JP7168908B2 - 炭素材料前駆体及びそれを用いた炭素材料の製造方法 - Google Patents
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Description
先ず、本発明の炭素材料前駆体について説明する。本発明の炭素材料前駆体は、アクリルアミド系モノマー単位50~99.9モル%とシアン化ビニル系モノマー単位0.1~50モル%とを含有し、数平均分子量Mnが3.5万~7万であり、重量平均分子量Mwが4万~47万であり、分子量分布Mw/Mnが1.1以上であるアクリルアミド/シアン化ビニル系共重合体からなり、炭素材料の製造に用いられる前駆体材料である。
本発明に用いられるアクリルアミド/シアン化ビニル系共重合体は、全モノマー単位100モル%に対して、アクリルアミド系モノマー単位を50~99.9モル%の割合で含有するものである。アクリルアミド系モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、アクリルアミド/シアン化ビニル系共重合体が後述する水性溶媒又は水系混合溶媒に溶解しにくくなる。他方、アクリルアミド系モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、高い耐炎化収率、高い炭化収率及び高い耐炎化・炭化の総収率を有する炭素材料前駆体が得られない。また、前記共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性の観点から、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の下限としては、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。さらに、炭素材料前駆体の耐炎化収率や炭化収率、耐炎化・炭化の総収率が向上するという観点から、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の上限としては、99モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下が更に好ましく、90モル%以下が特に好ましい。
本発明の炭素材料前駆体は、酸等の添加成分を配合せずに、そのまま炭素材料の製造に使用することが可能であるが、耐炎化収率や炭化収率、耐炎化・炭化の総収率が向上するという観点から、本発明の炭素材料前駆体に、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分を配合して炭素材料前駆体組成物を調製し、この炭素材料前駆体組成物を炭素材料の製造に使用することが好ましい。
次に、本発明の炭素材料の製造方法について説明する。本発明の炭素材料の製造方法は、前記炭素材料前駆体又は前記炭素材料前駆体組成物に不活性雰囲気下(窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中)で加熱処理(炭化処理)を施す方法である。これにより、炭素材料前駆体が炭化し、所望の炭素材料が得られる。また、前記本発明の炭素材料前駆体が比較的大きい数平均分子量を有するアクリルアミド/シアン化ビニル系共重合体からなるものであるため、前記炭素材料前駆体又は前記炭素材料前駆体組成物に加熱処理を施しても発泡が起こりにくく、良好な外観品質を有する炭素材料を得ることができる。なお、本発明にかかる「炭化処理」には、一般的に、不活性ガス雰囲気下、2000~3000℃で加熱することによって行われる「黒鉛化」を含んでいてもよい。
アクリルアミド(AAm)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液(モノマー濃度:20.0質量%)にテトラメチルエチレンジアミン3.75ml(0.025mol)を添加して、窒素雰囲気下、攪拌しながら室温(23℃)から35℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム1.03g(0.0045mol)を添加して重合反応を開始させ、60℃に保って3時間重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)からなる炭素材料前駆体を得た。
アクリルアミド(AAm)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液(モノマー濃度:20.0質量%)にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、攪拌しながら室温(23℃)から50℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム1.52g(0.0067mol)を添加して重合反応を開始させ、50℃に保って3時間重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)からなる炭素材料前駆体を得た。
過硫酸アンモニウムの量を2.52g(0.011mol)に変更した以外は実施例1と同様にして水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)からなる炭素材料前駆体を得た。
過硫酸アンモニウムの量を4.11g(0.018mol)に変更した以外は実施例1と同様にして水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)からなる炭素材料前駆体を得た。
アクリルアミド(AAm)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液(モノマー濃度:20.0質量%)にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)及び過硫酸アンモニウム4.11g(0.018mol)を添加して重合反応を開始させ、窒素雰囲気下、攪拌しながら室温(23℃)から60℃まで昇温した後、60℃に保って3時間重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)からなる炭素材料前駆体を得た。
アクリルアミド(AAm)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液(モノマー濃度:20.0質量%)にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、攪拌しながら室温(23℃)から50℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム6.17g(0.027mol)を添加して重合反応を開始させ、60℃に保って3時間重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)からなる炭素材料前駆体を得た。
ポリアクリルアミドの10%水溶液(東京化成工業株式会社製、製品品番:A0140)を真空乾燥させることにより前記水溶液から水を除去して、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)からなる炭素材料前駆体を得た。
