JP7249114B2 - 熱溶融性フッ素樹脂射出成形品 - Google Patents

熱溶融性フッ素樹脂射出成形品 Download PDF

Info

Publication number
JP7249114B2
JP7249114B2 JP2018156094A JP2018156094A JP7249114B2 JP 7249114 B2 JP7249114 B2 JP 7249114B2 JP 2018156094 A JP2018156094 A JP 2018156094A JP 2018156094 A JP2018156094 A JP 2018156094A JP 7249114 B2 JP7249114 B2 JP 7249114B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
eluted
hot
ions
fluororesin
injection
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018156094A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020029042A (ja
Inventor
卓浩 西村
洋正 矢部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chemours Mitsui Fluoroproducts Co Ltd
Original Assignee
Chemours Mitsui Fluoroproducts Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chemours Mitsui Fluoroproducts Co Ltd filed Critical Chemours Mitsui Fluoroproducts Co Ltd
Priority to JP2018156094A priority Critical patent/JP7249114B2/ja
Publication of JP2020029042A publication Critical patent/JP2020029042A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7249114B2 publication Critical patent/JP7249114B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、フッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品に関する。さらに詳しくは半導体製造装置に用いられる液体移送用成形品及び/又は液体接触用成形品などに用いられるフッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品に関する。
熱溶融性フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、高周波電気特性、非粘着性、難燃性などの優れた特徴を有しているため、酸、アルカリなどの薬液、溶剤、塗料などの移送用の配管、薬液貯蔵容器やタンクなどの化学工業製造用品、または継手、バルブ、チューブ、ローラ、電線などの電気工業用品等に広く利用されている。特に半導体製造装置では、その特性を活かして熱溶融性フッ素樹脂射出成形品が使用される機会が多くなっている。
半導体製造の分野においては、半導体デバイスの回路パターンの微細化・高密度化・高集積化、及び配線の多層化が進むにつれ、製造プロセスも複雑化し工程数も増え続けている。微細化の要求の結果として、半導体デバイスの回路パターンにおいて欠陥とされるサイズも更に小さくなっている。このため、半導体製造装置で使用する材料及び部材や、プロセス自体が汚染発生源となっていることがあり、半導体製造現場における化学汚染物質の他、金属イオン(溶出金属イオン)や微粒子などの微小(微量)な汚染物質も半導体製品の歩留まりや信頼性にますます大きな影響を及ぼすようになっている(非特許文献1)。
さらに、溶出イオンによる汚染は、製造中の半導体デバイス上に腐食及び/又はエッチング効果をもたらしデバイス故障の原因となる。また溶出イオンを含む溶液が蒸発する際に表面残留物を残すことがある(非特許文献2)。特にフッ素イオンについては熱溶融性フッ素樹脂からの溶出量が大きいことが知られており、かつフッ素イオンと金属イオンが高い結合性を示すことからも低減が求められている。よって、微細な半導体デバイスの回路パターンの欠損発生を抑えるために、半導体製造装置で使用する材料及び部材や、プロセスの清浄化がますます重要になっており、例えば下記特許文献1には、部材に対して不飽和フルオロカーボンエーテルを含む洗浄組成物を用いた洗浄方法等が提案されている。
熱溶融性フッ素樹脂を用いて成形品を溶融成形する場合、一般的な熱可塑性樹脂で行われる押出成形法、射出成形法、トランスファー成形法、回転成形法、ブロー成形法、圧縮成形法などの成形手段が適用できる。しかしながら、溶融状態にあるフッ素樹脂は、フッ素樹脂自身やフッ素樹脂の不安定末端基が熱分解し、フッ素を含むガス状のフッ素樹脂分解物が発生し、一般的な熱可塑性樹脂と比べて成形機を構成する金属・合金を腐食させ易いことから、溶融状態のフッ素樹脂と接触する成形機は、いわゆるNi(ニッケル)基の耐熱耐食合金である、ハステロイ、インコネルといった合金により構成されている(非特許文献3)。
