切り出して、90℃で2時間乾燥後の質量を正確に量り、初期質量(g)とする。
試料に30mLのイオン交換水を加えて、90℃の熱風循環式オーブン中で2時間静置する。孔径1.0μmのメンブレンフィルタ(Merck社製、オムニポアTM メンブレンフィルタ JAWP04700)を用いた吸引ろ過により、90℃の水への不溶部(メンブレンフィルタ上)と、可溶部(ろ液)とに分離する。エバポレーターによりろ液から水を除去した後、さらに、質量(g)を測定し、下記式から、アクリルアミド系ポリマー繊維束のゲル分率を算出する。なお、油剤組成物層は、不溶部に分類される。
アクリルアミド系ポリマー繊維束のゲル分率(%)=(アクリルアミド系ポリマー繊維束の質量(g)-可溶部の質量(g))/アクリルアミド系ポリマー繊維束の質量(g)×100
(油剤組成物層)
本開示の炭素繊維前駆体は、アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤の架橋物を含み、架橋度が3%以上である油剤組成物層を備える。
融着抑制性及び耐水性の観点から、油剤組成物層の架橋度は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、50%以上であることがさらにまた好ましく、60%以上であることが特に好ましく、85%以上であることが最も好ましい。
炭素繊維前駆体の延伸性、帯電防止性、表面のシリコーン系油剤による潤滑性等の観点から、油剤組成物層の架橋度は、99%以下であることが好ましく、98%以下であることがより好ましく、97%以下であることがさらに好ましく、96%以下であることが特に好ましい。
融着抑制性、耐水性及び炭素繊維前駆体の延伸性の観点から、油剤組成物層の架橋度は、5%~99%であることが好ましい。
23℃のヘキサンに48時間含浸させることにより溶解する油剤組成物層の質量をY、含浸前の炭素繊維前駆体の質量をZとしたとき、下記式Bにより算出される、炭素繊維前駆体の全質量に対する、ヘキサンに溶解した油剤組成物層の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、2質量%以下であることが最も好ましい。
(式B)溶解割合(質量%)=(Y/Z)×100
油剤組成物層は、シリコーン系油剤の架橋物(以下、「特定架橋物」ともいう。)を含む。
シリコーン系油剤の種類は、架橋性基を有し、架橋物を形成することができるものであれば、特に限定されるものではなく、従来公知のシリコーン系油剤を使用することができる。
融着抑制性及び耐水性の観点から、シリコーン系油剤は、その側鎖及び末端の少なくとも一方に架橋性基を有することが好ましく、側鎖及び両末端の少なくとも一方に架橋性基を有することがより好ましい。
架橋性基は、シリコーン系油剤が有するポリシロキサン構造のケイ素原子に直接結合してもよく、アルキレン基(メチレン基、エチレン基等)、ポリアルキレングリコール基(ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基等)などを介して結合してもよい。
架橋性基は、自己架橋性基であってもよく、非自己架橋性基であってもよいが、自己架橋性基であることが好ましい。本開示において、「自己架橋性基」とは、外部刺激によりラジカルを生成し、重合反応を開始する基を意味する。外部刺激としては、活性光線照射、加熱等が挙げられる。
自己架橋性基は、一置換エチレン基、二置換エチレン基及び活性水素基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含むことが好ましい。
一置換エチレン基としては、ビニル基、ビニルカルボニル基、ビニルエステル基、アクリル基、アクリルアミド基、アリル基、アリルエーテル基、4-ビニルベンゼン基、4-アリルベンゼン基等が挙げられる。
二置換エチレン基としては、イソプロペニル基、メタクリル基、メタクリルアミド基、4-イソプロペニルベンゼン基、マレイミド基、フマル酸エステル基、フマルアミド基、等が挙げられる。
アクリルアミド系ポリマーとの親和性、重合性等の観点から、自己架橋性基は、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含むことが好ましく、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含むことがより好ましく、アクリル基及びメタクリル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を含むことがさらに好ましく、アクリル基が特に好ましい。
なお、アクリル基はアクリロイル基、メタクリル基はメタクリロイル基とも呼ばれる。
シリコーン系油剤は、架橋性基以外の置換基(以下、「その他の置換基」ともいう。)を有していてもよい。その他の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。この中でも、その他の置換基は、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
シリコーン系油剤の25℃における粘度は、特に限定されない。
シリコーン系油剤の25℃における粘度の下限は、架橋処理時における揮発を抑制し、架橋性を向上させる観点、耐水性の観点、融抑制止性等の観点から、9mm/秒以上であることが好ましく、20mm/秒以上であることがより好ましく、50mm/秒以上であることがさらに好ましく、100mm/秒以上であることが特に好ましい。
シリコーン系油剤の25℃における粘度の上限は、油剤組成物層の厚みの均一性の観点から、100000mm/秒以下であることが好ましく、10000mm/秒以下であることがより好ましい。
シリコーン系油剤の架橋性、耐水性、融着抑制性、油剤組成物層の厚みの均一性等の観点から、シリコーン系油剤の25℃における粘度は、9mm/秒~100000mm/秒が好ましい。
本開示において、シリコーン系油剤の粘度は、ウベローデ型オストワルド粘度計により測定される25℃の粘度の値を示す。
シリコーン系油剤が市販品であり、カタログ値である場合、シリコーン系油剤の25℃における粘度は、メーカーのカタログ値とする。
