JP6726469B2 - 2液型一次防錆塗料、一次防錆塗料組成物の製造方法および基材の防錆方法 - Google Patents

2液型一次防錆塗料、一次防錆塗料組成物の製造方法および基材の防錆方法 Download PDF

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本発明は、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等における鋼板加工工程で行われる鋼板の前処理において好適に用いられる一次防錆塗料組成物(ショッププライマー)およびその用途等に関する。
従来、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の大型鉄鋼構造物の建造中の発錆を防止する目的で、鋼板表面に一次防錆塗料が塗装されている。このような一次防錆塗料としては、ウォッシュプライマー、ノンジンクエポキシプライマー、エポキシジンクリッチプライマー等の有機一次防錆塗料、ならびにシロキサン系結合剤および亜鉛粉末を含有する無機ジンク一次防錆塗料が知られている。これらの一次防錆塗料のうち、溶接性に優れた無機ジンク一次防錆塗料が最も広く用いられている。
特許文献1には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000〜6,000であるシロキサン系結合剤(a)と、鱗片状亜鉛系粉末(b)とを含有し、顔料体積濃度(PVC)が35〜60%である一次防錆塗料組成物が開示され、その具体例として、シロキサン系結合剤(a)の重量平均分子量が5,800であり、溶媒がエタノール、イソプロピルアルコールおよび水の混合物であり、塩化物イオン含有量がケイ素原子1mol当たり4.5×10-3mol程度である溶液(アルキルシリケートの縮合物を含有する溶液)主剤成分と、鱗片状亜鉛系粉末等の他の成分とを混合して調製された塗料組成物が開示されている(実施例9A)。
特許文献2には、重量平均分子量が3,000〜200,000のアルキルシリケート樹脂を含む厚膜形無機ジンクリッチペイントが開示され、その具体例として、重量平均分子量が32,000のアルキルシリケート樹脂および有機溶剤を含む塗料液が開示されている。
国際公開第2014/014063号 特開2004−359800号公報
シロキサン系結合剤および亜鉛粉末を含有する無機ジンク一次防錆塗料組成物で塗装された鋼板は、塗装後の短時間のうちに屋外に搬出されることがあるが、その際に塗装された鋼板が降雨等により水に濡れると、濡れた部分が白く変色するという現象(以下「白化」ともいう。)が生じることがあった。たとえば、塗装後早期での水との接触によって著しい白化が発生し、この白化は、塗膜の防錆性、付着性の低下を引き起こす。白化が発生した塗膜には表面処理が必要となるため、鉄鋼構造物建造における工数が増加し、工期が長くなるといった問題がある。
本発明者らが検討したところ、シロキサン系結合剤として分子量が比較的大きいものを使用することなどにより、上記の白化の問題を解消できることがわかったが、塗料のポットライフが低下するという新たな問題が生じることがわかった。
本発明の課題は、前述した従来技術における課題を解決しようとするものであって、上述した白化を著しく生じない塗膜を形成でき、かつポットライフの長い無機ジンク一次防錆塗料組成物等を提供することを目的としている。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
重量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000であるシロキサン系結合剤(a)と、
ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、および酢酸エステル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤(b1)を含有する溶剤(b)と、
亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(c)と、
前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmolの割合の塩化物イオンと
を含有することを特徴とする一次防錆塗料組成物。
[2]
前記溶剤(b1)の含有量が1〜20質量%である上記[1]に記載の一次防錆塗料組成物。
[3]
前記溶剤(b1)がメチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよび酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]または[2]に記載の一次防錆塗料組成物。
[4]
前記シロキサン系結合剤(a)がアルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物の縮合物である上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の一次防錆塗料組成物。
[5]
第1成分(A)および第2成分(B)から構成された2液型一次防錆塗料であって、
前記第1成分(A)が、重量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000であるシロキサン系結合剤(a)、および前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmolの割合の塩化物イオンを含有し、
前記第2成分(B)が亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(c)を含有し、
前記第1成分(A)および前記第2成分(B)の少なくとも一方が、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、および酢酸エステル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤(b1)を含有する溶剤(b)を含有する
2液型一次防錆塗料。
[6]
上記[5]に記載の2液型一次防錆塗料を準備し、次いで前記第1成分(A)と、前記第2成分(B)とを混合する、請求項1に記載の一次防錆塗料組成物の製造方法。
[7]
基材上に上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の一次防錆塗料組成物の膜を形成し、次いで硬化させる基材の防錆方法。