アクリルアミド(AAm)8.52g(120mmol)をイオン交換水190mlに溶解し、得られた水溶液(モノマー濃度:4.29質量%)に重合開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)336mg(1.20mmol)を添加し、70℃で3時間ラジカル重合を行った。得られた水溶液をメタノール中に投入して重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)からなる炭素材料前駆体を得た。
アクリルアミド(AAm)12.8g(0.18mol)をイオン交換水180mlに溶解し、得られた水溶液(モノマー濃度:6.64質量%)にテトラメチルエチレンジアミン1.35ml(0.009mol)及び過硫酸アンモニウム0.252g(0.0011mol)を添加して重合反応を開始させ、窒素雰囲気下、攪拌しながら室温(23℃)から60℃まで昇温した後、60℃に保って3時間重合反応を行った。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)からなる炭素材料前駆体を得た。
実施例1~2及び比較例1~4で得られた炭素材料前駆体を構成するAAm/AN共重合体をそれぞれ重水に溶解(重水に不溶な場合には重水素化ジメチルスルホキシドに溶解)し、得られた各溶液について、室温、周波数100MHzの条件で13C-NMR測定を行った。得られた13C-NMRスペクトルにおいて、約121ppm~約122ppmに現れる、アクリロニトリルのシアノ基の炭素に由来するピークと、約177ppm~約182ppmに現れる、アクリルアミドのカルボニル基の炭素に由来するピークとの積分強度比に基づいて、AAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位とのモル比(AAm/AN)を算出した。その結果を表1に示す。
得られた炭素材料前駆体を構成するAAm/AN共重合体(実施例1~2、比較例1~4)及びPAAm(比較例5~7)の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)を用いて下記の条件で測定し、分子量分布Mw/Mnを算出した。それらの結果を表1に示す。
〔測定条件〕
カラム:TSKgel GMPWXL×2本+TSKgel G2500PWXL×1本。
溶離液:100mM硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=80/20。
溶離液流量:1.0ml/min。
カラム温度:40℃。
分子量標準物質:標準ポリエチレンオキシド/標準ポリエチレングリコール。
検出器:示差屈折率検出器。
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体をそれぞれ1~2mg秤量し、示差熱天秤(株式会社リガク製「TG8120」)を用いて、窒素流量500ml/minの窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで室温から1000℃まで加熱(炭化処理)して炭素材料を得た。この炭化処理前後の炭素材料前駆体の質量保持率(1000℃における炭素材料前駆体の炭化収率)を、真空乾燥後に炭素材料前駆体に吸着した水の影響を考慮し、150℃における炭素材料前駆体の質量を基準として、下記式:
炭素材料前駆体の炭化収率[%]=M1000/M150×100
〔M1000:窒素雰囲気下、1000℃まで加熱した後の炭素材料前駆体(炭素材料)の質量、M150:150℃における炭素材料前駆体の質量〕
により求めた。その結果を表1に示す。
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体をそれぞれ1~2mg秤量し、示差熱天秤(株式会社リガク製「TG8120」)を用いて、空気流量500ml/minの空気雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から350℃まで加熱して熱重量分析を行った。得られた熱重量分析結果に基づいて、150℃における炭素材料前駆体の質量に対して5質量%の質量減少が観察された時点の温度(5%質量減少温度)を求めた。また、200℃における炭素材料前駆体の質量に対する250℃における炭素材料前駆体の質量の割合(200~250℃における質量減少率)を下記式:
200~250℃における質量減少率[%]={(M200-M250)/M200}×100
〔M250:250℃における炭素材料前駆体の質量、M200:200℃における炭素材料前駆体の質量〕
により求めた。それらの結果を表1に示す。
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体をそれぞれ、炭素材料前駆体濃度が5質量%となるようにイオン交換水に溶解した。得られた水溶液0.05mlをスライドガラス(18mm×18mm)上にキャストした後、60℃で2時間乾燥させて炭素材料前駆体フィルムを得た。得られた炭素材料前駆体フィルムを目視により観察して下記基準で評価した。その結果を表1に示す。
A:フィルム内に気泡が確認されなかったもの。
B:フィルム内に気泡は確認されなかったが、表面の一部に微細な凹凸が確認されたもの。
C:フィルム内に気泡が確認されたもの。
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体をそれぞれ、炭素材料前駆体濃度が10質量%となるようにイオン交換水に溶解した。得られた水溶液をテフロン(登録商標)製シート上にキャストした後、室温で18時間放置した。その後、真空乾燥を行い、炭素材料前駆体フィルム(約20mm×約20mm、厚さ:約150μm)を得た。得られた炭素材料前駆体フィルムを目視により観察して下記基準で評価した。その結果を表1に示す。
A:フィルム内に気泡が確認されなかったもの。
B:フィルム内に気泡は確認されなかったが、表面の一部に微細な凹凸が確認されたもの。
C:フィルム内に気泡が確認されたもの。
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体をそれぞれ、炭素材料前駆体濃度が5質量%となるようにイオン交換水に溶解した。得られた水溶液0.05mlをスライドガラス(18mm×18mm)上にキャストした後、空気雰囲気下、150℃に加熱した。その後、150℃から350℃まで10分間かけて昇温させてフィルムを得た。得られたフィルムの外観を目視により観察して下記基準で評価した。その結果を表1に示す。
A:フィルム表面に発泡の形跡は確認されず、透明性が維持されたもの。
B:フィルム表面に僅かに発泡の形跡が確認されたが、透明性は保持されたもの。
C:フィルム表面に発泡の形跡が確認され、不透明になったもの。
Claims (3)
- アクリルアミド系モノマー単位50~99.9モル%とシアン化ビニル系モノマー単位0.1~50モル%とを含有し、数平均分子量Mnが3.5万~7万であり、重量平均分子量Mwが4万~25万であり、分子量分布Mw/Mnが1.1以上であるアクリルアミド/シアン化ビニル系共重合体からなることを特徴とする炭素材料前駆体。
- 請求項1に記載の炭素材料前駆体に炭化処理を施すことを特徴とする炭素材料の製造方法。
- 前記炭化処理の前に、前記炭素材料前駆体に耐炎化処理を施すことを特徴とする請求項2に記載の炭素材料の製造方法。
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