これらの合金は、耐食性を有するNiを主成分とし、さらに耐食性を保護、維持する目的でCr(クロム)およびMo(モリブデン)が添加された組成を有している(非特許文献4)。Ni基の耐熱耐食合金自身においては、室温~450℃の範囲で相変態温度を持たず、Ni基耐熱耐食合金の表面に形成された、Cr密度の高い薄い均一な不動態によって高い耐食性を示し、また合金中のMoが不動態を補修する機能を有している(非特許文献5)。また、射出成形に使用される(射出成形機に用いられる)金型も同様のNi基の耐熱耐食合金であるハステロイ、インコネルといった合金や、Ni系、またはCrを主成分とするメッキを用いることが一般的である。
熱溶融性フッ素樹脂は、溶融成形する際に熱溶融性フッ素樹脂自身やフッ素樹脂の不安定末端基が熱分解し、フッ素を含むガス状のフッ素樹脂分解物を生成する(非特許文献6)。このガス状のフッ素樹脂分解物は、上述したNi基耐熱耐食合金から成る場合であっても、溶融成形機内のシリンダーやスクリューの表面、金型の表面、或いは成形機内表面に形成された上述した不動態を破壊し、耐食合金内部に至るまで腐食させる結果、合金中に含まれる元素(Ni.Cr,Mo)が金属イオンの形で溶融状態にある熱溶融性フッ素樹脂と混ざってしまう。その結果、最終成形品である熱溶融性フッ素樹脂射出成形品中に上記金属イオンが残留する。
これらの金属イオンは半導体製造工程中で熱溶融性フッ素樹脂射出成形品から溶出し、製造中の半導体デバイス上に腐蝕及び/又はエッチング効果をもたらしデバイス故障の原因となるため、熱溶融性フッ素樹脂射出成形品の金属イオンの低減が強く望まれている。
上記の問題を解決する方法として、フッ素樹脂の末端基アミド化法、フッ素樹脂の末端基フッ素化法などが提案されている。下記特許文献2には、熱的にアミド基より安定な末端基化法として、フッ素樹脂をフッ素ガスで処理することにより(以下、フッ素化法という)、前記熱不安定末端基の全てを熱安定末端基である-CF末端基に変換し、加水分解や熱分解によるフッ素樹脂分解物を放出することを抑制する方法が記載されている。
しかしながら、上記のフッ素化処理したフッ素樹脂(原料)は不安定末端基をまったく含有していないとしても、溶融成形する際に熱溶融性フッ素樹脂自身が熱分解しフッ素イオンが発生するため、射出成形に使用される(射出成形機に用いられる)耐食合金に形成された不動態を破壊するという問題を解決することはできなかった。
通常、半導体製造に際して使用されている熱溶融性フッ素樹脂射出成形品の洗浄処理は、界面活性剤の希水溶液、強酸、アルカリ、有機溶剤、超純水などを使用して行われているが、これらの方法では洗浄に長時間を要する上に、半導体製造装置に使用される熱溶融性フッ素樹脂射出成形品に求められる要求を満たすほどの清浄度のレベルに達することは困難であった。
特表2012-518010号 米国特許第4,743,658号
半導体洗浄技術の最新動向、Semiconductor FPD World 2009.9、服部毅著 SEMIF57、SEMI International Standards フッ素樹脂ハンドブック 改訂13版、JFIA日本フッ素樹脂工業会、62~63ページ、124ページ 金属データブック、日本金属学会編、改訂4版、150ページ キッチン・バス工業会会報No.55(平成11年4月号) Solid State Technology、65~68ページ(1990)
本発明はこのような状況を鑑みなされたものであり、熱溶融性フッ素樹脂射出成形品のフッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品を見出した。加えて収縮率を大きくし、射出成形機金型表面との接触面積を減少させることにより、フッ素樹脂射出成形品のフッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が更に低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品を見出し、本発明に達成した。
また、前述した熱溶融性フッ素樹脂を射出成形するための成形機や金型を構成する金属において不動態を構成する元素が、フッ素樹脂射出成形品中に含まれるか否かは、特にフッ素樹脂射出成形品の成形プロセスが健全であるか否かの判断において重要であるにもかかわらず、SEMI F57(非特許文献2)で規定される金属汚染の要求条件にCr及びNiは含まれているがMoは含まれていない点に本発明者等は着目し、さらに収縮率を大きくし、射出成形機金型表面との接触面積を減少させることにより、上述した問題点を解決し得る、フッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)の両方が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品を見出し、本発明に達成した。
従って本発明の目的は、射出成形時のフッ素イオン(溶出フッ素イオン)の発生を低減し、さらに成形後の収縮率を大きくすることにより金属イオン(溶出金属イオン)を低減し、射出成形品のフッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)の両方が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品を提供することである。