本発明の一次防錆塗料組成物は、十分なポットライフを有し、貯蔵安定性に優れている。本発明の一次防錆塗料組成物を用いると、塗装後の早期に水が接触しても著しい白化が起こらず、防錆性、付着性、耐熱性に優れる防錆塗膜を形成することができる。
以下、本発明に係る一次防錆塗料組成物等について詳細に説明する。
[一次防錆塗料組成物]
本発明の一次防錆塗料組成物(以下、「防錆塗料組成物」、「塗料組成物」ともいう。)は、重量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000であるシロキサン系結合剤(a)と、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、および酢酸エステル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤(b1)を含有する溶剤(b)と、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(c)と、前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmolの割合の塩化物イオンとを含有する。
本発明の一次防錆塗料組成物は、通常、2液型塗料から調製される。すなわち、前記塗料組成物は、通常、第1成分(A)(主剤ともいう)と第2成分(B)(ペースト成分ともいう)とから構成される。第1成分(A)と第2成分(B)とを、使用(すなわち、塗装)前は互いに接触しないように別容器に収容しておき、使用直前にこれらを充分に撹拌・混合して、一次防錆塗料組成物を調製することが好ましい。本発明の一次防錆塗料組成物の調製に用いることのできる本発明の2液型一次防錆塗料の詳細は、後述する。
本発明の一次防錆塗料組成物は、塗装現場で調色の自由度を上げるために、前記第1成分(A)および前記第2成分(B)に加えて、さらに第3成分(C)を有してもよい。
第3成分(C)は、後述する着色顔料を含有しており、必要に応じて、後述するその他の顔料、ガラス粉末、モリブデン、モリブデン化合物、添加剤、溶剤等から選択される1種または2種以上をさらに含有してもよい。
<シロキサン系結合剤(a)>
前記シロキサン系結合剤(a)の重量平均分子量(Mw)は、4,000〜10,000であり、好ましくは5,000〜8,000である。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値であり、測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載する。
Mwが上記範囲にある本発明の防錆塗料組成物は十分なポットライフを有する。一方、Mwが上記下限値を下回る塗料組成物から形成される塗膜の表面にたとえば塗装5分以内に水が接触すると著しい白化が起こることがある。
Mwが上記上限値を上回ると、防錆塗料組成物のポットライフが短く、塗装作業性が劣ることがある。
シロキサン系結合剤の未硬化の塗膜(たとえば、アルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物の部分加水分解縮合物からなる塗膜)は、空気中の水分によって残存する加水分解性基における加水分解縮合反応が徐々に進行して硬化する。Mwが小さいシロキサン系結合剤の未硬化の塗膜は、Mwが大きいシロキサン系結合剤の未硬化の塗膜と比べて加水分解縮合反応による体積収縮が大きいため、空気中の水分ではなく雨水等に濡れるなどして急激に加水分解縮合反応が進行すると、体積収縮に伴う収縮応力が急激に発生して塗膜内に微細なクラックが多数生じ、このクラックでの光の乱反射により上記の白化が生じるものと推測される。
前記シロキサン系結合剤(a)としては、たとえば、アルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物の縮合物が挙げられ、具体的には前記化合物の部分加水分解縮合物および前記化合物のオリゴマー(すなわち縮合物)の部分加水分解縮合物が挙げられる。
前記アルキルシリケートとしては、たとえば、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラ−n−プロピルオルトシリケート、テトラ−i−プロピルオルトシリケート、テトラ−n−ブチルオルトシリケート、およびテトラ−sec−ブチルオルトシリケート等の化合物、ならびにメチルポリシリケート、およびエチルポリシリケート等の化合物が挙げられる。
前記メチルトリアルコキシシランとしては、たとえば、メチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシラン等の化合物が挙げられる。
前記シロキサン系結合剤(a)としては、これらの中でも、アルキルシリケートの縮合物が好ましく、テトラエチルオルトシリケートの縮合物がより好ましく、テトラエチルオルトシリケートの初期縮合物であるエチルシリケート40(商品名;コルコート(株)製)の部分加水分解縮合物が特に好ましい。
シロキサン系結合剤(a)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シロキサン系結合剤(a)は、従来公知の方法を利用して製造することができ、たとえば、アルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物を後述する溶剤(b1)および/または溶剤(b2)中で(好ましくは溶剤(b1)を含む溶剤中で)、適量の水および触媒の存在下で重量平均分子量(Mw)が所望の値になるように部分加水分解縮合反応させることにより、シロキサン系結合剤(a)を含む前記第1成分(A)の形で製造することができる。
前記触媒としては、後述する触媒が挙げられ、加熱によって容易に残存量を減らし前記第1成分(A)の貯蔵安定性を向上させられるという観点からは、塩酸が好ましい。
前記触媒が塩酸等の塩化物イオンを含有する触媒である場合、前記触媒の量は、シロキサン系結合剤(a)の原料(たとえば、アルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物)に含まれるケイ素1molに対して好ましくは0.01mmol以上、より好ましくは0.2mmol以上の割合となるような量である。触媒の量が上記範囲にあると、所望の重量平均分子量(Mw)を有するシロキサン系結合剤(a)を、過度に時間を費やすことなく製造することができる。また、前記触媒の量は、耐白化性に優れた塗膜を製造する観点からは、前記同様の基準で好ましくは5.0mmol以下、より好ましくは4.5mmol以下である。
