JP6767150B2 - 防錆塗膜付き鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等における鋼板加工工程で行われる鋼板の前処理により製造される防錆塗膜付き鋼板の製造方法に関する。
従来、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の大型鉄鋼構造物の建造中の発錆を防止する目的で、鋼板表面に一次防錆塗料が塗装されている。このような一次防錆塗料としては、ウォッシュプライマー、ノンジンクエポキシプライマー、エポキシジンクリッチプライマー等の有機一次防錆塗料、ならびにシロキサン系結合剤および亜鉛粉末を含有する無機ジンク一次防錆塗料が知られている。これらの一次防錆塗料のうち、溶接性に優れた無機ジンク一次防錆塗料が最も広く用いられている。
たとえば特許文献1には、重量平均分子量(Mw)が1000〜6000であるシロキサン系結合剤(a)と、鱗片状亜鉛系粉末(b)を含む亜鉛末(B)とを含有し、顔料体積濃度(PVC)が35〜60%であり、(B)と(A)との質量比((B)/(A))が1.0〜5.0である一次防錆塗料組成物で鋼板表面を塗装する方法が開示されている。
国際公開第2014/014063号
シロキサン系結合剤および亜鉛粉末を含有する無機ジンク一次防錆塗料組成物で塗装された鋼板は、塗装後の短時間(約20分以内)のうちに屋外に搬出されることがあるが、その際に塗装された鋼板が降雨等により水に濡れると、濡れた部分が白く変色するという現象(以下「白化」ともいう。)が生じることがあった。例えば、塗装後早期での水との接触によって著しい白化が発生し、この白化は、塗膜の防錆性、付着性の低下を引き起こす。白化が発生した塗膜には表面処理が必要となるため、鉄鋼構造物建造における工数が増加し、工期が長くなるといった問題がある。
また、冬季等の低温期では、塗料を塗布して形成された膜の硬化乾燥が遅いために、塗膜に耐ダメージ性(外圧による塑性変形や破壊が発生し難いという性質)が発現するまでに時間を要していた。そのため、塗料を塗布して形成された膜の硬化乾燥性を向上させる必要、換言すると後述する硬化乾燥時間を短くする必要があった。
本発明は、従来技術におけるこのような問題を解決しようとするものであって、優れた硬化乾燥性で、白化を抑制し易い防錆塗膜を備えた鋼板を製造する方法であって、特に低い気温の下での防錆塗膜付き鋼板の製造に有用な方法を提供することを目的としている。
本発明者らは鋭意研究したところ、絶対湿度を固定して比較した際に、鋼板温度が露点温度よりも高いほど、優れた硬化乾燥性(すなわち、短い硬化乾燥時間)で防錆塗膜を製造できるが、上述の白化が生じ易いこと、およびこのような場合であってもシロキサン系結合剤として分子量が比較的高いものを使用すれば白化を抑制し易いことを見い出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
鋼板温度と露点温度との温度差(鋼板温度−露点温度)(℃)が(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃または1℃のいずれか低くない方の温度以上である温度条件下で、鋼板に、重量平均分子量(Mw)が5,000以上であるシロキサン系結合剤(a)と亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)とを含有する防錆塗料組成物を塗布し、次いで硬化させる、防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
[2]
前記防錆塗膜付き鋼板が前記防錆塗料組成物の塗布後20分以内に屋外に曝される防錆塗膜付き鋼板である、上記[1]に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
[3]
前記防錆塗膜が前記防錆塗料組成物の塗布後20分以内に液体の水と接触する防錆塗膜である、上記[1]または[2]に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
[4]
5℃以下の気温の下で実施される上記[1]〜[3]のいずれかに記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
[5]
前記温度差が(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃または10℃のいずれか低くない方の温度以上である上記[1]〜[4]のいずれかに記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
[6]
前記シロキサン系結合剤(a)の重量平均分子量(Mw)が5,000〜10,000である上記[1]〜[5]のいずれかに記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
[7]
前記シロキサン系結合剤(a)がアルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物の縮合物である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
[8]
前記防錆塗料組成物が一次防錆塗料組成物である上記[1]〜[7]のいずれかに記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
本発明の製造方法は、優れた硬化乾燥性で、白化を抑制し易い防錆塗膜を備えた鋼板を製造することができるものであり、冬季などの気温が低い状況下で防錆塗膜付き鋼板を製造する際に特に有用である。
図1は、防錆塗膜付き鋼板を製造する際の絶対湿度および鋼板温度と露点温度との温度差ならびに塗膜の硬化乾燥時間の関係を示す。
以下、本発明に係る防錆塗膜付き鋼板の製造方法をより詳細に説明する。