自己架橋性基を有するシリコーン系油剤の市販品としては、信越化学工業株式会社の製品、SILTECH社の製品等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の両末端または片末端に、自己架橋性基であるメタクリル基を有する信越化学工業株式会社製のシリコーン系油剤としては、「X-22-164」、「X-22-164AS」、「X-22-164A」、「X-22-164B」、「X-22-164C」、「X-22-164E」、「X-22-2445」、「X-22-174ASX」、「X-22-174BX」、「KF-2012」、「X-22-2426」、「X-22-2404」、「KP-410」、「KP-411」、「KP-412」、「KP-413」、「KP-414」、「KP-415」、「KP-416」、「KP-418」、「KP-422」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の側鎖に、自己架橋性基であるアクリル基を有する信越化学工業株式会社製のシリコーン系油剤としては、「KP-420」等が挙げられる。

ポリシロキサン構造の両末端に、自己架橋性基であるアクリル基を有するSILTECH社製のシリコーン系油剤としては、「Silmer ACR D2」、「Silmer ACR Di-10」、「Silmer ACR Di-50」、「Silmer ACR Di-400」、「Silmer ACR Di-1508」、「Silmer ACR Di-2510」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の両末端に、自己架橋性基であるアクリル基を有する信越化学工業株式会社製のシリコーン系油剤としては、「KP-423」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の側鎖に、自己架橋性基であるアクリル基を有するSILTECH社製のシリコーン系油剤としては、「Silmer ACR D208」、「Silmer OH ACR D4」、「Silmer OH ACR Di-10」、「Silmer OH ACR Di-25」、「Silmer OH ACR Di-50」、「Silmer OH ACR Di-100」、「Silmer OH ACR Di-400」、「Silmer OH ACR C50」、「Silmer OH ACR C7-F」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の両末端に自己架橋性基である活性水素基を有するSILTECH社製のシリコーン系油剤としては、「Silmer H Di-10」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の側鎖に自己架橋性基である活性水素基を有するSILTECH社製のシリコーン系油剤としては、「Silmer H D2」、「Silmer H E
4」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の側鎖及び両末端に自己架橋性基である活性水素基を有するSILTECH社製のシリコーン系油剤としては、「Silmer H Di-E2」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の両末端に自己架橋性基であるビニル基を有するSILTECH社製のシリコーン系油剤としては、「Silmer VIN C50」、「Silmer VIN 70」、「Silmer VIN 100」、「Silmer VIN 200」、「Silmer VIN 1000」、「Silmer VIN 5000」、「Silmer VIN 10000」、「Silmer VIN 20000」、「Silmer VIN C65000」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の側鎖に自己架橋性基であるビニル基を有するSILTECH社製のシリコーン系油剤としては、「Silmer VIN J10」等が挙げられる。
ポリシロキサン構造の側鎖にメトキシ基等のアルコキシ基を有し、且つ末端及び側鎖の少なくとも一方に自己架橋性基(アクリル基、メタクリル基、ビニル基等)を有する信越化学工業株式会社製のシリコーン系油剤としては、「X-40-9296」、「KR-513」、「KR-511」等を挙げることができる。
油剤組成物層は、有機溶剤、界面活性剤、架橋剤、架橋促進剤(酸、アンモニウム塩等)、平滑剤、吸湿剤、粘度調整剤、可塑剤、離型剤、展着剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。
融着抑制性及び耐水性の観点から、油剤組成物層の厚さは、1nm~10μmであることが好ましく、10nm~5μmであることがより好ましく、100nm~1μmであることがさらに好ましい。
融着抑制性及び耐水性の観点から、アクリルアミド系ポリマー繊維100質量部に対する、油剤組成物層の割合が、0.05質量部~30質量部であることが好ましく、0.1質量部~10質量部であることがより好ましく、0.5質量部~5質量部であることがさらに好ましく、0.8質量部~4.5質量部であることが特に好ましい。
<炭素繊維前駆体の製造方法>
本開示の炭素繊維前駆体の製造方法は、アクリルアミド系ポリマー繊維と、前記アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤を含む塗膜とを備える複合繊維を用意する工程(以下、「複合繊維を用意する工程」ともいう。)と、
複合繊維が備える塗膜に含まれるシリコーン系油剤を架橋させ、油剤組成物層を形成する工程(以下、「油剤組成物層を形成する工程」ともいう。)と、を含み、且つ
油剤組成物層の質量をX、23℃のヘキサンに48時間含浸させることにより溶解する油剤組成物層の質量をYとしたとき、下記式Aより求められる油剤組成物層の架橋度が3%以上である。
(式A)油剤組成物層の架橋度(%)=([X-Y]/X)×100
(複合繊維を用意する工程)
アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤を含む塗膜を形成する方法は特に限定されるものではなく、シリコーン系油剤をアクリルアミド系ポリマー繊維に塗布する方法、シリコーン系油剤にアクリルアミド系ポリマー繊維を浸漬する方法、シリコーン系油剤をアクリルアミド系ポリマー繊維に噴霧する方法、タッチローラー、ガイド給油装置等を使用する方法などが挙げられる。上記塗膜を、常温又は加熱下で乾燥してもよい。
融着抑制性及び耐水性の観点から、アクリルアミド系ポリマー繊維に塗布するシリコーン系油剤の質量は、アクリルアミド系ポリマー繊維100質量部に対し、0.05質量部~30質量部であることが好ましく、0.1質量部~10質量部であることがより好ましく、0.5質量部~5質量部であることがさらに好ましく、0.8質量部~4.5質量部であることが特に好ましい。
アクリルアミド系ポリマー繊維は、従来公知の方法により製造したものを使用してもよい。
アクリルアミド系ポリマー繊維は、アクリルアミド系ポリマー又はアクリルアミド系ポリマー及び上記添加成分等を含有するアクリルアミド系ポリマー組成物を紡糸することにより製造することができる。
紡糸の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、溶融状態のアクリルアミド系ポリマー又はアクリルアミド系ポリマー組成物を溶融紡糸、スパンボンド、メルトブローン又は遠心紡糸することにより行ってもよい。
また、アクリルアミド系ポリマー又はアクリルアミド系ポリマー組成物が水性溶媒又は水系混合溶媒に可溶な場合には、紡糸性、環境負荷低減性、コスト及び安全性の観点から、アクリルアミド系ポリマー又はアクリルアミド系ポリマー組成物を水性溶媒又は水系混合溶媒に溶解させ、得られた水性溶液又は水系混合溶液を用いて紡糸し、アクリルアミド系ポリマー繊維を製造することが好ましい。
また、アクリルアミド系ポリマーの合成を溶液重合により行う場合、アクリルアミド系ポリマーの溶液を、必要に応じて所望の含有率に調整した後、紡糸し、アクリルアミド系ポリマー繊維を製造することが好ましい。
また、アクリルアミド系ポリマー組成物を湿式混合により製造する場合、アクリルアミド系ポリマー組成物の溶液を、必要に応じて所望の含有率に調整した後、紡糸し、アクリルアミド系ポリマー繊維を製造することが好ましい。
紡糸は、乾式紡糸法、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、ゲル紡糸法、フラッシュ紡糸法又はエレクトロスピニング法により行われることが好ましい。上記紡糸方法によれば、所望の繊度及び平均繊維径を有するアクリルアミド系ポリマー繊維を低コストで安全に製造することができる。
また、より低コストで安全にアクリルアミド系ポリマー繊維を製造することができるという観点から、溶媒として水性溶媒を使用することが好ましく、水を使用することがより好ましい。
アクリルアミド系ポリマーの詳細については、上記したため、ここでは記載を省略する。
アクリルアミド系ポリマーは、市販されるものを使用してもよく、従来公知の方法により合成したものを使用してもよい。
アクリルアミド系ポリマーの合成は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合等の公知の重合反応を利用することにより行うことができる。上記重合反応の中でも、合成コスト低減の観点から、ラジカル重合が好ましい。
また、アクリルアミド系ポリマーの合成は、溶液重合、懸濁重合、沈殿重合、分散重合、乳化重合(例えば、逆相乳化重合)等の重合方法を利用することにより行うことができる。
また、溶液重合によりアクリルアミド系ポリマーの合成を行う場合、溶媒としては、原料のモノマー及び得られるアクリルアミド系ポリマーが溶解する溶媒を使用することが好ましく、低コストで安全に合成できるという観点から、水性溶媒又は水系混合溶媒を使用することがより好ましく、水性溶媒を使用することがさらに好ましい。
水性溶媒としては、水、アルコール、これらの混合溶媒等が挙げられるが水が特に好ましい。
水系混合溶媒は、上記水性溶媒と有機溶媒との混合溶媒を意味し、有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
ラジカル重合によるアクリルアミド系ポリマーの合成において、重合開始剤を使用することが好ましい。
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の従来公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
溶媒として水性溶媒又は水系混合溶媒を使用する場合には、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の水性溶媒又は水系混合溶媒に可溶なラジカル重合開始剤が好ましい。
また、アクリルアミド系ポリマーの分子量を制御し、アクリルアミド系ポリマーの紡糸性を向上させるという観点から、重合開始剤に代えて、又は重合開始剤と共に、重合促進剤及び分子量調節剤の少なくとも一方を使用することが好ましく、重合開始剤及び重合促進剤を併用することがより好ましい。
重合促進剤としては、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
分子量調節剤としては、n-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン化合物などが挙げられる。
重合開始剤である過硫酸アンモニウムと、重合促進剤であるテトラメチルエチレンジアミンとを併用することが特に好ましい。
上記重合反応の温度としては特に制限はないが、アクリルアミド系ポリマーの紡糸性を向上させるという観点から、35℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、70℃以上であることが特に好ましく、75℃以上であることが最も好ましい。重合反応温度の上限は、特に限定されるものではなく、200℃以下とすることができる。