本発明の他の目的は、界面活性剤の希水溶液、強酸、アルカリ、有機溶剤、超純水等による長時間の洗浄工程無しに、金属イオンが低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品を提供することである。
本発明によれば、熱溶融性フッ素樹脂を射出成形して成る半導体製造装置に用いられる液体移送用及び/又は接触用の中空形状の射出成形品において、前記熱溶融性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)との共重合体(PFA)であって、PAVEの含有量が1.9~10mol%である共重合体であり、溶出フッ素イオン濃度が0.35μg/cm以下であり、且つICP(誘導結合プラズマ)質量分析法にて定量分析される、12%硝酸を用い、60℃で20時間溶出させた後の検液中の溶出Niイオン量(pg/cm)、溶出Crイオン量(pg/cm)、及び溶出Moイオン量(pg/cm)が、下記式(1)
0.5≦1-[(M+M)/(M+M+M)]<1 ・・・(1)
(式中、Mは溶出Crイオン量(pg/cm)、Mは溶出Moイオン量(pg/cm)、Mは溶出Niイオン量(pg/cm)を各々示す。)
を満たすことを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂射出成形品が提供される。
本発明の熱溶融性フッ素樹脂射出成形品においては、
(1)収縮率が3.70%以上であること、
(2)熱溶融性フッ素樹脂が、ASTM D1238に準拠して、荷重5kg、測定温度372±0.1℃で測定したメルトフローレート(MFR)が、1~100g/10分である熱溶融性フッ素樹脂であること、が好適な態様である。
本発明により、フッ素イオン及びCr,Ni,Moの金属イオンの溶出が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品が提供される。
本発明が、射出成形後の成形品の、界面活性剤の希水溶液、強酸、アルカリ、有機溶剤、超純水等による長時間の洗浄工程無しに、フッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)の低減を可能にしたことは、従来技術からは予想外であり格段に優れた効果である。
本発明の熱溶融性フッ素樹脂射出成形品は、溶出フッ素イオン濃度が0.35μg/cm以下であると共に、溶出Crイオン量、溶出Moイオン量、溶出Niイオン量が前記式(1)を満足することが重要な特徴であり、前述したとおり、特別な洗浄を行わなくてもフッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が低減されている。
[溶出フッ素イオン]
熱溶融性フッ素樹脂射出成形品からの溶出フッ素イオン濃度は、0~0.35μg/cm、好ましくは0~0.16μg/cm、より好ましくは0~0.13μg/cmであることが望ましい。
前記非特許文献6にも記載されている通り、溶融状態にあるフッ素樹脂自身やフッ素樹脂の不安定末端基が熱分解したフッ素を含むガス状のフッ素樹脂分解物は、前述した射出成形機に使用される耐食合金(射出成形機および金型に使用される耐食合金)を腐食させ、不動態等の破壊を引き起こす。該フッ素樹脂分解物は射出成形時に射出成形品内に取り込まれ、熱溶融性フッ素樹脂射出成形品に接液する液中でフッ素イオンを溶出する。そのため、溶出するフッ素イオン濃度により、射出成形時のフッ素樹脂熱分解物の発生量を特定することが出来る。
[溶出金属イオン]
前述したように、熱溶融性フッ素樹脂の射出成形には、Niを主成分とし、Cr及びMoを含有するNi基耐熱耐食合金から成る成形機が一般に使用されている。また、金型にも同様のNi基の耐熱耐食合金が用いられる場合もある。熱溶融性フッ素樹脂との接触面(Ni基耐熱耐食合金の表面)には、Cr密度の高い薄い均一な不動態が形成されている。この不動態が塩素イオンやフッ素イオンなどのハロゲンイオンによって破壊されると、Crイオンが溶出するが、Moには破壊された不動態を補修する機能があり、不動態が破壊されると同時に母材中のMoが表面に拡散し、不動態のCr欠陥部と置換した状態となって不動態の補修が行われるが、更に腐食が進むとMoによる修復が追いつかず、CrだけでなくMoも溶出するようになる。そのため、ハロゲンイオンによってNi基耐熱耐食合金の不動態が破壊される場合には、成形機内にCrおよびMoが多く存在する状態となり、射出成形中にそれらが熱溶融性フッ素樹脂射出成形品中に多く取り込まれることになる。従って、上記式(1)により算出される値によって、成形機に使用される耐食合金(射出成形機および金型に使用される耐食合金)の不動態破壊の程度(不動態保護率)を知ることができる。
本発明においては、熱溶融性フッ素樹脂射出成形品から溶出される溶出Crイオン量、溶出Moイオン量及び溶出Niイオン量を測定し、これらが上記式(1)を満たすこと、すなわち、上記式(1)より算出される値が0.5以上且つ1未満であることにより、不動態が破壊されても容易に修復される状態(不動態保護率が高い状態)が示される。この状態においては成形機に使用される耐食合金(射出成形機および金型に使用される耐食合金)の耐食性が健全に保たれ、結果として溶出金属イオンが低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品が得られていることが理解される。