本発明に係る防錆塗膜付き鋼板の製造方法では、鋼板温度と露点温度との温度差(℃)(すなわち、鋼板温度(℃)から露点温度(℃)を引いた値)が、(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃または1℃のいずれか低くない方の温度以上、好ましくは(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃または10℃のいずれか低くない方の温度以上、さらに好ましくは(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃または15℃のいずれか低くない方の温度以上である温度条件下で、鋼板に、後述する防錆塗料組成物を塗布し、次いで硬化させて、防錆塗膜付き鋼板を製造する。
なお、本発明において鋼板温度、露点温度、気温および絶対湿度とは、特に断りのない限り、鋼板に防錆塗料組成物を塗布し次いで硬化させる際の、温度ないし湿度である。
(製造条件)
<温度差の条件>
前記温度差の条件は、以下の実験から導出したものである。
予め所定の鋼板温度に設定された冷間圧延鋼板(JIS G3141、SPCC−SB、寸法:150mm×70mm×0.8mm)に、所定の温度および湿度の条件下で、後述する実施例で製造した一次防錆塗料組成物(3)を、乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、塗布直後から各温度および湿度の条件を維持しながら静置して塗膜を硬化させ、防錆塗膜付き鋼板を製造した。防錆塗膜付き鋼板の製造は、温度および湿度の条件を以下の範囲で変化させ、様々な条件ごとに行った。
気温:0〜30℃
湿度:10〜90RH%
絶対湿度:0.5〜27.4g/m3
露点:−27.1〜28.2℃
鋼板温度:0〜30℃
鋼板温度−露点:1.3〜57.1℃
その際に、硬化乾燥時間を測定した。この硬化乾燥時間とは、塗布終了時から硬化乾燥の状態、すなわち前記膜が上向きとなるように鋼板を水平に設置し、親指を、試験片に対して腕を重力方向に伸ばして最大の力で前記膜の表面に押し付けながら90度回転させたとき、前記膜にゆるみ、はがれ、しわ及びその他のねじれの兆候が認められない状態に達するまでの時間である。この測定は、塗布終了後に1分ごとに行った。
硬化乾燥時間は、4〜20分であった。図1に絶対湿度(g/m3)と鋼板温度−露点温度(℃)との関係を示す。
図1から、絶対湿度を固定すると、鋼板温度と露点温度との温度差(鋼板温度−露点温度)が大きいほど硬化乾燥時間が短い、すなわち硬化乾燥性が優れることがわかる。また、硬化乾燥時間が11分のデータの間には、
鋼板温度−露点温度(℃)=−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25(℃)
で表される相関性が認められる。なお、Lnは自然対数を表す。そこで本発明においては、良好な硬化乾燥性で防錆塗膜を製造するために、前記温度差が(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃以上となる温度条件下で、鋼板に、防錆塗料組成物を塗布し、次いで硬化させることとした。
なお、前記一次防錆塗料組成物(3)を他の防錆塗料組成物に変更しても、前記一次防錆塗料組成物(3)を用いた場合とほぼ同様の硬化乾燥性が発揮される。
さらに、絶対湿度が低いことの多い、冬季などの気温が低い状況下(たとえば5℃以下)でも良好な硬化乾燥性で防錆塗膜を製造し易くするために、前記温度差を(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃または1℃(好ましくは10℃、さらに好ましくは15℃)以上のいずれか低くない方の温度以上に設定することとした。
上記の温度条件下で実施される本発明の防錆塗膜付き鋼板の製造方法によれば、優れた硬化乾燥性で防錆塗膜付き鋼板を製造することができる。たとえば、防錆塗料組成物およびこれを塗布し硬化させる際の絶対湿度を固定して比較した際に、上記温度条件を満たさずに防錆塗膜付き鋼板を製造する場合と比べて、優れた硬化乾燥性で防錆塗膜付き鋼板を製造することができる。
前記温度差の上限は、造膜性の観点からは、たとえば40℃である。
また、本発明の他の態様では、上述した本発明に係る防錆塗膜付き基板の製造方法は、前記温度差を1℃以上、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上に変更して実施される。
前記温度差は、たとえば鋼板を加熱することによって大きくすることができる。
本発明の製造方法は、絶対湿度が低いことの多い、気温が特に低い(たとえば5℃以下)状況下で、優れた硬化乾燥性で防錆塗膜付き鋼板を製造する場合に特に有用である。ただし、実際の塗装環境を考慮すると気温の下限は、たとえば−10℃であってもよい。
<温度差以外の条件>
前記鋼板としては、船舶、海洋構造物、プラント、橋梁、陸上タンク等の大型構造物用の鋼板が挙げられる。前記鋼板には、大型構造物の建造工程の溶断、溶接などに支障を与えることなく、錆から守られることが求められる。さらに防錆塗膜が設けられた鋼板には、耐白化性も求められる。前記鋼板には、通常、ISO 8501−1における除錆度Sa2 1/2以上に相当する条件のブラスト処理が行われる。
前記防錆塗料組成物は、防錆塗膜付き鋼板の加工容易性の観点からは、電磁式膜厚計によって測定される平均乾燥膜厚が好ましくは30μm以下、より好ましくは5〜25μmとなるように塗布される。
前記防錆塗料組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、エアスプレー、エアレススプレー等を用いた従来公知の方法を適用することができる。
塗装機としては、一般的に造船所、製鉄所等で塗装する場合、主にエアレススプレーやライン塗装機が用いられる。ライン塗装機は、ライン速度、塗装機内部に設置されたエアスプレー、エアレススプレー等の塗装圧力、スプレーチップのサイズ(口径)の塗装条件によって、膜厚の管理をする。