アクリルアミド系ポリマー組成物の製造方法は、溶融状態のアクリルアミド系ポリマーに添加成分を直接混合する方法(溶融混合)、アクリルアミド系ポリマーと添加成分とをドライブレンドする方法(乾式混合)、添加成分を含有する水性溶液若しくは水系混合溶液、又はアクリルアミド系ポリマーは完全溶解していないが、添加成分は溶解している溶液に繊維状に成形したアクリルアミド系ポリマーを浸漬又は通過させる方法等が挙げられる。
また、アクリルアミド系ポリマー及び添加成分が水性溶媒又は水系混合溶媒に可溶である場合には、アクリルアミド系ポリマーと添加成分とを均一に混合することができるという観点から、アクリルアミド系ポリマーと添加成分とを水性溶媒又は水系混合溶媒中で混合する方法(湿式混合)が好ましい。
また、アクリルアミド系ポリマーの合成を行った水性溶媒中又は水系混合溶媒中に、添加成分を混合することにより、湿式混合を行ってもよい。
また、湿式混合においては、より低コストで安全にアクリルアミド系ポリマー組成物を製造できるという観点から、溶媒として水性溶媒を使用することが好ましく、水を使用することがより好ましい。
なお、湿式混合によりアクリルアミド系ポリマー組成物の製造を行う場合、溶媒は除去してもよく、除去しなくともよい。溶媒の除去方法は、特に制限はなく、減圧留去、再沈殿、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の公知の方法のうちの少なくとも1つの方法を利用することができる。
アクリルアミド系ポリマー繊維表面の塗膜に含まれるシリコーン系油剤については、上記したため、ここでは記載を省略する。
融着抑制性及び耐水性の観点から、塗膜の総質量に対するシリコーン系油剤の含有率は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。塗膜の総質量に対するシリコーン系油剤の含有率の上限は、特に限定されるものではなく、100質量%であってもよい。
塗膜は、有機溶剤、界面活性剤、架橋剤、架橋促進剤(酸、アンモニウム塩等)、平滑剤、吸湿剤、粘度調整剤、可塑剤、離型剤、展着剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。
(油剤組成物層を形成する工程)
本開示の炭素繊維前駆体の製造方法は、複合繊維が備える塗膜に含まれるシリコーン系油剤を架橋させ、油剤組成物層を形成する工程を含む。
シリコーン系油剤の架橋方法は、特に限定されるものではなく、活性光線の照射、加熱等により行うことができる。シリコーン系油剤の架橋の程度の調整が容易であるため、シリコーン系油剤の架橋は、活性光線の照射により行うことが好ましく、紫外線又は電子線の照射により行うことがより好ましく、電子線の照射により行うことがさらに好ましい。
活性光線の照射等により、シリコーン系油剤を架橋すると共に、アクリルアミド系ポリマー繊維に含まれるアクリルアミド系ポリマーを架橋してもよい。また、シリコーン系油剤の一部がアクリルアミド系ポリマーと架橋してもよい。
シリコーン系油剤の架橋を電子線により行う場合、融着抑制性、耐水性等の観点から、電子線の線量は、10kGy以上であることが好ましく、30kGy以上であることがより好ましく、50kGy以上であることがさらに好ましく、100kGy以上であることが特に好ましく、200kGy以上であることが最も好ましい。
シリコーン系油剤の架橋と共に、アクリルアミド系ポリマー繊維を架橋させ、融着抑制性、耐水性等をより向上する観点から、電子線の線量は、500kGy以上であることがより好ましい。
延伸性、製造コスト等の観点から、電子線の線量は、10000kGy以下であることが好ましく、5000kGy以下であることがより好ましく、1000kGy以下であることがさらに好ましい。
融着抑制性、耐水性、延伸性、製造コスト等の観点から、電子線の線量は、10kGy~10000kGyであることが好ましい。
なお、上記した線量の好ましい数値範囲は、一方向から、塗膜に対して活性光線を照射した場合における線量の好ましい数値範囲であり、2方向以上から照射する場合は、上記の限りではなく、適宜調整することが好ましい。
活性光線として電子線を使用した場合、その線量は、フィルム線量計等を使用することにより測定する。フィルム線量計としては、富士フイルム社製のFTR-125、東洋メディック社製のFWT-60型又はこれと同程度の装置を使用することができる。
融着抑制性、耐水性、延伸性等の観点から、塗膜に対して照射する活性光線の加速電圧は、照射した活性光線の好ましくは20%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましく80%以上がアクリルアミド系ポリマー繊維を透過する加速電圧に調製することが好ましい。
活性光線として電子線を使用した場合、電子線の透過率は、透過前後の線量を測定することにより算出する。また、一般的に開示される透過深さと、相対線量との関係図から算出してもよい。
具体的には、加速電圧は、50kV~10MVであることが好ましく、100kV~3MVであることがより好ましく、150kV~1MVであることがさらに好ましい。
なお、上記した加速電圧の好ましい数値範囲は、一方向から、塗膜に対して活性光線を照射した場合における加速電圧の好ましい数値範囲であり、2方向以上から照射する場合は、上記の限りではなく、適宜調整することが好ましい。
活性光線の照射は、バッチ式により行ってもよく、連続式に行ってもよい。
活性光線照射に使用する装置は、特に限定されるものではないが、バッチ式による活性光線の照射を行う場合には、岩崎電気社製のCB250/30/20mA又はこれと同程度の装置を使用することができる。連続式による活性光線の照射を行う場合には、NHVコーポレーション社製の電子線照射装置EBC800-35又はこれと同程度の装置を使用することができる。
油剤組成物層を形成する際の雰囲気ガスは、特に限定されるものではなく、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、空気等の酸化性ガスなどとすることができる。
<耐炎化繊維の製造方法>
