JP7247203B2 - 防錆塗料組成物およびその用途 - Google Patents
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Description
本発明の課題は、前述した従来技術における課題を解決しようとするものであって、耐電気防食性と、単膜での溶接性および防錆性とに優れた塗膜を形成可能な防錆塗料組成物を提供することにある。
(2)さらに、前記亜鉛系粉末(B)、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)および前記導電性顔料(D)以外の顔料(E)を含有する前記(1)に記載の防錆塗料組成物。
(3)前記亜鉛系粉末(B)と、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)、前記導電性顔料(D)および前記顔料(E)の合計との質量比[(B)/{(C)+(D)+(E)}]が、0.5~5.5である前記(2)に記載の防錆塗料組成物。
(4)前記亜鉛系粉末(B)の含有割合が、防錆塗料組成物中の固形分中80質量%以下である前記(1)~(3)のいずれかに記載の防錆塗料組成物。
(5)顔料体積濃度(PVC)が、70%以上である前記(1)~(4)のいずれかに記載の防錆塗料組成物。
(6)前記導電性顔料(D)が、酸化亜鉛である前記(1)~(5)のいずれかに記載の防錆塗料組成物。
(7)一次防錆塗料組成物である前記(1)~(6)のいずれかに記載の防錆塗料組成物。
(8)シリカナノ粒子を含むバインダー(A)および水を含有する第1剤と、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末から選択される少なくとも1種の亜鉛系粉末(B)を含有する第2剤とを有する防錆塗料組成物キットであり、前記第1剤および前記第2剤から選ばれる少なくとも一つがリン酸アルミニウム系化合物(C)を含有し、前記第1剤および前記第2剤から選ばれる少なくとも一つが導電性顔料(D)を含有し、且つ前記防錆塗料組成物キットの総量中、前記亜鉛系粉末(B)と、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)および前記導電性顔料(D)の合計との質量比[(B)/{(C)+(D)}]が、0.1~7.0である防錆塗料組成物キット。
(9)前記第1剤および前記第2剤から選ばれる少なくとも一つが、前記亜鉛系粉末(B)、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)および前記導電性顔料(D)以外の顔料(E)をさらに含有する前記(8)に記載の防錆塗料組成物キット。
(10)前記第2剤が、前記亜鉛系粉末(B)、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)および導電性顔料(D)を含有する前記(8)または(9)に記載の防錆塗料組成物キット。
(11)前記(1)~(6)のいずれかに記載の防錆塗料組成物、または前記(8)~(10)のいずれかに記載の防錆塗料組成物キットから形成された防錆塗膜。
(12)前記(7)に記載の防錆塗料組成物、または前記(8)~(10)のいずれかに記載の防錆塗料組成物キットから形成された一次防錆塗膜。
(13)基材と、前記基材上に形成された、前記(11)に記載の防錆塗膜または前記(12)に記載の一次防錆塗膜とを有する防錆塗膜付き基材。
(14)[1]基材に前記(1)~(7)のいずれかに記載の防錆塗料組成物、または前記(8)~(10)のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物キットの第1剤および第2剤を混合して得られる混合物を塗装する工程と、[2]前記基材に塗装された前記防錆塗料組成物または前記混合物を硬化させて、前記基材上に防錆塗膜を形成する工程とを有する、防錆塗膜付き基材の製造方法。
[防錆塗料組成物]
本発明の防錆塗料組成物(以下「本組成物」ともいう)は、シリカナノ粒子を含むバインダー(A)と、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末から選択される少なくとも1種の亜鉛系粉末(B)と、リン酸アルミニウム系化合物(C)と、導電性顔料(D)と、水とを含有する。本組成物は、前記(B)、(C)および(D)以外の顔料(E)をさらに含有することができる。
バインダー(A)は、シリカナノ粒子を含む。