尚、上記式(1)における値が1であることは不動態が全く破壊されていないことを意味する。一方、上記式(1)より算出される値が0.5未満の場合には、不動態の破壊が進み、成形機に使用される耐食合金(射出成形機および金型に使用される耐食合金)の耐食性が著しく損なわれている状態となる。この状態においては、耐食合金の腐食が進行し、熱溶融性フッ素樹脂射出成形品中のCr、Mo及び主成分であるNiの濃度が増大するのに加え、耐食合金中に添加元素として含まれている他の添加元素、例えばW(タングステン)、Nb(ニオブ)、Fe(鉄)などの濃度も増大するため好ましくない。
[収縮率]
熱溶融性フッ素樹脂射出成形品は、射出成形機を用い、溶融した熱溶融性フッ素樹脂を金型内に射出後、冷却して金型より取り出すことにより得ることが出来る。本発明の熱溶融性フッ素樹脂は結晶性樹脂であるため、その収縮率は、金型内に射出される際の残留応力や冷却時の結晶化度の状態により影響を受けることが知られている。
熱溶融性フッ素樹脂射出成形品への、前記金属イオンの取り込みを低減させるためには、冷却時に金型と接触する面積が小さくなること、すなわち、収縮率が大きくなることが好ましい。そのため、収縮率は3.70%以上、好ましくは4%以上であることが望ましい。一方、収縮率は6%以下であることが、射出成形品の性能及び成形性の点から望ましい。
[熱溶融性フッ素樹脂]
本発明に用いる熱溶融性フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン(TFE)と共重合可能なフッ素化モノマー(コモノマー)との共重合体であって、ASTM D-1238に準じ372℃におけるメルトフローレート(MFR)が約1~100g/10分の共重合体である。メルトフローレート(MFR)は1~100g/10分、好ましくは5~70g/10分、より好ましくは10~70g/10分であることが望ましい。
このような共重合体としては、少なくとも約40~99mol%のテトラフルオロエチレン単位と約1~60mol%の少なくとも1種のコモノマーを含む共重合体であって、コモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(アルキル基は炭素数1~5の直鎖もしくは分岐アルキル基である)、ビニリデンフルオライド、及びビニルフルオライド等を挙げることができる。PAVEとしては、炭素数1,2,3または4のアルキル基を挙げることができる。コモノマーとしてPAVEを複数種使用して共重合体としてもよい。
好ましい共重合体として例えば、FEP(TFE/HFP共重合体)、PFA(TFE/PAVE共重合体)、TFE/HFP/PAVEでPAVEがパーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)および/またはパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)である共重合体、MFA(TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)/PAVEでPAVEのアルキル基が炭素数2以上である共重合体)などを挙げることができる。
上記FEP共重合体中のヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位は、1~10mol%、より好ましくは2~8mol%であることが好ましい。
また、上記PFA共重合体中のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)単位は、1~10mol%、より好ましくは1~8mol%であることが望ましい。
さらに、これらの共重合体を混合して用いることもできる。
溶出するフッ素イオンを低減して、溶出金属イオン量及び微粒子量を減少させるために、-CFCHOH、-CONHおよび-COF等の不安定な末端基が、熱的に安定な-CF末端基に変換された(フッ素化された)熱溶融性フッ素樹脂を用いることが、熱分解分解物少なくなるため好ましい。
特に、-CFCHOH、-CONHおよび-COF等の不安定な末端基が、熱溶融性フッ素樹脂の炭素数10個当たり6個未満、特に0個の熱溶融性フッ素樹脂を用いることが好適である。このような熱的に安定な-CF末端基に変換された(フッ素化された)熱溶融性フッ素樹脂は、前記特許文献2に記載される方法を用いて得ることが出来る。
本発明に用いる熱溶融性フッ素樹脂の形態としては、粉状物、粉状物の造粒品、粒状物、フレーク、ペレット、キューブ、ビーズなど溶融成形の使用に適合するあらゆる形態を用いることができる。
本発明の熱溶融性フッ素樹脂射出成形品は、50重量%以上、好ましくは75重量%以上、より好ましくは90重量%以上が熱溶融性フッ素樹脂から成る成形品であり、残余の成分としては、例えば、非熱溶融性フッ素樹脂、導電性物質(カーボン、グラファイト等)等を挙げることができる。
[熱溶融性フッ素樹脂射出成形品の製法]
本発明の熱溶融性フッ素樹脂射出成形品は、従来公知の射出成形方法を採用することにより成形することができるが、射出成形品の収縮率が3.70%以上となるように成形することが好適である。