本開示の耐炎化繊維の製造方法は、上記した炭素繊維前駆体に対して耐炎化処理を施すことを含む。耐炎化処理とは、炭素繊維前駆体に対して酸化性雰囲気下で加熱処理を施すことを指す。炭素繊維前駆体は、上記製造方法により製造されるものを使用することができる。
炭素繊維前駆体への耐炎化処理は、酸化性雰囲気下、炭素繊維前駆体に対して熱処理を行うことにより行うことができる。
耐炎化処理は、特に限定されるものではないが、150℃~500℃の範囲の温度で実施されることが好ましく、200℃~450℃の範囲の温度で実施されることがより好ましく、250℃~420℃の範囲の温度で実施されることがさらに好ましい。
なお、上記温度には、後述する耐炎化処理時の最高温度(耐炎化処理温度)だけでなく、耐炎化処理温度までの昇温過程等における温度も包含される。
耐炎化処理時の最高温度(耐炎化処理温度)は、200℃~500℃であることが好ましく、250℃~450℃であることがより好ましく、305℃~440℃であることがさらに好ましく、310℃~430℃であることが特に好ましく、315℃~420℃であることが最も好ましい。
耐炎化処理温度を250℃以上とすることにより、耐炎化繊維の耐熱性及び炭化収率を向上することができる傾向にある。
また、耐炎化処理温度を500℃以下とすることにより、耐炎化繊維の熱分解を抑制することができる傾向にある。
炭素繊維前駆体の耐炎化処理時において、炭素繊維前駆体に対し延伸処理を施すことが好ましい。炭素繊維前駆体に対し延伸処理を施すことにより、炭素繊維前駆体に含まれる架橋アクリルアミド系ポリマーが配向し、耐炎化繊維の引張強度を向上することができる傾向にある。
延伸処理は、耐炎化処理温度での加熱時に少なくとも実施されることが好ましい。
また、耐炎化繊維の引張強度向上という観点からは、耐炎化処理温度までの昇温過程においても延伸処理が実施されることが好ましい。なお、延伸処理は、昇温過程の初期から実施してもよく、途中から実施してもよい。
一実施形態において、耐炎化処理温度においては、延伸処理を実施し、それ以外の温度については、延伸処理を実施しなくてもよい。
また、延伸処理は、紡糸処理過程又は耐炎化処理の前工程において、吸湿率を制御しつつ実施してもよい。
延伸処理時において、炭素繊維前駆体に付与する張力は、0.05mN/tex~2000mN/texであることが好ましく、0.1mN/tex~500mN/texであることがより好ましく、0.1mN/tex~200mN/texであることがさらに好ましく、0.2mN/tex~100mN/texであることが特に好ましい。延伸処理時における炭素繊維前駆体に付与する張力を上記数値範囲とすることにより、融着抑制性を向上することができ、且つ耐炎化繊維における切断、毛羽の発生を抑制することができる。
なお、本開示において、炭素繊維前駆体に付与する張力(単位:mN/tex)は、耐炎化処理時に炭素繊維前駆体に付与する張力(単位:mN)を、炭素繊維前駆体の絶乾状態での繊度(単位:tex)で除した値、すなわち、炭素繊維前駆体の単位繊度当たりの張力である。
また、上記張力は、耐炎化炉等の加熱装置の入口及び出口における速度調整を実施したり、ロードセル、バネ、重り、エアシリンダー等を使用したりすることによって調整することができる。
耐炎化処理時間(耐炎化処理温度での加熱時間)は、特に限定されるものではないが、炭化収率及び製造コストの観点から、1分間~480分間であることが好ましく、2分間~120分間であることがより好ましく、3分間~90分間であることがさらに好ましく、4分間~60分間が特に好ましく、5分間~40分間が最も好ましい。
なお、耐炎化処理時間を2時間超の長時間に設定してもよい。
上記した製造方法により製造される耐炎化繊維の密度は、特に限定されるものではないが、炭化収率、生産性等の観点からは、1.30g/cm~1.75g/cmであることが好ましく、1.35g/cm~1.70g/cmであることがより好ましく、1.37g/cm~1.65g/cmであることがさらに好ましく、1.39g/cm~1.60g/cmであることが特に好ましく、1.44g/cm~1.55g/cmであることが最も好ましい。
耐炎化繊維の平均繊維径は、特に限定されるものではないが、得られる炭素繊維の引張強度の観点からは、3nm~300μmであることが好ましく、30nm~150μmであることがより好ましく、1μm~60μmであることがさらに好ましく、2μm~30μmが特に好ましく、3μm~20μmであることが最も好ましく、4μm~15μmであってもよい。また、耐炎化繊維の平均繊維径を上記数値範囲とすることにより、耐炎化繊維における切断、毛羽の発生を抑制することができる。
炭化収率の観点から、耐炎化繊維の平均繊維径は、炭素繊維前駆体の平均繊維径に比べて、5%以上小さいことが好ましく、10%以上小さいことがより好ましく、15%以上小さいことがさらに好ましく、20%以上小さいことが特に好ましく、25%以上小さいことが最も好ましく、30%以上小さくともよい。
<炭素繊維の製造方法>
本開示の炭素繊維の製造方法は、上記耐炎化繊維の製造方法により耐炎化繊維を製造する工程と、耐炎化繊維に対して炭化処理を施す工程とを含む。
炭化処理とは、炭素繊維前駆体を炭化する処理を指し、低酸素環境(好ましくは酸素を遮断した環境)下、加熱処理を施すことを意味する。
炭化処理の方法としては、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム等)雰囲気下、耐炎化繊維に対し、耐炎化処理における温度よりも高い温度で加熱処理を施す方法等が挙げられる。
上記炭化処理により、耐炎化繊維が炭化し、炭素繊維が得られる。
炭化処理における加熱温度は、500℃以上であることが好ましく、1000℃以上であることがより好ましく、1100℃以上であることがさらに好ましく、1200℃以上であることが特に好ましく、1300℃以上であることが最も好ましい。
また、加熱温度の上限値は、3000℃以下であることが好ましく、2500℃以下であることがより好ましい。
炭化処理における加熱温度は、500℃~3000℃であることが好ましい。
