JP7251275B2 - 抗菌性フィルムおよび包装材 - Google Patents

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本発明は抗菌性フィルム、およびそれを用いて形成される包装材に関する。
近年、カビによる被害は、食品、住環境など様々なところで発生し、社会問題となっている。これに対して、揮発性の抗菌薬剤を含む抗菌性包装材が各種提案されている。
(例えば、特許文献1、2を参照。)
ところで、抗菌性発現には、早い段階で一定以上の抗菌薬剤に触れさせることが必要である。そのためには多量の薬剤を包装材に含有させるなどして薬剤の揮発量を増やすことになる。しかし一方で、薬剤の種類によっては接触する薬剤量が多すぎると抗菌の対象物(例えば包装材に用いた場合、包装する内容物)に悪影響を与えてしまう場合がある。そのため、内容物によって接触する薬剤量を適切に設定する必要がある。
しかし、このような包装材の薬剤放出量は包装材の構成に依存するので、同じ包装材を用いても内容物の種類や内容量が異なる場合には適切に制御できない。
したがって、内容物に応じて異なる薬剤放出量を有する包装材をそれぞれに用意する必要があった。
特開平11-388号公報 特開2003-144116号公報
そこで本発明では、カビ等の発生を防ぐために揮発性の抗菌薬剤を含有するフィルムであって、内容物の種類や内容量に応じて、容易に使用開始時の薬剤量を制御することのできる抗菌性フィルムおよび包装材並びに包装袋を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明においては、発熱層を有する積層フィルムとし、この発熱層を電子レンジのマイクロ波照射により発熱させ、発熱量を調節することにより、抗菌成分の揮発量を調節可能な抗菌性フィルムを提供する。
すなわち、本発明の第1の実施形態に係る抗菌性フィルムは、
基材、発熱層、断熱層、接着層、熱融着樹脂層の5層以上からなるフィルムであって、前記接着層は揮発性抗菌薬剤を含み、
前記発熱層はマイクロ波照射により発熱する成分を含む層であることを特徴とする。
また、本発明に係る抗菌性フィルムは、
前記発熱層のマイクロ波照射により発熱する成分を含む層が、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅、のいずれかを含む蒸着薄膜層、または、アルミニウムと酸化アルミニウムの混合層であってもよい。
また、本発明に係る抗菌性フィルムは、
前記抗菌薬剤が、200以下の分子量を有するアルデヒド化合物からなるものであって
もよい。
また、本発明に係る抗菌性フィルムは、
前記アルデヒド化合物が、(E)-2-ヘキセナール、ヘキサナール、シンナムアルデヒド、シトラール、およびデカナールからなる群から選択されるものであってもよい。
また、本発明に係る抗菌性フィルムは、
前記断熱層が、紙、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンのいずれかを含むことを特徴とするものであってもよい。
本発明に係る包装材は、
前記記載の抗菌性フィルムを用いてなることを特徴とする。
本発明に係る包装材は、
貼り合わせられた少なくとも2枚のフィルムからなる袋形状の包装材であって、前記2枚のフィルムの少なくとも一方が前記記載の抗菌性フィルムであってもよい。
上記構成を採用することにより、本発明の抗菌性フィルムは、電子レンジでのマイクロ波照射により、発熱層が発熱して接着層の抗菌薬剤を揮発させることで、発熱量に応じて抗菌薬剤の揮発量を調節できるので、容易に抗菌性能を制御することができる。
本発明の実施形態におけるフィルムの層構成を示す概略断面図である。
図1に、本実施形態の抗菌性フィルムの概略断面図を示す。
本発明の抗菌性フィルム1は、基材10、発熱層20、断熱層30、接着層40、熱融着樹脂層50の5層以上からなるフィルムであって、接着層40には揮発性抗菌薬剤を含むことを特徴とする。
基材10は、優れた機械的強度、耐熱性および金属蒸着加工適性を有するフィルムであることが望ましい。また、基材10は、用いる抗菌薬剤の透過性が低い材料で形成することが望ましい。
基材10を形成するための材料の非制限的な例は、例えばポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、および、ナイロン(登録商標)などのポリアミド(PA)からなる群から選択される合成樹脂を含む。
基材10は、上記材料を含む単層であってもよいし、複数層の積層構造を有してもよい。基材10は、10μm~50μmの膜厚を有することが好ましい。前述の範囲内の膜厚を有することにより、良好な加工性および取り扱い性を得ることができる。
また必要に応じて、基材10は、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、充填材、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、増粘剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
熱融着樹脂層50は、加熱時に被着材に対する優れた接着性を示すことが望ましい。