射出成形における成形品の収縮率は、成形品の残留応力、結晶化度、密度等によって決定され、かかる特性は、射出圧力、射出速度、金型温度、成形温度(樹脂温度)等を適宜設定することにより調整することができる。射出圧力等の条件は、熱溶融性フッ素樹脂の種類、MFR等によって一概には規定できないが、射出圧力20~55MPa、射出速度2~30mm/min、金型温度150~200℃、成形温度320~370℃℃の範囲であることが望ましい。
本発明の射出成形品としては、ボトル、フィルム、チューブ、シート状成形品、パイプ、ガスケット、Oリング等が挙げられ、特に好ましくは、継手、バルブ、フィルターハウジング、レギュレーター、搬送用部材(ウエハキャリア)等を挙げることができる。
以下に本発明を、実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、この説明が本発明を限定するものではない。
本発明において各物性の測定は、下記の方法によって行った。なお、下記方法に用いる超純水は、比抵抗率が18MΩ・cm以上かつ、TOC(全有機炭素)が5ppb以下で管理された超純水を用いた。
A.物性の測定
(1)溶出フッ素イオン濃度の測定
熱溶融性フッ素樹脂射出成形品43gから、縦3mm、横3mm、厚み3mmサイズにカットし10g分を、超純水、メタノール、TISBAS(II)を1:1:2で混合した溶出液20gに25℃で24時間浸漬し検液を得た。得られた検液中のフッ素イオンの濃度を、オリオンリサーチ製、EXPANDABLE ION ANALYZER ER940を用いて測定した。
(2)熱溶融性フッ素樹脂射出成形品からの溶出Crイオン量、溶出Moイオン量、溶出Niイオン量
熱溶融性フッ素樹脂射出成形品内に、12%硝酸水溶液を封入し、60℃で20時間溶出させた後の検液をICP質量分析法にて定量分析し、SEMI F57法に従い、溶出Niイオン量(pg/cm)溶出Crイオン量(pg/cm)、及び溶出Moイオン量(pg/cm)を算出し、前述した式(1)を満たすか確認した。
(3)メルトフローレート(MFR)
ASTM D-1238-95に準拠した耐食性のシリンダー、ダイ、ピストンを備えたメルトインデクサー(東洋精機製)を用いて、5gの試料を372℃に保持されたシリンダーに充填して5分間保持した後、5kgの荷重(ピストン及び重り)下でダイオリフィスを通して押出し、この時の押出速度(g/10分)をMFRとした。
(4)融点(融解ピーク温度)
熱溶融性フッ素樹脂の融点の測定には入力補償型示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いた。試料約10mgを秤量して本装置用に用意したアルミパンに入れ、本装置用に用意したクリンパーによってクリンプした後、DSC本体に収納し、150℃から360℃まで10℃/分で昇温をする。この時得られる融解曲線から融解ピーク温度(Tm)を求めた。
B.原料
本発明の実施例、及び比較例で用いた原料は下記の通りである。
(PFAペレット)
テトラフルオロエチレン/パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体、コモノマー含有量1.9mol%、MFR 30.4g/10分、融点306℃、不安定末端基(-CHOH末端基、-CONH末端基、-COF末端基)が炭素数10個あたり6個未満)
(実施例1、比較例1)
日精樹脂工業製NEX180-36E射出成形機(L/D=24、スクリュー径Φ45mm)にて、金型温度160℃、表1に示す成形温度、射出速度6mm/s、射出圧・保圧50MPaにて射出成形し、外径13mm、肉厚1.6mm、内表面積47cmの中空形状を三方に有する三方継手型(T字継手型)の射出成形品を得た。
得られた射出成形品について、溶出フッ素イオン濃度を測定すると共に、溶出Niイオン量、溶出Crイオン量、溶出Moイオン量を測定し、前記式(1)の値を求めた。また、収縮率S(%)を下記の通り算出した。結果を表1に示す。
S(%)=(P-Q)/P×100
(P:金型の外径寸法 Q:射出成形品の外径寸法)
Figure 0007249114000001
表1に示すように本発明の実施例においては、前記式(1)の値が0.5以上1未満であるため不動態保護率が高い状態にあり、成形機に使用される耐食合金(射出成形機および金型に使用される耐食合金)の耐食性が健全に保たれていることが分かる。また溶出フッ素イオン濃度が0.35μg/cm以下であることから、射出成形時における熱溶融性フッ素樹脂分解ガスの発生量が低減されていることが分かる。これらのことは、半導体製品の不良につながる欠陥の原因が少ないことを示している。
本発明により、熱溶融性フッ素樹脂の優れた耐熱性、耐薬品性、力学物性などを維持しながら、フッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品が提供される。
さらに詳しくは半導体製造装置に用いられる液体移送用成形品及び/又は液体接触用成形品などに用いられるフッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品が提供される。
本発明が、界面活性剤の希水溶液、強酸、アルカリ、有機溶剤、超純水等による長時間の洗浄工程を必要とせず、フッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品の提供を可能とした。
本発明により提供されるフッ素イオン(溶出フッ素イオン)及び金属イオン(溶出金属イオン)が低減された熱溶融性フッ素樹脂射出成形品は、半導体や半導体用薬液分野に好適に使用できるものである。