前記シロキサン系結合剤(a)の含有量は、前記シロキサン系結合剤(a)の質量をSiO2の質量に換算し(すなわち、前記シロキサン系結合剤(a)の質量を前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるSi原子の物質量(mol)と同量のSiO2の質量に換算し)、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、通常2〜90質量%、好ましくは3〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%である。シロキサン系結合剤(a)の含有量が前記範囲にあると、得られる塗膜は鋼板素地との付着性、上塗り付着性、防錆性、耐熱性に優れる。なお、前記防錆塗料組成物の固形分とは、溶剤等の揮発成分が含まれた組成物を熱風乾燥機中で、105℃で3時間乾燥して溶剤等を揮散させたときの残分である。
<他の結合剤>
前記防錆塗料組成物は、本発明の目的・効果を損わない範囲で、前記シロキサン系結合剤(a)以外の他の結合剤を含有してもよい。他の結合剤としては、たとえば、ポリビニルブチラール樹脂およびアクリル樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂としては、たとえば、エスレックBM−1、エスレックBL−1(商品名;積水化学(株)製)が挙げられ、アクリル樹脂としては、ダイヤナールBR−106(商品名;三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。前記他の結合剤の含有量は、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは0.05〜4.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。
<溶剤(b)>
本発明の防錆塗料組成物は、希釈用、貯蔵安定性向上、ポットライフ向上のために、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、および酢酸エステル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤(b1)を含有する溶剤(b)を必須成分として含んでいる。前記防錆塗料組成物は、前記溶剤(b1)を含まない場合と比べてポットライフが向上している。また、前記第1成分(A)は、前記溶剤(b1)を含むと貯蔵安定性が向上する。これは、前記シロキサン系結合剤(a)が、前記シロキサン系結合剤(a)が有することのあるシラノール基と前記溶剤(b1)の酸素原子との水素結合によって安定化され、その縮合反応が抑制されるためであると推測される。
前記ケトン系溶剤としては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノン等が挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
前記グリコールエーテル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
前記酢酸エステル系溶剤としては、酢酸エチル、および酢酸ブチル等が挙げられ、酢酸エチルが好ましい。
これらの中でも、ケトン系溶剤が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
前記防錆塗料組成物は、塗装された前記組成物の乾燥性の調整、前記組成物から形成される塗膜の膜厚の調整などのために、前記溶剤(b1)以外の有機溶剤(以下「他の溶剤(b2)」ともいう。)を含んでいてもよい。
他の溶剤(b2)としては、たとえば、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、およびセロソルブ系溶剤等の塗料分野で通常使用されている有機溶剤が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびブタノールが挙げられる。芳香族系溶剤としては、たとえば、ベンゼン、キシレン、およびトルエンが挙げられる。セロソルブ系溶剤としては、たとえば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、およびブチルセロソルブが挙げられる。
他の有機溶剤(b2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶剤(b1)の含有量は、防錆塗料組成物の量を100質量%とすると、通常1〜20質量%、好ましくは2〜16質量%、より好ましくは3〜12質量%である。また、溶剤(b1)の含有量は、溶剤(b)全体の量を100質量%とすると、通常1〜80質量%、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは6〜30質量%である。溶剤(b1)の含有量が前記範囲にある防錆塗料組成物は、ポットライフが長い。
溶剤(b)の含有量は、前記防錆塗料組成物の量を100質量%とすると、通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%である。
<水>
前記防錆塗料組成物は、前記シロキサン系結合剤(a)を塗膜形成後にさらに加水分解縮合反応させて硬化塗膜を形成させるために、水を含んでいてもよい。水の量(後述する塩酸中の水の量を含む)は、従来技術を参酌するなどして適宜設定すればよく、たとえば前記シロキサン系結合剤(a)中のケイ素原子1molに対して0.1〜4.0molである。
<触媒>
前記防錆塗料組成物は、触媒を含有していてもよい。前記触媒としては、たとえば、塩酸、硫酸、シュウ酸、塩化第二鉄、および塩化亜鉛等が挙げられる。
これらの触媒は、適量の水の存在下でシロキサン結合剤(a)を所望の重量平均分子量まで部分加水分解反応させる反応開始剤としても、基材上に塗布された前記防錆塗料組成物を硬化させて防錆塗膜を形成する際の硬化触媒としても作用する。
前記触媒が塩酸(塩化水素の水溶液)、塩化第二鉄、塩化亜鉛等の塩化物イオンを含有する化合物の場合、その触媒の含有量は、塩化物イオン含有量が前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmol、好ましくは0.2〜4.5mmolの割合となるような量である。