熱融着樹脂層50は、自立フィルムであってもよいし、塗布などにより形成される非自立性層であってもよい。
熱融着樹脂層50を形成するための材料の非制限的な例は、PE、PP、および、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる群から選択される合成樹脂を含む。
熱融着樹脂層50は、単層であってもよいし、複数層の積層構造を有してもよい。熱融着樹脂層50は、10μm~100μmの膜厚を有していることが好ましい。前述の範囲内の膜厚を有することにより、良好な加工性、取り扱い性、開封性、熱接着性を得ることができる。
必要に応じて、熱融着樹脂層50は、接着促進剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、充填材、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、難燃化剤、増粘剤、防曇剤、スリップ剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
熱融着樹脂層50の形成は、熱融着樹脂の押出ラミネート、熱融着フィルムのドライラミネートなどの当該技術において知られている任意の技術によって実施することができる。
発熱層20はマイクロ波照射により発熱する機能を有する。
発熱層20を形成するための材料の非制限的な例は、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅、などの金属蒸着薄膜、およびアルミニウムと酸化アルミニウムの混合層を含むが、発熱量及び加熱時スパークの問題から、アルミニウムの使用が好ましい。
断熱層30は、接着層40および熱融着樹脂層50への熱の伝わりを制限する機能を有する。断熱層30は耐熱性と断熱性を有することが望ましく、形成するための材料の非制限的な例は、発泡ポリエチレンや発泡ポリプロピレンにセラミックスを蒸着したものや、紙を含む。断熱層30の厚みは、数百μm以下とすることにより、包装袋としての取り扱い性を得ることができる。
接着層40は、少なくとも抗菌薬剤と接着剤とを含む。
接着層40は、抗菌薬剤の貯蔵および放出の機能と、断熱層30と熱融着樹脂層50とを接着させる機能とを有する。
断熱層30の構成にもよるが、用いることができる接着剤の非制限的な例は、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエーテル系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、エチレン-酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、およびゴム系接着剤を含む。必要に応じて、接着層40は、着色剤、充填材、増粘剤などの当該技術において知られている任意の添加剤を含有してもよい。
接着層40に含まれる抗菌薬剤は、200以下、好ましくは60以上200以下、より好ましくは90以上200以下の分子量を有するアルデヒド化合物である。
接着層40は、1種または複数種の抗菌薬剤を含んでもよい。用いることができるアルデヒド化合物の非制限的な例は、(E)-2-ヘキセナール(分子量98.14)、ヘキサナール(分子量100.16)、ベンズアルデヒド(分子量106.12)、オクタナール(分子量128.21)、シンナムアルデヒド(分子量132.16)、アニスアルデヒド(分子量136.15)、ピペロナール(分子量150.13)、ペリルアルデヒド(分子量150.22)、バニリン(分子量152.15)、シトラール(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール)(分子量152.23)、シトロネラール(分子量154.25)、デカナール(分子量156.27)、およびヒドロキシシトロネラール(分子量172.26)を含む。好ましいアルデヒド化合物は、(E)-2-ヘキセナール、ヘキサナール、シンナムアルデヒド、シトラール、およびデカナールを含む。
上記のうち、(E)-2-ヘキセナール、ヘキサナール、シンナムアルデヒド、シトラール、及びデカナールが特に抗菌性の強さの点から好ましい。
接着層40の塗工方式としては公知の方法を用いることができる。具体的にはグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等である。
本実施形態の包装材の非制限的な例は、袋(MA包材、チャックつき袋など)、シート、カバーフィルム、内装段ボールを含む。
袋形状の包装材は、第1の実施形態の抗菌フィルム1と、第2のフィルムとを、熱融着樹脂層50が内側に配置した状態で周縁部を加熱して貼り合わせることによって形成することができる。前記第2のフィルムは、加熱した熱融着樹脂層50による接着が可能であることを条件として、PE、PET、PEN、PP、PAなどの当該技術において知られている任意の材料を用いて形成することができる。
あるいはまた、袋形状の包装材は、2枚の第1の実施形態の抗菌フィルム1を、熱融着樹脂層50が内側に配置した状態で周縁部を加熱して貼り合わせることによって形成してもよい。さらに、貼り合わせを行う周縁部に第3のフィルムを介在させて、いわゆる「マチ」付きの袋を形成してもよい。袋形状の包装材は、矩形、円形、三角形を含む任意の形状を有してもよい。本実施形態のチャック付き袋は、機械加工によって、袋形状の包装材の開口部に開閉自在の嵌合部を設けたものである。