また、炭化処理における加熱時間は、特に限定されるものではないが、30秒~180分間であることが好ましく、1分間~60分間であることがより好ましく、1分間~30分間であることがさらに好ましい。
なお、本開示において「炭化処理」には、一般的に、不活性ガス雰囲気下、2000℃~3000℃の温度で加熱することによって行われる「黒鉛化」を含んでいてもよい。
また、炭化処理は、複数回の加熱処理を含むものであってもよい。
例えば、先に1000℃未満の温度で加熱処理(予備炭化処理)を行い、次いで1000℃以上の温度で加熱処理(炭化処理)を行い、さらに、2000℃以上の温度で加熱処理(黒鉛化処理)を行うことができる。
上記した製造方法により製造される炭素繊維の平均繊維径は、特に限定されるものではないが、引張強度の観点から、3nm~300μmであることが好ましく、30nm~150μmであることがより好ましく、1μm~60μmであることがさらに好ましく、2μm~20μmがまたさらに好ましく、2.5μm~15μmであることが特に好ましく、3μm~10μmであることが最も好ましい。
<複合繊維>
本開示の複合繊維は、アクリルアミド系ポリマー繊維と、アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤を含む塗膜とを備える、上記炭素繊維前駆体の製造方法に用いられる。
複合繊維の詳細については、上記したため、ここでは記載を省略する。
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
(製造例1:アクリルアミド系ポリマー繊維束a-1の製造)
アクリルアミド(AM)62モル%、アクリロニトリル(AN)35モル%及びアクリル酸(AA)3モル%を含む組成物100質量部と、テトラメチルエチレンジアミン4質量部とをイオン交換水400質量部に溶解し、水溶液を得た。
得られた水溶液に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、過硫酸アンモニウムを添加した後、80℃で150分間加熱し、重合反応を行った。
得られた水溶液をメタノール中に滴下して共重合体を析出させ、これを回収して80℃で12時間真空乾燥させ、水溶性のAM/AN/AA共重合体を得た。
得られたAM/AN/AA共重合体(AM/AN/AA=62モル%/35モル%/3モル%)100質量部と、リン酸3質量部とをイオン交換水に溶解し、水溶液を得た。
得られた水溶液を用いて、乾式紡糸を行い、単繊維の繊度が約0.4tex/本、平均繊維径が約20μmのアクリルアミド系ポリマー繊維束a-1(800本/束)を製造した。
なお、繊度は、アクリルアミド系ポリマー繊維束の質量を測定して、1000m当たりの質量を繊維束の繊度[tex]として算出し、繊維束を構成する単繊維の繊度を求めることにより測定した。
平均繊維径は、得られたアクリルアミド系ポリマー繊維束の密度を、乾式自動密度計(マイクロメリティックス社製「アキュピックII 1340」)を用いて測定し、下記式により繊維束を構成する単繊維の平均繊維径(μm)を求めた。
D={(Dt×4×1000)/(ρ×π×n)}1/2
〔式中、
Dは繊維束を構成する単繊維の平均繊維径(μm)を表し、
Dtは繊維束の繊度(tex)を表し、
ρは繊維束の密度(g/cm)を表し、
nは繊維束を構成する単繊維の本数(本)を表す。
なお、πは3.14である。〕
(製造例2:アクリルアミド系ポリマー繊維束a-2の製造)
AM63モル%、AN35モル%及びAA2モル%を含む組成物100質量部と、テトラメチルエチレンジアミン4質量部とをイオン交換水567質量部に溶解し、水溶液を得た。
得られた水溶液に、窒素雰囲気下で撹拌しながら、過硫酸アンモニウムを添加した後、70℃で150分間加熱し、重合反応を行った。
得られた水溶液をメタノール中に滴下して共重合体を析出させ、これを回収して80℃で12時間真空乾燥させ、水溶性のAM/AN/AA共重合体を得た。
得られたAM/AN/AA共重合体(AM/AN/AA=63モル%/35モル%/2モル%)100質量部と、リン酸3質量部とをイオン交換水に溶解し、水溶液を得た。
得られた水溶液を用いて、乾式紡糸を行い、単繊維の繊度が約0.4tex/本、平均繊維径が約20μmのアクリルアミド系ポリマー繊維束a-2(800本/束)を製造した。
[実施例1]
(複合繊維を用意する工程)
製造例1で得られたアクリルアミド系ポリマー繊維束a-1をボビンから繰り出し、搬送しながら、アクリルアミド系ポリマー繊維束a-1の表面に、シリコーン系油剤A(信越化学工業株式会社製、KP-420、側鎖にアクリル基(自己架橋性基)を有するシリコーン系油剤、25℃における粘度150mm/秒)を塗布し、複合繊維として、巻取機により巻き取った。
塗布したシリコーン系油剤Aの質量(表1中においては、シリコーン系油剤の塗布量と記載する。)は、アクリルアミド系ポリマー繊維束a-1の100質量部に対して、3.7質量部とした。
(油剤組成物層を形成する工程)
複合繊維に対して、NHVコーポレーション社製の電子線照射装置EBC800-35を用い、空気雰囲気下、常温(23℃)において電子線を照射し、表面に油剤組成物層が形成された炭素繊維前駆体を得た。
電子線の照射は、線量を300kGy、加速電圧800kV、搬送速度10m/分とする連続処理により行った。なお、電子線照射前のアクリルアミド系ポリマー繊維束a-1及び電子線照射により得られた炭素繊維前駆体は、真空デシケーターに保管した。
上記のようにして得られた炭素繊維前駆体(フィラメント数:800本)を、90℃で2時間乾燥した。
乾燥後の炭素繊維前駆体0.5gを、23℃のヘキサン中に48時間浸漬した。
浸漬後、炭素繊維前駆体を23℃のヘキサンで洗浄しながら取り出した。浸漬後に得られるヘキサン溶液からヘキサンを、エバポレーターを用いて減圧留去し、真空乾燥後、ヘキサンに溶解した油剤組成物層(シリコーン系油剤A)の質量を測定した。
アクリルアミド系ポリマー繊維束a-1の表面に塗布したシリコーン系油剤Aの質量(油剤組成物層の質量)をX、ヘキサンに溶解した油剤組成物層の質量をYとし、下記式Aに代入し、油剤組成物層の架橋度を求めたところ、91%であった。