前記防錆塗料組成物は、鋼板上に塗布された後、硬化される。硬化方法としては、特に制限はなく、従来公知の硬化方法を適用することができる。たとえば、鋼板上に塗布された前記防錆塗料組成物は、空気中に(必要に応じて加熱しながら)放置すると、溶剤が揮発し、シロキサン系結合剤(a)が組成物中の水分によって加水分解縮合反応することにより、硬化される。
(防錆塗料組成物)
<シロキサン系結合剤(a)>
本発明においては、鋼板にシロキサン系結合剤と亜鉛系粉末とを含有する防錆塗料組成物を塗布する際に、前記シロキサン系結合剤として、重量平均分子量(Mw)が5,000以上であるシロキサン系結合剤(a)が使用される。前記シロキサン系結合剤(a)を使用すると、防錆塗膜の白化を抑制し易い。
一方、前記シロキサン系結合剤(a)の重量平均分子量(Mw)は、防錆塗料組成物が十分なポットライフを有することから、好ましくは10,000以下である。
なお、重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の値であり、測定条件の詳細は後述する実施例の欄に記載する。
シロキサン系結合剤から形成された塗膜(たとえば、アルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物の部分加水分解縮合物からなる塗膜)においては、空気中の水分によって残存する加水分解性基における加水分解縮合が徐々に進行する。Mwが小さいシロキサン系結合剤から形成された塗膜は、Mwが大きいシロキサン系結合剤から形成された塗膜と比べて加水分解縮合反応による体積収縮が大きいため、空気中の水分ではなく雨水に濡れるなどして急激に加水分解縮合反応が進行すると、塗膜内に体積収縮に伴う収縮応力が急激に発生して塗膜内に微細なクラックが多数生じ、このクラックでの光の乱反射により上記の白化が生じるものと推測される。
前記シロキサン系結合剤(a)としては、たとえば、アルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物の縮合物が挙げられ、具体的には前記化合物の部分加水分解縮合物および前記化合物の縮合物の部分加水分解縮合物が挙げられる。
前記アルキルシリケートとしては、たとえば、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラ−n−プロピルオルトシリケート、テトラ−i−プロピルオルトシリケート、テトラ−n−ブチルオルトシリケート、およびテトラ−sec−ブチルオルトシリケート等の化合物、ならびにメチルポリシリケート、およびエチルポリシリケート等の化合物が挙げられる。
前記メチルトリアルコキシシランとしては、たとえば、メチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシラン等の化合物が挙げられる。
前記シロキサン系結合剤(a)としては、これらの中でも、アルキルシリケートの縮合物が好ましく、テトラエチルオルトシリケートの縮合物がより好ましく、テトラエチルオルトシリケートの初期縮合物であるエチルシリケート40(商品名;コルコート(株)製)の部分加水分解縮合物が特に好ましい。
シロキサン系結合剤(a)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シロキサン系結合剤(a)は従来公知の方法を利用して製造することができ、たとえば、アルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランから選択される少なくとも1種の化合物を溶剤中で、適量の水および触媒の存在下で重量平均分子量(Mw)が所望の値になるように部分加水分解縮合反応させることにより、シロキサン系結合剤(a)を含む後述する第1成分(A)の形で製造することができる。
前記触媒としては、塩酸等の後述する触媒が挙げられ、加熱によって容易に残存量を減らし前記第1成分(A)の貯蔵安定性を向上させられるという観点からは、塩酸が好ましい。
前記シロキサン系結合剤(a)の含有量は、前記シロキサン系結合剤(a)の質量をSiO2の質量に換算し(すなわち、前記シロキサン系結合剤(a)の質量を前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるSi原子の物質量(mol)と同量のSiO2の質量に換算し)、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、通常2〜90質量%、好ましくは3〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%である。シロキサン系結合剤(a)の含有量が前記範囲にあると、得られる塗膜は鋼板素地との付着性、上塗り付着性、防錆性、耐熱性に優れる。なお、前記防錆塗料組成物の固形分とは、溶剤等の揮発成分が含まれた組成物を熱風乾燥機中で、105℃で3時間乾燥して溶剤等を揮散させたときの残分である。
<他の結合剤>
前記防錆塗料組成物は、本発明の目的・効果を損わない範囲で、前記シロキサン系結合剤(a)以外の他の結合剤を含有してもよい。他の結合剤としては、たとえば、ポリビニルブチラール樹脂およびアクリル樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂としては、たとえば、エスレックBM−1、エスレックBL−1(商品名;積水化学(株)製)が挙げられ、アクリル樹脂としては、ダイヤナールBR−106(商品名;三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。前記他の結合剤の含有量は、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは0.05〜4.0質量%、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。
<溶剤>