シリカナノ粒子は、平均粒子径がナノサイズであれば特に限定されない。シリカナノ粒子の平均粒子径は、通常4~400nmである。平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。シリカナノ粒子としては、非晶質の水性のシリカナノ粒子が挙げられる。
テトラアルコキシシランとしては、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシランが挙げられる。
チオシアナトアルキルアルコキシシランとしては、好ましくは3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
グリシジルオキシアルキルアルコキシシランとしては、好ましくは3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
前記架橋剤としては、例えば、n-プロピルジルコネート、ブチルチタネート、チタンアセチルアセトネートが挙げられる。前記架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記硬化触媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸等の有機酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸、カセイソーダ、カセイカリ、N,N-ジメチルエタノールアミン、テトラキス(トリエタノールアミン)ジルコナート等が挙げられる。前記硬化触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本組成物におけるシリカナノ粒子とアルコキシシラン系成分との含有質量比(シリカナノ粒子/アルコキシシラン系成分)は、好ましくは0.1~3.0、より好ましくは0.2~2.0である。なお、該シリカナノ粒子は、任意で添加した水性シリカゾルに含まれるシリカナノ粒子を含む。
亜鉛系粉末(B)は、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末から選択される少なくとも1種である。亜鉛系粉末(B)は、鋼材の発錆を防止する防錆顔料として作用する。
亜鉛合金粉末としては、例えば、亜鉛と、アルミニウム、マグネシウムおよび錫から選択される少なくとも1種との合金の粉末が挙げられる。好ましくは、亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-錫合金が挙げられる。
亜鉛系粉末(B)の含有割合は、本組成物の固形分中、または本組成物から形成された防錆塗膜中、通常は80質量%以下、好ましくは40~70質量%、より好ましくは45~60質量%である。本発明では導電性顔料(D)を用いているので、亜鉛系粉末(B)の含有割合が前記範囲であっても、良好な犠牲防食作用を得ることができる。
リン酸アルミニウム系化合物(C)は、鋼材の発錆を防止する防錆顔料として作用するだけでなく、塩水噴霧防食性の改善、および本組成物からなる防錆塗膜が重防食塗料等で上塗りされた場合の耐電気防食性の改善に有効である。例えば、リン酸アルミニウム系化合物(C)を用いることにより、従来の水系無機ジンク防錆塗料では困難であった耐電気防食性を向上させることでき、従来の溶剤系無機ジンク防錆塗料と同程度の性能を達成することができる。
リン酸アルミニウム系化合物(C)の含有割合は、本組成物の固形分中、または本組成物から形成された防錆塗膜中、通常は0.5~70質量%、好ましくは1~50質量%、より好ましくは2~40質量%である。リン酸アルミニウム系化合物(C)の含有割合が前記範囲にあると、得られる防錆塗膜の防錆性と耐電気防食性とに優れる。
導電性顔料(D)は、亜鉛系粉末(B)およびリン酸アルミニウム系化合物(C)と併用されることで、亜鉛系粉末(B)の犠牲防食作用を向上させ、防錆性を向上させる。
以下、犠牲防食作用について具体的に説明する。防錆塗料組成物において、亜鉛系粉末の犠牲防食効果をより発揮するためには、亜鉛がイオン化した際に発生する電子を効率的に鋼材等の基材へ供給させることが重要である。通常、塗膜中の亜鉛粒子同士を密に接触させることにより、この通電効果を得ることができ、特に塗膜中の亜鉛系粉末の含有割合が大きい(例えば80質量%超)場合や、バインダー中の有機樹脂の含有割合が小さいまたは有機樹脂が存在しない場合は、亜鉛粒子同士が接触するのに適している。しかしながら、塗膜中の亜鉛系粉末の含有割合が小さい場合(例えば80質量%以下)や、バインダー中の有機樹脂の含有割合が比較的大きい場合、亜鉛粒子同士の接触が少なくなり、犠牲防食作用が低下する。本発明では、導電性顔料(D)を塗膜に含有させることによって、導電性顔料(D)が、亜鉛系粉末(B)を接続する役割を果たし、これらの通電効果を補うことができる。その結果、効果的な犠牲防食効果を得ることができ、良好な防錆性を発揮させることができる。