(式A)油剤組成物層の架橋度(%)=([X-Y]/X)×100
また、浸漬(溶解)前の炭素繊維前駆体の質量をZ(0.5g)としたとき、炭素繊維前駆体の全質量に対する、ヘキサンに溶解した油剤組成物層の割合(表1においては、溶解割合と記載する。)を下記式Bから算出したところ、0.33質量%であった。
(式B)溶解割合(質量%)=(Y/Z)×100
0.3gの炭素繊維前駆体を切り出して、90℃で2時間乾燥後の質量を正確に量り、初期質量(g)とした。
炭素繊維前駆体に30mLのイオン交換水を加えて、90℃の熱風循環式オーブン中で2時間静置した。孔径1.0μmのメンブレンフィルタ(Merck社製、オムニポアTM メンブレンフィルタ JAWP04700)を用いた吸引ろ過により、90℃の水への不溶部(メンブレンフィルタ上)と、可溶部(ろ液)とに分離した。エバポレーターを用いた溶媒留去によりろ液から水を除去し、さらに真空乾燥を行った後、質量(g)を測定し、下記式から、アクリルアミド系ポリマー繊維束のゲル分率を算出したところ、50%であった。
アクリルアミド系ポリマー繊維束のゲル分率(%)=(アクリルアミド系ポリマー繊維束の質量(g)-可溶部の質量(g))/アクリルアミド系ポリマー繊維束の質量(g)×100
[実施例2~実施例9]
アクリルアミド系ポリマー繊維束の種類、油剤組成物の種類、アクリルアミド系ポリマー繊維束100質量部に対する塗布したシリコーン系油剤Aの量、及び電子線の線量からなる群より選択される1つ以上を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維前駆体(フィラメント数:800本)を製造した。
実施例1と同様に、油剤組成物の架橋度、溶解割合、アクリルアミド系ポリマー繊維束のゲル分率を測定し、表1にまとめた。
なお、表1に記載されるシリコーン系油剤B~Eは、以下のとおりである。
なお、実施例9においては、油剤組成物として、シリコーン系油剤A及びシリコーン系油剤Bを質量比1:1で混合したものを使用した(表1中においてA+Bと記載する。)。
・シリコーン系油剤B:信越化学工業株式会社製、X-22-164C、両末端にメタクリル基(自己架橋性基)を有するシリコーン系油剤、25℃における粘度90mm/秒・シリコーン系油剤C:信越化学工業株式会社製、X-22-164A、両末端にメタクリル基(自己架橋性基)を有するシリコーン系油剤、25℃における粘度25mm/秒・シリコーン系油剤D:SILTECH社製、Silmer ACR Di-50、両末端にアクリル基(自己架橋性基)を有するシリコーン系油剤、25℃における粘度210mm/秒
・シリコーン系油剤E:両末端及び側鎖が全てメチル基であり、且つ自己架橋性基を有しないシリコーン系油剤、25℃における粘度100mm/秒
[比較例1]
電子線照射を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、炭素繊維前駆体を製造した。実施例1と同様に、油剤組成物層の架橋度及びゲル分率を測定し、表1にまとめた。
[比較例2]
電子線照射を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、炭素繊維前駆体を製造した。実施例1と同様に、油剤組成物層の架橋度及びゲル分率を測定し、表1にまとめた。
[比較例3]
電子線照射を行わなかった以外は、実施例5と同様にして、炭素繊維前駆体を製造した。実施例1と同様に、油剤組成物層の架橋度及びゲル分率を測定し、表1にまとめた。
[比較例4]
シリコーン系油剤Aをシリコーン系油剤Dに変更すると共に、電子線照射を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、炭素繊維前駆体を製造した。実施例1と同様に、油剤組成物層の架橋度及びゲル分率を測定し、表1にまとめた。
[比較例5]
シリコーン系油剤の塗布及び電子線照射を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、炭素繊維前駆体を製造した。実施例1と同様に、ゲル分率を測定し、表1にまとめた。
[比較例6]
シリコーン系油剤Aを、シリコーン系油剤F(信越化学工業株式会社製、KF-393、側鎖にアミノ基を有し、且つ自己架橋性基を有しないシリコーン系油剤、25℃における粘度70mm/秒)に変更し、電子線照射を行わなかった以外は、実施例3と同様にして、炭素繊維前駆体を製造した。実施例1と同様に、油剤組成物層の架橋度及びゲル分率を測定し、表1にまとめた。
<<耐水性評価1>>
実施例及び比較例において得られた炭素繊維前駆体を、0.1g切り出し、試料とし、90℃で2時間乾燥後の重量を測定し、初期重量とした。
試料を23℃のイオン交換水中に4時間浸漬した後、試料を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:試料の膨潤が観察されなかった。
B:試料の膨潤は観察されたが、試料の形状(繊維の形態)が維持されていた。
C:試料の膨潤は観察され、且つ試料の形状(繊維の形態)が維持されていなかった。
D:試料がイオン交換水に溶解し、イオン交換水が白濁した。
<<耐水性評価2>>
実施例及び比較例において得られた炭素繊維前駆体を、0.1g切り出し、試料とし、90℃で2時間乾燥後の重量を測定し、初期重量とした。
試料を90℃のイオン交換水中に4時間浸漬した後、試料を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:試料の膨潤が観察されなかった。
B:試料の膨潤は観察されたが、試料の形状(繊維の形態)が維持されていた。
C:試料の膨潤は観察され、且つ試料の形状(繊維の形態)が維持されていなかった。
D:試料がイオン交換水に溶解し、イオン交換水が白濁した。
<<融着率の測定>>
実施例及び比較例において得られた炭素繊維前駆体を、加熱炉内に設置し、空気雰囲気下(10L/分)において、室温(25℃)から350℃まで、10℃/分で昇温し、さらに350℃(耐炎化処理時の最高温度)で30分間加熱処理(耐炎化処理)を施して耐炎化繊維を得た。炭素繊維前駆体の昇温は、0.4mN/texの張力を付与しながら実施した。