前記防錆塗料組成物は、塗装を容易にするなどの目的で、好ましくは溶剤を含む。
前記溶剤としては、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、およびセロソルブ系溶剤等の塗料分野で通常使用されている有機溶剤が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびブタノールが挙げられる。芳香族系溶剤としては、たとえば、ベンゼン、キシレン、およびトルエンが挙げられる。セロソルブ系溶剤としては、たとえば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、およびブチルセロソルブが挙げられる。
前記溶剤の含有量は、前記防錆塗料組成物の量を100質量%とすると、通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%である。
また、前記溶剤は、好ましくはケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、および酢酸エステル系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種の溶剤を、たとえば1〜80質量%、好ましくは3〜50質量%、より好ましくは6〜30質量%の割合で含有する。これらの溶剤が含まれると、ポットライフを向上させて塗装の作業性を向上させることができる。これは、前記シロキサン系結合剤(a)が、前記シロキサン系結合剤(a)が有することのあるシラノール基と前記ケトン系溶剤等の酸素原子との水素結合によって安定化され、その縮合反応が抑制されるためであると推測される。
前記ケトン系溶剤としては、好ましくはメチルエチルケトンが挙げられ、グリコールエーテル系溶剤としては、好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられ、酢酸エステル系溶剤としては、好ましくは酢酸エチルが挙げられ、これらの中でも、ケトン系溶剤が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<水>
前記防錆塗料組成物は、前記シロキサン系結合剤(a)を加水分解縮合反応により硬化させて塗膜を形成させるために、水を含んでいてもよい。水の量(後述する塩酸中の水の量を含む)は、従来技術を参酌するなどして適宜設定すればよく、たとえば前記シロキサン系結合剤(a)中のケイ素原子1molに対して0.1〜4.0molである。
<触媒>
前記防錆塗料組成物は、触媒を含有していてもよい。前記触媒としては、たとえば、塩酸、硫酸、シュウ酸、塩化第二鉄、および塩化亜鉛等が挙げられる。
これらの触媒は、適量の水の存在下でシロキサン結合剤(a)を所望の重量平均分子量まで部分加水分解反応させる反応開始剤としても、鋼板に塗布された前記防錆塗料組成物から形成された防錆塗膜中のシロキサン結合剤のさらなる加水分解縮合を進行させるための触媒としても作用する。
前記触媒が塩酸、塩化第二鉄、塩化亜鉛等の塩素を含む触媒の場合、その触媒の含有量は、塩化物イオン含有量が前記シロキサン系結合剤(a)に含まれるケイ素原子1molに対して好ましくは0.01〜5.0mmol、より好ましくは0.2〜4.5mmolの割合となるような量である。塩素を含む触媒の含量が上記範囲にあると、鋼板に塗布された前記防錆塗料組成物から形成される防錆塗膜中のシロキサン結合剤のさらなる加水分解縮合反応を十分に進行させることができ、かつ上述した防錆塗膜の耐白化性の効果をより一層高めることができる。
塩素を含有しない触媒を併用する場合、その含有量は、上述のようにSiO2の質量に換算した前記シロキサン系結合剤(a)の100質量部に対し、通常0.03〜0.3質量部、好ましくは0.07〜0.2質量部である。
触媒の含有量が前記範囲にあると、前記防錆塗料組成物のポットライフが長く、またこの防錆塗料組成物から形成される塗膜は耐白化性に優れている。
<亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)>
前記亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)(以下「亜鉛系粉末(b)」ともいう。)は、鋼板の発錆を防止する防錆顔料として作用する。
亜鉛合金としては、たとえば、亜鉛とアルミニウム、マグネシウムおよび錫から選択される少なくとも1種との合金が挙げられ、好ましくは亜鉛−アルミニウム合金、亜鉛−錫合金が挙げられる。
前記亜鉛系粉末(b)を構成する粒子の形状としては、球状や鱗片状などの様々な形状が挙げられる。
粒子形状が球状である亜鉛粉末の市販品としては、たとえば、F−2000(商品名;本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
粒子形状が鱗片状である亜鉛粉末の市販品としては、たとえば、STANDART Zinc flake GTT、STANDART Zinc flake G(商品名;ECKART GmbH製)が挙げられる。粒子形状が鱗片状である亜鉛合金粉末の市販品としては、たとえば、STAPA 4 ZNAL7(亜鉛とアルミニウムとの合金)、STAPA 4 ZNSN30(亜鉛と錫との合金)(商品名;ECKART GmbH製)が挙げられる。
亜鉛系粉末(b)としては、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末の一方または両方を用いることができ、亜鉛粉末および亜鉛合金粉末のそれぞれも1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
亜鉛系粉末(b)の含有量は、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、通常10〜98質量%、好ましくは30〜97質量%、より好ましくは40〜95質量%である。亜鉛系粉末(b)の含有量が前記範囲にあると、得られる塗膜は防錆性に優れる。