塩素を含有しない触媒を併用する場合、その含有量は、上述のようにSiO2の質量に換算した前記シロキサン系結合剤(a)の100質量部に対し、通常0.03〜0.3質量部、好ましくは0.07〜0.2質量部である。
触媒の含有量が前記範囲にあると、前記第1成分(A)の貯蔵安定性は向上し、本発明の防錆塗料組成物のポットライフは長く、またこの防錆塗料組成物から形成される塗膜は耐白化性に優れている。
<塩化物イオン>
前記防錆塗料組成物は、前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmol、好ましくは0.2〜4.5mmolの割合で、塩化物イオンを含んでいる。
塩化物イオンの含量が上記下限値未満であると、防錆塗膜を硬化させる際に前記シロキサン系結合剤(a)の加水分解縮合反応を十分に進行させられない場合がある。また、塩化物イオンの含量が上記上限値よりも大きいと、防錆塗膜の耐白化性が劣る場合がある。
塩化物イオンは、前記防錆塗料組成物中に、たとえば塩酸等の上述した塩化物イオンを含有する化合物として、あるいは遊離した塩化物イオンとして含まれている。
<亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(c)>
前記亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(c)(以下「亜鉛系粉末(c)」ともいう。)は、鋼板の発錆を防止する防錆顔料として作用する。
亜鉛合金としては、たとえば、亜鉛と、アルミニウム、マグネシウムおよび錫から選択される少なくとも1種との合金が挙げられ、好ましくは亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛−錫合金が挙げられる。
前記亜鉛系粉末(c)を構成する粒子の形状としては、球状や鱗片状などの様々な形状が挙げられる。
粒子形状が球状である亜鉛粉末の市販品としては、たとえば、F−2000(商品名;本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
粒子形状が鱗片状である亜鉛粉末の市販品としては、たとえば、STANDART Zinc flake GTT、STANDART Zinc flake G(商品名;ECKART GmbH製)が挙げられる。粒子形状が鱗片状である亜鉛合金粉末の市販品としては、たとえば、STAPA 4 ZNAL7(亜鉛とアルミニウムとの合金)、STAPA 4 ZNSN30(亜鉛と錫との合金)(商品名;ECKART GmbH製)が挙げられる。
前記亜鉛系粉末(c)としては、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末の一方または両方を用いることができ、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末のそれぞれも1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記亜鉛系粉末(c)の含有量は、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、通常10〜98質量%、好ましくは30〜97質量%、より好ましくは40〜95質量%である。前記亜鉛系粉末(c)の含有量が前記範囲にあると、得られる塗膜は防錆性に優れる。
<その他の顔料>
前記防錆塗料組成物は、様々な塗膜特性を確保する目的で、前記亜鉛系粉末(c)以外のその他の顔料を含有してもよい。その他の顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の顔料としては、たとえば、補助的に塗膜の防錆性を確保する目的で使用される、前記亜鉛系粉末(c)以外の防錆顔料が挙げられる。
前記防錆顔料としては、たとえば、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、シアナミド亜鉛系化合物およびホウ酸塩化合物が挙げられる。
前記防錆顔料の市販品としては、たとえば、リン酸亜鉛系(アルミニウム)化合物としてLFボウセイCP−Z(商品名;キクチカラー(株)製)、亜リン酸亜鉛系(カルシウム)化合物としてプロテクスYM−70(商品名;太平化学産業(株)製)、亜リン酸亜鉛系(ストロンチウム)化合物としてプロテクスYM−92NS(商品名;太平化学産業(株)製)、トリポリリン酸アルミニウム系化合物としてKホワイト#84(商品名;テイカ(株)製)、シアナミド亜鉛系化合物としてLFボウセイZK−32(キクチカラー(株)製)が挙げられる。
前記その他の顔料としては、金属粉末(ただし、モリブデン粉末、モリブデン合金粉末を除く。)、亜鉛化合物粉末(ただし、リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、シアナミド亜鉛系化合物を除く。)、鉱物粉末、および熱分解ガスを発生する無機化合物粉末から選択される少なくとも1種の無機粉末も挙げられる。
金属粉末は、導電性を有し、鉄イオンや亜鉛イオンの移動を容易にして塗膜の防錆効果を高めるという作用を有する。金属粉末としては、たとえば、Fe−Si粉、Fe−Mn粉、Fe−Cr粉、磁鉄粉、リン化鉄が挙げられる。金属粉末の市販品としては、たとえば、フェロシリコン(商品名)、フェロマンガン(商品名)、フェロクロム(商品名)、砂鉄粉(以上、キンセイマテック(株)製)、フェロフォス2132(オキシデンタル ケミカルコーポレーション製)が挙げられる。
亜鉛化合物粉末は、前記亜鉛系粉末(c)のイオン化(Zn2+の生成)の程度等の、酸化反応の活性度を調整する作用があると考えられている。本発明の防錆塗料組成物が亜鉛化合物粉末を含有する場合、前記組成物には適切な防錆性が付与される。
亜鉛化合物粉末としては、たとえば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛等の粉末が挙げられる。亜鉛化合物粉末の市販品としては、たとえば、酸化亜鉛1種(堺化学工業(株)製)、酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製、堺化学工業(株)製)、およびSachtolich HD (硫化亜鉛;商品名;Sachleben Chemie GmbH製)が挙げられる。
