JP7172081B2 - 炭素材料前駆体、それを含有する炭素材料前駆体組成物、及びそれらを用いた炭素材料の製造方法 - Google Patents
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先ず、本発明の炭素材料前駆体について説明する。本発明の炭素材料前駆体は、重量平均分子量が1万~100万であり、かつ、微分分子量分布図において、ピーク全体の面積に対する重量平均分子量の5倍以上の分子量を有するポリマーが占める面積の割合が2%以下であるアクリルアミド系ポリマーからなるものである。
本発明に用いられるアクリルアミド系ポリマーの重量平均分子量は1万~100万である。アクリルアミド系ポリマーの重量平均分子量が前記上限を超えると、フィルム化、シート化、紡糸等における成形加工性(紡糸性)が低下したり、熱処理時等においてゲルが生成したりする。他方、アクリルアミド系ポリマーの重量平均分子量が前記下限未満になると、アクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体の強度が低下する。さらに、前記アクリルアミド系ポリマーの重量平均分子量の上限としては、成形加工性(紡糸性)が更に向上するという観点から、80万以下が好ましく、50万以下がより好ましく、30万以下が特に好ましく、20万以下が最も好ましい。また、アクリルアミド系ポリマーの重量平均分子量の下限としては、アクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体の強度が更に向上するという観点から、2万以上が好ましく、3万以上がより好ましい。
次に、本発明の炭素材料前駆体組成物について説明する。本発明の炭素材料前駆体組成物は、前記本発明の炭素材料前駆体と、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分とを含有するものである。本発明の炭素材料前駆体に、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分を添加することによって、炭化収率が更に向上する。
次に、本発明の炭素材料の製造方法について説明する。本発明の炭素材料の製造方法は、前記本発明の炭素材料前駆体又は本発明の炭素材料前駆体組成物に不活性雰囲気下(窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中)で加熱処理(炭化処理)を施す方法である。これにより、炭素材料前駆体が炭化し、所望の炭素材料が得られる。このような炭化処理における加熱温度としては、500℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましい。また、加熱温度の上限としては、3000℃以下が好ましく、2000℃以下がより好ましい。さらに、炭化処理における加熱時間としては特に制限はないが、1~60分間が好ましく、1~30分間がより好ましい。また、前記炭化処理においては、例えば、先に1000℃未満の温度で加熱処理を行なった後、1000℃以上の温度で加熱処理を行うといったように、複数回の加熱処理を行うこともできる。
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)12.8g(0.18mol)をイオン交換水180mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン1.35ml(0.009mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら50℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム0.252g(0.0011mol)を滴下した後、60℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して重合物を析出させ、これを回収して40℃で2日間以上真空乾燥させることにより、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)を得た。
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)12.8g(0.18mol)をイオン交換水180mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン1.35ml(0.009mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム0.152g(0.00067mol)を滴下した後、80℃で2時間重合反応を行い、さらに、90℃で1時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して重合物を析出させ、これを回収して40℃で2日間以上真空乾燥させることにより、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)を得た。
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら50℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム1.52g(0.0067mol)を滴下した後、50℃で2時間重合反応を行い、さらに、90℃で1時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して40℃で2日間以上真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら40℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム4.11g(0.018mol)を滴下した後、60℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して40℃で2日間以上真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら40℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム4.11g(0.018mol)を滴下した後、60℃で2時間重合反応を行い、さらに、90℃で1時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して40℃で2日間以上真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
過硫酸アンモニウムの量を6.17g(0.027mol)に変更した以外は合成例4と同様にして、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム2.52g(0.011mol)を滴下した後、78℃で2時間重合反応を行い、さらに、90℃で1時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して40℃で2日間以上真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)12.8g(0.18mol)をイオン交換水180mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン1.35ml(0.009mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら30℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム0.252g(0.0011mol)を滴下し、撹拌しながら30℃から50℃まで10分間かけて昇温した後、50℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して重合物を析出させ、これを回収して40℃で2日間以上真空乾燥させることにより、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)を得た。
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン3.75ml(0.025mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら30℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム1.03g(0.0045mol)を滴下し、撹拌しながら30℃から50℃まで10分間かけて昇温した後、50℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して40℃で2日間以上真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
ポリアクリルアミド10%水溶液(東京化成工業株式会社製、製品品番:A0140)を40℃で2日間以上真空乾燥させることにより前記水溶液から水を除去して、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)を得た。
合成例1~2、8及び比較調製例1で得られたPAAm並びに合成例3~7、9で得られたAAm/ANの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn、並びに微分分子量分布を、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)を用いて下記の条件で測定し、分子量の多分散度(Mw/Mn)を算出した。