<その他の顔料>
前記防錆塗料組成物は、様々な塗膜特性を確保する目的で、前記亜鉛系粉末(b)以外のその他の顔料を含有してもよい。その他の顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の顔料としては、たとえば、補助的に塗膜の防錆性を確保する目的で使用される、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)以外の防錆顔料が挙げられる。
防錆顔料としては、たとえば、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、シアナミド亜鉛系化合物およびホウ酸塩化合物が挙げられる。
防錆顔料の市販品としては、たとえば、リン酸亜鉛系(アルミニウム)化合物としてLFボウセイCP−Z(商品名;キクチカラー(株)製)、亜リン酸亜鉛系(カルシウム)化合物としてプロテクスYM−70(商品名;太平化学産業(株)製)、亜リン酸亜鉛系(ストロンチウム)化合物としてプロテクスYM−92NS(商品名;太平化学産業(株)製)、トリポリリン酸アルミニウム系化合物としてKホワイト#84(商品名;テイカ(株)製)、シアナミド亜鉛系化合物としてLFボウセイZK−32(キクチカラー(株)製)が挙げられる。
前記その他の顔料としては、金属粉末(ただし、モリブデン粉末、モリブデン合金粉末を除く。)、亜鉛化合物粉末(ただし、リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、シアナミド亜鉛系化合物を除く。)、鉱物粉末、および熱分解ガスを発生する無機化合物粉末から選択される少なくとも1種の無機粉末も挙げられる。
金属粉末は、導電性を有し、鉄イオンや亜鉛イオンの移動を容易にして塗膜の防錆効果を高めるという作用を有する。金属粉末としては、たとえば、Fe−Si粉、Fe−Mn粉、Fe−Cr粉、磁鉄粉、リン化鉄が挙げられる。金属粉末の市販品としては、たとえば、フェロシリコン(商品名)、フェロマンガン(商品名)、フェロクロム(商品名)、砂鉄粉(以上、キンセイマテック(株)製)、フェロフォス2132(オキシデンタル ケミカルコーポレーション製)が挙げられる。
亜鉛化合物粉末は、亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)のイオン化(Zn2+の生成)の程度等の、酸化反応の活性度を調整する作用があると考えられている。本発明の防錆塗料組成物が亜鉛化合物粉末を含有する場合、前記組成物には適切な防錆性が付与される。
亜鉛化合物粉末としては、たとえば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛等の粉末が挙げられる。亜鉛化合物粉末の市販品としては、たとえば、酸化亜鉛1種(堺化学工業(株)製)、酸化亜鉛3種(ハクスイテック(株)製、堺化学工業(株)製)、Sachtolich HD (硫化亜鉛;商品名;Sachleben Chemie GmbH製)が挙げられる。
鉱物粉末としては、たとえば、チタン鉱物粉、シリカ粉、ソーダ長石、カリ長石、珪酸ジルコニウム、珪灰石、および珪藻土が挙げられる。鉱物粉末の市販品としては、たとえば、ルチルフラワーS、イルメナイト粉、A−PAX 45M、セラミックパウダーOF−T、アプライト(以上、キンセイマテック(株)製)、シリカMC−O(丸尾カルシウム(株)製)、バライトBA(堺化学(株)製)、ラジオライト(昭和化学工業(株))、およびセライト545(ジョンマンビル社製)が挙げられる。
熱分解ガスを発生する無機化合物粉末とは、熱分解、たとえば500〜1500℃での熱分解によってガス、たとえばCO2ガス、F2ガスを発生する無機化合物の粉末である。前記無機化合物粉末は、これを含有する塗料組成物から形成された塗膜を有する鋼板を溶接する際に、溶接時の溶融プール内において、結合剤等に含まれる有機分から発生したガスから生じた気泡を、前記無機化合物粉末由来のガスとともに、溶融プール内から除去する作用を有する。前記無機化合物粉末としては、たとえば、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウムが挙げられる。前記無機化合物粉末の市販品としては、たとえば、蛍石400メッシュ(キンセイマテック(株)製)、NS#400(日東粉化工業(株)製)、炭酸マグネシウム(富田製薬(株)製)、および炭酸ストロンチウムA(本荘ケミカル(株)製)が挙げられる。
その他の顔料の含有量は、防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。
<モリブデン、モリブデン化合物>
前記防錆塗料組成物は、モリブデン(金属モリブデン)、モリブデン化合物の一方または双方を含有してもよい。これらは、亜鉛の酸化防止剤(いわゆる白錆抑制剤)として作用する。
白錆の発生を低減することができるという観点からは、本発明の防錆塗料組成物は、亜鉛の酸化防止剤(いわゆる白錆抑制剤)として、モリブデン(金属モリブデン)、モリブデン化合物の一方または双方を含有してもよい。
モリブデン化合物としては、たとえば、三酸化モリブデン等のモリブデン酸化物、硫化モリブデン、モリブデンハロゲン化物、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、珪モリブデン酸、モリブデン酸のアルカリ金属塩、リンモリブデン酸のアルカリ金属塩、珪モリブデン酸のアルカリ金属塩、モリブデン酸のアルカリ土類金属塩、リンモリブデン酸のアルカリ土類金属塩、珪モリブデン酸のアルカリ土類金属塩、モリブデン酸のマンガン塩、リンモリブデン酸のマンガン塩、珪モリブデン酸のマンガン塩、モリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩、リンモリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩、および珪モリブデン酸の塩基性窒素含有化合物塩が挙げられる。