鉱物粉末としては、たとえば、チタン鉱物粉、シリカ粉、ソーダ長石、カリ長石、珪酸ジルコニウム、珪灰石、および珪藻土が挙げられる。鉱物粉末の市販品としては、たとえば、ルチルフラワーS、イルメナイト粉、A−PAX 45M、セラミックパウダーOF−T、アプライト(以上、キンセイマテック(株)製)、シリカMC−O(丸尾カルシウム(株)製)、バライトBA(堺化学(株)製)、ラジオライト(昭和化学工業(株))、およびセライト545(ジョンマンビル社製)が挙げられる。
熱分解ガスを発生する無機化合物粉末とは、熱分解、たとえば500〜1500℃での熱分解によってガス、たとえばCO2ガス、F2ガスを発生する無機化合物の粉末である。前記無機化合物粉末は、これを含有する塗料組成物から形成された塗膜を有する鋼板を溶接する際に、溶接時の溶融プール内において、結合剤等に含まれる有機分から発生したガスから生じた気泡を、前記無機化合物粉末由来のガスとともに、溶融プール内から除去する作用を有する。前記無機化合物粉末としては、たとえば、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムが挙げられる。前記無機化合物粉末の市販品としては、たとえば、蛍石400メッシュ(キンセイマテック(株)製)、NS#400(日東粉化工業(株)製)、炭酸マグネシウム(富田製薬(株)製)、および炭酸ストロンチウムA(本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
その他の顔料の含有量は、防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。
<モリブデン、モリブデン化合物>
前記防錆塗料組成物は、モリブデン(金属モリブデン)、モリブデン化合物の一方または双方を含有してもよい。これらは、亜鉛の酸化防止剤(いわゆる白錆抑制剤)として作用する。
白錆の発生を低減することができるという観点からは、本発明の防錆塗料組成物は、亜鉛の酸化防止剤(いわゆる白錆抑制剤)として、モリブデン(金属モリブデン)、モリブデン化合物の一方または双方を含有してもよい。
モリブデン化合物としては、たとえば、三酸化モリブデン等のモリブデン酸化物、硫化モリブデン、モリブデンハロゲン化物、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、珪モリブデン酸、モリブデン酸のアルカリ金属塩、リンモリブデン酸のアルカリ金属塩、珪モリブデン酸のアルカリ金属塩、モリブデン酸のアルカリ土類金属塩、リンモリブデン酸のアルカリ土類金属塩、珪モリブデン酸のアルカリ土類金属塩、モリブデン酸のマンガン塩、リンモリブデン酸のマンガン塩、珪モリブデン酸のマンガン塩、モリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩、リンモリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩、および珪モリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩が挙げられる。
モリブデン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モリブデンおよびモリブデン化合物の合計の含有量は、前記亜鉛系粉末(c)の量を100質量部とすると、好ましくは0.05〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。
<ガラス粉末>
前記防錆塗料組成物は、ガラス粉末を含有してもよい。ガラス粉末は、特にガラス粉末が400〜800℃の軟化点を有する場合、塗膜が高温、たとえば400〜900℃で加熱された際に亜鉛の酸化防止剤として作用する。
ガラス粉末とは、一般的にSiO2、B23、Al23、ZnO、BaO、MgO、CaO、SrO、Bi23、Li2O、Na2O、K2O、PbO、P25、In23、SnO、CuO、Ag2O、V25、およびTeO2等のガラスを構成する化合物を約1000〜1100℃で所定の時間加熱溶融し、冷却後、粉砕装置で粉末状に整粒したものである。PbOもガラスを構成する化合物として用いることができるが、環境に対し悪影響となる恐れがあるため、用いないことが望ましい。
ガラス粉末の市販品としては、たとえば、NB122A(商品名、軟化点400℃)、AZ739(商品名、軟化点605℃)、およびPFL20(商品名、軟化点700℃)(以上、セントラル硝子(株)製)が挙げられる。またガラスを構成する成分の一つであるB23は、それ単独で軟化点が約450℃のガラス状の物質であり、ガラス粉末として用いることができる。B23の市販販品としては、たとえば、酸化ほう素(商品名;関東化学(株)製 鹿1級試薬)が挙げられる。
ガラス粉末は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ガラス粉末の含有量は、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは0.05〜26質量%、さらに好ましくは0.15〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%である。
<着色顔料>
前記防錆塗料組成物は、塗膜に所望の色相を得ることを目的として、着色顔料を含有してもよい。着色顔料としては、たとえば、酸化チタン、弁柄、カーボンブラック、銅・クロム・マンガンの複合酸化物、フタロシアニングリーン、およびフタロシアニンブルーが挙げられる。着色顔料の市販品としては、たとえば、TITONE R−5N(堺化学工工業(株)製)、弁柄No.404(森下弁柄工業(株)製)、三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、ダイピロキサイドブラック #9510(大日精化工業(株)製)、Heliogen Green L8690(BASFジャパン(株)製)、およびFASTOGEN Blue 5485(DIC(株)製)が挙げられる。
着色顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色顔料の含有量は、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは0.08〜8.0質量%、より好ましくは0.15〜7.0質量%である。
<添加剤>