Claims (3)

  1. 熱溶融性フッ素樹脂を射出成形して成る半導体製造装置に用いられる液体移送用及び/又は接触用の中空形状の射出成形品において、
    前記熱溶融性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)との共重合体(PFA)であって、PAVEの含有量が1.9~10mol%である共重合体であり、
    溶出フッ素イオン濃度が0.35μg/cm以下であり、且つ
    ICP(誘導結合プラズマ)質量分析法にて定量分析される、12%硝酸を用い、60℃で20時間溶出させた後の検液中の溶出Niイオン量(pg/cm)、溶出Crイオン量(pg/cm)、及び溶出Moイオン量(pg/cm)が、下記式
    0.5≦1-[(M+M)/(M+M+M)]<1
    (式中、Mは溶出Crイオン量(pg/cm)、Mは溶出Moイオン量(pg/cm)、Mは溶出Niイオン量(pg/cm)を各々示す。)
    を満たすことを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂射出成形品。
  2. 収縮率が3.70%以上である請求項1記載の熱溶融性フッ素樹脂射出成形品。
  3. 前記熱溶融性フッ素樹脂が、ASTM D1238に準拠して、荷重5kg、測定温度372℃で測定したメルトフローレート(MFR)が、1~100g/10分である熱溶融性フッ素樹脂である請求項1又は2記載の熱溶融性フッ素樹脂射出成形品。
JP2018156094A 2018-08-23 2018-08-23 熱溶融性フッ素樹脂射出成形品 Active JP7249114B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018156094A JP7249114B2 (ja) 2018-08-23 2018-08-23 熱溶融性フッ素樹脂射出成形品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018156094A JP7249114B2 (ja) 2018-08-23 2018-08-23 熱溶融性フッ素樹脂射出成形品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020029042A JP2020029042A (ja) 2020-02-27
JP7249114B2 true JP7249114B2 (ja) 2023-03-30