亜鉛系粉末(B)以外の金属粉末または金属合金粉末としては、例えば、Fe-Si粉、Fe-Mn粉、Fe-Cr粉、磁鉄粉、リン化鉄が挙げられる。金属粉末または金属合金粉末の市販品としては、例えば、「フェロシリコン」(キンセイマテック(株)製)、「フェロマンガン」(キンセイマテック(株)製)、「フェロクロム」(キンセイマテック(株)製)、「砂鉄粉」(キンセイマテック(株)製)、「フェロフォス2132」(オキシデンタル ケミカルコーポレーション製)が挙げられる。
導電性顔料(D)の含有割合は、本組成物の固形分中、または本組成物から形成された防錆塗膜中、通常は0.1~50質量%、好ましくは1~40質量%、より好ましくは2~30質量%である。本組成物中の導電性顔料(D)の含有割合が前記範囲にあると、得られる塗膜は防錆性に優れる。
顔料(E)は、上述した(B)、(C)および(D)以外の顔料であって、例えば、上述した(B)、(C)および(D)以外の、体質顔料、着色顔料、防錆顔料が挙げられる。
顔料(E)を用いる場合、顔料(E)の含有割合は、本組成物の固形分中、または本組成物から形成された防錆塗膜中、通常は1.0~60.0質量%、好ましくは2.0~50.0質量%、より好ましくは3.0~40.0質量%である。
体質顔料は、一般的な塗料に使用される無機顔料であれば特に制限されないが、例えば、カリ長石、ソーダ長石、カオリン、マイカ、シリカ、ガラス粉末、タルク、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、珪酸ジルコニウム、珪灰石、珪藻土が挙げられる。また、体質顔料は、熱分解によりガスを発生する無機顔料であってもよい。体質顔料としては、カリ長石、カオリン、シリカ、ガラス粉末が好ましく、耐電気防食性向上の観点からは、カオリンがより好ましい。カオリンを用いる場合、その含有割合は、耐電気防食性向上の観点から、本組成物の固形分中、または本組成物から形成された防錆塗膜中、通常は0.1~60質量%、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%である。なお、体質顔料に分類されるシリカとしては、平均粒子径が通常1~10μmのシリカ粒子を用いることができる。
体質顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ガラス粉末は、一般的に、ガラスを構成する化合物を約1,000~1,100℃で所定の時間加熱溶融し、冷却後、粉砕装置で粉末状に整粒したものである。ガラスを構成する化合物としては、例えば、SiO2、B2O3、Al2O3、ZnO、BaO、MgO、CaO、SrO、Bi2O3、Li2O、Na2O、K2O、PbO、P2O5、In2O3、SnO、CuO、Ag2O、V2O5、およびTeO2が挙げられる。PbOもガラスを構成する化合物として用いることができるが、環境に対し悪影響となることがあるため、PbOは用いないことが望ましい。
ガラス粉末を用いる場合、ガラス粉末の含有割合は、本組成物の固形分中、または本組成物から形成された防錆塗膜中、好ましくは0.05~26質量%、より好ましくは0.15~20質量%、さらに好ましくは0.5~15質量%である。
熱分解によりガスを発生する無機顔料は、例えば、500~1,500℃での熱分解によって、CO2、F2等のガスを発生する無機顔料である。熱分解によりガスを発生する無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、フッ化カルシウムが挙げられる。本組成物がこのような無機顔料を含有する場合、その塗膜で被覆された基材を溶接する際に、溶接時の溶融プール内において、シリカナノ粒子を含むバインダー(A)の塗膜形成固形分、ならびに成分(B)、(C)、(D)および(E)に由来するガスにより生じた気泡を、上記無機顔料由来のガスとともに、溶融プール内から除去することができる。