本実施形態の包装材を用いて包装される物品の非制限的な例は、食品、靴、衣類、文化財、布団、電子機器、皮革製品、木製品、紙製品(本など)、医療器具、および化粧品を含む。
(実施例1)
最初に、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム基材の片面に、連続式真空蒸着機を用いて、蒸着膜厚12nm、光線透過率50%の条件でアルミニウムを蒸着し発熱層を設けた。
次に、この蒸着面にシリコーン系接着剤を介して、セラミックス蒸着発泡ポリプロピレンを貼り合せ断熱層を設けた。さらに、ウレタン接着剤(東洋インキ株式会社製TM-320/CAT-13B)30重量部、酢酸エチル67重量部、シンナムアルデヒド3重量部を含む塗布組成物を断熱層に塗布し、80℃の温度で乾燥させて接着層を形成した。
最後に、接着層の上に、30μmの膜厚を有するPE(フタムラ化学株式会社製LL-XMTD)フィルムを貼り合わせて、熱融着樹脂層を形成し、抗菌性フィルムを得た。
(抗菌性評価)
得られた抗菌性フィルムから2枚のフィルムを切り出し、熱融着樹脂層同士が対向するように貼り合わせて、10cm×10cmの内寸を有するパウチを得た。次に、作製したパウチを電子レンジで100W、10秒加熱し、クロコウジカビ(Aspergillus niger)を1.0×103cfu/mLの濃度で含む菌液を塗布した直径5cmの円形の培地を、パウチ内に収容した。
パウチ内に収容した培地を、25℃の条件で3日間培養し、培養終了時の培地の状態を抗カビ性として評価した。クロコウジカビ(Aspergillus niger)の生育が視覚的に観察されない場合を「○」、生育は観察されたが抑制はされている場合を「△」、生育の抑制が観察されなかった場合を「×」と評価した。
(実施例2)
電子レンジでの加熱条件を100W30秒に変更したことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返した。
(実施例3)
電子レンジでの加熱条件を100W60秒に変更したことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返した。
(実施例4)
電子レンジでの加熱条件を500W30秒に変更したことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返した。
(比較例1)
電子レンジでの加熱を行わなかったことを除いて、実施例1と同様の手順を繰り返した。
得られた評価結果を表1に示す。
Figure 0007251275000001
表1の結果によれば、電子レンジでのマイクロ波照射時間が比較的短い実施例1と2では抗菌性評価で「△」であり、照射時間が長い実施例3と電力が大きい実施例4は抗菌性評価で「〇」であった。一方、電子レンジ加熱を行わなかった比較例1は、カビの発生が観察されて抗菌性評価は「×」であった。
これらの結果から、本実施形態に係る抗菌性フィルムおよび包装材は、電子レンジによる加熱によって抗菌性を制御可能であることがわかった。
10 基材
20 発熱層
30 断熱層
40 接着層
50 熱融着樹脂層

Claims (7)

  1. 基材、発熱層、断熱層、接着層、熱融着樹脂層の5層以上からなるフィルムであって、前記接着層は揮発性抗菌薬剤を含み、
    前記発熱層はマイクロ波照射により発熱する成分を含む層である、
    ことを特徴とする抗菌性フィルム。
  2. 前記発熱層のマイクロ波照射により発熱する成分を含む層が、アルミニウム、錫、亜鉛、鉄、銅、のいずれかを含む蒸着薄膜層、または、アルミニウムと酸化アルミニウムの混合層であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性フィルム。
  3. 前記抗菌薬剤が、200以下の分子量を有するアルデヒド化合物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性フィルム。
  4. 前記アルデヒド化合物が、(E)-2-ヘキセナール、ヘキサナール、シンナムアルデヒド、シトラール、およびデカナールからなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の抗菌性フィルム。
  5. 前記断熱層が、紙、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレンのいずれかを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の抗菌性フィルム。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の抗菌性フィルムを用いてなることを特徴とする包装材。
  7. 貼り合わせられた少なくとも2枚のフィルムからなる袋形状の包装材であって、前記2枚のフィルムの少なくとも一方が請求項1~5のいずれかに記載の抗菌性フィルムであることを特徴とする請求項6に記載の包装材。
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