Family

ID=69623537

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018156094A Active JP7249114B2 (ja) 2018-08-23 2018-08-23 熱溶融性フッ素樹脂射出成形品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7249114B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022071534A1 (ja) * 2020-09-30 2022-04-07 ダイキン工業株式会社 共重合体、射出成形体、被圧縮部材および被覆電線
WO2022181228A1 (ja) * 2021-02-26 2022-09-01 ダイキン工業株式会社 射出成形体およびその製造方法

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005521914A (ja) 2002-04-03 2005-07-21 ジェンテックス コーポレイション ディスプレイ/信号ライトを使用するエレクトロクロミックバックミラーアセンブリ

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS53102279A (en) * 1977-02-18 1978-09-06 Asahi Glass Co Ltd Electrode body

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005521914A (ja) 2002-04-03 2005-07-21 ジェンテックス コーポレイション ディスプレイ/信号ライトを使用するエレクトロクロミックバックミラーアセンブリ

Non-Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
フッ素樹脂デュポンテフロン(R)実用ハンドブック,2011年,19~20頁
ふっ素樹脂ハンドブック,1990年,213-221,256-257,281-287,306-307頁
ふっ素樹脂ハンドブック,2011年,30~33頁
プラスチックス・エージ エンサイクロペディア 進歩編 2007,2006年,182-190頁
半導体用高品質PFA,バルカーレビュー,第35巻第3号,1991年,1~6頁

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020029042A (ja) 2020-02-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7202082B2 (ja) 熱溶融性フッ素樹脂成形品
JP7249114B2 (ja) 熱溶融性フッ素樹脂射出成形品
JP2021006648A (ja) フルオロポリマー組成物、成形品および射出成形品
WO2013046923A1 (ja) フッ素樹脂成形品
EP3738756B1 (en) A pfa molded body with improved blister resistance and its use for semiconductor application
KR20160138009A (ko) 테트라플루오로에틸렌과 퍼플루오로(에틸 비닐 에테르)의 공중합체의 층을 갖는 복합 성형품
JP2020002341A (ja) 成形品およびその製造方法
KR20130069652A (ko) 불소 수지 성형 물품 및 그의 제조
WO2020004083A1 (ja) 成形品およびその製造方法
JP4844952B2 (ja) フッ素ゴム組成物、これを使用したゴム材料及びフッ素ゴム成形体の製造方法
JP2020015906A (ja) 成形品の製造方法および成形品
JP6715005B2 (ja) フッ素樹脂成形体
JP2020100843A (ja) フッ素樹脂成形体
JP6546143B2 (ja) 射出成形品を製造する方法
JP6628526B2 (ja) 耐ブリスター性に優れたフッ素樹脂組成物
WO2018237297A1 (en) MOLDED ARTICLE IN A FLUORINATED RESIN THAT CAN BE IMPLEMENTED IN THE FADED STATE
EP4188662A1 (en) Resin pellet, method of its manufacturing, and molded product thereof
US20240217155A1 (en) Melt processible fluororesin molded article
JP6665236B2 (ja) 耐ブリスター性に優れたpfa成形体およびpfa成形体のブリスター発生を抑制する方法
CN110922608A (zh) 一种模压用氟树脂pfa端基的处理方法
EP4041784A1 (en) Fluid-system components
CN115584094A (zh) 可熔融加工的氟树脂组合物以及由其形成的注塑制品
JP2003277538A (ja) フッ素樹脂成形体及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210514

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220329

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220524

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220607

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220721

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20220906

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221206

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20221206

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20221206

C11 Written invitation by the commissioner to file amendments

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C11

Effective date: 20221220

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20230120

C21 Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21

Effective date: 20230124

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230221

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230317

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7249114

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150