熱分解によりガスを発生する無機顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述した(B)、(C)および(D)以外の着色顔料は、無機系着色顔料および有機系着色顔料から選択される少なくとも1種である。無機系着色顔料としては、導電性顔料(D)以外の無機系着色顔料であれば特に制限されないが、例えば、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物;銅・クロム・マンガン、鉄・マンガン、鉄・クロム、コバルト・チタン・ニッケル・亜鉛、コバルト・クロム・チタン・亜鉛の複合酸化物等が挙げられる。有機系着色顔料としては、例えば、フタロシアニングリーンおよびフタロシアニンブルー等の有機系着色顔料が挙げられる。
着色顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述した(B)、(C)および(D)以外の防錆顔料としては、例えば、モリブデンおよびモリブデン化合物、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、シアナミド亜鉛系化合物およびホウ酸塩化合物が挙げられる。
本組成物を塗装した鋼材を屋外に暴露した場合、塗膜中の亜鉛系粉末(B)が水や酸素、炭酸ガスと反応することで、塗膜表面に白錆(酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛等の混合物)を生成することがある。白錆を生成した当該塗膜の表面に、上塗り塗料からなる上塗り塗膜が形成された場合、塗膜間の付着性が低下してしまうことがある。このような問題に対しては、上塗り塗料を塗装するに先だって、塗膜表面の白錆を適当な手段により除去する除去作業を必要とするが、作業の工程上の要求や特定の用途によっては、このような除去作業が全く許されないことがある。
モリブデンおよびモリブデン化合物の一方または両方を用いる場合、モリブデンおよびモリブデン化合物の含有量の合計は、亜鉛系粉末(B)100質量部に対して、好ましくは0.05~5.0質量部、より好ましくは0.3~3.0質量部、さらに好ましくは0.5~2.0質量部である。含有量が前記範囲にある場合、亜鉛系粉末(B)の充分な酸化防止作用が得られるとともに、亜鉛系粉末(B)の活性の低下を防ぎ、塗膜の防食性を維持することができる。
前記防錆顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本組成物は、その他の成分として、添加剤等を、本発明の目的および効果を損なわない範囲で適宜含有してもよい。
添加剤としては、例えば、揺変剤、消泡剤、湿潤剤、表面調整剤、沈殿防止剤、タレ防止剤、乾燥剤、流動性調整剤、分散剤、色分れ防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤が挙げられる。具体的な塗料用添加剤としては、例えば、ポリカルボン酸系揺変剤、脂肪酸ポリアマイド系揺変剤、酸化ポリエチレン系揺変剤、ウレタン会合系揺変剤、アクリルポリマー系揺変剤、変性ウレア系揺変剤;変性シリコーン系消泡剤、ポリマー系消泡剤;変性シリコーン系表面調整剤、アクリルポリマー系表面調整剤、フッ素含有ポリマー系表面調整剤、ジアルキルスルホ琥珀酸塩系表面調整剤;ヘクトライト、ベントナイト、スメクタイト等のクレイ系沈殿防止剤が挙げられる。
添加剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本組成物は、シリカナノ粒子を含むバインダー(A)を溶解または分散させるために水を含有する。ここで、水は、後述する第1剤を製造する時に使用された水であってもよいし、バインダー(A)と、必須成分である亜鉛系粉末(B)、リン酸アルミニウム系化合物(C)および導電性顔料(D)や、前述した「その他の成分」とを混合する調製過程において、加えられた水であってもよい。
本組成物は、必要に応じて親水性有機溶剤を含有していてもよい。
親水性有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-ブトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、エチルアルコール、2-メトキシエタノール、ジアセトンアルコール、ジオキサン、エチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテルが挙げられる。
本組成物が親水性有機溶剤を含有する場合、前記(B)~(E)の水への溶解性や分散性の向上、本組成物の被塗物(基材)に対する湿潤性の改善、および塗膜の乾燥性・硬化性が向上する点で好ましい。ただし、親水性有機溶剤の添加量が多い場合は、前記(B)~(E)の水への溶解性や分散性が向上するものの、揮発性有機化合物(VOC)低減という環境上の規制からは好ましくない。このような観点から、本組成物中の親水性有機溶剤の含有割合は、通常は15質量%未満、好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満である。また、本組成物中の、親水性有機溶剤を含めた有機溶剤の含有割合も、通常は15質量%未満、好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満である。