前記防錆塗料組成物は、添加剤を含有してもよい。添加剤とは、塗料や塗膜の性能を向上させ、または保持するために用いられる材料である。添加剤としては、たとえば、沈降防止剤、硬化促進剤、乾燥剤、流動性調整剤、消泡剤、分散剤、色分れ防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、および紫外線吸収剤が挙げられる。添加剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
沈降防止剤としては、たとえば、有機ベントナイト系、酸化ポリエチレン系、ヒュームドシリカ系、またはアマイド系のものが挙げられる。沈降防止剤の市販品としては、たとえば、TIXOGEL MPZ(商品名;BYK Additives GmbH製)、BENTONE HD(商品名;Elementis Specialties, Inc.製)、ディスパロン4200−20(商品名)、ディスパロンA630−20X(商品名)(以上、楠本化成(株)製)、およびAEROSIL 200(商品名;日本アエロジル(株)製)が挙げられる。沈降防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
添加剤の含有量は、前記防錆塗料組成物中に、好ましくは0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.3〜2.5質量%である。
[2液型一次防錆塗料]
本発明に係る2液型一次防錆塗料は、第1成分(A)および第2成分(B)から構成され、前記第1成分(A)が、前記シロキサン系結合剤(a)、および前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmolの割合の塩化物イオンを含有し、前記第2成分(B)が前記亜鉛系粉末(c)を含有し、前記第1成分(A)および前記第2成分(B)の少なくとも一方が、前記溶剤(b1)を含有する前記溶剤(b)を含有する2液型一次防錆塗料である。
この2液型一次防錆塗料を準備し、前記第1成分(A)と前記第2成分(B)とを混合することによって本発明の一次防錆塗料組成物を調製することができる。
前記第1成分(A)と前記第2成分(B)との比率は、前記第1成分(A)の前記シロキサン系結合剤(a)の含有量、前記第2成分(B)の亜鉛系粉末(c)の含有量等により一概には決定されないが、前記第1成分(A)と前記第2成分(B)との合計を100質量%とすると、第1成分(A)が通常10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、第2成分(B)が通常20〜90質量%、好ましくは30〜80質量%となる比率である。
前記第1成分(A)および前記第2成分(B)に含まれる各成分の好ましい態様等の詳細は、上述のとおりである。
前記第1成分(A)は、通常、前記溶剤(b1)を含む前記溶剤(b)を含有する。この場合、前記第1成分(A)中の溶剤(b1)の量は(前記第1成分(A)の量を100質量%とする。以下も同様。)、通常1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%であり、この範囲であれば第1成分(A)の貯蔵安定性が優れる。
前記第1成分(A)中の前記シロキサン系結合剤(a)の量は、前記同様にSiO2の質量に換算して通常5〜20質量%、好ましくは10〜20質量%であり、この範囲であれば第1成分(A)の貯蔵安定性が優れる。
前記第1成分(A)は、上述した、他の結合剤、水、触媒および添加剤から選択される少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。
前記第1成分(A)中の塩化物イオンの量は、前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmol、好ましくは0.2〜4.5mmolである。塩化物イオンの含量が上記上限値よりも大きいと、第1成分(A)の貯蔵安定性が劣る場合がある。
前記第1成分(A)は、各成分を従来公知の方法で混合することにより調製できる。また、上述したように、前記シロキサン系結合剤(a)の原料から、前記シロキサン系結合剤(a)を含む前記第1成分(A)を調製してもよい。
前記第2成分(B)中の前記亜鉛系粉末(c)の量(前記第2成分(B)の量を100質量%とする。以下も同様。)は、通常30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%である。
前記第2成分(B)は、上述した、その他の顔料、モリブデンまたはモリブデン化合物、ガラス粉末、着色顔料、添加剤、溶剤(b1)および溶剤(b2)からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。
また前記第2成分(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で塩化物イオンを含んでいてもよい。
前記第2成分(B)は、各成分を従来公知の方法で混合することにより調製できる。
[一次防錆塗料組成物の用途等]
本発明の一次防錆塗料組成物は、好ましくは、主に船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の大型構造物用鋼材の塗装において使用される。一次防錆塗料組成物は、大型構造物の建造工程の溶断、溶接などに支障を与えることなく、建造期間中の鋼材を錆から守ることが求められる。また一次防錆塗料組成物は、塗装後早期に、たとえば、5分以内に水と接触する場合があり、耐白化性が求められると共に防錆性も求められる。本発明の一次防錆塗料組成物は、前述の条件を解決する優れた耐白化性、防錆性を有する。
本発明の一次防錆塗料組成物は、通常、前記鋼材等の基板に塗装され、防錆塗膜を形成する。その塗装される基板には、ISO 8501−1における除錆度Sa2 1/2以上に相当する条件のブラスト処理が行われる。
前記防錆塗膜の、電磁式膜厚計によって測定される(測定条件は、後述の実施例で採用した条件またはそれと同様の条件である。)平均乾燥膜厚は、通常30μm以下、好ましくは5〜25μmである。
さらに、本発明の一次防錆塗料組成物から形成された防錆塗膜の表面には、エポキシ樹脂系、塩化ゴム系、油性系、エポキシエステル系、ポリウレタン樹脂系、ポリシロキサン樹脂系、フッ素樹脂系、アクリル樹脂系、ビニル樹脂系、および無機ジンク系などの塗料を上塗りして上塗塗膜を形成することができ、前記防錆塗膜は上塗塗膜との付着性にも優れている。
本発明の基材の防錆方法は、基材上に本発明の一次防錆塗料組成物の膜を形成し、次いで硬化させる工程を有する。