〔測定条件〕
カラム:TSKgel GMPWXL×2本+TSKgel G2500PWXL×1本
溶離液:100mM硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=80/20
溶離液流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
分子量標準物質:標準ポリエチレンオキシド/標準ポリエチレングリコール
検出器:示差屈折率検出器
表1に、重量平均分子量Mw及び分子量の多分散度(Mw/Mn)を示す。
高分子量体含有率[%]={高分子量体領域の質量/ピークの全領域の質量}×100
炭素材料前駆体として合成例1で得られたPAAm(Mw=13万、高分子量体含有率=1.3%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として合成例1で得られたPAAm(Mw=13万、高分子量体含有率=1.3%)を、炭素材料前駆体濃度が20質量%となるようにイオン交換水に溶解した。得られた水溶液に、前記炭素材料前駆体100質量部に対して2質量部のリン酸水素二アンモニウムを添加し、撹拌して完全に溶解させた。得られた水溶液から水を減圧留去した後、得られた固体成分を真空乾燥して、PAAm及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
炭素材料前駆体として合成例2で得られたPAAm(Mw=13万、高分子量体含有率=1.0%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として合成例2で得られたPAAm(Mw=13万、高分子量体含有率=1.0%)を用いた以外は実施例2と同様にして、PAAm及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
リン酸水素二アンモニウムの代わりにリン酸を、前記炭素材料前駆体100質量部に対して2質量部添加した以外は実施例4と同様にして、PAAm及びリン酸を含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
炭素材料前駆体として合成例3で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=13万、高分子量体含有率=0.9%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として合成例3で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=13万、高分子量体含有率=0.9%)を用いた以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
炭素材料前駆体として合成例4で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.2万、高分子量体含有率=1.3%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として合成例4で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.2万、高分子量体含有率=1.3%)を用いた以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
炭素材料前駆体として合成例5で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.1万、高分子量体含有率=0.4%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として合成例5で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.1万、高分子量体含有率=0.4%)を用いた以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
リン酸水素二アンモニウムの代わりにリン酸を、前記炭素材料前駆体100質量部に対して2質量部添加した以外は実施例11と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸を含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
炭素材料前駆体として合成例6で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=5.4万、高分子量体含有率=1.9%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として合成例6で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=5.4万、高分子量体含有率=1.9%)を用い、リン酸水素二アンモニウムの添加量を前記炭素材料前駆体100質量部に対して5質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
炭素材料前駆体として合成例7で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=5.4万、高分子量体含有率=0.4%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として合成例7で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=5.4万、高分子量体含有率=0.4%)を用い、リン酸水素二アンモニウムの添加量を前記炭素材料前駆体100質量部に対して5質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
炭素材料前駆体として合成例8で得られたPAAm(Mw=50万、高分子量体含有率=1.9%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として合成例9で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=52万、高分子量体含有率=1.9%)をそのまま使用した。
炭素材料前駆体として比較調製例1で得られたPAAm(Mw=58万、高分子量体含有率=2.4%)をそのまま使用した。
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体(実施例1、3、6、8、10、13、15、17、18、比較例1)又は炭素材料前駆体組成物(実施例2、4、5、7、9、11、12、14、16)3mgを、示差熱天秤(株式会社リガク製「TG8120」)を用いて、窒素流量500ml/minの窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで室温から1000℃まで加熱(炭化処理)して炭素材料を得た。この炭化処理前後の炭素材料前駆体の質量保持率(1000℃における炭素材料前駆体の炭化収率)を、炭素材料前駆体に吸着した水の影響を考慮し、150℃における炭素材料前駆体の質量を基準として、下記式:
炭素材料前駆体の炭化収率[%]=M1000/M150×100
〔M1000:窒素雰囲気下、1000℃まで加熱した後の炭素材料前駆体(炭素材料)の質量、M150:150℃における炭素材料前駆体の質量〕
により求めた。その結果を表2に示す。
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体(実施例1、3、6、8、10、13、15、17、18、比較例1)又は炭素材料前駆体組成物(実施例2、4、5、7、9、11、12、14、16)を、炭素材料前駆体濃度が20質量%となるようにイオン交換水に溶解した。得られた水溶液を真空下、80℃で12時間加熱して水分を除去した。水分除去後の残渣を濃度が10質量%となるようにイオン交換水と混合し、24時間撹拌した。その後、ステンレス製のふるい(孔径:40μm)を用いてろ過し、ふるい上の残渣を観察し、下記基準で評価した。その結果を表2に示す。
〔評価基準〕
A:ふるい上に残渣(ゲル)は観察されず、ふるいを通過した溶液にも不溶なゲルは観察されなかった。
B:ふるい上に残渣(ゲル)は観察されなかったが、ふるいを通過した溶液には少量の微小な不溶なゲル(粒径:40μm未満)が観察された。
C:ふるい上に残渣(ゲル)(粒径:40μm以上)が観察された。
Claims (4)
- 重量平均分子量が1万~100万であり、かつ、微分分子量分布図において、ピーク全体の面積に対する重量平均分子量の5倍以上の分子量を有するポリマーが占める面積の割合が2%以下であるアクリルアミド系ポリマーからなることを特徴とする炭素材料前駆体。
- 請求項1に記載の炭素材料前駆体と、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分とを含有することを特徴とする炭素材料前駆体組成物。
- 請求項1に記載の炭素材料前駆体又は請求項2に記載の炭素材料前駆体組成物に炭化処理を施すことを特徴とする炭素材料の製造方法。
- 前記炭化処理の前に、前記炭素材料前駆体又は前記炭素材料前駆体組成物に耐炎化処理を施すことを特徴とする請求項3に記載の炭素材料の製造方法。
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