モリブデン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モリブデンおよびモリブデン化合物の合計の含有量は、前記亜鉛系粉末(b)の量を100質量部とすると、好ましくは0.05〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。
<ガラス粉末>
前記防錆塗料組成物は、ガラス粉末を含有してもよい。ガラス粉末は、特にガラス粉末が400〜800℃の軟化点を有する場合、塗膜が高温、たとえば400〜900℃で加熱された際に亜鉛の酸化防止剤として作用する。
ガラス粉末とは、一般的にSiO2、B23、Al23、ZnO、BaO、MgO、CaO、SrO、Bi23、Li2O、Na2O、K2O、PbO、P25、In23、SnO、CuO、Ag2O、V25、およびTeO2等のガラスを構成する化合物を約1000〜1100℃で所定の時間加熱溶融し、冷却後、粉砕装置で粉末状に整粒したものである。PbOもガラスを構成する化合物として用いることができるが、環境に対し悪影響となる恐れがあるため、用いないことが望ましい。
ガラス粉末の市販品としては、たとえば、NB122A(商品名、軟化点400℃)、AZ739(商品名、軟化点605℃)、およびPFL20(商品名、軟化点700℃)(以上、セントラル硝子(株)製)が挙げられる。またガラスを構成する成分の一つであるB23は、それ単独で軟化点が約450℃のガラス状の物質であり、ガラス粉末として用いることができる。B23の市販販品としては、たとえば、酸化ほう素(商品名;関東化学(株)製 鹿1級試薬)が挙げられる。
ガラス粉末は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ガラス粉末の含有量は、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは0.05〜26質量%、さらに好ましくは0.15〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%である。
<着色顔料>
前記防錆塗料組成物は、塗膜に所望の色相を得ることを目的として、着色顔料を含有してもよい。着色顔料としては、たとえば、酸化チタン、弁柄、カーボンブラック、銅クロム系黒色顔料、フタロシアニングリーン、およびフタロシアニンブルーが挙げられる。着色顔料の市販品としては、たとえば、TITONE R−5N(堺化学工工業(株)製)、弁柄No.404(森下弁柄工業(株)製)、三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、ダイピロキサイドブラック #9510(大日精化工業(株)製)、Heliogen Green L8690(BASFジャパン(株)製)、およびFASTOGEN Blue 5485(DIC(株)製)が挙げられる。
着色顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色顔料の含有量は、前記防錆塗料組成物の固形分量を100質量%とすると、好ましくは0.08〜8.0質量%、より好ましくは0.15〜7.0質量%である。
<添加剤>
前記防錆塗料組成物は、添加剤を含有してもよい。添加剤とは、塗料や塗膜の性能を向上させ、または保持するために用いられる材料である。添加剤としては、たとえば、沈降防止剤、硬化促進剤、乾燥剤、流動性調整剤、消泡剤、分散剤、色分れ防止剤、皮張り防止剤、可塑剤、および紫外線吸収剤が挙げられる。添加剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
沈降防止剤としては、たとえば、有機ベントナイト系、酸化ポリエチレン系、ヒュームドシリカ系、またはアマイド系のものが挙げられる。沈降防止剤の市販品としては、たとえば、TIXOGEL MPZ(商品名;BYK Additives GmbH製)、BENTONE HD(商品名;Elementis Specialties, Inc.製)、ディスパロン4200−20(商品名)、ディスパロンA630−20X(商品名)(以上、楠本化成(株)製)、およびAEROSIL 200(商品名;日本アエロジル(株)製)が挙げられる。沈降防止剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
添加剤の含有量は、前記防錆塗料組成物中に、好ましくは0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.3〜2.5質量%である。
<防錆塗料組成物>
本発明の防錆塗料組成物は、好ましくは一次防錆塗料組成物である。
前記防錆塗料組成物は、通常、互いに接触しないように収容された、前記シロキサン系結合剤(a)を含有する第1成分(A)(「主剤成分」ともいう。)、および前記亜鉛系粉末(b)を含有する第2成分(B)(「ペースト成分」ともいう。)を有する防錆塗料(すなわち、2液型の防錆塗料)を準備し、塗装前に前記第1成分(A)と前記第2成分(B)とを混合することによって調製される。
前記第1成分(A)と前記第2成分(B)との比率は、前記第1成分(A)の前記シロキサン系結合剤(a)の含有量、前記第2成分(B)の亜鉛系粉末(b)の含有量等により一概には決定されないが、前記第1成分(A)と前記第2成分(B)との合計を100質量%とすると、第1成分(A)が通常10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、第2成分(B)が通常20〜90質量%、好ましくは30〜80質量%となる比率である。
前記第1成分(A)および前記第2成分(B)に含まれる各成分の好ましい態様等の詳細は、上述のとおりである。