本組成物は、顔料体積濃度(PVC)が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは70~90%であり、さらに好ましくは75~85%である。本発明において、顔料体積濃度(PVC)とは、本組成物の固形分中の、顔料成分と添加剤中の固体粒子とが占める割合(体積基準)を、百分率で表した濃度を指す。
PVC = [全ての顔料成分の体積合計+添加剤中の固体粒子の体積合計]/[塗料組成物中の固形分の体積]×100(%)
本組成物中の固形分(不揮発分)の体積は、本組成物の固形分の質量および密度から算出することができる。前記質量および密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
本組成物は、好ましくは、主に船舶、海洋構造物、プラント、橋梁および陸上タンク等の大型構造物用鋼材の塗装において、一次防錆塗料組成物として使用される。一次防錆塗料組成物は、大型構造物の建造工程の溶断、溶接などに支障を与えることなく、建造期間中の鋼材を錆から守ることが求められる。
本発明の防錆塗料組成物キット(以下「本キット」ともいう)は、シリカナノ粒子を含むバインダー(A)および水を含有する第1剤と、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末から選択される少なくとも1種の亜鉛系粉末(B)を含有する第2剤とを有する。
第1剤および第2剤における各成分の含有割合は、第1剤および第2剤を混合して本組成物を調製した際の各成分の含有割合が[防錆塗料組成物]欄に記載した範囲になるよう適宜設定することができる。
本キットを構成する第1剤および第2剤を混合することにより、本組成物を容易に調製することができる。
本発明の防錆塗膜付き基材は、基材と、前記基材上に形成された防錆塗膜および/または一次防錆塗膜とを有する。ここで前記防錆塗膜および一次防錆塗膜は、本組成物または本キットから形成される。
基材上に防錆塗料組成物を塗装する方法としては、例えば、基材上に防錆塗料組成物を塗布する、あるいは基材を防錆塗料組成物に含浸してから取り出す、という方法が挙げられる。前記防錆塗料組成物を塗布する方法としては、特に制限はなく、エアスプレー、エアレススプレー等の従来公知の方法を適用することができる。
実施例等で使用した原料は以下の通りである。
・無機/有機ハイブリッド型水系バインダー
「Dynasylan SIVO140」:
エボニック ジャパン(株)製
(SiO2含有割合14.25質量%、
固形分濃度22.5質量%、密度1.1g/cm3)
・水性シリカゾル「スノーテックスAK-L」:
日産化学(株)製(SiO2含有割合20.5質量%、
固形分濃度21.2質量%、密度1.0g/cm3)
・表面調整剤「TEGO Twin 4000」:
エボニック ジャパン(株)製(密度1.0g/cm3)
・亜鉛粉末「F-2000」:
本荘ケミカル(株)製(密度7.1g/cm3)
・トリポリリン酸二水素アルミニウム(モリブデン酸処理)
「LFボウセイ PM-303W」:
キクチカラー(株)製(密度3.0g/cm3)
・トリポリリン酸二水素アルミニウム(Si・Zn処理)
「K-WHITE #84」:
テイカ(株)製(密度3.1g/cm3)
・トリポリリン酸二水素アルミニウム(Ca・Zn処理)
「K-WHITE CZ610」:
テイカ(株)製(密度2.5g/cm3)
・トリポリリン酸二水素アルミニウム(Mg処理)
「K-WHITE G105」:
テイカ(株)製(密度2.6g/cm3)
・酸化亜鉛「酸化亜鉛3種」:
ハクスイテック(株)製(密度5.8g/cm3)
・カリ長石「セラミックスパウダーOF-T」:
キンセイマテック(株)製(密度2.7g/cm3)
・カオリン「Satintone W」:
BASF社製(密度2.6g/cm3)
・シリカ粉末「QZ-SW」:(株)五島鉱山製(密度2.7g/cm3)
・モリブデン酸カルシウム「LFボウセイ MC-400WR」:
キクチカラー(株)製(密度3.2g/cm3)
・リン酸亜鉛「LFボウセイ ZP-N」:
キクチカラー(株)製(密度3.3g/cm3)