上記耐炎化処理により得られた耐炎化繊維から長さ2cmの評価用繊維(200本/束)を切出し、この評価用繊維の断面をマイクロスコープ(キーエンス社製、「デジタルマイクロスコープVHX-7000」)を用いて観察し、繊維の本数を数え、耐炎化処理前の炭素繊維前駆体の繊維の本数に対する割合を、融着率として算出した。結果を表1にまとめた。
<<炭化収率の測定>>
実施例及び比較例において得られた炭素繊維前駆体を、加熱炉内に設置し、空気雰囲気下(10L/分)において、室温(25℃)から350℃(耐炎化処理温度)まで、10℃/分の速度で、3倍に延伸しながら昇温し、さらに350℃で30分間の、加熱処理(耐炎化処理)を施して耐炎化繊維(繊維径:約8μm)を得た。炭素繊維前駆体の昇温は、0.4mN/texの張力を付与しながら実施した。
耐炎化繊維を、熱処理炉を用いて、窒素流量1000ml/minの窒素雰囲気下において、昇温速度20℃/分の条件で、室温(25℃)から1050℃まで加熱(炭化処理)して炭素繊維(繊維径:約5μm)を得た。
炭化収率を下記式より求め、表1にまとめた。
炭化収率(%)=炭素繊維の質量(g)/炭化処理前の耐炎化繊維の質量(g)×100
<<欠陥抑制性評価>>
実施例及び比較例において得られた炭素繊維前駆体を、加熱炉内に設置し、
空気雰囲気下(10L/分)において、室温(25℃)から350℃まで、昇温速度10℃/分で、延伸しながら昇温することにより、加熱処理(耐炎化処理)を施して、3倍に延伸した耐炎化繊維を得た。
得られた耐炎化繊維について、下記評価基準に従い、評価した。結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:上記延伸時に、炭素繊維前駆体の切断及び毛羽の発生は観察されなかった。
B:上記延伸時に、炭素繊維前駆体において少なくとも1本以上の繊維の切断又は毛羽の発生が観察された。
<<延伸性評価>>
上記欠陥抑制性評価において、3倍に延伸した耐炎化繊維を得るために、使用した重りの重量を下記評価基準に従い、評価した。結果を表1にまとめた。
なお、比較例1~比較例6は、欠陥抑制性評価がB評価であったため、延伸性評価は実施しなかった。
(評価基準)
A:重りの質量が25g以下であった。
B:重りの質量が25g超であった。



表1から、アクリルアミド系ポリマー繊維と、前記アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤の架橋物を含む油剤組成物層とを備え、油剤組成物層の架橋度が3%以上である、炭素繊維前駆体は、融着抑制性及び耐水性に優れていることが分かる。また、上記炭素繊維前駆体は、融着抑制性に優れ、且つ架橋度が3%以上の油剤組成物層が表面に存在することから、耐炎化処理時における炭素繊維前駆体の切断、毛羽の発生が抑制されたことが分かる。

Claims (13)

  1. アクリルアミド系ポリマー繊維と、前記アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤の架橋物を含む油剤組成物層とを備え、
    前記油剤組成物層の質量をX、23℃のヘキサンに48時間含浸させることにより溶解する前記油剤組成物層の質量をYとしたとき、下記式Aより求められる前記油剤組成物層の架橋度が3%以上である、炭素繊維前駆体。
    (式A)油剤組成物層の架橋度(%)=([X-Y]/X)×100
  2. 前記アクリルアミド系ポリマー繊維100質量部に対する、前記油剤組成物層の割合が、0.05質量部~30質量部である、請求項1に記載の炭素繊維前駆体。
  3. 前記油剤組成物層の架橋度が5%以上である、請求項1又は請求項2に記載の炭素繊維前駆体。
  4. 前記アクリルアミド系ポリマー繊維が、架橋アクリルアミド系ポリマー繊維である、請求項1又は請求項2に記載の炭素繊維前駆体。
  5. 前記架橋アクリルアミド系ポリマー繊維のゲル分率が5%以上である、請求項1又は請求項2に記載の炭素繊維前駆体。
  6. 前記アクリルアミド系ポリマー繊維が、アクリルアミド系ポリマーを含み、且つ
    前記アクリルアミド系ポリマーが、30モル%以上のアクリルアミド系モノマー単位を含む、請求項1又は請求項2に記載の炭素繊維前駆体。
  7. アクリルアミド系ポリマー繊維と、前記アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリコーン系油剤を含む塗膜とを備える複合繊維を用意する工程と、
    前記複合繊維が備える前記塗膜に含まれる前記シリコーン系油剤を架橋させ、油剤組成物層を形成する工程と、を含み、且つ
    前記油剤組成物層の質量をX、23℃のヘキサンに48時間含浸させることにより溶解する前記油剤組成物層の質量をYとしたとき、下記式Aより求められる前記油剤組成物層の架橋度が3%以上である、炭素繊維前駆体の製造方法。
    (式A)油剤組成物層の架橋度(%)=([X-Y]/X)×100
  8. 前記シリコーン系油剤の架橋が、前記複合繊維に対し、活性光線を照射することにより行われる、請求項7に記載の炭素繊維前駆体の製造方法。
  9. 前記活性光線が、線量10kGy~10000kGyの電子線である、請求項8に記載の炭素繊維前駆体の製造方法。
  10. 前記シリコーン系油剤が、アクリル基及びメタクリル基の少なくとも一方を有する、請求項7又は請求項8に記載の炭素繊維前駆体の製造方法。
  11. 請求項1に記載の炭素繊維前駆体に対して、耐炎化処理を施す工程を含む、耐炎化繊維の製造方法。
  12. 請求項11に記載の耐炎化繊維の製造方法により耐炎化繊維を製造する工程と、
    前記耐炎化繊維に対して炭化処理を施す工程とを含む、炭素繊維の製造方法。
  13. アクリルアミド系ポリマー繊維と、前記アクリルアミド系ポリマー繊維の表面に、シリ
    コーン系油剤を含む塗膜とを備える、請求項7に記載の炭素繊維前駆体の製造方法に用いられる複合繊維。
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