前記第1成分(A)中の前記シロキサン系結合剤(a)の量は、前記同様にSiO2の質量に換算して通常5〜20質量%、好ましくは10〜20質量%であり、この範囲であれば第1成分(A)の貯蔵安定性が優れる。
前記第1成分(A)は、通常、上述した溶剤を含む。また前記第1成分(A)は、上述した他の結合剤、水、触媒および添加剤から選択される少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。
前記第1成分(A)は、各成分を従来公知の方法で混合することにより調製できる。また、上述したように、前記シロキサン系結合剤(a)の原料から、前記シロキサン系結合剤(a)を含む前記第1成分(A)を調製してもよい。
前記第2成分(B)中の前記亜鉛系粉末(b)の量(前記第2成分(B)の量を100質量%とする。以下も同様。)は、通常30〜80質量%、好ましくは40〜70質量%である。
前記第2成分(B)は、通常、上述した溶剤を含む。また前記第2成分(B)は、上述したその他の顔料、モリブデンまたはモリブデン化合物、ガラス粉末、着色顔料および添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。
前記第2成分(B)は、各成分を従来公知の方法で混合することにより調製できる。
本発明の防錆塗料組成物は、塗装現場で調色の自由度を上げるために、前記第1成分(A)および前記第2成分(B)に加えて、さらに第3成分(C)を有してもよい。
前記第3成分(C)は、前記着色顔料を含有しており、必要に応じて、その他の顔料、ガラス粉末、モリブデン、モリブデン化合物、添加剤、溶剤等から選択される1種または2種以上をさらに含有してもよい。
(防錆塗膜付き鋼板の製造方法の効果等)
上述のように、本発明の製造方法は、優れた硬化乾燥性で、白化の発生を抑制し易い防錆塗膜を備えた鋼板を製造することができるものであり、絶対湿度が低いことの多い、冬季などの気温が低い(たとえば5℃以下)状況下で防錆塗膜付き鋼板を製造する際に特に有用である。
また従来、シロキサン系結合剤および亜鉛粉末を含有する無機ジンク一次防錆塗料組成物で塗装された鋼板は、塗装後の短時間(約20分以内)のうちに屋外に搬出された際に塗装された鋼板が降雨等により水に濡れると、白化が生じることがあったが、本発明の製造方法によれば、防錆塗膜付き鋼板が防錆塗料組成物の塗布後20分以内に屋外に曝される場合、または防錆塗膜が防錆塗料組成物の塗布後20分以内に液体の水と接触する場合であっても防錆塗膜の白化を抑制し易い防錆塗膜付き鋼板を製造することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例等で使用した原料は以下のとおりである。
・アルキルシリケート「エチルシリケート40」:コルコート(株)製
・球状亜鉛粉末「F−2000」:本荘ケミカル(株)製
・沈降防止剤「TIXOGEL MPZ」:BYK Additives GmbH製
・カリ長石「セラミックスパウダーOF−T」:キンセイマテック(株)製
・着色顔料「カーボンブラック MA−100」:三菱化学(株)製
[調製例1]〜主剤成分の調製〜
13.20質量部のエチルシリケート40、2.40質量部のエタノール、1.90質量部の脱イオン水、0.020質量部の35%塩酸、0.020質量部の50%塩化亜鉛水溶液を容器に仕込み、得られた原料混合物を65℃で表1記載の時間攪拌した後、16.46質量部のイソプロピルアルコール、および6.00質量部のメチルエチルケトンを加えて、シロキサン結合剤(a)(アルキルシリケートの縮合物)を含む主剤成分(A−1)を調製した。
また、エチルシリケート40等を含む混合物の撹拌時間を表1に示すように変更したこと以外は前記同様の操作を行い、主剤成分(A−2)〜(A−4)を調製した。
<アルキルシリケートの縮合物の分子量(Mw)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で主剤成分中のシロキサン結合剤(a)の重量平均分子量(Mw)を測定した。
GPCの測定条件は、以下のとおりである。主剤成分を少量取りテトラヒドロフランを加えて希釈し、得られた溶液をメンブレムフィルターで濾過して、GPC測定サンプルを得た。
・装置 :日本ウォーターズ社製 2695セパレーションモジュール
(Aliance GPC マルチシステム)
・カラム :東ソー社製 TSKgel Super H4000
TSKgel Super H2000
・溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
・流速 :0.6ml/分
・検出器 :Shodex RI−104
・カラム恒温槽温度:40℃
・標準物質 :ポリスチレン
測定結果を表1に示す。
Figure 0006767150
[調製例2]〜ペースト成分の調製〜
有機溶剤として7.92質量部のキシレン、3.96質量部の酢酸ブチルおよび3.96質量部のイソブチルアルコール、着色顔料として0.12質量部のカーボンブラック MA−100、顔料として15.56質量部のカリ長石(セラミックスパウダーOF−T)、ならびに沈降防止剤として0.48質量部のTIXOGEL MPZをポリエチレン製容器に仕込み、ガラスビーズを加えてペイントシェーカーにて2時間振とうした。次いで、球状亜鉛粉末として28質量部のF−2000を加えて、さらに5分間振とうして顔料成分を分散させた。その後、80メッシュの網を用いてガラスビーズを除去してペースト成分を調製した。
[調製例3]〜一次防錆塗料組成物の調製〜
40質量部の前記主剤成分(A−1)と60質量部の前記ペースト成分をポリエチレン製容器に仕込み、ハイスピードディスパーで10分間分散処理を行い、一次防錆塗料組成物(1)を調製した。
また、主剤成分(A−1)を40質量部の各主剤成分(A−2)〜(A−4)に変更して前記同様の操作を行い、一次防錆塗料組成物(2)〜(4)をそれぞれ調製した。
<ポットライフの評価>