・リン酸三カルシウム「第三リン酸カルシウム」:
太平化学産業(株)製(密度2.7g/cm3)
前記原料の顔料組成は、表1の通りである。
無機/有機ハイブリッド型水系バインダーとして14.7質量部のDynasylan SIVO140、水性シリカゾルとして6.3質量部のスノーテックスAK-L、20.0質量部の脱イオン水、および表面調整剤として0.06質量部のTEGO Twin 4000を容器に仕込み、25℃で1時間攪拌して、第1剤である(A-1)を調製した。
第1剤と各粉末の材料(第2剤)とを表3-1~表3-3に記載された割合(質量部)でポリエチレン製容器に仕込み、ハイスピードディスパーで5分間分散処理を行い、防錆塗料組成物を調製した。
(1)屋外曝露防錆性
実施例、比較例で得られた各防錆塗料組成物を、構造用鋼板(JIS G3101:2015、SS400、寸法:150mm×70mm×2.3mm、サンドブラスト加工)に、その乾燥膜厚が15μmとなるように塗装した。乾燥膜厚は、電磁式膜厚計「LE-370」((株)ケット科学研究所製)を用いて測定した。次いで、塗装された前記組成物をJIS K5600-1-6:2016の規格に準拠し、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内で7日間乾燥させて、構造用鋼板上に防錆塗膜が形成された試験板を作成した。
[発錆の状態の評価基準(ASTM D610)]
10:発錆を認めない、または発錆の面積比率は0.01%以下
9:発錆の面積比率は0.01%を超え0.03%以下
8:発錆の面積比率は0.03%を超え0.1%以下
7:発錆の面積比率は0.1%を超え0.3%以下
6:発錆の面積比率は0.3%を超え1%以下
5:発錆の面積比率は1%を超え3%以下
4:発錆の面積比率は3%を超え10%以下
3:発錆の面積比率は10%を超え16%以下
2:発錆の面積比率は16%を超え33%以下
1:発錆の面積比率は33%を超え50%以下
0:発錆の面積比率は50%を超え100%以下
前記屋外曝露防錆性評価と同様にして、試験板を作成した。得られた試験板を、JIS K5600-7-1:2016に準拠し、温度が35℃±2℃のスプレーキャビネット内に入れ、塩化ナトリウム水溶液(濃度5%)を試験板の防錆塗膜に噴霧し続け、噴霧開始時から300時間後の防錆塗膜の発錆状態をASTM規格D-610の基準に従って、屋外曝露防錆性と同様に評価し、7点以上を合格とした。
前記屋外曝露防錆性評価と同様にして、試験板を作成した。得られた試験板の防錆塗膜上に、ハイソリッド型エポキシ塗料である、「CMP ノバ 2000」(中国塗料(株)製)を、エアスプレーガンで乾燥膜厚が約320μmとなるようにスプレー塗装し、次いで温度23℃、相対湿度50%の雰囲気で7日間乾燥することで上塗り塗膜付き試験板を形成した。乾燥膜厚は、電磁式膜厚計「LE-370」((株)ケット科学研究所製)を用いて測定した。
[剥がれの大きさと評価基準]
S:10mm未満
A:10mm以上15mm未満
B:15mm以上20mm未満
C:20mm以上30mm未満
D:30mm以上
2枚のサンドブラスト処理板(JIS G3101:2015,SS400、下板寸法:600mm×100mm×12mm、上板寸法:600mm×50mm×12mm)の表面に、ライン塗装機を用いて、実施例、比較例で得られた各防錆塗料組成物を、その乾燥膜厚が15μmとなるように塗装した。乾燥膜厚は、電磁式膜厚計「LE-370」((株)ケット科学研究所製)を用いて測定した。次いで、塗装された前記組成物をJIS K5600-1-6:2016の規格に従い、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室内で7日間乾燥させ、図1(a)に示されるような上板および下板を準備した。図1(a)~(c)において、サンドブラスト処理板のうちの密な斜線部は塗装箇所を示す。
[ブローホール発生率と評価基準]
S:1%未満
A:1%以上5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
表3-1~3-3より、以下の点が示される。
防錆塗料組成物がリン酸アルミニウム系化合物(C)を含有することで、前記(C)を含有していない場合よりも塩水噴霧防食性および耐電気防食性が良好であった(実施例1、6~9、比較例1)。リン酸アルミニウム系化合物(C)以外の防錆顔料を使用した場合、屋外曝露防錆性、塩水噴霧防食性、耐電気防食性の両立が困難であった(実施例1、22~25、比較例5~7)。