基材上に前記一次防錆塗料組成物の膜を形成する方法としては、前記基材上に前記一次防錆塗料組成物を塗布する、あるいは前記基材を前記一次防錆塗料組成物に含浸してから取り出す、という方法が挙げられる。
前記防錆塗料組成物を塗布する方法としては、特に制限はなく、エアスプレー、エアレススプレー等の従来公知の方法を適用することができる。
塗装機としては、一般的に造船所、製鐵所等で塗装する場合、主にエアレススプレーやライン塗装機が用いられる。ライン塗装機は、ライン速度、塗装機内部に設置されたエアスプレー、エアレススプレー等の塗装圧力、スプレーチップのサイズ(口径)の塗装条件によって、膜厚の管理をする。
前記一次防錆塗料組成物は、基材上に塗布された後、硬化される。硬化方法としては、特に制限はなく、従来公知の硬化方法を適用することができる。たとえば、基材上に塗布された前記一次防錆塗料組成物は、空気中に(必要に応じて加熱しながら)放置すると、溶剤が揮発し、シロキサン系結合剤(a)が組成物中の水または空気中の水分(湿気)によって加水分解縮合反応することにより、硬化される。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例等で使用した原料は以下のとおりである。
・アルキルシリケート「エチルシリケート40」:コルコート(株)製
・球状亜鉛粉末「F−2000」:本荘ケミカル(株)製
・鱗片状亜鉛粉末「STANDART Zinc flake GTT」: CKART GmbH製
・沈降防止剤「TIXOGEL MPZ」:BYK Additives GmbH製
・カリ長石「セラミックスパウダーOF−T」:キンセイマテック(株)製
・着色顔料「カーボンブラック MA−100」:三菱化学(株)製
・酸化亜鉛「酸化亜鉛3種」:ハクスイテック(株)製
[調製例1]〜第1成分(A)の調製〜
アルキルシリケートとして13.20質量部のエチルシリケート40、溶剤(b2)として2.40質量部のエタノール(工業用エタノール)、1.90質量部の脱イオン水、および触媒として0.020質量部の35%塩酸を容器に仕込み、65℃で表1記載の時間攪拌した後、溶剤(b2)として16.48質量部のイソプロピルアルコール、および溶剤(b1)として6.00質量部のメチルエチルケトンを加えて、シロキサン結合剤(a)(アルキルシリケートの縮合物)を含む第1成分(A−1)(固形分濃度:13.2質量%)を調製した。
さらに各原料の種類および仕込量、ならびに撹拌時間を表1に記載のように変更した以外は第1成分(A−1)の調製と同様の操作を行い、第1成分(A−2)〜(A−16)を調製した。
<アルキルシリケートの縮合物の分子量(Mw)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で第1成分(A−1)〜(A−16)中のシロキサン結合剤(a)の重量平均分子量(Mw)を測定した。
GPCの測定条件は、以下のとおりである。第1成分(A)を少量取りテトラヒドロフランを加えて希釈し、得られた溶液をメンブレムフィルターで濾過して、GPC測定サンプルを得た。
・装置 :日本ウォーターズ社製 2695セパレ−ションモジュール
(Aliance GPC マルチシステム)
・カラム :東ソー社製 TSKgel Super H4000
TSKgel Super H2000
・溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
・流速 :0.6ml/分
・検出器 :Shodex RI−104
・カラム恒温槽温度:40℃
・標準物質 :ポリスチレン
<成分(A)の塩化物イオン含有量>
エルレンマイヤーフラスコに試料(第1成分(A−1))36.500gをはかり取り、エタノール50ml、トルエン50ml、指示薬としてメチルオレンジ数滴を加え、0.1mol/L水酸化カリウム溶液を液の色が赤色から燈黄色に変わるまで(弱酸性になるまで)滴下した。さらにMohr指示薬(7%クロム酸カリウム溶液)を数滴加え、0.1mol/L硝酸銀溶液で滴定を行った。液の色が黄色から赤色に変わったときを終点とした。試料ブランクを別途滴定しておき、塩化物イオン含有量を以下の式により求めた。第1成分(A−2)〜(A−16)の塩化物イオン含有量も同様に算出した。
塩化物イオン含有量(質量ppm)=[(試料の0.1mol/L硝酸銀水溶液での滴定量(ml)−試料ブランクの0.1mol/L硝酸銀水溶液での滴定量(ml))×10-3×0.1(mol/L)×35.5(g/mol))]÷試料量(g)×106
<成分(A)のSiO2含有量>
磁性るつぼに試料(第1成分(A−1))を8.000gはかり取り、メタノール5ml、1N−塩酸2mlを加えて攪拌した。ガラス棒で攪拌しながら10%炭酸アンモニウムをゲル化するまで少しずつ加えた。得られたゲル状の物質を105℃で2時間加熱し、水分が完全に除去した。その後、800℃で1時間加熱し、室温まで冷却後、重さを量った。第1成分(A−2)〜(A−16)のSiO2量も同様に算出した。
SiO2含有量(質量%)=加熱後のSiO2質量(g)÷試料量(g)×100
<ケイ素原子1molに対しての塩化物イオンの量>
上述の成分(A)中の塩化物イオン含有量及びSiO2含有量をモルに換算することで、ケイ素原子1molに対しての塩化物イオンの量(mmol)を算出した。
Figure 0006726469
[調製例2−1]〜第2成分(B)(ペースト成分(B−1))の調製〜
有機溶剤として7.92質量部のキシレン、3.96質量部の酢酸ブチルおよび3.96質量部のイソブチルアルコール、着色顔料として0.12質量部のカーボンブラック MA−100、顔料として15.56質量部のカリ長石(セラミックスパウダーOF−T)、ならびに沈降防止剤として0.48質量部のTIXOGEL MPZをポリエチレン製容器に仕込み、ガラスビーズを加えてペイントシェーカーにて2時間振とうした。次いで、球状亜鉛粉末として28質量部のF−2000を加えて、さらに5分間振とうして顔料成分を分散させた。その後、80メッシュの網を用いてガラスビーズを除去してペースト成分(B−1)を調製した。
[調製例2−2]〜第2成分(B)(ペースト成分(B−2))の調製〜