調製例3と同様の方法により調製した一次防錆塗料組成物を、開封系で室内(23℃)にて3日間静置した後、一次防錆塗料組成物内の皮張りの状態を確認し、その程度を下記3段階で評価した。
3点:皮張りは認められない。
2点:ごく僅かに皮張りが認められる。
1点:はっきりと皮張りが認められる。
[実施例および比較例]
(A)防錆塗膜付き鋼板の製造ならびに耐白化性および防錆性の評価
予め表2に示す鋼板温度に設定された鋼板(サンドブラスト処理板(JIS G3101,SS400、寸法:150mm×70mm×2.3mm))に、表2に示す気温、湿度、絶対湿度および露点温度の条件下で、各一次防錆塗料組成物を、乾燥膜厚が15μmとなるように塗布し、塗布直後から各温度および湿度の条件を維持しながら上述した硬化乾燥時間に達するまで塗膜を硬化させ、防錆塗膜付き鋼板を製造した。鋼板温度は、デジタル表面温度計(安立計器(株)製、製品名HFT−40)を使用して、前記鋼板に前記防錆塗料組成物を塗装塗布する直前に測定した。
各防錆塗膜付き鋼板の耐白化性および防錆性を、以下のように評価した。結果を表2に示す。
(1)耐白化性
製造直後の各防錆塗膜付き鋼板の塗膜表面に水道水を数滴垂らし、次いで前記鋼板を12時間静置した後、水道水を垂らした箇所の塗膜の外観を目視で確認し、その箇所が白化した程度を以下の5段階で評価した。
5点:白化が認められない
4点:非常に僅かに白化が認められる
3点:僅かに白化が認められる
2点:白化が認められる
1点:はっきり白化が認められる
(2)耐白化性試験で水が接触した箇所の防錆性
上述の耐白化性の評価を行った防錆塗膜付き鋼板を、屋外の暴露試験場に水平に設置し、塗膜に3ヶ月間、常時水道水をかけた。試験板表面において、上述の耐白化性の評価で水道水が接触した領域の面積に対する、その領域の中で発錆した部分の面積の比率(以下「発錆面積比率」という。)(%)を測定して、発錆の状態を評価した。評価基準は下記のとおりである。
10点:発錆無し、または発錆面積比率が0.01%以下
9点:発錆面積比率が0.01%を超え0.03%以下
8点:発錆面積比率が0.03%を超え0.1%以下
7点:発錆面積比率が0.1%を超え0.3%以下
6点:発錆面積比率が0.3%を超え1%以下
5点:発錆面積比率が1%を超え3%以下
4点:発錆面積比率が3%を超え10%以下
3点:発錆面積比率が10%を超え16%以下
2点:発錆面積比率が16%を超え33%以下
1点:発錆面積比率が33%を超え50%以下
(B)防錆塗膜付き鋼板の製造および硬化乾燥性の評価
表2に示す気温、湿度、絶対湿度および露点温度の条件で、各一次防錆塗料組成物を冷間圧延鋼板(JIS G3141、SPCC−SB、寸法:150mm×70mm×0.8mm)に、その乾燥膜厚が15μmとなるように塗布した後、上述した硬化乾燥時間を測定した。
前記硬化乾燥時間が短いほど硬化乾燥性が優れているものと評価した。結果を表2に示す。
Figure 0006767150

Claims (9)

  1. 鋼板温度と露点温度との温度差(鋼板温度−露点温度)(℃)が(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃または1℃のいずれか低くない方の温度以上である温度条件下で、鋼板に、重量平均分子量(Mw)が5,000以上であるシロキサン系結合剤(a)と亜鉛粉末および/または亜鉛合金粉末(b)とを含有する防錆塗料組成物を塗布し、次いで硬化させる、防錆塗膜付き鋼板の製造方法であって、
    前記防錆塗膜付き鋼板が前記防錆塗料組成物の塗布後20分以内に屋外に曝される防錆塗膜付き鋼板である、
    防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
  2. 前記防錆塗膜付き鋼板前記防錆塗料組成物の塗布後20分以内に屋外に曝、請求項1に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
  3. 前記防錆塗膜が前記防錆塗料組成物の塗布後20分以内に液体の水と接触する防錆塗膜である、請求項1または2に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
  4. 5℃以下の気温の下で実施される請求項1〜3のいずれか一項に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
  5. 前記温度差が(−12Ln(絶対湿度(g/m3))+25)℃または10℃のいずれか低くない方の温度以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
  6. 前記シロキサン系結合剤(a)の重量平均分子量(Mw)が5,000〜10,000である請求項1〜5のいずれか一項に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
  7. 前記シロキサン系結合剤(a)がアルキルシリケートおよびメチルトリアルコキシシランからなる群から選択される少なくとも1種の化合物の縮合物である請求項1〜6のいずれか一項に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
  8. 前記防錆塗料組成物が一次防錆塗料組成物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
  9. 下記条件下で前記鋼板に前記防錆塗料組成物を塗布し次いで硬化させる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の防錆塗膜付き鋼板の製造方法。
    気温:−10〜30℃
    湿度:10〜90RH%
    絶対湿度:0.5〜27.4g/m 3
    露点:−27.1〜28.2℃
    鋼板温度:0〜44.0℃
    鋼板温度−露点:1.3〜57.1℃
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