質量比[(B)/{(C)+(D)}]が7.0以下である場合、屋外曝露防錆性、塩水噴霧防食性、耐電気防食性および溶接性に優れていたが、質量比[(B)/{(C)+(D)}]が7.0を超える場合、屋外曝露防錆性、塩水噴霧防食性、耐電気防食性および溶接性のいずれか、または複数が劣っていた(実施例、比較例2~4)。さらに、顔料(E)として、カオリンを使用した場合、耐電気防食性がより優れていた(実施例20と実施例1、19との比較、実施例25と実施例24との比較)。
20・・・サンドブラスト処理板(上板)
Claims (12)
- シリカナノ粒子を含むバインダー(A)と、
亜鉛粉末および亜鉛合金粉末から選択される少なくとも1種の亜鉛系粉末(B)と、
リン酸アルミニウム系化合物(C)と、
導電性顔料(D)と、
前記亜鉛系粉末(B)、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)および前記導電性顔料(D)以外の顔料(E)と、
水と
を含有し、且つ、
前記亜鉛系粉末(B)と、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)、前記導電性顔料(D)および前記顔料(E)の合計との質量比[(B)/{(C)+(D)+(E)}]が、0.5~5.5であり、
水の含有量が10~90質量%である
防錆塗料組成物。 - 前記亜鉛系粉末(B)の含有割合が、防錆塗料組成物中の固形分中80質量%以下である請求項1に記載の防錆塗料組成物。
- 顔料体積濃度(PVC)が、70%以上である請求項1または2に記載の防錆塗料組成物。
- 前記導電性顔料(D)が、酸化亜鉛である請求項1~3のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
- 一次防錆塗料組成物である請求項1~4のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物。
- シリカナノ粒子を含むバインダー(A)および水を含有する第1剤と、
亜鉛粉末および亜鉛合金粉末から選択される少なくとも1種の亜鉛系粉末(B)を含有する第2剤と
を有する防錆塗料組成物キットであり、
前記第1剤および前記第2剤から選ばれる少なくとも一つがリン酸アルミニウム系化合物(C)を含有し、前記第1剤および前記第2剤から選ばれる少なくとも一つが導電性顔料(D)を含有し、且つ
前記防錆塗料組成物キットの総量中、前記亜鉛系粉末(B)と、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)および前記導電性顔料(D)の合計との質量比[(B)/{(C)+(D)}]が、0.1~7.0であり、
水の含有量が、前記第1剤および前記第2剤を混合して調製される組成物において10~90質量%となる量である
防錆塗料組成物キット。 - 前記第1剤および前記第2剤から選ばれる少なくとも一つが、
前記亜鉛系粉末(B)、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)および前記導電性顔料(D)以外の顔料(E)
をさらに含有する請求項6に記載の防錆塗料組成物キット。 - 前記第2剤が、前記亜鉛系粉末(B)、前記リン酸アルミニウム系化合物(C)および導電性顔料(D)を含有する請求項6または7に記載の防錆塗料組成物キット。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物、または請求項6~8のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物キットから形成された防錆塗膜。
- 請求項5に記載の防錆塗料組成物、または請求項6~8のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物キットから形成された一次防錆塗膜。
- 基材と、前記基材上に形成された、請求項9に記載の防錆塗膜または請求項10に記載の一次防錆塗膜とを有する防錆塗膜付き基材。
- [1]基材に請求項1~5のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物、または請求項6~8のいずれか1項に記載の防錆塗料組成物キットの第1剤および第2剤を混合して得られる混合物を塗装する工程と、
[2]前記基材に塗装された前記防錆塗料組成物または前記混合物を硬化させて、前記基材上に防錆塗膜を形成する工程と
を有する、防錆塗膜付き基材の製造方法。
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