有機溶剤として6.63質量部のキシレン、3.32質量部の酢酸ブチルおよび4.38質量部のイソブチルアルコール、顔料として4.24質量部の酸化亜鉛(酸化亜鉛3種)、ならびに沈降防止剤として1.33質量部のTIXOGEL MPZをポリエチレン製容器に仕込み、ガラスビーズを加えてペイントシェーカーにて2時間振とうした。次いで、球状亜鉛粉末として16.96質量部のF−2000および鱗片状亜鉛粉末として4.24質量部のStandart Zinc Flake GTTを加えて、さらに5分間振とうして顔料成分を分散させた。その後、80メッシュの網を用いてガラスビーズを除去してペースト成分(B−2)を調製した。
[実施例1〜10、比較例1〜6]〜一次防錆塗料組成物の調製〜
第1成分(A)および第2成分(B)を、表2に記載された割合(質量部)でポリエチレン製容器に仕込み、ハイスピードディスパーで10分間分散処理を行い、一次防錆塗料組成物を調製した。
[評価方法・評価基準]
(1)耐白化性
予め40℃に加温されたサンドブラスト処理板(JIS G3101,SS400、寸法:150mm×70mm×2.3mm)を、室内にて、各一次防錆塗料組成物で、電磁式膜厚計で測定される平均乾燥膜厚が15μm(実施例10のみ10μm)となるように塗装し、塗装直後に槽内温度が50℃に設定された乾燥炉内に5分間静置した後、塗膜が形成された処理板を乾燥炉から取り出した。
その直後に水道水を塗膜表面に数滴垂らし、次いで前記処理板を12時間静置した後、水道水を垂らした箇所の塗膜の外観を目視で確認し、その箇所が白化した程度を下記3段階で評価した。
3点:白化が認められない
2点:僅かに白化が認められる
1点:はっきり白化が認められる
なお平均乾燥膜厚は、耐白化性の評価用に使用したサンドブラスト処理板とは別に準備した冷間圧延鋼板(JIS G3141、SPCC−SB、寸法:150mm×70mm×0.8mm)を耐白化性の評価と同条件で塗装し、塗膜を十分に硬化させた後、電磁式膜厚計((株)ケット科学研究所製)で四方1cm以内を均一に20点測定した平均値である。
(2)耐白化性試験で水が接触した箇所の防錆性
上述の耐白化性の評価を行った防錆塗膜付き処理板を、屋外の暴露試験場に、水平に設置し、塗膜に3ヶ月間、常時水道水をかけた。上述の耐白化性の評価における白化部に対する、発錆した試験板表面の面積比率(%)を測定して、発錆の状態を評価した。評価基準は下記のとおりである。
10点:発錆無し、または発錆面積が白化部の全面積の0.01%以下
9点:発錆面積が白化部の全面積の0.01%を超え0.03%以下
8点:発錆面積が白化部の全面積の0.03%を超え0.1%以下
7点:発錆面積が白化部の全面積の0.1%を超え0.3%以下
6点:発錆面積が白化部の全面積の0.3%を超え1%以下
5点:発錆面積が白化部の全面積の1%を超え3%以下
4点:発錆面積が白化部の全面積の3%を超え10%以下
3点:発錆面積が白化部の全面積の10%を超え16%以下
2点:発錆面積が白化部の全面積の16%を超え33%以下
1点:発錆面積が白化部の全面積の33%を超え50%以下
(3)ポットライフ
第1成分(A)および第2成分(B)を、合計の重量が300gになるようにポリエチレン製容器に仕込み、ハイスピードディスパーで10分間撹拌して一次防錆塗料組成物を調製した。一次防錆塗料組成物をそのまま、開封系で室内(23℃)にて3日間静置し、3日後に一次防錆塗料組成物内の皮張りの状態を確認し、その程度を下記3段階で評価した。
3点:皮張りは認められない。
2点:ごく僅かに皮張りが認められる。
1点:はっきりと皮張りが認められる。
Figure 0006726469

Claims (6)

  1. 第1成分(A)および第2成分(B)から構成された2液型一次防錆塗料であって、
    前記第1成分(A)が、重量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000であるシロキサン系結合剤(a)、および前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmolの割合の塩化物イオンを含有し、
    前記第2成分(B)が亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(c)を含有し、
    前記第1成分(A)が、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、および酢酸エステル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤(b1)を含有する溶剤(b)を含有する
    2液型一次防錆塗料。
  2. 前記第1成分(A)中の前記溶剤(b1)の含有量が1〜50質量%である請求項1に記載の2液型一次防錆塗料。
  3. 前記溶剤(b1)がメチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよび酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の2液型一次防錆塗料。
  4. 前記シロキサン系結合剤(a)がアルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物の縮合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の2液型一次防錆塗料。
  5. 重量平均分子量(Mw)が4,000〜10,000であるシロキサン系結合剤(a)と、
    ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、および酢酸エステル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤(b1)を含有する溶剤(b)と、
    亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(c)と、
    前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して0.01〜5.0mmolの割合の塩化物イオンと
    を含有する一次防錆塗料組成物の製造方法であって、
    請求項に記載の2液型一次防錆塗料を準備し、次いで前記第1成分(A)と、前記第2成分(B)とを混合する、一次防錆塗料組成物の製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法によって一次防錆塗料組成物を製造し、基材上に前記一次防錆塗料組成物の膜を形成し、次いで硬化させる基材の防錆方法。
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